(2月12日、執筆を終えました~。
長々と中途半端な更新を重ね、その都度おつき合い頂き申し訳ありませんでした・・・。
また、例によって、更新日付は記事完成日に移動させました。
文中でも最後に書きましたが、今回は
「レポを書き終えるのが寂しい。いつまでも終わらせたくない」
という、自分にとって初めての感覚がありました。
しかし、ジュリーの言葉通り「終わらなければ始まらない」のですね。
そう、タイガースの物語は、終わってはいないのです。ジュリーが宣言してくれた”近い将来”を楽しみに、僕らファンも「始める」ことをまたしなければなりません。
とりあえず武道館のレポはこれで終わりますが、拙ブログではこの先もタイガースの楽曲を時々は採り上げながら、各メンバーの今後の活躍も把握していきたいと思っています。
どうぞよろしくお願い申し上げます)
☆ ☆ ☆
↑ 1月28日『東京新聞』朝刊より。
素晴らしかった、日本武道館。
感激に次ぐ感激・・・。後追いファンとして、ツアーが始まる2ケ月前の昨年の夏、7月からずっと、タイガースという巨大な伝説にどうにかこうにか全力で向き合ってきましたが、老虎ツアーでの彼等のステージは僕の予想や見通しを遥かに凌駕し、進化し、追いつくのに必死になるほど。
それも、この日本武道館を体験できたことにより、幸せのうちにひと区切りとなりました。
最高のファイナルでした。
実は、武道館のレポを書くにあたって、少し業界的な話から始めようとずっと前から考えていました。
NHK『songs』放映以前までは。
まぁ、そんなことをグダグダと書くのはまるで本筋とはかけ離れているんだ、とTVの向こうのジュリーの「誓いの明日」の笑顔でガツン!と気づかされたわけですが、一応僕の思いの範囲で、少しだけ書いておこうかな・・・。
僕には、世間にこの老虎ツアーの素晴らしさを広く知って欲しい、という考えがずっとありました。
世間に、です。
それは僕の完全な思い上がり、見込み違いというものでしたけどね。
でもみなさまとしては、世間の前に、音楽業界に広く知られないでいいの?とお思いでしょう。
でもね。
業界は知っています。今回のことを。
いや、「知っている」と言うより、「驚愕している」「畏怖している」と言った方がいいかもしれません。
プロモーターもつかない興行スタイルで、武道館がフルハウスになってしまったという現実。ジュリー達は、業界の常識を根底から覆してしまったのです。
僕は業界人とは全然言えませんが、その世界に末端で関わる仕事をしているので、いわゆる「一番末端にまで流れてもいい情報」というのは、流れてくるわけです。
今回実現しなかった会場の話とかも、あったなぁ。
いや、それはもういいんですけど。
定期的に回ってくる情報の中に、仕事の最終段階の情報として、関東圏内のアーティスト・ライヴ・スケジュールというものがあります。
この日は東京ドームで誰が公演してる、横浜アリーナは誰、渋谷公会堂は誰、という一覧ですね。
だいたい、ひと月単位の一覧が前月の中旬に回ってきます。
昨年末、12月半ばにも、それが来ました。すると・・・。
1月24日の日本武道館スケジュール欄が、不自然なまでに空白なのです。
これ、どういうことだかお分かりでしょうか。
スケジュール表には、アーティスト名と共に・・・いや、アーティスト名以上の重要事項として、プロモーターの明記があるんです。
何かグッズを売りたい、とかね・・・そういうビジネスが派生した場合に、交渉先のプロモーターの明記が業界では必要なわけで、そうなっています。
ところが、プロモーターのいない興行は少なくとも末端のビジネスには発展し得ないですから、興行そのものの明記が割愛されるということなのです。
(ちなみに、東京ドーム『ジュリー祭り』の時にはスケジュール掲載がありました。僕はそれを手にして、「いよいよだな!」と考えていたものです)
・・・でも、日本武道館が何の説明も無しに空欄の日って、見るからに不自然でしょ?
「この日は何かあるのか?」
「いや、どうやら沢田研二がやるらしい」
「沢田研二?」
「タイガースの昔のメンバーがゲストで出演するようだ」
「宣伝しなくていいのか?」
「どうやらそれが、チケットはもう完売が確定したらしい」
「ええっ、いったいどうやって?」
とまぁ、問答文句はまったくの想像ですが、そんな感じで噂が噂を呼び、単なる噂ではなく事実であることが次第に認識され、皆がそれを知るに至りました。
ジュリーが何もプロモートをしなかったからこそ、業界は逆に広く日本武道館公演を知り、震撼したのです。
いや、業界のトップ、中堅の世界というのは僕の考えなど及びもつかないですから何もわかりません。僕が言っているのは、広い広い裾野、末端の世界です。
長くジュリーファンを続けていらっしゃる先輩方にとっては、先程の問答にしても「何をチンプンカンプンな」とワケ分からないと思います。
でも、みなさまが長年慣れ親しんできた、独立後のジュリーの手法というのは、相当に独特なんですよ。誰もができることではありません。凄まじいエネルギーと、ファンとの信頼関係、熱意がなければ。
もしもね、プロモーターまでいかなくとも、アドバイザー的な業界の人が今回の武道館公演、或いは老虎ツアーに関わっていたとしたら
「そんな方法で成功するワケがない」
と頭から決めつけ、既存の常識に沿った形でのプロモート・プランを練ってしまい、結果的にかえってうまくいかなかったのではないか、という気もします。
おっと、「本筋ではないこと」と言いながら長々と。
本当にこれは、どうでもよいことなのです。『songs』を観て、つくづくそう思いました。
とにかくそんな奇跡的な公演に参加できる歓びだけを胸に、僕は昨年5月から予約しておいた有給休暇をとり、1月24日の日本武道館に向かったのでした。
僕はこれまでジュリー以外のアーティストやバンドを、大物からアマチュアまで相当数観てきているのですが、実は会場が日本武道館というのは初めてです。
大学1年の時にニック・ロウが初来日し、九段会館で初公演がありました。上京したてで右も左も分からない僕は、とにかく九段下駅から人の流れについていけば辿り着くだろう、と進んでいたら、デカデカと『徳永英明』の文字が躍る横断幕に出くわしスゴスゴと退散した想い出があります。それが、日本武道館を初めて見た瞬間でした。
何と言っても、ビートルズ来日公演の会場です。多くのロック・ファンにとって伝説の場所ですよね。「これが武道館か~」と思ったものです。
この場所で41年前にタイガースの解散コンサートがあり、そして今。
41年前を知っている先輩方は、今日のお客さんの何割くらいを占めているんだろう・・・そんなことを考えたりしました。
正午過ぎに出かけ、昼食後に神保町でお目当ての古書店(『平凡』『明星』の付録歌本が安値で充実しているお店。無論、ジュリーやタイガース関連の貴重なお宝本も充実していますが、高過ぎて手が出ません涙)に向かったところ、何とお休み!
日曜以外に閉まっている日があったとは・・・無念。
翌25日は開いていたようです。たぶん、星のかけら様が同じお店を訪れていらっしゃると思いますから~。
そんなわけで、かなり早め・・・午後3時半くらいの武道館到着となりました。
まだ人影まばらでしょ?
日も暮れかけた午後5時前あたりには、凄まじい大混雑になりましたけどね。
まだ早い時間というのに、この日待ち合わせのお約束をしていた先輩方も次々に合流してまいりまして・・・息せききって駆けていらした長崎の先輩が仰るには
「リハやってる!テルミーやってる!」
ええ~っ!
と、DYNAMITE、至近距離までせり寄って耳を澄ませると・・・おおおっ!まさしく「テル・ミー」。僕とストーンズの、最初の出会いの曲。
それにしても武道館、演奏音が外に筒抜けなんですねぇ。
41年前、チケットを持たない少女達が武道館周辺に集まっていた、と聞きましたが、なるほど音は漏れ聴こえていたわけですね・・・。
聴こえてきたリハではこの曲の他に「ジャスティン」も!気合入ってましたよ~。
後から合流した先輩方のお話では、「散りゆく青春」もやっていたようですね。
リハというのは全曲やるわけではなくて、音のバランスを確認するために何曲か採り上げて演奏するのです。
「テル・ミー」は初めてだから当然やりますわな~。
こうして、サプライズが事前に1曲判明しちゃったのですが、「やっぱりファイナルは特別仕様なんだな」と思えて期待が高まります。
数時間後、「テル・ミー」以上の奇跡のサプライズに涙することになるわけですが・・・。
たくさんの方々とご挨拶したり写真を撮ったりしてあっという間の時間を過ごし、午後5時を回ったあたりで入場の列に並びます。
入場までは、結構待ちましたね・・・寒かった。
でもね、入り口近くまで列が進んだ頃、ちょうど当日券売り場がすぐそばにあったんですが、そこへ背広姿の男性がハァハァ言いながら駆け込んできて、チケットを購入していました。
おそらく仕事を切り上げ、急いで駆け付けたのでしょう。
『songs』を観て公演を知ったパターンなのかなぁ。とにかく「間に合った!」という思いで、全然寒さなど感じておられなかったでしょうね・・・。
僕はそんな光景にもジ~ンときてしまいます。
入場してトイレを済ませ、早速お席へ。
”ステージ後方席”とは、どんな感じなのかな?
・・・いやいや予想を遥かに上回る良席ではありませんか。上手側袖の斜め上・・・ステージよりほんの少し高い位置。
近い距離で視界に飛び込む泰輝さんの上下2段のキーボード。そして袖に並ぶ柴山さんのギター。
見上げると、360度の席。
その席が、みるみるうちに埋まっていきます。
2階にお会いしたい先輩がお2人いらしたのを思い出し、訪ねようといったん席を離れたのですが、1階から2階には行けないようになっているんですね・・・。
開演定刻になってもまだ入場してくる人の波は止まず、これはちょっと開演遅らせるかなぁ、とか考えていた頃、ピーファンのsnowdrop様からのメールに気がつきました。だいたいのお席を教えて頂いたけれど、結局ピーファンのみなさまとはお会いすることはできませんでした。
これは少し心残り・・・。僕は間違いなく昨年の夏から秋にかけて、ピーファンのみなさまに力づけられ、ホッとするようなファンサイトの素敵な居心地にやすらぎ、大いに気持ちを引っ張られ、色々なことができたのです。
老虎ツアーが終わって、ジュリーファンの先輩方とはまたいずれソロツアーでお会いできると思うけれど、ピーファンのみなさまに再びお会いする機会はあるのでしょうか・・・。あんなに気さくに親切にして頂いたのに。
いや、きっとありますね。
ジュリーが言った「近い将来」がきっとあります!
このブログは武道館レポの後、「散りゆく青春」「君だけに愛を」の楽曲考察記事を書き終えたら、また従来のジュリー・ナンバーのお題中心のスタイルに戻りますが、ピーファンのみなさまに忘れられないよう、時々はタイガース・ナンバーもコツコツ書いていこう・・・。もちろん僕もピーのファンサイトにはお邪魔し続けます。
トークライヴに参加の予定はないけれど、ピーの音楽活動、演奏活動に新たな展開があり、新たな作品が生まれた時には、必ず拙ブログでも採り上げることをお約束します。
ピーファンのみなさまのことに限らず、こうして開演前に頭を駆け巡るのは、ジュリーと、ジュリーを通じて知り合った先輩方にこの武道館まで導かれたことへの、大きな感謝の気持ちです。
ジュリーファンの先輩方のことを、お一人お一人考えます。今回のお席が分かっている方々のことは、「あのかたはあの辺り、あの先輩はあの辺り」と、アリーナから2階スタンドまで、それぞれの場所を狙って念を送りました。
この場所に来ることができなかった先輩や同志の方々も、たくさんいらっしゃいます。
「いらっしゃらないかたの思いを背負って」というのは若輩の身には荷が重いですが、とにかくステージを目に焼き付けることです。
レポを書くから、という考えは逆にやめよう・・・これから起こることを、自然に受け止め身を委ね、できる限りたくさんのシーンを観よう、と思いました。
突如、灯りが暗くなりました。
我に返れば、大拍手の中で「G.S. I LOVE YOU」のBGMが終わろうとしています。
「本当にフルハウスだ、老虎は凄いことをやり遂げた!」
僕は、まだそんなことを考えています。これから押し寄せてくる計り知れないほどの大きな感動を、未だ予感することもできずに。
ファイナル武道館、開演です!
1曲目「ミスター・ムーンライト」
遂に始まりました~。
見渡す視界は、アリーナ、1階スタンド、2階スタンドまでビッシリの人・人・人です。
僕の位置からは南と南西の2階スタンドを見上げる感じになりますが、南スタンドの最後方にズラリと並んでいたのは・・・立見の方々でしょうか。
思えば・・・10代前半にビートルズを知ったのが、僕のロックとの出逢い。
「ミスター・ムーンライト」という曲もこの40数年間で何度聴いたか分からないほどですが、まさかタイガースのレパートリーとして、生演奏で新たに出逢うことになるとは・・・これは僕なりの小さな奇跡でもあります。
ちなみに「ミスター・ムーンライト」収録のビートルズのアルバムは、これ。
収録曲中、「ミスター・ムーンライト」以外でみなさまにお馴染みのナンバーを挙げるとすれば、「ロックンロール・ミュージック」でしょうか。
さて、これまで通り「ミスター・ムーンライト」で幕を開けた、奇跡の老虎ツアー・ファイナル、日本武道館。
北東スタンド1階、前から4列目(D列)というのが僕の頂いたお席でした。
33列と34列に夫婦で参加したのですが、僕は内寄りの33列に着席。斜め真下が袖になっていて、何とミキサー見放題!
ジュリーが「ミスタ~~~~!」と歌いだした瞬間に、グイグイと伸びあがるイコライザーの波形。
すぐ近くには柴山さんのギターがズラリと並んでいるというのに、どちらかと言うとミキサーの方に目を奪われる僕は、やはりマニアックな奴と自覚せざるえを得ませんね・・・。
では、ステージのメンバーそれぞれの姿が、僕の席からどのように見えたのか詳しく説明しますと。
・ジュリー
左肩から背中にかけての斜め後ろを常に見ている感じですが、ジュリーはアクションも大きいので、横顔が頻繁にチラリチラリ。
上手側を向いて歌う際には、ほとんど正面から熱唱の表情を見る感じになります。
しかしジュリーの背中は何故あんなにカッコイイのでしょう・・・。説得力抜群の、男の背中でした!
・サリー
完全に斜め後ろから見る感じ。
でも、ベースのフレット移動を確認する時には横顔もチラリ。ただし・・・ステージのメンバーの中で一番遠く、見えにくかったのもサリーでした。
・ピー
斜め横(泰輝さんを軸に、僕の視界からはピーだけが右側になります)やや上から見下ろす感じ。とにかくすべてのドラムセット・パーツへのアタックが見えるというのが嬉し過ぎます!
他メンバーについては、動きの角度によってしか観られない顔の表情も、ピーだけはよく見えます。全身、見放題です。
キックやハイハット・ペダルを演奏する際の両足の動きが見える、というのが僕としては一番の歓びでした。
・タロー
大きくて優しそうな背中を斜め後ろから。距離が近いぶん角度が無いので、水色スーツの背中の印象が一番強く残ったのもタローです。
タローはピーをよく振り返って見るので、その度に温和な表情をハッキリと見ることができました。
・柴山さん
見えるのは、小さいながらとてもテンション高そうな背中なんですが、いやいや近い。距離的には、ステージのメンバーの中では一番近い!
なんせ、エフェクター見放題ですから。
これね・・・例えばTVカメラが柴山さんを狙ってナナメに対角線から撮影したとしたら、僕の姿も画面左上に入っちゃうと思う・・・。
・下山さん
真横から横顔を見る感じ。遠いですけどね・・・。
コーラスしている時の表情などは何となく分かりましたが、下半身が見えません。ですので、ギターや指先などの細かいところまではチェックできませんでした。
・泰輝さん
お姿は真横から見下ろす感じですが、かなり近い!
演奏を見るという観点だけで言うと、柴山さん以上に近いです。とにかく鍵盤が斜め上から完璧に見えます。これまたメチャクチャ嬉しいぞ~!
泰輝さんは曲の途中で手が空くと、手拍子をして上を見上げるようにしてくれます。その時には、にこやかでいてなおかつ凛々しい表情もハッキリと見ることができました。
・GRACE姉さん
姉さんから見て・・・演奏途中にそのままの体勢でふと視線を上に見上げれば、バッチリ対角線に僕らの席がある感じ。
ですから、距離的にはジュリーやピーより遠いんだけど、GRACE姉さんの表情や視線の先を追っていて、他のメンバーの細かい動きに気がつく、ということが多々ありました。
あと、GRACE姉さんはおそらく意識して、後方席を中心に笑顔をふりまいてくれていました。特にステージ真後ろのお客さんには、曲中に何度もタンバリンをかざしてくれていましたね~。
と、こんな感じです。
ね・・・なかなかの良席でしょ~?
見えるのは、ステージばかりではありません。
ステージを見ると、そのまま自然にアリーナ席までが目に飛び込んでくるのです。
アリーナ前方のお客さんの顔の判別がつくほど、よく見えます。お~っと、りんだ様&ぴー子様発見!
神席うらやま・・・。
うん?でも・・・ってことは、アリーナからはこちらが見えるの?
(註:後日、朝日新聞さんのデジタル版記事写真で確認しましたところ、ステージを見ると自然に後方席がセットで見えていたようですね。朝日さんの「ジャスティン」のシーンを捉えたショットでは、特にハッキリお客さんが映っています。
裏神席(←2012年度、気になる流行語大賞有力候補)でご参加のみなさま、是非ご確認ください。ご自身の姿がタイガースと一緒に映っているかもしれないですよ!)
そして。
僕はこの日を前にして、「どんな光景になるのか」「どんなふうに見えるのか」ということばかり気にしていて、重要なことをうっかりしていたんですけど。
ステージ後方席・・・当然、音の聴こえ方も正面で向き合ってる時とは全然違うわけですよ!
今回聴こえた音というのはですね・・・。
ステージのメンバーに聴こえている音とほぼ一緒
という、何がそんなに嬉しいんだかなかなか説明し辛いながらも、僕にとってはヨダレが出まくるような聴こえ方だったんです!
僕はよくLIVEで
「今、自分の耳に聴こえている音は、実際のステージ上ではどんなふうにモニターされているんだろう」
ということを考えます。「ステージ上の音は、客席の音とは違う」ということを痛烈に経験したことがあるので、そこは常に気になる点なんですよ。
渋谷公会堂(もうCCレモンホールではなくなりました)の1階最後席がステージで聴こえる音に近いんじゃないか、とか・・・これまで色々とそんな想像をしていたのです。
それがまさか、老虎ツアー・ファイナルの武道館で体験できるとは~!
