« 2011年11月 | トップページ | 2012年1月 »

2011年12月

2011年12月30日 (金)

沢田研二 「G. S. I LOVE YOU」

from 『G. S. I LOVE YOU』、1980

Gsiloveyou


1. HEY! MR. MONKEY
2. NOISE
3. 彼女はデリケート
4. 午前3時のエレベーター
5. MAYBE TONIGHT
6. CAFE ビアンカ
7. おまえがパラダイス
8. I'M IN BLUE
9. I'LL BE ON MY WAY
10. SHE SAID......
11. THE VANITY FACTORY
12. G. S. I LOVE YOU

-------------------------

まだ横浜レポが執筆途中ですが・・・。
今年最後の更新として、アルバム『G.S. I LOVE YOU』から、タイトルチューンのこの曲について、短い記事を書こうと思います。

急ぎ書きますから、いつものウンチク大長文記事ではありません。
その代わりに、この名曲を文字通り伝授してくださっている、このお方のブログを紹介させて頂きます。

http://ameblo.jp/ginji-ito/day-20110905.html

伊藤銀次さん。
楽曲について僕の言いたいこと、知りたかったこと、すべて書いてくださっています。

思えば今年の夏、僕が必死でタイガースの考察記事を執筆しているちょうどその頃に、銀次兄さんはアルバム『G. S. I LOVE YOU』の制作秘話をブログに連載してくれていたのですね。
そして、「最後にジュリーの作曲作品について書いて締めくくりたい」と、「G. S. I LOVE YOU」についての執筆を予告したまま、銀次さん自身が忙しくなり、多くのジュリーファン、エキゾティクスファンが待望する中で、9月に入って記事はアップされ、そしてその直後に老虎ツアーが幕を開けました。

そこで、オープニングのBGMに使用された曲が、ズバリ「G. S. I LOVE YOU」でしたね。
ジュリーが、GS(=自らのタイガース時代)を思っての選曲だったことは、間違いありません。

ちなみに老虎ツアーで、休憩明けのBGM「リトル・レッド・ルースター」は、タイガースのアシベ時代にBGMとして使用されていたそうです。「G. S. I LOVE YOU」と「リトル・レッド・ルースター」についてのジュリーの思いが、タイガースに直結しているということでしょうか・・・。

今回僕が銀次兄さんの記事に補足して書き加えたいことは、たったひとつだけ。
この曲のミックスのことです。

これまで何度か収録曲のお題記事で書いてきたように、アルバム『G. S. I LOVE YOU』のミキシングは、”疑似・疑似ステレオ”とも言うべき遊び心があり、各楽器トラックが左右どちらかのPANに完全に偏って振られています。

そんな中、右トラックのドラムスに注目して下さい。
(ドラムス・トラックは歌メロ2番、1'02"くらいから登場します)

楽曲全編通してロール・プレイなのですが、最初は右サイドから効果音のようにさりげなく噛みこんでくるのが、曲が進むに連れて次第に音量が上がり、エンディングでは中央へとミックス位置までもが移動してくるのです。
まるで最後に主役の座に踊り出るように。

ジュリーがこの曲をレコーディングした時期は、まさにタイガース再結成への動きがあった頃です。
しかし結局ピーの参加は叶わず、”再結成”ではなく、”同窓会”という形になりました。ピーのドラムスが不在のタイガースは、タイムリーなファンのみなさまにとって、完全とは言えなかったのでしょうね。

今回の老虎ツアー一番の意義は、やっぱりピーの40年ぶりの復活にあるでしょう。
タイガースへの思いも込めて「G. S. I LOVE YOU」という曲を1980年にリリースした時・・・結局その直後の企画では実現しなかったピーの復活。
それがようやく叶った2011年のツアーに、この曲をBGMとして採り上げたジュリー。

偶然にもそんなジュリーの思いや、ピーの復活を象徴するようなドラムスのミックスに、僕は今さらながら感動しています。
「あの時いなかったピーが、今回はステージに立つよ」と言わんばかりのミックスなんです。
この先老虎ツアーに参加なさるみなさまにも、是非この「G. S. I LOVE YOU」のドラムロールの音に注目して頂きたいと思います。だんだん音が大きくなり、だんだん中央に寄っていきますから・・・。

最後に蛇足ながら。
銀次兄さんがブログで「G. S. I LOVE YOU」について
「フォーク・ロックならば『Dsus4→D→Dadd9→D』のクリシェに決まってる」
と書いています。
僕はこの進行が大好きなのです。ジュリーの曲のみならず、ビートルズやストーンズ、ディランから最近の邦楽に至るまで、様々な曲で大活躍する進行です。

ビートルズなら「マザー・ネイチャーズ・サン」のアコースティック・ギター。
「チャイルド・オヴ・ザ・ムーン」という、僕がローリング・ストーンズの中で最も好きな曲にもこの進行が登場します。
邦楽だと、大瀧詠一さんのアルバム『ロング・ヴァケーション』は、この進行を応用した作曲作品の宝庫です。

そしてジュリーはまず、この「G. S. I LOVE YOU」。
銀次兄さんは、ビートルズの「悲しみはぶっとばせ」をアレンジの参考にしたようですね。
タンバリンのアクセント位置やアコースティック・ギターのストローク、2本のフルート音色などがオマージュですが、銀次兄さん指摘のコード進行も、「悲しみはぶっとばせ」に登場するものです。

Sn390160

シンコーミュージック刊 『バンドスコア/ビートルズ 4人はアイドル』より

60年代から続く、廃れることのない進行。
『G. S. I LOVE YOU』という、60年代のバンドサウンドとしての「GS」がキーワードとなるアルバムのアレンジに、伊藤銀次さんが関わった意義は本当に深いと思います・・・。

☆    ☆    ☆

さて、これで今年のブログ更新は終了です。
やっぱり横浜レポは年を越すことになってしまいました。ごめんなさい。

大変な1年でした。
痛ましいことが起こった年でしたし、そんなこともあって春から夏にかけてブログ更新を特に頑張った年でもありました。そんな中で年の後半は、老虎ツアーに大いに力を貰うことができました。

今年も、ジュリーを通じてたくさんの出逢いがありました。
あらためて、感謝するばかりです。
本当に毎年のことながら、ジュリーファンのみなさまには、大変お世話になりました。
拙ブログでは、またすぐ元旦に、恒例の”おめでたいショットシリーズ”でお会いできると思います。

それでは、どうぞみなさま、よいお年を~!

| | コメント (18) | トラックバック (0)

2011年12月21日 (水)

ザ・タイガース 「あわて者のサンタ」~「聖夜」

from『THE TIGERS CD-BOX』
disc-5『LEGEND OF THE TIGERS』

Tigersbox


1. タイガースのテーマ
2. スキニー・ミニー
3. 白いブーツの女の子
4. 愛するアニタ
5. 南の国のカーニバル
6. 涙のシャポー
7. 涙のシャポー(別テイク)
8. 傷だらけの心
9. 730日目の朝
10. 坊や祈っておくれ
11. Lovin' Life
12. 誰もとめはしない
13. 夢のファンタジア
14. ハーフ&ハーフ
15. 遠い旅人
16. タイガースの子守唄
17. あなたの世界
18. ヘイ・ジュード~レット・イット・ビー
19. 明治チョコレートのテーマ
20. あわて者のサンタ
21. 聖夜
22. デイ・トリッパー
23. アイム・ダウン
24. 雨のレクイエム
25. ギミー・シェルター

----------------------

矢継ぎ早の更新・・・今回は、以前から21日にupしようと決めていたお題。
TG夢子様よりリクエストを頂いておりました、ピー作詞、タロー作曲によるタイガース・ナンバーで、「あわて者のサンタ」。そしてセットで「聖夜」も合わせてお届けいたします。

後追いのファンとしてはなかなか難しいリクエストお題を承った、と思っております。当時の空気感をはき違えてしまうと、楽曲考察も素っ頓狂なものになってしまわないだろうか、という不安もあります。
でも、奇跡のような今年の老虎ツアーの実現によってご縁を頂き、初めてピーファンの先輩に頂いたリクエストです。僕は大いに張り切りました。

『道/老虎再来』をリリースするにあたって、ピーは「持てる力を尽くして」と、サイトで語っていましたよね。
「全力でやる」という基本的な姿勢の大切さがストレートに胸に伝わり、そのシンプルな言葉に、僕は強い感銘を受けたものです。

タイガースにあってかなり特殊な楽曲・・・当時を知らない僕が考察しても、拙い記事になるだけかもしれません。しかし、ピーの言葉に倣って「持てる力を尽くして」全力で、新規ファンなりに色々と考えたことを書いてみたいと思います。
「伝授」などとは畏れ多いことですが、拙ブログ記事恒例の枕のようなものだとお考え頂きまして、一応いつもの決めセリフから、書きますね・・・。

「あわて者のサンタ」「聖夜」、僭越ながら伝授です~。

まず、何故本日・12月21日にこのお題をupしようと考えたか、その理由について。
ご存知のかたも多いはずですが、今日、銀座タクトではタローとスーパースターのクリスマス・ライヴが開催されるんですね。
そして・・・ピーのファンサイトで拝見した情報によりますと、タローがこのステージで「あわて者のサンタ」を演奏する、と予告してくれているそうなのです。

 

きっと拙ブログにお越しの先輩方の中には、タローのライヴから帰ってきた後、ズバリのタイミングでこの「あわて者のサンタ」の記事を読んでくださるかたがいらっしゃるかもしれない・・・そんなことを一人想像して書いているのですよ~(ひとり上手になる可能性もありますが汗)。

タローがこの曲をステージで歌うのは何年ぶりなのでしょうか。
ひょっとして初めて・・・?いやいやそれとも、毎年クリスマスライヴには定番として歌ってる・・・?
後追いファンの僕には、その辺りは分からないのですが・・・。いずれにしろ、今日の「あわて者のサンタ」では、さぞお客さんも盛り上がったことでしょうね~。

・・・と、タローの演奏を思いながら今回の記事執筆に臨んで・・・今さらのようにふと気がついたんですけど、タローは作曲担当というスタンスで、タイガースのそれぞれのメンバーとコンビを組んだ作品(作詞が他メンバーで、作曲がタロー)をたくさん残していますよね。

 

まずジュリーと組んだ作品として僕が真っ先に思い浮かべるのは、2000年リリースのソロアルバム『耒タルベキ素敵』収録の「ブルーバード ブルーバード」。
ジュリーの力強い人生観による詞と、明るく勇壮なタローのメロディーがガッチリと組み合った名曲です。ギター音階が「青い鳥」のオマージュになっているという、タイガース・ファンにとっては嬉しいアレンジも楽しめますよね。

 

次に、サリーと組んだ作品と言えば・・・これはもう今回の老虎ツアーに参加なさった方なら誰しもの記憶に残っている名曲「坊や祈っておくれ」。
ジュリーはMCで「後期の曲だけに、高貴な光を放っています」とギャグを飛ばすんですけど、ジュリーにとっては「この曲からがタイガース後期」なんだなぁ、と僕はそんな事にしみじみ感じ入ったりしています。

トッポと組んだ作品があることは、つい最近まで知らずにいました。今夏、たまたまYou Tubeで見つけた「ひとり」という素晴らしい曲があったのですね。
この曲の完成度には本当に驚嘆しました。トッポの詞は「なるほど、これはトッポ在籍時のタイガースでは叶えられなかったアプローチなのかな」と思ったものです。
また、タローの作曲も当時の新境地だったのではないでしょうか。
タロー作曲の短調のナンバーと言うと、どこか朴訥で平穏なイメージの作品が多いのですが、「ひとり」のメロディーは鋭く尖っています。楽曲構成の流れは官能的で豊艶でもあり、研ぎ澄まされた美しさがあります。

 

そして、ピーと組んだ作品が今日のお題「あわて者のサンタ」です。
今年のピーの新曲「」「老虎再来」では、タローはアレンジャーとしてピーとのコンビを復活させたわけですが、タイガース時代には作詞者、作曲者としての組み合わせがあったんですねぇ・・・。後追いファンの僕は、この曲についても知ったのもずいぶん最近のことでした。

 

