« 2011年5月 | トップページ | 2011年7月 »

2011年6月

2011年6月29日 (水)

沢田研二 「G」

from『CROQUEMADAME & HOTCAKES』、2004

Croquemadame


1. オーガニック オーガズム
2. whisper
3. カリスマ
4. 届かない花々
5. しあわせの悲しみ
6. 
7. 夢の日常
8. 感情ドライブ
9. 彼方の空へ
10. PinpointでLove

--------------------------------

6月も終わろうとしています。
以前宣言いたしました通り、拙ブログでは、7月に入りましたら完全タイガース・モードに切り替えます。
秋からのツアー、セットリスト予想(中にはそんな無茶な、という予想とは言えない曲も組み込まれるとは思いますが)として、タイガース・ナンバーのお題を20曲書いていくのです。

当初は、予想的中確率が低いと考えられる曲から順番に書いて・・・とか考えていましたが、どうにも昂ぶる感情は抑えられない・・・「書きたい」と思った曲をドカンドカン!とランダムに書いていこうと決めました。
このあらゆる意味で特別で、大変な夏を乗り切ろうと再スタートするにあたり、誰もが知る元気なお題から始めたい、という気持ちもあります。

そして先日のビバリー昼ズでの、トークショーに引き続いての「やるのは全曲タイガース」というジュリーの発言。

ここまで断言されますと、ピーの新曲も、そして密かに劇的な抱擁シーンを期待していた
Long Good-By」も、どうやらツアー・セットリストには無さそうですね。

セットリスト予想としてピーの新曲2曲もお題に組み込むつもりでいましたが、こちらの記事は9月に延期します。
どのみち拙ブログは、ツアー開始と同時に長いネタバレ禁止体制に突入しますからね。その間のネタとして、とっておこうというわけ。
(もし9月に入っても僕がなかなかピーの曲について書かなかったら、「あ、LIVEでやったんだ」と思ってください汗)
ピーの新曲は、ツアーとは別にとても楽しみにしているのですが・・・発売情報がなかなか届きませんねぇ。ピーのサイトはそういったことは早めにキッチリ更新されると思いますので、マメにチェックしませんとね!

ということで7月からは、純粋にタイガース・ナンバーを20曲立て続けに執筆することになります。

何故20曲なのか。
それは、ここのところ定着している「3日に1曲伝授」という執筆ペース。
このペースになる以前は特に更新日は決めず、思いついた時に書くというスタイルでしたので、楽曲考察記事についてはだいたい月に5、6曲の更新で経緯していました。

そんな時に、あの震災、そして原発事故。
何を書いてよいか気持ちの整理がつかず更新を滞らせている中で、被災地の方々に頂いた「いつものように書いてください。更新を楽しみにしています」というお言葉・・・被災していない僕が、逆にどれほど勇気づけられたことか・・・。
本当に有り難いことです。これで僕の腹は決まりました。

ジュリーはよく「日常」の大切さを伝えてくれます。
『哀しきチェイサー』についてのインタビューで語った「変わらず舞台を続けること」も、ジュリーにとっての大切な日常。
結局、日常を粛々と歩んでいく姿で、一人一人は小さいながらも、元気な人が元気のエネルギーを出し続けていくことが大事なのではないか、と今回ジュリーに教えられたように感じます。

僕もそれをやろう、と思った・・・。
ただ、いくら”日常を粛々と”とは言っても、僕のような平凡な者が単純にいつものように、ダラダラと普通にしているだけでは何にもならないですから。
だから、これまでよりもいつもより少し頑張る、そのいつもよりも少し頑張っているという状態を日常に転換させる・・・そういう努力を継続しよう、と思ったのです。
もちろんそんなことが誰の役に立つというわけでもありません。
ただ、更新を待ってくださっている方が、3日おきに僕のブログを訪ねてくだされば、必ず新しい記事がupされている・・・その状態を「日常」にまで引き上げるんだ、というささやかな志があるのみです。
未熟な僕は、それで自らを逆に励まされているのですね・・・。

