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2011年10月

2011年10月31日 (月)

[ 伝授・特別編 ] 10・30『沢田研二LIVE 2011~2012』大宮ソニックシティー セットリスト&完全レポ

(註:今回もずいぶん時間をかけてしまいました。申し訳ありません~。
11月17日、ようやく当記事は完成いたしました。これまで更新途中にもかかわらずたくさんのコメントを頂き、ありがとうございました!)

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今回も、ネチネチとまいります。
他のブログ様のように、何回かに分けて記事更新することも考えましたが・・・なんだかここまで来ると、まとめて大長文に仕上げなければならないような使命感が(汗)。

「今回は携帯何分割まで行くのか」
と、楽しみにしていらっしゃる方がいるかもしれないですし・・・いや、それはさすがに気のせいですか。
携帯でご覧のみなさま、すみませんすみません。


(註:当記事コメント欄にて、伊東家?様より携帯での更新チェックについての伝授がございました。ありがとうございます。携帯からお越しのみなさま、是非お試しくださいませ~)

ともかく、老虎ツアーはこれから
札幌、そしていよいよ仙台へと続いていきます。
この大宮レポはまだその時点では完成していないでしょうけど、これから11月の開催各地へご参加のみなさまの感想をお待ちする意味でも、畏れながら執筆途中の状態で記事公開とし、できるだけ長期に渡って多くの方々と感動を共にしたいと考えております。

基本的に記事執筆、完成を優先するため、頂いたコメントへのお返事が遅れる場合もあり得ます。
どうか、ご容赦くださいますよう・・・。

さぁ、それでは。

ジュリーのソロ・ツアーも然り、なのですが、特に今回の老虎ツアーは・・・観るたびに新たな発見があり、自分の誤った認識をその都度是正する、という状況に追われています。
前回の10・2フォーラムで万事解決!したかのように思えた「散りゆく青春」「落葉の物語」のチェンバロ・パートにまたもや「???」マーク満載で帰還いたしました~。
そして、柴山さんが今回のツアーでSGをまったく使用していなかったことにも、この日まで気づいていませんでした。しかも、自力ではなく打ち上げでの席でたまたま話がそこに行って、みなさまに指摘されて気づかされたという。
僕の脳内に記憶としてうっすらとあった、赤いメスのクワガタは幻か・・・。

さらには、留まるところを知らないピーのドラムス、サリーのベースの進化はこの日も・・・。
本当に、凄まじいことになっています。
あの曲では、「そう来たか!」という新たなアレンジの工夫がなされていたり・・・。

そういった辺りを、いつものように1曲ずつじっくりと書いていきたいと思います。

さて今回は、残念ながら一緒に参加予定だったYOKO君が無念の欠席。
代わりに参加してくださることになったのは、anpu様にご紹介頂いた、静岡から遠征のお姉さまです。
チケットが現地受け渡しのお約束でしたので、割と早めに家を出ましたが・・・いきなりJR武蔵野線が止まりました~。
ヒヤリとしましたがすぐに動き出し、埼京線に乗り換えいざ大宮へ。余裕で到着できました。

それにしても、プレプレツアーで散々迷った挙句、その時は着いたら着いたで「なんだ、こんな簡単な道のりだったか」と思っていた大宮ソニックシティー。
今回、駅構内が工事をしているだけでまたもや右も左も分からなくなるという僕の方向音痴って、我ながら相当なモンだと思う・・・。

おとなしく、駅でanpu様達をお待ちすることに。
無事合流し、会場に着き、チケットも無事にお嫁入り完了。
ひと安心し、入場です。
顔馴染みのみなさまと次々にご挨拶しながら(akichanご夫妻とは、どんな広い会場でも必ずお会いするなぁ・・・。前日甲府のお話を色々と伺いました。ありがとうございます!)開演を待ちます。毎度のことながらワクワクする、楽しいひとときです。

照明が落ち、「G.S. I LOVE YOU」が流れると、早くも沸き起こる拍手。
そう言えば、初日にご挨拶した27年ロマンス様・・・本当に開演を楽しみにしていらして、いよいよ始まる!となった瞬間に、ご自身のブログ・タイトル曲がBGMに流れたという状況だったのですね~。
どんなお気持ちだったのだろう、と遅まきながらそんなことを考えてました。

大宮、開演です!

1曲目「ミスター・ムーンライト」

何人かの先輩方が
「今日のジュリーのヴォーカルはスロースタートだった」
と仰っていました。
僕はそんなふうには感じませんでしたが、ジュリーのソロでも、ツアー中盤あたりで声が掠れたりするパターンは過去にありました。
今、ちょうどそんな時期なのでしょうか・・・。

でも、「ミスター・ムーンライト」のヴォーカルは相変わらず凄いと思いました。
9月、10月のフォーラムでは、音合わせ無しでいきなりジュリーがヴォーカルを炸裂させていたように記憶していましたけど、この日は「じゃら~ん♪」というギターのコードが鳴らされてからの演奏スタートでしたね。

ジュリーのヴォーカルが襲いかかるやいなや、熱狂の会場は2階席まで総立・・・あ、あれ?

2階のスタンディング率は半分くらい?
しかも、僕の前方はキレイにお座りのまま。

そうだよねぇ・・・全編通してスタンディングは体力的に辛い方々だっていらっしゃるでしょう。
立って観ることがすべてではありません。
ただ、僕は両隣のお姉さまが瞬時に立ち上がったこともあり、勇気づけられるようにして、後ろを気にしながらも立たせて頂きました。

ちなみにこの日、偶然にも僕のすぐ前のお席に、10・2フォーラムでもご挨拶させて頂いた、顔馴染みのNoz様がいらっしゃいました。
前方の視界はお客さんが皆座った状態・・・僕も昨年のジュリワン長野で経験しましたが、こういう時って、自分が立つべきかどうか迷いますよね・・・。
Noz様も、「立っていいの?」みたいな逡巡を背中に伺わせながらも、曲の途中で意を決して立ち上がっていらっしゃいました。
大丈夫・・・後ろの僕らはしっかり立っていますよ!

さて、僕の席の位置ですと、やはり注目はピーの全体の動き。
サビの直前・・・ギターが一瞬だけ短いソロをとっているたった3拍の間に、ピーはスティックを宙高く横に3回転させていました。
これは”円舞”ですね・・・。だって、ハッキリ丸の字を描いていますから。
改名しました”剣舞”の方はやはり、トップ・シンバルを優しく叩くシーンでの登場になるようです。それはこの曲の段階ではまだお預け。

今回の僕の席からのステージの見え方は・・・10・2フォーラムとほぼ同じ(涙)。
まぁ、フォーラムよりは距離的にいくぶん近いようで、角度も微妙に違うらしく、フォーラムではほとんど見えなかったGRACE姉さんの手元を、漠然とですが確認できます。
「ミスター・ムーンライト」では、ハイハットとボンゴだったでしょうか。

『PLEASURE PLEASURE』ツアーの大宮も今回と似たような席で、その時には泰輝さんの手元の鍵盤全面を上から見下ろすことができましたが、今回は何故か見えず。セッティングの位置関係なのかな・・・。
でも、泰輝さんの指の動きは見えます。ビートルズ・ヴァージョンに倣ったオルガン、この日も優雅に炸裂です!

ちなみにビートルズのテイク、オルガンはジョージ・マーティンではなくポール・マッカートニーが弾いていて、エンジニアのジェフ・エメリックはこの時初めてポールが鍵盤楽器を弾けることを知った、という話があります。

2曲目「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」

この曲、メチャクチャ好きになってきた~。
ピーの豪快なフィル・インからスタートし、演奏途中にサリーとピーに大きな見せ場が何度もある曲。
サリーの発音、白状しますと未だに「now」には聴こえないんですけどね・・・。

しかし、何と言ってもジュリーの楽しそうなことよ!
僕はまだこの曲の歌詞をキチンと調べていないんですけど、Aメロの追っかけコーラス部で「Do The Twist♪」って歌ってます?
ソコのジュリーのアクションがカッコいい!
両肘を腰より少し高めで左右に拡げ、親指でポーズを作ったりしてるんです。
「カサブランカ・ダンディー」に近いアクションかな・・・。これはこの日初めて気がつきました。
ってことは、10・2フォーラムよりはジュリーの姿がよく見えてるってことだよね~。

両隣のお姉さまや、真ん前のお席のNoz様が早くも盛り上がっていらしゃるのが雰囲気で伝わるので、スタンディングの少ない2階席も、僕の周りはとても爽快な感じ。

何より大宮2階席、音がイイ!
しかもサリーとタローのコーラスが凄く聴きやすいぞ~!大宮ソニックシティーのPAさん万歳!

2曲目で早くもスイッチが入り、怪しげな歌詞で追っかけコーラスに参加するDYNAMITEでございました。
思いっきり「Do The Twist♪」とか「Do The Blues♪」とか断じて歌っていましたが、歌詞全然違ってたらごめんなさい・・・。
あ、でも周りのご迷惑になるような大声では歌っておりません。観ていて軽く声が出る、というのはノリノリ気分のバロメーターなのです。

あと、10・2フォーラムの「シー・シー・シー」で気がついた、エンディング最後の最後のGRACE姉さんのタンバリン3連符打ち→そのままタンバリンごとクラッシュ・シンバルに激突、という豪快な演奏・・・これは、「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」のエンディングでも同様に炸裂していたんですね~。

3曲目「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」

Onstage

スイッチ入ってる・・・はずなんですが、ジュリーと一緒にジャンプできない・・・。
何故だ~!何を恥ずかしがってる~?
(1階席1桁なら絶対できる、と思うのも何故だ?)
しかしカッコいいよね・・・ジュリーの膝を畳んだしなやかなジャンプ。

で、この曲でアクシデントが。
2番だったかな・・・ステージ全体を観てたら、ピーの不自然な動きが視界に入りました。「あっ!」と思ったらその瞬間、左手のスティックを投げちゃった!
そして、10・2フォーラムの「割れた地球」でも魅せた必殺技・・・右手1本でフィル・イン豪打→予備スティック握り込みマジックですよ~。
しかもね、この日は予備のスティックを一度逆さに握りこんでから、上空でクルリと回転させて握り直していました。

打ち上げでご一緒したカオリー様は近くでその瞬間を観ていらしたらしく、どうやらスティックが折れてしまって、ひょい、と投げたという状況だったみたいですね。
しかし・・・その後の対応がここまでカッコイイと、わざと折っているんじゃないかとすら思えてしまう・・・。

ピーは、そのパワフルなドラムスでファンを魅了する一方で、こうしたアクシデントも多いツアーとなっています。スティックを折ることは、アタックの強いドラマーの勲章でもあるんですけどね。
そういうことひっくるめて、「俺がやるんだ!」という強い意志が感じられるのは、やっぱり演奏するのがタイガースの曲だからだと思うのです。

40年ぶりのステージ、しかも長丁場のツアーという状況を普通に考えたら、もう少しGRACE姉さんに助けてもらうよね。そうして、曲によっては休みっぽい演奏だってできるはず。
しかし、ピーはタイガース・ナンバーでそれはできないんだろうなぁ・・・。
その意気は、きっとGRACE姉さんにも伝わってると思います。サポートに徹するGRACE姉さんの姿に、それを感じさせる気迫がありますから。
タンバリン叩きながら、いつもピーを見て「いざ」という時の準備をしていてね・・・。

大宮は、柴山さんのギターもよく聴こえました。
後半に演奏される「怒りの鐘を鳴らせ」もそうですが、リード・ギターがジュリーのヴォーカルとかぶさっても、まったく歌の邪魔にならないというのは・・・1年や2年で辿り着けるものではないでしょうね。

あと、イントロ直前の音合わせの「じゃら~ん♪」というコード弾きは、柴山さんではなくタローでした~。

~MC~

「たくさんお越し頂き、ありがとうございます。全国から集まっていらっしゃるのでしょうか、それともここ大宮の方々ばかりなのでしょうか(笑)。こんなに来て頂いて、感謝いたします」
といったニュアンスの挨拶の後、ピー、タロー、サリーの順にゲストのタイガース・メンバーを紹介。
続く「そして、鉄人バンドの面々です」のコール含め、大歓声で応える会場です。
(註:ピーがオフシャルサイトで
「テンプターズのお膝元、”大宮人(オオミヤビト)”のノリは素晴らしい」
と書いてくれています。
この日の大宮ソニックシティーのお客さんの歓声、2階席も着席率高いながらも「おおっ、かなり盛り上がってるな~」とは感じていましたが、それはステージにも確かに届いていたようです。嬉しいですね!)

