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2012年11月

2012年11月26日 (月)

2012.11.19 中野サンプラザ 瞳みのる×森本タローとスーパースター『Childhood Friend』セットリスト&完全レポ(後編)

(『前編』からの続きです!)

何人かの先輩方とご挨拶したり、パンフレットを買い求めたりして休憩時間を過ごし、後半のステージに備えます。
やっぱり、ジュリーのLIVEを見慣れているからでしょうか・・・前半のあのゆったりした感じ(だと思ってしまうんですね、どうしても)からすると、後半は幕が開いてすぐ、一気のスパートかな?と考えていました。

客席の照明が落とされ、再び大拍手の中、いよいよ後半の幕が開きます。
って・・・・・・あ、あら?

ステージ中央にテーブルひとつと椅子3つ。
上手側に大きな立て看板(?)が設置され、書かれている文字を見ると
喫茶・仁和小学校」・・・?
そして看板の横に立つ女性。僕は最初その女性が誰だかまったく分からずにいたのですが(恥)、その人こそ、ピーの大学時代の同級生、阿川佐和子さんでした。

阿川さんの呼びかけがあり、ピーとタローが拍手に迎えられて登場。
どうやら、阿川さんが「喫茶・仁和小学校」に見立てたカフェのテーブルにピーとタローを招いてのトーク・コーナーという趣向のようです。
ヒヨッコの僕はピーとタローの通った小学校の名前すらこの日初めて知る、という状態で・・・「仁和」ってのはあの仁和寺にある法師、クルスノというところを過ぎてある山里にたずね入ったことはべりしに、のあの「仁和」かい?とか考えていましたね・・・。

いやいや、とにかくこの後半幕開きというタイミングでトーク・コーナーとは、まず意表を突かれました。しかしこれがまた今回のLIVEらしいというのか、コンセプトに沿っているというのか・・・何より終演後に考え直してみて、トークを挟むならここでの配置が一番良かったと思えますし・・・とても楽しい時間だったのです。


(註:以下、まったく記憶だけで執筆しています。トークのおおまかな内容に間違いは無いはずですが、話の前後や、3人の発言の細かい言い回しなどに微妙な記憶違いはあると思います。どうかご了承頂きますよう・・・)

阿川さんは前半のステージを振り返って、二人の演奏や熱唱、お客さんの盛り上がりに驚いていた様子。「いやいや」と謙遜するピーとタロー。

今回の阿川さんの”熱いファン目線”スタンスの司会は、鋭いツッコミや乙女な反応などが自然に織り交ぜられ、タイガースファンが観ていてとても心地良いものだったのではないでしょうか。
まず阿川さんは”仁和小学校”の文字を覗きこみながら
「おふたりは小学校の同級生でいらっしゃったんですよね?」
「3、4年が同じクラスだったんですよ」
と答えたのはピー。

阿川さん早速のツッコミは
「あの・・・ピーさんは小さい頃から・・・小さかったんですか?」
お客さんも爆笑です。
ピーが苦笑いしながら
「栄養が行き届いていなかったんですよ」
と言うとすかさず阿川さん、タローを指して
「でも・・・こちらはずいぶん栄養が行き届いていらっしゃったのでは」
「タローはぼんぼんだからね!」

「お二人はその頃(小学校で同じクラスだった頃)から仲良く・・・?」
という問いに
「いやいや!」と強い否定を示した(笑)のは、タローです。
「ピーは当時、有名なワルガキでね。近づかないようにしてた」
と・・・。タロー自らはそれに反して優等生であった、というアピールですね、これは。
ピーのワルガキぶりについてタローは続けて
「例えばね・・・女性のお客さんが多くいらっしゃる中でちょっと恐縮なんですけど・・・そんな小さい頃からピーはね、トイレの便器、アレにこういう(と、○描いて十字描いてと指で空にヤバイ形を描くタロー)イタズラ書きをしてたくらいの奴でね・・・」

お・・・阿川さん、これにはさすがに退いたか・・・?
ピー先生、ここは何とか弁明するんだ!というお客さんのハラハラした空気を・・・まったく読まずにピーは
「フ○テレビのマークだよね!アレって絶対そうでしょ!」
と火に油を注ぎ、しばらくフ○テレビのロゴマークについて「アレは元々ね・・・」と、本筋とは何ら関係ないウンチクを熱く語るのでありました・・・。

「はぁ・・・ヤンチャだったんですねぇ」と阿川さん。「ピーさんから見てタローさんというのは当時どういう印象だったんですか?」
「ぼんぼん。良くも悪くもぼんぼん!」
とピーは断言。タローは否定せずニコニコと聞いています。

これを要するにこの二人、幼い頃からの格別な仲良しというわけではなかった、と。
タローは「まさか一緒にバンドを組むことになるとは」とも言っていましたね。

ピーとタローは中学も(クラスは別だったけど)同じ。ピーが高校に行ってそこで知り合ったのがトッポ、と話が続きます。
この日のLIVEコンセプトである『Childhood Friend』・・・「竹馬の友」という話も出たんですが、ピーは何度も「竹馬」に引っかけて
「チクワ」
「チクワの友」
のオヤジギャグを連呼。
「チクワは酒の友・・・」
とかしつこくブツブツ唱えていると、さすがにタローが
「もうええわ!」
というツッコミのゼスチャーを入れていました。

「今日は同級生のおふたりのトークですが・・・わたしもピーさんとは同級生なんですよ」
と阿川さん。
「同い年の同級生ではなくて・・・ピーさんがタイガース解散後に改めて大学に入学した、その時の同級生。わたしが大学に入ったら、あのタイガースのピーがいるよ!と大騒ぎになってて・・・でもピーさんはとても真面目で、近寄り難かった。授業もいつも一番前で受けていらっしゃいましたよね?」
「難聴ですから」
と、変な合いの手を入れるピーに、「反応しなくていいからね」と阿川さんを気遣うタロー。なんだか、二人の話に出てくる小学生のキャラそのままですねぇ・・・。

話はタイガースの解散から時を経て、ピーと他のメンバーの再会について。
阿川さんが
「長い間メンバーと連絡も断って・・・その間、(タイガースのメンバーには)会いたくなかったんですか?」
と問いかけると、ニコニコしながらも
「会いたくなかったですね」
と正直に返すピー。

「でも、タローさん達の方は会いたかったんですよね?お店で待伏せしたりしていたとか・・・?」
「いや、待伏せの話はボクじゃなくてジュリーですね」
とタロー。
「ジュリーがピーの行きつけの店に通って”瞳みのるは来てないか”と探していた、ということみたいですね」
「で・・・実際にピーさんとみなさんが遂に再会することになって、その時大泣きしてしまったのが・・・タローさんですよね?」

という阿川さんの問いには、照れながらうなずくタローです。阿川さんは
「タローさんのそんな様子を見て、ピーさんはどう思われましたか?」

ようやるなぁ。そこまでやるか!・・・と」

ピー先生・・・酷い・・・。
と言うより、何と正直な人なんでしょうね、ピー。これまで聞いてきた話とまったく齟齬が無いし、こういう場で無理に話を作る、ということがありません。むしろ、話を作り上げないそのままのピーでいた方が、全然面白いしお客さんも盛り上がる、というね・・・。

タロー曰く
「ピーは今はもう、完全にタイガース時代のヤンチャなピーに戻っているからね!」
とのことです。
「(今のピーに対しては)何の遠慮もなく、”何やってるんやこのヤロ~!”と言える・・・これがね、先生(のピー)にだとそんなことは言えないんですよ。ピーもはじめ(再会したての頃)はまだまだ”先生”だった。それがどんどんどんどん崩れてきて・・・その崩れ方というのがとんでもないわけ(笑)。ピーは(芸能界での)間(あいだ)ってモンが無いからね。タイガースやめていきなり先生。先生やめていきなり芸能界、でしょ?例えばこれがサリーなら、長年下積みで俳優やってきて・・・それで今がある。その点ピーは間(あいだ)が無いから、タイガースの頃にそのまま戻ってる。やりにくいったらありゃしない!(笑)」
そう言いながらも、嬉しくて仕方ない、と言った感じのタローでしたね・・・。

阿川さんも感心して
「タイガースのピーさんにそのまま戻っていらっしゃるんですか・・・先生時代の生徒さんが今のピーさんを観たら、ビックリするんじゃないですか?」
と言うとピーも
「ビックリするでしょうねぇ・・・」
と。

「今日は生徒さん達はいらっしゃってないんですか?」
「いや、教え子・・・元教え子たちが来てます。・・・来てるかな?」
とピーが客席を覗きこむようにすると、すかさずPA前のセンターブロック辺りから手が挙がりました。
「おっ、○○!来てるな!」
と苗字呼び捨ての萌え萌え先生声で指をさすピー。
阿川さんは目ざとく
「こういう時は”先生”の顔に戻るんですね~」
と、新鮮な驚きをそのままお客さんに届けるように、話を繋げてくれました。
僕の席からはその時のピーの細かい表情までは見えませんでしたが、元教え子へのピーの呼びかけは、老虎ツアー聞き慣れた口調とは違い、また別のピー”先生”の魅力を一瞬感じさせてくれたように思いました。その一瞬を見逃さず「打てば響く」といったタイミングで話を繋げた阿川さん・・・さすがの呼吸でしたね!

タイガース再結成については、ピーとタロー二人揃って「大丈夫だと思います!」と力強く宣言。
「今日はサリーが来てくれてる(開演前はお客さんの注目を浴びまくっていました)」
サリーは「救急車呼ばせるなよ!」と、今日のステージにエールを送ってくれていたのだとか・・・。

「今日はかつみも来てくれる予定だったんだけど・・・」
とタローが残念そうに話してくれました。その「来てくれる」が、ただ客席に、という雰囲気ではなく「一緒にステージに立ってくれるはずだった」みたいなニュアンスに聞こえたんですよね・・・。
前半の演奏曲目に『HAiR』の曲があったり、トッポを迎えての趣向もセットリストに組み込まれていたように感じたのですが、みなさまはいかがだったでしょうか。

トッポについては
「今流行の突発性難聴ってヤツでね・・・入院しちゃって」
とタローが言うと、お客さんの中にはその話を知らなかった方も多かったらしく、「え~っ?」というどよめきも起こっていました。
阿川さんが
「治るんでしょうか?」
と心配そうに尋ねると、タローは
「大丈夫でしょう!アイツのことやから・・・」
どういう根拠かサラリと断言。
「勝手に退院しちゃったらしいけどね」
と、トッポらしいエピソードも紹介してくれました。

トッポは老虎ツアーに一人不参加だったことに加え、演奏の要となるリード・ギター、そしてタイガース二枚看板としてのヴォーカルなど、再結成に向けて他のメンバー以上にプレッシャーがかかり、求められているものが大きく大変かと思います。なんとか体調を戻し、トッポらしさを貫いて欲しいと願っています。

楽しいトークは他にも色々な話題で盛り上がったはずですが、僕が今思い出せるのはこのくらいかな・・・。

阿川さんはいったん退場と見せかけ、ワゴンでケーキを運んで再入場。もちろん、前日66歳の誕生日を迎えたタローのための、バースデー・ケーキです。
早速、お客さんも阿川さんと一緒に歌ってお祝い・・・。ケーキを覗きこんだタローは
「おっ、ちゃんと”ルート66”になってる!」
とニコニコでした。
「去年は岡山の会場でみんなに祝ってもらって、今年もまた・・・ボクは本当に幸せ者です!」
と感慨深げなタローにピーが
「ケーキ、今ちょっと食べれば?」
と茶々を入れたりする中、ワゴンやテーブル、椅子などをスタッフさんが片づけ始め、スーパースターのメンバーもスタンバイ。

阿川さんも大きな拍手に送られて退場しました。ここから後半の演奏曲目に入るようです。

タローがピーに「はやく準備して!」とせかすとピーは「準備するのはそっちでしょ?」と。
どうやらピーがハンドマイクで、タローはギターをスタンバイしなければならないシーンだったようです・・・というこのやりとりは、事前に打ちあわせていたネタだったのかな?
「イカンイカン。どうも全部自分が仕切らなきゃ、と思ってしまってつい・・・」と頭をかきかきギターを手にしたタロー。
という流れでステージ後半、開演です!