そして特に僕の位置からですと、タロー、柴山さん、泰輝さんの3人が常に確認しているモニター返しとまったく同じ聴こえ方だったのではないか、と推測できるのです。
これが同じ北東でも、2階になると全然違った感じになるはずですので、「音を聴く」という観点からすると、僕にとっては一番良い席を頂いたのかもしれません。
例えば逆サイドの北西スタンド1階になると、サリーのベースの返しが強くて、タローや柴山さんのギター、ピーのハイハットなど、高音系の音は聴き取りにくくなっていたと思いますし。
ちょっと想像できないのが、真後ろのお席ですね。どんな感じだったのかな・・・?
で、ですよ。
「ミスター・ムーンライト」の時点で早くも
「うおぉぉぉぉっ!」
と、音の聴こえ方にまず興奮して立ち上がった(後ろのお姉さま方が立ってくださったので助かりました。ありがとうございます!)わけですが、もうね・・・なにが感動って、ピーのドラムスですよ!
何と
マイクを通さない、素のドラムスの音が聴こえる!
という恍惚至福状態。
その分、粗削りな部分も把握できるというのがまた、逆に嬉しいわけで。
「ミスター・ムーン・ライト」の段階ではまだスネア・ドラムが登場しませんが、タムがね、「ドコポコポコポコ♪」って言うんですよね~。
マイクを通した音だけ聴いているこれまでの参加会場では、ピーのドラムスに「ポコ」なんて擬音表現は当てはまりません。でもこの日僕が聴いた「ミスター・ムーンライト」では、「ドコポコポコポコ♪」。
すぐそこで鳴ってる、って感じなんですよ。
僕、これまで何度もこの曲のレポで
「向かって右から左にタムを流し打つ」
って書いていましたけど、小節の括り的には、流し打ちの前に「ドコ」というフロアタムが先にある、という構成なんですね。
ジュリーのヴォーカルはマイクの音なんですが、これもやっぱり、モニター返しの音が柴山さんの位置から聴こえてくる、という状況だったんじゃないかなぁ。
だってね、他の楽器で言うと、一番よく聴こえていたのが柴山さんのギターでしたし。
柴山さんはもう何十年もの間、こうしてモニターから溢れ出るようなジュリーのヴォーカルを、隣で、後ろで、ずっと聴き続けてきたんですよね・・・。
手前に設置されたスクリーンでは、ベース・ソロでサリーがアップになるのを確認。
生で観られて大感激の武道館だったけど、映像が残っている、というのはやはりとても嬉しいですし、NHK放送、そしてDVD発売が本当に楽しみに待たれます!
2曲目「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」
武道館に向けて、僕は1月中旬にこのようなCDを購入いたしました。
デイヴ・クラーク・ファイヴのベスト盤です。
実は僕はこれまで、このバンドに関する知識がほとんどありませんでした。数曲知ってる、という程度だったのです。
何故だろうなぁ・・・リバプール・サウンドに特化した洋楽の聴き方で20代まで過ごしてしまったから、ロンドン・サウンドの基本を見逃していたのでしょうか・・・。
僕の一番のアイドルであるニック・ロウが、あのロックパイル(「DIRTY WORK」の記事参照)での活躍以前、ソロデビューのさらに前に組んでいたバンド”ブリンズレー・シュウォ-ツ”のアルバム『ナーバス・オン・ザ・ロード』で、デイヴ・クラーク・ファイヴのヴァージョンの「アイ・ライク・イット・ライク・ザット」をカバーしていて・・・そのオリジナルを探し求めて聴いたのがこのバンドとの最初の出逢いでしたね。20代中盤でした。
その時は、強く引っかかってこなかったのですが・・・改めてCDを聴くと。いやぁ良い!久しぶりにこういう「ロックンロールの洪水」といった感じの音楽に浸りました。
収録曲で一番気に入ったのは「エヴリバディー・ノウズ(アイ・スティル・ラヴ・ユー)」という、先の展開が読めない変テコな曲(褒めてます!)。
でも購入の真の目的は、当然ながらみなさまご存知の、老虎ツアー・セットリストの2曲でございました。
まずは「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」。
武道館に備えて、コーラス・パートの歌詞チェック!コーラス参加意欲満々なのです。
”I can really move”は聴き取れてなかったなぁ・・・。あとは、”work it out”じゃなくて”work it on”か。
で、語感的に一番カッコイイ、と思っていた箇所はやっぱり”Like it like this”でしたね。
ただ1点、コーラス・パートじゃなくてリード・ヴォーカル・パートのトコですが、歌詞カードで”Wow that I can dance”って書いてあるのは、”Wow”じゃなくて”Now”の誤植じゃないのかな~?(”Watch me now”の直前のトコね)
でも、正解は分かりません。誰か~!!
(後註:やっぱり「Wow」ではなく「Now」が正しいようです。J先輩のさりげない優しさが嬉しい・・・)
今回のタイガース(もう言い切る)の演奏はデイヴ・クラーク・ファイヴのヴァージョンに忠実なんですけど、それ故に大きく目立つ相違点がふたつあります。
ひとつ目は、例の”Watch me now”。これはデイヴ・クラーク・ファイヴだと、コーラスではなくリード・ヴォーカルのパートでした。
「わっちみなう、アオッ!」とシャウトし、最後の「アオッ!」にコーラスの出だしが重なって噛んでくる感じ。
ふたつ目の相違点は、「テル・ミー」のコーラス・ワーク。
デイヴ・クラーク・ファイヴ・ヴァージョンの「テル・ミー」は3回。つまり、オクターブ上を切り裂く4回目の「テル・ミー」は無し。コーラス・パートは5度までです。
いずれの相違点も、タイガースに奇跡的なバランスの声質の持ち主が集まったという証明に直結するものですね。
そして、今回トッポ不在のハンデの中で4回目の「テル・ミー」を担った柴山さんには、改めて大拍手を送りたい!
おそらくタイムリーなタイガース・ファンの先輩方にとって、「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」の「テル・ミー」は4回!という認識で通っていたはずですから
「トッポがいないし、テル・ミーのトコはオリジナル通りの3回でやろうか」
というわけにはいかなかったのでしょう。
タイガースの「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」には、4回目の「テル・ミー」がどうしても必要だったのです。バ~ン!と柴山さんに照明が当たるのは当然のこと。
おっと、レポで楽曲考察記事を展開してどうする(汗)。
イントロ、ピーの16分音符のスネア・ドラム(細かいことですが、デイヴ・クラーク・ファイヴ・ヴァージョンよりも1つだけ手数が多い)が炸裂した瞬間がまず感動。
先述の通り、ドラムスはマイクを通していない生音が聴こえてくるので、「うわ~、スネアだ~!」という感触がバリバリだったんです。
僕はこれでもブラスバンドでスネア・ドラムをやってましたからね。いわゆる”小太鼓”の音にはこだわりますよ~。
これがピーのスネアの音か!
ジュリーの言った通り・・・タイガースのレコードの音と同じ「全然変わってない」スネアの音が今、確かに聴こえます。
ピー・スタイルというものがしっかりとあるんですね。
例えば、いわゆる”テクニックに秀でたドラマー”ならば、叩いた後の反動、手首の返しをフルに利用したアタックが基本として当然のようにあります。
でもピーのスネア・ドラムを叩くスタイルは、「振り下ろす」とか「打ちつける」感じ。あぁ、もっとピッタリの表現があります。「押さえつける」感じです。
『songs』で、「タイガース(の存在)が大きすぎて、無理やりにグ~ッと押さえこんだ」とピーが言っていましたよね。あの言葉を発した時の肩の動き。あれが、ピーのスネア・ドラム演奏の動きを象徴しています。
「身体が小さいから、大きな動きを意識した」
ピーのドラムスの原点がそこにあります。
押さえつけるようなスネアドラムもそう。”トップ・シンバル剣舞”もそうです。
「基本通り普通に」ではダメだったんですよ。だって、タイガースのドラマーだったんですから。
それが独特のピー・スタイルを生み、40年のブランクをモノともせずに、そのままこの老虎ツアーへと引き継がれてきたのですね。
一方ジュリーのヴォーカルだって、「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」のようなタイプの曲だと、当時と本当に変わっていないのでしょう。
僕は同窓会の音源を持っていますが、その時とも変わっていません。
そして今回、デイヴ・クラーク・ファイヴのヴォーカルと聴き比べることによって、より一層「ジュリー、カッコイイ!」と感じるようになった箇所があります。
それは、「Do the twist♪」のトコ。
デイヴ・クラーク・ファイヴの音源では「ドゥ・ザ・ツイッス!」みたいな語感になっていますが、ジュリーは
「ドゥ・ザ・ツイスタ♪」
と、1つ音をつけ足すようにして歌っていますよね。これが最高にシビれる!
そして、タイガースならではのコーラス・アレンジ。
ステージ後方席からは、アリーナのお客さんが髪を振り乱して盛り上がっているのが丸見えですので、ハジけまくるテンションがビビビ~ッ!と伝染してきます。
僕もささやかながらコーラス・パートにも参加し、2曲目にして早くもスイッチ全開です。
しかし、お客さん同士が向かい合うというのはイイもんですね。
アリーナの方にも、裏スタンド1階の僕らの雰囲気は伝わって見えていたのかな・・・?
3曲目「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」
この日、僕の前席にはカップルのお客さんがいらして、女性のかたは間違いなくタイガースファン。で、男性のかたは見るからにミュージシャン畑といった雰囲気で、完全なミック・ジャガー・スタイルでキメていらっしゃるお兄さん(僕よりお兄さん、ということです)でした。
そのお兄さん、ここまで座って軽く手拍子しながら聴いていらっしゃいましたが、ジュリーの「Time~~~♪」が炸裂するやいなやスックと立ち上がり身体を揺らし始めました。思うに、ストーンズファンの血が騒いだといったところではないでしょうか~。
さてさてジュリー、メチャクチャ高く飛んでいましたよね。
足が開いて、右手がビシ~ッ!と前に伸びて、僕の位置からだと背の高いタローがジュリーの手前に見えるんですけど、タローの頭よりずっと高いところまで飛んでいるのがよく分かりました。
ピーの、鬼のハイハット・ペダルも凄かった・・・。
右手はライド・シンバル、左足はハイハット・ペダルという、叩いて踏んでのコンビネーション3連符。
僕の席からは、おそらく北東スタンド専用でしょうか、ちょうどステージ上手端奥に設置されたスクリーンが正面に見えます。
「この映像が残るのか~」と思いながらチラチラとそちらも観ておりましたら、間奏で柴山さんのアップが来た来た~。
ストーンズ・ヴァージョンに忠実なソロですから、先述のお兄さんも喜んでいたんじゃないかなぁ。
やっぱり「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」のソロはこのフレーズですよ。ストーンズ自体にもいくつものヴァリエーションがあるけれど、このフレーズが一番しっくりときます。
僕が初めてこの曲、このフレーズと出逢ったのは、15の時。
ローリング・ストーンズのベスト盤『ビッグ・ヒッツVol.1』というレコードでした。ちなみにこのLPには「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」以外に「サティスファクション」や「リトル・レッド・ルースター」も入っておりましたのですよ~。
(鹿児島の実家にレコードを置きっぱなしで、LPとしてはもう20年以上も聴いていないのですが・・・)
いやぁ、とにかく柴山さんの音がよく聴こえます。
逆に北西スタンド1階のお客さんには、下山さんの音がよく聴こえたことでしょう。
とうとう僕はこの曲での下山さんの役割を把握できずにツアーを終えたなぁ・・・。まぁそれは、後からDVD映像でゆっくり確認するとしましょう。頼むよ著作権!
そう言えば、この曲からでした。ジュリーが曲の途中でクルリと後ろを振り返って歌ってくれ始めたのは。
ステージ後方席各地は
「ジュリーが自分達の方を向いてくれた!」
というだけで、悲鳴は上がるわ、手は振るわ、跳び上がるわの大盛り上がり状態。
この感覚は本当に新鮮だったなぁ・・・。
この曲では、GRACE姉さんもコーラスに参加しているんですね。これは初めて気がつきました。
姉さん、曲の間にタンバリンをステージ後方席に向かって突き上げながら見上げてくれたり、サービス満点でございました。
ステージ後方席1階とステージとは本当に距離が近くて、GRACE姉さんはステージのメンバーとだけでなく、後方席のお客さんとも、何度も音で会話してくれていましたよ~。
そうそう、「Time~♪」のジャンプにはこの日は参加できませんでした。
密集した場所でしたし、武道館の座席は想像以上に勾配が急で、ちょっと危ない感じがしましたしね。
でも、この曲のジャンプについては鹿児島公演最端席で思いっきり参加することができましたから、悔いはありません・・・。
~MC~
やっぱり雰囲気がいつもとは違います。
拍手がステージを取り囲むようにしてなかなか鳴りやみません。ジュリーはそんな雰囲気を噛みしめるように、真剣な表情で語り始めます。
「寒い中、足元の悪い中、たくさんのかたが来てくださって、ありがとうございます」
(1万3000千人だったようですね!)
「このメンバーが40年ぶりに揃って始まったツアーも、今日が最後です」
ひとことひとことを感慨深げに語る様子は、東京ドーム『ジュリー祭り』のMCを思わせます。
でもジュリー
「タイガースが1月24日にここで解散コンサートをやってから、44年が経ちました」
って・・・そこは間違ったまま映像音声にに残ってしまうのでしょうか。
全然違う声でも良いのでジュリーのアフレコお願いしましょ~!そこは正確にしとかないとねぇ。
僕のカミさんは「タイガースが解散して何年だから、今自分は何歳」などという年齢認識をしているくらいなんですから・・・。
(註:らいら様よりコメントにて「四十余年」説を頂きました。ジュリーらしい言い回しですから、可能性は大ですね!)
それにしてもね・・・。
1月24日は自分達にとって特別な日だ、今日ここでまた集まってやれているのが嬉しいと言って・・・ジュリーがお客さんにこんなことを言いましたね。
「この時を、一緒に過ごしてくれてありがとう・・・」
この時点で泣いちゃった先輩方も多かったようです。
そして、カミさんが言うには、この時点でもうジュリー自身がメロメロになってて「この先大丈夫かな」と少し思ったんだって。
やっぱり僕は鈍感だなぁ。
ジュリーが「今日は八方美人になろう、と事前にみんなで決めてきた」と言ったのはここのタイミングでしたっけ?
とにかく「八方美人」発言の後に柴山さんが思い出したようにクルッと振り返り、北東スタンド1階席に向かって手を振ってくれました!
でもね・・・柴山さんがハッキリ僕らの席に対峙してくれたのは、これが最初で最後。優しき柴山さんはその後、主にステージ後方席2階を中心に笑顔をふりまくのでありました。
最後にジュリーが何と言って、「僕のマリー」のベース・イントロが絡んできたのか・・・その言葉を僕は今思い出すことができません。
NHKさんの放送、早く確定の日付を知りたいですねぇ。
4曲目「僕のマリー」
僕はまたしても、重要なシーンを見逃してしまっていたようです。
カミさんが、「特にこの曲の時にジュリーは涙でボロボロだった」と言っていました。
「そうだったか~?」と応えておりましたところ、打ち上げでご一緒したみなさま一様にそう仰る・・・一体何を見て、何を聴いているのか、DYNAMITE。
いや、何を見て何を聴いているかと問われれば・・・この日の「僕のマリー」ではタローと泰輝さんです。
今回の武道館、泰輝さんのキーボード全容がバッチリ見えたのは本当に嬉しかったなぁ・・・。僕、かなり後半になるまで、今ツアーの泰輝さんのキーボードは1台体制だと思い込んでしまっていましたからねぇ。おかげで「下手するとチェンバロなどいくつかの音色については飛び道具(打ち込み)なんじゃないだろうか」なんて失礼なことまで考えたりしました。
いやいや炸裂してますよ、泰輝さんの”神の両手”。
そしてタロー。
いい音出してたなぁ・・・。
やはり、ステージで鳴ってる音というのは、普段の客席で味わえる音とは違うみたいです。
これまでの参加会場で、「僕のマリー」でのタローの間奏リードギター・ソロでは、そこだけタローの音が前に出てくる、という感じのバランスでした。しかし武道館のステージ後方席では、他の楽器の音に包まれた状態で、タローのギターの音量だけが増す、という感じに聴こえたんです。他の音を押しのけて主役になる、というバランスにはなっていませんでした。
この聴こえ方は明らかに席の恩恵・・・ありがたいことです。
タローは、コーラスもよく聴こえたなぁ。
リード・ヴォーカルだと線が細い印象ですが、コーラスのタローの声はイイですねぇ。他の誰の声も殺さない。
そして、ジュリーの主旋律に寄り添い同化する感じ。まるでリード・ヴォーカルの音幅を強調するイコライザーの役目を果たしているような・・・。
あと、ピーはリム・ショットを打つ時にスティックを逆さにひっくり返しているんですよね。その返し方が・・・カッコイイんですよ~。
タイガースという特別なバンドにあって”魅せるドラマー”を宿命づけられたピーが、華麗で大きなアクションを追求した結果、こんな「お客さん、そこまで見てないよ~」といった細かい部分にまで、二枚目な動きが行き届いているんですね。
つくづく、ピーは単に”ドラマー”として語ってはいけないと思います。”タイガースのドラマー”として語らなければなりません。
ある特定のバンドに特化した演奏者、というスタイルを僕はとても好みます。その意味でピーは僕にとって最高峰のドラマーの一人。それを今回のツアーでまざまざと見せつけられました。
タイガースを愛する人にとって、タイガースのドラマーはピーでなければならない、ということが、後追いファンの僕にもようやく身を持って理解できた老虎ツアーなのでした。
5曲目「モナリザの微笑」
年明け九州レポで、この「モナリザの微笑」イントロについて、僕はこう書きました。
今ツアーの「モナリザの微笑」のイントロは、カウント無しなんですね。
タローが「シド#レ~、ド#シラ#~ド#~シ~♪」の最初の2音、「シド#♪」までハーモニカを吹いたらすかさずバンドが噛んできます。うっかり水を飲んでる最中にタローがハーモニカを吹き始めたら、大変。ということで、タローだけでなくバンドメンバーも緊張の瞬間というわけですね。
ということでいよいよファイナル、今ツアー最後の「モナリザの微笑」イントロ緊張の瞬間がやってまいりました。
「僕のマリー」への大きな拍手が落ち着き、静けさが戻った中で、タローはいつものようにハーモニカの「シ」の音を出す位置を確認・・・していたのでしょう。
しかし。
静寂の中、響き渡るピー先生のカウント!