4曲目「僕のマリー

Tigerssingle

ジュリーのMCがまだ終わり切らないうちにサリーが「シラソ♪」と始めたので、小心者の僕は
「ああっサリー、ちょっとタイミング早い!」
と焦りましたが、バンドは全員バシッ!と合わせました。さすがだ~!

この日の「僕のマリー」はフォーラム2公演に比べてテンポが速かったかな?
テンポを決めるのは先述のベース・イントロですから、サリーがそういう気分だったのでしょうか。
そのせいか、ピーの

ずっ、ちゃ~ん♪ ドコドコドコ
ずっ、ちゃ~ん♪ ドコドコドコ

(↑伝わるのかこんな擬音で汗)

の「ドコドコドコ」が、「もうちょっと遅い方がいいんじゃあない」みたいな感じに聴こえたのは僕だけだったでしょうか。

さて、2日フォーラムの記事で触れましたが、”青い鳥”のリード・ギターを「緊張する」というタロー。僕なりに考えたタローの緊張の理由はそこで書きました。
要は、「超」が付く有名曲の宿命ということ。
みなさまにおかれましては
「じゃあ”僕のマリー”の間奏リード・ギターも同じように緊張するはず」
とお考えになるかもしれませんが・・・。

実は。
「僕のマリー」のリード・ギターは、桁外れに簡単なのです(あぁ、言ってしまった~)!

みなさま、次にご参加の会場では、「青い鳥」イントロと「僕のマリー」間奏でのタローの”指”ではなく”手の甲”の動きを注意して比較なさってみてください。
「青い鳥」では、1音1音左右に大きく移動します。
一方の「僕のマリー」では、横への移動がほんの少ししか無いんですよ。極端に言えば、手を固定して指だけ動かしていれば弾けてしまうフレーズなのです。

もちろん、簡単だからと言ってレベルが低いということではありませんよ!
そういうメロディーだということです。この間奏は、歌メロと同じ音階ですからね。

それでは、2日フォーラム・レポートで自分に課した宿題。エンディングのハーモニーについてですが。
やはり最後の「夢を見た~♪」の「た♪」・・・ジュリーは「シ」の音を出しているようです。
最高音の「ミ」はタローじゃないかなぁ。
今後の参加会場で柴山さん、泰輝さんを注意して観てからでないと、ハッキリとは言えませんけど・・・。

5曲目「モナリザの微笑

Tigerssingle

2日のフォーラムでは、タローのハーモニカ演奏にオクターブ移動がありましたが、大宮ではすべて同じ音階でした。
安全策をとった(?)だけあって美しいフレーズが安定し朗々と奏でられます。最後の最後の一瞬に1音だけ、半音(だったかな?)低い音を出してしまいましたけどね~。

でも・・・タローは今回「間違ったら分かりやすい」パートを一手に引き受けているような・・・。
そういう役目を自然に担う立場にある、というのもタローの温和な、まとめ役としてのキャラクターを伺わせます。
たぶんサリーも、たまには演奏を間違えたりしているのでしょうが、聴いていて素人には分からない部分が多いのでしょうね。

ピーの”トップシンバル剣舞”は相変わらずのカッコ良さ。
四十肩のDYNAMITEとしましては、65歳のピーが腕を天高く「ビシ~ッ!」と伸ばしているのを観るだけで、己の情けなさを痛感してしまいます。

で、セットリスト予想の記事でも書きましたが、「モナリザの微笑」のドラムスの見せ場のひとつに、歌メロの最後部

待って~~~い~~~る~~~♪

のトコで、それまで淡々と優しく演奏されていたのが、突如激しいアタックでオカズを叩く、という箇所があります。
オリジナル音源ですと

どんたかたっか♪

という、ビートルズの”「テル・ミー・ホワット・ユー・シー」仕様”
(←お祭り系オカズとも言う)
しかし今回のツアーでピーは

たん、たかたか♪

という”「老虎再来」仕様”でキメてきます。
こっちの方が曲の雰囲気には合っているかもしれませんね。ジュリー曰く「グッと気どった感じ」の曲なのですから。

6曲目「
銀河のロマンス

Tigerssingle_2

この日、己の誤った認識&不明を恥じる最初の「えっ?」は、この曲で襲ってきました。

僕は今回の記事冒頭で
「チェンバロ・パートに???で帰ってきました」
と書きましたが、ここでいうチェンバロ・パートとは「散りゆく青春」「落葉の物語」のことでございまして、じゃあ何故「銀河のロマンス」でそんな話が出てくるかというと。

10・2フォーラムが終わった時点で、僕は
「あのチェンバロみたいな音は、GRACE姉さんが鉄琴のような楽器を叩いて出しているんだな」
と考えました。
かの様のサイトで、GRACE姉さんのセッティング画像を見たからです。

そして大宮では、辛うじてその鉄琴の形状と、GRACE姉さんがそれを演奏する姿を確認できたのです。
それが・・・思いもしなかった「銀河のロマンス」で!

しろい、こぶ~ね~♪

のヴォーカル後にすぐ続いて

シ♭・ラ・ソ・ファ・ミ・レ・ソ~♪

と、追いかけるようにしてGRACE姉さんが鉄琴を叩いていました。その瞬間についてはハッキリ見えましたから、間違いありません。
これは、オリジナル音源にも渋~く登場する音階パートなんですね。

で、GRACE姉さんの出した音というのがね・・・。
まんま、鉄琴の音!
キラキラとした、甲高い音です。つまり、チェンバロのような独特の濁りはまったく無い音色なのです。
じゃあ、「散りゆく青春」「落葉の物語」のあの音は、一体何で出しているのか・・・。

謎に包まれながら頭をひねっている間に、曲は終わってしまいました。

途中で
「ジュリー・マイ・ラヴ♪のシャウトは、意外と先輩方はあまりやらないんだなぁ」
とか
「ピーの”トップ・シンバル剣舞”は、本当に騎士が剣を舞わせているみたいだなぁ」
とか、色々と考えてはいましたけどね。

とりあえずその疑問はセットリスト後半に持ち越すことにして、気をとり直します。

そうそう、2日のフォーラムでは聴こえ辛かった「しゃ・ら・ら・ら・ら・ら・ら~♪」のGRACE姉さんのコーラス、大宮はバッチリ聴こえました。
オリジナル音源より1オクターブ高い声になっているんですね。さすが女声です!

7曲目「坊や祈っておくれ

Tigersbox

フォーラム2公演と比べても、大宮での「坊や祈っておくれ」は格段に良かったと思いました。何と言っても、サリーとタローのコーラス・パートがハッキリ聴こえた、という音響の素晴らしさが大きいです。

この曲はまずジュリーが1番をソロで歌った後、展開部を3人で歌い出すその瞬間が、一番の聴かせどころではないでしょうか。
それまで伴奏していた泰輝さんのピアノも、1小節+2拍に渡って完全に消え、「声」だけで曲が進行します。楽器が鳴っていないにもかかわらず、「バ~ン!」と音圧が増す感覚には震えました。

トッポが不参加の今ツアー、後追いファンが体験したことのない「タイガース黄金のハーモニー」を最も堪能できるのは、この曲。
やはり3人それぞれの声を聴き分けられるような音響バランスは、とても重要だと考えます。
この先の会場でも、大宮と同じくらいのバランス設定で、多くの方々が「坊や祈っておくれ」を聴けると良いのですが・・・。

ちなみにこの曲の途中、2拍目と4拍目で、ほんのかすかにピーがハイハットを踏んでいるのを確認できました。ハイハット(向かって左端の二重になっているシンバル)が微妙に閉じたり開いたりしているのが見えたのです。
2階席ではまったく音は聴こえませんが、ステージに近いお席のみなさまの耳には、ひょっとしたら小さな小さな「チッ、チッ・・・」という音が届いていたかもしれませんね。

~MC~

結構長いMCでしたね~。
詳しい内容は、各地のじゅり風呂さんがすでに書いてくださっています。僕のトコは、何とか思い出したシーンを少々。

ここでのMCは初日からずっと引き続いての、ジュリーとゲストであるタイガースのメンバー3人とのおしゃべりタイムでした。

サリーは
「30年ぶりにステージでベース弾いてますが・・・(見ていて)大丈夫?」
とお客さんに問いかける一幕も。
もちろん大拍手で応える会場。僕も手が痛くなるくらい拍手しましたよ~。

ジュリーは
「色々ベース持ってるのに、肩が凝るから一番軽いの持ってる」
と、からかいます。

それではここで説明!
タイガース時代からのトレードマークだったという、サリーのバイオリンのような独特の形をしたベース・・・ヘフナーって言うんですけど、これ、ベースの中では抜きん出てボディーが軽いんです。

ビートルズのポール・マッカートニーが、同じくヘフナーのベースをトレートレードマークにしていましてね。
ベースって基本的にギターより重い楽器ですから、ヘフナーを弾いたことのない人は、ポールがよくベースを片手で高々と持ち上げて歓声に応えるシーンを見て「ポールって凄い力持ちだなぁ」って思ってることが多いんですって。
実は、メチャクチャ軽いんですよ、あれは。

それと・・・ネックやフレットの形状から、ヘフナーは指の短い人でも弾き易いということでも有名ですが、サリーって指短いのかな・・・?