ここで少し話が逸れますが。
僕は、と言いますかすべてのタイガース・ファンのみなさまは、来年1・24武道館にシローが登場することを待ち望んでいますよね。
シローの体調は芳しくはないようで、状況次第ではやはり今回はステージ登場を見送られるかもしれません。でも、「何とかしたい」という気持ちはシロー本人も他メンバーも持っているようで・・・老虎ツアー秋田公演にて、「どの曲なら歌えそうか」とシローのヴォーカル曲を検討しているとの情報が・・・!
無理はして欲しくないですが、シロー自身が前向きに考えているということで、やはり期待してしまいます。
シローは大音量が身体に響くとのことですから、アコギ1本で歌えるような静かな曲を考えているのでしょう。あとは当日に向けての体調次第ですか・・・。

ただ、もしも今回の参加が見送られた場合。
ジュリーは「それでも、近いうちにメンバー全員で」と言ってくれています。しかし、シローについては身体のことだけに、この先ステージに立てるかどうかの見通しは神のみぞ知る、しょうか。
もちろんファンもタイガースのメンバーも、シローを含めた再結成実現を夢見るわけですけど。

 

そこで・・・もしも、どうしてもステージに立つことは叶わない、という場合には・・・何年か先のタイガースの新譜アルバム(!)で、シローが作詞者としてタイガース復活を遂げる、という道筋はどうでしょう?
もちろん、作曲はタロー。リード・ヴォーカルはジュリーで・・・。

シローはキャラクター的にも、良い詞が書けるタイプだと思うんです。
確かに明るい内容にはならないかもしれない。でも、内省的で深みのある詞を書いてくれるような気がするんですよね・・・。
そしてそれは、シロー在籍時のタイガースの、少し翳りのある魅力とシンクロすると僕は思うのです。
僕はそんなふうに、近い将来タローがタイガースのメンバー全員の詞に曲をつけることになる日のことを夢想したりもするんですよ・・・。

ただ今は、武道館にシロー参加の期待を持って。
シローが登場してくれたら、その瞬間ハッキリ「タイガース復活」と言って良いですよね。さすがにジュリーもそう言うでしょう。41年前の武道館のメンバーが揃う、ということですからね。

それでは話を戻しまして、「あわて者のサンタ」「聖夜」の楽曲考察へと進んでいきましょう。

 

僕は、当時のタイガース・クリスマス・プレゼントのお話にはまったく詳しくなく、色々と推測するよりないのですが・・・お題の2曲はタイガースからのソノシート・プレゼントという形でファンの元に届けられたそうですね。
ソノシートって、B面はあるんですっけ?
表面に2曲、ということだったのでしょうか・・・2曲を手元の『レジェンド・オブ・タイガース』で聴くと、楽曲トラックは20曲目と21曲目に分かれているものの、曲間の空白は無く、「あわて者のサンタ」の唐突なエンディングに「聖夜」のドラム・フィルインがくっついている、メドレーのような感じの作りになっていますね。
これは、ソノシートの時が既にそういう繋がり方だったのかな?

 

特殊な企画ということもあるんでしょうけど、この2曲はタイガースの音源の中で一風変わった色合いがあると僕は思っています。
何かと言うと・・・僕はこの2曲から、タイガースのメンバー以外の人間の空気をまったく感じないのです。

 

タイガースの楽曲はどれも、「プロモート」という狙いがあります。その部分に、メンバー以外の人達の空気も存在します。
それは演奏も然り、ミックスも然り、その他色々な面で、スタッフの意気込みや熱気、作曲者の狙い、作られ練られたバンドの道筋、プロモーションの投影といった要素が楽曲の中に強く盛り込まれている、と僕は感じていました。
表現が当てはまるかどうか分かりませんが、メンバーの後ろにいる人達の”商業的な思惑”というものを常に楽曲の何処かで意識させられ、メンバー以外の人間の空気を感じていたのです。
いえ、僕はそれを悪いことだとは全然思っていません。タイガースというバンドは、その点含めての”超一流”だと考えていますから。

 

しかし、オマケのサービス的な意味合いのある「聖夜」はともかくとして、メンバー・オリジナル作品である「あわて者のサンタ」という貴重な楽曲に、スタッフ・プロモート的なものは一切感じられない・・・ジュリー、サリー、ピー、タロー、シローという5人の存在、それだけが楽曲の中にある、と感じてしまうのです。

 

僕の聴き方が合っているのかどうかは分かりません。ですが、僕は「あわて者のサンタ」の音源に、純粋に”タイガースのメンバー”だけの意思、主張を汲み取ります。
極端な言い方をするなら「商売抜き」。
正にファンへのプレゼントとして拘った、タイガースがその歴史で初めて、「自分達だけの力で、自分達のアイデアを、自分達のやりたいようにして作った」曲なのではないか・・・僕にはそう思えるのですが・・・。

 

そうしてファンの手に届いた「あわて者のサンタ」。
「プレゼント」という形だからこそ、プロモートの空気との乖離について、色々と考えさせられます。

そこで目を向けてみたいのが、ピーの作詞なんです。
もちろん、後追いファンの僕はピーについて当時のタイムリーな知識をまったく持っていません。知っているのは、今年突然メディアに復活し、ピー自身の口から、或いは文章から語ってくれた、色々なこと。
そこから僕の中でピーという人のキャラクター像が何となくできあがっています。新規ファンの浅い考えですが、ピーを「矜持と気骨の人」とまずは捉えました。
そんな人物像を考えながら、40年以上前のピーの書いた詞を読み解いていくと・・・。

「あわて者のサンタ」のピーの詞は表面的には愉快で楽しく、また等身大でもあり、リスナーとの距離が近い”手作り感”に溢れています。
曲中繰り出される言葉もサービス精神に富み、「ファンとの距離の近さ」を全面に押し出したクリスマス・プレゼントという企画でピーが作詞に噛んでいるのは、タイガース側としても大きな強みであったと想像できます。

でも・・・これは僕だけではないでしょう、詞の中に、とても引っかかる一節があるのです。

 

♪ 黒服のサンタさん 家にやってきて
       C           G      Am  D         G

  何もくれずに いいものを皆んな持っていった ♪
        C                    G   Am     D            G

最後にサンタさんが大やけどする箇所とは違い、こちらは単にブラックユーモア、という考察では片付けられませんよね・・・。

 

ピーはタイガースにあって、ジュリーと人気を二分していたと聞いています。
それは単純にルックスの良さ、旺盛なサービス精神だけに基づくものではないでしょう。陽気なキャラクターはもちろんとして、ピーファンの多くはそのキャラクターの内に潜む志の高さや矜持を感じとっていたのだ、と僕は想像しています。
(ピーの人気の高さやサービス精神については、先日お会いしたタイガース時代からのJ先輩に詳しくお話を伺いました。ちなみにその日は、ピーのファンサイトで話題になっていた『ていぱーく』の昭和展にも足を延ばし、ジュリーとピーの二人がド~ン!と大きく表紙を飾った雑誌『平凡』の展示を見てきましたよ~)

ただ、その矜持ゆえに、タイガース後期のピーがどんな気持ちを抑えて活動に臨んでいたのか・・・当時タイガースの歴史と同時進行でピーを好きだったファンはそれを敏感に察しながらも、ハッキリした言葉でピーの口から心境が語られない状況に、不安もあったりしたのかな・・・。

先述のように、「あわて者のサンタ」が商売度外視、つまり純粋にタイガースのメンバーの意図だけによるファンへのメッセージだったとすれば、そこに込められたピーの詞に、チラリと本音が覗いていても不思議はないんですよね。

 

ここで、クリスマス・ソングというものについて考えてみましょう。
邦楽ですと、「楽しいはずの特別な日が、辛い恋とシンクロする」といったタイプの曲が支持されているようです。
洋楽の場合は、シチュエーションはどうあれ「暮れがおしせまっている中、新たな年への希望を歌う」パターンを多く思い浮かべます。「戦争は終わった」と歌うジョン・レノンの「ハッピー・クリスマス」、閉塞感を打ち破り前向きの情景を連発するポール・マッカートニーの「ワンダフル・クリスマス・タイム」はその代表例。

 

しかしその一方、過激な社会性の元に憂鬱なテーマを持つ曲もあります。
例えばキンクスの「ファザー・クリスマス」は、陽気な曲調に反して痛烈な社会風刺が詞に込められた曲。身寄りのない子供に親代わりにプレゼントを届けに来たサンタクロースが、「人形なんかいらん、金を寄越せ」と集団で子供達に襲われ金品を奪われてしまうという、過激な内容です。
ピーが「あわて者のサンタ」で書いた一節はもちろんそこまでの過激さはありませんが、「ファザー・クリスマス」とは逆パターンながら「自分だけいいものを持っていった」サンタクロースに対する不信感を思わせます。

 

・・・と、このように僕が考えてしまうのは、やはり今年になって「ピー自身の口から本やインタビューなどで語られたこと」の衝撃が大きかったということでしょう。
先輩方はうっすらと感じていたのかもしれないピーのタイガース時代の心境、疑念。それは後追いファンの僕にとって、まったく想像すらしていなかった内容だったのですから・・・。
どうやらピーは「楽しい」と感じたことも、「おかしい」と思ったことも、そのままストレートに表現する人柄のようですね。

・・・ということは、とまた考え直してみます。
老虎ツアーでストレートにはしゃいでいるピーは、本当に心底楽しんでステージに立っているということでもあります。タイムリーなタイガース・ファンのみなさまも、そのことが何より嬉しいのではないでしょうか。
そして、確かに「あわて者のサンタ」には上記一節だけ暗い面も持ち合わせていますけど、全体の印象は楽しい詞曲です。何度も言いますが、「聴き手との距離の近さ」が楽しさを後押ししているように感じます。
「ファンに直接届けられる」というコンセプトがそうさせた、と考えるのは穿った見方でしょうか・・・。

それは、タローの作曲も同様です。

♪ さあ皆んなで楽しいクリスマス
          G                   C  

  夜が明けるまで
     G             D

  赤や白の光を キャンドルにともそう ♪
       G        D              G       D      G

Aメロのスリーコードは、長調の作曲の王道中の王道。いわゆる「楽しい感じがする」お手本のようなコード進行なのです。
少し跳ねるリズムにこの進行を載せたということは・・・タローにはカントリー・タッチの狙いもあったんじゃないかなぁ。
言葉数が1番、2番などそれぞれの部分で必ずしも統一されていませんから、これはピーの詞が先だったと思われます。
タローはピーの言葉を上手くメロディーに合わせると共に、「サンタ」というフレーズから楽しげな長調、そしてカントリーの明るさを想起した・・・それが僕の推測です。
ジュリーが、そんなタローの意図を汲んででしょうか、言葉の「跳ね」を強調して歌っているんですよね。

今のピーやタローの活動の在り方を考えると、まさにこの二人が書いたからこそ、詞も曲も「ファンとの距離の近さ」という特徴が表れたんだなぁ、と思います。
それは、二人の気質が40年以上全然変わっていない、ということでもあるのでしょうね。

それでは引き続いて、演奏面についての考察へと進んでいきましょう。
「あわて者のサンタ」「聖夜」共に、間違いなくタイガースの演奏です。今まさにタイガースの演奏を生で体感しているからでしょうか・・・特にギター、ベース、ドラムスの音を聴くと、タロー、サリー、ピーの姿がハッキリ浮かんできます。

 

ギターとドラムスは、演奏の難易度は高くなく、サラッとしていますけど、「あわて者のサンタ」ではタローのサイドギターからリードギターへの素早い移行が楽しめます。サイド、リードを分けた別トラックではなく、一気のレコーディングのようですね。
タローらしい、と言うかつい最近生で観たタローの演奏が脳内でダブリまくり。とてもタローらしいテイクだと思います。
イントロはローリング・ストーンズの「アイム・フリー」やザ・バース版の「ミスター・タンブリン・マン」を彷彿させるストロークです。良質なポップ・チューンの王道アレンジ・パターンですね~。
でも、ギターのミックス音量はちょっと小さ過ぎるんじゃないかなぁ・・・。

ピーはね、音自体は今ツアーの演奏とはあまりダブらない。
ただ、手クセですね。強烈に、今のツアーで体感しているピーのものなんです。
例えば、「聖夜」はワルツの曲なんですけど、「ラヴ・ラヴ・ラヴ」の前半の演奏とまったく同じ位置にスネアドラムのアクセントが入っているんですよね。
ピーは、ワルツの曲については一貫してこのようなアクセントで叩きたいみたい・・・本当に40年前と今とで変わっていないんですねぇ。ジュリーが喜ぶわけですよ~。
ただ、ドラムスもギター同様に、ミックス音量がとても小さい・・・。

 

反して、「あわて者のサンタ」でのサリーのベースは凄まじいまでの大音量!
明らかに「ベースを聴いてね」というミックスですよこれは・・・。

 

当時小学生、中学生だったタイムリーなファンのみなさまは、僕自身もそれくらいの年頃ではそうだったように、楽器の区別はあまり意識せずに曲を聴いていらっしゃったんじゃないかと思います。
でも、老虎ツアーに参加した今ならば、みなさま分かりますよね?「あわて者のサンタ」で、イントロ途中から噛み込んで、うねるようにブイブイ言わせるサリーのベースの音。
あらためて「あわて者のサンタ」をお聴きください。絶対分かりますよ!
「あっ、この音はベースだ!」と、すぐに判別できるはずです。

おや・・・?
このベースの音、タイガースの別の曲で似た感じの演奏を聴いたことがあるような気がする・・・そう考えた方、いらっしゃいませんか?