思わずタローが
「おいおいこの曲は俺からだよ」
・・・とは言わずに(ハッキリ言っておけば良かった、と数秒後に後悔することになります)、「ちょっちょっちょっ・・・」みたいな笑顔だけをピーに向けます。
ジュリーは「まぁよくあることや」と思ったのでしょうか、まったく動じずに立ちつくしたスタンバイ体勢のまま・・・だったような。
ピー先生、「オッケ~オッケ~」みたいな感じで手を上げます。
タローとしてはそれを「間違ってた、ごめん」とピーが合図したものだと解釈。
しかし実はこの時のピー先生は
「あ、カウントのタイミングが少し早かった?次はしっかり合わせてくれよ」
くらいのノリだったのです・・・!
仕切り直したタロー、気を落ち着かせて再度ハーモニカの「シ」の位置を確認。
そんな中
再び響き渡るピー先生のカウント!
『老虎再来』風に言うと
HERE COMES PEE AGAIN!
ここへきてさすがにジュリーが、「ピーが完全に何か勘違いしている」ということに気がつき、振り返って苦笑いしながら
「違うよ」
と口を動かすのが見えました。
こんなところでもメンバー同士のやりとりが手にとるように分かる・・・ステージ後方席バンザイ!
実際のところ、ピーが曲順を勘違いしていた(次曲「銀河のロマンス」のカウントを出していた)のか、それとも「モナリザの微笑」のイントロを、自分のカウント3拍目の後からタローのハーモニカが噛んでくる構成だと勘違いしていたのか、どちらなのかは分からないのですが、ピーもジュリーの言葉でようやく
「ああっ、俺が間違っていたのか!」
と気がつき・・・。
スックと立ちあがって、素敵過ぎる照れ笑いと共に、まずは北東スタンドに向かってペコペコ!!
その後、ステージ後方席をグルリと一周する形で、お客さんに「いやいや面目ない」のお辞儀攻勢です。
やっぱり、ステージ後方席はお客さんが近いので、ピーもいつもとは違う視線を感じてたんでしょうね。しかも後ろから横からですからね。真っ先に後方のお客さんにペコリとしてくれたその様子は、何とも言えずキュートでございました。
ステージ後方席に対してピーが「この間違いはバツが悪かった・・・」という理由はもうひとつ考えられます。
北スタンドにいらしたニーナ姉さんに打ち上げで伺ったのですが、ピー専用の曲目カンペが、北スタンドからは丸見え状態だったらしく。
凄まじく大きな文字で曲目が書いてあって、その横にピーの自分なりの注意事項らしき但し書きが加えられていたそうです。
で、その横に老眼鏡も置いてあったんですって・・・。
このシーンは後のMCでジュリーがピーに
「瞳オチャメ」
への改名を示唆するに及ぶとても愉快なシーンだったわけですが、緊張のイントロを二度も仕切り直すことになったタローの心境をふと思うと、胸がつまりそうです~。
ただ、3度目にしてイントロで響いたタローのハーモニカは、見事でした。
これも席の位置的な聴こえ方の恩恵だったのかな・・・朗々と済んだ、歌うような音色。隣で聴いていたカミさんも「今日はタローのハーモニカがキレイだった」と後から言っていましたからね。
「こころが欲しい~♪」の後の”トップ・シンバル剣舞”は、横浜では7つ打ち、九州では6つ打ち、そして武道館では7つ打ちでした。
7つ打ちの場合だと、打った直後にすぐさま「だだっ」というオカズに移行しなければならないのでその分忙しくはなりますけど、カッコ良さを追求するならやはり7つ打ちが理想でしょうか。
後ろから見ていると、例えばタローにライトが当たる時、アリーナのお客さんの顔が一斉にそちらに動くのが見えます。
不思議な、なんとも美しい光景。「武道館のステージから客席を見る」という感覚に近いものが味わえたようで、得難い体験だったと思います。
6曲目「銀河のロマンス」
今度は無事にピーのカウントからイントロへ。
これまでの参加会場では、この曲のイントロでピーの”トップ・シンバル剣舞”に見とれていましたが、武道館ではそれを(当たり前ですが)初めて真横から見ることに。
いやぁ新鮮です!
動きとしては、(ピーから見て)右から左にシンバルの表面を撫でるような感じ。「叩く」という動きではありませんね。
で、撫でてからもう一度右側にスタンバイする時の動きが”剣舞”になるのです。
さて、僕の席からはピーの手前に泰輝さんのキーボードの鍵盤が自然に視界に飛び込んできます。
「ファソラドファラソ~♪」と駆け上がっていくストリングスは、右手上段。
「この曲、泰輝さんはたぶんストリングス2音色だよな」
と考えながら何気なく鍵盤を見ておりましたら・・・。
ええっ、鉄琴?!
そう、Aメロからヴォーカルに噛んでくる、GRACE姉さんが叩いている鉄琴の音。あの音とまったく同じフレーズを、泰輝さんも左手下段で弾いているではありませんか。
「銀河のロマンス」の鉄琴は、泰輝さんとGRACE姉さん、二人のユニゾン演奏だったのです!
なるほどなぁ~。
これがどういう効果を生むかと言うと。
正規の席・・・ステージ正面を聴いているお客さんには、基本的に音の左右バランスがステージの楽器編成と同じ位置から聴こえるようにミックスされています。
例えば、「僕のマリー」イントロでの
ずっ、ちゃ~ん(どこどこどこ)♪
の「どこどこどこ♪」はピーのタムの流れを追うように、右スピーカーから左スピーカーへと音が移動します。
(註:これは映像の場合でも同じ仕組みになっていますから、是非『songs』でヘッドフォン確認してみてください)
そしてもうひとつ例えると、「モナリザの微笑」。
GRACE姉さんは「モナリザの微笑」でも一部鉄琴を演奏します。こちらは泰輝さんとのユニゾンではなくGRACE姉さんのソロですので、客席では鉄琴の音が左のスピーカーからより大きく聴こえるということになります。
で、「銀河のロマンス」。
同じ音色、同じフレーズが左右離れた別々の二人の演奏者によって奏でられることで、左右から綺麗なバランスでキラキラした音が中央を包むのです。
この場合、違う人が違う位置で演奏している、というのが大事な点。機械と違い、人間の演奏はたとえまったく同じフレーズを正確に演奏していても、ほんの少しのズレが生じ、それが、単に「重ねる」のとは違うニュアンスを生みます。「銀河のロマンス」の鉄琴音色の場合で言えば、「キラキラ度が増す」のです。
もし機械の演奏で同じことをやったら、単に左右で音が倍になり全体の音量が増すだけ。まぁ、そのため機械でやる時はわざとコンマ数秒ずらしてプログラムするわけですが、それでも生演奏の味は出ません。
武道館の僕の席からは、位置的に泰輝さんの演奏音の方が強く聴こえていたことになりますが、今後のTV放映、DVD鑑賞の際には是非とも「銀河のロマンス」での、正面位置から聴こえる鉄琴のミキシングに注目したいと思っています。
サビの
「シルヴィ~、マイラ~ヴ♪」
のトコの盛り上がりにも触れておかねば。。
武道館のお客さん、ファイナルということで張り切ってシャウトしてましたねぇ・・・。
ただ、「ジュリー、マイラヴ」とも「ピー、マイラヴ」とも何とも判別できませんでした。
ステージに向かってくる声の波が凄くて・・・席の位置関係のせいかな?
ステージ後方席の僕の耳には、この日の「銀河のロマンス」のサビは
「ぎゃ~、マイラヴ♪」
と聴こえていたのでした・・・。
7曲目「坊や祈っておくれ」
この曲まで進んで初めて
「ん?ジュリー、嗚咽を抑えるようにして歌ってる?」
と気がつくDYNAMITE。
まぁ、「泣いてしまうかも」とジュリー本人が言ってたみたいだし・・・と、この時点でシローの登場などまったく予想もできずに、ひたすら「今のところはいつも通り」のファイナルに集中です。
この曲のジュリーのヴォーカル、やはりコーラスが重なる部分とソロの部分では歌い方が違いますね。
コーラス直前のマイク・ブレスは敢えてそうしていると思いますし、「荒れ~~た♪」の「れ~♪」が本来の尺より少しだけ長めに聴こえるのも、僕の錯覚ではなさそうです。
さてこの曲で書いておきたいのは、やはりステージ後方席から観たメンバーの様子。
ライトの当たり方が、正面から観る光景とは全然印象が違うのです。
まず最初の出だしでは、ジュリーの背中だけがパ~ッと白く明るくて。
手前のタローが薄暗がりの中にシルエットはくっきり見えて、柴山さんは完全に暗闇の中なんですが、距離が近いのでたたずまいが見えます。
ピーは闇にどっぷりとつかり、いつものように水を口にふくんでいるように見えました。
そして泰輝さんは、わずかな灯りの中で大きく腕をふりかぶっての熱演。
曲が終わると、柴山さんがジュリー達に向かって大きく拍手するのが見えました。
この曲に限らず、下手側のサリーと下山さんはよく見えない位置でしたが、この曲での下山さんはどんな様子だったのかな・・・。
やはり席の恩恵か、この曲でもタローのコーラスがよく聴こえました。最高音の「ミ」が続く箇所では、若干ですが喉に力が入っているようです。
しかしタローのコーラスは本当にクセが無く、ジュリーの主旋律をくるみこむように訥々と優しく、タロー自身の主張が無い分、ジュリーの今の声質には一層合っているように感じました。
あと、僕はこの時点まで気づいていませんでしたが、南スタンド側の天井に、幾何学模様が浮かび上がるライティングが。
ステージ照明の反射でしょうか。僕の位置からは正面から見たステージのライティングがまったく分かりませんので、この幾何学模様は未だに謎のままです・・・。
ファイナルも終わり・・・僕としては、今ツアーで一度もタローのピアノが聴けなかったのは残念。
夏のセットリスト予想記事で僕は、「坊や祈っておくれ」はタローのピアノで!と書いていたのでした。
まぁ確かに、ピアノ弾きながらの正確なコーラスは、さすがのタローも無理なのかな・・・。
~MC~
(註:他先輩方のブログを拝見しますと、僕の記憶はかなりあやふやのようです。僕の記述は、各メンバーの言葉遣いやニュアンスが微妙に違ったり、発言シーンの順序が前後していたりすると思います。ごめんなさい・・・)
「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」の後は、いつになく神妙なMCだったジュリー。
ここでのMCでは、これまでのツアーのように面白おかしく「いつも通り」をやろうとするんだけど、どこかソワソワしている感じが。
やっぱり老虎ファイナルだからな~、らしくもなく緊張しちゃってるのかな~、などと感じながら聞いていましたが、この後にシロー登場のシーンが控えていることなどもあって、ファイナルという緊張、それ以上の落ち着かなさが、ジュリーだけでなくメンバー全員にあったのでしょうか。
今思いだすと、ここのMCのやりとりで一番冷静だったのはピーのような気もしますが・・・。
サリーについては、いかに凄い役者さんになったかを説明しつつも
「(今度のツアーで一緒にやって)、久しぶりのベースと低音(の声)が嬉しくて」
と甘えるような声を出すジュリーです。
あと、これは直前の関西でも言っていたんでしたか・・・サリーが
「”サリー”と呼ばれることも少なくなって」
と言うと、武道館に集まった360度のお客さんがすかさず
「サリ~!!」
の大声援乱舞。
「そんな急に言われても・・・」
と戸惑いながらも、渋いサリーです。
タローについてはツアー後半に来てジュリーの「いじり度」が高まってきています。
まるで各会場でのタローファンの熱が増すに比例するように、ジュリーのイジワルな方面の”弟キャラ”が爆発していますね。
サリーに甘えるのとはまた全然違う、弟・ジュリーのタローいじり。
武道館では
「タイガース解散後、”タローとアルファベッツ”をやって、これはまぁあまりその・・・その後裏方の仕事を色々とやって、クラブの店長やって・・・それはずっと前から?あと、今もいろんなことをやっているんですよ。借金とりでしょ?競馬の予想屋でしょ?」
タロー、これを受けて「(競馬は)今日は外しました」みたいなことをボソッと言いましたっけ・・・?
ジュリーは続けて
「昔は純情タロー、今は毒舌タロー。今日は是非その毒舌タローでひと言お願いします」
とうながされ、タローがどんな毒舌ヴァージョンを見せてくれるのかと思ったら
「僕も、そしてお客さんも・・・本当にイイ時にお母さんが生んでくれたなぁ・・・」
と、完璧な”純情タロー”ヴァージョンの語りを炸裂させ、1万3000千人のお客さんを見事にしんみりとさせていました。
続いてはピーとのやりとり。いや、やりとりの前に、ジュリーはピーに話を振るまで結構長いこと喋りまくっていましたが。
これまでのように、まずはタイガースが解散してからのピーの道のりを紹介。
高校に入り直して勉強して、慶應大学を出て高校の先生になった、と説明してくれました。
「その辺りについては、『ロング・グッバイのあとで』という本を読めば、手に取るように分かります!」
と、本を手に取るゼスチャーで、今回のツアー最後のピー・グッズ宣伝をするジュリーです。
記憶があやふやですけど
「今日を迎えて、メンバーの中で自分(ジュリー)が一番舞い上がってる」
みたいな話があって、それを受けて・・・というタイミングだったでしょうか、ジュリーは先程のピーの「モナリザの微笑」勘違いカウント2連発にも触れて
「・・・と言いながらさっきは(ピーも)間違っていましたけどね。でも、間違った後の、あのお茶目っぷりがいいじゃないですか~!」
と。
「瞳みのると言っていますが、”瞳オチャメ”です。それでは、”瞳オチャメ”(のヴァージョン)で挨拶を・・・」
とジュリーが話を向けると、ピーは照れたのか「イヤイヤ」をしたようです。
すかさず
「そ~ゆ~こと言ってると、肉投げるぞ!」
と、ジュリーがとうとう聖地・武道館のステージでも肉投げを~!
ピーは「いらん」と冷たく投げ返すのでありました。
ちなみにこの「肉の投げ合い」シーンは、どういうきっかけだったか忘れましたがアンコール前のMCでも行われ、その時は
ジュリーが投げる→
ピーが投げ返す→
ジュリー、前に向き直る→
ピー、隙を突いてもう一度念を押すように投げ返す
という、ピー先生ダメ押しの流れがありました。
真横から見ていると、ピーが笑いながらも
「絶対に肉はいらん!」
という断固としたゼスチャーで、力強くジュリーの背中に向かって投げつける仕草。ステージ後方席のお客さんは大ウケしていたんですよ~。
話を戻しまして。
ジュリーはピーのトークライヴも紹介。内容について尋ねられたピーは
「各会場でその地のアナウンサーさんと対談するコーナーがある」
ことを教えてくれました。
「例えば東京では、斉藤安弘(アンコー)さん」
と言うと、ジュリーは驚いて
「あぁ!アンコーさん・・・さっき会いましたよ・・・あぁ、そうか!そういう繋がりで(今日武道館に)いらしてたんやね!」
と。
その後ちょっと口がすべってしまったジュリーですが、ここでは書けません。ごめんなさい。
ジュリーは
「タイガース時代から、僕だけ何にも知らされてない、ってことが多かったんですよ・・・」
と、少しフテたように言って、メンバーやお客さんの笑いを誘っていました。
続いていよいよピー先生の中国語挨拶。
何となくいつもと違うことを言ってるな、とは感じましたが当然ながら僕にはさっぱり理解不能で聴きとれず。
ジュリーもこれまでは
「毎回聴いていると、どんなことを言ってるのかはだいたい分かる」
と言い続け、各地で通訳を買って出てきましたが、さすがに今回の武道館ヴァージョンは、そのままピーに
「何て言ったの?」
と。
ピーが説明してくれたところによると、どうも話のオチにジュリーを使ったようで
「こうしてまた、みんなで武道館に戻ってこれたことをメンバー全員喜んでいるけど、特に沢田は死ぬほど喜んでいます」
だそうで。
これは本当にそうなんでしょうね。
自分でも
「始まる前みんなに、いつも通りにやろう、と言いながら・・・ワタシが一番興奮している」
と言っていたジュリー。
ジュリーもツアー当初は、色々な面で少しは心配事もあったでしょう。
でも、ブランクのあるピーとサリーが想像以上の進化を遂げながらツアーを重ね、無事に辿り着いたファイナルは、タイガースにとって特別な1・24、日本武道館。
そして、特別なプロモートをするでもなく、360度の会場いっぱいに埋まったお客さんを見て・・・ジュリーが『songs』でも言っていた”興奮状態”が、この日はMAXにまで跳ね上がったのでしょうね。
「それでは次に、メンバーの歌をお届けしたいと思います。タローが歌います、ビコーズ!」
8曲目「ビコーズ」
デイヴ・クラーク・ファイヴのCDを買って初めて知りましたが、この曲はいわゆる”珠玉のB面”という位置のナンバーだったようですね。
本国イギリスでは「キャント・ユー・シー・ザット・シーズ・マイン」(邦題は「カッコいい二人」!)のB面曲だったのが、アメリカと日本では「ビコーズ」がA面曲として別個リリースされヒットするという、当時の洋楽輸入ではよく見受けられた黄金パターンだったそうです。
いい曲ですからね~。
僕が購入したデイヴ・クラーク・ファイヴのベスト盤は、とにかくゴキゲンなロックンロールが次々に繰り出されるラインナップ。
だからこそ、その中にあって「ビコーズ」のようなメロディー重視のポップ・チューンには、大きな存在感があります。
美しいメロディーでありながら、旋律の抑揚を抑えたような渋い作りは、ビートルズ初期からポール・マッカートニーも得意としていた作曲手法で、例を挙げるとこれがビックリ・・・「今日の誓い」「ザ・ナイト・ビフォア」といった楽曲がそれに当てはまるのです。
タイムリーなタイガース・ファンの先輩方には言うまでもないことですが、この2曲のビートルズ・ナンバーは、いずれもタローをリード・ヴォーカルに擁して、タイガースがカバーしていた曲ですよね。
タローの穏やかな声質には、このタイプの曲がバッチリ合っているということでしょうか。
当時のタイガースが洋楽カバーを演奏する際に、「これはタローのヴォーカルで行こう!」といったようなことは、誰が決定していたのかなぁ。
メンバーで話し合っていたのか、それとも中井さんを始めとするブレーンによって、「タローに合う曲」としてあらかじめピックアップがなされていたのでしょうか。後追いファンとしては興味が沸くところです。
泰輝さんのオルガンは、デイヴ・クラーク・ファイヴのオリジナル音源に忠実な音色とアレンジであったことも、今回のCD購入で分かりました。
Aメロのヴォーカル部ではオルガン・パートが無く、手の空いた泰輝さんは、時折伸びあがるようにしてステージ後方席にも視線を送りながら、手拍子をリードしてくれていました。
☆ ☆ ☆
「ビコーズ」の演奏が終わって・・・。
実は僕はここで、開演前にリハの音が漏れ聴こえていた「テル・ミー」を待ち構えました。
元々、初日に今回のセットリストを体感した時点で
「本来なら”サティスファクション”の位置にサリーのヴォーカル曲が入っていたはず。でもそれは今ツアーでは叶わなかったんだな・・・」
と思っていましたし、レポにもそう書きました。
「テル・ミー」をやるならここだ!
