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2012年10月

2012年10月30日 (火)

瞳みのる 「一枚の写真」

from『一枚の写真/楽しいときは歌おうよ』、2012

Apictureofmymother_2

1. 一枚の写真
2. 楽しいときは歌おうよ

--------------------

え~と。
隠していたわけではありませんが・・・不肖DYNAMITE、今年の夏の始めにピーのファンクラブに入会しておりました。

Office22


↑ 証拠写真。中央の青いカードが、巷で噂の会員証です!

これまで生きてきて、オフィシャルのファンクラブへの参加は、「ビートルズ」「沢田研二」に続き3度目。
いやぁ我ながら、自分が「瞳みのる」のファンクラブ会員になる日が来ようとは、このブログがじゅり風呂と化して以降ですら、予想だにできないことでした。
だって、ピーが帰ってくること自体夢のまた夢、という状況だったわけですからね。

奇跡のようにピーが復活して、もう1年以上ですか・・・。
熱いピーファンの先輩方に混じって、僕のような新参者が会員として連なることにためらいもあったのですが・・・僕がファンクラブ入りを決意したのは、ピーがこれから先、ジュリーのやり方に倣った形で積極的に自分の公演、作品リリースを次々に行っていくだろう、と思えたからです。
何よりも、僕が好きなアーティストにまず一番に求めたい志・・・新譜を矢継ぎ早にリリースするというピーの姿勢に、応援したいという気持ちが大いに沸いてきました。
ピーのオフィスの場合、ジュリー以上に手作りな感じで運営していますから・・・ファンクラブに入っておかないと、万一にでも音源入手にはぐれてしまう可能性もあるかな、と思い、末席を汚す決意をした次第です。僕は、特に好きなアーティストの音源作品については、どうしてもキチンとした形(歌詞カードやライナーなど含めて)で手元に持っておきたい、というのが基本姿勢なので・・・。

さて、そんなワケで僕はピーの新譜『一枚の写真/楽しいときは歌おうよ』も、オフィシャルサイトでの予約解禁と同時に注文を済ませていました。
『道/老虎再来』の時と同じく、エクセルファイル形式での代引き希望を選択し、ファイルを添付しひと言添えてメール注文。前回はメールの送信クリックの際に「ひと言添えた文章をピーが読んでくれるのかもしれない」と妄想して身体が震えるような感覚がありましたが、2回目ともなると今回はさすがに慣れたモンでしたね(笑)。

ところが、公式発売日の10月23日に先立ち、21日の日曜日の時点でピーのファンサイトのみなさまの多くがいち早くCDを受け取っていらっしゃるのに、我が家には発売日23日になっても届かないままでした。
これはやはり、愛情の差なのだろうか・・・と凹んでおりましたら、翌24日に無事到着。
よく見ると発送消印が2つありまして、最初に印刷された僕の住所が一部間違っていたのですね。それをボールペンで修正してありました。どうやら住所不明で1度オフィスに戻ったものを、迅速に再発送してくださったようで・・・かえって申し訳なかったですピー先生・・・。

ということで僕が新譜をじっくり聴いたのは24日。
どうやらジュリー・ツアーのファイナルまでに考察記事を纏める時間はありそうだ、と胸を撫でおろした次第・・・。
以前の宣言通り、本日は満を持してピーの新譜から「一枚の写真」をお題に採り上げようと思います。
畏れながら、伝授!

後追いファンとして、ピーという人とその生き方、そして生み出された作品について僕がどんな風に捉え考えているか・・・それは以前執筆した「
」の記事内容と重複しますのでここでは割愛しますが、今回の新譜もやはり「ピーに選ばれし人達」でなければ辿り着けない本質を持つ、ピー独自独特の作品であることは間違いないと思います。

僕はそんなみなさまとは世代が違い、「ピーに選ばれし人」たりえません。
ですから本当はピーの曲について書くなどおこがましいことなのですが、それでも躍起になって僕が書こうと思うのは・・・とにかく、昨年の老虎ツアーがあれだけメディアの好評を博したにもかかわらず、そこへ至る重要な線となったピーのソロ・デビューCDに関する公の記述をほとんど目にしない状況はおかしい!という気持ちがあるのです。

ピー復帰のきっかけとして、サリー、ジュリー作詞・タロー作曲の「Long Good-by」という曲があったことは書いてくれるメデイアも多いです。しかし、ピーがそれを受けて「道」という返歌を自ら作詞・作曲し、盟友・タローの協力を得てリリース、65歳にしてソロ・シンガー・デビューを果たした、というところまではなかなか世に紹介されていないんですよね・・・。
また、タイガースを語る上で欠かせない人物、中井國二さんの提案から生まれた、「老虎再来」という新たなタイガースのキャッチ・ナンバーの存在もなかなか表に出てきません。

来たる「再結成」に向けた機運の中、ピーの今回の新譜についてはそうならないことを願っています。
タイガースの遺伝子を持つ評論家、記者さん・・・世に数多くいらっしゃるはず。しがない新規ファンの気づかぬピーの魅力、逸話、人間性を、この新譜から汲み取って、僕に教えて欲しい・・・そんな思いでいます。
とりあえず今回も、この若輩が先陣を切らせては頂きますが・・・。

それでは若輩ついでに、まず情けない無教養の告白からこの考察記事を書き進めていきましょう。
僕が初めて「一枚の写真」をヘッドフォンでじっくり聴き、併せて歌詞カードを目で追った時、一番最初にしたこととは・・・。

♪ 川面わくらば 流れる ♪
  F                   G


この、Bメロ盛り上がり部に登場する
「わくらば」
の意味を辞書で引いたことでした(汗)。
恥ずかしながら・・・まったく知らない言葉だったんです~。「わくる」なんていう動詞があるのかな?などと考えたり(汗汗)。
調べてみると


わくらば(病葉)・・・病気の葉。赤や黄色に色づいた葉。

わくらばや 大地になんの病ある
(句・高浜虚子)

な、なるほど・・・全然知らなかった(滝汗)。
自分がことさら無学なのかと心配になり、一応カミさんにも尋ねてみると、「そんな言葉知らんで」とのことでしたのでひとまずホッとしましたが・・・。先の日曜日に、いつもお世話になっているJ先輩と食事をご一緒させて頂いた際に尋ねてみますと
「えっ、”わくらば”を知らなかったの?!」
と驚かれてしまいました・・・(恥)。
で、詳しくお話を伺うと、先輩方の世代に「川は流れる」という沖縄出身の歌手、仲宗根美樹さんの大ヒット曲があり、出だしの歌詞に”わくらば”というフレーズが登場するんですってね・・・。

Img394

翌日出勤し早速スコアを検索してみて、相当有名な曲らしいことを今さらながら確認。
自分達の世代はこの曲のおかげで「わくらば」という言葉に馴染んでいる、と先輩は仰っていました。それにしてもこんな曲を知らずにいたとは、不勉強と言うほかありません・・・。

ということで、その「わくらば」は僕の無学故の至らなさとし除外しますと、ピーの詞というのはいつも、シンプルなフレーズ、表現を心がけて作られているように思えます。『道/老虎再来』の時にもそう感じました。
今回の新譜も曲のテーマごとの収録順配置は前作を踏襲していて、1曲目の「一枚の写真」は、「道」同様に「今、”あの時”を振り返っての心情」を切々と歌っています。プライヴェートな内容の詞なんですよね。

ピーが自分の「思い」「考え方」を伝えようとする時、誰にでも分かり易い言葉で、噛み砕いて表現する人だということは、詞作品のみならず、ちょっとした発言などにも表れていると思います。
例えば僕は、LIVEやCDリリースに臨む直前「持てる力を尽くして」と決意を語ったピーの言葉がとても好きで、シンプルな言葉なのに何故こうも説得力があるのか、といつも感心してしまいます。それはピーが何のてらいも気負いもなく自然に発した言葉だからなのでしょうし、そうやって「分かり易く、的を得て簡潔に」ピーが意志を伝えることができるのは、長年先生をしていた経験によるところでもあるのでしょう。

「一枚の写真」は重いテーマです。
物心つかない頃に旅立ってしまったお母さんへの想いを、時を経ても色あせずに残された一枚の写真を通して表現しています。
ところが、歌詞カードに添えたピーの解説によると、当初ピーはそれを一度、ピー個人の想いというのではなく、普遍的な表現で作詞していたらしいのです。
やっぱりとてつもなく「悲しい」「切ない」思いなのですからね・・・。真っ向から自分の気持ちに対峙する、という手法は、最初は選択肢にもなかったかもしれません。

実は僕も母親を早くに亡くし、それがちょうど桜満開の季節だったものですから、今でもジュリーの「桜舞う」を聴くと、大好きな曲だけに心を乱されることもあります。
とは言っても僕の場合は自分が30ちょっと過ぎの歳での別れでしたし、思い出も、写真もたくさんあります。2歳の時、30半ばのお母さんに旅立たれたピーの思い(後追いファンの僕は、ピーがそんな境遇であったことも昨年初めて知ったのです・・・)を我が身に置き換えるには、状況が全然違いますけど・・・それでも、母親との別れについて誰かに言葉で伝えようとした時、自分の心情をそのまま吐露するまでにはなかなか思い切れない、というのは何となく分かるような気がするのです。

さてピーは、普遍的な表現でひとまず書き上げた最初の「一枚の写真」の詞を「うまく書けた」という手応えをもって自信満々に友人(どなただったのでしょうか・・・)に見せたところ、「おまえらしさが無い」と一蹴されてしまったそうです。
ピーの感性をもってすれば素直な表現でこの重いテーマにも踏み込めるはず・・・友人からそんなヒントを得たのでしょうか、改めて書き直されファンに届けられた今回の「一枚の写真」の歌詞は、本当にピーらしい、素晴らしい一編に仕上がっています。

天然ではあるのだけれど、とにかく二枚目。
素朴ではあるのだけれど、どことなく哲人。

それでは、そんなピーの歌詞を、友情・愛情たっぷりのタローの曲(「いかにも母思いの太郎らしい優しいメロディー」とピーは歌詞カードに付記しています)と共に、同時考察していきましょう。

ピーは、まず最初に自身で曲をつけたそうですが「思いが強過ぎて良くない」と判断(おそらく短調のメロディーだったのだと想像しています)、複数の人に作曲を依頼する運びとなり、最終的にタローの作ったメロディーが選ばれることになったようですね。
これはまぁ当然の結果ではないでしょうか・・・聴けば分かる通りタローの作曲した「一枚の写真」はメロディー、コード進行共王道中の王道。作曲家のエゴや、奇をてらった難しいひねりは一切無く、「シンプルな表現で伝えよう」とするピーの制作スタイルとバッチリ噛み合っているのですから・・・。
そう、今回の新譜は、前作で魅せてくれたタローの”友情注入アレンジ”ばかりでなく、”友情注入メロディー”も味わえるというのが、とてつもなく大きな聴きどころです!

本当に昔から数多くの名曲を生んだ直球王道進行。故に、多くのみなさまが「何処かで聴いたような」という感覚を抱いたかもしれません。偶然に似ているメロディーは、巷にたくさん例があるのです。
日曜日にお会いした先輩は、「一枚の写真」と同様の朴訥な雰囲気を持つ名曲、さとう宗幸さんの「青葉城恋歌」を挙げていらっしゃいました。おそらくそれはサビの最後の着地メロディー部から連想なさったのでしょう。

他、様々な有名曲との共通点が挙げられる中で、僕が「ひょっとしたら、アレンジの段階でタローの意識の中にあったかもしれないなぁ」と考えているのは、タイガース・ナンバーでこそありませんが、GSの名曲中の名曲。ザ・ヴィレッジ・シンガーズの「亜麻色の髪の乙女」です。
コード進行の共通に加え、イントロのキラキラ系の音色で奏でられるキーボードのフレーズで、この曲を思い起こしたかたもいらっしゃるのでは・・・?

一方、タローならではのメロディーということで・・・過去のタローの作曲作品との比較についてはどうでしょうか。

僕は先日執筆したジュリーの大宮公演のレポの休憩の項で、その時点では発売前のピーの新譜に触れ、特にタロー作曲の「一枚の写真」に期待している、と書きました。
それは、過去にタイガースがらみで知ったタローの名曲群に新たにピーのナンバーが1曲加わるだろう、という予感でもありました。僕は今回、タローが作曲家として渾身の得意球をピーのためにズバッ!と投げ込んだのでは、と確信していて・・・タローの得意球として

・抒情的な長調バラード
(「Long Good-by」「朝焼けのカンタータ」)
・朴訥な味わいの短調ポップス
(「青い鳥」「あなたが見える」)

という、2パターン4曲を挙げ、「一枚の写真」の曲想をこの4曲のいずれかに近いものだと予想を立てたのです。

予想は当たりましたよ~!
Aメロ部・・・「一枚の写真」と上記曲のひとつを並べ、コード進行を検証してみましょう。

♪ 初めて見た母の写真 想像してた母  と違う
♪ ラジオから    古い歌  流れてくすぐるよ
  C                 G          Am                Em

  街で会ったなら お茶でもどうと
  君が         淹れたての
     F                         C

     声かけたくなった ♪
  紅茶を     さし出す ♪
    Dm                G

そう、「一枚の写真」は長調のバラードで、タローの投げ込んだ直球とは・・・1982年、ピー不在により「再結成」ではなく「同窓会」としてリリースとなったアルバム『THE TIGERS1982』収録の「朝焼けのカンタータ」の進行。Aメロはまったく同一になっているのです。
(「朝焼けのカンタータ」のオリジナル・キーはヘ長調ですが、ここでは分かり易いように「一枚の写真」と同じハ長調へと移調表記しています)
鍵盤を嗜まれるかたで、コード表記が苦手なかたは

「C=・ミ・ソ」「G=シ・レ・」「Am=ド・ミ・
「Em=シ・・ソ」「F=ド・ファ・ラ」「Dm=・ファ・ラ」

(註:太字は左手を同時に弾く場合の音」

として弾きながら歌ってみてください。メロディーは全然違うのに、まったく同じ和音伴奏で進行しているのがお分かり頂けるでしょう。

このコード進行は邦洋問わずバラード・ナンバーでよく採り入れらるパターン。名曲は数多くありますが、当然それぞれが違うメロディーを擁します。
自らも得意とする「朝焼けのカンタータ」との同進行の直球パターンで、新たなメロディーを作り出したタロー(実際、コードに馴染みのない方々が、メロディーだけでこのAメロでの2曲の類似を発見することはほぼ不可能だと思います)。「ピーの曲は俺が作るんだ!」という漲る気合が、それだけでも察せられます。