 

それはね・・・「素晴しい旅行」です。

 

「あわて者のサンタ」と「素晴らしい旅行」は、ベースラインがとてもよく似ているのです。と言うか、当時流行っていたんですよね、こういう感じのベースが。
フレージングの元になっているのは、『ペ-パーバック・ライター/レイン』という、ビートルズのシングル盤の2曲です。
フィル・インは「ペーパーバック・ライター」、フレーズ部は「レイン」に近い感じですね。B面「レイン」の方は、ジュリーのソロLIVEのレパートリーにもなっていますから、ご存知のかたも多いでしょうか。

このビートルズ2曲のカップリング・シングルは、ロック・レコーディング揺籃の60年代において、画期的な1枚と言われています。
それまで縁の下の力持ち、なるべく目立たないようにミックスされていたベースという楽器が突如主役に躍り出て、世間の常識を覆したのです。

そもそも、それまでベースのミックスが小さかった理由というのが「低音楽器の音量を上げてミックスすると、レコードの針が飛びやすい」というもの。
しかしビートルズは、凄い演奏をしている音を前面に押し出すのは当然、とばかりに果敢に新たな試みに挑戦しました。
結果、世間認識においてベーシストのステイタスが跳ね上がり、世の他のバンドも同様のミックスでレコードを出していくことになるのです。

みなさまお手持ちのソノシートも、サリーの強烈なベースのために、時には針飛びを起こしたりしていたのかなぁ・・・。

このように、「あわて者のサンタ」はタイガース・メンバーだけの手作り感に溢れる、貴重な音源だと思います。だからこそ逆に、後追いファンの僕はその良さを半分も理解できていないでしょう。
タイガースを想う時、いつも感じること・・・それは、タイムリーな空気を味わっていらっしゃる方々への、うらやましさです。
「あわて者のサンタ」を演奏した今日のタローのLIVE、どんなステージだったのでしょうか・・・。

さぁ、いよいよ明後日は、老虎ツアー横浜公演です!
僕は今ツアー初めての、前方席での参加です。タロー側の良席を頂いており、本当に楽しみなのです~。

 

横浜は人気会場のようでで、遠方からお越しのかたも多いと思います。
みなさま、会場までどの最寄り駅からいらっしゃいますか?僕のオススメは何と言っても『みなとみらい駅』です。

 

実は、昨11月第1週に、今回の公演会場となるパシフィコ横浜にて『楽器フェア』という楽器・楽譜業界の一大イベントが開催されまして、僕は楽譜スタッフの任を受け、開催期間に会場に通っていたのです。
僕は一部ジュリーファンの間では有名な超・方向音痴なんですけど、みなとみらい駅からパシフィコ横浜までの道のりはとても分かりやすく、迷いようがありませんでした。

みなとみらい駅の改札を出て、「パシフィコ横浜はこちら」という案内板の方向に歩くとすぐにエスカレーターがあり、まずはひたすらそれを昇ります。
エスカレーターが終わったら、そのまま直進。道なりに進むと間もなく自然に左へと曲がることになり、しばらくすると見えてくるのがこんな建物。

Sn390118


これが見えたら、あとはもう敷地内に入り、「大ホール」の案内通りに進んでいくだけです。
方向音痴のかたも安心。まったく迷わないで着きますよ!

 

ちなみに、『楽器フェア』開催2日目の11月4日。
夜7時に会場での仕事を終えてパシフィコ横浜からみなとみらい駅に向かうと、ちょうどクリスマス・ツリーの点灯式が行われていました。先程説明しました、エスカレーターを上がってすぐのところです。

Sn390119

「あぁ、横浜公演でみなとみらい駅を利用するタイガースファンは、帰り道にこの景色を見ることになるんだなぁ」
と考えたりしていました。
当日、終演時間は午後7時を過ぎた頃でしょうから、ツリーは間違いなく点灯しているはずです。LIVEが終わっても、駅までの道のりにささやかな楽しみが待っている、というわけですね~。

 

ということで、次回記事は当然、横浜LIVEレポートになります。相変わらず時間をかけて大長文をネチネチ書くつもりです。
年越しも辞さず!
(←開き直り)

よろしくお願い申しあげます~。

| | コメント (23) | トラックバック (0)

2011年12月20日 (火)

沢田研二 「F. S. M」

from『REALLY LOVE YA!!』、1993

Reallyloveya


1. Come On !! Come On !!
2. 憂鬱なパルス
3. そのキスが欲しい
4. DON'T SAY IT
5. 幻の恋
6. あなたを想う以外には
7. Child
8. F. S. M
9. 勝利者
10. 夜明けに溶けても
11. AFTERMATH

--------------------------

12月20日、今日は誕生日更新です。
自分の誕生日を自分で盛り上げてどうする!と思いながらも、毎年この日は「ジュリーが自分と同じ年齢の年にどんな曲をリリースしていたか」というテーマで記事を書いております。

昨日の時点で「今年はひょっとしたら、誕生日に武道館のチケットが届く」という出来過ぎた展開を期待し、「みなさま、そんな経験ありますか~?」などとブログの冒頭でハシャギまくろうかと企んでおりましたが、結局今日のチケット到着はナシ(泣)。
明日はカミさんも仕事で外出するから、チケット現物を受け取るのは明後日の木曜になるかな・・・。

さて、それでは気を取りなおして。
偶然なのですが、実は僕の誕生日に先がけ、12月18日、19日と、大好きなJ先輩のお誕生日が続きます。影ながらではありますが、ご健康と、ジュリーとの素敵な縁をお祈りしつつ、お祝いを申しあげます。

その先輩お二人に共通しているのは、ジュリーという人間を丸ごと受け止め愛している、という懐の深さ。
僕もこう見えて意外に、相当JULIE LOVEな奴なのではないのか、と自惚れたりしている時もあるのですが、ブログは相変わらずこんな調子だし、やっぱり先輩方には敵わないなぁ、とも思い返します。
お二人とも、そんなふうに思わせてくださる先輩です。
誕生日が近いということで、是非ともこの先ずっと、志をあやかりたいものです~。


さて、僕はジュリーの18コ下。今年で45歳になります。
ブログの文章だけ読んでくださっているみなさまの中には、とてつもなく若手ピチピチのDYNAMITEをご想像のかたもいらっしゃるようですが、世間一般で言うと結構なオッサンなのです。
ただ、ジュリーファンにあってこの年齢は、「自分ももうオッサンで・・・」と自虐的に発言すると「生意気な!」と怒られてしまう若造でもあるわけで・・・いや、それはとても幸せなことでもあるのでしょうね。
よく考えますと、今年還暦を迎えられたというJ先輩を、僕は3人知っているのです。凄い!素晴らしい!45歳など、まだまだヒヨッコもいいところです。

社会的にはオッサンの自覚を持ちつつも、ジュリー界ではヒヨッコであり何事にも元気に先陣を切る若さ、フットワークを保ったままでいなければなりません。

しかしそれも、ジュリーを男の手本としていれば、たやすいこと。
45歳の1年も、拙ブログは変わらず元気に参ります。

お題は、ジュリー45歳リリースの大名盤『REALLY LOVE YA!!』から、僕はこの曲を聴くだけで無性に跳ね回りたくなる、というファンキーなナンバーです。
「F. S. M」、伝授!

まずは、「F. S. M」を歌った年のジュリーに追いついた、自分の年齢というものについて少し考えてみます。

45歳。四捨五入すると50代。
僕も、今で言うところの「アラフォー」を卒業し、「アラフィフ」と呼ばれる世代の仲間入りです。
そんな区切りもあってか、同い年の友人や職場の同僚達は、今年誕生日を迎えると皆「はぁ。。。」と、ため息混じりにうつむいていますねぇ。

僕は、そんな後ろ向きの気持ちには全くなりません。
だって、45歳はジュリーが『REALLY LOVE YA!!』をリリースしたのと同じ年齢ですよ。
『REALLY LOVE YA!!』は映像作品が残っていますけど、滅茶苦茶カッコイイじゃないですか、45歳のジュリー。
あれが、老け込んだ男の姿ではあり得ない!

まぁカッコイイのはジュリーであって、自分と比較するのはあまりにおこがましいにしても、気力、表現力、そして経験値・・・男が仕事に打ち込むに当たって、下手すると最強の年齢なのかもしれない、とか思うわけです。
ジュリーファンの男性は、皆そう考えると思いますよ。

加えて、昨年のジュリーwithザ・ワイルドワンズ、今年のタイガースのメンバー・・・ジュリーだけでなく、ジュリーをとりまく、還暦をとっくに越えたおじさま達がバリバリに現役で全国ツアーのステージで大活躍しているのを生で観ていますから。

いえね・・・確かに気持ちは偽らずそうなのですが、僕もまぁそれなりには身体にガタが来てはおります。生意気なことながら、今年になって「俺もトシだなぁ」と感じたことが、3つもあるのです。

第一。
凄まじい勢いで、髪の毛の量が減っております(泣)。
元々剛毛で量も多いものですから、抜ける本数もハンパではありません。

抜けるにしても、僕としてはエルヴィス・コステロのように額にソリコミ入れるような感じでイって欲しいのですが、現実、侵食は額中央をメインに始まっています。額の真ん中の生え際がいつの間にかホヤホヤの毛にとって代わり、それが次第に深く後退していくのです。
おそらく来年、再来年あたりには、上野裕和五段(応援している将棋棋士のひとり。検索なされば画像ヒットします)のような状態まで進むものと思われます。
そしてさらに数年経てば、木村一基八段(相手の攻めを踏み込んで受けて押し戻すという「顔面受け」と呼ばれる独特の棋風を持つトップ棋士)の域に達するでしょう。
(註:上野五段も木村八段も、僕より年下です)

第二。
文庫本を、メガネを外して読むようになりました(泣泣)。
ジュリーが「辞書の字がほとんど読めなくなった」と言っていたのは『サーモスタットな夏』ツアーの年ですから、45歳でこの体たらくはちょっと早いんじゃないか~。
『TOKIO』『HELLO』の歌詞カードは少し前から「ん?よく読めないぞ」と感じていましたが、遂に『涙色の空』まで読み辛くなってしまいました。キラキラ色のフォントほどキツいようですね。
ただ、近視なのでメガネを外せば普通に読めます。まぁあと何年かしたらそれもダメになっていくのでしょうけど。

届けられたジュリーLIVEのチケットの座席を、メガネを外して確認するようになる日も近いのでしょうか・・・。

第三。
タイガース20曲集中更新期間をお読みの方々はご存知の通り、夏に突然肩をやってしまいました(泣泣泣)。
今も左腕が上げると「いてっ!」となります。ある日突然治るとは聞いているけど・・・。
とにかく発症後2ケ月までは、大変でした。大体月に一度のペースで、信じ難いほどの激痛に襲われ動けなくなっていたのです。
今は幸い、そこまでの症状は無くなりました。