と思って見ていると、サリーがおもむろにベースをスタンドに降ろすではありませんか。
僕は瞬間、こう思いました。
「なるほど・・・ベース音を泰輝さんのキーボードに完全に任せて(ローリング・ストーンズの「テル・ミー」オリジナル音源には、鍵盤のパートがありません)、サリーは手ぶらでリード・ヴォーカルに専念するってことかぁ・・・。それならばサリーも歌う、という話になったってわけだな!」
と。
浅いねぇ・・・DYNAMITE。
で、隣のカミさんに向かって「サリー歌うで!」と叫びました。
しかしサリーは・・・。
あら?舞台の袖に戻っていく・・・?何だ?
ジュリーの
「それではここで・・・」
の「ここで」の後の声が、おそらく北スタンド、北西スタンド1階から湧き起こった、もの凄い歓声にかき消されます。
ふと気がつけば、対角線に見える上手側の袖に、数人の人影が・・・。
その左側に・・・。
あれは、車椅子・・・?
シローだ!
人影は、シロー付き添いの方々でしょうか。
車椅子を押されて入場するのではなく・・・兄・サリーに支えられ、寄り添われて、間違いない・・・あの岸部シローがゆっくりと、自分の足で、歩いてこちらに向かってくる!
まさか・・・。
多くのファンがそう思ったでしょう。
僕も、ファイナルでは楽曲のサプライズこそ予想し期待していたけれど、シローの参加についてはまったくあきらめていました。
シロー登場の噂はファイナルに限らず色々とあったのですが、身体のことを考えると、やはり無理なんじゃないか・・・仕方ない、と。
狭い歩幅で、ゆっくり、ゆっくりとステージ中央まで歩み寄ったシロー。
凄い声援です。万雷の拍手、とはまさにこのことです。
シローはうつむきながらも大きな身体をライトに晒して、ステージ中央へと辿り着き、用意された椅子に腰かけます。
ジュリーが
「精神的にも肉体的も落ち込んだ時を乗り越えて、シローが来てくれました!」
と。
あまりのグレート・サプライズに驚き、歓び、涙する武道館。
そして僕は思わず・・・生涯で初めて、LIVEの客席からステージ上のアーティストの名前を叫びました。
「シロ~~~!!」
いやぁ・・・僕は今まで「ジュリ~!」と思いっきり叫んだことすら、一度も無いんですよ。
初めてのアーティストへ向けての絶叫が、ジュリーでもピーでもなく、また柴山さんでもなく、「シロ~!!」になるとは・・・今さらながら自分でもビックリです。
シローの最初の言葉は、どれだったかなぁ・・・。
僕の記憶では、ジュリーが「これからどう、1曲?」みたいなことを言って、その後だったような。
マイクを向けられたシロー、なかなか喋り始めることができません。
静まりかえり、固唾を飲んで見守るメンバーとお客さん。
ようやく口を動かしたシローは、弱々しく震える声でゆっくりと・・・こう言いました。
「1曲と言わず~2曲・・・」
いきなり会場を笑わせてくれたではありませんか!
これか・・・このトボけた味わいが、シロー・トークなのか~。
確かに声に元気は無くヨレヨレなんだけど、この味わいは、持って生まれた素の表現なのかな・・・面白いぞ、シロー!
「・・・と言いたいとこだけど・・・1曲もマトモに歌えるかどうか・・・」
と、シローは切れ切れに言葉を繋げます。
「歌おうとしている曲には高音部があって、練習してみたら(この「練習」というのはおそらくリハーサルのことです。開演前にリハでシローも歌っていたのでしょうね)、全然声が出なくて・・・」
と自虐ネタっぽくブツブツと。
するとジュリーが
「出とったがな~・・・大丈夫や」
このジュリーの「大丈夫や」で、背中に電気が走った~!
こんなにも優しく、真心がこもった「大丈夫や」は・・・これまで聞いたことがありません!
「大丈夫」
「大丈夫だよ」
・・・皆が、普段からよく使う言葉です。
誰かを励ます時、自分は何もできないけれど、力になってあげたいと思っている時、困難に立ち向かおうとしている人を応援する時。
でも、果たしてそれがその時々で相手に何処まで伝わっているか・・・伝えられているのか・・・。
ジュリーの「大丈夫や」を聞いて、その言葉の深さと、秘められた大きな力を思い知らされるような気がしました。
何ていい言葉だろう・・・。
ジュリーは開演前にも、シローに言ったかもしれません。
「お客さんに”頑張れ”言われるかもしれん。でも別に無理して頑張らんでええんや。みんなが助ける。大丈夫や」
そしてステージ上で改めて、確かにシローに届いたジュリーの「大丈夫や」。
シローの腹はこれで決まったと思います。
自分の持つ、もてあます心、暴れる心は隣のジュリーにすべて委ねる。
もたれかかる。
自分はこれから歌を歌う・・・それだけ。
余計なことは考えない。心配事は全部ジュリーに預ける。
大丈夫だ。
ジュリーが曲を紹介します。
ビージーズのナンバー。
「ワーズ」でも「ジョーク」でもなく・・・。
何という選曲。ビージースの中でも、メジャー中のメジャー。「超」が付く有名曲。
「あの頃は戻ってこない」・・・そう歌う曲。
「自分の中に他の誰かが入り込んでしまったんだ」
そんな曲を、今のシローが・・・。
何という切ない、それでいて何という決意漲る選曲でしょうか。
イントロ・・・伴奏は、泰輝さんのピアノ1本です。
9曲目「若葉のころ」
僕がまだ小さかったころ♪
クリスマス・ツリーが高く見えていたころ♪
・・・あまりにも有名なメロディー。
無邪気に「愛する」ことのできた幼年時代を回顧し、大人になった自分を淋しげな視点から見つめる歌。
本当に有名で、ずっと前から知っていた曲でしたが、タイガースがきっかけで初めて気合を入れてビージーズを聴くようになっていた僕にとっては、彼らの魅力が美しいハーモニーやメロディーのみならず、哀愁や社会性を併せ持つ歌詞にもあることを学び、そんな観点で、より一層見直していた曲こそがこの「若葉のころ」なのです。
シローはソロリ、ソロリと歌い始めました。
最初のトークは、今にももろく壊れてしまいそうな感じの声でしたが、いざ歌いだすと・・・何という声でしょう。
普通の中音域を歌っていても、高音なのです。声そのものが透き通っていて、高いんですね。
無邪気な子供のような、高貴な女性のような、邪念のまったく無い高音。
そう言えばジュリーは、タイガースが「スマイル・フォー・ミー」をリリースした時に
「本来こういうバラードはシローの担当」
と話していたんだったなぁ・・・と、そんなことを思い出しながら、僕はシローの歌声を耳をこらして追いかけました。
武道館の後、シローの歌った旋律を目で感じたくて、「若葉のころ」の実際の音域を確認してみました。
↑ ドレミ楽譜出版社・刊 『ニュー・オールディーズ・ベスト100』より
まずは最低音。
低い音はAメロの出だしに集中しています。
ヴォーカルに入って1小節目の「When I was tall♪」の「When」が「ド」の音で、それより低い最低音が2小節目の「trees were tall♪」の「tree」。これは低い「シ」の
音です。
確かに低いです。でもこの2音はすぐ次の音が「ソ」に跳ね上がるので、音程をハッキリ出さずにつぶやくようにして歌えば、大丈夫。
シローもそうしていました。
では、シローの言う「練習したら全然声が出なかった」高音部は
「you and I~ our love will never die♪」
と歌う箇所です。
最高音は高い「ファ」の音で、まぁ男声にとっては高いですが、一音だけの独立した跳ね上がりならば充分太刀打ちはできる範囲。ビージーズ・ナンバーの最高音としては低い部類に入るでしょう。
しかし・・・この部分は高い「ド」以上の音がずっと継続しています。その中で最高音の「ファ」が何度も登場。
これは普通に辛い!
やはりシローの音程はフラットしまくり、シロー自身「ああっ、キチンと出せていない」と分かったでしょうが・・・それでもシローは臆せず歌い続けました。
その感動を、どう表現すれば良いのか。
歌が上手い、表現が卓越している・・・そんなこと以前に、人を感動させる歌声がある、ということに、会場を埋め尽くしたお客さん全員が改めて気がついたはずです。
必死で困難に挑戦しようとする意志。
余計な邪念をすべて放り出し、むき出しの心をさらしてひとつのことに集中し立ち向かう勇気。
でも、いくらそんな言葉で表しても安っぽく思えてしまう。
その場にいなければ分からない・・・言葉を尽くしてもまったく説明できないような歌声に、僕らは感動させられたのでした。
ピアノを弾く泰輝さんにも、何かが降りてきていたと思います。
泰輝さんは実際に鍵盤を目で見ていますから、それぞれの瞬間瞬間で、シローの声がどの音を出しているのかが、物理的に目に飛び込んできます。
でも、目にする音と聴こえてくる声の”生命”の違いに身震いしていたはずです。「これが人の声の力なのか、凄い・・・」と感じていたのではないでしょうか。
泰輝さんは、思わず本番中に泣いてしまったそうですね・・・。
しかしそこは名うての鉄人バンド、シローが早口になってしまったり、遅れてしまった時には、4拍子を臨機応変に3拍子、5拍子に変化させながら、「はい!ここ!」という感じで、左手の低音でシローの発声タイミングをリセットさせ、完璧にリードします。
そして・・・。
ジュリーは開演前のシローに、こう言ったのではないか、と僕は考えています。
「詰まったら詰まったでええんや。途中で止まってしまってもええんや。その時は俺も歌う。シローは無理せず、合わせられるところからついてきてくれればいい・・・大丈夫や」
ジュリーはきっとこの日に向けて、「若葉のころ」の歌詞をすべて暗記し、歌う準備もしてきたでしょう。
必死で歌うシローの心を、身体を、ジュリーの強靭な心と身体が支え、寄り添っていました。
ジュリーはまさに裸でした。
ジュリーという人間そのものを、すべてその場で晒していました。1万3000千人のお客さんの前で、ある意味あまりにも無防備なジュリーがそこにいました。
ジュリーのすべてのエネルギーが、隣のシローに向けられています。
結果、ジュリーの歌の出番はありませんでした。
シローは、ジュリーがすぐそばに寄り添ってくれているだけで「大丈夫」だったのです。
自分は孤独ではない。
ステージで孤立していない。
すぐ左にいるジュリーの温もりを感じながら、ひたすらに「歌う」ことだけに今の持てる力をすべて注ぎ込めば良かったのです。
曲は進み、ピアノ以外のメンバーの楽器が優しく抑えられた音で噛んでくる頃には、いよいよスイッチの入ったシロー本来の朗々とした歌声が会場に響きわたり、いつとも知れず聞こえていたお客さんのすすり泣きが会場にこだまして残響音となり、ステージを包み・・・。
何と、気づけば僕も泣いているじゃないか!
この曲の特性のひとつは、独特の風変わりなエンディング。すべての楽器がサ~ッと消え、ヴォーカルだけが切なげに残るのです。
素晴らしい・・・シローはとうとう一人で歌い切った!
凄まじい拍手が沸き起こります。
ピーが、柴山さんが、GRACE姉さんが、そしてピアノを弾いていた泰輝さんも、大きな拍手をシローに送っています。
シローも、無事に歌い終えてホッとしたのかな?
歌の後のおしゃべりコーナーは、歌う前とは切れ味も違いましたね~。
「もう・・・1ケ月以上前に今回の話をもらって(秋田公演でのジュリーのMCと合致しますね)・・・とても歌えん、と思った。でもジュリーが”シローにはトークもあるじゃないか”と」
で、会場は泣き笑い。
ピーが身体を反り返すようにして、大ウケしています。
「こんなステージに出られるというのは夢にも思わなかった・・・全部ジュリーのおかげ!」
には、大拍手。
心をすべてさらして寄り添おうとしたジュリーの気持ちは、シローにしっかり伝わっていると思いました。
会場からの「いけるいける!」には
「どこがイケんの?」
と返したシロー。
「この後が凄いんだよ。僕はリハを観てるからね・・・。僕は点数には厳しいんだけど、今日のリハは満点ですね!」
おしゃべりが延々と続く中、「さ、そろそろ」といった感じでジュリーとサリーが両側からうながすと、シローも観念して
「僭越でした・・・」
で、また会場の笑いと大きな拍手を誘います。
立ち上がろうとするシローに後ろから助けを出すサリー。
シローはそれが見えなかったらしく
「誰や?」
と。
サリーがすかさずマイクをとりあげて
「兄です!」
と苦笑いしながら言うと、会場の爆笑と、暖かな空気がステージを包みます。
お客さんによく見えるように、ステージ前方をゆっくりと歩いて袖に向かう岸部兄弟に
「岸部シチロ~です!」
という(「3+4=7」ってことかな?)ジュリーのオヤジギャグが送られました。
拍手が鳴りやみません。僕もシローの姿が完全に袖から見えなくなるまで、力いっぱい拍手を続けました。
泣いて笑って・・・こうして、素晴らしいサプライズ・シーンは終わりました。
しかし老虎ツアー・ファイナル、ここで容赦はしない!とばかりにサプライズを畳みかけたのは、ジュリーが放ったこのひと言。
「さぁ、次は兄が歌います!」
10曲目「テル・ミー」
何と、「若葉のころ」から続けて間髪入れずに繰り出されるサプライズ曲。
参加叶わなかった多くの方々に申し訳なく思うところもありますが、やはり1・24、ファイナル武道館はセットリストも特別でした。
僕は開演前にこの曲のリハを外から漏れ聴いていましたから、ある程度心の準備はできていたけれど、ほとんどのお客さんは、ジュリーが「兄が歌います!」と言った瞬間、シロー登場に引き続いての興奮MAX状態になられたのでは・・・?
「テル・ミー」・・・確かこの曲も、ファニーズ時代からのレパートリーだったと聞きました。
当然サリーはベースを弾きながら歌うわけですから、こういったミディアム・テンポのエイトビートを
「じゃ~ん、つ、じゃん、じゃん♪」
のシンプルなラインで演奏できるナンバーを、当時から選んでいたのでしょう。ベーシストが弾きながら歌いやすいフレーズ・リズムなのです(←簡単とも言う)。
「ドッグ・オヴ・ザ・ベイ」も、同じパターンで弾けますね。
僕にとっては、「若葉のころ」でシローのヴォーカルを初めて体感したのに続いて、この「テル・ミー」ではサリーのヴォーカルを初めて生で聴くことになりました。
何と贅沢なセットリスト!
さて、シローの場合は普通に中音域を歌っていても「素で高い声」だと感じましたが、サリーについては、中音域は中音域なりの声質になっていました。
日頃の渋い低音以外に、サリーは「歌う」用の声も持っているということです。僕はこの日の「テル・ミー」を聴きながら、「ハーフ&ハーフ」でのサリーのヴォーカルを思い出したりしましたね・・・。
ただ、どうもサリーは歌唱の音域自体は狭いのではないか、とも感じました。
そこで、「テル・ミー」についても帰宅後、メロディーの最高音と最低音を確認してみました。
シンコー・ミュージック刊 『ローリング・ストーンズ・ベスト曲集』より
オリジナルのキーはB(=ロ長調)。
画像スコアでは、下段のギター弾き語り部が2フレットにカポタストを使用してのA(=イ長調)へと移調(フォームのみ)しています。
今回の老虎の演奏が移調していないとすると(さすがにステージ後方席からは、いくら距離が近くてもコード・フォームの確認は不可能でした。ですから、絶対音感の無い僕には演奏のキーを特定することができません)・・・最低音は低い「シ」の音ということになります。
先述の通り、シローの「若葉のころ」の最低音も同じ音でした。
一方、「テル・ミー」の最高音は・・・普通の「シ」!
高い「ド」にすら至らない、男声中音域の「シ」の音。これが、「テル・ミー」では最高音となります。言い換えると、楽曲全体のメロディー音域が狭く、全体的にやや低め、ということです。
最高音の「シ」は
「I know you find it hard♪」
から始まるBメロ部で何度か登場します。武道館で聴いていたら、サリーが声を張り上げ気持ち良さそうに高音を歌っているように聴こえましたが、実はそんなに高い音ではなかったのですね。
シローが歌った「若葉のころ」(最高音は高い「ファ」の音)が、どれだけ音域が広く歌唱難易度の高い曲であるかということを、はからずも兄の選んだ曲が証明しているような・・・。
しかし、メロディーの音域が狭いと言ってもそれは、曲の良し悪し、歌唱の素晴らしさとは当然関係の無いこと。
僕は「テル・ミー」という曲が大好きで、かなり思い入れもあります。
ローリング・ストーンズと最初に出逢った曲だからです。
中学時代にビートルズの全アルバムを聴いてしまった僕が、「次はストーンズを聴こう」と考えたのは、ごくありきたりなロック少年の行動の流れでもありました。
ビートルズは順不動に聴いていきましたが、ストーンズはリリース順に聴いてみようと思い、レコード屋に行き買い求めたのが、ズバリ『ファースト』というLP。
「せ、1600円とな?ビートルズは2500円なのに何故だ?」
などと初々しいことを考えながら、針を落とした僕の耳に最初に飛び込んできた1曲目・・・それが「テル・ミー」でした。
リズム&ブルースの素晴らしさを理解するにはまだまだヒヨッコだった僕は、最初の頃、この『ファースト』の良さが今ひとつ分かりませんでした。しかし、収録曲中抜きん出てポップで、耳馴染みの良い「テル・ミー」は、当初から何度も繰り返して聴きました。
そうしているうちに他の収録曲も好きになり(タイガース・ファンの先輩方にはお馴染みのナンバー「ルート66」も、このLPに収録されていました)、僕の高校生活は中学時代とは一転、ストーンズ中心に塗り替えられることになります。
このように、個人的にも青春の思い入れのある曲を今回の老虎ヴァージョンで聴くことができ僕はとても嬉しかったのですが、シロー登場から興奮が続いてボ~ツとなってしまっていたのでしょうか、ポイントとなるべき演奏、歌唱について記憶に曖昧なところがあります。
まず、コーラスです。
初期ストーンズ・ナンバーのコーラスの魅力は、おかしな言い方ですが、その”練られなさ”です。
あまり練られていない不安定なコーラスが、かえって曲の盛り上げに貢献していることが多いのです。
「テル・ミー」の場合はサビで主旋律の5度上を軸にした適当な(褒めてます、ストーンズの場合は!)メロディーを歌うコーラス・パート以外に、「Wow~♪」とか「Hoo~♪」などと、やはり適当なハミングでひっきりなしに噛んでくるパートがあります。
今回の老虎武道館ヴァージョンの「テル・ミー」では、ジュリーがその擬音+「back to me♪」を担当していたように聴こえました。
普通のハモリ・パートはタローに任せていたように思うのですが、今ひとつ自信が持てません。
次に、タンバリンとドラムスの兼ね合い。
オリジナル音源では、Aメロでドラムスはほとんど聴こえません。代わりに、あり得ないほどのミックス・バランスでタンバリンの刻みが大活躍します。
Bメロ&サビの元気のいいドラムス(オカズでフロアタムの連打が混ざるフレーズが何度も繰り返される演奏が昔から好きでした)の露払い的な役割をしているこのタンバリン、おそらくGRACE姉さんがビシッ!と完コピしてくれていたはず・・・なのに、チェックするのを忘れていました。
そして、曲のエンディングです。
「テル・ミー」はオリジナル音源だとフェイド・アウトなのですが、当然LIVE演奏でフェイド・アウトはあり得ません。
武道館では、どんな終わり方でしたっけ・・・?