そして、「自分らしく」と書き直したピーの作詞で光るのがこの部分・・・写真で見たお母さんの美しさを素直に綴った表現です。

早い話が
「街で見かけたらナンパしちゃいそう」
なほどだった、とピーは言っているわけですね。
この表現は正に、タイガースとしてトップ・アイドルを経験した超・二枚目、しかしながらその後40年間も音楽業界を離れ、まったくスレないまま戻ってきた天然の魅力に溢れるピーの、飾りのない言葉です。
普通、ダンディーでカッコイイおじさん(失礼汗)がこういう表現をすると、嫌味なイメージもついてきそうですが、ピーにはそれがまったくありません。タイガースの人気者・ピー、その後先生としてひとつの人生をやり遂げたピー、奇蹟のような2つの道を自分らしく当たり前に歩んできたピーだからこそ、サラリと伝わってくる表現ではないでしょうか。

さらにもう1箇所。
穏やかな進行ながら、切ない慟哭すら感じさせるBメロ部に注目してみますと・・・。

♪ その気安さ その笑顔
  F                  C

  それは救い それは喜び
  G7               C          C7

  川面わくらば流れる 川面思い出流れる ♪
  F                   G         F                 G      G7

コード進行は一部異なりますが、ここでタロー作曲のジュリー・ナンバー「ブルーバード ブルーバード」を連想したかたも多いでしょう。メイ様もそう書いていらっしゃいましたし。
これは、メロディーの起伏が似ているんですよね。
「ブルーバード ブルーバード」で僕が一番好きな

♪ 道を逸れるか 真っ直ぐ行くか
  F                        C

  クリアした今だから ♪
     F           G 
(註:オリジナル・キーのホ長調を、ハ長調に移調して表記)   

この部分のメロディーを、僕もすぐに思い浮かべました。

またここでは、ピーの詞で「気安さ」というフレーズが素晴らしいと思います。一見、歌詞としてはどうか、と思われる野暮ったい言葉のはずなのに、自然に歌世界の流れに溶け込み、すぐ後に続く「笑顔」というフレーズにも優しい力を投げ与えていますよね。
昨年の『songs』で、「タイガースありきで始まって、タイガースありきで終わるのかな」と語ったピー。
「気安さ」「笑顔」・・・それがピーの「救い」「喜び」となるならば、長い時間を経て戻ってきた「タイガース」という場所が、ピーにとって正にそうであるといいなぁ、と考えてしまいます・・・。

タローのアレンジとスーパースターの演奏も、前作の「道」同様、ピーを包み込むような素晴らしさ・・・プロの仕事と愛情です。

タローが音色を決めたであろうキーボードは、2トラック。ひとつは全体のアレンジの土台となるピアノで、もう1トラックは、イントロとエンディングに登場するキラキラした音と、間奏に登場する木管系の音です。
どちらかのトラックがタローの演奏なのでしょうか・・・。

ギターは左サイドがアコギで、右サイドにエレキ。
「道」と同じく、まるでミック・テイラーのような抒情味溢れるエレキ・ギターが速水さんでしょう。つい先日の「影絵」のお題執筆の際にも思ったのですが、メロディーの合間合間を繋げていくような速水さんのギターは正に職人技です。
アコースティック・ギターの方は、スリー・フィンガーのアルペジオを優しく奏でています。これはタローかなぁ。

清水さんのベースも朴訥で素晴らしい・・・例えばイントロ25秒くらいの箇所で、派手なフィルの代わりにサラリと弦をすべらせる音を立てるなど、こちらもセンスに満ちた職人技ですね。

では、ピーのドラムスはどうでしょうか。
もちろんこの曲のドラムスはピーの演奏なのでしょうが、実は僕のつたない耳では、ハッキリ「ピーの音だ!」と認識できません。
(反してカップリングの「楽しいときは歌おうよ」については「おお~っ、ピーだ!」と、すぐに判別できました。元気よくヤンチャに突っ込むスネア連打が「ドゥー・ユー・ラヴ・ミー」のオカズの雰囲気そのままです!)

「一枚の写真」のドラムスで印象に残るのは、どっしりとした、大地に根付いたような刻みと穏やかなフィル・イン。老虎ツアーで何度も観たピーのドラミングの、どの曲とも違うように感じます。
でも、1’44”のサビ直前のフィルで、すべての打音にシンバルを響かせる独特の構成や、パシンパシ~ン!とクラッシュ・シンバルを左右連打するフレージング(何度か登場しますが、2’12”が一番聴き取り易いです。ただ、この曲はバラードですから、僕が散々老虎ツアーで解説してきた”クラッシュ・シンバル左右鬼連打”のような派手さはありませんが・・・)は、目を閉じて聴くと老虎ツアーでのピーの姿が浮かんでくるようにも思えます。

ピーがどんなふうにこの曲のドラムを叩くのか、是非11月の中野サンプラザで見てみたいけど・・・お母さんへの思い溢れるこのバラードを、ドラム叩きながら歌うスタイルはさすがに避けるだろうなぁ・・・。

考察のシメは、お待ちかね(?)・・・「一枚の写真」でのピーのヴォーカルについて。
「タイガースと言えば奇跡のハーモニー。でも残念ながら私は・・・」と以前に自身でも語っていたように、ピーの歌は決して上手くはありません。
前作「道」と同じく、ピーが実際に感じたプライヴェートな内容の詞が、ピーが歌うことによってしか意味を為さない・・・ピーが歌う理由はまずはそこにあります。その理由が分からない人にとっては、「一枚の写真」のヴォーカルは魅力の無いものかもしれません。
ただ、この「一枚の写真」のヴォーカル・テイクをして「下手だ」と一笑に付しその後顧みない人は、何年か先に大いに恥じることになるでしょう。

ピーはおそらく、この先も年に一度程度のリリース・ペースで歌うことを続けるのでは、と僕は考えています。
ドラマーだったピーが、まっさらなゼロの状態から、ヴォーカル・レコーディングに挑み始めた・・・充分な経験値と実力を持ちながらも、歌うことの継続、発信を続けないヴォーカリストと比べたとして、さぁこの先どうでしょう。
たとえゆっくりした進歩であろうと、続けていさえすればゼロはすぐに「1」となり「2」となり「10」となり、「20」「30」・・・となっていきます。
ピーが将来「100」のヴォーカリストになるとは僕も思いません。しかし、「持てる力を尽くして」前向きに進むピーの驚くべき変貌は予感しています。何より、ピー自身が「歌う」ことが大好きになってきている・・・そんなふうに感じるのは僕だけではないでしょう。
来年以降の新譜リリースも楽しみ!

技術的なことでひとつだけ解説しますと、まだまだ語尾に不安定さのあるピーのヴォーカルを助けるべく、タローはこの曲で「ダブルトラック」というレコーディング法を採用しています。
「一枚の写真」でのピーの声が二重になっていることは、みなさま聴き取れるはずで、これがダブル・トラック・レコーディングです。
ダブル・トラック処理には、おおまかに2つの手法があります。

・ヴォーカル・テイクを機械の力でコンマ数秒ずらしたテイクを複製し、同時に流す
・単純に、同じヴォーカリストが2度に分けて全編歌ったテイクを同時に流す

「一枚の写真」の場合は後者。ピーが2度歌っています!
(後者のダブル・トラック処理の魅力については、以前「人待ち顔」の記事で詳しく書きましたので、よろしければご参照くださいませ)
こういうことに慣れていないピーの初々しい姿がヴォーカルから想像でき、僕などは聴いていて思わずニコニコしてしまいます。1番の「声かけたくなった♪」のあたりとか・・・。
しかしそういったことも、ピーはこの先どんどん克服していくのでしょうね。

あとね・・・一応ピーの擁護、というワケでもないのですが、書いておきたいのは「一枚の写真」という曲の音域の広さですよ。
その点についてはタロー、気合入れ過ぎちゃったかな?・・・仕方ないですよね。それも名曲の宿命なのですから。

2度目に聴いた時、Aメロでピーが何だか苦しそうに歌っているような気がしたものですから、ギターで音をとってみたら・・・いきなり低い方の「ソ」の音(ジュリーをもってしてもここまで低い音は明瞭に発声できません)なんてのが登場したので、思わず
「タロー、キー設定間違ってるよ・・・!」
などと浅はかにも考えてしまった僕でしたが、いざサビで高い「ミ」の音までメロディーが跳ね上がったのでビックリ仰天。
おそらく最高音の「ミ」を限界設定としてキーを決定したのでしょうね。低いトコはなんとかダブルトラックで頑張ろう、と。
それにしても音域広い!もしもジュリーなら、ニ長調か変ホ長調あたりで、高低いっぱいいっぱいに歌う感じになるかなぁ・・・。

そうそう、昨年の『道/老虎再来』同様、今回ももちろんDVD映像を見ながら聴いた方が、曲の魅力も倍増ですよ~。
(今回は、前作ではCD収録されていたカラオケ・ヴァージョンが割愛されているのがスタイルの変更と言えば変更。その分お安くなっています)
「一枚の写真」は、映像の雰囲気も「道」を踏襲したような感じ。物憂い表情で風景を眺めるピーが渋い!
ところが、「道」と違い最後の最後に笑顔が炸裂します。

♪ 今母の年を遥かに超えて
     F               C

  僕は生きている ♪
  Dm              G


おそらく歌詞中のこの気持ちを具現化したのでしょう・・・ピー自らが「一枚の写真」へと納まる静止映像へと移行していくいくつかのシーンの、そのラスト・ショット。
ドラムセットで最高の笑顔を見せるピーです。この映像は是非購入して実際に観て頂きたいです。

僕としてはそのショットで、ドラムセット横の譜面台に置かれた状態で微妙に映り込んでいるスコアが気になったりもするんですけどね。
字がぼやけていて確認し辛いけど、どうやら2段譜のスコアで下段がへ音記号のように見えますから、タローか遠山さんが使っていたピアノ用の譜面をセッティングして撮影したのかなぁ・・・。
タイトルは、「一枚の写真」と書いてあるように見えますね~!


・・・さてさて、10月末から11月上旬は何かとバタバタいたします~。
次回更新は、ジュリーの『3月8日の雲~カガヤケイノチ』ツアー・ファイナル、東京国際フォーラム公演のレポートまで間を空ける予定です。

ピーの新譜のもう1曲「楽しいときは歌おうよ」についてもここ数日でじっくり聴き込み、書きたいことも大体まとまってきていますので、そのうち必ず記事に採り上げますが、ジュリーのツアー・ファイナル以降はお題の予定が詰まっている状態で・・・ハッキリした執筆時期はまだ未定です。
どうか気長にお待ち頂きますよう・・・。

ついこの間まで暑い暑いと言っていたのに、朝晩めっきり寒くなりました。
ちょっと風邪気味なので、週末に向けてしっかり睡眠時間をとるよう心がけたいと思います。みなさまもどうかお気をつけて!

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2012年10月23日 (火)

沢田研二 「影絵」

from『チャコールグレイの肖像』、1976

Tyakoruglay

1. ジョセフィーヌのために
2. 夜の河を渡る前に
3. 何を失くしてもかまわない
4. コバルトの季節の中で
5. 桃いろの旅行者
6. 片腕の賭博師
7. ヘヴィーだね
8. ロ・メロメロ
9. 影絵
10. あのままだよ

-------------------

秋ですね~。
6月から始まったジュリーのツアーも、長かった夏を越えていよいよ最終コーナーへ。

何と言ってもジュリーファンとしては、11月頭にツアーが終わって、そこから2ケ月ほど待つだけですぐにお正月コンサートがやってくる!というスケジュールが嬉しいんですよね。
その代わり、ブログの方は忙しくなるなぁ~。11月はまずファイナルのレポートを書いて、それから”セットリストを振り返る”コーナーを12月頭までに終わらせ、間髪入れずにお正月コンサートに向けて”恒例・全然当たらないセットリスト予想”シリーズへと突入したら、あっという間に年末・・・の予定です。
その間、ピーとタローのLIVE『Chirlhood Friend』があったりしますし。

つまり、純粋な意味での自由お題の記事を書く機会が、今年はもうほとんど残っていないということで・・・リクエストもえらい溜まってしまって、申し訳ないことですが、今日は自由課題での更新。

多くのジュリーファンのみなさまも同様かと思いますが、秋になると無性に聴きたくなるアルバムが『チャコール・グレイの肖像』です。
「コバルトの季節の中で」が収録されているから、というそれだけではない・・・季節が変わり、これから訪れる寒い冬に向かってゆったりと流れる時間。そんな空気にピッタリの、何処か切なく寂しげな”青年ジュリー”の魅力がたっぷり詰まった1枚ですね。

お題は、このアルバムから選びました。

間違いなく名曲・・・でも立ち位置が地味なのか、ジュリーファンの間でなかなか話題に上る機会も少ないような・・・そんなナンバー。
こういう曲を採り上げてこそ、ヒヨッコ新規ファンのつたないブログとしても一縷の価値を示すことができるかもしれませんので、頑張って書こうと思います。
「影絵」、伝授です!

実はこの曲のお題、半分リクエストを頂いていたようなものでして、いつもピンポイントでジュリーにまつわる色々なことを教えてくださる先輩が「大好き」と仰っていたナンバー。
また偶然にも、いつもお邪魔している先輩ブロガーさんのaiju様が、先日藤城清治さんの”影絵”について書いていらして・・・僕もちょうど「次は”影絵”の記事を仕上げようかな」と考えていた矢先だったものですから、これはもう今すぐ書いておくしかない!と、勝手な思いながら絶好のタイミングを授かったようにも感じています。

さて、個人的には『チャコール・グレイの肖像』というアルバムは、ジュリーの全作品の中で最もバンド演奏のテンションが高い作品だと考えています。
まぁ、ジュリーのアルバムで、演奏が凄い!という作品はそれこそ数多くあって・・・例えば。

・圧倒的なアンサンブルの完成度を誇り、いかにも”プロフェッショナル”な雰囲気の『JULIEⅡ』。
・粗削りな中にも、決して安全策を選ばないロックな志がイカしている『BAD TUNING』(の、LIVEテイク5曲)。
・最先端の渋い洋楽エッセンスを踏まえつつも、技量で本家を凌駕してしまった『S/T/R/I/P/P/E/R』。
・バンドブームに浮かれる時代に、”本物”という楔を打ち込んだ『彼は眠れない』。
・ジュリーのコンセプトへの奇跡的な融合と、演奏者の魂の気高さを示した『3月8日の雲』。

これらいずれもが、ジュリーのヴォーカルや楽曲の良さばかりでなく、演奏の素晴らしさに酔わせてくれる大名盤なのですが・・・「演奏で選ぶナンバー・ワンは?」と問われれば、僕は迷った末に『チャコール・グレイの肖像』を挙げるでしょう。

(演奏のみならず、各楽器トラックのイコライジング処理やミックス・バランスも抜きん出て好き、という要素も大きいかもしれませんが・・・)

そして・・・もう数年前になりますか、『チャコール・グレイの肖像』をBGM用に持参して出かけたある日のこと、僕がこのアルバムから受ける不思議な感覚に初めて気がついたことがありました。
その日は仕事での移動が10箇所弱あって、移動距離こそ短いけれどせわしない1日でした。僕はその短い移動時間に、『チャコール・グレイの肖像』収録曲を1曲ずつ取り出して聴き、用事を終えるとまた移動中に1曲・・・という感じで聴いていったのです。
すると、単にこのアルバムの演奏が素晴らしいというだけでなく、演奏の意味合いが、曲によって大きく二通りのインパクトをもって僕に迫ってくることが分かりました。