カミさんにもよく言われますけど、猫背というのもやはり良くない原因らしいですね。
下山さんは大丈夫かな・・・。

と言いながらしかし、上記3つの「俺もトシだなぁ」的なことも、弱音でこうして書いているのではありません。
シンプルに、年相応のそれなりの代償だと思いますし、そんなことで気を滅入らせるのは、ジュリーファンとしてヒヨッコの自分には10年早い!
『REALLY LOVE YA!!』のジュリーには、本当に元気を貰っています。あのジュリーが自分と同い年ならば、45歳のささやかな苦しみなど、気力で吹っ飛ばせるような気がして・・・。

肩については・・・ひとつ心底「痛めたのが今年で助かったなぁ」と思うこともあります。
それは、老虎ツアーのセットリストに”おいっちに体操”(「TOKIO」とか「KI・MA・GU・RE」で会場一体になってやる、両腕交互上げ下げ運動のことです)の曲が選ばれなかったこと。
肩のせいでアレに参加できないのは、悔し過ぎますからねぇ・・・。もし「処女航海」がセットリストに入っていたら、その点はおそらくアウトでした。

あのアクションをジュリーと一緒にやりたい!というのは、僕が『ジュリー祭り』直後真っ先に抱いていた願望だったのです。
『ジュリー祭り』ではYOKO君と二人2階席から
「うわ~、アリーナのお客さん、ジュリーと一緒になって何かやってるよ、元気だな!」
とか考えながら観ていただけ。
自分達がそれをやる、というところまで意識が回らなかった・・・ジュリーLIVE初参加の男なんて、実際そんなものだったんですよ。勿体無いにも程があります。
で、『奇跡元年』はそのリベンジが楽しみで楽しみで、見事に1曲目の「奇跡」から”おいっちに体操”を炸裂させてくれたジュリーに惚れ直したというわけ。

・・・と、ここまでお題の「F. S. M」と関係の無い話が続いているようですが、この曲のLIVEを生で観たことのある方、或いはDVD『REALLY LOVE YA!!』をお持ちの方ならご存知の通り、「F. S. M」にもジュリーの激しい両手交互突き上げアクションがあるんですよね~。
僕はジュリーのLIVEでのアクションなんて全然予備知識無しにDVD『REALLY LOVE YA!!』を観ましたから、「F. S. M」についてはまずジュリーの動きだけで充分な衝撃がありました。

と言うのも。
「F. S. M」の両手交互突き上げアクションは、いわゆる”おいっちに体操”パターンとは違います。むしろ、”おいっちに体操”の原型がこの動きだったと言うべきでしょう。
きっと、ずっと昔からジュリーはこのアクションを繰り出していたはず。
何故ならこれは・・・元々ミック・ジャガーのアクションのアレンジなんですよ

指を立てて顔は上向き、身体は若干クネクネさせるのがポイント。
昨年の『秋の大運動会』大阪ステージの後、打ち上げで完璧に酔っ払ったいわみせんぱ・・・いや今となっては町会議員のいわみ先生が
「DY君、ミックのマネなら俺もジュリーに引けはとらんで」
と言いながら、真夜中の御堂筋でいきなり踊り出したのがズバリ「F. S. M」でジュリーが見せるあのアクションでした。
洋楽ロック好きにとって、あの動きはミック・ジャガーの象徴のようなものなんですよね・・・。

ミックがこのアクションを繰り出すと、猥雑な魅力があります。対してジュリーは直線の動きが強調され、美しさが強調されるんですよね。
ジュリーのアクションは、腕の伸びが美しいパターンが多いです。宙に描く線が見えるような動きだと思います。
僕はDVD『REALLY LOVE YA』で「F. S. M」を初めて聴いた際、容姿以上に動きの美しさに息を飲んだものです。

さて、「F. S. M」映像でジュリーのミック・ジャガー・アクションが炸裂するのは、歌メロ無しの演奏部で、ヴォーカル部については、ジュリーが歌詞を意識したアクションで魅せてくれますね。
2番の

♪ 暗い暗い夜も FLY FLY
    A7                G

  ファンキースペクターマン ♪
                D7           A

の、ヒラヒラとか。
もちろん、ヴォーカルが素晴らしいからこそ、連動した動きにも魅せられるのですが。

今はもうジュリーのLIVEを何度も生で観ていますので、ステージのジュリーが歌詞に合わせた様々なアクションを繰り出すことは知っていますが、初心者の僕は最初ひどく感心したものでした。
他アーティストでも、ここまで動きが自然に歌詞に連動する人は少ないですよね。
しかもジュリーの場合、自らの作詞でなくともそうなります。それも含めて、歌に心ごと身体ごと入り込む傑出した能力を感じます。

これまでアルバム収録曲のお題記事にて何度か書いているように、僕は『REALLY LOVE YA!!』についてはCDよりも先にDVDを購入しました。
アルバム全曲好きですが、特に「幻の恋」「夜明けに溶けても」そしてこの「F. S. M」が抜群に好きで(そうは言っても、「憂鬱なパルス」「そのキスが欲しい」などその他のナンバーももちろん大好きですよ)、それはもう、映像で鑑賞した段階ですぐにヤラれてしまいました。
特に好きになった3曲すべてタイプの違う作風というのが、僕のこのアルバムへの思い入れを深めているようにも感じますし、本当にクオリティーの高い、バラエティーに富んだ1枚だということなのでしょうね。

「F. S. M」は、いわゆる”ソウル・ポップ”ということになるのかなぁ。
16ビートで畳みかける歌詞・・・しかし実は素晴らしくメロディーが綺麗で、最高にキャッチーなんです。
演奏、アレンジの難易度も高く、ファンキーなホーン・セクションの絡むタイミングに注意して聴くだけでも、ご飯3杯は行ける感じですね。

ところで、僕は「F. S. M」をDVDの初見一発で、詞曲とも完璧なナンバーだと思いましたが、その一方で先入観・・・と言うか甘い考察と思い込みによる、誤った印象も持ってしまっていたのです。

まず僕は、これは作詞と作曲とが別の作家さんの作品だろう、と思っていました。
完璧過ぎて、詞も曲もそれぞれにプロフェッショナルな仕事人の匂いがしたのです。特に作詞は、森雪之丞さんに代表される”言葉使い師”の名篇だろうと決めつけていました。
さらにもうひとつ、作詞者は男性だと思いました。「F. S. M」の、良い意味で見栄っ張りな言葉の速射砲はとても男性的ですし

♪ やっぱりニのセンは ハズせないなんて ♪
  D7                                               A  D7  A

のとこ。
CDを購入して歌詞カードを見るまでは、この仮名づかいを知らなかったわけです。
語感だけだとすごく男っぽい言葉で、僕個人は思わず糸井重里さんを想像してしまうほど。
仮名づかいを文字として見ると「あぁ、女性だなぁ」と思い直すんですけどね。

そう、「F. S. M」は作詞・作曲共に女性作家・・・元ゴーバンズ・森若香織さんの作品です。
ジュリーのアルバムを後追いで聴くと、驚くようなビッグネームにどんどん出くわしますけど、森若さんももちろんその一人。

とにかく吉田建さんプロデュース期のアルバムは、当時のバンドブームをもろに反映しています。
ちょうど僕が楽譜の仕事を始めた頃ですから、あの頃のバンドブームの空気感というのは肌に染みて分かるのです。『彼は眠れない』『単純な永遠』同様、『REALY LOVE YA!!』というアルバムにも、そんな”空気”は充満しています。

建さんは、バンドブームに乗っかりつつも、安易なバンド量産体制となった風潮に「本物」をお見舞いする、というコンセプトでジュリーのプロデュースに取り組んでいたのではないでしょうか。
その証が、マルコシアス・バンプの秋間経夫さん、ゴーバンズの森若香織さんの起用にも表れています。二人とも、バンドブームの頃に頭角を現した幾多のソングライターにあって、突出した本物だったということなのです。
二人ともに作詞作曲を一人で担っていることも、強く推しておきたい点のひとつです。
その点は、「幻の恋」の高野寛さんにも同じことが言えますね。

実は吉田建さんプロデュース期には、面白い流れがあるように僕には思われるんですね。
最初の2枚『彼は眠れない』『単純な永遠』は、完全に建さん主導のコンセプト・アルバム。続く『パノラマ』もその路線を踏襲していますが、ラスト収録の「Don't be afraid to LOVE」に、ジュリーの秘めた渇望が顔を出し、強烈な主張を放っています。
そして次の『BEAUTIFUL WORLD』では、アレンジや楽曲構成は別にしても、コンセプトはジュリー寄りになります。
普通に考えればその後、どんどんジュリー主導になっていくところ、『REALLY LOVE YA!!』では建さんが一度押し戻しているんですね。
「これで最後!ジュリー、今までありがとう・・・」
建さんとしては、そういう意気だったんじゃないかなぁ、と僕などは考えてしまうのですが、いかがでしょうか。

「F. S. M」という曲は、ジュリー主導では生まれなかったであろう、吉田建さんプロデュース期の貴重なナンバーのひとつだと思います。
僕はもちろんどの時代の、どんなプロデュースのジュリー・アルバムも全部好きですが、”それぞれの時代でしかあり得ない曲”に強く惹かれる傾向があるようです。
そしてそういうジュリー・ナンバーは、驚くほど、本当にたくさん存在するのです。
こんなアーティストは、他にいませんよ!

といったところで、今日は若干ながらいつもより短めですが・・・これにて。
(これで短いのか、とツッコまれそうですが、今回は、明日更新予定の記事とほとんど下書き進行が同時だったんです。比較すると、明日の記事の方が全然長くなっております~)

また明日、ピー作詞・タロー作曲のタイガース・ナンバー「あわて者のサンタ」の記事でお会いしましょう!
(一応「聖夜」もセットで書いてます~)

| | コメント (35) | トラックバック (0)

2011年12月14日 (水)

沢田研二 「お嬢さんお手上げだ」

from『今度は、華麗な宴にどうぞ』、1978

Konndohakareina


1. ダーリング
2. 酔いどれ関係
3. ハッピー・レディー
4. 女はワルだ
5. 探偵(哀しきチェイサー)
6. ヤマトより愛をこめて
7. お嬢さんお手上げだ
8. グッバイ・マリア
9. スピリット

-------------------------

待ち遠しい横浜公演までの拙ブログの更新は、20日、21日と連続で記事をupする予定があります。

20日は僕の誕生日で、この日は毎年「ジュリーが自分と同い年の時にどんな楽曲をリリースしていたか」というテーマで書くことにしています。
僕は今年の誕生日で45歳になりますから、アルバム『REALLY LOVE YA!!』からお題を採り上げることになります。

翌21日には、TG夢子様からリクエストを頂いております「あわて者のサンタ」を採り上げます。
ピー作詞・タロー作曲のタイガース・ナンバー。老虎ツアーでのご縁があって、ピーファンの先輩から初めて頂いたリクエストですから、気合を入れて書こうと張り切っています。
何故21日のupかと言うと、横浜公演直前に書きたいということと、クリスマス関連ということでもうひとつささやかながらの意味があります。
ピーファン、タローファンのみなさまの中に
は、「あぁ、この日に合わせたのね」とお気づきのかたもいらっしゃるかもしれませんね。

そんな感じで2日連続更新の予定でおりますので、今からコツコツと下書きをしていかなければなりません。何てったって、長文だけが売りのブログですからねぇ・・・執筆には時間をかけるのです。
しかし、前回記事「世紀末ブルース」のupが9日ですから、20日まで1週間以上も間が開いてしまうのは自分としてもちょっと淋しい。
そこで今日は、「余計なことを何も考えずに盛り上がれる」という、スラスラと筆が進みそうな、大好きなナンバーをお題に気ままな感じで1曲書こうと思います。

アルバム『今度は、華麗な宴にどうぞ』から。
「お嬢さんお手上げだ」、伝授~。

「スラスラと筆が進む」お題条件のひとつに、執筆に当たって自分に課している「新たな発見を求めて一度は曲全体を自分でも弾き語ってみる」という作業が既に済んでいる曲、というのもあります。
そう、この曲は手元にしっかりとした譜面があるのです。
ずっと以前に、「お宝ですか②」の記事で紹介させて頂いた、これです。

Julieguitarscore

僕の勤務先で、大昔に発行されていたスコア。当然現在は在庫など無く、資料本としてたった1冊が保管されているだけ。保管場所が会社ではなく一社員の個人宅という状況はいかがなものか、とは思いますが
(いや、頭を下げまくって、ちゃんと了承は得ていますよ!)、今となっては本当に貴重な1冊です。

Sn390122_280x185

で、このスコアはちょうど「LOVE~抱きしめたい」のシングル・リリースに合わせて選曲されたらしく、「LOVE~抱きしめたい」以前のジュリーでは最新のアルバムであった『今度は、華麗な宴にどうぞ』から6曲が選ばれているというのが素晴らしい!

