沢田研二 「BYE BYE HANDY LOVE」
from『S/T/R/I/P/P/E/R』、1981
1. オーバーチュア
2. ス・ト・リ・ッ・パ・-
3. BYE BYE HANDY LOVE
4. そばにいたい
5. DIRTY WORK
6. バイバイジェラシー
7. 想い出のアニー・ローリー
8. FOXY FOX
9. テーブル4の女
10. 渚のラブレター
11. テレフォン
12. シャワー
13. バタフライ・ムーン
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本題の前に少しだけ、今ツアーのお話を。
自分が参加していない会場のお話を各地の先輩に聞かせて頂いたり、レポを拝見したり、というのは僕がいつも楽しみにしていることですが・・・なんだか、福岡公演がとても良かったっぽいですね~。
参加なさったみなさまの興奮度、こちらに伝わってくるものが相当抜きんでている気がする・・・。
僕は今年のお正月に老虎ツアーで福岡のファンの独特の熱さを体感していますから、先輩方が知らせてくださったジュリーとお客さんの様子が結構リアルに想像できるんです。
あの
「待ってたよ~!ようこそジュリー!」
という感じの福岡の雰囲気は、本当に独特。今ツアーでは、それがステージのジュリーの
「この曲歌いたかったよ~!」
という気持ちとMAXでシンクロしたのかな。
九州出身者として、不参加ながらとても誇らしく、加えてやっぱりうらやましく思った次第でした・・・。
もちろん熊本、宮崎や、今ツアーでは公演の無かった九州各地のジュリーも、機会があれば一度観に行ってみたいなぁ。
そして、伝説進行中(だと僕は思っている)の『3月8日の雲~カガヤケイノチ』ツアーは、いよいよラスト・スパートへとさしかかります。
先週、10月分、11月分として申し込んでいた大宮、大トリ・フォーラムAのチケットが届きました。
2つとも抽選待ちの会場でしたが無事に通過。今ツアーは前半で席運を使い果たしてしまったかと思っていましたが、それぞれ見応えのありそうなお席を頂きました。特に大宮の望外の松席には感謝、感謝・・・です。
自分は本当にツイている・・・だって、席運に恵まれたのが今回のツアーだったのですから。
とにかく僕は、今ツアー・タイトルとなった新譜、『3月8日の雲~カガヤケイノチ』というアルバムに心底惚れ込んでいます。
八王子のMCでジュリーが”アルバム”という言葉を使った時、僕の中で我が思いながら実感しきれていなかったことが、ストン!と氷塊しました。それは・・・紛れもない、僕は過去のジュリーの作品で一番好きなアルバムのツアーに、今参加しているのだ、ということ。
これまでの僕のジュリー・フェイバリット・アルバムと言えば、不動の『JULIEⅡ』。
ジュリーの作品は本当に名盤の宝庫ですから、今まで何度か他のアルバムを聴いて、『JULIEⅡ』に迫ったかな、と感じたことは何度もあります。でも、”追いついた””完全に肩を並べた”と考えたことは一度もありませんでした。
ジュリーがプレプレツアーで「満タンシングル」と表現した2009年リリースの『PLEASURE PLEASURE』以降、僕はジュリーのソロの新譜を”アルバム”とは認識していなくて・・・。
『3月8日の雲~カガヤケイノチ』についても、ごく当然のように、”マキシシングル”と捉えていました。これは、多くのジュリーファンのみなさまも同様だったようです。
でも、ジュリーは八王子で確かに『3月8日の雲~カガヤケイノチ』を”アルバム”だと言った・・・そうしてよくよく考えると、今まではそのあまりのコンセプトの違いで比較することすら思いもしなかったけれど、僕は『JULIEⅡ』と同じくらいこのニュー・アルバムに入れ込んでいるじゃないか、いや、むしろ追い抜いてさえいるんじゃないか、という自分の気持ちに気がついたのです。
『3月8日の雲~カガヤケイノチ』というこのアルバムの収録曲すべてを、収録順通りに、ジュリーが決死の祈りを込めて歌う・・・そんなツアーは今年が最初で最後かもしれないのです。今ツアーでのあの4曲のヴォーカルを生で聴けば、なおのことそう思います。
ならば、僕はそのジュリーの祈りをもっともっと噛みしめてLIVEに参加しなければ、と今考えているのです・・・。
さて、大宮公演は10月6日。
もちろんチケット当選を願っていた一方で、実は僕はその日ジュリーのLIVEに参加するにあたってかなり複雑な思いもあって・・・それは少し前に意外な形でケリがついたんだけど、今日はそんなお話も交えながら、アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』からお題を採り上げて語ろうと思います。
「BYE BYE HANDY LOVE」、伝授です!
これまでアルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』の収録曲を語る際、僕は何度も”パブ・ロック”というジャンルについて書いてきました。
実は今年の10月は、パブ・ロック・ファンにとって狂喜乱舞のお祭り期間となるはずでした。
まず10月頭に、ドクター・フィールグッドの最初期のメンバーであり、イアン・デューリー率いるブロックヘッズにも在籍したことのあるギタリスト、ウィルコ・ジョンソンが来日します。
”マシンガン・ギター”の異名をとる、まるで鋼鉄の弦を弾いているような彼のプレイ・・・僕は20歳の時に一度観ています。今年の来日公演、渋谷が月頭の平日ということであきらめざるを得ませんでした。
そしてもう一人。
『S/T/R/I/P/P/E/R』収録曲の中、6曲にリード・ギター或いはコーラスでゲスト参加している、僕が世界で最もリスペクトするギタリスト、ビリー・ブレムナーが来日!そのニュースはある初夏の日、突然飛び込んできました。
しかも、ブリンズレー・シュウォーツをはじめとするパブ・ロック職人の渋い面々を従え、バンドスタイルでの公演を敢行する、とくればこれはもう何を置いても行くしかない・・・そう思いました。僕はビリーのギターをまだ生で聴いたことがないのです。
しかし、僕の中の「何を置いても」には、たったひとつの例外があったことがすぐに判明します。
公演日程を確認すると、何と10月6日。
その時、僕はすでにジュリー・ツアー後半、大宮公演を第1希望としたチケット申し込みを済ませてしまっていました。何たることか・・・ジュリーのLIVEとバッティングしてしまうとは・・・!
かつてパブ・ロック・バカだった青年は、今やジュリー・マニアのおじさんとなっています。大いに後ろ髪引かれつつも
「ジュリーと重なったのなら仕方ない」
と潔くあきらめたわけです。まぁ、大宮の抽選が外れたら、必ず駆けつけようとは思っていたんですけど。
最近になってその件は、バンドメンバーのビザの関係による公演中止、という思ってもいなかった結末を迎えました。
日本中のパブ・ロック・ファンがそれぞれコアなブログなどで凄まじい盛り上がりを見せていただけに、とても残念です。ただ、企画自体がオジャンになった、というふうには考えられないので、機を改めてビリーの公演が実現するのを楽しみに待ちたいと思います。
その時には、ジュリーのLIVEと重ならなければ良いのですが・・・。
さて、そのビリー・ブレムナー。
『S/T/R/I/P/P/E/R』参加曲での彼のベスト・プレイは「DIRTY WORK」だと僕は思っていますが、本日お題の「BYE BYE HANDY LOVE」については・・・「ちょっと苦労してるかなぁ」という印象です。
元々ビリーは、もちろんソロの名手ではあるのだけれど、基本シンプルなコード進行のロックンロールやブルース、ロカビリーの楽曲全体を俯瞰し、優れた構成のフレージングで味付けする、というタイプのギタリストです。『S/T/R/I/P/P/E/R』のレコーディングで求められた、”ミドル・エイトのソロだけを弾く”というスタンスは肌が合わなかったかもしれません。
それでも僕にとっては、まごうことなきビリー・ブレムナーの音が鳴っている、というそれだけで感動することもまた事実。
何十年も熱心に聴き続けたギタリストの音を僕の耳が逃そうはずはなく、ビリーがどの曲のどの部分を弾いているかは、さほど気をつけていなくとも分かります。
「BYE BYE HANDY LOVE」での彼の出番は1' 49"から。
ジュリーの「get it on!」のシャウトに続く8小節のギター・ソロ。これがビリーの音です。
それ以外の・・・例えば右サイドで鳴っているギターはヴォーカルの合間合間に結構単音を弾いていますが、これはビリーの音ではありません。おそらく柴山さんなのでしょうね。
この曲についてはもう1点、作曲者である佐野元春さんのことを語らなければなりません。
僕が佐野さんのレコードを購入したのは、『No Damege』がタイムリーにして初めての1枚。そこから過去3枚のオリジナル・アルバムを遡っていったわけですが、初めて聴いた『No Damege』で一番好きになった曲が正にこの「BYE BYE HANDY LOVE」だったのです。