その二通りを、乱暴な言い方ながら説明してみると

・既存の洋楽ロックを下地とした俯瞰的、かつジュリーのヴォーカルに従順で包みこむような演奏
・ジュリー・ナンバー・オリジナルとも言うべき主観的、かつジュリーのヴォーカルに戦いを挑んでいるような演奏

といった感覚でしょうか。
それがどういう違いによるものかは僕自身うまく整理できていません。おおまかに言い換えると、ハッキリした洋楽の元ネタを演奏に感じる曲は、その最先端のアレンジ・センスをうまくジュリーのヴォーカルに溶け込ませ歌に取り込もうとしているのに対し、演奏元ネタの特定しにくい曲は、ジュリーのヴォーカルが天才的にも最初から演奏に溶けきろうとするのを拒絶するような感じで、ジュリーにある意味ケンカを売ろうとしている・・・その危うさが逆に不思議な一体感を作っている、という印象を受けるわけですが・・・う~ん、伝わるかなぁ。

前者として躊躇なく挙げられるのは「夜の河を渡る前に」「片腕の賭博師」。
「あのままだよ」も、過激なアレンジの割にはジュリー・ヴォーカルへの対峙は優しく包みこむようなイメージがあります。
後者が「桃いろの旅行者」、そして本日のお題である「影絵」。この2曲の演奏トラックの攻撃性は凄いです。
どちらとも言えず微妙なのが「ヘヴィーだね」「ロ・メロメロ」という、ジュリー作詞・作曲による2曲なんですけど、それはまたそれぞれをお題曲として採り上げた際に改めて考察を述べることにします。

いずれにしても『チャコールグレイの肖像』が、収録全ての楽曲で当時最高峰のロック・サウンドを楽しめるアルバムであることは間違いないところです。
こんな邦楽ロック・アルバムが存在していたことを、長い間ずっと知らずにいたとはね・・・。

それでは、”ジュリー・ナンバー・オリジナル”な独創性と、”ジュリーにケンカを売る”ほどの攻撃性をも兼ね備えた名演、「影絵」のサウンドを詳しく分析していくことにしましょう。

僕は、このアルバムを購入し熱心に繰り返し聴くようになってから後しばらくの間も、「影絵」の演奏時間が6分半を超えていることにまったく気がついておらず、ある日PC上で表示されたファイルのトータル・タイムをたまたま見て「ええっ?この曲ってそんなに長かったのか!」と驚いたものです。
(レコードはどうか分かりませんが、少なくとも僕の持っているリマスター盤CDには、歌詞カード含め何処にも各曲の演奏時間の表記が無いのです)
せいぜい4分台だと思って聴いていました。演奏の緊張感があまりにも凄くて圧倒され、長さを感じる余裕が無かったのかなぁ・・・。

その”凄まじい緊張感”漲る演奏・・・各楽器の演奏トラックをすべて書き出してみますと

(左サイド→右サイド)
・リード・ギター
・キーボード(オルガン系)
・ドラムス
・ベース
・サイド・ギター
・キーボード(エレクトリック・ピアノ系)

となっています。

いずれも素晴らしい演奏ですが、まずは左サイドのリード・ギターから注目してみましょう。
リフによるバッキングと、情熱的でありながら陰鬱な魅力をもほとばしらせる単音の切り替えが見事。まるでジュリーの作曲世界とヴォーカル・ニュアンスをそのままギターという楽器に乗り移らせたかのような、渾身のワン・トラックになっていますね。
あまりにもジュリーの作曲した世界観に近い表現、ということも含めて、このギターは井上バンドの速水さんの演奏だろうと僕は思うのですがどうでしょうか。
何故そう言えるのかというと、以前「
外は吹雪」の記事に頂いたコメントで、「外は吹雪」のリード・ギターが速水さんのプレイだということを先輩に教わったからです。
「影絵」のリード・ギターには、「外は吹雪」に見られる特徴的な奏法やフレージングが随所に登場しますから、同一のプレイヤーによる演奏と考えるのが自然。「外は吹雪」が速水さんなら「影絵」も速水さんだろう、と推測できるのです。
ひんやりとした季節感をさらに盛り上げるギター、正にプロの技ですね・・・。

ギター・トラックはもうひとつあって、右サイドに振られたこちらはサイド・ギターの役割。演奏は主にコード・カッティングですが、イントロに顕著なように、「7th」の音を強調して弾いているのが目立ちます。
「影絵」はホ短調ですから、「7th」とは「レ」の音のことです。この音が強く押し出されるだけで、曲に不穏な空気が漂います。まるでジュリーのヴォーカルに一部の楽観的ニュアンスをも許さないような・・・そこまでとなるとこれは井上堯之さんの演奏ではないでしょうか。編曲のクレジットが堯之さんですから、演奏にも参加していると考えるのが自然かと・・・。

続いてドラムス、こちらはキック(バス・ドラム)の細かい跳ね方に特徴があります。
最近の流行音楽には”隙間の魅力”というものが無く、たとえ同じようなドラム・プレイだったとしても、その素晴らしさが全体の音圧に埋もれてしまうことがあり得ます。
その点、70年代後半のロック・サウンドとして僕の好みにピタリの『チャコール・グレイの肖像』の演奏には”隙間の魅力”が溢れ、ドラムスの細かいキックや、アレンジとしてのハイハットの出番が鮮明に聴き取れるのが嬉しい・・・ただ、僕の耳では演奏者を特定できないのが残念です。キックの特徴から、「影絵」と「ヘヴィーだね」が同一のプレイヤーであることは辛うじて分かりますが。

ベーシストも特定できないなぁ。
でも、これも以前先輩に『夜の河を渡る前に』のベースが後藤次利さんの演奏だと教えて頂いたので、それを基準に考えると「影絵」は後藤さんとは別の人かと感じられます。フレーズの暴れ方が、1点集中型と言うか、角々きっちり型と言うか・・・。
『太陽にほえろ!』の「スコッチ刑事のテーマ」の感じかな。とすれば佐々木隆典さん・・・?

そのベースの骨子フレーズとなっているのは
「ミ、レミ、ミ、ミ、レミ♪」
というリフ。
そのリフに、時折アンサンブルとして重なるように噛みこみながらも、ヴォーカルの狭間狭間では一転、リード・ギターに負けないほどの自由度を持って飛び回る・・・それが右サイドのエレクトリック・ピアノ系のキーボード渾身のトラックです。
これは大野さんだと僕は推測しています。これまた『太陽にほえろ!』のフリーウェイズ時代(ドック刑事登場期)の大野さんの演奏に、音色、フレーズとも酷似していますから。少し時代は後になるんですけどね。
ちなみに僕は一時期この”フリーウェイズ”と”オールウェイズ”を混同しておりまして、「そうかぁ・・・ジュリーと『太陽にほえろ!』、どちらも井上バンドから建さんや柴山さん達に引き継がれたんだなぁ」などと、とんでもない勘違いをしていました・・・(恥)。

キーボードはもう1トラック。左サイドのオルガンです。
これは先程触れた”隙間の魅力”をほどよく引き締める、ごくごく薄い味付けで全体のトラックに覆いかぶさるように演奏されています。
正に曲の総仕上げ的な役割、隠れた職人技。その特徴から僕は、このトラックだけは、ジュリーのヴォーカル・テイク完成後に最後のアレンジ作業としてつけ加えられたテイクではないか、と考えていますがいかがでしょうか。

これらすべての演奏テイクが、歌詞にマッチした何やら不穏な空気、暖かみを断ち切るような攻撃性でもって、ジュリーのヴォーカルに勝負を挑んでいるように僕には感じられます。

そこで、ジュリーのヴォーカルですよ。
歌の世界に入り込み、情念、怨讐に溺れる寸前にありながら、表現者としての誇り、美しさを失わないヴォーカルの凄みは、タイガースの「美しき愛の掟」に始まり、最新作「3月8日の雲」「恨まないよ」にも脈々と受け継がれています。その間に流れた40年以上の時間を考えるだけでも、ジュリーが奇跡の歌い手であることを思い知らされます。
つくづく、その歴史のほんの一部しか体験できていない自分が、仕方のないこととは言え、悔しいんですよね・・・。僕がジュリーを語る時の暑苦しさ、濃さは、たぶんその辺りの思いが作用しているんじゃないかなぁ。

「影絵」のエンディングは長尺のバンド演奏・・・歌メロの出番は終わり、普通のアイドル歌手のレコーディングであればその時点で歌入れ作業はお役御免、マイクを離れてヴォーカル・トラック終了となるべきところ、ジュリーはバンドの高揚に合わせて息を吐いたり、小さくシャウトしたり・・・最後の最後まで歌の主人公の呻きを表現しているのが確かに聴き取れます。本当に素晴らしい!
演奏者との容赦のない戦闘モードは、とことんジュリー・ヴォーカルの本質を引き出すのでしょうね(これは以前、「誓いの明日」の記事でジュリーとピーの間に流れる緊迫感について書かせて頂いた、あの感覚と似ています)。
堯之さんのアレンジは、そこまで見越しているかのようです。

最後に・・・松本隆さんの詞について。
「影」とは、aiju様の御記事中で知った藤城さんの『光と影88展』という展示タイトルに象徴されるように、「光」と対のフレーズなのですね。
しかしこの歌の主人公は、「光」を認識する力を失ってしまっているようです。目に映る色は、黒、また黒・・・。”お前”の身を包むタートルネックも、”あの日”の記憶の中の受話器の色も、すべて黒。
黒を認識するためには光も見えているはずなのに、黒だけを見、そして「黒」だからという理由で、自分の見るものを拒絶し続けます。
「光」と「影」は”相対する真逆の物質”として捉えられ、その象徴として「影絵」というフレーズが登場するのです。

♪ 黒は哀しい    終り知らせるはかない色だ
  Em     Bm  B♭m Am                       Bm    B7

  黒は淋しい      まるで影絵の俺とお前 ♪
  Em     Bm  B♭m  Am                    Em

松本さんの作詞作品と言えば、前作『いくつかの場面』収録の「燃えつきた二人」がまた”別れ”の物語です。
リリース年が近いことに加え、個人的に『いくつかの場面』と『チャコールグレイの肖像』をほぼ同時に初めて聴いたせいだと思いますが、僕は「影絵」の詞を「燃えつきた二人」のその後の物語として捉えてしまいます。毎度お馴染みの深読みですけどね・・・。

「燃えつきた二人」では、同じ志を持つ若い男女(どうしてもアルバム『いくつかの場面』収録曲からは学生運動の雰囲気を感じてしまうので、ここでもそういった立場の男女、として僕は解釈しています)の別れがありました。
愛情か、生活か、それとも思想か・・・僕の想像では、とにかく何か行き詰まった末に女性を残し遠い場所へと去る、男からの身勝手な決別です。

「影絵」ではそんな二人が年を重ね、いつ再会したのかは分からないけれど、歳月と共にお互いに心に響き合うものを喪った状態に陥っています。
「さらばきらめく青春よ」という、感傷や郷愁の余地も最早まったくない、完全な「決別」が描かれている・・・とまぁ、これは僕の拡大解釈。

一方的に”終わり”を決めつけ、相手を傷つけておきながら自らがそれ以上に傷つき、無表情に景色を見つめている・・・そんなテーマの鬱屈した詞を2作品続けてジュリーに提供した松本さんの意図は・・・?
単に時代の反映だったのでしょうか。それとも松本さんから見た”翳りある青年”としてのジュリー像が詞に投影されたのでしょうか・・・。


さてさて、次回更新のお題は・・・未定です(汗)!

前回記事・大宮レポの締めくくりで、執筆予定と宣言していたピーの新譜がまだ我が家には届いていないんですよ~。
おっかし~なぁ・・・ピーのファンサイトのみなさまは、だいたい日曜日の段階で受けとっていらっしゃるようなのに・・・。
予約注文は解禁日に速攻で済ませたんですけど、その際に何かヘマやっちゃったのかなぁ。いかにも僕のセンスの無さがヘマに繋がりそうなオーダー・システムなんですけどね(汗汗)。
今週いっぱいは待ってみようと思いますが、とにかく実際に曲を聴いてみないことには、すぐに考察記事が書き上げられるかどうかはまったく分かりません・・・。

ジュリー・ナンバーについて書くか、ピーの新曲について書くか、それは次の記事がupされてからのお楽しみ・・・ということでどうかひとつ。
それでは、(たぶん)来週またお会いしましょう!

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2012年10月20日 (土)

2012.10.6大宮ソニックシティ 沢田研二『3月8日の雲~カガヤケイノチ』セットリスト&完全レポ

(註:10月20日、ようやく記事完成いたしました。LIVE当日から2週間・・・毎度のことながら、時間かかり過ぎですね(汗)。
例によって、記事更新の日付を完成日に移動させて頂きました。今回も長々とおつき合い頂きありがとうございました!)