最後のサビの後に演奏部があったか・・・それともサリーがサビを歌いながら徐々にテンポを落としていって、ジャ~ン!だったのか・・・。
聴いていたのに、全然覚えていません(涙)。
是非DVDでもう一度色々とチェックしてみたい1曲です。
どうか洋楽曲権利上の問題が起きませんように・・・。
11曲目「ジャスティン」
「サティスファクション」の代わりに「若葉のころ」と「テル・ミー」2曲が披露され、前半セットリストも後半と同じく11曲編成となりました。
前半のトリはもちろん、「ジャスティン」!
まずは
「いよいよ40年ぶりに、ピーが武道館で歌うぞ~!」
と、ジュリーが絶叫。
颯爽とドラムセットから駆け下りるピーの脳裏に、41年前の武道館で自らが「これで最後!」と決めて思いきり歌ったシーンは、果たしてよぎったでしょうか。
今回の老虎ツアーはやはり、ピーの「ジャスティン」あればこそ・・・「ジャスティン」抜きでは語れませんよね。
思えばツアー前にピーは、インタビューでセットリストに触れて「僕が歌うのはシャウトする曲なんで・・・(体力的に)選曲間違えたかな?」
と語っていました。
40年のブランク。ファンの誰もがピーのステージを楽しみに待つ一方で
「身体は大丈夫なんだろうか」
「ツアーを無事にまっとうできるだろうか」
と、少なからず心配していたと思います。
しかし蓋を開けてみれば・・・ドラムはほとんど一人で演奏、しかもツアーを重ねるごとにどんどん進化いていき、「ジャスティン」のあの激しいアクション、テンション、ヴォーカルはこの武道館までまったく失速することはなく、元気なピー、カッコいいピーを皆に存分に見せつけてくれました。
「ジャスティン」は本当に素晴らしい選曲でしたね。
実は僕は、ツアー直前『サウンズ・イン・コロシアム』を中心に予習していたこともあり、ピーには「ルキー・ルキー」を歌って欲しいなぁ、と考えていました。
後追いでタイガースの勉強をして、僕の中にできあがったピーのイメージは、「キュート」。
ですからリード・ヴォーカルをとる楽曲も、ピーの可愛らしい魅力が発揮される「ルキー・ルキー」が良いんじゃないかな、と。つまり裏を返せば「久しぶりのステージで、あまり激しい曲は体力的に心配」ということを思ったわけです。
ピーは見事なまでに僕の想像を越えてくれました。
キュートなだけではない・・・根性があり、気骨があり、知性があり、しなやかさと茶目っ気がありました。まだまだ僕の把握しきれていない魅力がたくさんあるでしょう。
そして今になって思うことは・・・40年ぶりのステージで本当に楽しそうにしている65歳のピーに、「ジャスティン」ほどマッチした曲も無かったなぁ、ということです。
「ルキー・ルキー」だと、あの溢れ出るテンションのやり場が(笑)。
「ジャスティン」については、ピーは今回の老虎ツアーで「やりきった」と考えているように思います。
もしこの先「近い将来」が実現した暁には、さすがにピーも今度は「タイガース慣れ」した状態で臨むでしょうから、その時には少し落ち着いた雰囲気で、思いっきりキュートでポップな「ルキー・ルキー」を聴かせてくれるといいなぁ。
とにかく今回のツアーで「ジャスティン」は大正解、大当たりでしたね。選曲は基本的にすべてジュリーが決めたそうですから、「さすがジュリー!」ということでもあります。
ただ・・・逆に言えば「ジャスティン」は今回の武道館が見納めという可能性も。しっかり目に焼きつけなければ、と思いました。
なにせ僕には「ジャスティン」原曲の知識もまったく無く・・・事前に予習できたのは、すべてピーのファンサイトのおかげです。
いやしかし、「後ろから観る」この曲は独特でしたよ。
ヴォーカリスト本職・ジュリーの場合は、歌いながらも背中の気配を敏感に察知してるな、というのが雰囲気で伝わりましたが、ピーは基本的に
「前しか見てません!」
みたいな感じ。
後ろの空気は、後ろを向いた時でないと分からない・・・ピーについては、それが男っぽいところなんですけどね。とにかく「今」その瞬間の目前の対象に集中するっていうね。
そんなわけで、ステージ後方席から”つま先立ちシャウト”の背中をガン見です。
後姿って、何人か並んでいると身長の違いが正面から見た時よりも際立つように感じます。この曲までは、サリーとタローに囲まれてジュリーが低い位置に見えていて、だからこそ「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」のジャンプが凄まじく印象に残りました。
それが「ジャスティン」になると、ジュリーよりも小さいピーが「大人たちに囲まれてヤンチャする図」が楽しめました。
大人たちが公園で立ち話に興じている中で、一人はしゃぎ回って動きまくっている子供・・・すみません変な例えで(汗)。でも、それがピーのキャラクターに合っているようにも思うのです。
象徴たるシーンは当然、「武道館でもやるとは!」というホウキ・パフォーマンスです。
はからずも、ジュリーがこう言っていました。
「ガキ」
と。
いやいや、ご参加でないみなさまには誤解を与えてしまうような書き方、申し訳ありません。
流れを説明しますと・・・まず、最後のコール&レスポンスの前に、いつものようにピーがドラムセットの後ろまでホウキをとりに走ったのです(北スタンドの一部のお客さんには、スタンバイしているホウキまで丸見えだったとか・・・)。
ジュリーは
「少々お待ち下さい。今、楽器をとりに行っていますので」
と言った後・・・突然思いついたんでしょうね、いきなり
「楽器を持ちたがるガキです」
と、オヤジギャグをカマしてしまったという次第・・・。
老虎ツアー、オヤジギャグに始まりオヤジギャグに終わる。
参加したどの会場でも、楽しい楽しい「ジャスティン」の時間でした。
間奏部、僕は横浜と鹿児島でジュリーのモンキーダンスに魅せられ、ラスト武道館もそのシーンを楽しみにしていましたが、僕の席からは両サイドの花道がちょうど巨大スピーカーの死角に入ってしまい、まったく観ることはできませんでした・・・残念。
その分、柴山さんのリード・ギターを楽しみましたけどね。てか、この曲に限っては、柴山さんの間奏に目が行ったのはファイナル武道館が初めてだったという・・・。
一方で、東スタンド、西スタンドのお客さんは、花道に進出したジュリーとピーのパフォーマンスにさぞ熱狂したことでしょう。
武道館では、ホウキを振り回す(さすがにこれまでの会場よりは遠慮気味でしたが)ピーの最後の熱唱部、ジュリーと同じ2拍目での「ピ~!」シャウトの連呼が、僕の周囲でも沸き起こっていました。
後で知りましたが、ピーのファンサイトのかたが近くにいらっしゃったようです。盛り上がっていましたよ~!
そして、エンディングのラスト1音の「ジャ~ン!」に合わせたバッチリのタイミングで
「どか~ん!」
という上空の破裂音。
銀色のテープがゆっくり、ゆっくりと会場に降り注ぎ、第一部の幕となったのでした・・・。
~休憩~
ここはまず、ひとことで纏めたいと思います。
ジュリーのLIVEで、男子トイレの行列に並んだのは初めてです!!
休憩明けのBGM「リトル・レッド・ルースター」音源の特定は、結局最後までできませんでした。
ただ、タイムリーなタイガース・ファンの先輩に、かつてジャズ喫茶の若虎のLIVEの幕間でこの曲が流れていたということをコメントで教えて頂いただけで、僕はなかなか教わる機会の無い、とても大切なことを学んだ、と思いました。chacha様、ありがとうございました。
12曲目「淋しい雨」
僕の記憶が確かならば、これまでピーはこの曲のイントロをずっと、「かつ、かつ、かつ、かつ」という、4拍のスティック・カウントで始めていました。
しかし武道館では
「かつ、かつ、かつ、どこどこ♪」
と来ました~!
これはレコードのオリジナル音源と同じ入り方です。フロア・タムの「どこどこ♪」という4拍目のフィル・インからまず演奏がスタートする、というね。
このイントロだけで、ピーに引き込まれてしまいました・・・この曲は16ビートですから、キックもスネアのフィルも最後まで激しかったですよ。
僕は以前のレポで
この「淋しい雨」から「散りゆく青春」までの3曲は、トッポが参加していたら聴けなかった(「忘れかけた子守唄」など他の曲に差し替えられていた)かも知れず、その意味で貴重
と書きましたが・・・考えてみれば同窓会時には、トッポも参加した形でタイガース後期のナンバーも歌われ、演奏されているんですよね。
そんな中、「スマイル・フォー・ミー」とこの「淋しい雨」は特に
「どう?僕が入るとまた格段に良くなるでしょ?この手の曲は僕も得意だよ」
と言わんばかりの、トッポの美しいハーモニーが炸裂していました。
いや、後追いで音源を聴いただけですけどね・・・。
僕は、同窓会を生で観ていらっしゃる先輩方のことも、田園コロシアムやビューティフル・コンサートを観ていらっしゃる先輩方同様に、やっぱりうらやましいです。
今回の老虎ツアーでは、忙しいベースラインと並行してコーラスを担当しなければならないサリーの事情などもあり、僕はどちらかと言うとハーモニー部よりも、最後の転調直後のジュリーのソロ・パートの方が印象に残っています。
しかし、コーラス部の多少の物足りなさを差し引くとしても、ピーのドラムス、サリーのベースは完全にこの曲が良質なポップ・ロック・チューンであることを証明しましたし、鉄人バンドのプロフェッショナルなサポートも引き出され、セットリストの”隠し玉”的な良さがあったのではないかと思います。
何より、この曲が休憩明けの後半1曲目!という構成がイイじゃないですか。初日の「おお~っ!」という感動は、今でも忘れません。
そして武道館、先述のピーのイントロに象徴されるように、これまでで最高の演奏だったと僕は思います。
これまた、DVDでの鑑賞が今から楽しみな1曲です~。
13曲目「風は知らない」
「淋しい雨」が終わりふと気づくと、僕の席の真下の袖からササ~ッ!という感じで、スラリとスタイルの良いスタッフさんが駆け入ってきて、柴山さんにアコースティック・ギターを渡します。
背中しか見えなかったけど・・・女性のスタッフさんだったかな?
スタッフさんは袖の手前で柴山さんのギターをチューニングしたり、PAのスタッフさんと声をかけ合ったりして、忙しく動いていました。
スタッフさんと言えばこのシーンの他にも、ピーが脱いだタイミングですかさず衣装の上着をとりに行ったり・・・一瞬も気が抜けませんね。
武道館ばかりでなく、この長かった老虎ツアー、各地裏方のプロフェッショナルなスタッフの方々にも改めて感謝し、拍手を送りたいです。
さて、「風は知らない」・・・ジュリーの言う「隠れた名曲」が続きます。まぁ、「隠れた」と言ってもそれは「一般的にはあまり知られていない」というだけのことで、タイガース・ファンにとってはこれこそ「名曲中の名曲」。先輩方の人気も高いナンバーです。
そして今ツアーでは、オリジナル音源に忠実なアレンジということで、鉄人バンドのギタリスト二人共にアコースティック・ギターを担当します。
特に下山さんのアコギは、アルペジオにストロークに大活躍なのです。武道館のアコギは”新しいカノジョ”だったようですね。
僕はこの日、下山さんの演奏シーンはまったく見えませんでした。上半身と横顔は見えていたんですけどね・・・。
ただ、前記事にコメントを頂いたnekomodoki様の
「下山さんが何か謎の機器をしきりに踏んでいた」
という目撃情報が、この「風は知らない」でのワンシーンだったことが、今はハッキリしています。下山さんのブログに武道館のセッティング写真がupされ、そこにアコギ用のボリューム・ペダルが映っていたからです。
何故「風は知らない」だと言えるのか。
もちろん他の曲(エレキ・ギターのボリューム・ペダルも含めて)でも使用していた可能性はありますが、「風は知らない」については「絶対」なのですね。
と言うのは・・・。
ボリューム・ペダルの最大の効果は、単音(1本ずつギターの弦を弾く)と複音(複数の弦をガッシャンガッシャンと弾く)の音量バランスの均一化にあるからです。
「風は知らない」では、イントロや間奏で「Gm→Am・・・」と進行するアルペジオ奏法が単音で、「か~ぜは、とぶ~♪」から始まる歌メロ部の「じゃんららちゃっちゃっ♪」というストロークが、複音になります。
アコギの場合特に、ストロークとアルペジオでは演奏音量に差が出てきてしまいます。ストロークの音量バランスのままだと、アルペジオ部は蚊の鳴くような細くか弱い音に聴こえてしまうのです。
そこで、手でギター本体のボリューム・コントロールを操作するという手間を省き、足で踏み込むだけで簡単に音量調節を可能にするべく生まれたエフェクターが、ボリューム・ペダルというわけです。
「風は知らない」の下山さんは、奏法に応じてボリューム・ペダルを踏んでいたはずですよ~。
そして、ボリューム・ペダルにはもうひとつ、とても重要な役目があります。
それは・・・ノイズカット。
ギターを弾いていない状態の時、どうしても出てしまう「ジ~・・・」というノイズ。それを抑えることができるのです。
例えば、「若葉のころ」。
僕は自分の目で確かめられなかったのですが、先輩方のお話によりますと、下山さんはこの曲でアコギを担当していたようなのです。
スタンバイしてシローやジュリーが喋っている間、また歌と演奏が始まっても、泰輝さんのピアノ1本でシローが歌っている間は、下山さんは、じっとノイズをカットし続けていたでしょう・・・。
おっと・・・話を「風は知らない」に戻します。
この曲は後期タイガース1発目のシングルB面ですが、離脱したはずのトッポのコーラス旋律がとても印象的な曲です(コーラスがトッポの声だと分かるまでに、実はかなり長い時間を要した情けないDYNAMITEです汗)。
今ツアー、そのパートを誰が歌っていたのか、僕はとうとう注意して聴くことなく武道館を終えてしまいました。音域から考えると、柴山さんかもしれないと思っているのですが・・・。
「風は知らない」のジュリーのヴォーカルは、この日も優しかったです。
「きれいな虹」なんていうフレーズをそのままの純粋な情感でメロディーにするセンスは、間違いなくジュリーがタイガース時代から今に至るまでずっと持ち続けている、天性の技術のひとつでしょうね。
14曲目「散りゆく青春」
今回のセットリストはとにかくジュリー達4人の、前向きで楽しく、気骨のあるパフォーマンスが前面に押し出されています。
「ラヴ・ラヴ・ラヴ」や「誓いの明日」、「僕のマリー」「青い鳥」・・・哀愁を帯びたタイガース・ナンバーが、後追いファンの僕にも、生まれ変わった希望の歌として心に届くセットリストでした。
そんな中、唯一でしょうか・・・「悲しみ」のイメージを抱いたままのナンバーが「散りゆく青春」。「別れ」を漠然と予感していたタイムリーなファンの先輩方が、かつて声を合わせてタイガースと共に歌った曲ですね。
僕は武道館前の参加会場・・・鹿児島公演を終えた時点で、ここへ来て「散りゆく青春」が今回のセットリストの中で浮いてきてしまっているように感じていました。
もちろん楽曲自体の素晴らしさは不変ですが、”現在進行形のタイガース”としても、楽曲のテーマは今の4人にふさわしいものではないような・・・。
しかし、これについても武道館で考えは変わったのです。
解散から41年後の1・24武道館での「散りゆく青春」。
伝説の田園コロシアムのような、会場一体となっての合唱こそありませんでしたが・・・この曲を聴きながら、涙ぐむ方々がたくさんいらっしゃいました。僕の近くにもいらっしゃいましたし、スクリーンにそんな雰囲気のお客さんの姿が一瞬映りました。
後追いの僕らには分からない「特別」な感情が、きっとこの曲にあるのです。
偶然にも、この項を執筆する直前にジンジャー様がくださったコメントが、その時の僕の気持ちをピタリと言い表してくださっていますので、引用させて頂きます。
タイガースと同世代のファンの方々の笑顔と泣き顔は、色々あった当時を共有された神々しい顔をされてました。ヤケますねぇ。
ズバリ、です。
「散りゆく青春」への先輩方の涙に、ヤケます。その涙を見て、後追いファンの僕らは幸せな気持ちにすらなるんですけど、僕らがどうあがいても手に入れることのかなわない”タイガースとの結びつき”には本当にヤケます。
その象徴たるナンバーが、今回のセットリストの中では「散りゆく青春」だったのかなぁ、と・・・。
僕はこのレポを書き終えたら”セットリストを振り返るコーナー”として、まずこの「散りゆく青春」を採り上げるつもりでいますが、後追いの身では大したことは書けないでしょう。
せめて、と思い徹底的な採譜作業に没頭、珍しくコード譜の清書までして執筆の準備を終えました。時代に左右されない楽曲的な素晴らしさを僕なりに語ってみよう、と今は思っています。
15曲目「花の首飾り」
僕は「散りゆく青春」が終わると、思わずピシッと身体をこわばらせて、待ち構えてしまいました。
この日2度目の「それではここで・・・」を期待して。
しかしステージではこれまでのツアー通り、MC無しで「花の首飾り」の柴山さんのアルペジオ・イントロへと進みました。
あぁ・・・やはりトッポは来ていないのか・・・。
予想してはいましたから特別に落ち込む、ということも無かったですが・・・このイントロが流れた瞬間にトッポのことを考えた人は多かったのではないか、と僕は想像しています。
これまで何度も書いていますが、ジュリーはこの曲を、まるでこわれものを扱うように、丁寧に丁寧に歌います。
これほど丁寧に正確な歌詞とメロディーに心砕くジュリーを見るのは、少なくとも僕は初めて。そのジュリーの姿勢にこそ「花の首飾り」がタイガースにあってどういう曲だったのか、どう位置づけているのか・・・ジュリーのリスペクトが見えるようです。
武道館から間もない日程で行われた銀座タクトでのトッポのライヴに、サリー、ピー、タローの3人が駆けつけたそうですね。
「花の首飾り」も当然歌われたそうですが、3人が参加しての演奏は無かったようです。ツアー間もない今の時期なら、3人ともリハ無しで演奏できる体勢だったことは間違いありませんが、そこで安易に参加することはしない、というのも、ミュージシャン一流のリスペクトの表れです。互いの立場をリクペクトし合っていることが分かります。
僕は、トッポの「花の首飾り」には精神的な脆さや危うさの魅力を感じ、ジュリーの「花の首飾り」には希望や明るさを感じる、とこれまでの参加会場のレポで書いてきました。
しかしそれはトッポの「花の首飾り」をタイガースの演奏で聴くまでは、確定ではありません。武道館後にその体感を踏まえて楽曲考察記事を書くことを楽しみにしていましたが、今回の老虎ツアーでは、それは叶いませんでした。
ちょっと話が逸れるようですけど、この機に是非噛みしめておきたいトッポの言葉があります。
J先輩からお預かりしている大変貴重なお宝のひとつ・・・『沢田研二新聞 Vol.1』という冊子から。
発行は、1973年8月。
『ジュリーって・・・何だろう?』という企画で、タロー、堯之さん、加瀬さんなど多くのジュリーの周囲の著名な方がインタビューに応え、思い思いのジュリー像を語っています。
その中にひっそりと”加橋かつみ”の名前があります。
トッポが「ジュリーとは・・・」と語っているのです!