このペースを続けるならば・・・単純に、1ケ月に10曲。
秋からのツアー・セットリスト予想でタイガースの曲を7月に10曲、8月も10曲。
そうして僕がタイガース・ナンバーを20曲書き上げたら、夏が終わります。
その頃はまだ暑さが残っているかもしれませんが、暦は9月になります。ツアー初日まであと少し!というところまでは来るのです。
ツアーが始まってしまえば、ジュリー達が日本全国を元気にしてくれるはず。

とにかく、セットリスト予想シリーズの8月いっぱいまでは、今の執筆、更新ペースを続ける・・・この大変な夏を乗り切るんだ!元気な人が元気なところを見せなきゃダメだ!絶対20曲書くぞ・・・そんな気持ちです。

全曲タイガースのお題でのカウントダウン更新、必ずやり遂げます。万が一くじけそうになったら、リストバンドを見て気合を入れ直すよ~。
有言実行・・・いつもジュリーが教えてくれていることです。肝に銘じます!

今日は、個人的にそんな気合を注入されるナンバー・・・僕の座右の銘と言ってもよい覚和歌子さんのフレーズが登場する、とてつもなく好きなジュリー・ナンバーのお題にて、ここ数ヶ月続けてまいりましたジュリーソロ・モードにひとまず区切りをつけさせて頂きたいと思います。

2000年代前半の武骨でパワフルな作品群の中でも、とりわけロックな大名盤『CROQUEMADAME & HOTCAKES』から。
「G」、伝授~!

この、一見地味なミディアム・テンポのサラッとした曲が、何故こうまで僕の琴線に触れるのでしょうか。
やっぱり、覚和歌子さんの詞なのかな・・・。

”大地に根ざしている”というのは”生きている”ということでしょう。大地を踏みしめているということは、誰もが実感できる”身体”の感覚。この世につながれている=生きている、という感覚。
時には、途方も無いことも考えてしまう。異世界への渇望も襲ってくる。

♪ 時々 喉の渇きのように
  Bm7                   A

  空の青さに抱かれたくなる ♪
  Bm7      E               A

いつしか”飛べる気持ちを疑う”までに成長し、生きていることが苦しみのように感じられることもある・・・。
こじつけかもしれませんが、今僕はこの「G」という曲に、震災で苦しむことになった人達の思いを重ねて聴いてしまいます。
そんな、青空に抱かれたい、という思いが悲しみの方向に向かわないように、ジュリーが歌ってくれているように感じます。

♪ 君が笑えば こんな時代も
  A    Bm7      E           A

  そこだけ晴れた 青空になる ♪
  A          Bm7      E       A

青空は、遠く離れたところだけにあるのではないのです。
すぐ近くに、いや近くでなくても・・・今生きている人同士が触れ合っていく中に、きっとあるのでしょう。
それは、”寄り添う”という感覚の中にあるのかもしれません。僕は今回の震災で、被災地のJ先輩に”寄り添う”という言葉を教えられたと思っています。
ジュリー・ナンバーにはそんな、寄り添ってくれるような穏やかでいて力強い曲がたくさんあって、「G」は正にそんな曲だと思います。

覚和歌子さんの詞、ジュリーの凛としたヴォーカル・・・それ以外にも、「G」には僕を惹きつける要素がたくさんあります。

まずは、アレンジです。
この頃のジュリーのアルバムは、キーボードを排した武骨なギター・サウンド。2001年から2005年までそのスタイルが続き、制約された楽器編成の中でも白井良明さんのアイデアは枯れることなく、あの手この手で斬新なアレンジが繰り出されるわけなのですが・・・。
例えば、「G」のアレンジには、リズムギター・・・つまり、コード弾きという概念が無いんです。

単音で動き回る左右2トラックのエレキギター。
片方がアルペジオ、とも言えません。完全に歌メロとは別のメロディーがもう2つあって、それをギターで奏でているという感じです。
特に右サイドのギターは、要所要所でベースとハモります。その絶妙のタイミングが素晴らしい!