ちなみに、僕は打ち上げでもそんなウンチクを語り、調子に乗って
「まぁ、柴山さんのSGも相当軽いけどね~」
なんて話していたら

「今回はSG使ってないよね」
「ええっ?!マジですか~!!」

という話に繋がったのでした。お恥ずかしい・・・。

サリーに続いては、タローとのおしゃべり。
「(30年ぶりのサリーに対して)こちら(タロー)はずっとLIVEを続けてます。次はいつ?」
と話を振るジュリー。

タローの話によりますと、銀座タクトの11月公演は、もう予約が一杯で入場できないんだそうです。これから「行ってみようかな」というファンは、12月のクリスマスLIVEにお越しください、とのことでした。

で、その11月21日の公演は、タローのバースデー記念LIVEなんですってね。
ジュリー曰く
「お祝いごとは、遅れてやってもエエんですよ」
と。
「LIVEは27日。でも本当(のタローの誕生日)は17日で」
と言ったら、タローが苦笑いするように
「18日!」

「あ・・・間違えた!」
と焦るジュリーに追い討ちをかけるように、タローは右手を「チッ、チッ」としながら
「17日はね、裕也さんや」

「聞きたくなかった・・・」としょげるジュリー。

タローが
「僕は、625(ジュリーの誕生日)を覚えてるよ。(サッ、とジュリーの方に向き直って)・・・ひとつ違い!」
と、ジュリーと自分を交互に指さして強い口調で言うものですから、これまで各会場でタローのことを「ワタシより2つ上!」と紹介し続けてきたジュリーはまたもや一瞬焦りますが
「あ、今は、ってことね!また間違えたかと思ったやん~」

そしていよいよ
「こちらは40年ぶりです」
という、いつもの紹介から始まったピーとのやりとりでは、恒例・ピーの中国語挨拶をジュリーがまた適当に

「大変興奮してます、と言ってます」

と翻訳したら、ピーが
「そう!合ってる!」
だそうで。

これは、打ち合わせ無しだと思いました。
ジュリーが「そうなの?」みたいな雰囲気で、素でピーを振り返ったように見えたのです。

広島での「坊や祈っておくれ」の拍手の話の流れで、ピーからファンの伝言話も出ましたけど、ちょっとドキリとしたジュリーファンの方々も多かったのかな?
ジュリーは、ファンのことはステージで口に出さない人ですからね・・・。

ただ、ジュリーならばきっと何もかも最初から解っていますよね。
それでも、ピーや、広島への思いを持つ方々、そしてこの日のお客さんに気を配った応対のジュリーでした。
ソロLIVEでは観られない、珍しいシーンだったとも言えるのかな・・・。

「それでは、次の曲はタローが歌います。ビコーズ!」

8曲目「ビコーズ」

3回目のツアー参加となり、新規ファンの僕も、いよいよタローのヴォーカルに馴染んできました。
ジュリー・ヴォーカルではない曲として、ピーの「ジャスティン」とタイプが違うのがイイですね。つくづくバランスの良い選曲だと思います。

ジュリーはコーラスしてますっけ・・・?
よく見えないんです(涙)。

ピーのドラムスでは、スネアの演奏に時折3拍と4拍の連打が交ざってくるのがイイですね~。
基本的な演奏リズム・パターンである

つつたつ、つつたつ♪

というエイトビートの中に、おそらく自由なタイミングなのでしょうか、

つつたた、つつたん♪

というフレーズが採りいれられています。
昔からそんなふうに叩いていたのかなぁ。僕はタイムリーでタイガースの演奏を知らないですから、色々と大事な考察が抜け落ちてしまっているのかも。

それにしても・・・タローとピーは今ツアーで1曲ずつ歌ってくれたけど、サリーはやっぱり最後までリード・ヴォーカル曲はやらないのかなぁ。武道館でもダメかなぁ。

移動のバスの中、寝ているサリーの耳元でピー達が「歌って、歌って」と囁いているらしいですが・・・。
他のメンバーがその気ということで、ファンとしても最後まで期待を持ち続けたい、と思っています~。

9曲目「
サティスファクション

「ビコーズ」の後で、ジュリーが「盛り上がっていくぞ!」と声を上げてからのギター・リフ・イントロへと繋がる進行は、初日からずっと続いているようですね。

ピーの「だん・だん・だだだ♪」に合わせての手拍子、やっているお客さんも多いことは多いんですが、まだ会場全体に浸透はしていないですね・・・武道館では是非1万人で手拍子を合わせたいシーンだと考えているのですが・・・。

10・2フォーラムで気づいたピーの”X攻撃”は、この日はゆったりモーションで披露されていました。
「サティスファクション」のピーについては、フォーラムでは目にも止まらぬ早業、大宮では大きな波のような余裕のエンディングだったと言えるでしょう。

さて、やはり僕は毎度のことながらこの曲をジュリー中心に観ています。自然に目が釘付けになってしまうのですね。
僕は10代の頃にビートルズとストーンズの洗礼を受け、この2つのバンドは特別だという思いが人生において継続してあります。
ですからたまに他のバンドやアーティストがビートルズ・ナンバーやストーンズ・ナンバーをカバーしているのを聴くと「けっ!」とか思うのが常でした。オリジナル音源があまりに身体に染みついていて、それ以外の音や声を受けつけないのです。
これは、タイムリーなタイガース・ファンの先輩方がタイガース・ナンバーに対して思っていらっしゃるのと同じ感覚ではないでしょうか・・・。

しかし、これは『ジュリー祭り』より以前の話(ポリドール時代のCDを聴きまくって、それだけでジュリーファンになったように思っていた時期)になりますが・・・ジュリーがビートルズ・ナンバーやストーンズ・ナンバーを歌うことにまったく違和感を感じない自分に、大変驚きました。
やはり僕には、ジュリーファンとしての資質だけは、どうにかこうにか備わっていたようですね・・・。

今ツアーの「サティスファクション」では、タイガースのメンバーもジュリーの凄まじいアクションに感化されてしまうようで、タローがギターをブンブン振り回したり、サリーがその場足踏みをしたり、とステージ上の個々のアクションにも見所が多いです。
それでも気がついたらジュリーばかり観ています。
「サティスファクション」は、タイガース時代から既にジュリー独壇場のナンバーだったのかもしれないなぁ、と後追いファンの僕は想像していますが・・・どうだったのかな?

10曲目「ジャスティン」

「ひとみ・みのる~~~ッ!」
というジュリーの雄叫びに続いて、ピーが
「ジャスティ~~~ン!!」
と甲高くシャウトしてのイントロ導入でした。

さぁ、大宮のお客さんのうちの多くが
「今日はピーは誰をダンスに引っ張り出すのか」
と、楽しみに待ちかまえていたのではないでしょうか。

静岡公演でピーに
誘われた柴山さんが見事なダンスを披露し、世の鉄人バンドファンの間ではそれでも、「泰輝さん、柴山さんまでは充分あり得ても、まさか下山さんを踊らせる流れにはならないだろう」と半分は考えていました(たぶんね)。
ところが1週間空けて次会場の甲府。
カミさんが遠征参加していたのですが、「下山さんが踊った!」と速報メールが届きました。

翌日大宮に参加のJ先輩、J友さんの間ではその瞬間から
「明日は誰だろうか」
とのやりとりが行き来しましたね・・・。

実は僕は「GRACE姉さんはナイだろう」という考えでした。
ピーは女性にはジェントルマンで通すのかなぁ、と。
大宮では、また一巡してサリーに戻るんじゃないか、と予想していました。

しかし。
いつものようにジュリーの「瞳みのるの将来はみなさまの声の大きさにかかっている!」という脅迫コール&レスポンスに続いて、いよいよ仁王立ちとなったピーの出番。
「今日の(ダンス)ゲスト・・・グレース!」
という鶴の一声が・・・。

GRACE姉さんは瞬時に椅子の上に立ち上がり、若干恥ずかしそうにしながらも、大きく両腕を上下させてのモンキーダンスを披露してくれました。

で・・・当然ながらその瞬間にはドラムスの音が消えまして、泰輝さんがピアノのフィル・フレーズを小節の最後のタイミングに入れるような形で何とか譜割を持続させていました。
と思ったら。
ジュリーがだだ~っ!とドラムセットに駆け寄り、泰輝さんがキープさせていた譜割りとまったく関係の無い滅茶苦茶な起点から、いきなりドラムス演奏を始めるじゃないの~!!

キック無しのエイトビート!

技量がどうのこうの以前に・・・貴重です!
カッコイイのです!

ジュリーが、今ツアーに向けてのドラムスの練習を(おそらく)まったくしていなかったことは、この日の演奏から判明してしまいましたが、とにかく貴重なシーン。
これはピーとGRACE姉さんが二人ともドラムスから離れていなければあり得ない状態なのですから。

札幌ではピーの求愛ダンス・シリーズが一時中断したようですし、ツアーを通じて大宮限定のシーンになる可能性が高いです。
参加のみなさま、大変な得をしましたね~。

ジュリーのドラムスが危なっかしいと思ったのか、モンキーダンスのGRACE姉さんは短い時間でスッと椅子に戻り、ジュリーのエイトビートの譜割りに見事に合わせた豪快なフィル・インから、「ダンスでは物足りない!」とばかりに4小節ほどのドラム・ソロを熱演しました。
その間、何とジュリーのエイトビートがGRACE姉さんのソロをバックアップしていたということにもなり、これまた大変貴重なシーンとなりました。
すべては、ピーの求愛ダンス・シリーズのおかげでございます~。

ピーは、見事にダンス披露から楽曲のリズム収拾までをもこなしてくれたGRACE姉さんに
「いきなりの指名で怒ってないかな?」
みたいな感じで、さかんに様子を窺っていました。

GRACE姉さんのドラムソロが終わり、ジュリーがステージ前方に戻ってきて、曲が通常のリズムに戻った後
「グレース、サンキュ~!」
と叫ぶと会場は大拍手。
もう一度チラッとGRACE姉さんに視線をやって
「グレース、グレート!!」
と大絶賛で謝意を示すピー。やっぱり、女性には気を遣っているということかな?