12曲目「老虎再来

Theroad_2

「さきほど歌った「」のカップリングの曲です」
という楽曲紹介から、「よっ!」という感じでピーが横っ飛びにジャンプしてのイントロ・スタート。
おおっ!前方のお客さんはここでスタンディングです。
僕のすぐ前席周辺のお姉さま方も、数人ですが立ち上がり、大きな頭上手拍子で曲を盛り上げます。

僕は、この曲はコーラスが厚いし、ピーはドラムスを叩きながら歌ってくれるんじゃないかと楽曲考察記事の段階から予想していましたが・・・外れましたね。

遠山さんのキーボードの音量バランスが、個人的には少し残念だったかなぁ。シンセ・オルガン系が強めで、ピアノ系を弱く設定していたけど、逆でも良かったんじゃないかと僕は思いました。ピーのヴォーカルに突入直前のピアノの複音連打が大好きなもので・・・。

「楽しいときは歌おうよ」同様、この曲でも最後のサビ・リフレインでピーが客席にマイクを向けるシーンがありましたね。
リフレインの最後の方ではピーが主メロの5度上くらいの謎の音程で歌っていましたけど、あれはピーなりの盛り上がりの表現だったのでしょう。そういう意味でも、ピーの”身体を歌に預ける”スタイルを再確認しましたし、何よりピーが歌うことを楽しんでいる様子がバシバシ伝わってきました。


13曲目「ジャスティン」

「老虎再来」からこの曲はすぐの移行じゃなかったかな。
ピーが「ジャスティ~ン!!」とシャウトしてのロックンロール・リフ・スタート。バンドも老虎ツアーとほぼ同じアレンジでしたね。
老虎ツアーの時もそうだったんですが、この曲になると突然ドシッと腰が入りカッコ良くツイストを踊りながらのギター・プレイとなるタローです。

ちなみにここで僕の前周辺のお客さんもほとんど立ち上がりました。
むむむ・・・これがいつかJ先輩が仰っていた”林状態”というヤツか・・・。スタンディングのお姉さま方の林立で、見事に遮られる視界。
でもね・・・僕はこの日は「立たない」と決めていました。何しろ中野サンプラザは、あの渋谷公会堂よりも1階の傾斜がなだらかで、スタンディングの状態だとモロに身長差が反映されます。
この日は身長の低いお客さんもたくさん見かけましたし・・・実はちょうど僕の数列だけ後ろに、弾丸ツアーで遠方からご参加のメイ様もいらっしゃいましたしね。171センチの僕が(まぁ、男性としてこの身長は全然高い方ではないんですが・・・)立って邪魔をするわけにはいきません。

ということで何とか人の林の隙間をかいくぐって視界を探し、ステージに注目。
お約束のかけ合いも、昨年からのツアーで聴きなれたもの。ただ、この日の公演ではピー一人ですべてを表現しようとしていたので、その分ハンデがありました。老虎ツアーではジュリーがキッチリ盛り上げ役を買って出てくれていましたからね・・・。
途中でピーはタローをご指名。てっきりタローが「ア~・ユ~・レディ?」とやるのかと思ったらいきなりピーと踊り出しちゃった・・・。しばらくそのままラブラブなダンスを披露する二人。もちろんタローが男役で、女役のピーがタローの腕の下でクルリと回転する、という分担です。

そうかと思ったら最後の最後に必殺のホウキを持ち出して大暴れのピー。そりゃ、生徒さんも驚くでしょう・・・。

曲が終わると、タローがゼ~ハ~言いながらピーのホウキを指して
「オマエはそればっかりやな!まったく・・・何処から持ってきたんだか・・・ジェフ!こんなものまで用意するな!」
とJEFFさんに当たりますが、もちろんその顔はゴキゲン、ニコニコです。

ちなみに今回のLIVEでは、ジュリーLIVEには無いパンフレット販売があり多くのファンが購入していましたが、パンフレット・デザインとしてJEFFさんのお名前がありました。老虎ツアーから引き続いての縁の下の力持ち・・・今回もJEFFさんは変わらず大活躍だったようですね!

14曲目「青い鳥

Human

「ジュリーが”高貴な”と言ってくれたタイガースの曲」
というタローの紹介がありましたが・・・タロー、ジュリーが言った”高貴な光を放っている曲”は「坊や祈っておくれ」ですよ!「青い鳥」については”名曲中の名曲”と言っていたんです・・・。
まぁどちらにしても、森本タロー作曲の大名曲であることには変わりありませんけどね!

ピーのカウントに続き、イントロで素っ頓狂な音を出してしまったタロー。
「あ、キー間違えた」

僕は茫然としてしまいました・・・。
さすがにこれはネタでしょう~。直後、スーパースターの誰かが「よくある!」とナイスなタイミングでツッコミを入れていましたし、そうやって場の空気を和らげようというネタに違いない!
いや、それとも今回はタローの全編リード・ヴォーカルということがあって、老虎ツアーのジュリー・ヴォーカル・ヴァージョンとスーパースター・ヴァージョンではキーが違えてあるとか?
でも例えばキーがホ短調とニ短調とじゃ、ローコードのギターの聴こえ方はもっと違うはずだよねぇ・・・。

間奏のリード・ギターなんかは、タロー、完璧に弾いていたんですよね。それを考えるとなおさら僕にとっては謎が謎を呼ぶ、という感じのこの日の「青い鳥」のイントロでした。
で、そんなこんなで微妙に動揺していたのか、ピーの”トップシンバル剣舞”をすっかり見逃してしまいました・・・(泣)。

15曲目「君だけに愛を

Tigerssingle

タローが
「僕らはいっぱいいっぱいですが、タイガースの曲を続けますのでみなさんの力を借りて盛り上げていきます!」
みたいなことを言ったのは、この曲の直前でしたっけ・・・?
イントロ一発でファンが反応するアップ・テンポのタイガース・ナンバーが、この後怒涛に続いていくことになります。まずは「君だけに愛を」!
イントロではやっぱりピーのドラムスのオカズに注目。これこれ、タイガースはこれですよ~。

「君だけに~♪」の指差しは、今回はタローの役目です。
ジュリーはビシ~ッ!とやるんですけど、タローの場合は軽く腕を上げる感じで、柔らかな指差しです。よく見えなかったのですが、ギター弾きながらのヴォーカルだったとすれば、ピック持ちながらの指差しということになりますからね。

スーパースターのハーモニーが予想以上に素晴らしかったです。そのおかげでしょうね・・・さすがはタイガース・ナンバーの大ヒット曲、細部まで洗練されている曲なんだなぁ、と改めて思いました。

16曲目「シーサイド・バウンド

Tigerssingle_2

間髪入れずにこのナンバー・・・どうやら今回のセットリスト、このあたりでいよいよスパートがかかってきましたね。

まず、村田さんのティンバレスが最高です!フレーズがオリジナルに忠実なだけでなく、全体の音量とのバランスから言っても強めの音量設定だったのが嬉しいじゃありませんか~。
ティンバレスは、この曲の重要な音のひとつですからね。再結成の暁には、是非ジュリーにも演奏してもらいたいなぁ・・・。

間奏は、林に隠れてステージ全体こそよく見えなかったのですが、前の席のお姉さまお二人が揃ってステップを踏んでいらして。その切れ味からステージの様子もたやすく想像できるというもの。
再結成のステージでは、まだ見ぬトッポのステップに大いに期待しています!

ピーの奇声は炸裂していたのかな?
その点、チェックをうっかりしていたのが残念です・・・。

17曲目「シー・シー・シー

Tigerssingle_3

清水さんのイントロのベースがオリジナル音源よりも長かったですね。
老虎ツアーでは、何処の公演でしたか・・・柴山さんのギターのトラブルでサリーのイントロのベースが延々と続いてもギターが噛み込んでこない、というアクシデントが1度だけあったと聞いていましたので、一瞬「あっ!」と思ったりしましたが、この日の「シー・シー・シー」はどうやら、わざとイントロで長めに尺をとって会場の雰囲気を盛り上げよう、という打ち合わせがあっての小節数変更だったようです。
もちろん、お客さんはギターが噛んでくるのを今か今かと待ち構え、イントロから手拍子参加でした。

手拍子と言えば・・・前編のレポでも少し書いたんですけど、Aメロ部や間奏部でのこの曲の「うん・たた、ん・たた!」というリズムの手拍子は、そっくりそのままピーの新曲「楽しいときは歌おうよ」に採り入れられています。
これはタローの友情注入アレンジタイガース愛アレンジの中でも、特に大きなポイントだと思いますよ~。みなさま、是非CDで聴き比べてみてください。

その特徴的な手拍子を、この日は遠山さんがキーボードのハンド・クラップ音でしっかり演奏していましたね!

この曲の途中で、そっと後ろを振り返ってみました。僕の席のさらに後方は数列の座席があり、半数くらいのお客さんが立っていまいた。前方はというと・・・特にPAから前のブロックでは、ほとんどのお客さんがスタンディングだったように見えました。
2階席はどうだったのかな・・・?

18曲目「ラヴ・ラヴ・ラヴ

Tigerssingle_4

間髪入れず・・・いきなりサビ部からのスタート!
最初から「L」の字で少し唐突な感じもしましたが、やはりピーがドラムを叩いてタローが歌っている以上、この曲はどうしてもセットリストに欠かせません。

ピーのドラムスは、老虎ツアーの「ラヴ・ラヴ・ラヴ」とはまったく違うものでした。
1曲通して演奏したあのツアーでは、この最後のサビ部途中から驚異の”鬼の右足288連打”を披露してくれましたが、この日はあの『フィナーレ』の演奏を再現したようなオカズ連発のスタイル!自由に、思うがままに、感情のままに手足を動かし、次々とカッコいいフレーズを繰り出します。
ただ『フィナーレ』と違うのは・・・(と言っても当時4才の僕は1971年の解散コンサートを観てはいませんが)ピーが笑顔でドラムを叩いていたこと・・・ですよね?

演奏が終わるとメンバーが手を振って退場。
照明が少し暗くなり、場内にピーの「楽しいときは歌おうよ」が流れてきました。「楽しいときは歌おうよ」・・・なるほど今日のLIVEコンセプトを象徴するような曲なのですね。
ステージ後方のスクリーンには、音源に合わせて映像も流れてい
ます。DVDの映像ではなく、この日に向けて撮影された『メイキング・オブ・Childhood Friend』といった趣の映像になっていました。
最後には、スクリーンの中でピー、タロー、スーパースターのメンバーが大きく手を上げて客席の拍手に応える、という粋な演出です。

音源が終わっても、場内は「楽しいときは歌おうよ」のテンポに合わせての手拍子が鳴りやみません。
やがて「アンコール!」の声が起こり、大きくなり・・・。
メンバー再登場!ひときわ大きな拍手が沸き起こりました。

タローの
「じゃあ、行くぞ~~~!!」
のシャウト。
タローのシャウトは珍しいですよね・・・。老虎ツアー・ファイナル武道館で、最後のアンコール曲「サティスファクション」直前にジュリーがシャウトした「行くぞ~!!」のシーンを思い出したお客さんも多かったんじゃないかな・・・?

~アンコール~

19曲目「色つきの女でいてくれよ

Tigersgolden

ここまでタイガース・ナンバーは王道中の王道で攻めてきていましたから、僕はアンコールで「僕のマリー」か「モナリザの微笑」あたりが来るかな、と待ち構えていましたが・・・。さすがにその2曲は「行くぞ~!!」では始まらないでしょう。
炸裂するイントロ・・・何と何と始まったのは、同窓会ナンバーの代表曲。
これもまた間違いなくタロー作曲の大名曲・・・「色つきの女でいてくれよ」というアップテンポのナンバーが来たものですから、会場は一気にヒートアップ!いやぁ予想外、嬉しいサプライズでしたね~。

何と言っても、ピーが満面の笑顔でこの曲のドラムを叩いているのです。その意味は計り知れなく大きい・・・。
基本のエイト・ビートのリズムキープはツインドラムの一方の雄・村田さんに任せ、これでもか!と激しいオカズを繰り出してくるピー。感動的なシーンです。
そして、多くのお客さんがトッポのことを考えたと思います。こうして僕らはタイガース再結成を準備しているよ、もうすぐトッポも加えた全員揃ってのステージが見せられるよ、というピーとタローからのメッセージを感じましたよね。
本来はここでトッポのゲスト参加が予定されていたのかもしれないけど・・・お楽しみは”近い将来”までとっておきましょう!

こうして「色つきの女でいてくれよ」をピーが演奏してくれたことで、再結成時の同窓会ナンバーへの期待も高まってきました。
朝焼けのカンタータ」「生きてることは素敵さ」・・・そして必殺の「十年ロマンス」を、是非生で聴いてみたいなぁ~。

さて、この日のリード・ヴォーカルはキーボードの遠山さんでしたよね?
トッポとはまた違ったハイトーンの澄んだヴォーカルです。人間の声はその人の骨格によって類別できる、という話を聞いたことがありますが、遠山さんはスマートな輪郭の美男子系で、ちょっと堀江淳さんを思わせる甘やかな歌声。曲の雰囲気に合った素敵なヴォーカルでした。

20曲目「ホンキー・トンク・ウィメン」

Img483


シンコーミュージック・刊 『ローリング・ストーンズ・ベスト曲集』より

上記スコアの通りの、カウベルのあのリズムがイントロで鳴り響けば自然に身体が反応します。
記念すべき今回のLIVEの大トリは、ローリング・ストーンズ・不朽の名曲のカバーでした。タイガースではお馴染みの曲だったんですよね?

イントロのカウベルは村田さんだったと思いますが、もちろんピーも引き続きドラムセットにいます。アンコールの2曲はいずれも、村田さんがリズムキープ担当、ピーが細かいフィル担当、というおおまかに言ってそんな感じのツイン・ドラム・スタイルとなりました。
曲が進みエンディングが近くなると、ピーは最後の大暴れとばかりに派手な長めのオカズを炸裂させた後、ドラムスを村田さんに任せてステージ前方へ進出。再びタローとのラブラブ・ダンス・コーナーが繰り広げられました。
小学校の同級生がこんなふうに60歳後半になって同じステージに立ち、40年以上前から応援してきたお客さん達の前で友情を確かめ合う・・・本当に得難い人生を歩み、これから先の良きパートナーたらんと決意した二人の老虎の、ありのままの姿です。格別なシーンでしたね・・・。

こうして『Childhood Friend』は大成功に終わりました。
メンバーは大きな歓声と拍手に送られ、にこやかに退場。老虎ツアーでお馴染みとなった、ピーが最後までお客さんの声援に応えてくれるシーンも再現されました。

本当に楽しいLIVEでした・・・。
スーパースターの演奏力、コーラスワークを洋楽カバーでステージ前半に印象づけ、タローのタイプの異なるオリジナル2曲でお客さんを引き込み、ピーの2枚のCD収録曲も完全に網羅。
タイガース・ナンバーは出し惜しみのない王道どころを次々に繰り出し、アンコールで同窓会ナンバー「色つきの女でいてくれよ」を披露して、来たるべき再結成への期待を繋ぐ・・・。
こうして振り返ると、完璧なセットリストだったと感じます。
プロデューサー、タローには本番ステージにも増して、地道で多大な準備、尽力があったことでしょう。心から拍手を贈りたいです。

しかも、「お楽しみはまだまだこれから!」というメッセージ、エネルギーも随所でヒシヒシと感じることができました。
「次」を楽しみに待ちたいですね!

開演前あれだけ寒かったのに、ホールから外に出ると、コートが不要なくらいに身体が温まっていました。
ピーやタロー、タイガースの話をしながら駅へと帰路に着くお客さんの波が、サンプラザホールから途切れることなく続いていました。集客も大成功です!