かと言って、「忘却の天才」(アルバム『忘却の天才』のタイトルチューン)のように、複数のリード・ギターが入れ替わり立ち替わり縦横無尽に交錯する、という類のものでもなくて。
これは、2本の単音を奏でるエレキギターのいずれかを、そのままの音階でオルガン系のキーボードで弾いても成立しそうな表現なんですよね。
さすがは「永遠に」でギター・オーケストラ・アレンジを手がけた白井さんらしい、小気味の良いアレンジではないでしょうか。

もうひとつの魅力的な要素は、コーラス。
この頃はジュリーのアルバムに必ず伊豆田洋之さんのクレジットがあり、その甘やかなコーラスが、武骨なサウンドの中に不思議なくらい溶けこんでいました。
中でも、これもアルバム『忘却の天才』収録の「不死鳥の調べ」と双璧の出来映えではないかと個人的に思っているのが、この「G」のコーラスです。

「Ooo・・・la,la,la・・・」
という60年代ロック王道のポップなコーラス。
ビートルズの「ひとりぼっちのあいつ」や、キンクスの「ウォータールー・サンセット」などのコーラス・ワークが大好物の僕にとっては、無条件に入れ込んでしまうパターンなんですよねぇ。伊豆田さんはこの手のコーラスが本当に上手いですし、ジュリー・ヴォーカルとの相性も抜群です。

アルバム『CROQUEMADAME & HOTCAKES』は、ロック色を前面に押し出した2000年代前半の作品群の中でも到達点といった完成度ですし、「やっぱりジュリー、これがジュリーだ!」と、長年のファンのみなさまが溜飲を下げた大名盤なのではないかと考えています。
僕のような新しいファンや、中抜けの方々も、「後追いで聴いたけどこのアルバムは大好き」という人が多いようです。
でも、「G」という楽曲についてはあまり語られることが多くないみたい・・・。
みなさまがこのナンバーをお好きなのかどうか、是非この機に感想を伺ってみたいです~。

♪ スーツケースは 夢の重さだ
  A          C#m7  D          A

  不自由選ぶ それも それも自由だ ♪
  D        A          D      E         A

節電ということだけではなく・・・日本全国の人達が、自ら率先して「不自由を選ぶ」大変な夏がこれからやってこようとしています。
でも、元気の出ない人は、無理に元気になろうとしないで・・・元気な僕らが、無理をしますから!
僕は汗だくで働いて、汗だくで更新もするよ~。

♪ からだがあれば きみと踊れる ♪
  D                         A

そうだ、そうなんだよな・・・。
7月からのタイガース・モードでブログ執筆する最初の1曲は、やっぱりみんながジュリーやピー、サリー、タロー達と元気に踊れる曲で、明るく景気よく行こう。
ということで、セットリスト予想シリーズの1曲目は

♪タイガース・ナンバーを踊りにいこうよ♪

という記事を書きますね!

| | コメント (21) | トラックバック (0)

2011年6月26日 (日)

沢田研二 「誕生日」

from『JULIEⅣ~今 僕は倖せです』、1972

Julie4

1. 今 僕は倖せです
2. 被害妄想
3. 不良時代
4. 湯屋さん
5. 悲しくなると
6. 古い巣
7. 
8. 怒りの捨て場
9. 一人ベッドで
10. 誕生日
11. ラヴ・ソング
12. 気がかりな奴
13. お前なら

----------------------------------

6月もあとわずか。
ジュリーのソロ・ナンバーをあと2曲お題に採り上げたら、いよいよ7月・・・拙ブログも怒涛のタイガース・モードへと突入いたします。

さて前回、「カミさんのご両親が遊びにくるので、次の記事は短めになります~」って予告したんですけど、どうも台風が来る、ってんでご両親の上京は延期。
じゃあ時間が余ったのかというとそうでもなくて、結局ジュリーの誕生日にジュリーのレア・アイテムを求めて神保町古書街へ遊びに出かけることに。
今まで見たこともなかった『ヒット・ポップス』という雑誌(ジュリーが表紙)が8000円で売られているのを指をくわえて眺め手を出せずにいながらも、恒例の歌本漁りは店内に座り込んでの厳密チェック。

おかげさまで、以前「正しい歌詞がわからね~!」などと記事に書きました曲の『YOUNG SONG』掲載号をこの度めでたく発掘いたしましたことを、この場を借りましてご報告申し上げます~。
(全部載せるとヤバいので一部画像ではございますが)

File0639

本当に「おとめ子よ」で合ってたんだね・・・。
他にも、ちゃんとジュリーの写真やメロディー譜まで網羅したジュリー・ナンバーが掲載された歌本を何冊かゲットしてきました。

File06412

↑ コレとか、結構珍しいと思う・・・。
いずれそれらのナンバーを記事に採り上げる際に、ご紹介していきたいと思っております!