ツアー後半へ向けて、今後「ジャスティン」がどういう方向へ向かっていくのか・・・注目していきたいところですね~。


(11月6日註)
札幌ではご指名無しヴァージョンだったようですが、昨日の仙台で突如ピーの求愛が復活したとのことです。ピーのご指名を受けたのはサリー。
で、僕はこのピーの指名がサリーから始まったものと思っていたのですが、これは泰輝さんからスタートした流れだったそうです。ということはピーのご指名は仙台以降ランダムに再始動したということ・・・今後いつ、どの会場で誰が踊るのか、まったく予想ができないということになりますね・・・。

~休憩~

大宮でもこの休憩タイムに何人かの先輩方とご挨拶させて頂くことができました。
また、Noz様にはこの時間に、1971年1月24日に参加できなかった時の思いを聞かせて頂きました。
つくづく、今こうしてツアーが行われていること・・・後追いファンの僕は、ここへきて「奇跡」と感じるよりもさらに、に不思議な時間の流れに思いを馳せてしまいます。僕が知らなかった世界の、そのままではないけれど確かにかつて存在した”タイガース”をとりまく空気とほぼ同じ空気を今実際に体験していることで、LIVEの最中ふと、僕にとってはまったくあり得ない既視感すら覚える瞬間があるのです・・・。

11曲目「淋しい雨

Tigerssingle_2

初日、この曲を体感した際には、”鉄人バンドを加えたタイガース4人が、リリース当時の音源を再現してくれている”という歓びの感想を持ちました。
それが・・・大宮では、むしろレコード音源とは違った演奏箇所を探し求める自分がいて、そんな細かい部分に魅力を覚えるようになってきました。

例えばキーボードがホーン・セクション・パートを一切排している点。
それにより、レコード音源では聴きとりにくくなっているベースとピアノのアンサンブルが、今ツアーでは強調されているように思います。

また、ピーのドラムスはオリジナル音源にかなり近い演奏なのですが、それがかえって”オリジナル音源の演奏”(これがピーの演奏なのかどうか、未だに結論を出せずにいます)との違いを浮き上がらせているように感じてなりません。
ハイハットの手数が違う。
キックの跳ね方が違う。
そもそも、イントロの初っ端で「ドコドコ♪」と鳴るフロアタムの連打も、感触が微妙に違う気がする・・・。

ただ、それはもしかしたら、ツアー初日からピーのドラムスが進化しているというだけのことかもしれません。
僕は初日には確かに、「オリジナル再現」の魅力を感じていたのですから。変わってきたのは、ステージのメンバーの方かも知れないのです。

10・2フォーラムのレポートにも書きましたが、転調直後、コーラス抜きの純粋なソロ・パートになるジュリーのサビのヴォーカルが、相変わらず素晴らし過ぎます。
タイガースの大きな魅力はコーラスワークにあることは確かですが、それ故に、コーラス中心の楽曲の中で「ひょい」と姿を表すジュリーのソロ・パートは、分かっていても一瞬ドキリとするほどに目立つんですよね・・・。

12曲目「風は知らない

Tigerssingle


僕は、この曲の直前にピーが上着を脱ぎ、さらに「花の首飾り」直前にもう1枚脱いだように見えていたのですが・・・どうも各地の情報を拝見しますと、それは記憶違いのようです~。
10・2フォーラムとゴッチャになってしまったかな・・・。

大宮では、この曲ではまだピーの”鬼神ロール”はお預け(”トップシンバル剣舞”は当然出ましたけどね)。
その代わり、というわけでもないですが、とにかくタローのコーラスがよく聴こえます!
トッポのパートを歌っているのがタローのようです。
タイガースについて何も知らなかった僕は、この曲のオリジナル音源で「これがトッポのコーラスの声!」と何度も繰り返し聴きながら、リード・ヴォーカル以外のトッポの声を覚えようとしていたものでした。
今ツアーで聴こえてくるのは、そうやって耳に馴染ませてきた声ではありませんが・・・やはり「風は知らない」のコーラス・パートは新規ファンながらの思い入れもあり、とても好きな音階です。

一方でサリーの声も聴こえていたはずですが、注意していなかったみたいで・・・そこは次回、リベンジしなければいけませんね。

ところで僕は、今ツアー後半1曲目「淋しい雨」と2曲目「風は知らない」の両曲・・・ジュリー言うところの「隠れた名曲」ということになるのでしょうが、一昨年、昨年という段階で既に拙ブログのお題として採り上げていました。
今読み返すと・・・何ということでしょう!
何人かの先輩方が、記事に頂いたコメントの中で、ズバリ「淋しい雨」「風は知らない」の2曲を並べて挙げ、強い思い入れを語ってくださっているのです。


今回のセットリストはジュリーが決めたようですが、「タイガースの隠れた名曲」としてのこの2曲に対する思いを、ジュリーとジュリーファンの先輩方が同じように40年間持ち続けていたことが証明されたようで、今さらながら感動いたしました~。

13曲目「散りゆく青春」

Tigerssingle_2


さて、問題はこの曲です。
イントロから流れるチェンバロのような音色のアルペジオ・・・CD音源とほぼ同じ音階だと思いますが、10・2フォーラムのレポートでは、GRACE姉さんのセットにある鉄琴のような楽器が出しているもの、と結論づけました。

でも、どうも違うようなのです・・・。

ハッキリとは見えませんが、鳴っている音とGRACE姉さんの動きが合っていないんですよ。
(この時点ではまだ「よく見えていないだけかもしれない」と思っていましたが、アンコール時の「落葉の物語」を見て「確実にGRACE姉さんではない!」ということは分かってしまいました)

そうすると問題は泰輝さんの左手ということになってきますが・・・。
10・2フォーラムでもそうでしたが、僕の位置からはキーボードが一台しか見えないのです。
もし、”キーボード一台体制”というのがこれまでの僕の誤った認識で、本当は席から死角の下段位置にもう一台のキーボードが隠れているとするならば、泰輝さんが左手でアルペジオを弾いている可能性を考えなければなりません。
しかし、とにかく見えないのですよ・・・(泣)。

そんなこんなでGRACE姉さんと泰輝さんの動きばかり気にしていたものですから、各地で先輩方ご指摘の「散りゆく青春」歌詞間違いにも気づくことができませんでした・・・。
ただ、「散りゆく青春」のジュリーのヴォーカルは、初日と比べるとかなり全体の流れ・・・特に「花の首飾り」への繋がりとして最適であることが、客席側からも馴染んできたのかな。
棘の無い、安心感を抱かせる良質なポップ・チューンなんですよね。

ようやく後追いの僕にも、その辺りの感覚が沁み通ってきたように感じます。
タローらしい、朴訥な短調のメロディーが心地よい・・・今さら僕などが言うまでもないことですが、「散りゆく青春」は、ジュリーのヴォーカルが自然に引き立つ名曲ですね。

ちなみに、「風は知らない」でスルーされてしまったので
「あぁ、今日はピーの”鬼神ロール”は『割れた地球』までお預けだな~」
などと油断しておりましたら、いきなり
「だけどそ~れも♪」
の直前で「ドゥロロロッ!」と来ました!

ピーはおそらく今、どんな曲であろうと、ちょっとした気持ちの入り方で手なりに”鬼神ロール”が繰り出されるような状態なんだろうなぁ。
そのことだけとっても、ピーのドラムスはやはり、初日と比べると格段に進化しているようです。

14曲目「花の首飾り」

Tigerssingle

ジュリーがこの曲を歌う、というサプライズに対するどよめきの雰囲気は、ここへきてさすがに無くなってきました。
あるのは、ジュリーのヴォーカルを聴き逃すまい、という会場の集中した空気です。

ヴォーカル以外にも、色々とオリジナルとは違う「花の首飾り」。
イントロの柴山さんのギターに微かな歪みがあったり、ピーのキックが16分音符で跳ねていたり。
初日は気づけなかった、このメンバーならではのアレンジに、今さらのように耳を奪われます。
僕もジュリー・ヴォーカルの「花の首飾り」に慣れてきたということかな?

「からみつくように♪」と歌われる箇所、ピーの”トップシンバル剣舞”炸裂もあったりするので、今回のステージでのこの曲の一番の見所だと思っていますが、ジュリーのヴォーカルは”情景”が浮かぶんですね。
一方で僕は”願い”が浮かぶトッポのヴァージョン(2人のヴァージョンを比べた時、僕にはそう聴こえる)も、いつかきっと生で聴いてみたい。

ジュリーが
「(全員揃ってタイガースを名乗ることを)あきらめていない。かつみもシローも、他のメンバーも同じ気持ちだと思っています」
と言うからには、僕もそう思おう・・・。
今度の武道館で、というのはさすがにもう無理かもしれないけれど、楽しいことを素直に信じこみ待つことを、僕は「恥ずかしい」とか「叶わなかったらと思うと怖い」とか、そういうふうには考えないんですよね・・・。

15曲目「割れた地球」

Human


凄かった・・・。
ピー渾身の”鬼神ロール”が、大宮では一体何度炸裂したことでしょう。

今となっては、自分の記憶違いか?と思ってしまうほどなのですが・・・初日の「割れた地球」では、”鬼神ロール”は一度も登場しなかったはずなんです。
僕は初日、次曲「怒りの鐘を鳴らせ」でようやく、「やった!ピーのロールが遂に生で聴けた!」と感動していましたからね。

それが大宮の「割れた地球」では、炸裂に次ぐ炸裂。
考えてみれば、楽曲の性質上「怒りの鐘を鳴らせ」の場合は、ロールを繰り出す箇所はほぼ決まっていて、Aメロ頭のフィル・インに限定されているんですよね。
対して「割れた地球」は自由度が高く、ピーの気持ちが入った箇所で”鬼神ロール”をオカズとして自然に組み込むことが可能なのでしょう。
これは、初日に気持ちが入っていなかったということではなく、やっぱり「キンチョ~の夏」だったのでしょうね。

ツアーを重ね進化したピーは、「割れた地球」の演奏自由度を最大限に生かして暴れ回っています。
初日から間を空けて再度ツアーに参加した方々は、「割れた地球」だけとっても、ピーの進化に本当に驚くんじゃないかなぁ・・・。

ピーはこの曲で(ピーの側から見て)右端のトップ・シンバルを打つ際に、身体を斜め左に倒して「ぱし~ん!」と打ちます。そのせいで、右手がピ~ン!とまっすぐに伸びるように見えるのです。
これは、他の曲での”トップシンバル剣舞”の時もそう。
腕がまっすぐにきれいに伸びて、頂点から振り下ろすような感じです。
つまり、ある起点から優しく振り下ろす、激しくなぎ倒す・・・それぞれの瞬間、まるで時間が止まったかのようにピンとしている姿勢が、カッコイイのですね。
ピーは65歳ですよ。信じられないほどの美しい姿勢です。

そこで僕はピーのことを語る時、”魅せるドラマー”として表現しようか、と以前から考えていたわけですが、その表現だけだと何かが足りない気がして、悩んでいました。
そんな折、先日コメントをくださったBIS様が「パッション」という言葉を使っていらして(それはピーのダンスについての表現だったのですが・・・)、
「そうだ、それがピーのドラミングを最も言い当てた言葉かもしれない」
と、今考えているところです。

と言うのも・・・僕が今回のツアーでピーのドラムスに魅せられたのは、テクニックやパワーによるところではないのです。
ピーは、超絶テクニックが身上というわけではないですし、パワフルではあるけれど、それを誇示するようなタイプでもありません。
”魅せる”ということも含めて、”タイガース・ナンバー、タイガース・レパートリーへの情熱”・・・それがピーの演奏の魅力を語る際、とても重要な点のように思えてきました。

きっとピーのドラムスは、タイガース・ナンバーだからこそ光るのです。
ここまで自身の所属バンド・サウンドに特化したドラマーというのは、ローリング・ストーンズのチャーリー・ワッツと双璧ではないでしょうか。

初日のレポートで予告しましたが、僕はこの大宮のレポートが終わったら、「割れた地球」をお題に採り上げ、楽曲考察記事を執筆する予定です。
ツアーに参加なさったみなさま、「割れた地球」のリズムに独特な感じを覚えませんでしたか?
他の曲でリズムにまかせて普通にノッている時と、微妙に違う、ズレるような感覚。
秘密は、ピーの変則スネアドラムにあるんですよ~。
その辺りを、微力ながら頑張って解説したいと思っています!