☆    ☆    ☆

本題のレポに入る前にまず、現在巷を騒がせております、ジュリー来年のお正月LIVEのツアータイトルについて先に書いておきたいと思います。

これは、正に大宮公演でジュリーがMCで予告してくれていたタイトルでした。
大宮でジュリーの話を聞いた時点では、僕はこれ、完全にネタだとばかり思っていましたから・・・その後すぐに正式にオフィシャルサイトに明記されているのを見た時には、ひっくり返りましたよ~。

大宮のMCで、どういう経緯でそのタイトルの話に流れたのかと言いますと。
「いつも先々のことを考えている」
ということから繋がった話題でした。レポ本文と前後しますが、その部分だけジュリーの発言をここで紹介しておきましょう。

「例えば、来年の今日のこととかももう考えているんですよ~。でも、とりあえずすぐにやらなきゃイカンのは、お正月のツアータイトルを考えてくれ、と言われていましてね・・・。
今考えてるのは、東京公演が『燃えろ!東京ヤクルトスワローズ』
(この時点では”ヤクルト”の呼称もあったような・・・)、大阪が『燃えろ!阪神タイガース』、名古屋が『燃えろ!中日ドラゴンズ』・・・(最後の方は、自分で言っておきながら吹き出していました)」

お客さんの多くが
「エ~~~~?!」
とブーイングのような反応をしますと

「いいじゃないの!ワタシが野球好きだってのはもう分かってるでしょ!どんなに嫌がられても野球の話はするんだから!
・・・まぁ、(ツアー全体で)統一してくれ、と言われたらまた考え直さにゃなりませんが・・・」

とのことでしたから・・・会場のほとんどのお客さんが(僕も含めて)、さすがにこの野球ネタのタイトルはMCサービスで、公演全体で統一されたジュリーらしいセンスのツアータイトルになるんだろうな、と考えていたはずなんです。
ところが、ジュリーは本気も本気だった。

ならば、ファンとしても本気で考察せねばなりません。ジュリーが何処に向かい、何を求めているのかを・・・
(←コラコラ)

いやいや、実はこれ・・・ジュリーファン且つプロ野球好きな人が少し考えれば、「はは~ん」と思い当るフシがあるわけです。

ジュリーはまぁ阪神ファンで、アンチ巨人で・・・と表面から見ればそういうスタンスなんですけど、一歩踏み込めば純粋な”野球ファン”
僕らにとってジュリーがスーパースターであるように、ジュリーにとっての”スーパースター”の多くがプロ野球選手であることは間違いないでしょう。
素晴らしいタレント達が、シーズン通して熱く燃え、しのぎを削り、泣き、笑う。最終的にどの球団が頂点に立つにしろ、シーズン最後の最後まで白熱する、そういうプロ野球シーズンをジュリーは求めているのだと思います。
今は日本シリーズの制度も大リーグに倣ったりして色々変わってきてはいるけど、昔からのプロ野球ファンにとっては、何といっても各リーグをどの球団が制するのか・・・それが決まるまでのスリリングな過程が一番の楽しみ。
たとえ自分の贔屓のチームが最終的に優勝を逃しても、シーズン終盤まで優勝争いに噛んでいた年って、優勝を遂げた年とはまた別物の、爽快な思い出として残るものなんですよね・・・。

(僕にとっては1992年。ヤクルトの優勝が決まった後、「来年こそは!」という思いを胸に最終戦で素晴らしいピッチングをした仲田幸司の勇姿には感動しました。こりゃ来年仲田は20勝はするぞ、と思いながら観ていましたが・・・以下自粛。でも、仲田幸司は僕の青春時代の忘れがたいヒーローの一人です)

そこで考えなければならないのが、さて今年のシーズンを振り返ってどうだったか、ということですよ!

パ・リーグの方は盛り上がりました。
優勝も、クライマックス進出チームも最後の方までもつれ、数々のドラマが生まれ、正に1シーズンかけて泣いたチームも笑ったチームもあって、ジュリーも「うんうん」と観ていたはずです。

問題はセ・リーグね。

巨人の大独走でした。
夏以降は、純粋な意味での”白熱した優勝争い”など存在しなかったと言っても良いでしょう。
いや、2位の中日なんて、実はかなりの好成績なんですよ。数字だけなら、優勝してもおかしくない戦績を残しています。それでも、1位の巨人には遠く離されてしまいました。
巨人は、超大型補強による圧倒的な戦力(ソフトバンクから特級エースクラスの投手を2人攫ってきたりとか)を誇っての大楽勝。巨人ファンにとっては痛快なシーズンだったでしょうが、他球団のファンとしては、優勝争いの醍醐味など微塵もありませんでした。
内海や阿部だけにならやられても仕方ないけど・・・という思いが、他球団のファンにはどうしても残ってしまうのです(まぁ、杉内は同郷ということもあって、個人的にはすごく好きなんですけどね)。

そう考えると

巨人以外のセ・リーグ球団、今年は燃えてくれよ!セ・リーグが盛り上がってこそのプロ野球やないか!

と、来年お正月早々にハッパをかけたいジュリーの気持ちが分かるってモンじゃあないですか~。
ジュリーの本心としては、横浜、広島にもツアーで出向いて行きたいくらいの気持ちだと思いますよ。

たとえ結果として優勝するのがどのチームであれ、最後まで熱い戦いで、プロ野球ファンとして熱い思いを味わいたい・・・それが、お正月のツアー・タイトルに込められた、ジュリーのセ・リーグへのエールだと僕は受け取っています・・・。

・・・と、すみません、途方もなく長い枕になってしまいました
(←最初の更新が遅れた原因)
ここまで長々と語るつもりはなかったのですが、つい・・・。
阪神ファンの方なら、僕のこの長い枕に込められた気持ちも分かってくださると思いますが(泣)。


☆    ☆    ☆

さぁ、それではいよいよ本題の大宮のレポです!

ジュリーLIVE初めての神席(上手ブロック3列目)、しかもセットリストをネタバレせずに臨んだYOKO君(長い読者のみなさまにはお馴染み、東京ドーム『ジュリー祭り』の相方)との参加ということで、何だか隣席の僕まで新鮮な感覚で楽しめました。
なにせ、それぞれの曲のイントロの瞬間に
「おお~~っ!」
とか
「えっ?何だっけ?」
とか
「うわ~、これは大好きだ~!」
とか、隣で絶叫するのが聞こえてくるんですから・・・。

完全にジュリーに堕とされ、終演後には歌や演奏の細部に渡って散々語りまくっていたYOKO君でしたが、彼の感想を聞いていて一番心に残ったのは、正に今ツアーのセットリストを総括したような

「やっぱり、新曲に限らず3・11というものを踏まえてすべての曲の歌詞に聴き入った。極端な話、アンコールのヒット曲2曲が無くても納得のセットリストだった。しかも全国ツアー、あちこち地方も廻るのによくぞこのセットリストで押してると思う」

という言葉。
話を聞いていた僕の方が、初心に立ち返るような思いでした。
やはり参加が1箇所の会場、そこに集中し充分に新譜を聴き込み、欲も無くまっさらな状態で臨んだYOKO君らしい、核心を突いた感想だと思いました。

大宮でのジュリーはステージの横移動が目立ったように感じました。上手側、下手側それぞれの端っこまで頻繁に進出し、中央に留まっているシーンがこれまでより少ない感じだったかなぁ。
曲の1番では下手側、2番の同じ部分で上手側、といったような動きはこれまでもありましたが、この日は格別にキチンとそれぞれのサイドのお客さんに見せ場を作ってくれているような・・・僕達二人は神席とは言え柴山さん正面くらいの上手寄りの位置でしたから、ジュリーのそんな積極的な動きはとても有り難かった~。

また、柴山さんが上手で前方にせり出してくる時にはジュリーは下手側に移動、逆に下山さんがせり出す時には上手側にと、ギタリスト二人の見せ場とのバランスをハッキリと意識しているようにも感じました。
そのため、下山さんのせり出し率が高い後半のあの怒涛なるロック・コーナーでは、ちょうどジュリーが上手サイドの僕らの目の前に留まり、おいっちに体操をやりまくるという至福の事態が勃発。
YOKO君がおいっちに体操をためらっている(シャドーボクシング・スタイルになっていた。ジュリーのLIVEではこのテの男性をよく見かけます)のをジュリーがチェックしていたかどうかはともかく、YOKO君にとってはそんなジュリーの

オマエ、しっかり体操せんかい!攻撃

を数曲連続で受けていたに等しいわけで・・・曰く
「死ぬかと思った」
のだそうです。

今回のレポートは、そんなYOKO君のビビッドな反応、そして彼が日頃から
「何か違うと思うんだよね・・・」
と躊躇、スルーしていた、正調・おいっちに体操を遂に繰り出すに至るまでのジュリーとの長いバトル(いや、妄想でそんな気になっているだけの話ですよ)をメインに執筆したいと思います。

こんな日に限っての失態・・・リストバンドを忘れての参加となったDYNAMITEではありましたが。
兎にも角にも、開演です!

1曲目「SPLEEN~六月の風にゆれて」

Panorama

後にセットリスト前半が終わって休憩に入るなり「1曲目、驚いた!」とはYOKO君の弁。
YOKO君はアルバム『パノラマ』を持っていないのですが、この曲は『ジュリーマニア』で印象に残っていたらしく
「アルバムを持っていない曲の中でも、自分の中に深く入り込んでる曲というのが何曲かある。この曲は”エリナー・リグビー”との関連もあってそれが強かった」
とのことでした。
僕だって、ここまで何度も観てすっかり慣れてしまっていたけど、初日には、この曲を初っ端に配置という選曲に驚いたっけなぁ。

1番の段階では、まずジュリーの上半身に照明が当たり、キーボードの泰輝さんにもスポットが当てられます。で、コーラスが入ってくると、柴山さんとGRACE姉さんにも薄い照明が当たっていたんですね。
ただ、下山さんは2番まで完全に闇に埋もれています。この曲では下山さんだけコーラスとってない、ってことなのね・・・。

ジュリーのヴォーカルは伸びやか、心地よい!
結局この日は、ラストの「ス・ト・リ・ッ・パ・-」以外で高音に苦しむこともなく・・・。荒れた喉をうまくなだめながらも、「行ける!という手応えを確かめながら華麗に歌っている、と感じた曲がいくつかありました。
例年以上に喉を酷使する今ツアー、最後の追い込みに向けて、ジュリーの声も充分復調に向かっているのではないでしょうか。

2曲目「そのキスが欲しい」

Reallyloveya

イントロの瞬間
「おっ、おおっ!・・・ハハッ、凄ぇ・・・」
とYOKO君。

「おおっ!」というのは当然、「この名曲が来たか!」という感動の声。僕もYOKO君も初めてのジュリーLIVEが東京ドームの『ジュリー祭り』でしたから、やっぱり「そのキスが欲しい」は特別な曲です。
YOKO君は『PLEASURE PLEASURE』ツアーに続き3度目の「そのキスが欲しい」との遭遇となりましたが
「何度聴いても盛り上がるから、(参加したLIVEで)毎回当たっても構わない」
という大歓迎のナンバーのようです。

「凄ぇ・・・」というのは、イントロの瞬間に僕も含めて周囲のお客さんが揃って立ち上がり、頭上手拍子を始めた様子を見ての、驚きの声。
僕らにとっては最早当たり前のシーンも、ソロLIVEは3年ぶり参加となるYOKO君にとっては新鮮な光景なのでしょう。

間奏では
「おおっ、これ下山だったっけ?!」
と反応し下手側をガン見するYOKO君。
エンディングに至っては
「うわ~、終わり方が違う~!あのmaj7が好きなのに~!」
などとマニアックな絶叫。
LIVEに慣れてしまっているから僕などもつい忘れがちですが、この曲のレコーディング・ヴァージョンは結構オシャレな和音の突き放しで終わるのです。
でもねYOKO君、最後がmaj7だと、あのジュリーのキメポーズが合わないのだよ・・・。

3曲目「コバルトの季節の中で

Tyakoruglay

YOKO君、「お~!!」とまたしてもイントロで絶叫。
いわゆるジュリーの数あるヒット曲・・・「コバルトの季節の中で」は、その中でも彼が特に好んでいる曲のひとつです。『ジュリー祭り』で、イントロの瞬間泣き笑いになっていたYOKO君の表情が思い出されます。

セットリストのネタバレをせずに参加したYOKO君には、事前にひとつだけ、ツアー前半に「お嬢さんお手上げだ」を歌ってくれていたのが、後半では他の曲と代わってしまった、という経緯を話していました。
その際に彼は
「代わった曲はやっぱりアルバム『今度は~』から?なになに?”女はワルだ”?”ハッピーレディー”?」
などと、全然検討外れなカマかけ攻撃をしてましたけどね。

後で、3曲目の「コバルト~」の位置に「お嬢さんお手上げだ」が入っていたんだよ、と教えてあげると悔しそうにはしていましたが、とにかくLIVE中は「お嬢さん~」の代わりの曲の話もすっかり忘れるほどに集中していた、とか。

「柴山さんのアルペジオ、ハイコードだったねぇ」
「初っ端、3フレのGだよね」
などと、打ち上げで語り合いました。
僕もそうなのですが、YOKO君にとっても、どんなふうにギターを弾いているのか、どのポジションでコードを押さえているのか肉眼で見える、というのがとても嬉しかったようです。

~MC~

「お待たせしました~!
雨が降ったり曇ったり晴れたり・・・コバルト色の空になったりしている中、連休の始めに何処にも出かけず、このようなむさ苦しいところへようこそおいでくださいました!」

確かに、咲き乱れる花々に混ざって、むさ苦しいのが2人
(昭和41年男と昭和42年男)、前の方でつっ立ってるよね・・・。
というワケでもないでしょうが、この日はちょっと蒸し暑い気候ではありました。

ここでのMCのシメは最早恒例。
「鉄人バンド!(と、一回言葉を切って)ともども・・・張り切って参ります!」

4曲目「1989」

Boukyaku

イントロでYOKO君が静かだったので、「あれっ?奴はこの曲知らないんだっけな・・・」と思ってしまいましたが、後で確認すると
「知ってるよ!『忘却』だよね」
とのことで・・・どうやらイントロからGRACE姉さんに見とれていただけのようです。とにかく打上げでは
「グレース、いきなりカワイくなってんじゃん!」
と連呼してましたからね。

神席とは言え上手ブロックに寄っていたからでしょうか、僕もこの日はびわ湖最前列のようにジュリーの魔力に金縛りに合うまでには至らず、ジュリーとバンドメンバーをまんべんなく観ることができました。
Aメロで、歌詞部を泰輝さん、直後のハミング部を柴山さんとGRCE姉さん、と追いかけるような構成の鉄人バンドのコーラス・ワークに感動。

間奏では柴山さんが目の前にカッ飛んできて、「あぅあぅあぅ・・」と渾身のソロ・・・そのフレット移動のソツの無さよ!
ただこの間奏部のひと回し目では、席の関係かと思いますが、ベース音(泰輝さんの左手)のサスティンが強過ぎて、全体のアレンジが混沌としていましたね・・・。音響だけで言えば、たぶん大宮ソニックは2階席センターあたりが一番良さそうです(プレプレツアーで体験済)。

5曲目「届かない花々

Croquemadame

イントロで「おっ、アコギ!いい鳴りしてんね~!」と再び反応しまくるYOKO君。この曲も彼にとっては『ジュリー祭り』『PLEASURE PLEASURE』に次ぐ3度目の体感で、遭遇率は高いはずですが、YOKO君はそんな感じはしないと言います。おそらく『ジュリー祭り』参加の時点で未知の曲だった、という理由からくるものでしょう。

「良心があること♪」で左胸に掌を置き、「魂はあるということ♪」で同じく左胸に拳を置く・・・この一連の動きを、ちょうどジュリーは僕らの席の正面に進出したタイミングでやってくれました。
胸に拳を置いてトントン、と叩くのは、YOKO君の好きなプロレスラー、獣神サンダーライガー選手が「大切のはココだろ、ココ!」と若手選手を叱咤する際に繰り出す仕草でもあります。

泰輝さんがオリジナル音源には無いオルガンの音を加えているのが、この日はよく聴きとれました。
やはり、演奏者の動きを肉眼でハッキリ確認できるから、音が連動して耳に入りやすいのでしょうか。松席に感謝です。

6曲目「涙色の空

Namidairo

セットリスト前半が終わり休憩に入った時、YOKO君は「(ここまで)1曲だけ分からない曲があった」と言ってきました。僕はてっきりそれが「1989」だと考えたわけですが、正解はこの「涙色の空」。