では・・・1日遅れながら、ジュリーの誕生日にちなんだ今回のお題は、ズバリ「誕生日」。

お題が初期のジュリー作詞・作曲ナンバーということで、「15の時」の記事に引き続き、先輩から頂いた『女学生の友』のデータをまた少しご紹介したいと思います。
「誕生日」も、”フォト&ポエム”に収載されていたとしても不思議ではない、かわいらしい作品。
アルバム『JULIEⅣ~今僕は倖せです』に収録された、気楽でアットホームな曲です。伝授~!

とは言っても、なんてことはない曲なんですよね。
特に斬新なアイデアがあるでもなく、等身大の詞曲。アルバム『JULIEⅣ~今僕は倖せです』には、”仲間達とワイワイやりたい”というのがレコーディングの主眼となっているようなナンバーが多いですが、「誕生日」はその最たるものでしょう。

でも、ジュリー自作らしい変テコなコード進行も一部にあって

♪ 今日は僕の 誕生 日 ♪
     D       B7 B♭7 A7

「ぼくのたんじょうび~♪」のトコが「シ・レ#・ファ#・ラ」→「シ♭→レ・ファ」ラ♭」→「ラ・ド#・ミ・ソ」と半音ずつおどけるように下降していくのです。
いかにも、ギターのコードフォーム移動で作曲した、という感じがします。

演奏でひとつ書いておきたいのは、”カズー”という楽器について。
楽しげで素朴で、ちょっとマヌケな音色で

レ~ファ#~ファ#~ソファミレファ~レ~♪

と鳴っているのがカズーです。
これはね、誰にでも演奏できる楽器なんですよ!
口でメロディーを「ぷ~♪」と吹くだけ。指も使いませんし、口笛より簡単に音が出ます。
口笛を吹けない人はたまにいるようですが(例・うちのカミさん。昨日たまたま判明した)、そんな人でもカズーは吹けます。

「誕生日」では、数人が同時にカズーを吹いているようですが、思いつくままにハモったりしてるパートを吹いているのがジュリーなんじゃないかなぁ。
自分の作ったコード進行に、歌メロとは別のメロディーを載せる感覚でね。

さてさてそれでは、楽曲解説の少なさをフォローすべく、”ジュリー自作曲鍛錬期を探る”という名目のもと、『女学生の友』小出し紹介コーナーへと参りますよ~。
まずは、前回中途半端に1ページ分だけ紹介してしまった、「時計」をテーマとした連載回。

 

Poem5

Poem6

愛らしいながらも身に染む導入部から、痛烈なオヤジギャグで締めくくられる・・・これもなかなかジュリーらしい詩ですね~。

そして、連載第14回掲載の、僕の好きな一篇。


Poem14

Poem15


この「太陽をあおいで」という詩は、痛烈とも言えるクールな視点の中に、人間らしい決意をスッと浮き上がらせた名篇だと思います。
比較的近年のジュリーの作詞スタイルに近いかな・・・。

『女学生の友』はまだまだデータがありますが・・・また次回ね。
先日のみなさまのビビッド反応が嬉しかったので、いっぺんに載せるのがもったいなくなってしまいました。
このやり方、ジュリーの「焦らしセトリ」にあやかっていますね。やってる方はひどく楽しいことが分かりました~。

そうそう、「誕生日」は確か譜面もあるはず・・・ゴソゴソ。
ありました。

Tanjoubi1

こちらは拙ブログにはたびたび登場いたします、深夜放送ファン・別冊の『沢田研二のすばらしい世界』(昨日神保町古書街にて、1万5千円で売られているのを確認いたしました)から。
この本には、『JULIEⅣ~今僕は倖せです』収録曲はすべて掲載されています。