大宮での「割れた地球」は、ジュリーのヴォーカル、サリーのベース、柴山さんのギターも相変わらず素晴らしかったです。
そして、僕はまだ今ツアーで良席に恵まれず確認できていないのですが、おそらくタローがギターコード・カッティングを担当しているはずなのです。
そのコードが、レコード音源と同じく普通のハイコード・セヴンスなのか、それともジミヘンコード(セヴンス+ナイン)にアレンジしてあるのか(その場合、「everyday Joe」での柴山さんのフォームの、半音上を押さえているのではないかと予想していますが・・・)。
今後参加予定の会場で、もしタローがよく見える席に恵まれたら、是非確認したいと思っているところです。
(後註:横浜で確認できそうです!)

16曲目「怒りの鐘を鳴らせ

Tigerssingle

初日直後は、「割れた地球」が終わってすぐに鐘の音が鳴ったように記憶していましたが、10・2フォーラム、そして大宮と参加しまして、どうやらそれは記憶違いで、「割れた地球」へのお客さんの拍手がおさまりかけたタイミングで「鐘」が始まるのですね。
スポットが暗くて確認できませんけど、鐘の音も泰輝さんのシンセサイザーなのでしょう。

大宮ではほとんど10・2フォーラムと同じようにステージを観ていまして、ジュリーのド迫力、ピーの躍動、サリーのロック魂に圧倒されました。
ただ、僕は今ツアーの「怒りの鐘を鳴らせ」について、ギター3人体制でのタロー、柴山さん、下山さんのそれぞれの役割を直に確認したい、とずっと考えておりました。しかしそれは、これまで参加の3会場では、ステージとの距離があり過ぎて無理なことだったのです。

そして・・・。
実はたった今、横浜のチケットが届きました。
今までほとんど何をやっているのか見えていなかった、タローや柴山さんの手元がしっかりと確認できそうなお席です。
この良席を頂いて、一番楽しみにしているのが「怒りの鐘を鳴らせ」です!

17曲目「美しき愛の掟

Tigerssingle_2

本っ当に細かいことですが、アレンジが変わりました。

初日のレポートでピーの迷いを推測して書き、10・2フォーラムでは、このハードな名曲がタイガース・ナンバーとして回帰したことに感動、「それでもきっと、まだまだ良くなっていく」と予測した「美しき愛の掟」。
大宮での変化は、サリー!

この曲は、オリジナル音源で言うと2分20秒あたりから、ガンガンな演奏がサ~ッと後方に弾き
「ソレドレ、ソレドレ・・・♪」
というオルガン・ソロが始まります。
そしてその箇所では、注意して音源を聴くとお分かりかと思いますが、ドラムスやギターが消えている中で、ベースは存在を残し
「ソ~、ファ~、ミ♭~ファ~♪」
と1小節ごとに1音、頭打ちをしています。

大宮でのサリーはこの部分の手数を増やし
「ソ~、ソファ~、ファミ♭~、ミ♭ファ~・・・♪」
というように、シンコペーションのリズムで演奏しました。

何故なのか、考えてみました。

オリジナル音源では
「とわに君だけを~♪」
のジュリー・ヴォーカルのリフレインに向かって徐々に音量を増していく、深いエフェクト処理された効果音のようなキーボードが登場します。
エフェクトの再現が難しいせいでしょう、今ツアーでその音は割愛されています。
そのため、ジュリーのヴォーカル・パートに達するまでの盛り上がり部で音量の増幅を表現している楽器は、ピーのドラムスと泰輝さんのフィル・フレーズの2つに留まっており、テンポが乱れていないのにスピード感に欠けるような印象がありました。10・2フォーラムでピーの演奏に「もっと走ってしまいたい!」という気持ちを感じたのも、この箇所でした。

ただ、そこに頭打ちだけではないくっきりとしたサリーのベース・ラインが組み込まれることで、大宮のこの箇所では、テンポが遅くなるような感覚は完全に払拭され、ピーのクレッシェンド演奏もタイトに聴こえるようになったのです。
1小節にたった1音のベースを追加しただけで、この効果!

まずピーが変わり、それに連れて全体のアレンジが練り直されていく「美しき愛の掟」。
この先もサリーだけでなく、どのパートにさらなる進化が飛び出すやもしれません。
アレンジが進化すれば、ジュリーのヴォーカルはその度に敏感な化学反応を起こして、どんどんエロティックになっていくでしょう。「美しき愛の掟」という曲にジュリーが身体ごと入り込む、というのはおそらくそういうことでしょうから。

18曲目「青い鳥

Tigerssingle_3

大宮でも、ジュリーの
「森本太郎、作詞・作曲。名曲中の名曲です!」
という楽曲紹介を挟んでの進行です。

さて、今ツアーでのタローの演奏においての見せ場は

・「僕のマリー」の間奏リード・ギター
・「モナリザの微笑」のハーモニカ
・「青い鳥」の全リード・ギター

の3つですね~。
いずれも「もしも間違ったら会場全員が気がついてしまう」という超・有名フレーズを任されているというわけです。

「僕のマリー」の項にも書きましたが、「青い鳥」のリード・ギターはフレット移動が大きく、それがタローに毎回の緊張を与えていると思われます。
ちょっとギターを嗜む人は、ひょっとしたら
「なんであんなに横移動させなきゃなの?もっと縦移動を使えば・・・」
とお考えになるかもしれませんが・・・横移動には、必然の意味があるのです。
それは「青い鳥」のリード・ギターが、復音フレーズだということ。単音ではないのです。
常に、2本の弦を弾いています。複数の弦を押さえる指のフォームを崩さないことを重視しての、横移動なのです。

大宮では、「青い鳥」のすべてのフレーズを完璧に弾いたタロー。
横浜で、ようやくタローの演奏を間近で観られるかと思うと楽しみでなりません。
セットリスト各曲でタローがどんな役割を果たしているのか、僕はまだ全然把握していませんからね・・・。

19曲目「シーサイド・バウンド

Tigerssingle

毎度おなじみの”上半身のみクネクネステップ”の出番です。
後ろから見たらさぞかしおかしなことになってるだろうなぁ、といつも後になって考えるんですけど、生で体感する「シーサイド・バウンド」の間奏でおとなしくしてることなど、僕にはできません!

ただ、上半身のみの参加です・・・。僕はこれまでジュリーのソロツアーでは”通路沿い率”高めだったのですが、今回は密集地帯が多いですねぇ。
大宮も含め、このまま「シーサイド・バウンド」のステップは上半身限定ヴァージョンしか踏めずじまいかな、と考えておりましたら、鹿児島で頂きましたよ、確実にステップ踏めるお席。
一番端っこ、たぶんピーと柴山さんが見えない席ですね・・・。

え、隣は壁か、ですって?
ノンノン、隣はね、花道!

・・・というようなこともまだ知らぬまま、大宮では必死に上半身のみの参加。
これはこれで楽しいですが、ふと気がつきますと、直前にいらっしゃるNoz様の動きは・・・ステージ3人の鏡ヴァージョン!
僕はジュリー達と同じ動きで、まず一歩目は右に飛ぶ感覚でやってるんですけど、そう言えばジュリワン・ツアーでの「渚でシャララ」ダンスも、鏡派の方々が多かったですっけ・・・。

さて大宮でも、サリーの「ヘイヘイ、ワンモアタイム!」同様に、ジュリーが「ここはピーの出番!」と指差すシーンがありましたが、ピーの絶叫は2階席までは届かず。
これも横浜、鹿児島に期待かな・・・。

あ、絶叫と言えば。
大宮での「ジャスティン」のコール&レスポンスの最後の雄叫びが
「ほわやぁぁぁあっ!」
ではなく
「ぴぃやぁぁぁぁあっ!」
に進化していたことを、今いきなり思い出しましたので書いておきます~。

20曲目「君だけに愛を」

Tigerssingle


初日、10・2のフォーラム両日では
「ジュリーの指差しに応える会場の反応が予想より控えめだなぁ」
と考えながら「君だけに愛を」の演奏を観ていましたが、大宮は一転、客席のスイッチが入ってましたね~。
これはきっとフォーラムがどう、ということではなく、、各地ツアーを重ねているうちにだんだんステージ、客席共にノリが良くなってきているのでしょう。

僕にとっては、ジュリーの指差しがハッキリ
「自分の席の辺りに来た!」
と感じたのが今ツアーで初めてだったということでもありましたが・・・。

ということで、僕の周辺エリアには、合計2回の指差しが来ました。
周りのお姉さま方が「ふんぎゃぁ~!」と応えるのをようやく実感できましたね~。
2度目には、僕も思わず手を振って応えてしまいました。たぶん両隣のお姉さまにはその様子を気づかれたと思います・・・。

”指差し→悲鳴”というシーンで個人的に思い出されるのは、昨年のツアー『秋の大運動会~涙色の空』での「愛まで待てない」。
ジュリーの「ダ~リン・ユ~!」への反応が、ツアー後半の会場では凄いことになってきて、ファイナルではそれがMAXに爆発していました。
思わず打ち上げの席で、ジュリーファンの先輩に
「タイガース時代の『君だけに愛を』の指差しって、あんな感じだったのですか?」
と尋ねますと
あんなもんじゃないわよ
だそうで。


つまり、今後ツアーが後半にさしかかるに連れ、各会場での「君だけに愛を」のお姉さま方の反応は、僕の知らない未曾有のMAXゾーンに踏み込んでいくことになるのでしょう。
僕自身は「ふんぎゃあ~!」とか叫ぶわけではない(予定)ですが、その凄まじさを体感するのはとても楽しみです。横浜あたりでは、かなりな状態にできあがっているはず。
そして、武道館で”あんなもんじゃない”究極の「ふんぎゃあ~!」を味わってから、温存しておいた「君だけに愛を」楽曲考察記事を書きたいと思っているのです・・・。

そうそう、今ツアーでの「君だけに愛を」リード・ギターの時のジュリーの動きが・・・いわゆるロックっぽいアクションではないんですけど、あまりに楽しそうなので僕はつい真似してしまう~。

それと、大宮では柴山さんの間奏もメチャクチャに気合が入っていました。
元来、ソロ導入部が3連符から始まるってのがまず、陶酔度(ぬお度)を上昇させるフレーズだと言えます。
下山さんとGRACE姉さんが「今日のカズさん、すごいね!」みたいな感じで、笑顔でアイコンタクトをとっていたのを、僕は見逃しませんでしたよ~。

21曲目「誓いの明日

Jiyuutoakogaretoyuujou


新規ファンのみならず、タイムリーなタイガース・ファンの先輩方にも
「今回のツアーに参加したのを機に、とても好きになった曲」
と評判のナンバーですね。
セットリストの中では「割れた地球」と共に、今、爆発的な再評価を得ているようです。
特に「誓いの明日」はセットリスト本割ラストに配置され、「明日に向かって」のフレーズが、時を越えた歓びとなって胸に響きます。

下山さんのアコースティック・ギターのストロークに始まり、柴山さんのエレキ、泰輝さんのキーボード、と鉄人バンド大活躍のイントロがこの日もまず素晴らしい。
それと、イントロについてはもうひとつ。
10・2フォーラムのレポートでも触れた、ハイハット・ペダルを踏みながらのトップ・シンバル・エイトビートが、ピーの新曲「老虎再来」のドラム演奏に似通っているんですよね~。

そして・・・何度も書きますが、エンディングでジュリーが一度
「これで終わりだよ~」
みたいなゼスチャーをして会場の拍手を引き出した後、ピーの「どん!」から始まるコーダ部。
いつか何処かの会場で、その部分をジュリーが
「ヘイ、ピ~!」
というシャウトに変え、ピーの「どん!」が2小節くらいのドラム・ソロ・フィルインに進化しないかなぁ、と待ちかまえているのですが・・・。

いや、「どん!」もすごくイイんですけどね!