「おっかしいなぁ、2年前彼をLIVEに誘った時に、何で新譜を聴かせてなかったのかなぁ」
と首をひねりながらよく思い出してみると、あの年はジュリワンの方にYOKO君を誘ったんだった・・・。
つまり正真正銘、初めてこの曲を聴く、という人が隣にいたわけで・・・「いやぁイイ曲!」との感想がなおさら嬉しかったです。

エンディングでの柴山さんの掠れながら伸びるサスティンは、すっかりアレンジ定着したんですね~。

7曲目「3月8日の雲

38

「次は新曲を」ということで、ジュリーから恒例の新譜紹介があったのですが・・・。
八王子では確かに「アルバム」と説明してくれたのに、この日は「シングル」と言ってたなぁ、ジュリー。
やっぱり「4曲入りのシングル」というのが普通の認識なのでしょうね。

さて、YOKO君は充分に新譜を聴き込んでこの日に臨んでいます。CDリリース当初、アマゾンさんの予約分発送が大幅に遅れる状況があって、我慢し切れず店頭でダブって購入した僕が、後からアマゾンさんから送られてきたものをそのままYOKO君に引き取ってもらった、という経緯。
新譜を聴いたYOKO君の感想は、僕とほぼ同じでした。
「ジュリーの本気、コンセプトが凄まじいことを感じた上で、鉄人バンドの演奏と作曲、アレンジの素晴らしさを解明せずにはいられない名盤」
だということ。

さぁ、その「名盤」を初めて生で体感して、彼があの凄過ぎるジュリーのヴォーカルにどんな思いを抱くのか・・・そこが今回の大宮公演神席で、僕が最も楽しみにしていたことでした。
結果、予想通りの
「CDももちろん凄いが、生は凄過ぎる!」
という感想。
自分以外の人からこの「当然」の言葉を聞くのが、どれほど嬉しいことか。ファン心理というのは不思議なものですね・・・。

演奏では、GRACE姉さんのドラムスのキックと下山さんのアコースティック・ギターをキッチリと合わせてアンサンブルとする構成に、斬新さを感じたそうです。
「グレースのキック(バスドラム)は相当俺好み」
という発言が象徴するように、この日のYOKO君はジュリーや柴山さんばかりか、GRACE姉さんにも完璧に堕とされて帰ったみたいですね。

8曲目「恨まないよ

38_2

これまた当然!のYOKO君の感想。
「新譜4曲の中で、生で聴いて一番凄かったのは、これ」
・・・もう、お客さん全員がそう感じているんじゃないか、と考えてしまうほど。それほど今ツアーのこの曲でのジュリーのヴォーカルは、突き抜けていると思います。

ツアーが進むに連れて柴山さんの間奏が凄いことになってきていますが、実はその直後のAメロ部にも進化があります。
初日の段階ではこのクリシェするフレーズがちょっと忙しそうに聴こえたのに、今はどっしりとしているのです。おそらく音量設定と(初日は全体のバランスからすると音が大きかった)、触れるようなピッキングへの変化によるものではないでしょうか。
この間奏後のAメロでは、2回し目から泰輝さんがオルガンでやはりクリシェするフレーズを弾くので、ギターとキーボードの音量バランスはとても重要なのです。

ただYOKO君は、「この曲ばかりは、鉄人バンドの演奏にまったく目を向けられなかった」とのことで・・・分かる、分かるぞその気持ち!
それほど凄いジュリーのヴォーカルなんだよね・・・今ツアー初参加の彼のマッサラな感想がそれを改めて証明してくれたようで、これまた嬉しかったです。

9曲目「F.A.P.P

38

YOKO君とは開演前に大宮駅で軽くお茶してたのですが、ジュリー・ナンバーの話題で一番盛り上がったのが、この「F.
A.P.P」のコード進行について。
やはり歌詞が特殊ですから柴山さんの作曲についてまで語られることが少ないけど、「F.
A.P.P」は相当レベルの高い、凝りに凝った進行の楽曲なのです。この緻密な和音の組み合わせ、転調の妙が、楽器を嗜まない方々にはなかなか伝え辛いのが本当にもどかしい・・・。

YOKO君も新譜を聴くやいなや、「ひゃぁ、どうなってんだこれ?」ということで、必死に自分でコードを起こしてみたそうです。
開演時間を待ちながら、YOKO君の採譜で足りないところを教えてあげたり、逆に1箇所マイナー・コードの特殊な使い方を指摘されたり・・・時間がいくらあっても足りないくらい、この曲の進行については語り甲斐があります。

で、いざLIVE・・・何とYOKO君はこの曲で下山さんをガン見してたんですって。何故かと言うと、エレキでコード・カッティングをしているから、だそうです。
下山さんのフォームで、「F.
A.P.P」の複雑無双のコード進行をずっと確認し続けたようで、
「ジュリーのヴォーカルも素晴らしかったけど、この曲ばかりはコードを見ておきたかった」
と言っていました。

さて、ジュリーのヴォーカル・・・「長崎、広島」の部分は、横浜からずっと1オクターブ下で通しているようですね。
大宮では「人は何故」から元のキーに戻していたけれど・・・ジュリーの意図はなお謎のままですねぇ・・・。

10曲目「カガヤケイノチ

38


YOKO君はこの曲のコード起こしはまだやっていないようでしたが、「これも転調が凄いよ」と言ったら頷いていました。新譜のレコーディング音源としてはこの「カガヤケイノチ」が一番好きな曲なのだとか。
Aメロ部では、どうやら下山さんのアコギはDメジャーを弾き続け、柴山さんのエレキが「Dmaj7→D6」の味付けをする、というギター・アンサンブルのようです。
通常、柴山さんクラスの達人になると「Dmaj7」のローコード・フォームは1本指のセーハとするのが普通ですが、この曲では、ひとさし指、中指、薬指をきれいに形良く縦に揃えての3本指のフォーム。そして、1小節ごとに中指だけをフレットからパッと持ち上げているのがハッキリ見えました。その状態が「D6」のフォームになっているのです。

「see・・・♪」の部分の柴山さんのフォーム移動もカッコ良かった。「Em→Emmaj7→Em7」の後、僕は普通にそのままクリシェで「Em6」でコードを起こしていたけれど、柴山さんはそこで「C#m7-5」だったんじゃないかな。同箇所の下山さんのフォームは確認できませんでしたが、ここもまたアコギとエレキで解釈を分けているのではないでしょうか。

一方、サビのギター兄弟はほぼ完全なユニゾン。
「B→F#→G#m→D#m」と進めば次の「E」も勢いでハイ・ポジションのまま進みがちですが、二人ともスッ、とローに戻る・・・その瞬間の左手の捌きが、やっぱり素人とはひと味違うように見えます。

ジュリーは1番の「ぶれ続けても♪」で最高音の「ラ」を凄まじい気合で歌いました。もちろんしっかりと最高点に到達して。
64歳のジュリーが高い「ラ」の音を生のLIVEでスッと出すことは容易ではありません。うまく最高音に届かないシーンも、今ツアー中何度も観てきました。しかしジュリーはキーを変えずに挑戦を続けています。キーを変えていないことは、先述した柴山さん達のコード・フォームを見れば断言できるのです。
「祈りを込めて歌う」=「手を抜かない」という思いも、ジュリーの中にはあるのかもしれませんね。
とにかく・・・「カガヤケイノチ」が、穏やかなメロディーに反して相当体力を消耗する1曲であることは間違いないと思います。

間奏部の両手を拡げるジュリーの仕草は、以前に比べて羽ばたくような動きがより大きくなったように感じました。
胸の高さで一度静止し、さらに羽ばたいて肩の高さでもう一度止まります。何を表現しているかは分かりませんが、ジュリーの立ち姿、ピタッと伸びた姿勢に圧倒される思いでしたね・・・。

あとYOKO君、最後のサビはちゃんと歌わなイカンぞ!
至近距離で指揮をとるジュリーに見とれて、固まってしまう気持ちは分かるけどね・・・。

~休憩~

ジュリワンの『僕達ほとんどいいんじゃあない』ツアー以来のジュリーLIVE参加となるYOKO君は、鉄人バンドのインスト無し、という構成も初めて。
「そりゃあそうだよね、バンドメンバーの年齢とか考えると・・・」と、そこは納得の様子です。
それよりも何よりもステージ前半を終えた瞬間から、「いやぁ素晴らしい!」を連呼していたYOKO君。新譜をはじめとするジュリーの凄まじいヴォーカルと、細部に渡って肉眼で見える鉄人バンドの演奏にすっかり酔いしれてしまったようでした・・・。

☆    ☆    ☆

さて、ここで少しLIVEレポとは離れた話題を。
YOKO君とは開演前に色々と話をしたのですが、新譜以外のジュリー・ナンバーについては突っ込んだ話をするわけにもいかず(セットリストのネタバレの危険性がありますからね)・・・もっぱらビートルズのことを話しました。
今年はアニバーサリー・イヤーということで、世間でも大層盛り上がっているビートルズ。ラジオ、テレビなどで彼等の貴重な音源や映像を大いに楽しめる年となっていますね。TBSさんが映画『マジカル・ミステリー・ツアー』を放映、というかなり大冒険な話にビックリしたり・・・。
これだけ世間が盛り上がっていると、ビートルズ好きな著名人達も、多忙な最中を縫ってでも、今年は色々と楽しんでいるはずなんですよね。

僕が期待しているのはね、タローです。
「昔、タイガースでやったなぁ・・・」と改めてビートルズ・ナンバーを懐かしんでいるんじゃないかなぁ、と。
タイガースのメンバーの中では、そんな姿が一番想像し易いのがタローなのです。タローの作る曲には、ずっと変わらぬビートルズのエッセンスを感じることができますからね。

僕は、来たる11月19日のピーとタローの中野サンプラザLIVE『Childhood Friend』に出かけようと思っています。
どんなセットリストになるかはまったく予想できないんだけど・・・タイガース時代に演奏したビートルズ・ナンバーの出番があるかも、と楽しみにしているところ。一番聴きたいのは「シー・セッド・シー・セッド」だけど、タローのヴォーカル曲ということで考えると「ザ・ナイト・ビフォア」あたりの渋いナンバーにも期待できます。
いずれにしろ、ビートルズ・ナンバーでピーのドラムスが聴けるとなると個人的にはとても盛り上がるところなのですが・・・。

そうそう、ピーと言えば・・・10月12日からオフィシャル・サイトにて、新譜『一枚の写真/楽しいときは歌おうよ』(CD&DVD)の予約が始まっていますよ!
「一枚の写真」はタローの作曲作品ということで、色々と想像を膨らませています。タローの得意な2大パターンのうち、「朝焼けのカンタータ」「Long Good-by」のような長調バラードなのか、「青い鳥」「あなたが見える」のような短調ポップス・パターンか・・・はたまた全く別の路線なのか。
発売は10月23日。これまた楽しみですね!

☆    ☆    ☆

さぁ、休憩時間には楽しい再会もあり、リラックスしたムードのお客さんの中で、セットリストを知らないYOKO君が一人ソワソワしていたり・・・。
照明が落ちてからのお客さんの着席した雰囲気で、後半1曲目、まずはバラード・ナンバーらしい、ということはYOKO君も予想できたようです。
それでは、後半レポに参ります!

11曲目「約束の地」

Beautifulworld

先述の通り、「3・11を踏まえてすべての曲の歌詞を聴いていた」と語っていたYOKO君が、その際「例えば・・・」とタイトルを挙げていたのがこの「約束の地」でした。

エンディングのジュリーの動きの中に、「カガヤケイノチ」同様ヒラヒラと羽ばたく両腕のゆったりとした仕草が加味されているような・・・。あと、以前は「抱きかかえる」ように見えていたけど、今は「引き込む」ように見えるなぁ。ジュリーの動きが変わったのか、僕の見方が変わったのか・・・。

「約束の地」は今回のセットリストで特に感動させられた曲ですから、ツアー終了後に考察記事を書こうと考えていますが、歌詞、アレンジ、ジュリーの動き等について聴き手の解釈の余地が幅広く、なかなか執筆が大変そうです。頑張ります!

12曲目「君をのせて

Acollection

最近になってようやく理論書などで和音の勉強を始めた、というYOKO君が「目からウロコ」だったというのがオーギュメント、ディミニッシュの長短3度循環コードなのだそうです。
僕が以前「下山さんは”君をのせて”のディミニッシュを2通りのポジションで使い分けてるよ」と話しても「何のこっちゃ?」といった風情でしたが、この日は下山さんの伴奏フォームをガン見だったとか。

しかし僕としてはイントロ、歌メロに入る前に下山さんが撫でるように弾いている正体不明のコード・ポジションの方が気になります。
音は
「C→Ddim→Em→E♭dim→Dm7→G7-9→Cmaj7→C6」
で間違いないと思うのですが、どうも通常とは違うフォームで弾いているような・・・。

間奏は、泰平さんのストリングス→柴山さんのリードギター→泰輝さんのピアノと繋がります。ただ、最後のピアノが終わるか終らないかのタイミングで柴山さんが最高に渋い単音を挟んでいることに気がついている方は少ないんじゃないかな?是非次回、注目してみてください。

最後のジュリーのお辞儀もすっかり定番になってきました。このお辞儀が今ツアー初日からあったのかどうかすら、最早忘却の彼方で自信がありません・・・。

13曲目「我が窮状」

Rocknrollmarch

打ち上げで、「涙色の空」と「我が窮状」は何故毎回ジュリーのヴォーカルがあんなにイイのか、と話題になりました。
言われてみれば、本当にその通りだと思います。

2曲の共通点は・・・まずピアノ伴奏だということ。
さらに、ジュリーの作詞作品ということ。そしてその詞の内容が、人間・沢田研二の生き方の大きな2本の柱・・・それぞれを象徴するような内容である、ということでしょうか。

特に毎回素晴らしいのは、最後の「許しあい、信じよう♪」の箇所。
「許しあい~~~~♪」と目いっぱい声を伸ばし、一瞬のブレスがあって、「信じよう♪」と続きますが、その一瞬の呼吸に気品、デリカシーを感じます。また、伸ばした声を”切る”瞬間の音というのがジュリーにはあって(微妙なサ行の発音が小さく挿入される)、その叩き斬り方には荒々しい男らしさも感じます。
至近距離の席だと、音を切る瞬間にジュリーが小さく首を振ってから「キッ」と静止する動きも、ハッキリ見ることができるんですね・・・。

14曲目「時の過ぎゆくままに」

Ikutuka

「これだけ近いと、リードギターどうやって弾いてんのか、どうしても見ちゃうよね」とYOKO君。
熱唱するジュリーから視線を外してしまい申し訳ない、という気持ちだったそうです。そうやってギターばっかり見てたから、この後のロック・コーナーでジュリーの執拗な攻撃を食らうことになるわけですが(違)。

ともかくYOKO君の説によると、柴山さんの弾く「時の過ぎゆくままに」には、スライドさせる音に特徴があるのだとか。
僕はラストの、かなり高い位置で弾くEmが好きでいつも見てしまいますけどね。

例によってイントロでは「わぁ~っ」という、”みなさまご存知の曲”限定の場内のどよめきが起こりました。でもこの日のジュリーのMCに、「自分の歌いたい曲を選んで、有名な曲が少ないセットリストになっている」という内容の話は一度もありませんでした。
ツアーもいよいよ残すところ1ケ月を切り、そんな話をしながら各地を回る、という時期も過ぎてしまったということでしょうか。それとも、大宮がリピーター終結会場だと認識されていたとか・・・?