Sn390121_300x255_280x238

「ダーリング」「ヤマトより愛をこめて」は当然として、あとは「探偵~哀しきチェイサー」「グッバイ・マリア」「スピリット」そして「お嬢さんお手上げだ」というラインナップ。担当者が誰だったのか(たぶんもう辞めちゃった人でしょうが)不明なのですが、なかなか良い選曲ですな~。

ジュリーに堕ちてから、このスコアには随分お世話になり、よくギターで弾き語りました。やっぱり、思い立った時にサッと気楽に弾き語れるのは短めのアップテンポ・ナンバーですから、「お嬢さんお手上げだ」はこれまで何度もスコアを観ながら歌いましたね・・・。
だから、コード進行も全部頭に入ってます。それだけで、執筆のスピードはかなり違うんですよ~。

さて、みなさまご承知の通りこの曲は、来年3月から始まる、新たな音楽劇のタイトル・ソングですね。マキノノゾミさんは、よほどこのアルバムがお好きなのでしょうか。
しかも、コミカルな内容のようで・・・いやいやどんな舞台が繰り広げられるのでしょう。文字通り、ジュリーがお嬢さんにお手上げする話?

と言いながらも不肖DYNAMITE、何人かの先輩に「早く音楽劇デビューしなさい!」と叱咤され続けること早2年・・・未だに参加を果たしておりません。
今回も、申し込みはしていません。だって・・・同じ頃に武道館を申し込むことがあったじゃないの~。財布の紐をそうそう緩められないわけで。
ただ、LIVEと違ってB席なら当日販売でも大丈夫そうですから、あとはスケジュールと相談して・・・とは考えておりますが。

それにしても「お嬢さんお手上げだ」は素晴らしい楽曲です。
詞・曲・アレンジ・演奏そしてヴォーカル、すべてが完璧に練られ、しかもジュリーにピッタリ、ジュリー以外では考えられないというナンバー。
曲の完成度から考えると、当時大ヒットを連発していたジュリーのシングル群と比較してもまったく遜色のない、スーパーヒット・シングル級の出来映えだと思います。そんな曲がアルバムの1収録曲とは・・・贅沢この上ありません。

無条件に盛り上がる、気持ちが高揚する、思わず口ずさんでしまう・・・僕にとっての「歌謡曲」とはそんな歌かもしれません。
ジュリー=ロックをいつも語っている僕にとって、敢えて「歌謡曲」の素晴らしさを語るとしたら、真っ先に思い浮かべるのはこの曲です。
すべてのパーツについて、その道のプロが作りこんだ曲、ということですね。

その作り込みがあざとくなく、あまりにもキャッチーな曲ですから、ただただジュリーの歌と伴奏に溶け込むようにス~ッと聴けてしまいます。もちろんその聴き方でまったく正解なのですが、ちょっと紐解いてみますと、実は「お嬢さんお手上げだ」はアルバム『今度は、華麗な宴にどうぞ』収録曲の中にあって、意外と演奏者の音数が多い曲なんですよ。

すべてのトラックを書き出しますと

左サイド
・キーボード(エレクトリック・ピアノ)
・ホーンセクション
・パーカッション(ウッドブロック?)
中央
・ヴォーカル
・ドラムス
・ベース
・ピアノ(ソロ)
・ストリングス
右サイド
・リード・ギター
・サイド・ギター
・パーカッション(マラカス)

以上、ジュリーのヴォーカルを含めて計11種類の音が鳴っているのです。
それぞれに明確な「出番」というものが割り振られていて、これぞ職人、といった正確無比の演奏・・・これはいわゆる「歌謡曲」の手法であり、それ故の素晴らしさでもあります。
ただし、このような歌謡曲的手法による楽器編成やアレンジについては、僕の中で絶対条件というのがあって、最終的にすべての音の中でヴォーカルが一番イカしていないと台無し・・・トホホに感じてしまうのです。
上記の各トラックの左右・中央の振り分けを見れば分かるように、どうしたらヴォーカルが一番目立つか、ということも考え込まれているミックスですし。この頃の歌謡曲には、こういうミックスが本当に多いです。

その点、ジュリーの完璧なことよ。

アルバム『今度は、華麗な宴にどうぞ』を僕がジュリー初心者に薦めまくる理由はまさにそこですし、特に「お嬢さんお手上げだ」のヴォーカルは収録曲中1、2を争う素晴らしいヴォーカル・テイクだと思います。

僕が最も好きな箇所は・・・これは多くのみなさまにも賛同して頂けるのでは、と思いますが

♪ どうやら夏のピエロに なりそうだ ♪
         E♭                        C7  Fm

の「だぁ~~♪」です。
一番最後のトコね。
同じフレーズは3回あるんですけど、「なりそうだ~♪」の「だ」が最後だけ、初めの2回よりも1オクターブ上の、高い「ファ」の音まで跳ねあがるんですよね。
曲中で一番高い音を一番最後に持ってくる、というのは歌謡曲の王道で、ややもするとあざとくなりがち。しかしそこは大野さん、ジュリーの声を想定して作曲していますから、とてつもない必然の破壊力となるのです!

他の部分も、楽曲全体を通してすべて素晴らしいヴォーカルを堪能できます。特にこの曲の場合は、語尾ですねぇ。
例えば

♪ 窓ぎわがいいのなら それでもいいが ♪
     D♭                A♭      E♭      Fm

の「が」などは、セクシーな艶が何とも・・・。こういった「艶っぽい低音」はジュリーが阿久=大野時代に完全に開花させた歌唱法のひとつではないでしょうか。

しかし・・・阿久さんの詞、どんなシチュエーションなのでしょうか。情景は浮かびますけど、書かれていない部分、つまり物語の前後の状況というのが、色々と考えられるわけです。
純情をぶつけられて立場逆転・・・というのもね。何か裏がありそうに思うんですよね。
「お嬢さんお手上げだ」は、夏のピエロになった男の完全な独白として曲が素早く駆け抜け収束していますが、一歩俯瞰して長い目で見ると、結局男の様子はそのまま「女はワルだ」に反映されているような・・・。
どうみてもネンネに見えるのに・・・という、あのくだりですよ。

阿久さんには、一人のいっぱしの男の「魂」を完全に奪うことがどれだけ得難いことであるか、という女性視点からはちょっと分かりにくい哲学もあるように僕は思います

そう簡単に男の「魂」までは奪えない。しかし中には、したたかにそれを奪ってしまう女もいるんだよなぁ、という作詞が多いように感じているのですが・・・・。
”お嬢さん”のまごころは、本物なのかなぁ。

そんな詞にイケイケの曲をつける大野さんがまた凄いですねぇ。
「お嬢さんお手上げだ」は、詞に鼓舞されたかのような縦横無尽のメロディーです。とにかく「ここはバ~ン!と炸裂する感じ」といったように、メロディー各箇所の「盛り上がり」が徹底されているのです。

♪ きわどいジョークなら あしらいも出来るが ♪
    F7      B♭m7       E♭         Cm7        Fm

メロディーとして最も官能的なのはもちろんこの部分で、作曲しながら大野さんの頭の中ではジュリーの声がハッキリ聞こえていたと思います。
前作『思いきり気障な人生』を経て大野さんは、完全にジュリーのヴォーカルと同化する術を見出したのでしょうね。

当時大野さんは『太陽にほえろ!』の音楽もやっていて、「曲のカッコ良さ」という点では時折ジュリー・ナンバーとのシンクロも見られます。
短調アップテンポの「お嬢さんお手上げだ」は、ジュリーの歌う主旋律をそのままサックスで演奏すれば、刑事ドラマのテーマソングとしても相当な名曲になりそうです。

ところで、音楽劇のテーマ・ソングになったということで僕が期待するのはやはり、来年のソロ・ツアーのセットリストにこの曲が採り上げられるのではないか、ということ・・・。
2009年『PLEASURE PLEASURE』ツアーで「探偵~哀しきチェイサー」を体感でき感動していますから、「そのパターンでもう一丁!」という気持ちなんです。

「お嬢さんお手上げだ」は比較的最近、それも「探偵~哀しきチェイサー」と共に、突然『生きてたらシアワセ』ツアー(2007年)で採り上げられているんですよね。
後追いの僕はDVDで観るしかありませんが、いやいや素晴らしいです。泰輝さんのピアノが、メチャクチャにカッコイイ。
このツアーのセットリストは泰輝さんが大活躍するシーンが多くあります。

ジュリーは久しぶりにこの曲を歌ったのでしょうが、若い頃に歌っていた時とは、ずいぶん曲に込める感情も違ってきていたのでしょうね・・・。
歌いながらのジュリーのアクションに、それが表れていると思います。

Ikisia1

↑ 「若い娘がやって来る時間じゃない!」

Ikisia2

↑ 「お嬢さんお手上げだ~」

Ikisia3

↑ 間奏。「確かにどうにもならんよ」みたいな感じ?

こうしてみると、この曲に向かっていく気持ちに若干の照れがあるような雰囲気も感じますが、僕は実際に生で体感していませんのでハッキリとは言い切れません。
でも、年齢を重ね、気も練れた今のジュリーが「お嬢さんお手上げだ」というタイトルでお芝居をやるなら、コミカルなストーリーというのはピッタリ合うような気がします。歌のド迫力とのギャップも楽しそうですし・・・。
やはり音楽劇、観ておくべきかなぁ・・・。

それでは、次回は20日です。
これから僕は、20日更新のアルバム『REALLY LOVE YA!!』からのお題記事と、翌21日更新予定の「あわて者のサンタ」の記事・・・執筆に向けて、2曲同時鬼聴き考察週間へと突入いたします~。

| | コメント (15) | トラックバック (1)

2011年12月 9日 (金)

沢田研二 「世紀末ブルース」

from『BAD TUNING』、1980

Badtuning


1. 恋のバッド・チューニング
2. どうして朝
3. WOMAN WOMAN
4. PRETENDER
5. マダムX
6. アンドロメダ
7. 世紀末ブルース
8. みんないい娘
9. お月さん万才!
10. 今夜の雨はいい奴

-------------------------

本日のお題は、拙ブログ100万アクセス・ニアピン記念リクエストとして、100,000,002番をゲットしてくださった、ぴょんた様より頂いておりましたナンバーでございます。

「検索クイーン」の異名をとるぴょんた様(今夏には、GAROのバックでギターを弾く柴山さんの画像をネットの大海から見事発見、という離れ業を為し遂げたお方です)は、実は「ニアピン・クイーン」でもございまして、昨年の拙ブログ50万アクセスの際にもキリ番ニアピンをゲット、「月の刃」をリクエストしてくださいました。

さて今回のリクエストではどんな曲を選んでくださるかなぁ、と思って僕も楽しみにしておりましたら・・・。
やはり来ました、オールウェイズ期!

しかも・・・し、渋い!

その演奏の魅力をいつか詳しく語りたい、と以前から大いに執筆意欲のあったナンバーで、この機に復習し、改めて「これはやっぱり歴史的なテイクだなぁ」と、堪能することができました。ありがとうございます~。
アルバム『BAD TUNING』から。
「世紀末ブルース」、伝授です!