~MC~

もう大宮公演から半月経ってしまいました。
MCの内容は他じゅり風呂様がすでに綿密に書いてくださっていますので・・・こちらでは簡潔に。

ゲスト3人の登場シーンについて。
まずピーが
「ホップ・ステップ・ジャンプ・おまけ」(ジュリー談)
の4段跳びで、ちょうどドラムセットの正面あたりに着地しました。
タローは、手をバタバタとさせて軽く跳びはねながらの入場。ジュリー曰く
「青い鳥です。青い鳥が帰ってまいりました」
サリーは重厚にノッシノッシと、客席に手を振りながら・・・。

ジュリーのMCでは、やはりタイガースの本当の再結成について触れていました。
初日のMCでは、「何としてもファイナル武道館までにトッポを口説く!」という意気込みを感じましたが、ジュリーの言葉も10・2フォーラムの時点で少しニュアンスが変わってきて・・・今回のツアーで「タイガース」を名乗ることはもう難しいのかな、と僕は受け取っています。おそらく多くのみなさまも。

「いつか」とジュリーは言います。
来年の1・24武道館、たとえ再結成が叶わずとも、その「いつか」を引き続き待っていられることはとても素敵なことではないでしょうか。

「(タイガースをやりたい、というのは)かつみもシローも同じ気持ちだと思う。あとは・・・やり方だけやな」
ということですから、ジュリーはまず、トッポに合わせたやり方で再結成を実行できるタイミングを、この先探そうとしているんじゃないかなぁ。
タイガースに奉仕する、とジュリーはキッパリ言っているわけですからね・・・。「明日」を待ちましょう!

~アンコール~

22曲目「シー・シー・シー

Tigerssingle


大宮での、アンコール突入に際してのジュリーの言葉は
「オマケです~」
ではなく
「それでは、もうしばらくおつき合いください」
だったかな・・・?記憶が(汗)。

イントロ、ズンズンと響くサリーのベースから

ちゃららららら、らん、らん、らん♪(ぱぱぱん!)

のハンドクラップ。もちろん会場全員参加・・・なのですが。
今ツアーで僕はこの瞬間、参加を重ねるごとにだんだん自分が情けなくなってきます。
ま~だ、左肩が上がらないんですよ・・・(涙)。
頭上で「ぱぱぱん!」とは、できないのです。
次の横浜までには、もう少し何とかなってるのでしょうか。このハンドクラップだけは、ジュリーや会場のみなさまと一緒に、頭上でやりたいんですけどね・・・。

頭上手拍子についてはそんな感じで憂き目に合ってはおりますが、幸いなことに、ジュリーのソロツアーでは必ず1曲はセットリストに採りいれられる”おいっちに体操”が、今回の老虎ツアーでは登場しません。
アレが一緒にできない、というのは悔し過ぎますから、その点については「助かったなぁ」と。
ちなみに、タイガースナンバーでジュリーの”おいっちに体操”がハマる曲って、「処女航海」くらいじゃないのかな~。
リズム的には「サティスファクション」も合いますけどね。

しょあ様大好物の、ブレイク部「シ~・・・」の直前まで粘っこく残響する柴山さんのリード・ギターが、大宮でも炸裂。
こういう箇所って、特にカッチリしたフレーズが決まっているわけではないですから、柴山さんとしても会場ごとに違った感じで、ひそやかな”遊び心”が表現されているのかもしれません。

エンディングではこの日も「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」に続いての、GRACE姉さんによる豪快な”タンバリンごとクラッシュ”でシメでございました~。

23曲目「落葉の物語

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長々と執筆途中での更新が続いております拙記事を、コメント欄までお読み頂いているみなさまにおかれましては既にご承知の通り・・・。
僕がこの「落葉の物語」と「散りゆく青春」について「???」状態に迷い込んでいたチェンバロ・パートの謎は、yurachan様、mimina様始め先輩方の有り難い助太刀コメントによって、記事完成を待たずして万事解決いたしました~。

やはり、泰輝さんの”神の両手”は老虎ツアーでも大活躍だったのですね!

フォーラム両日、大宮と、ここまで僕は泰輝さんのキーボードを1台しか確認できていませんでした(初日に関しては、泰輝さんの姿すら見えませんでした)が、泰輝さんは今ツアーでも上下2段のキーボードを駆使しているようなのです。
つまり「落葉の物語」では、左手でチェンバロ・パートを奏でつつ、右手でオルガンのリード・パートを
「ド~、レドシ♭ラシ♭~♪」
と、同時弾きしているということになります。

それにしても泰輝さん、そんなに凄まじい演奏をしていてもポーカーフェイスと言うのかプロフェッショナルと言うのか、泰然と(ダジャレではありません!)演奏しているんですよね~。
だから僕もキーボード1台だと思い込んでしまったわけで。おかげで悩んでしまいましたよ・・・。

さて、大宮での僕はまだそれと知らず、チェンバロの音色の出所を求めて、まずはGRACE姉さんの鉄琴演奏に注目していました。
確かにGRACE姉さんは鉄琴を叩いていましたが、手元の動きに合わせて会場に鳴り響く音は、「銀河のロマンス」の項に書いた、ズバリ鉄琴そのもののキラキラした音でしたね。
しかも、この曲でGRACE姉さんが担当しているのは鉄琴だけではなく、曲の進行に応じて色々な楽器に持ち替えているようです(何の楽器か、までは判別できませんでした)。
その間もチェンバロの演奏音が流れていたものですから、僕は「?」となってしまった次第なのですが、すべてが分かった今、泰輝さんとGRACE姉さんが「落葉の物語」でフル回転の素晴らしいサポートをしていたことに感激するばかりです。

武道館前にオンエアされるというNHK『Songs』や、DVD(発売されることを願っています)では、このような鉄人バンドの細かい職人技へのカメラワークも期待したいなぁ。
きっと、僕などまだまだ気がつけていない、「これぞプロフェッショナル!」というシーンがたくさんあるはずなんですよね・・・。

とりあえず。
横浜では、泰輝さんのキーボードが2台ともしっかり見えますように!

ところで、演奏は別としてジュリーのヴォーカルについてですが、「落葉の物語」は、今回のセットリスト中、最もタイガースのオリジナル音源に近い声だと僕はこの大宮で初めて思いました。
”今”のジュリー・ヴォーカルの真髄は、「割れた地球」「怒りの鐘を鳴らせ」2曲に極まっているその一方で、みずみずしいタイガース時代の声も健在といったところでしょうか。
「散りゆく青春」や「青い鳥」は、ここ数年で聴き慣れた”今のジュリー”の声も合わせて感じるのですが、「落葉の物語」にはそれが無いように思ったのです。
ジュリーがそのように使い分けているなら、とんでもなく凄いことですよね!

まぁ、気のせいかもしれません。
ただ、『歌門来福』の「落葉の物語」では感じなかったことを感じた大宮でのジュリー・ヴォーカルだったので、一応ここに記しておきます~。

24曲目「ラヴ・ラヴ・ラヴ

Tigerssingle


大宮では、10・2フォーラム同様にジュリーは曲の最初から最後まで右手Lの字で通しましたね。
ジュリーに倣って会場の多くのみなさまも僕も、最後まで腕を下ろさずに乗り切りました。
2階から見下ろす「L」の波はやはり壮観です。

噂では、その後の会場で曲の途中に左手に替えるヴァージョンもお披露目となったそうで、ジュリーは律儀に、お客さんから見てちゃんと「L」に見えるように、掌の向きを変えていたとか。
そこで気になるのは、その場合に会場のみなさまもジュリーに倣い、左手チェンジをするのかどうか、ということ。
僕も楽曲通しての右手上げっ放し状態をすでに2回体験して分かりましたが、あれって1番が終わらないうちに疲れてきますよね。とすれば、お客さんにとっても左手への途中転換は願ったりかなったり、なのでしょうか。

困ったなぁ・・・。
僕は今、左手上げられないからなぁ・・・。

さてさて、何人かの先輩のお話で、どうやらこの曲のドラムスはピーとGRACE姉さんのツイン体制であることが分かりました。僕はこれまで「ラヴ・ラヴ・ラヴ」ではジュリー、ピー、サリーの3人に目を奪われ、すっかり鉄人バンドの演奏を見落としていましたね・・・。

でも、GRACE姉さんがどんなフレーズでドラムスを叩いているかは、まだ分かっていません。
そこで僕はハッ、と思い当たったことがあります。

2番が終わって最後のサビ繰り返し部。
ジュリーがまるで咆哮するかのように「LOVE・・・♪」を歌っているバックで、みなさま、地鳴りのような音を感じませんでしたか?
それは、2つの演奏音によるもの。
ひとつは、うねりを上げるサリーのベース。
そしてもうひとつは、低音のドラムスなんです。

この低音ドラムス。
「ドドド、ドドド、ドドド・・・」と3連符連打する凄まじいアレンジになっていますが、僕はてっきりそれがピーのキックだと思って聴いていました。
しかしよくよく考えると、それって「超」がつく体力消耗プレイなんですよね。難易度がどう、というよりも、身体全体を酷使する演奏です。

若いドラマーですら過酷な演奏を、65歳のピーが?
もちろん、ピーならば気力でやってのけることは可能でしょうが・・・。
これがツインバス(キックを両足で踏む、特殊なドラム・セッティング)の演奏であればまだ体力的にも楽なのですが、この曲の直前にピーがセッティングを変更していた雰囲気はありません。左足はやはりハイハットのペダルを踏んでいるはず。

そこで思いついたのが、あの低音はキックではなく、フロア・タム(ドラムセット向かって左端の、樽のような大きい太鼓)の音ではなかっただろではなかっただろうか、ということです。
とすれば、エンディングで”左右シンバル鬼連打”を炸裂させるピーを、GRACE姉さんがさらにフロア・タム3連符連打でサポートしている可能性が考えられます。