15曲目「ラジカル・ヒストリー」

Dairokkan

恒例、ジュリーの「盛り上がるかな?」のひと声から始まった怒涛のロック・コーナー。
いきなり総立ちのお客さんにYOKO君もビックリ。カバンを膝の上に置いた体勢で、すっかりバラード・モードに落ち着いていましたからね。
慌てふためいた声で「え?え?」と叫びながら立ち上がります。
彼にとっては、「自分の知らない曲で会場がヒートアップする」という、『ジュリー祭り』以来の試練・・・そう、YOKO君は「ラジカル・ヒストリー」を知らないのです。

ジュリーと一緒に”おいっちに体操”を繰り出すお客さんに唖然としつつも、シャドーボクシングのスタイルで拳を突きだすYOKO君。その拳が時折僕の横腹を突いてくるのは
「この曲知らね~!」
というSOSですが、無視無視。

さて、イントロはじめ間奏部や、その他ちょっとした演奏部でも、ジュリーは何度も上手側の僕らの目の前にカッ飛んできて”おいっちに体操”を炸裂させてくれました。
問題は、YOKO君がこれまで参加したジュリーLIVEでも
「アレは何か違うような気がする」
と、”おいっちに体操”の正統な動きをスルー、というかごまかし続けていたこと。
確かに、ステージ上のヴォーカリストはともかく、ロック・コンサートの客席であの光景はあり得ない、とは僕も思う・・・でも僕の場合、ジュリー、そして多くの先輩方と合わせて動きたい、という欲望には勝てません。『ジュリー祭り』では2階席からアリーナの”おいっちに体操”を見下ろしながら「いいなぁ・・・」と思っていて、『奇跡元年』で念願叶い鎖から解放されました。

ただ、YOKO君はこの神席でもボクシング・スタイルで切り抜けようとしている模様です。
そんなYOKO君の眼前にどっしりと落ち着いて”おいっちに体操”を見せつけるジュリー。これが、この日の長い長いジュリーとYOKO君のバトルの始まりでした(違)。

「前の方の席って、ジュリーに見られるんだね。知らない曲でジュリーに見つめられると照れるよね・・・」
とは、打ち上げでサラッと言い放ったYOKO君の「ラジカル・ヒストリー」の感想。
前の方の席でも見つめられるとは限らないから・・・と、その有り難みを延々と説きましたが・・・イマイチ伝わっていないようでした。

ところで・・・今回のレポート執筆がこの曲の順番になったタイミングと、10月14日・仙台公演がちょうど重なりました。
ずっと気になっていた仙台のジュリー。
聞くところによりますと、この「ラジカル・ヒストリー」、続く「気になるお前」で、今ツアー初めて、ステージ横の出っ張った花道に進出し、大いに暴れ走り回ったとか・・・。
「盛り上がるかな?」どころではなかったみたいですね。
良かった、本当に良かった~!

16曲目「気になるお前

Julie6


ここから4曲連続、イントロでYOKO君の歓喜絶叫コーナーでした。
まずこの「気になるお前」では
「おっ?おおっ!これもよく当たるな~!」
と。

「よく当たる」・・・とは、彼にとって生LIVEでの遭遇率が高い曲だということ。『ジュリー祭り』『僕達ほとんどいいんじゃあない』に続いて3度目の「気になるお前」ということになったわけです。

大好物であるこの曲、YOKO君としては無論セットリスト入り大歓迎、「何度でも来い!」といったところでしょう。

まだジュリーLIVE未体験の時点で『ZU ZU SONGS』を観たYOKO君が、「気になるお前」について「いきなり70年代のアルバムの曲をやるってのがいいね!」と言っていたことがありました。僕もYOKO君も、「気になるお前」がジュリーLIVEの定番曲だと知らなかった頃の話ですね。
また、『ジュリー祭り』参加直前にも彼は『JULIEⅥ~ある青春』を聴きまくっていたそうで、収録曲から「気になるお前」を挙げて、「是非歌って欲しい」と言っていたものです。

躍動するジュリーを間近に、感無量のYOKO君。
ただ・・・ジュリーがいくら目の前で迫力満点のお手本を見せようとも、この段階で彼はまだ”おいっちに体操”には与せず、ボクシング・スタイルのまま通していました。

さてさて、一部で話題になっている通り、この日の間奏で柴山さんのソロ直前にジュリーが

○○カズ!!

と叫んだのですよ。

その「○○」の部分がよく聴き取れなかったのです。
一応世間の結論では

クレイジー・カズ!!

だったのではないか、ということで落ち着いているようですが・・・すみません、「ネクスト・カズ!」じゃあないの?と惚けたことを言ったのは誰あろうこの僕です。
「”鉄人”の意味をとり違えるにもホドがある」と瞬時に却下されましたけどね。結構真剣に提議したんだけどな・・・。

このシーン、何人かの先輩方の証言にもあるように、泰輝さんのオルガン・ソロの部分でキーボードに貼りつかんばかりに密着していた柴山さんが何やら怪しげな動きをしていて、それを見たジュリーが「プッ!」と吹き出していたのは、僕も確かに目撃しました。
これをして、「柴山さんがあまりにカワイかったので、プリティ・カズ!と叫んだのではないか説」も提議されたようですが、よくよく考えれば柴山さんがカワイイのは日常茶飯事ですので、慣れっこであろうジュリーがそれだけで吹き出すというのは考えにくい・・・やはり、その時の柴山さんは何やらクレイジーな表情、或いは動きをしていた、と考えるのが妥当でしょうか。

この柴山さんがキーボードに絡む動きは、引き続きその後の会場でも見られているようなのですが、いずれにしろその時の柴山さんは後ろ向きの体勢ですので、表情を窺い知ることができないのですね。
謎は深まるばかりです・・・。

17曲目「時計/夏がいく

Sur


今回のセットリストで、YOKO君がイントロで大興奮するだろうな、と目星をつけていたのが、この曲と「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」の2曲でした(前半の参加であれば「お嬢さんお手上げだ」も加わっていたのですが・・・)。
特に「時計/夏がいく」は、僕が生で聴いた『奇跡元年』の様子を自慢しまくったことがあって、YOKO君は後々までそれをうらやましがっていたほど。
ようやく巡ってきたリベンジのチャンスに、YOKO君、相当爆発するんじゃなかろうか、と。

案の定、イントロ一瞬で
「おっ?おっ、おお~っ!!」
と絶叫。
『ジュリー祭り』の再現で、興奮ついでに殴られることも覚悟していましたが
(当時はまだ「シーサイド・バウンド」や「あなたへの愛」あたりで興奮しまくって殴り合っていた若輩2名でございました)・・・何を考えたかYOKO君、いきなり握手を求めてきました・・・ワケわかりません。

が、ジュリーがこの曲でも”おいっちに体操”を始めると
「いや、この曲は特に違うと思うんだけど・・・」
と呟いています。
仕方がないので僕もYOKO君に合わせ、初めてこの曲を知って二人で絶賛しまくっていた頃の自然な反応を思い出し、ゴリラ・ダンスで切り抜けました(汗)。

YOKO君曰く、初めて生で体感したこの曲では
「まぁ~、グレースがカワイイ!」
とのことでした。。
何となく分かる気がします・・・何よりこの曲のGRACE姉さんはカウベルはじめ特殊な見せ場が多く、キメのロールもオリジナル音源に忠実で素晴らしい演奏ですしね。

YOKO君、何とかGRACE姉さんと目が合わないか、と邪念バリバリでガン見していたそうですが
「さすがはグレースだよ!しっかり打点を見据えて、ヨソ見なんか絶対しないね!」
と、願い通じずとも感動しきりだったようです。

あと、大宮では特にこの曲で、柴山さんがこちらを何度も見てくれてたように感じたなぁ・・・。
とにかく柴山さん、終始ニコニコの「時計/夏がいく」でした。それに、下山さんとのツイン・リードのハーモニー部以外、ほとんどフレットを見ずに演奏しているのが凄いんですよね~。ずっと顔を上げて弾いていますから、一層笑顔の魅力が客席に伝わってくるのでしょう。

18曲目「
サーモスタットな夏

Samosutatto

またまた
「おっ?お~っ!」
と盛り上がりまくるYOKO君。ステージから見ていても(見ていれば、ですけどね)、イントロの度に「おおっ?」と反応する彼の姿は面白かったでしょうね。

初日のレポに書いたことですが・・・僕が今回のセットリストに大満足している理由のひとつには、『ジュリー祭り』で体感した未知の楽曲、或いは付け焼刃的な浅い予習で愛情が全然足りないまま素通り状態で聴いてしまっていた名曲達を、まるで「この数年で少しは勉強したか?」とジュリーが優しくおさらいしてくれているような感じがした、というヒヨッコ新規ファンならではの思いがあります。

無論それはYOKO君にとっても条件がまったく同じ。
『ジュリー祭り』の話題になった時にこれまでよく彼と語り合ってきたのは、「とにかくdisc-2の曲達の素晴らしさがほとんど分かってなかったよな~」ということです。だからこそ僕もYOKO君も、『ジュリー祭り』以降初めて新たに鑑賞した映像作品『サーモスタットな夏』ツアーDVDには、「信じられないほど贅沢なセットリストだ!」という感動を持って観たものです。
「時計/夏がいく」「サーモスタットな夏」とくれば、改めてその頃の感動が甦ってくるのも当然のこと。次に「マンジャーレ!」が来るとはまだ知らぬYOKO君、この時点ですでにフンコーし過ぎて「そろそろバラードが来てくれないと死ぬ~」という状況だったそうです。

間奏、ジュリーと柴山さんの横揺れがピタリと揃ってキレイでした。よく考えると、柴山さんの動きそれ自体は「ス・ト・リ・ッ・パ・-」とほぼ同じなんですけどね。

19曲目「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!

Samosutatto


間髪入れず、そして容赦なくYOKO君に襲いかかるジュリー怒涛のロック・レパートリー。
「サーモスタットな夏」→「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」と来れば、やはり『ジュリー祭り』のリベンジを思わずにはいられない・・・僕が初日に体験した感動を、今度はYOKO君が味わう番です。
イントロでのYOKO君のシャウトは
「お?おお~っ!これは大好きだ~!」
って・・・音楽仲間の間でも硬派で通っているYOKO君が「大好き」なんちゅうのを、長年つき合ってきてこの日初めて聞いたような・・・。

ここでもジュリーがすぐ目の前で執拗に”おいっちに体操”連発連打。抗うYOKO君を攻めまくります。
ところがYOKO君、後で聞くところによれば、この曲ではボクシングスタイルさえとれないくらいに大感動していたらしく
「とにかく歌詞が染みる・・・ジュリーのヴォーカルに聴き入ってしまって身体が動かないほどだった」
とのことでした。
これも分かる気がする・・・なにせYOKO君はこの日が生涯最接近のジュリーです。自分の思い入れの深い曲をいきなり歌われて、呆けたようになるのは充分有り得る話。特にYOKO君は自分も歌い手である、という気持ちから、覚和歌子さんの「歌い尽くしてない♪」という詞が大のお気に入りだそうですし・・・。

「そりゃ固まるよ。あのマンジャーレ!で、泣く子も黙るスーパースター、ジュリーに見られちゃってるわけだからね」
とはまた、うらやましい言葉です。
「見られてる」という発言に微塵のためらいや見栄もないというのは、やっぱり本当に見られていたのかな・・・。

とにかく打ち上げでは、「マンジャーレマンジャーレ」と連呼しながらグイグイ飲んでいたYOKO君でした。

ところで、ツアー初参加のYOKO君はともかく、ここまで数回同じセットリストを観てきている僕がビックリしたのは、間奏の下山さんです。
横浜に続いて、ドラムとキーボードの間を進んでせり出してきた下山さん・・・いきなりギターがこれまでのステージと違う!
間奏まで気づかなかったのは神席ならでは、ということで仕方ないのですが、いやぁ驚いたのなんの。音よりもまず、エメラルドブルーの年季の入ったギターに釘づけになってしまいました。
しかし・・・謎の多いギターでしたね。

打ち上げでその話をYOKO君にしてみると
「あの形ならギブソンだろうね・・・まぁでもギブソン云々よりも、あの年季の入ったボディーのキズの感じは(まぁ、キズかどうかはハッキリとは分からなかったわけですが)、間違いなくルースターズ時代に2、3人ブチのめしてるヤツでしょ」
って・・・。
ブチのめしてる、などとは人聞き、いや霊聞きが悪い!もっと他に言い方があるでしょうに・・・。

20曲目「君をいま抱かせてくれ」

Hello


ジュリー・ソロLIVEは『PLEASURE PLEASURE』ツアー以来の参加となるYOKO君、『秋の大運動会~涙色の空』でのあの怒涛のロック・ナンバー連続攻撃を体験していなかったせいか、今ツアー後半のロック・ショー・コーナーには大層驚いたようです。「いつになったら休めるのか」と。

そして、「ラジカル・ヒストリー」から数えること5曲・・・ここで遂にジュリーはYOKO君を服従させることに成功しました。
この曲の間奏は下山さんがずずい、と前方にせり出してくる関係で、ギター・ソロの間はずっとジュリーが上手寄りの僕らの目の前
位置に。繰り出すは無論、これでもか!の”おいっちに体操”です。

YOKO君が屈服したのは、正にその間奏部。

曰く「油断した」と。
何故かと言うと、YOKO君はどうやらこの「君をいま抱かせてくれ」がうろ覚えだったらしく・・・「ドームでやってた曲だけど、何だっけ、何だっけ・・・?」と戸惑っている最中にジュリーに見つめられ、「ヤバイ!と焦ったら思わず両腕が・・・」という状況だったようですね~。
一般ピーポーにしては頑固一徹、どんなに攻めてもガードの固かったYOKO君の一瞬の戸惑いを突くとは、さすがジュリー!(だから違)

180センチ近い長身のYOKO君が繰り出す正調・”おいっちに体操”は、後ろのお客さんからすればとても迷惑だったと思う・・・ごめんなさい。

21曲目「明日は晴れる」

Asuhahareru


ここでようやく”おいっちに体操”コーナーは終わり。
敗北感にうちひしがれるYOKO君に語りかけるようなテーマの歌詞を擁する(だから違)「明日は晴れる」は、何度味わっても今ツアー・セットリストの本割大トリにふさわしい!