アルバム『BAD TUNING』最大の魅力は、何と言ってもそのレコーディング構成。スタジオ録音とLIVE録音を5曲ずつ配した斬新な曲並びが圧巻ですよね~。
何故このような構成になったのか・・・後追いファンの僕には詳しいいきさつは分からないのですが、ジュリーが忙しくてスタジオに籠もっている時間が無かったのかなぁ、とか素人らしく考えてしまいますが・・・。

それにしても正規のスタジオ・レコーディング音源の曲並びに挟んで、A面B面で分けることもなくLIVE音源の楽曲が散りばめられてこれほど違和感が無いというのは、特筆すべきことでしょう。
それは、ジュリーが迎えた新たな若きバンド”オールウェイズ”の演奏力が抜きん出た実力を誇っていたことの証明。生演奏のレコーディングでこれだけ豪快かつ安定感を極めているというのは、当時のロック・バンドでも最高峰のレベルだっただろうと思います。

さて、一口に「演奏が凄い」と言っても、色々なパターンがあります。
気心の知れた仲間がセンスをぶつけ合い一体となる井上バンド時代、緻密にアレンジ構成された、究極のプロフェッショナルによる完璧な仕上がりを誇るJAZZ MASTER時代、ジュリーの歩む道に寄り添い「音」はもちろんそれ以上の繋がりを確立した鉄人バンド・・・といったように、ジュリーの歴史においても様々なヴァリエーションがあり、それぞれ素晴らしいものです。
では、オールウェイズ時代にはどんな特徴があるのでしょうか。

腕に覚えの若手プレイヤーが揃っていて、ヴィジュアルも抜群。
無論それだけではなく、年若いメンバーを迎え、自らもまだまだ若さほとばしる時期のジュリーならでは、のオールウェイズ、そしてエキゾティクス時代の特性とは・・・。
それは

ジュリーのヴォーカルにグイグイとリードされ無我の境地へと誘われた若きメンバー達が、ジュリーのパフォーマンスに感化されることで、演奏やアクションに情熱的な感情表現が引き出される

というものです。
まだまだジュリーに遠慮する部分もあったであろう若いメンバー達も、ジュリーのヴォーカルに感化され一度爆発すると、溢れる情熱は逆に留まるところを知らずほとばしります。
演奏以外の面でも、「おまえがパラダイス」での柴山さんのコーラスなどがその代表例として挙げられるでしょう。これも、ジュリーが柴山さんの中にあった感情を引き出したものなのかな、と思います。

しかしそんな中で、年長の吉田建さんだけは、大きな体躯をどっしりと構えて
「どうだ、ベースってのはこう弾くもんだぜ」
と言うかのように堂々と演奏しながら、ジュリーと共にバンドを引っ張る側に自分を位置づけている・・・これが通常モードのオールウェズ・パターン(エキゾティクス・パターン)とするならば。

時に、通常ではなくなるパターンもあります。

稀な例とは言え、ジュリー・ヴォーカルのド迫力に引きずりこまれて忘我の境地に至り、凄まじい状況になっている吉田建さんの姿は、だからこそ貴重。
例えば、『快傑ジュリーの冒険』収録の「”おまえにチェック・イン”」のTVスタジオ生演奏では、楽曲後半に進むに従って、足をばたつかせコーラスをとりながら必死の形相でベースを弾く建さんを観ることができます。
しかしこれはまぁ、見た目のお話。


最初はクールにビシッ!と演奏していた建さんが、曲が進むに連れてジュリーの魔力に犯され、ベースの手数が尋常ではなくなり、最終的には素人にはとてもコピー不能域の超絶プレイへと至る様を、音源だけで充分確認できるようなテイクが生まれることもあるのです。

それこそが、「世紀末ブルース」。
そう、「世紀末ブルース」という曲は

ジュリーにヤラれて完全にイッてしまった建さん

の演奏を、音だけで堪能できる数少ないジュリー・ナンバーのひとつなのです!

さて、建さんの演奏について語る前に・・・ぴょんた様はジュリーファンであると同時に柴山さんのファンでもいらっしゃいますから、まずはギターの「イッてる度」から考察していきましょう。

映像の立ち位置から判断すると、「世紀末ブルース」でのギタリストの音源トラック振り分けは、右サイドが沢さん、左サイドが柴山さんということになると考えられます。
以下、その前提で語ってまいりますね。

柴山さんのパートは、間奏以外派手な箇所はありません。
・・・ということはすなわち、映像を観れば一目。柴山さん、メチャクチャに動き回っていますね~。特に、足。
これもまた「イッてる状態」のひとつの表れでしょう。

オールウェイズ時代は、沢さんがリード・ギターで柴山さんがサイド・ギターという役割分担になっていたそうですが、すべての曲で役割がハッキリ分かれた形式ではないですね。
お互いが単音もバッキングもこなしながら、痛烈に絡み合うというスタイル。ストーンズで言えば、ロン・ウッドが加入して以後数年間の時期の音作りに近いでしょうか。
『BAD TUNING』収録曲だと、「どうして朝」間奏で2小節ごとに交代でリード・ギターとバッキングを入れ替えたり、「マダムX」ではノッケから豪快なツイン・リードのリフを炸裂させます。
ベース、ドラムスがしっかりしているから、ギターやキーボードのアレンジ自由度が高いのです。この辺りもまた、オールウェイズの実力を証明するもの。

そんな中で、「世紀末ブルース」はリード・ギターとサイド・ギターの役割が比較的キチンと分けられている曲だと言えます。
Aメロの「だだだだ!」にしても、柴山さんは単に「だだだだ!」で、沢さんだけが

「だだだだ!
ちゅくちゅくちゅくちゅくちゅくちゅく・・・

と、ブラッシング音を刻んでいます(柴山さんも完全ミュートでのカッティングはしているでしょうが)。

曲の後半に建さんがヤンチャしてしまうことを思えば、結果的にこうした役割分担は正解でしたね。
少なくとも音については、ベースに代わってしっかり裏方の柴山さん、というのも後半部ではとても光っているのです。

ただ、間奏だけはトンデモないですよ!
いきなりドラムスとベースが消えて、うねり上がるような長尺のリード・ギター・フレーズが襲いかかってきます。しかも左右ツインで・・・。
何が凄いって、通常こういったアレンジの場合、ドラマーがハイハットで「チッ、チッ」とガイドリズムを刻んでテンポリードするものなのです。それが無い!
一人のギタリストによる演奏ならそれも分かりますが、ツインですからね。相当の腕前で、しかもギタリスト同士の息が合っていないとズタボロになってしまうところです。
しかも途中からドラムスとベースが「だだだだ!」と頭打ちで入ってきます。この瞬間、4人のプレイヤーの演奏難易度は相当なモノです。

よく聴くと分かりますが、間奏の単音部はまず左チャンネルの柴山さんが一人で弾きはじめてから、右チャンネルの沢さんがほんの一瞬遅れて噛んできます。
このシーン、柴山さんはギター演奏だけでなく、その表情もかなりイッていたはずだと思いますよ!

さぁ、それではいよいよ、吉田建さんのベース演奏について語ってまいりましょう。

曲の出だしとエンディングでここまでテンションが跳ね上がっている演奏というのは、本当に珍しい。

かと言って出だしが凄くないのかというと全然そんなことはなくて、充分凄いわけです。

まずイントロから注目なのですが、「世紀末ブルース」は、エイトビート・ナンバーの常套である、ルート音の8分音符連打から始まります。
その音の粒、塊が1音1音独立して矢継ぎ早に繰り出されるのが、建さんのベースの素晴らしいところ。

イントロのコード進行は「Am→B(onA)」からスタートするので、ルート音を弾く建さんのベースはしばらくずっと「A」の音(=「ラ」)を連続して出すことになります。
そんな演奏を一般的に擬音で表そうとしますと
「でででででででで♪」
となりますが、建さんのベースは違います!

「どっどっどっどっどっどっどっどっ♪」

というのが建さんのベースなのですね。
音が出ていない箇所・・・つまり「っ」の部分に建さんの個性があるのです。

この個性・・・要因のひとつには、やはり指で弾いているということがあるでしょうね。
指弾きのベーシストであっても、アップテンポのエイトビート・ナンバーに限ってはピック奏法に切り替えるのが普通です。
90年代から2000年代のジュリーLIVEは映像作品も多く残されていますが、依知川さんがそういった楽曲ではピックに持ち替えているシーンを、注意して観ればみなさまもお気づきになれるはずです。
もちろん、ピックベースにはピックベースの良さがあり、普通はそうする、ということなのです。

それでも建さんは、指。
アップレンポのエイトビートを指で弾く・・・演奏が大変になるのを承知の上で、あくまでも指なのです!

おそそらく建さんの指は、指紋が消え指先がカチンカチンになっているはずです。針を刺すと、「プスッ」と突き立ってしまうほどに。
ギタリストですと左手の指がそうなるんですけど、建さんの場合は間違いなく両手その状態だと考えられます!

あと、サビの

♪ 俺は世界一いい男 お前は世界一いい女 ♪
    C            Am          Dm            G7

の部分。
演奏全体のアクセントは、小節頭の2拍。ギターも「ジャッ、ジャン!ジャッ、ジャン!」と弾いていますよね。
普通ならばベースもギターに合わせて同じアクセントで
「ぼんぼん!ぼんぼん!」
と弾いて無難に進行するところを、建さんは

ぼんぼん!つどどど、ぼんぼん!つどどど

と弾きます。
これは、これまで建さんのベースを語る際に何度か書いたことの繰り返しになってしまいますが、「小節の頭からフレーズを始める」のではなく、「次の小節の頭へ向かっていく」意識があり、建さんに限らずベースに限らず、そういう演奏はレベルが高いと言われることが多いようです。
「世紀末ブルース」のサビの場合、「つどどど」から「ぼん」に向かっていく意識、ということになります(分かりにくくてすみません・・・)。
ちなみにここでも「つ」という、音を出していない箇所にまで建さんのグルーヴ感が込められています。

しかし、しかしですよ。
こういった建さんならではのベース演奏、大変大変素晴らしいのですが、曲の前半部は
「俺ならこのくらい弾けて当然」
という感じでグイッ!とオールウェイズのバンド・サウンドを土台からしっかり支えるプレイに徹しています。
とても凄いんだけど、あくまで縁の下の力持ち。

ところが。
・・・ここで、ジュリーのヴォーカルに触れなければならなくなってくるわけで。

「世紀末ブルース」のジュリーのヴォーカルは、演奏順の関係でしょうか、イイ感じで声が掠れる域に達していて、いわゆる”ジョン声”が炸裂し放題という状況になっています。
音響にも馴染みバンドの雰囲気もノッってきて、自分で歌っていて一番陶酔しやすい声の状態だったのでしょうね。
曲調もアップテンポ・・・あの声でジュリーに畳みかけられたら、バンドにその威力が影響しないはずがありません。

建さんにも、それが起こりました。

最初の建さんの変化は、3分33秒くらいに訪れます。
「ふたりの世界がはばたき♪」(歌詞カードとジュリーの歌っている詞とが、微妙に違いますね)の「はば~たき~♪」の部分で、かなりの高音フレットでの冒険的なフレーズを2小節だけ弾いています。
斬新なフレーズです。しかしこの時点ではまだ理性も残っていて(?)、そのフレーズはフレットを下げればそのまま次節の「あっちの空が♪」のフレーズへとそっくり移行可能、というような緻密な計算もあるようです。

しかしだんだん雲行きは怪しくなり・・・次のヤンチャ・ベースは、間奏途中の4分18秒くらいの箇所。

間奏では先述の通り、とっくにイッてしまっている沢さんと柴山さんがツイン・リードで素晴らし過ぎるバトルを展開していまして、建さんも思わず
「ジュリー、俺もイッっていいかな?」
と、フィルインのフレーズで思いっきり高音から
「ぶい、ぶい、ぶん♪」
と。
さすがにこれは、ステージのジュリーや他のメンバーから見ても、相当に目立ったフレージングだったでしょう。
皆、「おっ!」と思ったんじゃないかな。

それに応えたわけでもないでしょうが、間奏が終わりヴォーカルに突入するまでの「「ミファファ#ソ~」というフィル・フレーズの際、ジュリーはヴォーカル部一歩前、寸前の箇所で
「おぅやぁ!」
のシャウト一発!
そして
「ぅ~おっれは!世界一~♪」
と、シビれまくる声でヴォーカルをカマします。
演奏者としては、これで感化されるな、と言う方が無理!

「行け!」
と受け取った建さんは、演奏しながら己の爆発する箇所を探し求め、遂に5分18秒・・・構成としては先述した最初の変化と同じ箇所
「はば~たき~♪」
で、本当に羽ばたいてイッてしまいました。
先程と違い、「あっちの空が♪」と歌が続いても全然戻ってくる気配無し。特にこの部分のコード進行は

♪ あっちの空が    しびれてく ♪
  A♭          Dm  G7        C      E7

となっていて、「A♭」という突発的な変化球コードが挿入されますから、本当はキッチリ土台となるルート音をベースで出しておかないと、全体のアレンジが混沌としてしまうのです。

で、結果として「世紀末ブルース」、後半この部分の演奏に限っては混沌としてます~。建さんのフレーズ、最早コード進行とか関係なくなっちゃってるし!