この件は、横浜で何とか確認したいなぁ。
松席なのですがタローサイドの端に近く、GRACE姉さんがハッキリ見えるかどうか分からないのですが。
(この位置だとピーもシンバルに隠れてしまう、という噂もありますし・・・)

ともあれ、本当に見所の多い「ラヴ・ラヴ・ラヴ」。
横浜、鹿児島ではそういった細かい演奏に注意し味わおうと思っていますが、最後の武道館では頭を空っぽにして、ただジュリーの歌声に身体を委ねたいです・・・。

☆    ☆    ☆

ふ~。
半月以上かけての執筆で(汗)、最後の方は大宮レポと言うより、今後の参加会場への個人的な意気込みを語ってしまいましたね・・・。

大宮閉演後、まず嬉しかったのは、ピーのファンサイトのみなさまとの再会と「はじめまして」のご挨拶。
不思議な感じがします。と言うのも、僕は1966年の12月生まれですから、タイガースのメンバーがデビューに向かって上京した時、まだ「おぎゃあ」とも言っていない人間です。そんな自分が、タイガース時代のピーを応援していらした方々と同じ公演を観て、感動を分かち合っているというのは・・・。
だいたい僕は、『ジュリー祭り』が終わってしばらくするまで、タイガースのメンバーの名前を全員知らなかったような、そんな奴だったというのに。
みなさま、本当に温かく話しかけてくださいます。

すべては、奇跡的な今回のツアーのおかげですね。
僕は毎日ピーのファンサイトにお邪魔させて頂いていますが、なにせ若輩なもので、コメント投稿するにはなかなか勇気が足りず、読み逃げばかりしています。
しかし、来年の鹿児島でのLIVEについては、ファンサイトのツアー用BBSににレポを投稿させて頂くことを、その場でみなさまにお約束してきました。
せっかく今ツアー全会場のスレッドを作成し続けてくださっているのに、鹿児島のスレッドだけ投稿ゼロ、なんてことにならないように。
(僕が書かなかったとしても、まぁそんなことにはならないのでしょうが、どうも僕は自分の故郷・鹿児島を辺境の田舎のように考えてしまっているので、いらぬ心配をしてしまうのですよ・・・)。

会場を出た後は、久しぶりにお会いした先輩やJ友さんなども加わっての打ち上げにて、楽しい時間を過ごしました。
みなさまのお話を伺っていると、ジュリーは無論ですが、今回のツアーではサリーの人気も絶大であることが分かりますねぇ~。
そして、タイガースだけでなく鉄人バンドの話もたくさんしてきました。

打ち上げに参加のみなさまは、何処かの会場で一度は松席を体験しておられる方が多くて、その点僕はしょぼんとしていましたが、有り難いことにようやく僕も横浜でその歓びを味わうことができそうです。

☆    ☆    ☆

毎度毎度お待たせの長文LIVEレポートにおつき合い頂き、ありがとうございました。
僕が次に参加する横浜公演までは、まだまだ日数もあります。
その間、頑張ってできるだけ多くの楽曲考察記事を更新できれば、と考えています。

次回は予告通り、「割れた地球」です。もうセットリストはネタバレしていますから、存分に『ヒューマン・ルネッサンス』ヴァージョンと今ツアーの比較考察などを書きまくれます。
「割れた地球」はオリジナル音源の段階から、演奏に語るところの多いナンバーなのですよ~。

続いてのお題が「老虎再来」の予定。
その後は、また従来のスタイルでジュリーの名曲群を採り上げて参ります。
ぴょんた様から100万アクセス・ニアピン記念リクエストも頂いていますし、恒例のドーム記念日には、『ジュリー祭り』のセットリストからお題を選んだ記事を更新するつもりでいます。どの曲にしようかなぁ・・・。


そうやって更新していれば、あっという間に横浜公演の日がやって来ることでしょう。
そんな感じで引き続き、よろしくお願い申しあげます~。


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2011年10月24日 (月)

沢田研二 「流転」

from『いくつかの場面』、1975

Ikutuka


1. 時の過ぎゆくままに
2. 外は吹雪
3. 燃えつきた二人
4. 人待ち顔
5. 遥かなるラグタイム
6. U・F・O
7. めぐり逢う日のために
8. 黄昏の中で
9. あの娘に御用心
10. 流転
11. いくつかの場面

-----------------------------

本題の前に・・・まずは小さなお知らせから。

残念ながら、大宮に一緒に参加する予定だったJ友・YOKO君が、仕事の都合でどうしても当日時間がとれなくなってしまいました。
直前にならないと予定がハッキリしないYOKO君(さすがにドームの時は親戚をお一人お亡くし・・・という手段に出ていたらしい)・・・毎年、彼の家に近い会場の開催日を狙って僕があらかじめチケットを手配し、あとはひたすら当日彼の身体が開くのを祈って二人して待つ、というパターンで、2009年大宮、2010年川口と、何とかうまく運んでまいりましたが・・・。
今年はダメでした~。

YOKO君は本当に残念がっていました。
昨年ジュリワン川口の打ち上げの段階で「俺はイットクのベースが聴きたい!」と言っていたくらいですからね・・・。
僕も自信を持って「絶対間違いないライヴだから!」と伝えていましたし、是非観て欲しかったですけどね・・・。まぁ男の仕事のことですから、仕方がありません。

幸い、代わりに参加してくださる方がすぐに見つかりました。
そういえば大宮は抽選でしたものね。YOKO君の代わりに、本当に「行きたい!」とお考えのタイガース・ファンの方にチケットをお譲りできることは、何よりです。
ますます老虎ツアーの人気を実感しましたよ~。

そんなこんながありながら、もう10月もあと少し。
老虎ツアーは初日から2ケ月経とうかというところまで来ました。

僕は、初日を迎える直前、本当にタイガースしか聴いていませんでした。
それが・・・いざツアーが始まったら、ジュリーのソロやら洋楽やらも普通に聴いております。
タイガースももちろん聴いていますが、それはセットリストのナンバーを振り返って噛みしめる、という、まぁ後追いファンとしては避けては通れない復習として、ですね。
自宅で、「よし!」と構えて聴きこむわけです。
ただ、タイガースについては、やはり気持ちがレコーディング音源よりも生の演奏に向かっていますよね・・・。
なにしろライヴツアー真っ最中なのですから。生が一番良いに決まっています。

一方で、通勤時や移動時などのいわゆる「日常」のリスニングは、ジュリーのソロ・アルバムに切り替わっています。
ちょうど夏も終わりまして、「寒くなってきたなぁ」と感慨深く冷たい空気の中でしみじみと聴くにふさわしい2枚が、最近のヘビロテ。
いずれ劣らぬ大名盤・・・『いくつかの場面』と『チャコール・グレイの肖像』です。

「秋だなぁ」というのが『チャコール・グレイの肖像で』、「いよいよ冬がやってくるなぁ」というのが『いくつかの場面』。
僕にとっては、そんなイメージかな・・・。

さて、そこで。
先日、拙ブログは有難くも累計100万アクセスを数え、畏れ多くもキリ番記念リクエストなぞ募集をいたしました。
残念ながら100万ジャストのお方は見つかりませんでしたが、999,999番と1,000,001番をヒットなさったhayami様より、アルバム『いくつかの場面』収録曲からニアピン記念リクエストを頂いております。ありがとうございます。

アルバム全体のイメージに大きく貢献する、加藤登紀子さん作詞・作曲作品2曲のうちのひとつ。
「流転」、伝授です~。

僕が『いくつかの場面』から受ける全体像に学生運動のイメージを強く持っていることは、これまで及川恒平さん作詞の3曲の収録曲お題の記事で何度も語ってきました。
しかし、当然ながら僕の持つイメージは及川さん以外にもう一人、加藤登紀子さんの存在に強く影響を受けています。

不勉強な僕は、加藤さん=お登紀さんの作品を、アルバム単位では知りません。
ただ、その比類無き生き方(しかも女性ですからね)は、ずっと以前から「凄い人だなぁ」と琴線に触れるところでもあり、何かで名前を見かけると敏感に反応していましたね・・・。
そして数年前、他ならぬジュリーのアルバムでそれを久々に体感したというわけです。

『いくつかの場面』収録のお登紀さんの2篇、作詞・作曲のアプローチはかなり趣を異にしていますね。特に詞。
「黄昏の中で」は、同じ志を持つ若い男女の危ういまでの純粋な情愛を官能的に描いており、「流転」では、志を己一人のものとして流浪する男を客観的に描きます。
個人的に、2曲の持つ「志」に学生運動の影を感じてしまうのは共通していますが、主人公の年齢設定はずいぶん違うと考えらえます。

その年齢設定の幅がまるで荷になっていないジュリーのヴォーカルに、まずは注目すべきでしょう。
ソロ・デビューし、いわば「歌わされている」という形の中でその驚くべき歌唱センスを発揮してきたジュリー。しかしそんな”歌の神”の存在には、本人も、周囲のスタッフもすぐには気づけずにいたように思われます。

「許されない愛」「危険なふたり」「追憶」などのヒット曲をカッ飛ばしたジュリーを、ようやく素晴らしいヴォーカリストとして周囲のスタッフ全員が確信を持ち、その気になって丁寧に作りこんだ最初の作品が『いくつかの場面』かもしれません。
この時点でジュリーはまだまだ、自分で「歌が上手い」とは思っていなかったかもしれませんが、楽曲が要求するヴォーカルのレベルが、格段に上がってきていることが周囲の期待を証明しています。

そしてジュリーは見事にそれに応えている・・・加藤登紀子さんの2曲をそれぞれの作詞コンセプトに沿って解釈し歌い切った、ということは、『いくつかの場面』収録曲の中でも特に目を引くところです。
「どうやらジュリーはどんな曲調、どんな詞でも歌えてしまうようだ」と気づいたスタッフ、「流転」のヴォーカルにも大いにうなったことでしょうね。

「流転」は歌メロが昭和歌謡的というのか演歌的というのか、一見、若い時期のジュリーにそぐわないような雰囲気ですが、これが当時のジュリーの声と素晴らしくマッチしているのです。
それには、楽曲構成とアレンジの趣向が大きく関係していそうです。
と言うのも、実は「流転」は『いくつかの場面』収録曲の中でも、特に井上バンドの色が濃いナンバーのひとつに仕上がっているからです。

まず歌メロの楽曲構成ですが

♪ 男が一人で見る夢は 
  Cm                    G7

  風にふかれてさすらいの
  Fm               B♭      E♭

  旅の波間に身をあずけ
  G7            A♭       E♭

  ただひとりきりで生きること ♪
  Fm       Cm       G7       Cm

この1節を「1番」と捉えると

イントロ→1番→2番→間奏→3番→4番
→間奏→5番→6番→エンディング

という非常にシンプルなものであることが分かります。いわゆる「ブリッジ部」「サビ部」という展開が無く、歌メロは最後まで1番の繰り返し。
これは逆に風変わりではないか、と考える方も多いでしょうが、実はこのパターンは、あのボブ・ディランの必殺技なのです。
「寂しき4番街」「メンフィス・ブルース・アゲイン」・・・他多数のナンバーは、展開部の無い”最初から最後までAメロで押しまくる”という構成なのですね。