YOKO君、この曲は知っています。アルバムとしては持っていませんが、『ジュリー祭り』後に僕が、「違いのわかる男」「夢見る時間が過ぎたら」と併せ、この曲も聴かせていましたから。
ちなみにYOKO君は「夢見る時間が過ぎたら」がとてつもなく気に入って、「コード譜クレクレヨン」などというメールを寄越してきたものです。
採譜にあたって2箇所ほど迷った部分がりましたが、tomi様にご教授頂き何とか完成。確かに自宅でギター1本で弾き語るにはうってつけの曲かもしれません。

さて、話を「明日は晴れる」に戻しますと・・・いみじくも初参加のYOKO君をして
「3・11を踏まえて歌詞に聞き入った」
「アンコールの2曲が無くても納得だった」
と言わしめたセットリスト・・・やはりこの「明日は晴れる」で完結、という構成になっているのではないでしょうか。歌詞の内容を味わいながら、ジュリーの何処までも伸びるヴォーカルと、あらん限りの力を注ぐ咆哮を聴けば、そうとしか思えません。
「お馴染みの曲は”時の過ぎゆくままに”だけ」
と各地でジュリーがMCで語った後に披露されるアンコールのヒット・ナンバー2曲は、本当に「オマケ」の意味合いなのでしょう。

バンド演奏ではこの日も、オリジナル音源には無いピアノの和音にシビれました。
さすがは、オークションで6100万円の値がつく泰輝さんの”奇跡の手”ですね~(何を言っているか分かるかたも多いと思いますが、この項は10月17日放映の『相棒』を観た翌日に執筆しています。「手だけ出演」の泰輝さん、素晴らしい!)。

~MC~

現執筆時点で、いつの間にやらLIVE当日から2週間ですよ・・・さすがに細かい内容については記憶が怪しくなってきました。
とにかく、久々に(参加していなかったそれまでの会場も含めて)タイガースの話がたっぷり聞けたのが嬉しかったですね~。びわ湖に引き続き、僕は長~いタイガース・ネタのMCによく当たるようです。

ただ今回は主に、ピーとタローの話が中心でしたね。
ピーがまた本を書いてる、とのことで

ついこの間会った時に、どういうの書いてんの?と聞いたら・・・去年からやってた(老虎)ツアーの旅日記みたいなものを書いてるらしいですよ」

ピーが本を書いていることは知っていましたが、いや~そういう内容だったとは・・・それは素晴らしい!
オフィシャルサイトでも旅と食べ物の話を書きだすと止まらなくなるピー先生、是非あの調子で僕の故郷・九州の話も書いて欲しいなぁ。熊本の『桂花』は食べたみたいだけど、鹿児島では天文館あたりでラーメン食べたんだろうか、とか。

ジュリー、やっぱりピーなら食べ物の話満載になるんだろうな、と考えたのか・・・念のためピーに確認したそうです。
「入ったお店の名前とか、どこそこにある、とか書かんやろうね?」
と。
そりゃそうだよね、万一「そこはジュリーが紹介してくれたお店で・・・」なんて書こうもんなら大変なことになりますし。ジュリー自身が行きにくくなるしね。
ピーは
「いや、そこまでは書かん」
と言っていたらしいです。

その後、ファンがどうやってメンバー行きつけのお店を知るか、という話などを踏まえてタローの話題もひとしきり。
そして、客席がこの日一番の盛り上がりを見せたのが

「何つっても、(タローは)ファンと旅行行っちゃうくらいだからね!
・・・そんなん、(心底イヤそうに意地悪く笑いながら)みなさん例えばワタシと旅行なんて、行きたい?

というジュリーの「知ってるクセしてオマエは」的発言。

「行きた~い!!」

と、僕の右隣のお姉さまをはじめ、会場のあちこちから声が上がったのは言うまでもありません。
でもねぇみなさま、万が一、億が一にもジュリーの「ファンと行く温泉旅行」が実現したとしてもですよ?ジュリーと一緒にお風呂に入れるのは、男性ファンだけですよ?
(←コラコラコラコラ)

そのほか、”ここだけの話”も含めてたっぷりと聞けたタイガース関連のMC、本当に楽しかったです。

あと、ヒヨッコ新規ファンの僕が「へぇ・・・」と思って聞いたのが、LIVEチケットのお値段の話ですね。
僕のジュリーLIVE初参加の『ジュリー祭り』はまぁ特別価格として、その後のツアーの7千円というお値段、僕はその「7千円のジュリーLIVE」しか知らないわけです。

「お客さんには、7千円というお金を払ってもらって、来て頂いているわけですから」
と、丁寧に感謝の気持ちを表したジュリー。
ところが、僕は初めて知ったのですが・・・このお値段は『ジュリー祭り』を経てようやくそこまで引き上げた、という経緯があったんですってね。
そこに至るまでも

「武道館の『ジュリーマニア』・・・あそこでようやく値上げをして、その後も節目節目で少しずつ・・・そろそろいいかな、とか気を遣ってね、長年努力し積み重ねてきてようやく今の7千円ですよ!」
ということで・・・
「なんか11月にはピーとタローがね、中野サンプラザでコンサートやるみたいなんですけど・・・いくらや思います?7千円ですよ!

と、さりげなく『Chidhood Friend』の宣伝がてらに笑いをとっていたジュリーでした。
まぁジュリーは「7千円というのは決して安い金額ではない」という考えで、その金額を払って観にきてくれるお客さんに感謝したい、だから身体を酷使して頑張って歌っている、という話なのですが・・・。

打ち上げでYOKO君とも話したんですけどね、今のご時世、会場の大小も関係なくツアー一律7千円なんていう値段が、あのジュリーのステージ、演奏、曲数と照らし合わせた時に、どれほどお得で安い金額であろうか、と。
「今時、チケット1万円超えのコンサートなんてのは当たり前だからねぇ・・・」
というYOKO君の言葉を出すまでもなく。
例えば今年のお正月の武道館ね・・・あの公演が7千円なんてのは、普通あり得ないですよ!僕らジュリーファンは、つくづく恵まれていると思います。

MCの最後は恒例の
「みなさまも健康には充分留意して、ワタシの70越えを見届けてください!」
ということでシメでした。
鉄人バンドのメンバー紹介への大きな拍手も受け、和やかなトーク・タイムから瞬時にスイッチを切り替えるジュリーのシャウト。
「それでは、オマケです~!」

22曲目「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」

Royal3

YOKO君は『PLEASURE PLEASURE』大宮の時も、「ジュリーのMCが長くてアンコール1曲目(あの時は「KI・MA・GU・RE」でしたね・・・)に向かって気持ちを切り替えるのに苦労した」と言っていましたが、やはり今回も同様だったようです。
逆に言えば、それだけジュリーのスイッチの入れ方が卓越している、ということ。「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」って、そうシンプルな曲ではないですしね。

さて、バ~ン!とアンコール・ステージが照明に包まれた瞬間、YOKO君が叫んだのは
「あれっ?ギター変わった?!」
というもの。さすがに目ざといね~。

そう、柴山さんはここまでのセットリストをずっとSGで通し、アンコールのこの曲からJAZZ MASTERにチェンジしているんですね。
無論YOKO君としては「ギター・チェンジの必然性」について暗に僕にお伺いをたてているわけなんですけど、答えるわけにはいきません。次の曲がバレちゃうから・・・。
YOKO君、実はたまたま、自分も今JAZZ MASTERが欲しいモードの真っ最中だったらしく、「やっぱり音イイよね~」と打ち上げでは感心しきりでした。

あと、「ハッ、ハッ、ハッ!」についてはYOKO君も堂々とやります。これはもう「擦り込まれてるよね」とのことで・・・たとえ当時特別ファンでなかったとしても、僕やYOKO君の世代にとっては条件反射で振付反応してしまうヒット曲のひとつが、ジュリーの「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」なのでしょうね。

23曲目「ス・ト・リ・ッ・パ・-

Stripper

「もひと~つ!!」
のジュリーのシャウトから、GRACE姉さんの3連符フィルが炸裂した瞬間にYOKO君
「あ~、なるほどね!」
と納得のつぶやき。
もちろん「柴山さんのギター・チェンジの謎が解けた」ということ。「ス・ト・リ・ッ・パ・-」の演奏のために、JAZZ MASTERに付いたアームが必要だった、ということなのです。

僕は何度も観て慣れてしまっているけど、素人とは言えバンドマンからすると、やっぱりこの曲を生で聴いた時、まずドラムスの難易度が相当なモンだ、ということに改めて気づかされます。
YOKO君もその観点から、GRACE姉さんに目が行きがちだったそうですが
「グレース、ミニスカート?オカズ入るたんびにどんどん太腿んトコがめくれて見えてくるんだよね!」
とのことで、次第に楽曲とは無関係なところに注目してしまったようです。
GRACE姉さんはミニスカートというかワンピースなわけですが、確かに「ス・ト・リ・ッ・パ・-」のあのハードな3連符連打はちょっとヤバイかもしれない、そういう意味では・・・。

ところで、横浜公演に引き続いてこの大宮公演でも、ジュリーがこの曲の高音部に苦しみ、完全に声が裏返ってしまうシーンがありました。
そんなに高いんだっけ・・・?と、帰宅してから『ストリッパー 沢田研二楽譜集』(新興楽譜出版社・刊)で確かめてみたわけですよ。
すると


Img374

こ、これはキツイ!
高い「ミ」の音から高い「ソ」の音までの音域が2小節以上にも渡って続いています。こうなると、1音だけなら軽く出せるはずの「ミ」すら発声が苦しくなりますし、ましてや「ソ」となると・・・。
ジュリーの声がひっくり返っていたのは、正に「ソ」の音の箇所で、「
あさでるでまひるでも♪」みたいな感じになっていました。

新譜の高音があんなにキツいのに・・・そして本割ラスト「明日は晴れる」で、すべてを出し尽くすようなヴォーカルの後だというのに、それでも最後までキーを下げずに歌うのか、ジュリー!
僕らは、このジュリーの声の裏返りを、ジュリーの覚悟を知る証として聴くべきだなぁ、と思いました。

そしてもちろん、ジュリーはツアー終盤に向けてキッチリと喉を回復させてくるはず。それで「ス・ト・リ・ッ・パ・-」のヴォーカルがキレイに出ているのを聴けば、なおさら感動するというものです。
参考までに、「ス・ト・リ・ッ・パ・-」で一番音の高い部分は実はこの箇所ではなくて

Img375

この「すべて♪」と歌われるのが、高い「ラ」の音で、これが曲中の最高音。
不思議とここでは声がひっくり返ることはないんだよね・・・。メロディーの抑揚の関係なのでしょうか。

ちなみに高い「ラ」というの
は、「F.A.P.P」「カガヤケイノチ」に登場する最高音と同じ音です。
喉のことを考えると・・・本当に大変だと思いますよ、今回のセットリスト。ジュリーの覚悟いかばかりか、ということです!

☆    ☆    ☆

終演直後には、「はじめまして」のお姉さまにお声をかけて頂いたり、打ち上げ会場のお店の予約時間ギリギリになってダッシュしたり(やっぱ、いつもよりMCが長かったようですね)、その他諸々、楽しい1日でございました。最後は雨に降られたけどね・・・。
今回は、無事にYOKO君が奇跡の良席に参加できて良かった。「また再来年!」なんて冗談っぽく言ってたけど、来年のツアーもチケットは確保しておくよ、一応。まぁ、毎回神席は無理だけどね・・・。
日曜の川口公演ってのがあれば、彼の参加はほぼ確実なんですけどねぇ。

2週間にも及ぶ遅々とした執筆におつきあい頂き、ありがとうございました!
その間、ずっと気になっていた仙台公演も最高のステージを見せてくれたみたいだし、僕も今、ちょうどイイ感じでファイナルまでの日々を残している、という状況です。
いよいよ次回参加はツアー・ファイナルの東京国際フォーラム。僕にとっても特別な思い入れを後々まで持つことになるであろう『3月8日の雲~カガヤケイノチ』ツアーの締めくくり・・・暴れることはできないけれど、最後にじっくり音を楽しみ、ステージ全体の動きを目に焼きつけるには最高!なお席を頂いています。本当に楽しみです!

ファイナルまでには、2度ほど楽曲考察記事を書けるかなぁ。下書き中のお題曲の中から、「秋が似合うアルバムの曲」を1曲仕上げるつもりでいるのと、その次はもしかしたら、23日に発売されるピーの新譜から1曲書くかもしれません。
ちょっとこのところ更新頻度が落ちていますが・・・よろしくお願いいたします!

20121006

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2012年10月 5日 (金)

さようなら…おやっさん

ジュリーは今日がアプリコ、明日はいよいよ大宮。
『3月8日の雲~カガヤケイノチ』ツアー、僕の参加は残すところ明日の大宮、そしてファイナルの2会場となりました。

大宮の直前に、バカ・ロック系のお題曲にて記事更新するつもりで下書きをしていて、今日仕上げて更新の予定でいたのですが・・・。
ちょっとそんな気分ではなくなってしまいました。

大宮が目前に迫りワクワクしながら仕事を頑張っていたら・・・俳優・大滝秀治さんが今月の2日にお亡くなりになっていた、というショッキングなニュースがカミさんから届きました。

誰もが知る名優・・・ジュリーファンの先輩方なら、まず「パリの哀愁」でのジュリーの父親役を思い起こされるのでしょうか。

そして、子供のころから刑事ドラマが大好きだった僕にとっての大滝さんは、シリアスな人間ドラマとして評価の高い『特捜最前線』の、通称”おやっさん”・・・船村一平刑事です。
すべての刑事ドラマのレギュラー俳優さんの中で、僕は大滝さん演ずる船村刑事に最も強い思い入れがあります。また、名作揃いの『特捜最前線』の各エピソードの中でも、”おやっさん”が主役の回は特に好きな話が多いのです。

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↑ 第172話「乙種蹄状指紋の謎!」より。
『特捜最前線』全508話の中で僕が最も好きな回。

(註:以下、若干ストーリーのネタバレあり)
頑固に自説を曲げず若手刑事から煙たがられ、それでもたった一人でコツコツと推理・検証を積み重ねるも難しい壁に阻まれるおやっさん。そんな袋小路の中、高杉婦警の優しい気遣いでお茶を飲み干すのだが・・・その瞬間、知らず知らずに真相のヒントを得ている、という重要なシーン。
物語は、おやっさんの一徹な情熱に意気を感じ態度を一転させ協力を申し出た若い刑事仲間にも助けられ、遂におやっさんが複雑に入り組んだ真相へと辿り着く、というハッピーエンドにはとどまらず、あまりにも無情な結末をも用意しています。
画像のシーンでの大滝さんの笑顔は、演ずる船村刑事の心中に複雑に入り乱れる、若さへの嫉妬と老いたる我が身の悲哀が見事に表現されていると思います。

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↑ 第118話「子供の消えた十字路」より。これまた名作!