残念ながら参加できなかったみなさまに、少しでもこの日の雰囲気が伝わるレポになっていれば良いのですが・・・。
勢いでバ~ッ!と書きましたので、記憶違いや誤字脱字があるかもしれません。今後も、気がついたところから少しずつ修正していきたいと思います。

それでは次回更新から、拙ブログ本来の、ジュリー・ナンバーお題による楽曲考察記事へと戻ります。
まずは、『3月8日の雲~カガヤケイノチ』”セットリストを振り返る”シリーズへと突入。3曲採り上げる予定でいましたが、その後のスケジュールがキツイので2曲になるかも・・・。
それからすぐにお正月コンサートに向けて、”恒例・全然当たらないセットリスト予想”シリーズの執筆・・・そうこうしているうちに2012年が終わりそうです。しかし・・・なんですか、漏れ聞くところによりますと、本日『ビバリー昼ズ』に出演したジュリー、お正月コンサートで歌う予定の曲を1曲だけネタバレ・・・と言うか断言したんですって・・・?
あの曲は・・・あの曲は・・・しかるべき時
(阪神優勝)が来るまで考察記事執筆を封印しようと決めていたのに・・・書きたくて仕方なくなってしまいました。
「”しかるべき時”はもう永遠に来ないから、この機に書いておけ!」というジュリーのお告げでしょうか(違)。悩みます・・・。

あ、そうか!
たとえあちらのタイガースがコケても、こちらのタイガース再結成で帳尻を合わせよう!ってことなのかな・・・?

ともあれ、次回からまたよろしくお願いいたします!

20121119

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2012年11月23日 (金)

2012.11.19 中野サンプラザ 瞳みのる×森本タローとスーパースター『Childhood Friend』セットリスト&完全レポ(前編)

(註:自分の事前想定より大幅に文量が多くなってしまったので、前編と後編に分けて記事更新させて頂きます汗)

大変遅くなってしまいました・・・。
11月19日、中野サンプラザ『Childhood Friend』に参加してまいりましたので、ジュリーLIVEに倣ったいつもの形式でレポをお届けいたします~。


当日は、この年一番の冷え込みを記録した東京。
天気予報が外れ午前中には雨も降ったりして、とても寒い1日となりましたね。ただ、午後になって雨が上がってくれたのは何よりでした。

中野は上京当時からかなり好きな街で、方向音痴の僕もある程度は親しみ歩き慣れている所です。
でも、サンプラザホールでコンサートを楽しむのは・・・20年以上前のエルヴィス・コステロの『ブラッド・アンド・チョコレート』ツアー以来となりますか。いやはや、時は流れました。
と言いつつ、この日は僕のそんな感慨などなど及びもつかない・・・ひょっとしたら30年ぶり、40年ぶりにこの会場を訪れる、というタイガース・ファンの大先輩達が多く結集するに違いないのです。心しなければなりません。

仕事を速攻で片付け早退し、地下鉄東西線で中野へ。
北口改札を出てビックリ。なんじゃこれは!見慣れた中野駅の庶民的な雰囲気には似つかない、オシャレな階段がデーン!と目の前に。
後で中野在住の会社の後輩に聞くところによれば、複数の大学キャンバスの中野への誘致が決まっているんですって・・・。そのために駅前が大きく改修されているんだそうです。
「行きつけの飲み屋に気軽に入れなくなるかもなぁ」と、その後輩もうかない表情でしたが・・・とにかくこうして、時代も街も変わっていくんですね。

午後5時半くらいに会場に着くと、開場までまだ30分ほどあるにも関わらず、今か今かと入場を待つ長蛇の列が。
あまりに寒いので、開場に先行してコーナーを設けていたグッズ売場を覗きに行きましたが・・・とても商品が手にとれる状況ではありません。
人・人・人・・・しかもジュリーLIVE以上に女性率が高い!

いざ開場してから入り口までの混雑も凄かったですねぇ。
中野サンプラザは扉を入って階段を昇ったところに受付があるのですが、一気にお客さんが押しかけると階段に人が溢れて危険、ということで・・・スタッフさんが声を枯らして待機誘導。でもこの様子を観て、今回のLIVEの集客が大成功だったことが分かり、嬉しく思いました。

入場しますと、まずはピーのファンクラブのみなさまが贈られたお花を探しに。

201211193_2


(下手な撮影ですみません・・・。
ピーのファンサイトで、もっと素敵な写真が見られます)

「みのりの秋」をモチーフにされたとのことで・・・ひときわ目を惹いていました。たくさんの方が写真を撮っていらっしゃいましたね。
他には、吉永小百合さんやタケカワユキヒデさん、祥伝社さんなどから贈られたお花が飾られていました。

開演前(休憩時も)には、たくさんの方とご挨拶させて頂きました。ジュリーファンの先輩や、老虎ツアーがきっかけで仲良くさせて頂くようになったピーファンのみなさま。そして「はじめまして」なピーファン、タイガースファンの先輩方。
中でも、ピーファンの先輩の計らいで、老虎再来支援委員会の坂田代表とお話させて頂けたことは、身に余る光栄でした。
みなさま、これからもよろしくお願い申し上げます!

この日、僕の席は1階後方。
果たしてどんなセットリストになるのか・・・やっぱりジュリーLIVEと同じで、初日(と言っても今回のジョイント・ライヴは1回だけの公演ですが)の幕が開く直前の雰囲気はたまらなくワクワクしますね~。

ちなみに今回のLIVEは、実際に緞帳を使って幕が上がる、降りる、という演出がありました。
いよいよ開演!

1曲目「輝く星座~レット・ザ・サンシャイン・イン」

まずは、センターのピーのドラムセットを中心に、各メンバーの立ち位置を説明しておきましょう。
向かってステージ左端奥にキーボードの遠山さん。ピーの斜め左前に速水さん、右前にはタロー。ピーの右に村田さんのドラムセット(ピーがドラムスの曲では基本的にパーカッションを担当)。そしてステージ右端にベースの清水さん。
ピーを見てください、と言わんばかりの演奏配置・・・割れんばかりの拍手、歓声から1曲目がスタートしました。

ところが情けないことにノッケから
「確かに聴いたことある・・・でも曲名が全然分からん!」
と頭を抱えるDYNAMITE。

翌日、タイガース世代の男性ファンの大先輩・YOU様にタイトルを教えて頂きました。
タイトルが分かってからようやく「あぁ、トッポが歌ってたやつか!」と気がつく始末・・・お恥ずかしい限りです。「僕等の世代にとっては特別な曲」とYOU様は仰っていました。

ピーはサビ部でコーラスにも参加していたように見えました。
1曲目にタムタムをメインに左右の流れるような動きでドラムス演奏されるナンバーを持ってきたのは、老虎ツアーの「ミスター・ムーンライト」同様に、ピーの身体を温めるのに最適ということなのかなぁ、とこの時は考えました。まさかこの曲の後すぐピーが休憩に入ってしまうとは想像もしていなかったものですから・・・。

~MC~

大きな拍手の中、最初のMC。
ことさら大きく息を弾ませるタロー。「いやぁトシだから」というアピールですが、無論これは構成上のネタです。老虎ツアーを生で観た人なら、ピーやタローがこの最初のメドレーだけでヘバってしまうなどありえないことを知っていますよね。
「体力的にシンドイので・・・」と笑いを誘って、ここでいったんピーが休憩に入ることに。意外な展開でしたが、後からセットリスト構成を俯瞰してみれば、なるほど~という感じ。

「スーパースターのLIVEが初めて、というかたも大勢いらっしゃると思うんですけど・・・普段僕らは、まずタイガースの曲、そしてオリジナル・・・あと、意外と洋楽カバーのレパートリーが多いんです。ここから3曲、そんな洋楽カバーの曲を聴いて頂こうと思います」
と、タロー。
確かにここに、スーパースターのステージお初の若輩者がおります!なるほど、挨拶代わりに腕前を披露してくれるんですね~。

タローはにこやかにメンバーにスタンバイを合図すると、
「3曲続けてお聴きください!」


(註:ここから3曲、初めて観るスーパースターの洋楽カバーですが、メンバーの声を聴くのも初めてでしたので、リード・ヴォーカル担当メンバーの記述が誤っている可能性があります。一応注意して各メンバーの口元を観ていたつもりですが・・・。もし誤っておりましたら、遠慮なくご指摘くださいませ)

2曲目「ふたりのシーズン」

これはイントロ一発で分かります・・・ねじれポップ・ロックの元祖とも言うべきゾンビーズ。彼等のナンバーの中でも特に有名な1曲ですね。
いやぁ、スーパースターの演奏が心地よい。
改めてパンフレット記載のメンバーの経歴を見ると・・・凄い人達が集まっているのだと再認識。演奏が素晴らしいのは当然でしょう。

リード・ヴォーカルは遠山さんでしたか。ハスキーな声で、官能的に歌います。まったく予備知識がありませんでしたが・・・いやいやかなりカッコいいヴォーカリストではありませんか!
間奏のオルガン・ソロもゾンビーズしてましたね~。ジュリーファンのみなさまには、「Aurora」みたいな音色設定、と説明すれば想像しやすいかな・・・?

3曲目「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」

Img485


シンコー・ミュージック刊『ザ・ビートルズ』マッチング・バンドスコアより

特徴的なピアノの「ラ」の音の連打から哀しげにスタートする曲・・・もちろんイントロ一発で反応できました。
嬉しいですね・・・ビートルズ・ナンバーは必ずやってくれると予想はしていたけど、もっと初期の曲を考えていました。セットリストで嬉しい方向に意表を突かれるのは、やはりLIVEの醍醐味です。

しかもさらに嬉しかったのは、ドラムスの村田さんがリンゴ・スター独特の”間”の魅力を忠実に再現してくれていたこと。
この曲をカバーするバンドは邦洋とても多いですが、概してドラムスがハードなアタックに片寄り過ぎているんですよ。それはそれで技術的には素晴らしいのですが、僕の耳に馴染んだ「ホワイル・マイ~」とは別物になってしまいます。
でも、ドラムスをはじめ、スーパースターのアレンジはとても心地よいものでした。やっぱりこの曲は村田さんの演奏のように、オープン・ハイハットの裏拍音が一番大きく聴こえてこなきゃ~!
しかも、”間”をうまく使ってクルクルと右手でスティックを回転させる村田さん。一度だけ「おっと!」となって、スネアがズレてしまっていたのは、この曲だったか、「ふたりのシーズン」だったか・・・。

ヴォーカルは清水さんでしたか。オフコース在籍で有名な清水さんのミュージシャン人生も、まず最初はビートルズ・ナンバーからスタートしたのでしたね。

そして・・・来ました。僕にとっては初めて生で体感することになった、速水さんの本格的なギター・ソロです!
感動しました・・・本当に素晴らしい。
完全に僕の好みのギターの音です。早速炸裂したトリルは「お前は魔法使い」「外は吹雪」の音そのものでしたし、エンディングのフィードバックが最高に渋い!思わず、原曲がフェイド・アウトだったことを忘れるほどの完成度。ギターが語っています。泣いています!
柴山さんとも下山さんとも違う・・・。
ずっしりと太い音に、起承転結解釈のある緻密なフレージングという、一見正反対のスタイルを合わせ持つギタリスト。圧倒的なビフラートの存在感。

これが速水さんか・・・!

速水さんのLIVEの演奏音は、井上バンド時代の昔と変わらないのでしょうか。それを知る術のない自分が、とても悔しいです。

4曲目「ユー・キープ・ミー・ハンギング・オン」

イントロでは一瞬「?」と思いましたが、すぐに「あぁ、バニラ・ファッジのヴァージョンだ」と気がつきました。アート・ロックの走りと言われ、60年代にこんな解釈で演奏するバンドがあったのだ、と20歳くらいの頃に初めて聴いて驚かされたナンバー。
ちなみに僕はウィングスの「タイム・トゥ・ハイド」という70年代の曲の方を先に知ってしまっていたので、そういう意味でも初めてこのバニラ・ファッジのヴァージョンを聴いた時には驚いたものでした
(←コラコラ)
「タイム・トゥ・ハイド」・・・みなさんご存知かな?

http://www.youtube.com/watch?v=fGgeGxji3A0

ヴォーカルはギタリストのデニー・レインなんですが・・・Aメロの途中で思わず「Hoo、Woo♪」とコーラス入れたくなりませんか?(笑)

さて僕は、この曲の歌詞を思いながら感慨にふけって聴いていました。
別れを告げてきた相手が、その後も何とか形だけの関係を築こうとしてくるのに対し、相手への愛情に縛りつけられ苦しむ主人公は「うわべだけになるくらいなら、いっそキッパリ関係を断ち切って欲しい」と切実に訴えている内容なのですね。形だけの関係は、愛情が無くなってしまったことの裏返しだと言うのです。

キッパリと断ち切る・・・それをかつてピーが実行しました。
後追いファンの僕がこんなことを言うのはどうかと思いますが、タイガース解散後、ピーが完全にメンバーとの関係を閉ざしたことは、むしろタイガースへの愛情故の行動だったのかもしれません。

昨年NHK『songs』で放映された4人のメンバーでの対談で、解散直後のピーの決断、行動についてサリーが「よくそこまでできたねぇ・・・」と言ったのに対し、ピーが
「タイガースというものをグ~ッと押さえこんだ。そうしないといけないくらい、タイガースというのは大きかった。そしてそれ(タイガースを必死で押さえこむこと)ができたのは、やっぱりタイガースの力なんだ」
と語っていたことが思い出されます・・・。

この曲のリード・ヴォーカルは速水さんでしたでしょうか。
これはコーラス・ワークも重要な曲ですが、その点スーパースターはバッチリ、完璧。この辺りは、さすがタロー率いるバンドだなぁ、という感じです。

5曲目「夢追いかけた若い日」

Jstrocknroll

スーパースターの真打ち、タローのヴォーカル曲。演奏の前には、タローからの曲紹介のMCがありましたね。
タローとスーパースターのオリジナルとして、「ザ・タイガースをテーマに作ったCDの中から」と言ってくれたので、一瞬「J・S・T ロックンロール」が来るかな、と考えました。You Tubeで盛り上がりの決め事などを予習してきた曲だったものですから・・・。
しかしすぐにタローの口から「夢追いかけた若い日」とタイトルが紹介されて、「しまった、知らない曲だ・・・」と(恥)。