(本文抜粋)
彼の最高の武器---それはなんと言ってもあの美しさ、可憐さ、弱さだ。あんなにステージで、弱さ、色気を出せる歌手が他にいるかい?誰でもキレイなものは見たいもんね。
でも、彼に「いい顔してるね!」なんて言うと、馬鹿にされているととるんじゃないかな。と言うのも、彼自身は外見よりそのハート(胸の内)を見てほしいと思っている筈だから---。みんな美しい顔ばかりに見とれて、心を知ろうとしないからね。
反面、ステージなんかで、ウワー!とエキサイトした時のゆがんだ表情も、人間の強さ、あわれさ、なんとも言えないヒューマニティが感じられて、いいネ。そして、それが終わって、ふっと気を抜いて、ため息をつくようなところも大好きだ。
弱さ、はかなさを表現させたら抜群の彼も、人間的にはとても強い男だ。日本人特有の腹にグーッと押さえ込むような力を持っている。
タイガース時代、一番ケンカもした仲だけど、今から思うと、一番考え方が似ていたのではないかな。違い過ぎればケンカはしないでしょうから。昔の仲間というより、一人の芸人として見て、とても好きな人です。
---加橋かつみ(歌手)
・・・もう40年近くも前のインタビュー。それを今とそのまま重ね合わせることはできないですが、トッポがさも当然のように、ジュリーの本質を把握し簡潔に語っているのが本当に凄いです。
インタビューに応えた他の錚々たる面々の言葉を読んでみると、例えばこれが加瀬さんだと、ジュリーへの愛情が強すぎて賛歌のようですし、堯之さんだとサウンド面に特化した語り口になります。「ジュリーって、こうだよ!」と最も冷静に、かつ簡潔に回答しているのは、この企画の人選の中では意外やトッポなのではないか、と僕には感じられます。
そして、僕がトッポの歌う「花の首飾り」に感じていた、「弱さ」「あわれさ」の魅力を、トッポ自身はジュリーに感じていたらしい・・・この辺りが、タイガースにあってジュリーとトッポの特殊な関係に影響していたりもするのかな・・・。
僕はこのようなことを、本当は武道館が終わってすぐに「花の首飾り」の記事としてじっくりと掘り下げて書きたかった・・・しかし今回それはお預けとなりました。
執筆の機会は、ジュリーの言う「近い将来」が実現した時。
僕はそれを本気で待ちつつ、今は、武道館でのジュリーの「花の首飾り」が映像記録として残ったことを大いに喜び(トッポが来ていたらジュリーはこの曲を歌わなかったと思いますから)、NHK放送やDVD発売を楽しみにしたいです。
16曲目「割れた地球」
今ツアー最大の見せ場と多くのファンが語る”老虎三大咆哮曲”・・・いよいよラスト武道館に降臨。
僕は今回の老虎ツアーでの「割れた地球」→「怒りの鐘を鳴らせ」→「美しき愛の掟」の流れを、いつの間にか”組曲”のように感じるまでになっていました。
まず、「割れた地球」→「怒りの鐘を鳴らせ」の繋がり。
これは初日のレポ執筆の時点で書いていますが、ジュリーがあの震災の起こった年のツアーに敢えて「割れた地球」を採り上げた意味・・・その答が「怒りの鐘を鳴らせ」にハッキリと表れているということ。
この2曲を選曲し連続で歌おうと決めたジュリーの意志というのは、どう考えてもセンチメントなんてものとは違うだろう、と僕などは思ってしまうのですが・・・。
そして、「怒りの鐘を鳴らせ」→「美しき愛の掟」の繋がりについては、不覚にも武道館まで気づかずにいた偶然・・・いや必然のようにも思える密接な関係が理論的に築けることを発見。
こちらについてはこの後、「美しき愛の掟」の項に書きます。
さて、「割れた地球」。
とにかくピーのドラムスがこの半年のツアー期間にグイグイと進化し変貌していきました。
初日からの変貌は言うに及ばず、あの”鬼神ロール”乱れ撃ちとなった大宮公演の激しいドラミングすら、まだピーにとっては進化途上の状態だったというのが驚き。
九州レポで触れた「たかどん!」こそ残念ながら登場しませんでしたが、武道館の「割れた地球」のドラムでは、ピーの老虎ツアー・集大成を見せてくれたんじゃないかなぁ。
「たかどん!×3」を期待していた間奏後のヴォーカル部直前の箇所のピーのオカズ、武道館では
「だかっ!・・・だかっ!・・・だかっ!」
という、まるでラウド・ロックのドラマーのような重厚なフレーズでした。
これもカッコ良かった~。ピーが腰に力を入れて叩きつけているのがよく見えました。
また、ツアー後半になって迫力を増してきたジュリーのヴォーカル、咆哮も、武道館が頂点と言って良いでしょう。シビれました。
若干歌詞につまる箇所もありましたが、うまく切り抜けていましたね。
間奏でスクリーンのチェックを忘れてしまったのですが・・・”情熱の赤いカズ”はアップで映っていたかな・・・?
真赤な照明は見事に柴山さんの姿だけを捉え、闇に包まれたステージ後方席から見ると、柴山さんの背中は本当に燃えているような赤色でした。
ジュリーと、ゲストのタイガース・メンバー3人の魅力に酔いしれた老虎ツアーだったけど、やっぱり柴山さん達鉄人バンドの演奏に目を奪われるシーンが、僕にはこれまで何回もありましたね・・・。
17曲目「怒りの鐘を鳴らせ」
まずはイントロ、ピーの鬼のフィル・インが、真横から見ると凄かったです。スネアドラムが、アタックの反動でゆらゆらと揺れ動いていました。
そしてこの曲は、ステージ後方席から観るAメロの照明について是非書いておかねば・・・。
サリーの低音ハミングをバックに、絞り出すようにして歌うジュリーの
「きこえ~ない、きこえ~ない♪」
の部分、ステージは薄暗い紫色に見えました。
僕の注意力が足りていなかったのかもしれませんが、これまでの参加会場では、ただ暗い中にジュリーとサリーがの姿がピンポイントで浮かび上がっているように見えていたので「おおっ紫?!」と驚いたのです。
この箇所の演奏はピーのドラム・ソロのみ。
ジュリー、サリー、ピー以外のメンバーが、紫の空間の中で息を殺し、気を開放する瞬間に備えて雄伏している感じでした。
で、
「闇夜に~とざされ~♪」
直後の「ジャッ!」という各楽器が一斉に1音を鳴らす部分では、紫色がかき消え、ステージは眩しいほどの白光色に染まるわけですが・・・。
ステージ後方席も、一緒になって真っ白になります。メチャクチャに明るいのです。
僕はその時ピーを見ていたのですが、「ジャッ!」の瞬間にピーのすぐ後ろの北スタンド1階のお客さんの姿が、「ど~ん!」と目に飛び込んできました。
もちろん僕のいた北東スタンド1階前方も、正面からはそんなふうに見えていたと思います。周りのお客さんの表情がまざまざと見えるほど明るかったですからね。
北東や北西スタンドはともかくとして、北スタンド1階前方席にいらしたお客さんは、この曲の「ジャッ!」でいきなり
”自分の姿がタイガースのメンバーと共に幽鬼のように浮かび上がる”
という映像を全国放送で見せられる日に向けて、心の準備をしておいた方が良いかもしれないですね~。
何たって曲が曲ですから、みなさま食い入るようにしながら、真剣な表情でステージを凝視している様子がバッチリ映ると思います。
この曲はライティングが激しいこともあってか、それぞれのメンバーのステージでの立ち位置が比較的固定されています。
僕の位置から見ると、ジュリー、タロー、柴山さんの3人がちょうど三角形を作っているように位置していて、タローの背の高さが強烈に印象に残りました。ジュリーの背中同様、タローの背中もカッコ良かったですね・・・。
あと・・・この曲だったかどうか自信がないのですが、GRACE姉さんがタンバリンでタンバリンを叩いていたような。
小ぶりのヤツで、大きめのヤツをね。
ひょっとするといくつかの曲でそうしていたのかもしれません。「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」や「シー・シー・シー」での”タンバリンごとクラッシュ”にも匹敵するインパクトでした。
GRACE姉さんがパーカッションに専念する曲をたくさん観られたツアーというのも、考えてみれば実はとても貴重なんですよね。
18曲目「美しき愛の掟」
まずは先述した、「怒りの鐘を鳴らせ」とこの曲との理論的な関係について。
気がついたのは、本当に偶然でした。
僕は、「割れた地球」と同じく武道館で最高の演奏に辿り着いた「怒りの鐘を鳴らせ」の余韻に浸り、ラストの4回繰り返される「Fm」の突き放し(まぁ一番最後は「F」に転調していますが)の間、サビの「怒りの~鐘を~鳴らせ~♪」というメロディーを反芻しながら、メンバーの突き放すコードに合わせて脳内で繰り返し歌っていました。
その瞬間は頭が真っ白で、「怒りの鐘を鳴らせ」の4回目のコード突き放しから間髪入れず、「美しき愛の掟」のピーのハイハット・フィル・インに移行する今回の進行のことを、うっかりしていました。
で、「怒りの~鐘を~鳴らせ~♪」と脳内で歌っているうちに
「ソレドレ、ソレドレ・・・♪」
という「美しき愛の掟」のイントロが始まってしまったわけですが・・・。
えっ、そのまま歌えるじゃん・・・?!
と、ビックリ。
何と、「美しき愛の掟」のイントロに合わせて、「怒りの鐘を鳴らせ」のサビが歌えてしまうのです。
驚きました。何故って、どちらかの曲を移調してこの2曲のキーを同じにしたとしても、重ねて歌える部分のコード進行は、全然違うんですよ。
帰宅して、実際に色々と弾いて確かめてみました。
すると逆パターン然りで
「怒りの鐘を鳴らせ」のサビに、「美しき愛の掟」のギターソロを合わせるとメチャクチャにカッコ良く合う
という衝撃の事実が判明。
ヘ短調の「怒りの鐘を鳴らせ」をまずト短調に移調します。その場合のコード進行は
「Gm」(=シ♭・レ・ソ)・・・怒り
→「B♭」(=シ♭・レ・ファ)・・・の~
→「C」(=ド・ミ・ソ)・・・鐘を~
→「E♭」(=シ♭・ミ♭・ソ)・・・鳴ら
→「Gm」・・・せ~♪
となり、ここに「美しき愛の掟」のリード・ギターのフレーズをそのまま組み込むことが可能なのです。
このことは、今ツアーのセットリストでこの2曲が続いたこととは無関係の単なる偶然だとは思います。
しかし僕は武道館で、あの凄まじい演奏を誇った「怒りの鐘を鐘を鳴らせ」が、そのまま「美しき愛の掟」の長い長い前奏であったかのような錯覚に襲われました。
この2曲を繋げたジュリーのセットリスト・アイデアも凄いですし、何より演奏がこの半年で格段の進化を遂げてこそ、の発見であったようにも思います。僕は老虎が築き上げたグルーヴに吸い込まれるようにして、その錯覚へと至ったのですから。
そう思うと、なおさら「割れた地球」から「美しき愛の掟」までの3曲の流れは凄い・・・ここまで神々しく圧倒的な曲並びは、ジュリーのソロLIVEでもこの先なかなか出逢えないかもしれません。
やはりこの3曲は、多くの人に観て欲しい、と思ってしまうなぁ。
なんだか「誓いの明日」に頬をはたかれた『songs』鑑賞以前の気持ちに戻ってしまっているみたいだけれど・・・やっぱり「タイガースは凄いんだぞ!」と言いたくなってしまいます。
いや、凄いのはタイガースばかりではありません。
この曲でも真赤に染まる、柴山さんのリード・ギターもまた凄い。
間奏で情熱的に顔を歪め身体をくねらせる柴山さんですが、ステージ後方席から見てみると、意外やギター本体はさほど動いていません。そりゃそうですよね、演奏しにくいもの。
ただ、身体全体が激しく動いているので、正面から見た時にギターも動いているように見えるんですね。
武道館で僕が後ろから見た柴山さんの動きには、例えば「くあ~っ!」といった感じでエビ反りになるシーンがありました。おそらくそういう時って、正面から見るとギターを持ち上げているように見えているんじゃないかな・・・。
ジュリーの官能的かつ攻撃的なヴォーカル、ピーのドラムス(武道館でもこの曲で”鬼神ロール”炸裂)、柴山さんのリード・ギターなど、この曲には見所も多いけれど、何と言っても極めつけは・・・サリーのベース!
この曲の2番以降のサリーのベースは、ツアーの最初から最後まで一貫して凄かったです。
映像と共にその音が残るのは、本当に嬉しいことですね。
多くの人に、汗をほとばしらせ、倒れ込むようにしながら情熱的なフレーズを弾きまくる官房長の姿を観て欲しいです~。
19曲目「青い鳥」
ツアー後半・・・今思えば横浜あたりからそうだったでしょうか、この曲を歌うジュリーが涙をこらえているように見えてきたのは。
武道館で「僕のマリー」のジュリーの涙に気づけなかった僕ですが、「青い鳥」の時は、ジュリーの声だけで(見えていたのは背中でしたからね)「泣きそうになるのを堪えてる?」という雰囲気を感じました。
そう言えば、NHK『songs』の「青い鳥」でも、ジュリーは何か感極まったように歌っていましたよね。他の曲でそんなことはなかったのに・・・。
僕は「青い鳥」の楽曲考察記事を昨年春に書きました。しかしその時点での僕の考察はかなり甘く・・・一番大事な点に触れていませんでした。
記事をupしてから頂いた、たくさんの先輩方のコメントを拝見してそこで初めて、この曲の核心がおぼろげに見えてきたのです。
その辺りについては後日、「青い鳥」へのオマージュが見られるジュリーのソロ・ナンバー「ブルーバード ブルーバード」(ジュリー作詞・タロー作曲、2000年リリースのアルバム『耒タルベキ素敵』収録)の記事に改めて書いた次第です。
そこで書いた内容を簡単に言うと、「青い鳥」という曲は、どうしようもなく”タイガース”であるということです。それはファンにとっても、おそらくタイガースのメンバーにとっても。
「青い鳥」という曲がタイガースの象徴であると考えれば、ジュリーの涙にも納得。
タイガースへの大きな思い・・・それが「青い鳥」にまっすぐに結びつき、ツアー後半になるに連れ、ジュリーの感情が次第に溢れ出してきていたのかもしれません。
ビューティフル・コンサートで、タローが涙に暮れまともに歌うことすらできなかった曲・・・今回の武道館でのジュリーの脳裏には、ハッキリ「41年前」のそんな光景が甦っていたのでしょう。
一方のタローには、これまでの各会場の「青い鳥」で、ビューティフル・コンサートの時のような、涙で歌えなくなってしまうというようなシーンはありませんでした。
武道館については、僕は正面から見ていないので断言はできないんですけど、タローのヴォーカル部は、爽快なまでに明るい「青い鳥♪」だったように感じました。
タローは今回のツアーについて、『songs』でこう語っていました。
「ファニーズの頃に戻ったみたいで、本当に楽しい」
と。
タローにとって、まさに充実のツアー。
自らが作詞・作曲した大切な曲「青い鳥」が、40年以上経ってもハッキリとタイガースと共にあり、ファンと共にあり、今でも皆で共有された”思い”を持ち続けていること・・・長い歳月が経った今だからこそ、自作曲のその輝きにタローは誇り、歓びを感じる以外他に何もなかったのではないでしょうか。
65歳になって、帰ってきた武道館のステージで、ピーのドラムスで、サリーのベースで、そしてジュリーの感極まったヴォーカルで「青い鳥」を演奏でき歌えるということが嬉しくて嬉しくて、その歓びの気持ちが感傷的な気持ちを大きく上回っていたのだと僕は想像します。
僕の席からは背中しか見えていなかったけれど、最後のソロ・パートのタローのヴォーカルには、涙とは真逆の、真っ直ぐな明るさに満ちていたと思います。
きっとタローは満員のお客さんを見渡しながら、ニコニコと歌っていたんじゃないかなぁ。正面から見ていらしたみなさま、どうでしたか・・・?
先の「モナリザの微笑」のハーモニカもそうですが、武道館のタローは絶好調で、これまで僕の参加した会場の中で一番の、充実し安定したパフォーマンスを展開していたと思います。
ファイナル・武道館を、最高の演奏で飾ったタロー。
それはタイガースを愛し、背負い続けた男の底力でもあったでしょう。
タローの控えめで穏やかなキャラクターの中に、確かな強さと自信、そして純情を感じた”名曲中の名曲”「青い鳥」でした。
19曲目「シーサイド・バウンド」
イントロで、武道館がグワ~ッ!と揺れましたね。
初っ端のギターリフ、ほんの数秒で、誰もがそれと分かるナンバー。
「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」以降はずっと着席だった斜め横のお兄さんも、イントロの瞬間にスックと立ち上がりました。周囲に合わせたというのではなく、身体が勝手に反応したという感じに見えましたよ。
やっぱりそういう曲なんですね、これは!