日本にこんなセンスを持つ人がいたんだ!という無知故の驚きは、まぁ僕の勉強不足、幼さだったにしても、こういった「演奏時間2分台の美学」を擁した邦楽を教えてくれたのは、僕にとって佐野さんが最初の人でした。その後僕は、佐野さんと同じセンスを持つ杉真理さんや伊藤銀次さんの存在も知っていくことになります。
佐野さんの『No Damege』ヴァージョンの影響が大きかったせいでしょうか、僕は長い間「BYE BYE HANDY LOVE」を、ビートルズの「CAN'T BUY ME LOVE」のようなナンバーだと認識していました。
ですから、ジュリー・ヴァージョンのアレンジに慣れるまでにいくらか時間を要しました。佐野さんは敢えてポップ寄り。ジュリーの方は、クールなロカビリー色が全面に押し出されています。あと、間奏部の配置をはじめ、楽曲構成の段階から大きく違いますし・・・。
今ではすっかりジュリー・ヴァージョンの方に身体が染まってしまいましたけどね。
もう1点、佐野さんのヴァージョンとの違いとして挙げておきたいのは、ブリッジ部のアレンジとミックス。
♪ 誰もが探してる 心の港
E♭ B♭ A♭ Gsus4 G7
やみの歩道くぐりぬけて たどりつくパラダイス ♪
Cm F7 Gsus4 G7
↑ 新興楽譜出版社・刊 『ス・ト・リ・ッ・パ・- 沢田研二楽譜集』より
ハ長調の曲が変ホ長調へと転調しています。それまでの印象をガラリと変えるメロディーで、短い曲をギュッと引き締める、佐野さんの卓越したポップ・センスが光る部分だと思います。
佐野さんのヴァージョンでは、この部分が独立したサビとも言えるほどの曲想の変化を見せるのです。
「たどりつく♪」ではアレンジに「F7」ではなく「Fm」のニュアンスが強く入り、愁いが感じられます。隠し味として大きな役割を持つのは、4拍連打の鈴の音色。ちょっと、ロックを離れるような感覚すらあります。
一方ジュリーのヴァージョンはそういった装飾に頼らず、才気溢れる主人公が楽々と「パラダイス」に辿り着くかのように、スッと素通りする感じでクールに進行します。それは演奏もヴォーカルもそうなのです。
それだけに、直後のビリー・ブレムナーのリードギターは、相当”オイシイ”役割だったわけですけど。
ところで僕は、佐野さんで「BYE BYE HANDY LOVE」という曲を知って以来、30代後半になってからジュリーの『S/T/R/I/P/P/E/R』を購入し改めて歌詞を熟読するまでの約20年間・・・このブリッジ部の歌詞の一部を誤って覚えたまま過ごしてきてしまいました。
「闇の窓をくぐりぬけて♪」
だと勘違いしていたのです。佐野さん独特の発音でそう聴こえていたのかな・・・。
まぁ、「闇の窓」ってのもなかなかイイ表現じゃあないですか~(違)。
最後に、ジュリーのゴキゲンなヴォーカルについて。
ジュリーがまさに一級、いや特級のロック・ヴォーカリストであることが、このアルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』では完全に証明されました。
「BYE BYE HANDY LOVE」での不良っぽいカッコ良さ全開の歌い方は、前作『G. S. I LOVE YOU』収録の「MAYBE TONIGHT」を彷彿させます。時折ルーズに聴こえる・・・それが良いのです。
古き良き時代のロックンロール、ジュリー流”不良少年のイノセンス”はここでも炸裂していますね~。
さて次回更新ですが・・・。
この記事を下書きしている間に急展開があり、LIVE欠席を余儀なくされた先輩から有難くも代打指名を頂いた僕は、週末の横浜公演に急遽参加することになりました。
その次の参加会場、大宮までは一週間しか間が無いので、横浜公演単体で本当に簡単な短いレポを書くか、それとも横浜と大宮をセットでいつもの長めのレポとして纏めるか、思案しているところです。
どうしようかな・・・。
あと今週末は、ジュリー静岡公演ならびに吉田Qさんの大阪LIVEのご感想を、コメントにて大募集しております。
ちなみに僕は、0歳半から3歳まで清水市に住んでいたんですよ~。
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