初めて聴くこの曲・・・タローらしい朴訥でメロディアスなナンバーですね。感傷に浸り過ぎるのではなく、シンプルにタローが「若い日の自分」に誇りを持ち、タイガースを愛していることが伝わってくる曲でした。

この日はステージ後方にスクリーンが設置されていて、この曲が流れている間、懐かしいファニーズから現在に至る、タイガースのオリジナル・メンバーのショットがそれぞれ、次々に映し出されていきました。いやぁ・・・タイガース時代のジュリーの美貌、男の僕でもこうして大きな映像で見せられるとドキリとします。
でも、僕が見逃していたのでなければ、メンバー中ジュリーだけ”現在”のショットは無かったようです(事前にジュリーが「堪忍してや」とか言ったのかな?)。

6曲目「Long Good-by」

Jstrocknroll_2

「夢追いかけた若い日」を歌い終えたタローは、ギターを降ろし、ゆっくりとステージ上手側にセットされたグランドピアノに向かいました。
「おおっタロー、ピアノか!」
と嬉しくなりました。昨年このブログで老虎ツアーのセットリスト予想を執筆していた時、「坊や祈っておくれ」のお題記事で僕は「是非タローのピアノが聴いてみたい」と書いたものです。
老虎ツアーでは叶いませんでしたが、いよいよその時。

「どの曲だろう・・・たぶん・・・」
と、これは会場の誰しもが「きっとLong Good-byだ」と考えたことでしょう。期待に違わず、タローは溢れる感情を隠そうともしないで、しんみりとした口調でこれから歌おうとしている曲の紹介を始めました。

長い時間をかけて、スーパースターと共にこの曲に取り組んできたこと。
サリーとジュリーの作った歌詞の素晴らしさ。
そして・・・この曲を作った頃には、本当にピーに会えるなんて思ってもいなかった、と・・・。

最後に
「Long Good-by」
と優しい声でタイトルを告げたタロー。
満員のお客さんがググッ、とステージに集中するのが肌に伝わってきます。

やっぱり、優しいピアノだ・・・タロー。
技術的に難しい演奏ではありませんが(弾きながら歌も歌うわけですしね)、僕が強く印象に残ったのは、タローの優しくも大きな手。
いっぱいに開いてコードを押さえている右手が、なんと頼もしい。
左手はシンプルなベース音で、右手はコードからコードへ移行する間に時折単音を挟みこんだり、そうかと思うと「じゃ~ん♪」とコードを突き放して弾き、穏やかな歌声だけを残して情感を込めたり。
途中からスーパースターの伴奏が噛み込むまで、お客さん全員がタローのピアノと歌声だけに身を任せている・・・尊い時間だったと思います。

ジュリーの「Long Good-by」も素敵だけど、タローとスーパースターのヴァージョンはアレンジも異なり、これまた素晴らしい名曲ですね~。

曲が終わり大きな拍手が起ころうとする中、演奏の余韻そのままに村田さんが次曲のカウントを・・・。

7曲目「

Theroad

「道」のイントロが始まり息を飲むお客さん。
タローの「Long Good-by」から、ピーの「道」へ。この流れはほとんどのお客さんが切望していたものではないでしょうか。
耳に馴染んだCDと同じ、遠山さんの暖かいキーボード・フレーズ。タローは「Long Good-by」に引き続きピアノを弾きます。

下手側からゆっくりとピーが登場。
当たり前ですがCDと同じ声で、切々と歌います。やはりイイ曲ですし、素晴らしいアレンジです。
2番からはピーのヴォーカルの合間に速水さんのリード・ギターが絡むのですが、こちらはCDと音それ自体の印象が違いました。CDは瑞々しい感じですが、生で聴くととても武骨な感じ。

ヴォーカル部が終わると、ピーはおもむろに上手側へと歩き出し、タローの弾くグランドピアノに片腕をかけ、足を交差させ立ちつくす得意の哲人ポーズ!
ピアノ越しにタローと見つめ合ってのエンディングでした・・・。

曲が終わって短いMCタイム。
タローが「Long Good-by」へのアンサーソング、「道」を初めて聴いた時の熱い感動を語ってくれたのは、この時だったでしょうか。
「歌詞がしみた。キッチリ気持ちを返してくれたな、と思った」
と言っていましたね。
ピーはピーで、タローのアレンジを絶賛(最初、「一枚の写真」とゴッチャになったのか、「タローの曲が・・・」と言いかけ、「編曲」と言い直すシーンも)していました。

タロー曰く
「前半のステージ、ここからはピーのコーナー!」
ということのようです。


8曲目「フランクミルズ」

さぁ、ドラムセットに座ったピー。
ここから2曲続けてピーのドラム叩き語りコーナーという構成になっていた関係で、ここでこれから歌う曲について2曲分、簡単に紹介してくれました。

「まず『HAiR』の曲で・・・」と説明してくれたのがこの「フランクミルズ」。ちなみに僕はまったく初めて聴く曲で、タイトルも後日先輩に教えて頂くまで分かりませんでした。ピーはちゃんと紹介してくれたんですけどね・・・僕の記憶力の問題です。
「続いて『ヘンリー8世君』・・・」とピーが言うと、「きゃ~!」と歓声が起きました。老虎ツアーでは聴けなかった曲・・・タイガース・ファンが生でこの曲を歌うピーを観るのは、解散コンサート以来ということで、多くのお客さんの胸に特別な思いがよぎったのでしょう。

さて、まずは「フランクミルズ」。いやぁ、ピー・・・凄まじく走ってましたね~。
この曲の前だったか、「一枚の写真」の前だったか記憶が定かではないんですけど、ピーが
「ドラムと歌を同時にやる・・・2倍疲れるんじゃないか、とお思いでしょう。ところが2倍どころか3倍、4倍疲れるんです。アイ高野や植田芳暁は凄かったんだなぁ、と今にして思いました」
と語ってくれました。

疲れる、というのは体力的なことと共に、神経を使うということですね。歌詞とリズムを同時にキープする神経・・・これは相当訓練を要するはずです。
ピーは歌に気をとられ、テンポがどんどん速くなってしまいました。ドラムスだけの部分は安定しているのに、いざ歌い出すと速くなるんです。これは、曲がミディアム・テンポだから起こったことでしょう。
でも、イイじゃあないですか。
カッコつけて無難な演奏に徹し安全パイを振るのではなく、必死に忘我の境地で曲に入り込み、暴走するというのはね・・・訴えるものが全然違う。観ていて「もっと行け~、走れ~!」と火に油を注ぎたくなる・・・そんな”引き込む力”がこの曲のピーにはあったと思います。

最後の方ではタンバリンの村田さんとベースの清水さんが取り囲むようにピーの方を向いて、「どう、どう!」みたいな感じに見えたのも、この曲ならではの光景だったのではないでしょうか。

9曲目「ヘンリー8世君」

Funale

引き続きドラム叩き語りですが、この曲のピーの演奏は走りません。歌詞を身体が覚えているので歌に神経をくだく割合が少ないこと、そして、元々アップテンポなのでそれ以上速く、というわけにはいかないこと・・・色々考えられますが、やっぱり”タイガースお馴染みの曲”ということが全てだったように思います。

先の曲紹介のところでピーは
「みなさんに歌ってもらうところもありますので、その時はよろしく」
と言っていました。例の「おたまじゃくしはカエルの子~♪」というアレですが、この日は何だか他に知らないヴァリエーションが多かった・・・。

確か途中のお遊び的ブレイク部では、ドラムスを村田さんに任せてステージ前方まで出てきてくれたような・・・う~ん、記憶がハッキリしません。
とにかく”あの”「ヘンリー8世君」を生で聴けたことで、タイガースファンとしての階段をまた一歩登れたような気がします。

10曲目「一枚の写真

Apictureofmymother

「2才の時に亡くなった母のことを歌った曲です」
というピーの紹介からイントロへ。この曲からピーは再びハンドマイクで歌に専念します。
染みわたるピーの声。上手いヴォーカルではありませんが、まったくてらいというものがありません。うまく纏めよう、無難にいこう、というのではなく、その時の感情に自分をそのまま預けていくスタイル・・・それがピーの「全力」のカッコ良さなのです。
やっぱり己をさらけ出せる人は強いですよ!

Aメロでは、メロディーが極端に低いこともあり、ピーはかなり緊張もしていたようです。「街で会ったなら♪」の部分を「初めて会ったなら」と歌ってしまったようにも聴こえました。

おそらくピーの声域は、この曲のBメロの部分と一番相性が良いのでしょうね。
「その気安さ、その笑顔♪」から、声のヴォリュームも上がり、感情のスイッチが入ったようです。サビの高音部も思いっきり声を出して歌い切りました。
ピーの「青空」の発音が独特。「あ」と「お」がすごく近い感じがします。

歌い終わるとホッとした表情を見せたピー。
この歌詞にはやはりただならぬ思い入れがあるようで
「歌詞への思い入れが薄らぐから、(その方がうまく歌えるので?)ドラム叩きながら歌うことも考えましたが、結局歌だけにしました」
と。
右のポケットからハンカチを取り出してみせて
「一応、ハンカチを用意してきたのですが・・・大丈夫でした」
には、思わず笑ってしまうお客さん。

「うまく歌えていたのでしょうか?」
と、照れ笑いしながら会場を見渡した時には、大きな拍手が沸き起こっていましたね・・・。

11曲目「楽しいときは歌おうよ」

Apictureofmymother_2

ピーのMCの中で貴重だと僕が感じたのは、この曲を歌う前に語ってくれた「楽しいときは歌おうよ」制作秘話でした。
キャッチーな「ランラン、ランラン、ラランラ~♪」という、曲の最初と最後に登場する要とも言うべきキメ部が、ピーの最初の作曲段階ではまだ存在していなかったのだそうです。
はじめてタローに曲を聴いてもらった時、タローは
「この曲、何か足りないよ」
とアドバイスしてくれたのだとか。
そこでピーが新たに考案したのが、あの「ランラン、ランラン・・・♪」だったんですね。
ちなみにこのハミング部、コード進行はサビと同じになっていて、色々なコーラス・バリエーションも可能。まぁその辺りについてはいずれ楽曲考察記事で改めて書こうと思います。

ピーはそういったいきさつを説明しながら、2度に渡って「ランラン、ランラン、ラランラ~、ラ~ラララ、ラララ~♪」をきっちり通してワンフレーズ、言い聞かせるように歌っていたので・・・「これはお客さんにも歌ってもらうつもりだな!」と心の準備をした人が多かったのではないでしょうか。

さぁ、曲が始まります。
飛び跳ねながら歌うピー。「道」「一枚の写真」とは明らかに歌へのスタンスが違います。やっぱりピーは、曲のコンセプトに素直に気持ちをシンクロさせるタイプなんですね。
老虎ツアーの「ジャスティン」で魅せてくれた”カニステップ横移動”も登場。不思議な動きで跳ぶようにしながらスルスルと横へ移動していくピー独特のこの動きを見ると、今年の初めに老虎ツアー・鹿児島公演で、目の前30センチの距離を駆け抜けていったピーの雄姿を思い出します。

最後のハミング部はCDよりも多めにリフレインされ、ピーが客席にマイクを向けるシーンが2度ありました。2度目には「あれ、どうしたの?」といった感じで耳に手を当てて「みんなの声、聴かせて」ポーズもキメてくれたピーでしたが・・・前の方のお客さんは歌っていらっしゃったのでしょうか。
ピー先生すみません、後方席の僕は恥ずかしくて参加できませんでした・・・。
でも手拍子は力いっぱい、最後までやりきりましたよ!この曲の手拍子が「シー・シー・シー」だということに、みなさまは気づいていらっしゃるのかな・・・?

リフレインが続く中・・・突然物凄い勢いで緞帳が降りてきました。完全に幕が降りてからも、ピーの声とスーパースターの演奏は、まだまだ終わっていませんでしたね。
もう少しゆっくり、少しずつ降ろすことはできなかったのかな、あれは・・・。

「これから15分間の休憩に入ります」
との場内アナウンス。休憩時間に流れてきたBGMは、ヤードバーズの「フォー・ユア・ラヴ」でした。
きっと「夢追いかけたあの頃」が選曲テーマなんですね、タロー。


(後編に続きます!ご覧の通りの文量ですので、ひょっとしたら執筆に時間がかかり、ジュリーの楽曲考察記事と更新順が前後してしまうかもしれません。どうか気長にお待ちくださいませ・・・)

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2012年11月17日 (土)

2012.11.3 東京国際フォーラムA 沢田研二『3月8日の雲~カガヤケイノチ』ファイナル セットリスト&完全レポ

(註:早いものでLIVE当日から2週間が経ちました。
拙ブログでは、ゆるゆると毎日少しずつ加筆してきたレポがようやく11月17日に執筆を終えました。例によりまして、更新日付を移動させて頂いております。記事完成まで長々とおつき合いくださり、本当にありがとうございました!)