オール・ズタンディングということだけでなく・・・ファイナル武道館、ステージ後方席が一番盛り上がったのは間違いなくこの曲です!
まずは、眼前に繰り広げられる大盛り上がりのアリーナの光景が、ステージ目線で飛び込んでくるという・・・これが凄い。
老虎ツアー、最後のダンスタイムとばかりに激しく横に揺れるアリーナ。そんな興奮のアリーナを向き合って見ている不思議な感覚、最高でした。
そして・・・ステージ後方席、狂喜乱舞の瞬間は2度目の間奏部で訪れました。
フロント3人のタイガース・メンバーの粋な演出が突如炸裂したのです。
「シ~サイド・バウンド、ゴ~、バウン~♪」
に続く、ピーの
「ひゃぁ~~~~~~っ!」
のシャウトの瞬間・・・本当に綺麗に、リハーサルではそこまで上手くは揃わなかっただろう、というくらいのバッチリなタイミングで、3人が見事に一斉にクルリと回転し、後方を向いてステップを踏み始めたではありませんか~!!
その時のステージ後方席の爆裂ぶりを、一体どう表現すれば良いものやら。
僕自身、その瞬間自分がどうしたか、まったく覚えていません。興奮して飛び上がってしまったかもしれない、はたまた意味不明の奇声を上げてしまったかもしれない・・・本当に思い出せません。
ただ、相当なリアクションでその至福の瞬間を迎えたことは間違いないです。
その状況が・・・当然僕だけではなく、ステージ後方席全員に訪れたのですからこれは大変です。これこそ正に、蜂の巣をつついたような大騒ぎですよ。
一体正面からだとステージの後ろのお客さん達がどんなふうに見えていたのか・・・。是非、アリーナから見たその時の景色を、どなたかに伺ってみたいですね~。
で、僕はこの曲ではピーを気をつけてよく見ていたんです。
最初の間奏直前のシャウトもバッチリ聴きました。でも、この2度目の間奏でのシャウトは、最初の間奏の時とはテンションが全然違いました。本当に凄かったですよ。
まず、ステップを踏むジュリー、サリー、タローと至近距離で向かい合っている状況がよほど面白かったのか(ステップ軍団を演奏中のピーが正面から見たのは、この時が初めてだったのでしょうか。それともタイガースの4年間に何度かあったことなのでしょうか?)、ピー先生、素で爆笑していましたね。
「うっへ~。この図はスゴいな!」
という笑顔でした。
もちろんピーもそんな3人に触発され、「よっしゃ、俺も!」という気になったのでしょうね。
この場で考えつく限りのヴァリエーションを繰り出し、まるで封印を解くような派手なシャウトを連呼!確か、巻き舌の奇声も炸裂しましたよね?
それをピーは、とにかく大笑いの表情のままやり通したわけです。
こんなに楽しい「シーサイド・バウンド」を体感できるとは・・・この1曲だけで、ステージ後方席で参加できた幸運をどれだけ感謝したことか。
本当に素晴らしかったです。
そうそう、曲の前半では泰輝さんがステージ後方席の盛り上げをリードしてくれていたんですよ。
この曲のAメロにはキーボードの出番が無く、泰輝さんは手拍子を煽り、ちゃんと「ゴ~・バウン!」のポーズまで正確なタイミングで見せてくれました。
そして、「シ~サ~イ、バウ~ン♪」の箇所から、泰輝さんはオルガンの音色で演奏に噛み込みます。
このオルガンは、オリジナル音源には登場しない音。
しかし、会場の誰もがそのアレンジにまったく違和感など感じなかったはずです。僕はジュリーのソロLIVEでも、オリジナル音源で鍵盤楽器が登場しない楽曲で泰輝さんがどんな演奏を見せてくれるのかいつも楽しみにしていますが、まさにプロフェッショナル、まさに仕事人・・・いや、料理人ですね。
目立たないところで渋く光った、「シーサイド・バウンド」でのほんの少しのオルガン味付け。
ピリッと楽しく効いていました・・・。
21曲目「君だけに愛を」
ジュリーが「(武道館公演の)切符が足りなくて・・・ステージ裏を開放するかも」という話を初めてしてくれた時。
パパパッ、とその場跳びで後ろを向いたり横を向いたりしながら、高速指差し乱れ撃ちのポーズを披露(予告?)してくれましたよね。
「君だけに君だけに!って・・・忙しくせなあかん」
と言って、お客さんを笑わせてくれました。
そしていよいよ武道館、”忙しい忙しい”「君だけに愛を」・・・遂に実現の日です!
この曲も「シーサイド・バウンド」同様、”誰もが知る”タイガースの代表曲。イントロ、柴山さんの最初の2音「きゅい~ん♪」だけで「うわ~っ!」という歓声が起こりました。
「割れた地球」→「怒りの鐘を鳴らせ」→「美しき愛の掟」の流れが”老虎三大咆哮組曲”とするならば、「青い鳥」→「シーサイド・バウンド」→「君だけに愛を」の流れは”老虎三大超絶ビッグ・ヒット”組曲といったところでしょうか。
お客さんを最高潮まで盛り上げておいて、その後に「誓いの明日」を歓喜と希望の歌として甦らせ、第二部をシメる・・・本当に完璧過ぎるセットリスト!
「オ~、プリ~~~ズ♪」
とジュリーが歌い始めると、「シーサイド・バウンド」で完全に身体が燃え上がってしまったステージ後方席、今か今かとジュリーの指差しを待ちます。
「君だけ~に~♪」
「きゃ~~~~!!」
乙女のみなさま、出るじゃあないですか~。黄色い声援。全然茶色じゃなかったですよ!
・・・が、僕のいた北東スタンド1階は、一度も指差しが来ませんでした・・・(涙)。
北スタンドには二度ほど行ったと思うけど・・・どうでしたっけ?
今思い返すと、ジュリーは2階席・・・高いところから観てくれているお客さんを多めに狙い撃っていたのではないでしょうか。
そう言えば、あの先輩もあの先輩も・・・。「2階席の後ろの方になってしまった」と嘆いていらした、タイガース時代からの長いファンのお姉さま方、僕が知るだけでもたくさんいらっしゃいました。
ジュリーはきっと、「シーサイド・バウンド」ではステージ後方席に、そして「君だけに愛を」では2階席に「ありがとう」を言ってくれたのだと思います。
とんでもない話ですが、僕は『シングル・コレクション』購入当初、この曲を相当に過少評価していました。”いかにもシングル・ヒットを狙ったような曲”という思慮の浅い感想しか持てずにいたのです。
僕には「ビビッ!」と直感的に核心を感じるセンスというものがなく、このようなことが時々あります。特にいわゆる「売れた曲」に対して必要以上に構えてしまう傾向があって・・・悪い癖です。
しかも・・・畏れながら白状しますと、『ジュリー祭り』の記事を執筆した際に新聞で曲名を確認するまで、僕はこの曲のタイトルを「君だけに」だと思い込んでた!それは少○隊だっての・・・(汗)。
何度も聴いていくと、「君だけに愛を」の構成、アレンジには一部の隙も無く、プロ中のプロが丁寧に作り込んだ完璧なものであることが分かってきました。
各楽器の噛み方も本当に計算され尽くしていて、「これ以上は無い」という完全無欠のナンバーだったんですね。
その辺りはレポ執筆後、”セットリストを振り返る”シリーズで考察記事のお題に採り上げ、詳しく語りたいと思っています。
とにかく武道館では理屈は何も考えず、老虎のステージに身を委ねました。
最後の、柴山さんを含めた4人のハーモニーもビシッ!と決まりましたね。
「君だけに愛を」が完全無欠の大名曲であったことを改めて確認できた武道館。
タイガースをまったく知らない人に、「タイガースってこういうバンド」と1曲だけ聴かせるならどの曲?と問われたら、やっぱりこれしかないなぁ・・・と思いました。
22曲目「誓いの明日」
本割ラストです。
もうここまでセットリストが進んでしまったか、と淋しい思いもよぎりましたが、41年前に「別れ」という哀しみをもってタイムリーなファンの先輩方の涙に見送られたこの曲が、本当に歌詞通りの「明日」へと向かっていく希望の歌であることがいよいよ証明され記録にも残る瞬間・・・思いっきり楽しむしかない!と考え直しました。
会場のみなさまは、歌うかな・・?というのも期待していたことのひとつ。
結論から言えば、一体となってお客さんの声で武道館が満たされる・・・とまではいきませんでした。でも、みんな歌っていたと思うのです。
僕も小声で歌いました。
歌詞の一字一句が、今過ぎていくこの時間に何とマッチしていることか。
ビューティフル・コンサートで歌われた「明日」は確かにここにあり、これからも続く・・・セットリスト予想記事で書いたように、キーが「D」の「誓いの明日」に、着地体勢を表現するコードである「A」「A7」が一切登場しないというクニ河内さんの「永遠」を示唆した作曲構成が、41年の時を超えて大きな役目を果たす奇跡。
こんなことが本当に起こってしまうのが、タイガースなんですねぇ・・・。まさに王者にしか与えられない物語です。
ちょっとここで、武道館とは関係の無いお話をしたいと思います。
keinatumeg様が少し前に書いていらした記事の中で
「誓いの明日」の「明日」をずっと「あす」と読んでいた
と仰っていました。
実は、僕もまったくその通りなんです。いまだに強く意識しないと「あす」と言ってしまいます。
何故でしょうか?
実は・・・と言うか僕の場合はまずこの曲のタイトルが、ビートルズのドラマー、リンゴ・スターのソロ転向後間もない大ヒット・シングルに「明日への願い」という邦題の曲があり、それとゴッチャになるんです。
原題は「It Don't Come Easy」・・・「大変なんだけどね~」みたいな意味がが転じて「明日への願い」。なかなかキャッチーな邦題なのではないかと思っていますが。
で、これは1971年のリリースですから、タイガースの「誓いの明日」の方が先に世に出た作品ということになるのですが、僕は曲を知る順序が前後してしまいましたので、「明日への願い」の方が長年馴染んだタイトルということで・・・タイガースにどっぷりと浸かった今になっても、ゴッチャになってしまう時があるんですよねぇ・・・。
さらに、ズバリ「明日への誓い」という邦題の曲もあります。
こちらもビートルズ関連で、リリース時期はだいぶ離れるのですが、ポール・マッカートニーが1993年にリリースしたアルバム『オフ・ザ・グラウンド』に収録されている曲です。
そんな感じで、「明日への・・・」と始まる曲タイトルは当然「あすへの・・・」と読むわけで、それが「誓いの明日」の読み間違い(ちかいのあす)を誘ってしまうんですよね。
歌メロは普通に「あしたに~♪」と歌い出せるのに、タイトルになると「あす」と言ってしまいそうになって、困っています。
いや、これは関係の無い話を長々と・・・。
武道館の「誓いの明日」に戻りましょう。
もちろんイントロから笑顔満開のピーでした。
今回、僕の脳裏では、ふたつの「誓いの明日」のドラムス・テイクが交互によぎる感覚がありました。
まず、『フィナーレ』での暴君のようなドラムス。
そしてこの日実際に目と耳にした、笑顔の演奏。
ピーは本当に、その時の心情がストレートに音に結びつくドラマーだと分かりました。
ビューティフル・コンサートでの「誓いの明日」、2012年武道館での「誓いの明日」、どちらもピーの本質です。
それぞれのピーがこの日、見事に時を超えて繋がったのではないでしょうか。
伸びあがるようにして手拍子を続けるジュリーの背中が
「メンバーもお客さんも・・・みんな、良かったなぁ」
と言っているようで・・・この曲は、まるでこの日のために作られたとしか思えないんですよね。不思議なことです。
でも、長かった・・・それが実感でしょうか。
ビューティフル・コンサートを知る先輩方でないと、その辺りは真に理解し得ないでしょう。
『songs』でのトーク・シーンが、ジュリーの
「まぁ・・・40年やからねぇ・・・」
というひと言で始まった、あの思いがどれほどかというのはね、やはり後追いの僕にはとても想像もできません。
最初のフェイク・エンディング間際の柴山さんのリード・ギター=”カズの滝のぼり”。
九州ではここでピーと柴山さんでアイ・コンタクトをとっていましたが、武道館ではピーではなくタローと柴山さんでした。
この曲では、エンディング以外でもさかんにタローが柴山さんの方を振り返って、ニコニコしていましたね。横顔の柴山さんが笑っているのも分かりましたけど、柴山さんと向かい合う瞬間は、僕からタローが正面に見えます。首を「うんうん」といった感じで縦に振りながら、笑顔のタロー。
そして、そのおかげでこの日初めてタローのギターコード・フォームを確認。
「トゥ~、トゥトゥトゥトゥ~♪」
の箇所の「D→G」の繰り返し部でタローは、「D」については普通のローコードで弾くものの、「G」は3フレットの1、2弦をひとさし指、3弦中指、4弦薬指、5、6弦を親指ミュート、という変則フォームで弾いていました。
タローはやっぱり掌も大きいのかな・・・?
親指1本で5、6弦ミュートは、普通の手のサイズの人にはなかなかできないですよ~。
演奏が終わると、大歓声に送られたメンバーは何度もお客さんに手を振りながら退場します。
柴山さんと泰輝さんのお二人が、北東スタンド真下の上手側の袖に来てくれたのが嬉しかったです。
~MC~
アンコールの拍手に応え、わりと早めに登場してくれたジュリー。
1・24というのは特別な日、という言葉から始まり、まずはタイガースについての思いを語ってくれました。
「シローが勇気を振り絞って駆けつけてくれた。トッポは、今回は降りると言ったきり(この日を迎えてしまった)です」
でも、タイガースをやる、というのを自分は決してあきらめていない、と。
「僕たちは、生命のある限り、6人全員揃ってタイガースです!」
重い言葉です・・・。
「一度ご破算で願いましては、小さなことからこつこつと」
と、おどけて言って会場を笑わせていましたが・・・すみません、僕は不勉強にもこのギャグを知りませんで・・・「ここは笑うとこ?」と不思議に思ってしまった次第。
お客さんにも、「それまで待っていて欲しい」と。
「近い将来、です!」
という、キッパリとしたシメの言葉でした。
ジュリーの「僕はやるよ」という宣言でした。タイガースに奉仕する、と改めて武道館で宣言してくれたんですよね。
待ちましょう。
「廃虚の鳩」も「忘れかけた子守唄」も「タイガースのテーマ」も、”近い将来”の楽しみにとっておく、ということです。
続いて鉄人バンドの紹介時、それぞれのメンバーに送られる拍手もとても大きいものでした。素晴らしいサポートで老虎ツアーを終えた鉄人バンドに、僕も精一杯の拍手を送りました。
ちなみに今回のツアーは、ジュリーファンというだけでなく、タイガースのファンのみなさまも多く駆けつけ、鉄人バンドに馴染みのないかたもいらしゃったでしょう。
ツアーを通して上手側でゴキゲンなギターを弾いていた柴山和彦さんは、今年(おそらくジュリーのソロ・ツアーの最中に)還暦のお誕生日を迎えられるんですよ~。全然そんなふうには見えないですよね・・・。
そして、ゲストのタイガース・メンバーが一人ずつ再登場します。このそれぞれの登場シーンも、各地でお客さんを楽しませてくれましたね。
武道館ではどんな感じだったかと言うと・・・。
まずはピーです。
全速ダッシュでステージ中央まで駆け込み、機敏に方向転換して颯爽とドラムセットへ。
この時に、ジュリーがそんなピーの軽快な動きを褒め称えて
「あの頃の体型を保っているのはピーだけです!」
と言って・・・それがきっかけで肉投げ応酬再び、となったんでしたっけ?
ピーがジュリーの背中に向けて、念押しの肉の倍返しをお見舞いしていたのがこのタイミングだったでしょうか。
続いて、タロー。
ピーに張り合うように全速で駆け込み、その勢いで自身の定位置を越えて花道のあたりまで進出しようとして突如失速。
ヨレヨレの状態で引き返し、かがみこんで膝に手を当て「ゼ~ハ~!ゼ~ハ~!」と肩で息をします。
ジュリーはその様子を見て
「迷ったカラスかと思った」
と。
ファイナル武道館でも、ジュリーはツアー後半から始まった”タローいじり”のスタイルでしたね。
最後はサリー。
前の二人のように駆け込んでの登場ではなく、ノッシノッシと歩いて現れました。
僕の席からはこの時のサリーが定位置のあたりまで来るとほとんど見えなかったのですが、最後はヨレヨレッとしていたのでしょうか・・・ジュリーが
「ここ(武道館)は、あの(袖の入り口の)坂がねぇ・・・」
と気遣います。
”タローいじり”とは一転、サリーに対してはツアー当初から一貫して変わらず、とても優しい甘えた雰囲気で語りかけるジュリーなのです。
ただ、公演後にupされたピーのホームページで、サリーが武道館直前に風邪をひいてしまっていたことが分かりました。演奏や、シローの登場シーンではまったくそんなことは感じさせませんでしたよね・・・。
「テル・ミー」も素晴らしかったし、”タイガースのリーダー”、サリーの存在感は最後までさすがでした。
「それでは、もうしばらくおつき合い下さい!」
ジュリーの一礼を合図に、アンコールへ。
お馴染み、サリーのエイトビート・ベースがうなります。
~アンコール~
23曲目「シー・シー・シー」
実は武道館でのこの曲について・・・ちょっと「自分の記憶違いだったのかな?」と迷っているシーンがあります。
エンディングなんですけど・・・。
最後の3連符(GRACE姉さんの”タンバリンごとクラッシュ”直前)に辿り着くまでに、ピーが1小節か2小節だけ一人で演奏したような感じになりませんでしたか?