・・・とまぁこのように、「世紀末ブルース」は演奏に語るところの多い曲ですが、それを引き出しているのはジュリーのヴォーカルだ、というのが重要な点だと考えています。

それとは別に、もちろん詞曲の良さも見逃せませんね。
大野さんの作曲は、阿久さん時代に確立した「アップテンポ短調に軽快で流麗なメロディーが載る」王道のジュリー・ナンバーのパターンと言えますし、浅野裕子さんの思い切り良く言い放つ詞も気持ち良いです。
浅野さんは「マダムX」でもズバッ!と言い放つスタイルの作詞ですね。ジュリーと関わったことで本領を発揮し才能を開花、その後大きく飛躍した多くの著名人の中のお一人だと言えるのではないでしょうか。糸井重里さんもそうですし、この『BAD TUNING』という作品も然り、なのですが、ジュリー・アルバムに携わった豪華な顔ぶれには、後から本当に驚くばかりです。

それにしても、僕が東京ドームでジュリーLIVE初参加を果たしてから丸3年が経ちましたが・・・未だに、アルバム『BAD TUNING』収録曲を生で体感する機会が訪れていません。
昨年、ジュリーwithザ・ワイルドワンズのツアーがいよいよ間近という時、「今夜の雨はいい奴」をセットリスト予想として記事に書いたりしましたが、まぁそれ自体はダメ元としても、「恋のバッド・チューニング」は堅いだろう、と思っていたんですけどねぇ・・・。
過去のセットリストを調べてみても、どうもこのアルバムの収録曲はLIVE率が高くないみたいで。
来年のソロツアー、どうでしょうかねぇ・・・。

とりあえず今は、老虎ツアーに気持ちを集中。
これからジュリー達は、群馬、長野、新潟へ。寒さの厳しそうなところばかりですが・・・参加なさるみなさまのご感想が楽しみです。

そうそう、今回の記事の主旨ともなった「ジュリーのヴォーカルの魔力に感化されて、バンド演奏の感情表現が増している」という状況・・・どうやら老虎ツアーではそれが「美しき愛の掟」で起こり始めているようです。
僕はピーのドラムスに着目のあまり、その点まだ気づけていないんですけど、最近の各地でのみなさまの感想を拝見しますと、サリーのベースや柴山さんのギターが、相当凄いことになってきているらしく・・・。

僕の次回参加は、イヴイヴの横浜。
なかなかの良席を頂いていますから、そんな「美しき愛の掟」でのジュリーのド迫力陶酔ヴォーカルと、ジュリーに感化されるバンドメンバーの姿を目一杯味わってこようと思います!

| | コメント (24) | トラックバック (0)

2011年12月 3日 (土)

沢田研二 「俺たち最高」

from『人間60年 ジュリー祭り』、2008

Juliematuricd


disc-1
1. OVERTURE~そのキスが欲しい
2. 60th. Anniversary Club Soda
3. 確信
4. A. C. B.
5. 銀の骨
6. すべてはこの夜に
7. 銀河のロマンス
8. モナリザの微笑
9. 青い鳥
10. シーサイド・バウンド
11. 君だけに愛を
12. 花・太陽・雨
disc-2
1. 君をのせて
2. 許されない愛
3. あなたへの愛
4. 追憶
5. コバルトの季節の中で
6. 巴里にひとり
7. おまえがパラダイス
8. 6番目のユ・ウ・ウ・ツ
9. 晴れのちBLUE BOY
10. Snow Blind
11. 明星
12. 風は知らない
13. ある青春
14. いくつかの場面
disc-3
1. 単純な永遠
2. 届かない花々
3. つづくシアワセ
4. 生きてたらシアワセ
5. greenboy
6. 俺たち最高
7. 睡蓮
8. ポラロイドGIRL
9. a.b.c...i love you
10. サーモスタットな夏
11. 彼女はデリケート
12. 君のキレイのために
13. マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!
14. さよならを待たせて
15. 世紀の片恋
16. ラヴ・ラヴ・ラヴ
disc-4
1. 不良時代
2. Long Good-by
3. 
4. 美しき愛の掟
5. 護られているI Love You
6. あなただけでいい
7. サムライ
8. 風に押されぼくは
9. 我が窮状
10. Beloved
11. やわらかな後悔
12. 海にむけて
13. 憎みきれないろくでなし
14. ウィンクでさよなら
15. ダーリング
16. TOKIO
17. Instrumental
disc-5
1. Don't be afraid to LOVE
2. 約束の地
3. ユア・レディ
4. ロマンス・ブルー
5. TOMO=DACHI
6. 神々たちよ護れ
7. ス・ト・リ・ッ・パ・-
8. 危険なふたり
10. ”おまえにチェック・イン”
10. 君を今抱かせてくれ
11. ROCK'N ROLL MARCH
disc-6
1. カサブランカ・ダンディ
2. 勝手にしやがれ
3. 恋は邪魔もの
4. あなたに今夜はワインをふりかけ
5. 時の過ぎゆくままに
6. ヤマトより愛をこめて
7. 気になるお前
8. 朝に別れのほほえみを
9. 遠い夜明け
10. いい風よ吹け
11. 愛まで待てない

original released from『俺たち最高』、2006

Oretatisaikou


1. 涙のhappy new year
2. 俺たち最高
3. Caress
4. 勇気凛々
5. 桜舞う
6. weeping swallow
7. 遠い夏
8. now here man
9. Aurora
10. 未来地図

-----------------------

2008年末に敢行された、あの素晴らしい『ジュリー祭り』から、早いもので3年目となりました。

京セラドームに参加しなかった僕にとっては、東京ドーム公演の12月3日(仏滅)が、大切な記念日です。
仏滅って、六曜で最も縁起が悪い日とされますが、その一方で「ひとつのものが滅んで新たなものが生まれる」と捉えると、新しい物事を始めるには良き日、という解釈もあるそうですね。
大げさではなく、この日を境に僕の人生は変わったのでした。

以前より拙ブログにお越しのみなさまには繰り返しになってしまいますが、僕のジュリー堕ちまでの経緯というものを簡単に書いてみますと・・・。

まず僕には、『ジュリー祭り』以前の数年間、CD音源作品限定
ながらも”第1次ジュリー堕ち期”という時期があります。
仕事関連で偶然、ジュリーのベスト盤CD『ロイヤル・ストレート・フラッシュ』3枚が一挙にリマスター再発されたことを知り
「沢田研二か、懐かしいなぁ」
と、何の気無しに聴いてみて・・・自分のそれまでの認識を遥かに超える素晴らしいヴォーカルや演奏、楽曲に驚嘆しました。

そして、これもたまたまだったのですが、20代の頃から付き合いのある音楽仲間・YOKO君と、酒席でジュリーの話題になり、彼が『A面コレクション』を持っていて普段からよく聴いているということが、20年近くの付き合いで初めて判明しました。

その後、一気にポリドール期のジュリーのオリジナル・アルバムまでもがリマスター再発されるに及んで、僕とYOKO君は互いに競うようにして1984年までのジュリーのアルバムを聴きまくり、互いの感想を平日の夜中3時過ぎまで電話で語り合う日々に突入しました。

ちょうど
「そろそろポリドール期以外の最近のアルバムも聴いてみようか」
といったような話を二人でし始めた頃・・・大宮ソニックシティーだったか川口リリアだったか忘れましたが、ジュリー・ツアーの埼玉公演がある、という情報を僕等は耳にしました。

「行ってみる?」
お互いに確たる信念も無いまま、そんな話をしました。
しかし

「でも、ニューアルバムの曲が中心らしいよ」
「なんだ、黄金期のアルバム収録曲が目白押し、ってわけじゃないんだな・・・」
「MITSUKOやるなら、その1曲のためだけにでも行くけど!」
「無理だろ・・・今回はやめとこうか」

などという、今思えばレベルの低過ぎる会話の末に、その計画は実現に至りませんでした。

今考えると、それは『俺たち最高』のツアーでした。

あの時僕等二人がアルバム『俺たち最高』を購入し、ツアーに参加していたらどうなっていたのかな・・・と、今でも考える時があります。
ただ僕は基本的に、万事結果オーライ思考の持ち主ですので、今のような熱心なジュリーファンになるには、その時の自分ではまだ未熟で時期尚早だったのかも、と考えることにしています。

時は流れ、2008年。
僕とYOKO君がジュリーの話をすることも少なくなってきたある日、突然新聞に
『沢田研二、還暦ドーム二大興行』
の文字が躍りました。
久しぶりに真夜中の電話でジュリーについて語り合った僕等は
「よし、今度こそは行こう!」
ということで話を決めました。

ドーム以降のジュリーLIVE、特に今年の老虎ツアーでは考えられないことですけど、その時はまだ、普通に一般販売でもS席(とは言っても2階前方でしたが)をとれたんですよね・・・。

そして12月3日・・・僕は有給休暇、YOKO君は親戚を不幸にしてまで臨んだ『ジュリー祭り』。
初めてのジュリーLIVEで、42歳と41歳の男二人は、正に”人間・ジュリー”に堕ちたのでした。
忘れることなどありません。ジュリーが全80曲を歌い終わった時の、戦慄にも似た感動たるや・・・未だにうまく説明できないんですけど、「男が男に惚れる」というのはこういう瞬間を指すのかも知れません。

そこから先は、今度は近年のジュリー・アルバム大人買い。
これが”第2次ジュリー堕ち期”です。
”第3次ジュリー堕ち期”は、やって来ません。この先”第2次”が永遠に続きますからね。

まったくジュリーに関係の無い楽曲記事ばかり(唯一、”第1期”の時点で「バイバイジェラシー」について執筆していました)を偉そうに書き殴っていた拙ブログが、『ジュリー祭り』を境にジュリー一色の内容となってしまいました。

しかし、僕がこの先何年ブログを続けられるかは分かりませんが、どんなに長く続けても、ジュリー・ナンバー全曲を記事に採り上げることは不可能。
それはとても幸せなことでもあります。ジュリーの曲を語る終点が見えない、というのは・・・。

ただ、具体的に「これだけは何とかやり遂げたい」という目標を昨年考えつきまして・・・それが、『ジュリー祭り』セットリスト全曲を拙ブログの記事で網羅する、というものです。
毎年、ドーム記念日の12月3日には必ず『ジュリー祭り』からお題を採り上げる。でもこの日だけの執筆では毎年続けても追いつけないので(現時点で換算してもあと44年かかります!)、「年に10曲前後」というノルマも自分に課しました。
そうすれば、ジュリー70超えの年までには何とか間に合いそうだ、ということです。

今年は老虎ツアーの年。
『ジュリー祭り』の名曲群の中でも、タイガース・ナンバーをたくさん書くことができました。
そのおかげで順調にノルマをこなし、
今回で、『ジュリー祭り』セットリストの記事は年内ちょうど10曲目となります。
そこで、先述した「もしあの時・・・」という、”第1次ジュリー堕ち期”の時点で見逃した2006年ジュリーツアー・タイトルのアルバム『俺たち最高』から、表題作シングル・ナンバー「俺たち最高」を採り上げたいと思います。
伝授~!