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終わってしまいました・・・。
11・3東京国際フォーラムA『3月8日の雲~カガヤケイノチ』に参加し、無事にツアーが終わるのを見届けてまいりました。

ジュリーのツアーがひとつ終わるのはいつでも寂しいんですけど・・・今回はことさら寂しく感じられます。
自分が今年の新譜にトコトン入れ込んでいるのを、参加を重ねるたびに自分で実感していった・・・そんなツアーでした。

あともう2ケ月待てば、お正月コンサートです。
普段であれば、終わったばかりのツアー・セットリストと重複しないナンバーに想いを馳せて待つのですが・・・今は、お正月にもう一度『3月8日の雲』の4曲を歌って欲しいと思っている自分がいます。
ただ、それはちょっと虫の良い考えなのかも・・・。技術的にも精神的にも、ジュリーにとって本当に喉と身体と心を酷使する4曲なのでしょうからね。無理して欲しくない、という気持ちもあります。

生で聴く新曲のジュリー・ヴォーカルの凄さはもう何度もこれまでのレポで語り倒してきましたが、ファイナルで再確認したこと・・・それは、この4曲での鉄人バンドの演奏が凄過ぎる!ということです。新譜4曲、加えて「涙色の空」に関しては、もうこの4人でしかあり得ない、そう簡単には他の誰も入ってこれない、という域に達していると思います。
ジュリーの志をすぐ近くで汲み取った上での、この演奏。プロだから上手いのは当たり前ですが、ジュリーにとってその上でもう1段階大切な何か・・・その境地に鉄人バンドの4人は辿り着いていると感じましたね・・・。
そんな演奏の凄味については、この後、曲ごとのレポートで詳しく書こうと思っています。

余談ですが・・・当日ご挨拶させて頂いたみなさまお気づきの通り、僕は髪が伸び放題になっていました。夏の終わり頃から切ろう切ろうと思いながらもバタバタしていて機会が無く、とうとう「どうせなら今ツアーの無事の成功を願掛けしよう」と勝手に決めて、ファイナルを迎えてしまいました。
もうそれは成就したわけですから、中野サンプラザまでにはスッキリしておかないといけませんね・・・。

僕はこのファイナル、2階最前列ほぼセンターというお席を頂きました。
チケットを受け取った時、たぶんスタンディングはできないだろう、と思いました。そのぶん、自分の中で絶対に忘れられないセットリストになるであろう今回のツアーのステージ全体を、じっくりと目と耳に焼き付けるにはうってつけの席に恵まれた、と大いに喜びました。
その意気込みは、良い意味で裏切られることになるのですが・・・。

それでは、いつものようにセットリストを順に追って、素晴らしく盛り上がったファイナルのステージを振り返っていきましょう。
開演!

1曲目「SPLEEN~六月の風にゆれて」


Panorama

いつもと変わりなくスタート・・・ジュリーと鉄人バンドはそうでも、お客さんはそうはいきません。
入場時の拍手は、そりゃあ凄かった・・・。
ツアー初日とファイナルの醍醐味のひとつは、お客さんの雰囲気も含めた独特の盛り上がりです。初日は「どの曲をやってくれるのか?」「おおっ、この曲で来たか!」という新鮮な空気。一方ファイナルは逆に、セットリストの盛り上がり所をステージ、客席双方が熟知した一体感が楽しめます。

この1曲目では固唾を飲んでジュリーの歌に聴き入るお客さん。ツアーはこれで最後、ジュリーのどんな声も、どんな表情も見逃すまいとする集中した雰囲気を感じます。
ジュリーの艶やかな歌声に、聴き手はまず自分の心をステージへ真っ直ぐに向けることができますね。初っ端からギンギンのロックで飛ばすのも良いけれど、こういう静かな曲でスタート、という構成も良いものだなぁ、と改めて感じました。

柴山さんの「Ask me why♪」がいきなりの爆音コーラスでしたね~。
後で休憩の項で書きますが、僕はLIVE前に日本橋三越デパート新館で開催の『ザ・ビートルズ展』を楽しんできました。それもあってこの1曲目「SPLEEN~六月の風にゆれて」にいきなりどっぷりと入っていけたような気がします。
この曲とビートルズとの関連性は、「エリナー・リグビー」風のアレンジだけに留まらず、今ツアーで柴山さんとGRACE姉さんが聴かせてくれたコーラス・パートの歌詞などにも、色々とオマージュ元があるんですよ~。

2曲目「そのキスが欲しい」


Reallyloveya

「最前列はスタンディング禁止だろうから、今日は座ってじっくりとステージと客席の盛り上がりを目に焼きつけよう」
事前にそう決意して臨んだファイナルでした。プレプレ神奈川県民ホールの時は立てませんでしたからね。

そしてこの2曲目。
「そのキスが欲しい~♪」のS.E.が鳴るやいなや、同じ最前列のお客さんが一斉にドドド~ッ!と立ち上がったのでビックリ。
「ヤバイんじゃないの?係員さんが注意しに来るんじゃ・・・」
と思ってしばらく座っていましたが、どうやらそんな雰囲気は微塵もありません。
最前列のスタンディングオッケ~なのか、国際フォーラム!
立ち上がると、広い広い1階席を真下に一望できます。もちろんみなさん立ちあがって大盛り上がり・・・圧巻の光景です!

実は少し心配していたのです。昨年の老虎ツアーと違って、ジュリーのソロだとフォーラム満員とまではいかないんじゃないか、満員になったとしても、みんなが盛り上がるという光景にはならないんじゃないか、なんて・・・。
とんでもない杞憂でした!一杯に埋まったお客さんが立ち上がって躍動しているのが、見下ろしていてハッキリと分かります。
また、終演後にお話した1階席の先輩は、この時逆に2階席を見上げたそうで
「フォーラム2階席総立ちの光景に感動した」
と仰っていました。この2曲目「そのキスが欲しい」のイントロの瞬間に、『3月8日の雲~カガヤケイノチ』ツアー・ファイナルの大成功を、参加したすべてのお客さんが確信したでしょう。

この日のジュリーは前半思いっきり飛ばし、後半のバラード4曲で喉を調整しつつ歌い上げ、あとはもう燃え尽きるんだ!という印象でした。
「そのキスが欲しい」で早くもスイッチが全開で入った感じでしたね。

3曲目「コバルトの季節の中で

Tyakoruglay

さえぎるものなくステージ全体を見下ろせる今回のお席・・・2階最前列はプレプレツアーの横浜公演で一度体感しているけど、やっぱりとても気持ちが良い。有り難いことです。
Bメロに入ると同時に、ゆっくり下手側へと歩を進めるジュリー。そんなしなやかな動きのひとつひとつが僕の席からはよく分かります。

演奏もじっくり観たけど・・・この曲の柴山さんは本当に忙しいですね。なんたって、CD音源のリード・ギターとアコギ・アルペジオのパートを一手に引き受けているのですから。どうしても下山さんがフィル以降、ストロークでベース音を補わなければならないので、そういう配置になるんですけど。
「よく似合いますね♪」から「何か悲しいこと♪」へのフォームチェンジに苦労することを承知の上で、敢えて曲想重視でハイコード・アルペジオを弾く柴山さんの志にも、改めて拍手を送りたいです。

~MC~

「寒い中、ようこそ『3月8日の雲~カガヤケイノチ』へお越しくださいました!」
無事にこの大千秋楽を迎えることができました、と感慨深げなジュリーです。

本当に例年以上に大変なツアーだったと思います。高音で喉を酷使する今回のセットリスト。ずっと近年のレコーディングでは避けてきた「ソ#」以上の高音が新曲のうち3曲もあって。
その新譜を引っさげてのツアー・・・正に「本気」のジュリーを実感できました。

「今日が今年の仕事納め・・・」
とおどけたように言うと、お客さんがつられて笑います。ジュリーは続けて
「ま、実際はまだいろいろとやることもあるんですけどね」
と。

2階を見上げてくれて
「東京国際フォーラム、いっぱいのお客さんです!」
という言葉にまた感動!
「それでは、張り切って・・・鉄人バンドともども、大いに歌います!」

4曲目「1989」

Boukyaku

本当に「真上から急角度でステージ全体を見下ろしている」という感覚のフォーラム2階最前列。この日は照明の効果もたっぷり楽しみました。
イントロではまず、アルペジオを弾く下山さんに丸いスポットが当たります。続いてGRACE姉さんに別の丸いスポットが当たり、力強いドラムスを受けて、次にリード・ギターの柴山さんには前の二人よりも一層白色を強調した光が当てられるのですね~。

そうそう、10月4日付の下山さんのブログに、ギターを弾きながらニヤリと横を見据えるカッコイイ下山さんの写真がアップされていましたけど、僕はそれを見て何の気なしにギターを手にとり写真の下山さんと同じフォームで「じゃん、じゃん、じゃん♪」と上から4、3、2弦を指で鳴らしてみたら・・・何とこれが「1989」のイントロではありませんか!びっくりしましたよ・・・。
写真での演奏曲はひょっとしたら別の曲なのかもしれませんが、「1989」のイントロのアルペジオは間違いなくこのフォームで弾いていますね。まったく同じ音が鳴ります。

「はがれ落ちてくプ・ラ・イ・ド♪」のアクションに象徴されるように、ジュリーのヴォーカルとアクションは相当気合が入っていました。柴山さんの間奏へと入っても、ジュリーの雄叫びがしばらく続いていたほどでしたね。
その柴山さんのソロもカッコ良かった・・・この日の間奏は大きく分けて、サスティン・フレーズ→セーハ移動による複音フレーズ→鬼の速弾き(←「くあ~っ」付)、と3つのパターンに分けられていたようでした。

5曲目「届かない花々

Croquemadame

これまた渾身のヴォーカル。
例によって上手側、下手側それぞれで立ち止まっての熱唱もあります。胸トントン、のキメポーズ、この日は上手から中央に戻ろうとするタイミングでした。

同じ2階最前列で僕よりもセンターブロックにいらしたお姉さまが、ジュリーと「手をつないで」いる様子が視界の片隅で分かりました。ああやって手を思いっきり前方にさし出せるのも、高い位置の最前席の特権なんですねぇ・・・。

下山さんの激しいストローク、この曲ではアップとダウンの振り分けは特に決めていないのかなぁ。
1番と2番の間のアコギの見せ場で、思いっきり溜めてから振り上げるダウン・ストロークが強く印象に残りました。

6曲目「涙色の空

Namidairo


何度聴いても素晴らしい、ジュリーのヴォーカルと鉄人バンドの演奏。
リリースされた時、初めはこの曲をプライヴェートなラブ・ソングだと思い、しばらくしてジュリーの気高い志と、”完全1人1トラック体制”のレコーディングを敢行した鉄人バンドとの絆が軸になっていることに気がつき、普遍的なテーマを感じるまでになりました。

そして今ツアー。
多くのみなさまと同じく、僕も「約束の地」「明日は晴れる」、そしてこの曲にも『Pray for East Japan』を感じずにはいられません。

君の傷跡消えないけれど
抱きしめて行くしかないのだね

悲しげな短調から導入した「涙色の空」が、”救い””希望”の長調へと転調する・・・その最初の歌詞部です。泰輝さんのピアノのうねり。曲が躍動を始める瞬間。
この詞に「カガヤケイノチ」での「笑顔で前を向くしかないのですね」と共通する、ジュリーの”自分の言葉”を感じ、胸が熱くなりました。

ドラムスとアコースティック・ギターが加わった2番で、照明がステージ全体を明るく照らすのも、暗がりからひとすじの光を見出したかのような演出で、曲想にピッタリ合っています。
そして、万感こめて噛み込む柴山さんのエレキ・ギターから
「君を取り戻し 愛を真っ直ぐに」
と続く歌詞。

必要最低限の渾身の演奏と、ジュリーただひとりの声。
たったそれだけの音、しかもバラード・ナンバーがこんなにも重厚に、圧倒的な迫力でに身体にぶつかってくるのは、一体どうしたことでしょう。

繋がって行くこと
かさねることの重さ想う

誰も踏み入っていない地をこれから進んでいくんだなぁ・・・と、改めてジュリーと鉄人バンドの志を感じた、ファイナルの「涙色の空」でした。

7曲目「3月8日の雲

38


ファイナルでも、この曲の前にジュリーの短い新曲紹介がありました。

「(今回の新曲は)『Pray fir East Japan』というテーマで鉄人バンドのメンバーひとりひとりに曲を作ってもらい、それに私が詞をつけました・・・すべての被災地に、祈りを込めて歌います」

今日は絶対に忘れられない、と出かける前にチェックした自分の左腕。ジュリーから贈られた黄色いリストバンドを、この時僕はもう一度確認したのでした。

僕は新譜4曲について先に、ヴォーカルと演奏が凄まじい、と書きましたが・・・まず前提として、それぞれが楽曲としてレベルが高く、かつ作曲者の真剣な思いが込められた素晴らしい作品であることを忘れてはいけませんよね。

ジュリーの言葉にもあったように、今回の新曲はすべて曲先です。まずメロディーがあり、その上でジュリーが歌詞を作った・・・つまり鉄人バンドのメンバーの作曲の時点では、曲にどんな歌詞が載るのかまったく分からなかったということですね。
ただ、ジュリーからの『Pray for East Japan』という命題があったわけですから、メンバーそれぞれが昨年の3・11以降について考え、それぞれの思いをメロディーやコード進行、アレンジ・アイデアに託した、ということは確かです。
結果、奇跡のようにまったく違うタイプの4曲が完成しました。

まずは1曲目「3月8日の雲」。
作曲者である泰輝さんが思いを込めた曲想は、「怒り」「やるせなさ」といった、激しい感情でした。
温和で、鉄人バンドの中ではヤンチャな末っ子っぽいイメージの泰輝さん。作曲家としてもこれまでジュリーには「無事でありますよう」「護られているI Love You」「涙色の空」など、優しいバラードを多く提供してきました。
しかし泰輝さんが今回、3・11以降を思った時に込み上げてきた感情は、激しい憤りだったのですね・・・。
その表れが、鋭角的でハードなコード進行。縦に切り刻むような16ビートのリズムです。

この日は2階最前列ということで、キーボードの鍵盤と、その上をすべる泰輝さんの”神の両手”をハッキリ見降ろすことができました。これがもう少し後ろの席ですと、距離が離れて角度がやわらかくなるせいか、下段のキーボードが隠れてしまうんです(老虎ツアーで「散りゆく青春」などのアルペジオ音の出所が当初分からなかったりしました。しばらく後になって、泰輝さんが下段のキーボードを左手で弾いていたことを確認しました)。

1番「誰かの、想像も・・・」の部分と、2番「泣いてもしかたない・・・」の部分はオルガンで同じフレージングがあるんですけど、泰輝さんの弾き方は1番と2番とではまったく違っていました。

1番では、左手で低音から高音に向かって”切り刻む”ように弾きます。
着地点には右手が待っていて、そこに左手をぶつけて音を止めるのです。「超えてた罰か」直後の細かいフレージングは、左手にぶつけられた瞬間に繰り出される右手の役目です。