僕はその時、「ジャ、ジャ、ジャ、ジャ、ジャ、ジャ♪」の3連符に向かおうと体を準備していて、「あれっ?」と思ったのです。
通常3連符に入る箇所でピーがそのままエイトビートを続行し、他メンバーは「?」となりつつも次のタイミングでエンディングに合わせていったように感じたのです。
見ていて「危なっ!」と思いました。
でも隣のカミさんに聞くと何の違和感も感じていなかったようですし、また、公演後の先輩方どなたもそんなことを仰っていなかったですし・・・今にして思うと他のメンバーも特に慌てた雰囲気でもなかったような・・・。
タローが念入りにピーを振り返ってからエンディングをキメるのは、珍しいことではありませんしね。
みなさまが「終わり方でおかしな感じは全くなかった」とあらば、単に僕の勘違いかもしれません。
何だったのかな・・・。
この「シー・シー・シー」も、初日から大きく演奏が変化した曲ですね。
変わっていったのは、ピーと柴山さん。
ブレイク部に向かってピーが全体のリズムから逸脱するように、破天荒にはしゃいだドラムを叩き、少しずつ音量を下げ、そこに柴山さんの「最後の1音」がじっとりと絡みます。このコンビネーションは、初日の段階では無かったです。
気がつくと、横浜ではもうそこまで進化していました。
大宮の段階ではどうだったかなぁ・・・柴山さんが変わったのは気がつきましたが、ピーはまだテンポ通りに叩いていたんじゃなかったかなぁ・・・。
ハッキリ思い出せません。
思えば、少なくともジュリーファンは、セットリスト中「シー・シー・シー」1曲だけについては2年連続でツアーを体験しているわけです。
ジュリーwithザ・ワイルドワンズと、今回の老虎ツアー。
しかしこの2つ、見事なまでにバンドサウンドの印象が違うというのが面白いですし、音楽の深さですよねぇ。
安定感なら、実はジュリワンのヴァージョンは本家以上だったかもしれません。しかし
「シー・シー・シー」って、こういう曲だよなぁ!
と明快に楽曲のエッセンスをビシビシ感じるのは、やっぱり老虎ヴァージョンの方なんですよ。圧倒的ですらありますね。
そこにピーのドラムスという要因が大きく噛んでいることは、間違いないと思います(初っ端とアンコール、というセットリストの位置的な違いも、かなり大きく印象を異ならせている原因かとは思いますが)。
24曲目「落葉の物語」
まずはイントロ、「散りゆく青春」よりも難易度の高い、泰輝さんの”神の両手”に釘付けです。
右手はタイガース・ファン誰しもが1音1音すべて身体で覚え込んでいるであろう主旋律。左手はアルペジオから跳ねるようなフィルへと移行する、細かい単音での伴奏フレーズ。
泰輝さんはいとも簡単に、そして優雅に弾きます。
泰輝さんのキーボードには、やはりビリー・ジョエルを思わせる仕草やタッチがあると僕は思います。
例えば演奏姿勢ひとつとっても、そうなのです。
身体がぶれず、忙しいフレーズの時(今ツアーだと、「ジャスティン」が忙しいですね。間奏は「緑色のKiss Kiss Kiss」を彷彿させます)に少し前のめりになるくらいで、感情的なオーバー・アクションがありません。そんな中で、腕と指先だけが踊るように大きく動くのです。
ジュリーのソロ・ツアーの場合、泰輝さんのフレーズは公演を重ねていくに連れて変化し、ファイナルでカッ飛んだアドリヴが飛び出したりすることが多いのですが、老虎ツアーでは完全にサポートに徹し、オリジナル音源の持つ音階を崩さないように留意していたようです。先述した「シーサイド・バウンド」のような目立たない隠し味を加えることなども含め、これもまた卓越したプロの技だと思います。
さて、この曲ではジュリーのヴォーカルが、本当にタイガース時代の声に戻ったかのようです。
「散りゆく青春」や「青い鳥」には、ここまでの「戻った」感じは受けず、「今のジュリーの声だな」と思うのですが、どうも「落葉の物語」という曲には”青春回帰”の不思議な力があるみたいですね。
「淋しい雨」「風は知らない」「散りゆく青春」「怒りの鐘を鳴らせ」・・・今回のツアーで、”タイガース・シングル、珠玉のB面曲”が満を持して披露されファンを喜ばせてくれました。
ただ、それらのほとんどがタイガース後期シングルの曲。「星のプリンス」「白夜の騎士」「光ある世界」などは今回は見送られました。
トッポ不在の影響もあったのでしょうか。ですからそれらの曲については、”近い将来”に期待します。
そんな中、このアンコールへ来て前期の「落葉の物語」を採り上げる構成は、この曲がジュリーにとっての「タイガースを象徴する」1曲だったから、ということでしょうか。
A面「君だけに愛を」/B面「落葉の物語」。
最強のシングル盤ですね。
↑ 乙女のみなさまが、かつて絶対にお持ちだったであろうお宝
数年後・・・いよいよ「タイガース」を名乗って公演する時が来ても、この「落葉の物語」は必ず、また再び歌われることになるでしょうね・・・。
25曲目「ラヴ・ラヴ・ラヴ」
ビシ~ッ!と「L」の字をキメるジュリーを、後ろから見るのは新鮮でしたね。
思えばジュリーの「L」ポーズ、初日の国際フォーラムの段階ではサビ部だけでした。
右手でしたね。それがいつしか楽曲の最初から最後まで通すようになり、「ジュリーが腕を降ろさない以上、こちらが降ろすわけにはいかない」というお客さんの思いもあり、耐久レース・シリーズへ。そのおかげで、どの会場でも「ステージから遠い席や2階席では、Lの字で会場一体となって揺れる光景を観ることができる」という楽しみも増えました。
ツアー途中から、ジュリーが上げる腕を左に変えました。
腕をひねり、お客さんから見て「L」の字を作ります。こうするとお客さんと動きの方向が同じになり、ジュリーから見て一体感が増すのではないか、というのが僕の周囲のJ先輩のみなさまの結論。なるほどなぁ、と思いました。
武道館では、ステージ後方席の僕は向きがジュリーと一緒ですから、「L」の字も左手でやってみたかったけれど・・・とうとう老虎ツアーが終わるまでにこの四十肩の呪縛が解けることはありませんでした。
いや、だいぶ良くなってきてはいますから、なんとかジュリーのソロツアーが始まるまでに、”おいっちに体操”に参加できる身体に戻しておかねば・・・。
武道館・・・「2階から見おろす」光景もさぞ壮観だったことと思います。
でも、ジュリーに近い目線で「2階を見上げる」ことのできたステージ後方席、素晴らしかったです。
僕の位置からだと南東スタンドの2階を見上げることができます。みなさま、綺麗に揃って揺れていらっしゃって・・・本当に神々しいまでの光景でした。
DVDやテレビ放映では、是非下から見上げる「L」の波も映して欲しいですね。いや・・・上から下から、あらゆる場所、角度から見た「ラヴ・ラヴ・ラヴ」をすべて映像に残して欲しいです。
ステージ後方席の恩恵は、もちろんそれだけではありません。
この曲では何と言っても、転調後しばらくしてラッシュをかけるピーの”鬼の右足200(くらい)連打”・・・そのピーの右足を、僕の席からはバッチリ見ることができたのです!
よく見るとGRACE姉さんのフォローもあるようですが、間違いなくピーの右足は「ドドド、ドドド、ドドド・・・」と、3連符のバスドラムを鳴らし続けていました。
タローの話によると、40年のブランクでピーはキックの感覚を戻すことに一番苦労していたようです。最初にスタジオで合わせた時には、思うように動かないキックにつられ、曲のテンポが遅くなりがちだったようですね。
しかしいざ本番・・・初日の蓋を開ければ、遅くなるどころか走って走ってタローが困惑してしまうくらいのスピード感あふれるピーのドラムスが聴けました。
そして・・・「ラヴ・ラヴ・ラヴ」のキック連打が果たして初日の段階から演奏されていたのかどうか僕には分からないのですが、とにかくこれが、並のドラマーのプレイではないのだ!ということは強調して書いておきたいです。
同じ箇所で、ピーのドラムスと共にうねりまくるサリーのベースも相当凄いです。
しかしとうとう僕はそのサリーの演奏を肉眼で見ることのできる席には、最後まで恵まれませんでした。
こちらは映像を楽しみに待ちたいところです。きっとアップで映し出されるシーンがあることを信じて・・・。
ジュリーのヴォーカルについては、表現の言葉がありません。「ジュリー自身の思い入れがある」曲だと分かっていても、老虎ツアーで「ラヴ・ラヴ・ラヴ」を歌うジュリーのヴォーカルに、僕はこんな心情を感じてしまいます。
遠くにある大切なものを掴みとろうとする、でももう少し・・・もう少しのところで届かない。
いや、そう感じるからこそ素晴らしいヴォーカルだと僕は思うのです。”強い思い”の最高点には限りが無いことを教えてくれるような歌声。
高みに駆け登るヴォーカルには、まだまだジュリー自身が真の解放を見るまでに至っていないという感覚があるように思います。
それがもしも叶えられることがあるとすれば、ジュリーが”歌い尽くす”時と言えるかもしれません。
「ラヴ・ラヴ・ラヴ」とは、ジュリーにとってそれほどの曲であるように思われます。でなければ、ここまでタイガースにこだわることも無かったでしょうから・・・。
ジュリーのヴォーカル部が終わり、武道館の天空から、金色のキラキラが降ってきました。
「L」を突き上げ、揺れ続けて痛くなった右腕を最後までしっかりと伸ばし、宙を見上げるジュリーの背中越しに舞い降りてくるキラキラを眺めながら、とうとう迎えてしまったフィナーレを噛みしめました。
演奏の終わりに、ピーがスネアだけでなくタムでもロールを炸裂させていました。タム・ロールの低音は、正に厳かな「大団円」という感じでした。
終わってしまった・・・。
感動の大拍手の中、お客さんに応える老虎4人と鉄人バンドの4人。
ま、正直に言うと僕は第一部が終わった段階で
「”ラヴ・ラヴ・ラヴ”の後にもう1曲オマケのオマケで”サティスファクション”やるからな!」
と予想を決めつけて、最後の挨拶の時にも拍手をやめないようにカミさんに念を押したりしていたんですけどね・・・。
☆ ☆ ☆
メンバーは全員、僕の席とは反対方向の下手側に退場し、一応「これで終わり」感が漂いますが・・・。
どうも、どなたも「これで終わり」なんて信じてないみたいですね。武道館の会場照明も、演奏時仕様になったままです。
大きな残響音を起こしながら繰り返される拍手に迎えられ、メンバーは再び姿を現してくれました。
まずはいつもの「最後の挨拶」モード。でも「一応」って感じでしたよね。本当にこれでもう曲はやらずに終わり、ということだったら、ピーとタローがもっと名残惜しそうにしてるはずですから。
エキサイトするお客さんと、左隣で「やろうよやろうよ!」みたいな雰囲気のピーに、ジュリーは「いや、ほらもう飲む時間じゃん?」といったような感じの芝居を打ちますが・・・おもむろにマイクを取り出し、「やるよ」の意思表示。
待ちきれない、じっとしていられない・・・そんな感じであっという間にスタンバイするメンバー。
ジュリーが放ったのは、たったひとことのシャウトでした。
「行くぞ~~~~!!」
26曲目「サティスファクション」
イントロが来た瞬間、「ホントや!」とカミさんは驚いているようでした。
僕としては予想が当たったわけですが・・・まぁ、同じように考えていたお客さんは相当いらっしゃったと思います。
いつでも演奏オッケ~の曲、しかも最高に盛り上がる明快なアップテンポのナンバーを1曲残した状態でファイナルを終えるなんてねぇ・・・やっぱりありえない。
きっと、問題なのは終了時間だけじゃなかったのかな?でも、その点も結構ギリギリだったみたいですね。
ピーの「だん・だん・だだだ、だん・だん・だだだ!」のトコで、武道館いっぱいのお客さんが同じリズムの手拍子で合わせる、という期待のシーンは幻に終わりました。
でも、やってるお客さんも結構いらっしゃいましたよ~。
この曲で嬉しかったのは、僕の左隣のお姉さまがイントロの瞬間に立ち上がったことです。
そのお姉さまは、これまでの演奏楽曲に対する反応からタイガース・ファンでいらっしゃることは確かのようでした。
ただ・・・お身体がどこかきつかったのでしょうね・・・。ずっと座ったままで、懸命に手拍子や声援を送っていらっしゃいました。
それが、最後の「サティスファクション」では、きつそうにしながらも立ち上がっていらして。
武道館が「ラヴ・ラヴ・ラヴ」でフィナーレとなっていたら、そのお姉さまにスタンディングのシーンは訪れなかったということです。
「'cos I try♪」
の後の「どか~ん!」に合わせて腕を振っていたら、途中からそのお姉さまも合わせてこられました。
「get no!」
の拳突き上げも、二人並んで豪快にやりました。
なんだかとても嬉しかったのです・・・。
僕が隣にいたことが、そのお姉さまにとって心地良いものでありましたように・・・と、今はひたすらに願っています。
あと、この曲では、膝をたたむようにして上下に揺れながらサリーが上手側までやってきてくれました。
今ツアー、サリーをなかなか近くで見ることができなかったのは心残りのひとつ。”近い将来”には是非、この新規ファンに下手側の松席も~!
☆ ☆ ☆
演奏が終わり、メンバーはまたステージ前に一列に。
僕らステージ後方席組はそれを背中から見たわけですが、ジュリーはじめ、メンバーが時折後ろを振り向いて手を振ってくれていました。そのたびに、「わぁ~っ!」と手を振りかえす後方席。ステージと後方席のやりとりは、このようにして最後まで特殊な感じで続きました。
老虎ツアー・ファイナル武道館、ステージ後方席のお客さんは、僕も含め本当に貴重な体験ができたと思います。
ジュリーが
「千秋楽もこれで終わりです。それではみなさま、関東1本締め、ご唱和ください!」
と。
おぉ~、ツアー・ファイナルのジュリーの関東1本締めって、僕は『ジュリー祭り』以来2度目ですよ~!
ジュリーのよく通る「よお~っ!」から
「ぱ~ん!」
と武道館1本締め、見事に揃いました。
これで、本当に最後です。
退場していくメンバー全員がにこやかな笑顔だったことが、ビューティフル・コンサートの時をタイガースと共に体験してこられたタイムリーなファンの先輩方にとってどれほどの感動だったか・・・。
僕のような者には想像しきれないことですが、とにかく「良かったなぁ。本当に良かったなぁ」と何度も思いました。
演奏やステージが良かった、という以外の「良かった」がいっぱい詰まっていた老虎ツアー。そのファイナルにふさわしいのは、やはり聖地・武道館でした。
メンバーが次々に退場していきました。
全員の姿が一度消え、しかし名残を惜しむように、いや違うな・・・最後のヤンチャをやらかしに・・・ピーがもう一度ステージに戻ってきました。
ピーは紙テープを何度もアリーナに投げますが、うまくテープに重心が乗りません。力なくお客さんの手前で落下していきます。
しかし、間を置いて一番最後に投げたテープは歓声にも押され、見事にアリーナに届きました。
また、ピーはスティックも投げてくれました。
ステージ後方席、北スタンドにも2本のスティックを投げてくれましたね。
1本目は、危険の無いようにと気を遣ったピーが力を入れずに「そ~っ」という感じで投げたため客席までは届かず、ドラムセットの背後に落下。
「あ~・・・」という溜息が客席から洩れました。
仕切り直しの2本目。
今度はピーは少し力をこめて投げました。スティックは硬いですから実際危ないですよね。そこでピーは、念には念を入れ、狙いを男性のお客さんに定めたようです。
ピーの放ったスティックはゆるやかに一度だけ縦に回転すると、客席の一番前のスーツ姿のお兄さんの手に届きました。
投げたピー、ガッシリ受け止めたお兄さん、お見事!
客席から今度は「やった!」という感じの拍手が沸き起こりました。
そして・・・ステージでポーズと投げキッスを決めた後、ピーもとうとうステージから去っていきました。
やっぱり今回の老虎ツアー・コンセプトは「ピーが帰ってきた!」という歓びに満ちたものでした。
ステージの最後をシメたのも、ピー。ギリギリまでお客さんを楽しませ、喜ばせてくれました。
今思うと・・・初日にはピーにもまだ硬さがあって。
「40年ぶりに帰ってきたけれど、果たして自分のステージはお客さんすべてに歓迎されるのだろうか」
という迷いも、少しはあったのかな・・・。
しかし、初日から主役のジュリーを食ってしまうほどの大声援を受けたのは、やはりピーだったのです。
初日後数回の公演で演奏面での不安は完全に取り払われ、あとはファンへのサービスに邁進するピーがいましたね。
タイムリーなタイガース・ファンの先輩が、「当時、ピーのファンへのサービス精神は凄かった」と仰っていました。
老虎ツアーを見て、「なるほどなぁ・・・」と納得です。
そして。
僕にとってはジュリーです。
実は数日前に、「レポを書き終わるのが寂しい。こんな感覚は初めてです」と言ったら、ある先輩に
「終わらなければ始まらない、ですよ」
と言われハッとしました。
「ツアーが残り少なくなって寂しい・・・武道館では泣いちゃう」
と言ったジュリーが、一方で言った言葉が「終わらなければ始まらない」だったんでしたよね。
そうして、先輩にそういわれた直後、下山さんのブログでジュリーの新曲レコーディングのニュースが飛び込んできました。
「ピーファンはいいなぁ・・・ツアーが終わってもすぐにトークライヴがあるし・・・」なんて、ツアー中本当に楽しそうにしていらしたピーファンを羨ましく思っていましたが、ジュリーが新曲を出すと分かりとたんに背筋が伸びました。
新曲を出すということは、すぐに新曲を引っさげたツアーがあるということですからね。
腑抜けになるような時間を、ジュリーは僕らファンに与えてくれません・・・。
これでまた、気合を入れ直さねば。
とにもかくにも、今回の武道館を体験できたことで、僕もやっと先輩方と「同じところを走っている」という感覚が持てるようになりました。
まぁ、同じところを走っていると言っても、僕は完全な周回遅れなんですけどね。いったい何周遅れてるんだよ、というくらい遅れてはいますが、とにかく今は、同じところを同じペースで走らせて頂いています。
それはつまり・・・ザ・タイガースのこれから先の物語は、僕もみなさまと同じスピード、同じタイミングで観ていくということです。
武道館に限らず、各地の老虎ツアーでそんな新規ファンもたくさん増えたんじゃないかな・・・。
”近い将来”に向けてタイガースにどんな展開が待っていようとも、僕はそれを観続けようと決めました。
個人的には、少しずつでも何か音源的な動きがあれば良いなぁと思っています。どんな形であれ、タローが曲を作ったり、ピーが演奏したり、或いは「あわて者のサンタ」の記事で僕が勝手に考えたことながら・・・シローが詞を書いたり、なんて展開にも期待してみます。
最後に・・・。
これほど音響がイイとは思わなかったです。さすがは聖地・日本武道館!
ありがとう、4人の老虎&鉄人バンド。
感動しました。
メチャクチャにカッコいいツアーでした~!
NHK放送は、3月23日に決定!
BSプレミアム、22時~23時30分です!
最近のコメント