このように、「流転」は昭和歌謡のベースもありながら、意外と過激な洋楽エッセンスもありそうだ、というのが僕の見方です。
だって、当時の加藤登紀子さんがボブ・ディランを聴いていないはずがないですもの・・・。

同一メロの繰り返しでどのようにして展開性を持たせるかと言えば、それは歌詞、ということになります。
ディランもそうなのですが、曲が進行するに従って、主人公の居場所、時間が次々に移動、経過していくのですね。

・やみくもに夢を語った盛り場
・逃げるようにして飛び乗った朝の汽車

転々と流浪し、いくつもの別れを重ね、気づけば主人公はずいぶん年齢を重ねているようです。
歌詞の5番までは、哀しいながらも”人”との関わりや想い出が描かれてきたのに、
6番では、「ひたすら歩いている」主人公が遂に”ただ一人”となって、何らかの終局に対峙していることを思わせ、果てのない孤独に埋もれるようにして、楽曲は終わります。
ジュリーのヴォーカルは、その”終局”ギリギリまで表現してくれているように感じます。

また、歌詞以外の観点に立ちますと。
6度繰り返されるAメロの間隙に散りばめられた楽器演奏部に工夫があるのです。
Aメロとはまるで違う、一筋縄ではいかないコード進行のヴァリエーションが、「流転」を飽きのこない名曲に仕立て上げていると言えます。

そこで「流転」の楽器編成を見てみますと

・ドラムス
・ベース
・アコースティック・ギター(左右2トラック、同フレーズ)
・エレキギター(リード、右トラック))
・エレキギター(サイド、左トラック)
・ピアノ(左右2トラック、別フレーズ)
・キーボード

となっています。
アコースティック・ギターとピアノは左右に分かれた2トラックのレコーディングで、ピアノは右と左で異なるフレーズを弾いていますが、アコギはまったく同じフレーズのテイクをわざわざ2回録って、それを左右に分けてミックスしています。
この”アコギを同じように2回弾いて左右に分ける”というのは70年代前半の流行なのです。ジョージ・ハリスンやデヴィッド・ボウイが好んだ手法です。

「流転」の楽器編成に話を戻しますと・・・曲調から見過ごされがちになっているかもしれませんが、編曲が大野さんということもあって、これは純粋なバンド・サウンド。
メロディーだけとって考えれば、ストリングス装飾などが考えられて不思議ではないところを、敢えてロック・バンドの楽器編成に纏め上げています。
この点から見ても「流転」は、いわゆる「歌謡曲」っぽい、「演歌」っぽいというイメージと切り離して考えるべき面がありそうです。

特筆すべきは、この大きく分けて3つの歌唱部を繋いでいる4つの演奏部(イントロ、1・2番と3・4番の間のピアノ・メインの間奏、3・4番と5・6番の間のリード・ギター間奏、そしてエンディング)が、単にAメロとは違う、というだけではなくて、それぞれまったく異なるコード進行であることです。

これは・・・大野さんが考えた進行なのでしょうか。
僕は「流転」にお登紀さん自身のヴァージョンがあるかどうかすら知らないのですが、もし楽器演奏部のコード進行がアレンジャーの大野さんに手によるものならば、ジュリーの「流転」には、お登紀さんの作曲とは別個の作曲部が、4つのアイデアぶん存在していると言ってもよいでしょう。

イントロとエンディングについては、それでもまぁ歌メロ部のイメージを逸脱するほどのブッ飛んだコードは登場せず、「流転」のキーであるハ短調によく使用される王道のコードを、歌メロ部は違う組み合わせ方にした、という変化の範疇に留まっていますので、身を委ねて自然に聴いていられる進行ではあります。
ですからここで耳を奪うのは、和音進行よりもキーボードのテーマ・メロディーでしょうか。
イントロでは

♪ソドミ♭レ~ドド~♪

エンディングでは

♪ソファソファソドソ~♪

という切ないメロディーが、ホイッスル系のキーボードで奏でられます。和音進行のアイデアよりは、このメロディーの方が目立っていますね。

ところが、2つの間奏部についてはそうではありません。
無論、それぞれの間奏の主役であるピアノ、リード・ギターの演奏とメロディーは素晴らしいものですが、聴き手が一瞬「うん?」と引っかかるような和音が登場するのです。
これは、理屈ではなく誰しもが耳に捕えることができるでしょう。ある一瞬で、
「ん?今なんか変わった音が入ったな」
といった感じに聴こえるはずです。

まず、ピアノ・メインの1度目の間奏部。
ピアノのメロディーは途中までイントロのメロディーと同じなのですが、コード進行は全然違っていて

A♭→F#dim→G7

となっています。
聴き手を引っかけるのは、「F#dim」の部分ですね。崖を駆け降りるような感覚が襲います。

そして次に、リード・ギターをフィーチャーした2度目の間奏部。
野太い音の迫力あるギターが堯之さんなのか速水さんなのか、僕には聴き分けることができないのですが、素晴らしい熱演で、間奏の尺も1度目より長くなっています。
この辺りはアレンジャー・大野さんの人柄、センスが出ていますね。
自分の演奏楽器メインではない箇所でアレンジの一番の見せ場を作るという・・・これは以前「RED SUMMER」の記事でも書いたことがあります。

で、このギター・ソロ部の進行は

A♭→Cm→D♭→E♭
Fm→Cm→Fm→Dm7-5→G7

となっています。
最後の「Dm7-5→G7」は字面ほど変化球ではなく、ここで聴き手を引っかけるのは「D♭」の部分。
これはいかにもロック的、ハードな変化で、60年代初頭までのいわゆる「昭和歌謡」には見られないコード進行です。
ビートルズ・ナンバーだと、「今日の誓い」が最初の進行採用曲例になるかと思います。

このように、「流転」は加藤登紀子さんの楽曲として魅力的なだけでなく、当時の井上バンド・サウンドの傑作とも言え、その意味でも重要なナンバーでしょう。
僕には、この「流転」があってこそ、次作『チャコール・グレイの肖像』収録「桃いろの旅行者」の完璧なアレンジ、演奏が生まれたのではないかと思えます。この2曲のアレンジ、演奏のアプローチは本当に似通っているんですよ・・・。

また、これは全然別の話になってしまいますが・・・アルバム『いくつかの場面』の歌詞カードの中で、僕は「流転」のショットが大好きなのです。
ひなびた感じの波止場から、座り込んで海を見つめるジュリーの背中・・・歌の内容とも一致したショットですよね。

さて。
100万ヒット・ニアピン記念リクエストは、1,000,002番をゲットなさった、ぴょんた様からもhayami様に負けず劣らずの渋~いお題を頂戴しております。
ヒントは、オールウェイズ時代の曲。こちらは11月のシメに書かせて頂く予定です。

まずは、月末の大宮LIVE。
「相変わらず」の方針でネチネチと時間をかけてレポートを書き、その後に、今ツアーのセットリストから「ピーのドラムスに注目して欲しい!」ということであの曲を採り上げて書き(てか、YOKO君は大宮行けなくなったもんで悔しさの余りネタバレに走ったはずだから、もうハッキリとタイトル書いちゃってもイイような気がするんですけどね・・・)、さらに「老虎再来」を書き、そしてぴょんた様のリクエスト曲へと進みます。

そうしたら、あっと言う間に『ジュリー祭り』記念日が来て、あっと言う間に誕生日が来て、あっと言う間に横浜LIVEが来て鹿児島LIVEが来て、ファイナル武道館が来るんだ~。
無事、予定通りに運びますように・・・。

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2011年10月18日 (火)

会員番号、暗記してますか?

side-Bにて執筆中だった、10・2東京国際フォーラムのレポートがようやく完成いたしました。
長期に渡り少しずつ更新していましたので、その間こちら本館が随分ご無沙汰になってしまい、申し訳ありませんでした。

さて、本日。
さん枠で無事「全員当選」となった1・24武道館チケットの申し込み代金を、郵便局で振り込んでまいりましたが・・・。

実は、ちょっと往生してしまったのですよ~。
朝に会社をちょっと抜けて近くの郵便局に行き、気合満々で振込用紙に向かい、書道六段(本当です)渾身の腕をふるって頭から必要事項を記入していたわけです。
そして。

え~と、通信欄には何を書くんだったっけな・・・。
と、持参したハガキをチェック。

①1・24武道館
はいはい。

②チケット枚数(変更不可)
はいはい、僕はちゃんと必要枚数しか申し込んでおりませぬよ~。自分と、カミさんの分で2枚。大丈夫!

③登録会員番号

は?

会員番号・・・。
はて、何番だったっけ?

おぼろげには、覚えてる。
確かJ-ごにょごにょ番。でも・・・本当に確かか?

間違って記入してしまったら、澤
さん言うところの
不備
になるのではないだろうか?

イカン!
そんな不備でフイにしてしまうようなチケットではないのだ、これは!

というわけで、スゴスゴと退散してしまいました。

「また明日出直しか・・・」
と肩を落として仕事
に戻り、何気なく携帯を見てみたら・・・登録データの自分のトコにメモってあったことに気がつきました~。
メモにあった番号は、やっぱり、さきほどの記憶とは数字がひとつ違いました。危ない危ない。

で、コソコソと郵便局に舞い戻り、やっと振込を完了したという顛末だったのです~。

みなさまは、澤
さん会員番号を暗記していらっしゃるのかな・・・?
今回は振込用紙が澤
さん配布のものではなかったから、家であらかじめ記入、という作業が無く、僕は郵便局で「あっ!」となったわけですが。
締切ギリギリで振込をお考えの方々、くれぐれも気をつけてくださいね。

ただねぇ、僕の周りの先輩方のお話を伺うと・・・さすが!凄いですよ。
必要事項すべてをメモしてからいざ郵便局に、というのはまぁ基本のようで、中には

往復ハガキ返信面の、自分の名前の下にあらかじめ会員番号を書いておいて投函した

という猛者の方もいらっしゃったようです。
プロですね。ジュリー・ファンのプロの技。
僕などは、まだまだヒヨッコもヒヨッコですね・・・。

そういえば、澤
さんの「手数料600円」という設定・・・僕のような粗忽者にとっては、すごく有難いんですよねぇ。
「6」という数字の形状に、これまで何度助けられたことか。
さん、もしかしてそこまで考えて設定しているとか・・・?

さて、今月末から来月頭にかけては、年に一度開催されます”楽器フェア”という楽器業界&楽譜業界の一大イベントの関係で(今年は横浜開催)、1年を通じて最も仕事が忙しい時期となります。

side-Bでのレポート執筆も重なり、10月はこちら本館の記事更新が寂しいことになってしまいましたが、なんとか10月のうちに、100万ヒット記念リクエストとして承っております「流転」の記事を書きまして、その後10・30大宮のレポートに雪崩れ込みたいなぁと考えております。

よろしくお願い申し上げます!

File0691

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