一方2番では、左手はずっと低音をカバーし、オルガンのフレーズはすべて右手での演奏。ここでは高音から低音に向かって”振り払う”ように弾きます。
音を止める位置は固定されていません。ですから1番に比べると、1音1音の鳴っている時間は僅かながら長いです。
増幅する激しい感情を象徴するかのように、大きなアクションで泰輝さんの右手が鍵盤を振り払う・・・そんな感じですね。

実は初日の渋谷公会堂で観た時にはこの「3月8日の雲」について、ジュリーのヴォーカルは凄いけれど、鉄人バンドはまだ”生演奏”としての完成には至っていないように僕には感じられました。
今思うとそれは僕の至らなさからくる思い違いだったのか、それとも鉄人バンドがその後めざましい進化を遂げたのか・・・それは分からないのですが、とにかくファイナルのこの曲の演奏には本当に痺れました。

CD音源より速めのテンポにも関わらず、ジュリーのヴォーカルの隙間を縫って、CD音源ではストロークの箇所にもオブリガードを入れてくる下山さんのアコースティック・ギター。
Bメロ直前のみをストロークにすることで、「ここから曲の感じが激しくなるよ」と聴き手に合図してくれているのです。

GRACE姉さんのドラムスも凄い。見せ場の”鬼姫ロール”ももちろん凄いですが、Bメロのキック連打がズンズンと伝わってきます。
実はこの曲の演奏中、足元が揺れているような感覚がありました。曲が曲だけに「えっ、地震か?」と思わず身体を硬くしてしまいました。そうではなさそうなので「もしかして、ドラムスの低音がここまで?」なんて考えてしまったほどでしたが、実際はお客さんの動きに呼応して、出っ張ったステージが微妙に揺れていたようですね。
こういうことも、最先端である2階最前列の醍醐味だったと言えましょう。

柴山さんのエレキギター・カッティングは1番が終わってからの出番。
びわ湖で気づいた、出番を待つ間ずっと身体を小刻みに縦に動かし、16分音符のタイミングを計る柴山さんの様子はこの日も確認できました。
2番Aメロのジュリー・ヴォーカルに呼応する、ギリギリと切り刻むカッティングももちろん素晴らしかったです。

そしてジュリーのヴォーカルはまさに渾身、絶唱。どう表現したら良いものか悩みますが・・・とにかくジュリーの「本気」は、間違いなくすべてのお客さんに伝わっていたと思います。

8曲目「恨まないよ

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新譜からの2曲目・・・ジュリーからの命題を得て作曲者のGRACE姉さんが『Pray for East Japan』に込めたのは、「悲しみ」の感情でした。
短調のバラードです。
女性だからこそストレートに表現できた、大きな悲しみ。今年このテーマで作曲を担った鉄人バンドのメンバーに女性がいたことを、その感性を、ジュリーファンとしては大切に、誇りに思いたい・・・そんな思いに駆られる曲です。

もちろん、ジュリーも曲想にストレートに合わせた歌詞を載せました。新譜の中で詞と曲のシンクロ度は抜きん出ています。GRACE姉さんが曲に込めたものは、ジュリーの歌詞そのままなのだと思えます。

サビ部、ハーフ・オープン・ハイハットで狂おしく演奏されるドラムス。
その力強さと切実な訴えが胸に迫ってくると、「恨まないよ」のGRACE姉さんのアトノリのハード・ロック・ドラムスは唯一無二だ!と叫びたくなります。まさに歌心を持つドラマー・・・Aメロでの繊細な演奏があってこそ、のハードなドラムスなのです。

ディレイの効いた細かい刻みでステージ全体を緊張感に包み込む、下山さんのギター。
静かなるオルガンと、炸裂するシンセベースの対比でアレンジ変化を一手に担う泰輝さんのキーボード。
震えるように体を左右上下に揺らし熱演される、柴山さんのリード・ギター。

GRACE姉さんの悲しい曲に寄り添い最高の演奏を見せる、鉄人バンド三人の男性メンバーです。

そして、ジュリーのヴォーカル。
これまで何度も何度も書いたように、この曲のジュリーの生の歌声は本当に凄い・・・圧倒的です。
ただ、この日は1番の「そばにいたのに・・・」あたりでジュリーは嗚咽してしまいました。


楽曲考察記事の際にも書いたのですが、僕にはこの曲から想起する具体的な光景があります。1年以上経った今でも、それが消えることはありません。
ジュリーにも、作詞の際に心を寄せた、ハッキリした「地獄それ以上」の光景があるのでしょうか。ファイナルのこの日、歌いながらその光景が頭をよぎったのでしょうか・・・それは分かりませんが、サビの絶唱部では嗚咽は止み、あらん限りの力で声を伸ばしていたジュリーでした・・・。

9曲目「F.A.P.P

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新譜からの3曲目。
作曲者・柴山さんが『Pray for East Japan』に込めたのは、「明るさ」「元気」だと思います。
いわゆるハード・ロック的な元気ではなく、胸がキュンとなるメロディアスなパワー・ポップ。斬新なコード進行に載せた、ポップなメロディー。本当に素晴らしい曲です。
世間ではジュリーの歌詞が波紋を呼び、僕自身も色々と考えさせられましたが、今ではこの曲について、詞とメロディーの乖離などまったく無かったのだ、と思えますし、ジュリーも、柴山さんと同じ気持ちをこの詞に込めていると感じます。
明るい「声」が沸きあがる曲です。

さて、横浜公演から「no 長崎 more 広島」をオクターブ下で歌い始めたジュリー。
直前の札幌で原曲通りに戻ったという噂を聞き、特にこの部分に注目していたところ、この日は音を下げることなく原曲のメロディーのままでしたね。

横浜以降のいくつかの会場でジュリーがオクターブを下げて歌っていたのは、やはり喉の調整だったのではないでしょうか。「ス・ト・リ・ッ・パ・-」の高音に苦労し始めた時期とも合致しますし・・・。
改めて考えてみますと。
ここは「no」「more」のコーラス部をジュリー自らが歌う、というのが、ツアーが明けて初めてお客さんに示された大きなポイント。
ところが一人で歌う場合のメロディーは
、低音から高音への飛躍、その音程の振り幅が通常ではあり得ないほど激しい。当然、喉を酷使します。それは、同じ男声の僕が一緒に歌ってみてよく分かることです。
このため、長いツアー期間の中で、ジュリー自ら調整の時期を必要としていたのではないでしょうか。
ファイナルでは、高音部で身体を伸び上げるようにして完璧に歌い上げていました。

この曲も、初日の時点では演奏に少し違和感のあった僕でしたが、ファイナルでは鉄人バンドに見事に撃ち抜かれました。
柴山さんのギターは単音とバッキングの切り替えがかなり忙しいのですが、先述の「no 長崎」直前の一瞬のソロなど、メロディアスなフレーズを鋭さをもって弾いていました。

「恨まないよ」とはガラリと雰囲気を変え、タム2発のフィル・インから元気なリズムを奏でるGRACE姉さんのドラムス。
最初から最後まで、複雑なコード進行のバッキングに徹する下山さん。
そして、パワーポップには欠かせない和音アクセントを、ピアノの明るいアレンジで纏め上げた泰輝さんの職人技。
自分の席からよく見えたせいでしょうか、僕は泰輝さんの演奏に特に見入ってしまいましたね・・・。

演奏が終わるか終わらないかのうちに連呼されたジュリーの「鉄人バンド!」のシャウトも、とても明るく聴こえました。

10曲目「カガヤケイノチ

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新譜4曲の大トリ。
作曲者・下山さんが『Pray for East Japan』に込めたのは「優しさ」です。鉄人バンドの中では最もハードなイメージのある下山さんが、ジュリーの命題を得てこんなに優しい曲を書いたのです。
東北出身の下山さん・・・思うところがあったのでしょう。

リズム解釈としては、「揺れるワルツ」。
世の「揺れるワルツ」というのは、「カガヤケイノチ」に限らずそのほとんどが優しい曲なのです。ジュリー・ナンバーで言うと「夜明け前のセレナーデ」などがそうですね。

スネアのタッチも優しい、GRACE姉さんの女性らしいアプローチ。
泰輝さんのキーボードは、音色をチェンジしつつ曲の進行を完璧にバックアップします。
自らの「F.A.P.P」にもヒケをとらない斬新なコード進行を丁寧に追う柴山さんのギター。大宮で確認した「Em→Emmaj7→Em7→C#m7-5」の箇所が特に心に残りました。

そして、下山さんのアコギからエレキへの切り替えは、今ツアーで大きな見所のひとつとなっていましたね。
GRACE姉さんがロールへと移行すると、ゆったりとした動きでギターを替える下山さんの、なんと自然体で奥ゆかしいことよ・・・。
鉄人バンドの演奏だけとっても、CDの構成としてもそうですが、このツアー・セットリストの前半を締めくくるにふさわしい大名曲。そこへきて生のジュリーのヴォーカルで聴いていると、何か言いようのない感動が押し寄せてくる曲です。

”希望”のハ長調へと転じての、下山さんのリード・ギター・・・ファイナルでも、CDとは違ったいつものフレーズを弾いていました。
勇気沸き上がる素晴らしい間奏部で、ジュリーは両腕を横に上げ、何段階かに分けて(そのひとつひとつに、羽ばたくようなしなやかさがあります)徐々に腕を上へ上へと持ち上げ、ピタリと静止します。
下山さんが最後のフレーズを弾きながら定位置に戻っていった、その時。

「さぁ、みんな一緒に!」

ジュリーがそう言ったのです。
これまでは、指揮をとって暗に「みんなも歌ってね」と示してくれていたエンディングのサビ繰り返し部を、この日は遂にハッキリと口に出して・・・。

その瞬間、新譜の考察記事を書いていた春からの色々なことが頭に甦り、こみ上げてくるものがありました。
4曲どれも大好きな曲なのに、ブログのお題として書くことの辛さが宿命づけられていた新譜でした。その辛さを最後に救い、洗い流してくれたのが「カガヤケイノチ」のこのエンディングのサビ部でした。
あの時も、何度も何度も歌っていたっけ・・・。

こみあげてきた感情のせいで声が詰まり、僕はうまく大合唱に参加することができませんでした。
でも、周りのお客さんの歌声が聞こえてきたのが、とても嬉しかった・・・。
「トワニトワニト」の余韻の後、大きな拍手が会場を包み、前半のステージが終わりました。

繰り返しになりますが、生で聴く新譜の4曲は本当に素晴らしい!ジュリーのヴォーカルも、鉄人バンドの演奏も。
今ツアー、僕がそれを体感できたのは計7回。やっぱりこの日のファイナルで生で聴いた新譜4曲は、その中でも一段と感動的で、心に残ったなぁ・・・。

~休憩~

さて、ここではレポもひとときの休憩コーナー。
つかの間、LIVEとは無関係のゆるいお話におつきあい下さいませ。

この日、フォーラムに向かうまでに立ち寄ったのは、神保町と日本橋。珍しく、僕の用事にカミさんをつき合わせるというパターンでした。
まず神保町では、文化の日の週に合わせて古書祭りが行われていました。
それ自体はあまり掘り出し物も無く、結局はいきつけの店で『YOUNG SONG』『HEIBON SONG』といった歌本を漁ることに。
今回入手したのは、いずれもこれまで五線譜を持っていなかった「きめてやる今夜」「渡り鳥はぐれ鳥」が掲載されている、2冊のバックナンバー。

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2曲ともカラーページでの掲載ではなかったのが残念ですが、いつかは考察記事を書く身としては貴重な資料を得て、まずまずの成果でしたね。
しかし・・・「渡り鳥はぐれ鳥」って、当時こういうクレジット明記が普通だったのでしょうか?

続いて、日本橋は三越デパート新館へ。。
ここでは、『ザ・ビートルズ展』が開催されていました。

デビュー50周年ということで色々と盛り上がっているビートルズ。僕も相当なビートルマニアだと自負していますが、僕がこの貴重な展示開催を知ったのは、何とじゅり風呂さんの記事だったですよ~(majulineko様ありがとうございます!)。
知らずに開催期間が終わってしまっていたらどれほど後悔したことか。しかも有楽町とは目と鼻の先・・・これはもう、ファイナルの日に行くしかない!と決めていました。


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展示内容は素晴らしいものでした。ありきたりの人寄せ開催ではなく、主催者のビートルズへの愛情がヒシヒシと感じられ、マニアとしても大変に満足のいく構成になっていましたね・・・。
展示品の写真撮影はNGでしたので、パンプに載っているものの中からひとつご紹介。


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ポール・マッカートニー自筆のセットリスト。
「Straight in」と、楽曲の繋がりをどうするのか、といったことについても書かれています。こういうことはキッチリ決めておきたい、というポールの主体性は、ジュリーにも共通するところがありそうです。

その他の展示で特に心惹かれたのは、ジョージ直筆のコード進行表や、スチュアート・サトクリフの手紙など(いかにも孤高の芸術家、といった感じの筆跡でした・・・)。
スチュやピート・ベストの資料に力が注がれていたのは想定外のことで、とても楽しめました。

といったところで、この日の僕のビフォーは大満足、大充実。ジュリーのツアー・ファイナルにふさわしい、本当に良い一日だったのでした。

それでは休憩はこの辺りで終わり!ステージ後半のレポへと進んでいきましょう。

11曲目「約束の地」

Beautifulworld

ここからの後半初っ端の曲並びがまた素晴らしい・・・。
新譜の重さ、迫力と真剣に対峙したお客さんの心を癒やすバラード4曲は、びわ湖のレポートで僕が、京極夏彦さんの小説にインスパイアされて”憑き物落とし”のようだ、と表現してしまったコーナーです。

ジュリーは前半の熱唱、絶唱で喉を少し痛めたのか、このバラード・コーナーでは発声を変えてきたようでした。
「喉を痛めても、喉の別の所を使ったりしてやっている」と語っていたこともあったジュリー。ファイナルで、そのテクニックの駆使に気づいたお客さんはそう多くはなかったかもしれません。発声を変えたと言っても、いつものように素晴らしいヴォーカルでしたからね。