(註:以下、若干ストーリーのネタバレあり)
幼い子供をはねた自動車。運転手は慌てて子供を抱きかかえ、車に乗せて走り去る。たまたま現場を通りがかったおやっさんは、運転手が病院に向かったものだと思い込んだが、その車はそのまま消息を絶ってしまう。子供の母親に「あなた刑事なんでしょ!何で車のナンバーくらい覚えていないんですか!」となじられ窮地に立たされるおやっさん。
エンディング・・・廃車工場で子供を乗せたままスクラップされる寸前の車から子供を救い出したおやっさんが、疲弊しきった身体で犯人に一発渾身のビンタを入れた後、ヘナヘナと座り込んでしまう・・・怒り、やるせなさ、そして安堵を大滝さんが完璧に表現した、屈指の”泣き”の演技によるクライマックスシーンです。


『特捜最前線』のレギュラー陣では今年に入り神代課長(二谷英明さん)、津上刑事(荒木しげるさん)に次ぐ3人目の訃報・・・その前には叶刑事(夏夕介さん)も亡くなってしますし、本当に寂しいです。
夏さんは『特捜最前線』DVD特典のインタビューで、撮影の帰りによく大滝さんの家にお邪魔して将棋を指した、本当におやっさんだった、と語っていました・・・。

また大滝さんと言えば、こちらも僕の大好物、市川昆監督の横溝正史シリーズに、出番こそ少ないながらも重要なキーパーソン役で必ず出演。
いずれも、アクが強く少し変わり者、という人物設定で素晴らしい演技を見せてくれました。

何と言っても”おやっさん”が亡くなる日が来るなんて、タイムリーで『特捜査最前線』を観ていた子供時代からずっと、とても考えられなかった・・・。

心よりご冥福をお祈り申しあげます。

☆    ☆    ☆

本当にショックな訃報でしたが、こうして記事にしたことで、乱れた心もどうにか落ち着いてきました。
そう・・・明日はいよいよ大宮公演です。
予定通り、東京ドーム『ジュリー祭り』の相方・YOKO君と男二人で参ります。

YOKO君にとっては初めての、ジュリーLIVE松席参加。
そして彼は、この後に及んでセットリストをネタバレしておりません
明日大宮でご一緒するみなさま・・・イケメンとは言え若干コワモテ系のYOKO君に話しかけようという方はそうはいらっしゃらないと思いますが・・・どうか開演前には、彼の前で今ツアーのセットリストについては触れないであげてくださいませ。

次回更新は、当然の大宮レポです!
例によってまた、やたらと時間のかかる大長文になってしまったら、ごめんなさいね・・・。

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2012年10月 1日 (月)

2012.9.29 神奈川県民ホール(大ホール) 沢田研二『3月8日の雲~カガヤケイノチ』簡易レポ

スカイツリーよりマリンタワー!(by ジュリー)
ということで、横浜公演に行ってきました。

とても良いLIVEだったと思います。
が、次参加会場の大宮まで時間がありませんので・・・今回は簡易レポということで、駆け足で執筆させて頂きます。

まず、横浜ならではというのでしょうか・・・ジュリー自身に”ホーム”感覚があるようで、終始にこやか、なごやか、リラックスしたジュリーの雰囲気が心地よかったこと。
爽快なステージに感動しました。そう言えば、プレプレツアーで神奈川県民ホールに初めて来た時にも、何となく”ホーム”の雰囲気はあったっけなぁ。あの頃はまださほどジュリーのLIVEに慣れていなくて、ハッキリとは感じなかったけれど。

でも、いざ歌になると絶唱、熱唱で・・・。
八王子以降の関西、九州シリーズでの各地のみなさまのお話を伺ったり、先輩ブロガーさんのレポを拝見したりする中で、僕も今のジュリーの声の状態というものを、予想はしていました。
『PLEASURE PLEASURE』『秋の大運動会~涙色の空』でも体感した、長いツアーの中盤にジュリーの喉が一度荒れた感じになる、という状態。

昨年の老虎ツアーでこれが起こらなかった、ということがそのままジュリーの今回のMCにも反映されているわけで。
ジュリーのソロ・ツアーは基本、あらゆる面で体力を追い込むものなのでしょう。

ただ、プレプレツアー大宮での「探偵~哀しきチェイサー」が鳥肌モノの素晴らしいヴォーカルだった例があるように、少しかすれ気味の喉で歌われるジュリー・バラードはかえって絶品だったりしますよね。
今回の横浜では、「届かない花々」「涙色の空」「我が窮状」「時の過ぎゆくままに」の4曲が正にその状態!

「届かない花々」では、ジュリーの手を繋ぐ仕草がこれまでになく渾身で、自らの声を「もっと遠くまで伸びろ、もっと遠くまで届け」と鼓舞しているかのような熱唱。

「涙色の空」は、柴山さんのギターも素晴らしかったです。リード・ギターでありながらベース・ラインをも網羅するような重厚なフレージング。
エンディング最後の1音はフィードバック奏法とは違ったけれど、泰輝さんのピアノの余韻よりもさらに力強く伸び、僕の周りのお客さんはみな、柴山さんのギターが消える瞬間を待って、大きな拍手を送っていました。

「我が窮状」は、僕の好きな「老いたるは無力を♪」の歌詞部での艶やかなジュリーの低音に感動。
泰輝さんも思うところがあったのか、ラストのピアノのフレーズに流れるような16分音符でアドリブを加えていましたね。

「時の過ぎゆくままに」では、GRACE姉さんのイントロが八王子より1打増えていたような・・・。この日の最初のアタックは、オープン・ハイハットではありませんでした。毎回変えているのかなぁ。
横浜でも、この曲のイントロの瞬間には「待ってました!」という歓声が沸き起こりました。これまでの会場よりも反応が大きかったくらいです。
当然ステージのジュリーにもそんな雰囲気は伝わるのでしょう・・・アンコール前のMCでは今ツアーのセットリストについて

「”時の過ぎゆくままに”くらいしかみなさまにお馴染みの曲が無い・・・こんなやり方で良いのでしょうか・・・?」

なんて言っていましたが、もちろんお客さんはそんな「やり方」を指示する大きな拍手で応えたのでした。

さて、喉の調子もあって、高音についてはさすがにジュリーも苦労していたようですね。
ス・ト・リ・ッ・パ・-」では、サビでほんの一瞬ですが、声がひっくり返るシーンも。
ただ、「恨まないよ」ではその最高音に届きそうで届かないヴォーカルがかえって曲の迫力を高めていましたし、「3月8日の雲」の「こんな目にあうなんて・・・」のギリギリとしたロングトーンも、本物の緊迫感が伝わってきました。「3月8日の雲」のその部分は、ちょうど下手側の端に進出し立ち止まっての熱唱でした。

珍しいシーンが観られたのは「F.A.P.P」での、演奏がサ~ッと後方に退く「長崎、広島、人は何故」の部分。
ジュリーは突然、しゃがみこむような姿勢で、1オクターブ下の音で歌ったのです。
しかも、「広島、長崎」の順で・・・。
その低い声・・・僕は「あっ、ジュリーがしゃべる時の声だ!」と思いました。

実はこの部分、曲の最高音部ではないものの
「ド#ド#~レミ~、ド#ド#~レ#ファ~♪」
というすべての音が、オクターブ上の高音で構成されているのです。喉に疲れのある64歳の男性が楽々と出せる高さの音ではありません。

僕の推測ですが、このシーンは、歌う寸前に何かしらの声の変調に気がついたジュリーが「あっ、危ない!」と思い瞬時にオクターブを下げトーキング風に歌うことで、喉の状態を調整したのではないでしょうか。
その成果はもちろんあって、続く「Happiness Land」の最高音部を含む最も重要なサビ部で、ジュリーはいつもと変わらぬ力強いヴォーカルを聴かせてくれました。

そうそう、歌詞の順序違いと言えば。
この日は「いま君を抱かせてくれ」の例の部分をはじめ、歌詞については絶好調だったジュリーですが、あと1曲だけ・・・「時計/夏がいく」で

振り向いて驚けば、君がいる♪

になってしまった瞬間に、「ありゃっ?」と少しだけ戸惑った表情を見せてくれたのが個人的にはツボで、得をした気分です。
何故ジュリーが戸惑ったかというと、「振り向いて♪」で思いっきり振り向くゼスチャーをして、続く箇所で「あれれ?振り向くタイミングがいつもと違う?」となったわけで・・・。
不謹慎な見方なのかもしれないけれど、こういう時のジュリーはメチャクチャ可愛い仕草になるんですよね~。

「ラジカル・ヒストリー」以降のロック全開コーナーも、これまで通りの盛り上がりで楽しかった・・・。
福岡公演での「気になるお前」のお話を聞いていたので
「横浜でも客席にマイク向けてくれないかな?」
と少しだけ期待していたのですが、それは叶いませんでした。博多のみなさまは、本当に貴重なステージを体験しましたね!

鉄人バンドの演奏では、柴山さんと下山さんのギタリスト二人が特にハジけていたように感じました。
特に「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」の間奏です。
まずは柴山さんが「オラオラ~!」状態でせり出し、お客さんの視線を一身に受けている隙を縫って、下山さんがソロリ、ソロリとドラムセットの後ろを徘徊。「おっ、これは噂に聞いた泰輝さんの背後でソロを弾くパターンか?」と思い見ていますと、クルッと方向転換した下山さんは、ドラムスとキーボードの間の中央花道(?)を進み出ながらの単音部となりました。
気合よくバシバシとソロを弾いた下山さん、定位置に戻るのがいつもより遅れますが、何とか「ビータ!」のシャウトには間に合いました。
こういうバンドメンバー間で楽しげに流れるようなシーンって、ステージ全体に目が行く後方席ならではの醍醐味なんだなぁ、と思った次第です。
サーモスタットな夏」では、ソロを弾く下山さんと、寸分狂いなく同方向に腰を揺らしているジュリーと柴山さん・・・横に広がった3人が一度に目に入ってきましたしね。松席だとどうしても誰かに片寄って観てしまうから・・・まぁ、それはそれで大きな大きな楽しみですが。

柴山さんは「コバルトの季節の中で」のイントロ、ほんの一瞬ですが、前曲「そのキスが欲しい」で設定していたと思われる強い歪み系のエフェクトをかけたままの状態で弾き始め、すぐに「いけねっ!」って感じで、右足でバシッ!とエフェクターをオフしていました。
その動きに少しも慌てた雰囲気が無い・・・むしろ余裕。当然とは言え、さすがプロフェッショナルです!

ジュリーのMCでインパクトがあったのは、何と言っても”ダメじゃん小出”さんのお話。
終演後お会いしたみなさまに伺っても、悉く「初めて聞く名前」という芸人さん。おそらく横浜公演に参加なさったお客さんの半数以上は、帰宅後すぐに”ダメじゃん小出”さんをネット検索したことでしょう。
何と言ってもあのジュリーがイチオシする芸人さんです。どのくらいイチオシかと言うと・・・

「今日は(トライアスロンとは別に)ダメじゃん小出(の公演)ともかぶってしまった・・・。知ってます?ダメじゃん小出。観に行きたかったなぁ・・・」

冗談っぽく
「自分のLIVEサボってでも観に行きたかった」
ということですから、これは相当好きなんですねぇ。
公演タイトルが「黒くぬれ!」ってのも何かね、イイですね。僕も帰宅後、小出さんの動画を探していくつか観ましたが、ネタをやる時のBGMが渋い、とか・・・色々とジュリーが惹かれる要素があるのでしょう。

動画を観ていますと、サササッ!と上着を着たり脱いだりする小出さんの動きに、何やら今ツアーのジュリーのイメージとと重なるものがあったり。
また、動画の中で
「まことに申し訳ございませんでしたぁ!」
と深々と一礼する、というネタがあったのですが・・・ジュリー、横浜で同じことやってましたよ。

「ヒット曲を期待して来られたみなさま・・・まことに申し訳ございませんでしたぁ!」

と、本当に申し訳なさそうに丁寧にビシ~ッ!と頭を下げるものですから、「何でそこまで・・・」なんて思って聞いていたお客さんも多かったでしょうが、下手するとこりゃ、単にジュリーがやりたかったネタ、というだけのことだったのかもしれませんよ・・・
(そんなワケもないか)

「向こう(小出さん)は今日、100人くらいの場所でやってるんですが、ワタシは・・・」
と、県民ホールいっぱいにふくれ上がったお客さんを見渡して「エッヘン!」といった感じの表情。
しかしその後すぐに
「ま、そのうち逆転されるかもな~」
と落とすところがジュリーらしくて微笑ましかったです。

しかし・・・あれだけ”ダメじゃん小出、ダメじゃん小出”と連呼しておきながら
「いや、みなさんは見に行ったらダメですよ!ワタシのひそかな楽しみなんですから・・・。それなら言わなきゃいいのにな!」
と自分ツッコミ。
でも、本当に小出さんのことは買ってるみたいです。ジュリーが、自分の好きな人について語る時の雰囲気って独特のものがありますから・・・ファンには伝わっちゃいますよね。
ヒヨッコの僕も昨年の老虎ツアーを経て、ようやくその辺りまで鍛えられたかな?

あとはやはり体型ネタが・・・。
「学校で習いました・・・人は見かけじゃない!
と。
とにかく今は、ありのままの姿をお見せしている、とのことですが、まぁ若き日に「見かけ」で散々オイシイ思いをしてきた、という意識は永遠にお持ちのようで

「これでも昔は・・・脱いでも凄かったんです!!

と力説。
その瞬間、それまで普通にお上品にジュリーの言葉を聞いていらっしゃった周囲のお姉さま方の空気が、何やら良い意味で一気に崩壊していくのがバシバシ伝わってきたという・・・いやいや、男性ファンとしては貴重な体験をさせて頂きました。
まぁ、それもそのはず。ほとんどのお姉さま方の場合は、瞬時に『水の皮膚』が脳裏に浮かんだわけでしょ?
僕は男だしヒヨッコだし・・・浮かんだ図は、と言いますと

1968040206guamu

こんなところかな?
1968年、若虎・ジュリーinグアムですよん。

などと、来たるべき第二次タイガース記事執筆月間(たぶん来年?)に向けて、新たに持ちネタとして待機している画像の一部をちょろっと小出しにしたところで・・・甚だ簡単ではございますが、『3月8日の雲~カガヤケイノチ』、横浜公演のレポ完了とさせて頂きます。

お会いできたたくさんのみなさま、ありがとうございました。
また今回も、「はじめまして」な先輩に、駅で早速お声をかけて頂きました。嬉し恥ずかし大恐縮でございました。ありがとうございます!

本当に簡易レポで、まことに申し訳ございません!!
みなさまも、ダメじゃん小出さんの今後に密かに注目してみましょうね・・・。

(10・2追記)
大事なことを書き忘れていました。
カガヤケイノチ」のお客さんの合唱、この日は確かに聞こえました!
不思議なもので、周りのみなさまの声が聞こえると、自分の声も一緒に聞こえるんですよね・・・。

20120929

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