これは、3人の方からリクエストを頂いているナンバーでもあります。
「大好きだから書いて!」と仰る方がお一人。残るお二人は純粋なリクエストと言うよりも、この曲の魅力をうまく見出せないでいらっしゃるようで、是非解説をということだったのですが・・・。
実はその微妙なお気持ち、僕も分かるような気がするのです。
「俺たち最高」は、僕も今でこそ大好きな曲となりましたが、そこへ至るまでかなり時間を要した曲でした。

原因はハッキリしています。僕にとってはこれこそ、後追いファンのハンデと言うべき曲なんです。
”ジュリー・ナンバー”を、巨視的に考察することがまったくできずにいたのだと思います。

ジュリーの曲には、ジュリーの歴史全体の流れをうまく掴んでいない者にとっては、ただ1曲だけ採りあげても理解を得られないナンバーが多くあります。
「俺たち最高」には、見方によってはコミカルとも言える詞曲(今では自然なジュリー・ナンバーの流れの中で咀嚼できますが)、そしてベースレス・アレンジへの最初の挑戦、という要素があり、新規ファンにとってなかなかハードルの高い楽曲なのかもしれません。
特に僕は、それまで洋楽ばかりを聴いていましたから、時にジュリー・ナンバーを聴く際に邪魔っ気となってしまうような、ある種の既成観念もあったと思われるんですよね・・・。

僕が初めて「俺たち最高」という楽曲を気持ちを集中させて聴いたのが、他でもない2008年12月3日の『ジュリー祭り』での生演奏でした。
東京ドーム当日に向けて、それなりに楽曲の予習はしていきましたが、なにせ僕もYOKO君もその時点で21世紀のジュリー・ナンバーはまったく知らず、膨大な曲数を前にして、1曲1曲を吟味してからLIVEに臨む余裕はありませんでした。
ですから、ドームでこの曲を体感した際にも
「あぁ、これは確か、結構最近のシングルで、『俺たち最高』って曲だな」
くらいの認識しか持てずに聴いていました。

その時の「俺たち最高」についての僕の感想というのがね・・・この機に率直に申しますとね・・・。

「へぇ~、ジュリーには、こんなコミックソングみたいな感じの曲もあるんだなぁ・・・」

・・・すみませんすみません(恥恥)!

何故そんなふうに感じたのか自分でもよく分からないのですが、とにかくドームではそう思ってしまっていました。
「俺たち最高」という独特なタイトルのイメージと、あとはやはり、クルクルとイタズラっ子のように曲調、リズムパターンを変化させる構成のせいでしょうか・・・。
今思えば、そのセンスこそがこの曲最大の魅力なのにねぇ。

僕が「俺たち最高」を、「これはいい曲だ!」と認識し直したのは、DVD『ワイルドボアの平和』を購入し鑑賞した時でした。
僕は正規CD版の『俺たち最高』については、ドーム以後の大人買い期のラスト近くの購入だったので、この曲をじっくりヘッドフォンで聴いたのは『ワイルドボアの平和』のLIVEテイクの方が先だったのです。

『ワイルドボアの平和』を割と早くに購入したのは、『奇跡元年』で初めて聴いて感動した「希望」の音源が欲しかったからです。その頃すでにCD『生きてたらシアワセ』は新品が品切れ状態、中古でとんでもない値段がついてしまっていましたから、DVDで聴こう、と考えたのでした。
ちなみに、
僕にとって『ワイルドボアの平和』は鉄人バンドの底力をドーム以降初めて、改めて実感できた作品でもあり思い入れがあります。
ベースレスが気にならない素晴らしい演奏・・・期待していた「希望」はもちろん、今回のお題「俺たち最高」でもそれはいかんなく発揮されていました。

そうして、しばらく後に無事CDも購入したのです。
聴き始め当初はなにせヒヨッコ度が高かったもので、「LIVEは良いとして、CDはやっぱりベース入れた方が良かったんじゃないかなぁ」と、多くの曲で考えてしまってもいました。
ただ、徐々に聴き方も変わっていきました。
CDは鉄人バンドの演奏ではありませんが、ちょうどこのアルバムから始まったベースレスのレコーディング体制・・・アレンジャーの白井良明さんの創意工夫を味わいながら聴き込むようになりましたね~。

そういった”じゅり勉”を経て改めて『ジュリー祭り』の映像や音源を楽しむと、ドーム当日とはまるで違った感想を抱く自分がいます。まったく同じ音を聴いているはずなのに・・・。
いやぁ素晴らしい。「俺たち最高」・・・盛り上がる!

とにかく僕の場合、『ジュリー祭り』鑑賞にあたっては、DVDだとdisc-2、CDだとdisc-3が大好きです。その場に確かに自分がいたにもかかわらず、その場にいたすべての人たちをうらやましく思う・・・そう思わせる曲がたくさん詰まっているんですよね。
その場では、10分の1くらいしか魅力を味わえていなかった、近年のジュリー・ナンバー達。
鑑賞すると、今の自分のジュリーファン度がLIVE当日よりも途方もなく上がっていることを、自覚できるような気がしたり・・・。

ところで、LIVEでのベースレス体制は・・・と言うと、『俺たち最高』前年の『greenboy』ツアーからでしたね。
しかしその時にはファンの多くが
「LIVEは仕方ないとしても、さすがに(次の)アルバムのCD録音では、ゲストのベース・プレイヤーを迎えて制作されるだろう」
と予想していたのではないでしょうか。

しかしジュリーは
”レコーディング作品は、あくまでLIVEでの再現性を重視し、その上でLIVEならではの醍醐味を届ける”
という自身の信念を素直に考え、現代の本格的なロックバンド・サウンドとしては常識外とも言える「ベース抜き」の音源作品『俺たち最高』を制作敢行したのですね・・・。
いくら世間から見て非常識であろうが、ジュリーの「既成観念にとらわれず、自分に素直に」という感性が成せた決断だったのだ、と僕は思っています。

さきほど書いたように、僕はアルバム『俺たち最高』を聴いた当初、ベースレスのアレンジに物足りなさを感じました。
しかし『ジュリー祭り』から3年・・・『俺たち最高』がジュリーにとって新たな起点となり、ベースレス・サウンドへの挑戦は鉄人バンドとの絆へと繋がり、そして「涙色の空」という、境地到達とも言える音源作品へと辿り着くまでの、最近の3年については、僕はこの目でタイムリーに見て来ることができたのです。
そして、「いよいよここからジュリーがロック未踏の地を行くんだ」という地点に、今立ち合っている歓びを感じます。
アルバム『俺たち最高』制作にゲスト・ベーシストを加えていたら、果たしてこのような道筋はあり得たかどうか・・・とも思います。

タイトルチューン「俺たち最高」はシングル曲でもあるし、アルバムの中では一番最初にレコーディングした(或いは、一番最初にアレンジされた)可能性が高いです。
いよいよ「ベースレス」という前代未聞の命題を前に、白井良明さんも大いに腕を振るったことでしょう。「俺たち最高」は白井さん自身の作曲作品ということもあり、ベースレスを念頭に置いてのアレンジに着手するにはふさわしい楽曲だったと考えられます。

低音が抜けるわけですから、楽器の噛み合わせの安定感や重厚さをどうやって表現するか・・・それが最大の課題・ポイントだったのでしょうか。

その点、「俺たち最高」では、王道のシンセサイザーの音色が活躍します。
これは、「シンセ・ブラス」という、いわゆる”造りモノっぽいホーンセクション”です。
シンセサイザーでは、ホーンセクションの構成音・・・例えばトランペットやトロンボーン、サックスなどの単体音はそれなりに本物っぽく再現することが可能です。その辺りについては以前「ねじれた祈り」の記事で書いたことがあります。
しかし、それらがアンサンブルとなった「ホーンセクション」をひとつのパッチで表現する際、本物に近い音は却って迫力に欠け、機械機械した造りモノっぽい、いかにも「シンセで出してます」といったようなホーン・セクション・パッチを使用した方が曲に馴染むことが多いんですよね・・・。
(どうしてもホーン・セクション音それ自体を本物に近づけたい時は、トランペットなど楽器パッチをひとつひとつ分けて弾いてミックスする労を必要とします)

この「シンセ・ブラス」は特にロックなナンバーとの相性が良く、80年代から今に至るまで、隆盛を誇っています。
フレージングにもいくつかコツがあり、4拍目と次小節の1拍目に2音、刻むようにしてシンコペーションで弾くと曲が盛り上がる、という手法もそのひとつです。
「俺たち最高」でもその手法が所々で採り入れられていて、Aメロの

♪ 孤独の中 泣き叫んで 傷つき殺し    あい ♪
  A                                           Bm  A

の「Bm→A」の瞬時のコード・チェンジを強調する役目を果たしたりしています。
このシンセサイザーの手法導入例は洋楽でもとても多いのですが、僕がすぐに思い出すのは、「フットルース」。
高校3年生の時に文化祭でバンド演奏したっけ・・・お恥ずかしい。しかもこの曲だけワガママを言って楽器担当チェンジしてドラムを叩かせてもらいました。イントロで目立ちたかったみたい・・・。

このシンセサイザーの効果も含め、冒頭いきなりのサビ部と続くAメロは、ジュリーの力強いヴォーカルと共に、勇壮なイメージを受けます。
Bメロの

♪ 過ぎゆく雑踏の中 さまよえば ♪
  F#m     B          D7        C#7

からはイ長調から嬰ヘ短調への近親転調となり、特にドラムスが雰囲気を変えてきますね。
そしてこの曲にはBメロ直後にももうひとつの展開部があります。

♪ 空に手をかざしたら 愛こそが ♪
  F#            G#m       C#7    F#

これはいかにも白井さん、という感じの転調です(嬰ヘ短調から嬰ヘ長調への平行移調)。この部分で伊豆田洋之さんのコーラスを目立たせて・・・というところまで考えて作曲したのかもしれません。
そういう意味では、編成楽器はガラリと変わっていても、前作『greenboy』からの確かな流れも感じられるのです。

さて「俺たち最高」、とはまた大上段でインパクトの大きいタイトル。
僕の不謹慎な東京ドーム体験第一感を抱かせた要因は、この曲の詞にもありました。軽く受け止めるとね、脳天気過ぎるような感じがしましてね・・・。
今はもう大丈夫ですよ。色々な意味で、鍛えられましたから!

作詞は三木さつきさんですが、ジュリーの詞かと錯覚させるような独特の不思議な感覚があるように思います。
冒頭の

♪ どイツもこイツもイカれてる それが最高さ ♪
  A         Bm      F#m      D   C#m   E  A     E7

の、「どイツ」「こイツ」の仮名づかいとか、歌詞カード見なきゃ分からないですよね~。

あと、この曲はジュリーの指笛が素晴らしい!
よくあんなキレイに音出せますよね~。

恥ずかしながら『ジュリー祭り』での僕は、あの指笛に気がついていませんでした。いや、音は聴こえていたはずですが・・・たぶん無意識に、キーボードで出している装飾音だと認識していたんじゃないかなぁ。
で、『ワイルドボアの平和』を観た時に、「ジュリーの指笛だったのか!」と遅ればせながら驚いたものです。

ちなみにこの指笛が炸裂する箇所・・・「ジャジャッ、ジャ~ン♪」というフレーズの演奏部は「E→G」という曲中でこの瞬間にしか登場しない鋭角的なコード進行になっていて、これもまた、白井さんらしい作りだなぁと思います。

最後に。
僕が今回『ジュリー祭り』のセットリストから「俺たち最高」をお題に選んだのは、「もしあの時ジュリーのツアーに行っていたら」と考えたことと、鉄人バンドとの絆へと至る、ベースレス・スタイルへの最初の挑戦であること。この2つの要素が大きいですが、実は最初にこの曲を「書こうかなぁ」と考えたきっかけは・・・。

ぱん、ぱん、ぱぱぱん♪

という、ハンドクラップ(手拍子音)のイントロを聴いてね。
・・・勘の良いかたは分かったかな?
みなさま、このハンド・クラップのリズム、ごくごく最近耳にしていませんか?

そう、老虎ツアーで歌われる「サティスファクション」での、ピーのドラム・ソロと同じなんです。

武道館公演で映像録りがあるのなら、ピーのドラム・ソロ部で1万人の「ぱん、ぱん、ぱぱぱん!」を記録に残したいんだけどなぁ・・・。
「俺たち最高」のイントロで練習しておけば、間違いありません。まったく同じですから。

ちなみに「俺たち最高」はサビ部にこのハンド・クラップのリズムが採り入れられ、エンディングでもキレイに4拍目の「たん!」で演奏を終わるという徹底ぶり。
ジュリーはLIVE志向ですから、潔くスパ~ン!と演奏を終える曲はとても好みなのではないでしょうか。
ということは・・・「俺たち最高」をこの先LIVEで聴く機会はまだある、と考えられます。

宝物のような『ジュリー祭り』セットリストの中、僕にとっては、ヒヨッコ状態で臨んだ東京ドームのリベンジを果たしたい曲のひとつです。
いつか必ず~!

| | コメント (19) | トラックバック (0)

« 2011年11月 | トップページ | 2012年1月 »