幻想的な照明もよく見えた2階最前列。
エンディングの鉄人バンドのコーラスと演奏に身を預け、優雅に舞うジュリーの両腕・・・これまた何度観ても素晴らしい。
息を飲みジュリーに見入る1階席のお客さんの様子が、上から見ているとステージのジュリーと同じ立ち位置、1つの風景の中に一体となっているように感じられました。

12曲目「君をのせて

Acollection

この曲は、41年前の11月1日のリリースだったんですね。
1971年というリリース年は把握していましたが、日付の認識はしていませんでした。ファイナルを目前にして、僕の周囲でも何人かの先輩がこのジュリーのソロ・デビュー・シングルのリリースに想いを馳せていらっしゃいましたね・・・。

ジュリーは今回のセットリストについて「みなさまお馴染みの曲がほとんど無い」なんて言ったりしましたけど・・・確かに「時の過ぎゆくままに」と、アンコールで歌われる2曲以外は、世間的な認知度は低い曲ばかりかもしれません。
しかしそんな中、さほど有名なヒット曲とは言えずとも、激動の70年代をジュリーと共に過ごしてきたファンにとって、”特別な曲”・・・ジュリーをよく知る人がよく知る曲、と言うべきナンバーが3曲。それが「コバルトの季節の中で」「気になるお前」、そして「君をのせて」ではないでしょうか。

エンディングの優雅なお辞儀は、ジュリーのデビュー当時からのお客さんへの信頼の証なのかもしれませんね。

13曲目「我が窮状」

Rocknrollmarch

さて、セットリスト後半スタートのバラード・コーナーでジュリーが発声を変えてきた、と先に書いたんですけど、一番それが分かり易かったのがこの「我が窮状」ではなかったかなぁ。

例えば「英霊の涙にかえて♪」の箇所。
「英霊」の「えい♪」は低い「ド」から高い「ド」へのオクターブ移動で、跳ね上がりに喉の気合が要るメロディーです。これまではジャストに高い「ド」の音の「い♪」にスパ~ンと移動していましたが、ファイナルでは
「えいぃ~~~~いれ~いの♪」
といった感じで、最初の「い」の発声を「え」と同じ低い「ド」の音で歌い、スッと力を一度抜くようにして「~~~~」と伸ばしながら高い「ド」まで徐々に昇っていく、という歌い方をしていました。

「あぁ、ツアーも最後に来て喉に相当負担がかかっているんだな」と思いました。
バラードではテクニック。ロック・ナンバーではシャウト。
それが、LIVEでの発声の術を知り尽くしたジュリーだからこその乗り切り方。こういうことも、ファンが最高に素晴らしいものを見せて貰えている、ということだと改めて感じた次第です。

14曲目「時の過ぎゆくままに」

Ikutuka

ツアーを通して感じてきたことですが・・・やっぱり大ヒット曲の威力というのは凄い、とまたしても実感。イントロ一瞬で会場の空気が変わる、と言いますか・・・。フォーラムでも「うわぁ~」というお客さんの歓びのため息が充満していくのが分かりました。

それにしても、大きな会場が本当に似合う曲です。
僕は後追いファンなもので・・・そう感じた時に思い出すのは『ジュリー祭り』のこの曲なのです。
ヒヨッコなりに「あの曲もやった、この曲もやった、あと残っている曲と言えば・・・」と指折り数えつつ、まだ「時の過ぎゆくままに」をやってない!という意識がハッキリあった中で始まったあのイントロ。僕もYOKO君もその瞬間、「うわぁ~」という空気を、ドーム2階席から自然に送っていたんだと思います。
そういうことが、この東京国際フォーラムという広い会場で今年も起こったんですね・・・。
やっぱり大名曲、素晴らしい力を持った曲なのですね。この先何度でもずっと聴き続けたい曲だと思いました。

15曲目「ラジカル・ヒストリー」

Dairokkan

バラード・コーナーが終わり、いよいよ佳境、怒涛のロック・ショータイム!

今ツアーではここで
「さぁ・・・盛り上がる!かな~?」
なんて感じでジュリーがお茶目に景気をつけてからイントロ、というパターンがいつしか定着してきていましたが・・・何ですか、後で多くの先輩方が仰っていたところによると、この日ジュリーは

「さぁ・・・盛り上がよ!」

と言ったんですって・・・?

低い声でしたし、僕は普通に「盛り上がるよ」と聞こえたんですけど、どうやら「いくぞオマエら!」みたいなニュアンスの、王様・ジュリーの命令形だったらしく。みなさま萌え萌えのご様子でした。
ちゃんと注意して聞いときゃ良かった~。


そして・・・思えば昨年夏、タイガース・ナンバーのセットリストを頑張っている最中に突如襲ってきた四十肩。苦節1年半、ここへきてようやく左腕が上に向かって上がるようになりました。
老虎ツアーでは”おいっちに体操”ナンバーが無かったから良かったようなものの(「シーシーシー」のイントロがキツかったけど)、今ツアー前半ではまだ思うように腕が伸びずにいたのです。それがいつの間にやら・・・。ひょっとして、このツアーの定期的な参加がそのまま適度なリハビリ運動になっていたのかな?
そんなことも、改めてジュリーに感謝!です。

16曲目「気になるお前

Julie6


註:すみません・・・この項は、一度書いた僕の文章に大きな記憶違があり(途中から「マンジャーレ!」の話になっていた)、再度書き直したものです。ご指摘くださった方々、ありがとうございました。

さぁ、今回のツアー・ファイナルは何と言ってもこれです!
博多公演のこの曲でジュリーが客席にマイクを向けてくれてお客さん大合唱(どうやらステージ上でのちょっとしたアクシデントに際しジュリーが機転を効かせた、という経緯があったそうです)の噂を聞き、「いいなぁ・・・」とうらやましく思っていたのですが、実はファイナル当日の僕はそんなことはすっかり忘れていて。
とにかくジュリーの動きとヴォーカル、鉄人バンドの演奏を、気合を入れてあらん限りチェックして帰るぞ!と集中して観ていました。

鉄人バンドの間奏は、下山さん→泰輝さん→柴山さんのリレー(書き直す前の文章では、この辺りが「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」の記憶とゴッチャになっていました。大変失礼いたしました)。
ツアー後半から話題になっていたのは、泰輝さんのオルガン・ソロで柴山さんがキーボードに覆いかぶさるような体勢で何やらカックンカックンと激しく動いていて、それを受けてジュリーが次の柴山さんのソロ直前に「クレイジー・カズ!」とシャウトしたというお話。
どうやらファイナルでもジュリーの「クレイジー・カズ!」が炸裂したようですね。どうやら、というのは、僕は”おいっちに体操”に気をとられてその瞬間をよく覚えていなかったのです。ただ・・・大宮公演後に僕が定義した「ネクスト・カズ!」はありえないですね、やはり(恥)。

ジュリーはその前の下山さんのソロ部で”おいっちに体操”をしていましたが、泰輝さんのソロが始まって数秒後、「ハッ!」と気づいたようにキーボードの近くまでスッ飛んでいきました。柴山さんの動きに混ざりに行ったわけですね。それがこの日も「クレイジー・カズ!」に繋がったわけです。

柴山さんがソロになだれ込んでくるシーンは、今ツアー初めて観るパターンで、強く印象に残りました。
「きゅい~ん、きゅい~ん、きゅい~ん♪」と1拍づつのチョーキング・フレーズでソロ導入・・・その「きゅい~ん♪」1回につきワンステップを合わせ、ぴょんぴょん跳びながら進み出てきたんですよね~。
カワイイ系の柴山さんのソロは、久しぶりに観た気がするなぁ・・・。

で、ドラムスとヴォーカルだけが残る、先述の福岡公演でお客さんが大合唱したと聞いていた、まさにその部分。
ジュリーはそこで突然

カモン!

と叫んで身体を倒し、マイクを客席に向けたではありませんか!
不肖DYNAMITE、この時まったく何の躊躇もなく自然に反応できた自分を褒めてあげたい・・・。スラスラと歌詞が口をつき、結構な大声で歌うことができたのです。
ただ、隣のカミさんは「えっ?」という感じで機を逸したらしく、周囲に僕の大声だけが響き渡っている状況は、少し恥ずかしかったですけどね・・・。

色々と他の先輩方にもお話を伺うと、「不意を突かれた」という感じだったんでしょうかねぇ。すぐに歌えなかった、という人も多かったみたい。
あ、と言うよりも
「カモン!」=「来いよ!」
という王様・ジュリーの色気に撃ち抜かれて腰くだけになり、一瞬歌うことにまで頭がいかなかった・・・のかな?

本当に記念すべき「気になるお前」を体感できた、と今だにその瞬間を振り返って感動します。最高でした!

17曲目「時計/夏がいく

Sur


前曲「気になるお前」の執筆修正前に、僕は「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」の記憶とごっちゃになって、柴山さんと下山さんの至近距離差し向かいの演奏について書いてしまっていました。

そのお話はまた後で「マンジャーレ~」の項で改めて書くとしまして・・・僕がジュリーLIVEの映像で初めてギタリスト二人のそんなシーンを観たのは、DVD『サーモスタットな夏』で演奏された「時計/夏がいく」だったっけなぁ、とふと思い出した次第です(当時は下山さんはまだジュリーのバンドにはいなかったけど・・・)。

今ツアーでは、接近こそしませんが、この曲で柴山さんと下山さんがステージの端と端で身体を向け合って演奏するシーンが3度も観られます。
向き合いたくなる気持ち、分かります。その箇所のギター2人は、完全な単音ハーモニーのツイン・リードなのですから。

楽曲全体で渋く出番のある泰輝さんの手元もよく見えました。下段左サイド、左手で演奏している音色は、以前レポートで僕が書いていたブラスセッションの音ではなく、バリトン・サックス単体の音色に設定されているようですね。

それにしても、大宮でYOKO君に「これだけは絶対違うような気がする」と言われてから、この曲の”おいっちに体操”参加を躊躇するようになってしまった~。
でもジュリーの動きは腕の上げ下げで通すのではなく色々なことをやっていますから、聴く側も自由にノる方が良いんですかね・・・。

18曲目「サーモスタットな夏

Samosutatto


イントロ、ワンテンポ置いてからの泰輝さんの頭上手拍子も恒例となり、ファイナルでもこの曲は大いに盛り上がりました。

何としても「L&V」ポーズだけはジュリーと一緒に決めたい、と気合充分に待ち構えているお客さんも多いようで(無論僕もその一人です)、見下ろした1階席のお客さんの右手が揃って突き上げられる光景がこれまた圧巻でした。
また、少数ながらもジュリーと一緒に3連発ジャンプをキメている前方席のお客さんも。僕もびわ湖公演では思いっきり跳んだものでした。そこまで、というのは普段は少し恥ずかしくてやれないのですが、神席の魔力というのは凄いんですかね~。
この日は遥か上から神席のお客さんのハジけっぷりを観られたことで、頭上手拍子のエネルギーを頂いていた、という感じでした。

下山さんのソロ部では、上手側前方で横揺れ状態の柴山さんに思わず注目してしまったり、サビになったら2・1の手拍子を頑張ったり・・・見せ場や切り替えポイントの多い曲で、観る側もなかなか大変、気合が必要です。

「ヤメテ!」は、やはりジュリー自身のシャウトなのでしょうかね。その瞬間ジュリーはクルリと後ろを向いてしまうので、僕はこのツアー、1度もしっかり確認はできていないんですけど。

19曲目「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!

Samosutatto

普段から”おいっちに体操”にご参加のみなさま。
腕の上げ下げって、左右どうしていらっしゃいますか?ジュリーの鏡?それとも反対?
僕は何の考えもなく反応してしまうので、その時々によって違います。
この日の「マンジャーレ!」、イントロで「あぁ、今はジュリーと鏡になってるなぁ」とか漠然と考えておりました。
しかしこの曲・・・鏡で上げ下げしていると、ヴォーカル部前の「じゃ~ん♪」の突き上げから掌パタパタが非常にやりにくい!ということに、ここへきて初めて気がつきました。掌パタパタは基本、右手でやる方がいい、ということのようですね・・・。

さて、下山さんがドラムセットの後ろを回って泰輝さんの背後霊になるのは、この曲です。柴山さんのリード・ギター部でそこまで移動してくるのですね。
この日は、「なんだキミは」といった感じの泰輝さんの振り向きに、「このままオマエの後で弾くぞ!」みたいなゼスチャー・フェイクを一発入れた後、中央を進み出てきた下山さんでした。
で、その後ステージ上手側でギタリスト二人が至近距離差し向かいのシーンを見せてくれるのも、この曲。下山さんのリードも無論大きな見せ場ですが、ここで柴山さんはダウン・ストローク鬼連打(びわ湖で確認しました)でバッキングしています。

ジュリーが最後の力を振り絞るように、ヴォーカル部以外の箇所で時折「うわちゃあ~っ!!」とシャウトし始めたのは、この曲からじゃなかったかな・・・?
喉に負担のかかる曲が多いセットリスト・・・長かったツアーもいよいよ終わりが見えてきて、ジュリーが全力疾走のラスト・スパートをかけたようです。

20曲目「君をいま抱かせてくれ」

Hello


この曲はイントロとエンディングで、”おいっちに体操”に加えて両腕を思い切り前に突き出すジュリーのアクションがありますね。
参加するお客さんも多いようで、もちろん僕もやるんですが、2階最前列はその際の開放感が格別でした。ジュリーを見たり、階下でキレイに動きが揃っているエリアのお客さんを見たり、となかなか忙しかったです。

ジュリーはヴォーカルの合間合間に鋭い渾身のシャウトを何度も挟んでの熱唱。
例の「カズだけで・・・」の歌詞も、この日のジュリーは1番2番とも完璧に歌っていて、そういえば今日はここまで歌詞間違いは無かったんじゃないかなぁ、と思いながら観ていました。

以前のレポでも書いたように、オリジナル音源の「君をいま抱かせてくれ」では、最後のサビ繰り返し部冒頭でジュリーのヴォーカルがクロス・ミックスになっています。
LIVEではその部分を鉄人バンドのコーラスに任せるのではなく、すべてジュリーが歌う構成としているため、CDのヴァージョンには登場しない2小節のタメがあるのですが、その時のGRACE姉さんのビシッ!としたフィル・インがカッコイイのです。
フィルの後・・・この曲ではそれまでもドラムスは結構ハードに演奏しているのに、「もう一丁!」という感じでさらなる盛り上げを見せます。姉さんのパワーに感動しますね~。

21曲目「明日は晴れる」

Asuhahareru


『Pray for East Japan』が全体のテーマとなっている、と今回のセットリストを受け止めているファンはとても多いようです。
共に大宮に参加したYOKO君も、「明日は晴れる」で終わる本割のセットリストは、そんな気持ちで歌詞を聴いていた、と打ち上げで言っていました。本割ラストに、お客さんの手拍子参加の無い、ただひたすらにジュリーの魂の咆哮をファンが立ちつくして聴き入る「明日は晴れる」という曲が配されたことは、とても重要だったと思います。

明日への思いを胸に、今こうして生きていること。
ジュリーの祈り、叫び・・・ファイナルでもしっかり受け止めてきました。

拙ブログでは11月末から12月初めにかけて、”セットリストを振り返る”コーナーとして楽曲考察記事に取り組むつもりでいます。
『Childhood Friend』のレポや、お正月コンサートのセットリスト予想など、お題の予定がたて込んでいますので、”振り返る”コーナーは3曲に絞ろうと考えております。既に「ラジカル・ヒストリー」と「約束の地」は執筆を決めているんですけど、残り1曲を「SPLEEN~六月の風にゆれて」にするか「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」にするか、それともこの「明日は晴れる」にするか、激しく悩み中です・・・。

~MC~

大きな拍手に迎えられて再び登場したジュリーは、ことさらヘロヘロ状態をアピール。
「疲れました・・・。みなさんの疲れが出るのは明日以降ですが、ワタシは今、疲れました~」
と言いながらよろめく仕草です。
その時は僕も他のお客さんと一緒になって、そんなジュリーの訴えを笑って聞いていたわけですが・・・本当にジュリーの言葉通り、次の日になって身体中に筋肉痛が(汗)。
ジュリー、何もかもお見通しなのですね。

さて、MCでこの日一番のインパクトがあったのは、やはり吉田拓郎さんからTV出演の誘いが・・・という話でしょう。

「(お話を頂いて)ラジオかと思ったらテレビだった・・・テレビは横に広がって映っちゃうからなぁ~」
と、まずは笑わせてくれます。

吉田拓郎さんと言えば、坂崎幸之助さんとのオールナイト・ニッポンでのジュリー談義が、ファンの間で話題になっていますね。
僕はまだ聞けていないのですが、お二人のジュリーへの愛情、リスペクトが感じられ、ファンにとって大変嬉しい内容だったそうで・・・伺ったところによりますと、「勝手にしやがれ」について
「誰もジュリーになれるはずはない、アレンジを変えたりして別の切り口でカバーしないと・・・」
といった話題の最中、坂崎さんが
「(特に「勝手にしやがれ」について
は)沢田さんが一番良い頃ですものね~」
といった感じのことを言うと、拓郎さん即座に
「いや、(ジュリーは)今でもイイ声で歌ってるんだよ~」
と言ってくれたらしく・・・。
ジュリーファンとして、これは嬉しい!
こんなことを言ってくれる拓郎さんの誘いだからこそ

「(テレビは)あっちこっち色んな角度から撮られる・・・後で(編集時に)縦に伸ばしてくれたらいいんだけど・・・」

なんて言いながらも、ジュリーは大いにノリ気。それをファイナルのお客さんはしっかり感じていたと思います。

ところで拓郎さんのオールナイト・ニッポンと言えば、僕は中学時代に夜更かししてよく聞いていましたね・・・懐かしい。
聞くようになったきっかけは、友人から「ビートルズをかけてくれる」と教えてもらったから。でも、結局は拓郎さんのおしゃべりや企画の内容が面白くて、リピートするようになったわけです。
強烈に記憶に残っているのは、
『学校の部活の男子先輩や、同級生の男の子に恋してしまった男ども、手紙送って来い!』
みたいな内容のコーナー。
今の時代ならともかく、30年以上前の当時の中学生にとってはあまりに刺激的な企画と言えますが、送られてくる手紙が真剣であればあるほど、失礼ながら笑えたものでした。
夜中に堪えきれずに爆笑して、起きてきた母親に「あんた、なんごっね?」(鹿児島弁で「あなた、何やってるの?」の意)と言われたりしたものです。

それで僕も拓郎さん自身の音楽に興味を持って、ベスト・アルバムのレコードを買ったり・・・。
アルバムも数枚聴きましたが、一番好きな曲はダントツで拓郎さんヴァージョンの「襟裳岬」。変に力が入っていなくて、すごく暖かい。
「落陽」や「春だったね」もとても好きですけどね・・・。

おっと閑休話題。

ジュリーと拓郎さんは昔から気が合っていたようで・・・例えば『沢田研二のすばらしい世界』というスコア(発行年月日の記載が見当たりません。収載曲から判断すると、1973年か74年の出版でしょうか)をみなさまご存知とは思いますが、その中に多くの著名人がジュリーにひと言ずつ寄せているページがあり、拓郎さんの言葉も掲載されています。

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自身のテレビ映りについて面白おかしく、ではありますがひとくさりしながらも、最後にジュリーは
「(拓郎さんから)声をかけてもらって・・・嬉しかった」
と、噛みしめるようにそう言いました。

「こんなこと言ってしまっていいのでしょうか?」とも(冗談めかせて)言っていたので、この日の時点ではまだ正式に告知できるような段階ではないのでしょうが・・・ファンの前でこの話をしてくれたということは、前向きに考えているということだと思います。
「言ってしまっていいのかな」と言いつつ、「ここだけの話」ではありませんでしたしね。

番組について何人かの先輩方はNHK『songs』ではないか、と推測していらっしゃるようです。なんでも、拓郎さんのコンサートに『songs』から花が届けられていたとか・・・。
さて実際どうでしょうか。楽しみですね~。
気になる出演内容については、「歌ではないんですが・・・」とジュリーが言っていましたから、拓郎さんの曲の合間にゲスト・トークのコーナーが設けられる、といった感じになるんでしょうかね~。

MCでもうひとつ強く心に残ったのは、ジュリーのスタッフさんへの感謝の言葉です。
ツアーを無事終えるにあたり
「これもひとえに・・・ワタシの努力!」
と、まずおどけた後で
「・・・ではなく、私を支えてくれたスタッフさん達のおかげです」
と真剣に言ったのです。直後に

「あり・が・と」

と、首を左・右・正面とカックンカックン振りながら言ったので、場内は思わず笑いに包まれたんですけど・・・。

何故か「あぁ、ジュリーはそろそろ、マイクを置く日のことまで考え始めているんだろうか?」と、複雑な気持ちになったり。
そう言えば名古屋公演では「上々の歌人生」という発言があったんですよね。その言葉から受けるイメージと共通するものを感じた「ありがと」でした。

ジュリーが歌をやめる日が来るなんて絶対イヤだけど・・・いつもファンの想像も及ばない先々のことまで考えているジュリーですしね・・・。

次がある、またジュリーの歌が聴ける、と楽しみに待つ今の状況を、もっともっと感謝しなければ、と改めて思います。
今回のツアーはこの日で終わってしまいましたが、もう1ケ月半待てば、お正月コンサートがあるのです。なんと幸せなことでしょう。
「12月に入ったら、お正月の稽古を始める」
と、ジュリーは言っていました。
どんな曲が頭にあるのでしょうね・・・本当に楽しみです!

ジュリーが目指す歌人生、とりあえずの目標は70越えのLIVE。
「見届けてください!」
ということで、MCのシメとなりました。
70歳を越えた先のジュリーも楽しみにしているけど、まずはファンもジュリー70越えの年に照準を合わせ、日々を頑張りたいものですね。

それでは、「オマケです~!」

22曲目「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」

Royal3

長かったツアーもとうとう最後のアンコール。
この日僕は「オマケのオマケ」を期待(「
TOKIO」か「お嬢さんお手上げだ」を予想していました)して入場しましたが、ここへきてそんなこだわり、願望は無くなってきましたね・・・。
ジュリーのヴォーカルが振り絞るようで、凄いのです。

元々この曲はジュリーにとっては良い意味で「休める曲」かもしれない・・・Aメロは力を入れないで歌える感じですし、音域もアクションも、ジュリーをもってすればことさらキツイ方ではない、そんな曲。
しかし、だからこそジュリーはここへきて渾身・全力を捧げたのかもしれません。Aメロでの語尾の伸ばし方などは明らかにこれまでの各会場とは違いました。
近くで観ていらしたお客さんは、おそらく眼光の違いなどが分かったかもしれませんね。

23曲目「
ス・ト・リ・ッ・パ・-

Stripper

一転、こちらはヴォーカルが相当キツイ曲。
ツアー後半になって、この曲で声をひっくり返すシーンが目立ってきたジュリー。この日もあの新曲のヴォーカルや、「ラジカル・ヒストリー」以降のシャウトなどを聴いてきましたから、そうなってもいた仕方ない、と思って観ていましたが・・・。
ジュリー、高音すべて完璧に発声しました!

これがね・・・もう完全に喉自体は痛めつけられ、やられているんですよ。そこを、喉の動きをシャウトでカバーして音に変えています。
これはもう「しばらく声が出なくなってもいい」という歌い方。ツアーのファイナルの、アンコールの、大トリ限定の最後の手段です。スパ~ン!と到達する高い「ソ」の音・・・その心地よさ、カッコ良さが、何度も繰り返されます。
この「ス・ト・リ・ッ・パ・-」を聴かせられたら、「オマケのオマケ」なんて考えは吹き飛びましたよね・・・。

あと、柴山さんの横揺れもこれまでより大きめ・・・だったと思う。ひょっとしたらこれまでもあのくらいだったのかもしれないけど、とにかくアーム・プレイしながらあの横揺れアクションは普通無理!
ギタリストにとってあの動きは「1・2拍目がネック突出し、3・4拍目がネック引っ込め」ということになるんですが、柴山さんのパートはまさにその移動の途中にアーム・プレイがあるわけです。
確かにびわ湖での柴山さんは、下山さんのような大きな動きではありませんでした。とすれば長いツアーの間にアクションの感覚を掴んだのか、あるいは「思い出して」いったのか・・・ファイナルでは、見事な弦楽器2人の横揺れ揃い踏みを楽しむことができました。

☆    ☆    ☆

ジュリーと鉄人バンドが一度にこやかに退場した後のアンコールの拍手、凄かったですね。「アンコール」と声に出しているお客さんもいらっしゃいました。
僕としては、先述の「ス・ト・リ・ッ・パ・-」で感じた思いもあって、「もう1曲!」という期待はもう持っていませんでした。でも、「もう1度ジュリーが出てきてくれる」という確信は持って、みなさまに負けじと大きな拍手を送らせて頂きました。
隣のカミさんが「出てくるかな?」と聞いてきたので、「来るよ。(ステージ前の)スタッフさんが動いてないでしょ」と返しました。

大きな拍手を受けて、ジュリー、遅れて鉄人バンドのメンバーが再登場。
いつもの並び順で横一列となった五人は、丁寧に3回、お客さんにお辞儀をしてくれました。

その後、「シ~ッ!」と指を口にあてて、オフマイクで何か喋ってくれたジュリーでしたが、残念ながら2階最前列の席でその言葉を聞き取ることはできませんでした。
きっと、このツアーが無事に終わったことへの感謝をもう一度伝えてくれているのだろう、と思いました。
でも、感謝したいのはファンの方ですよね。どれほどの感動を、どれほどの勇気を、そしてどれほどのゴキゲンなロック・ショーを体験できたことか。やっぱり今年の『3月8日の雲~カガヤケイノチ』は特別なツアーだったと思います。

新規ファンの僕は、”新譜を引っさげて”のツアーというのは、『PLEASURE PLEASURE』『秋の大運動会~涙色の空』に次いで3度目の年、ということになりました。
過去の2回と今年でまず大きく違っていたのは、新譜のリリース時期です。過去2回では、新譜リリースとツアー初日が連動しているような感じで、ツアーに参加しながら新曲の細かい魅力に気づいていく、というパターンでした。

しかし今年の新譜は、3月11日のリリース。ツアーまではまだ間がある時期・・・しかし、当然ながらリリースはこの日でなくてはならなかったわけで。
「問題作」「思想作品」・・・これほどの大名盤にもかかわらず、音楽の内容についてよりもまず先について回るそんなイメージ。僕も敢えてそこにどっぷりと自らを落とし込んだ時もありました。
真剣に考え、自問し、対峙することで最後に見えてきた、純粋なるジュリーの「音楽」の素晴らしさ。自分はこんなに素晴らしい音楽を作っている人のファンなのだ、という思い。

新譜の4曲すべてを突き詰めて突き詰めて、知り尽くし考え尽くして・・・その後にやってきたツアー初日でした。
ここまでCDで聴き込んでしまったら、いざLIVEで聴いた時の新鮮味はどうなんだろうな・・・」なんて少し考えたりしましたが・・・とんでもなかった!どの会場に参加した時も、新曲のジュリーのヴォーカルにはトコトン打ちのめされました。
新曲4曲があってこその、セットリスト全体の魅力にもすぐに気がつきました。

そして、各会場でのジュリーのサービス、感謝の言葉。
仙台や博多の大成功、参加していない身としてもジ~ンとしました。正にジュリーにしかできない、ジュリーファン冥利につきるツアーだったのではないでしょうか。
きっと何年か後にも、自分で自分の書いたレポを読み返すことがある・・・今年のツアーについては、そんな気がします。

ジュリー、最高のロック・ツアーをありがとう!!

20121103

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