もうひとつのお宝本、『沢田研二のすべて』はどうだったかな・・・。
ありゃ、こちらは「誕生日」は割愛されていました。アルバム全曲載ってたんじゃなかったのね・・・。

でね。
「誕生日」が載っていないか探してパラパラとページをめくっておりましたら、『JULIEⅣ~今僕は倖せです』の他の収録曲に、凄まじい誤植を発見してしまいました~。
コードが違う!とかそういう専門的なことじゃないんです。ジュリーファンなら誰しもが一発で分かる、誤植・・・(いや、ジュリーファンでなくとも分かるか)。

Tanjoubi2

いくらなんでも、これはヒドい!
まぁ、この大らかさが古き良き時代を感じさせ、かえって貴重とも言えますか・・・。

さぁ、次回更新でいよいよ6月も最後。
冒頭に書きました通り、7月になったら完全にタイガース・モードへと切り替える予定。しばらくジュリーのソロ音源から離れます。
区切りのジュリー・ソロ・ナンバーは・・・まったく有名でもなく、先輩方やJ友さんからもめったに感想を聞くことのない、多くのジュリーファンにとってはおそらく相当に地味な曲。

でもその曲、僕は個人的にとても勇気の沸く、何か事を始めるにあたって指針を与えてくれ、大きな力となってくれる、とてもとても大好きな曲なのです。

7月、8月もこの執筆ペースを守れるよう、ジュリーの曲に改めて力を貰おうと思っています! 

| | コメント (10) | トラックバック (0)

2011年6月23日 (木)

沢田研二 「ジャスト フィット」

from『MIS CAST』、1982

Miscast


1. News
2. デモンストレーション Air Line
3. 背中まで45分
4. Darling
5. A.B.C.D.
6. チャイニーズ フード
7. How Many "Good Bye"
8. 次のデイト
9. ジャスト フィット
10. ミスキャスト

----------------------------------

北のみなさま、今朝の地震・・・大丈夫だったでしょうか?
すべての人の無事を祈っています。

こちらは、昨日ちょっと悲しいことがありました。
関東在住ジュリーファンの僕が、他ならぬ昨日に「悲しいこと」とくれば、お察しの方も多いと思いますが・・・。
来たんです、澤會さんからのハガキが。

20110622_2

実は、先に帰宅していたカミさんがこれを見て、初日が外れたと勘違いしてしまいすぐメールで連絡をくれたものですから、僕はトボトボと肩を落として帰宅。
で、現物を見てみましたら、外れたのは10月のフォーラムでした。

落選は残念ですが、一番ダメージの軽いトコを外したということで・・・ひとまず初日の有給予約は無駄にならなかった・・・ホッ。

でも、多くの先輩方が東京、京都ともに落選の憂き目に遭われているようです。
僕が外した10月のフォーラムにしても、あの広い会場にもかかわらずこの状況・・・やはりいつものツアーとは何か違う動きが、各方面にあるのでしょうか。
澤會さんも、今回はこうしてお手数をかけて「第2希望振り替え」の案内まで送ってくださるし、ジュリーのオフィシャルサイトも、いち早くその旨をお知らせしていますしね・・・。
とにかく、これまではチケット到着まで第1希望か第2希望か分からなかったことを考えると、早めに予定がハッキリするのは、有り難いことですね。

さて、それでは気をとり直して。

前回記事「親父のように」は、父の日から1日遅れの更新ということになりましたが・・・。
前々からお題を決めていた今回の「ジャスト フィット」ね・・・これまた”1日遅れ”なんだということに、今になって気づいた!

僕のところへ遊びにいらして下さるほとんどのみなさまもお読みでしょうが・・・僕が毎日お邪魔させて頂いているじゅり風呂さん、星のかけら様が、毎日年代順にジュリー関連のオリジナル・アルバムについて1枚ずつ、記事を書いていらしゃるんです。
・・・で、昨日が『MIS CAST』の順番だったんですよね~。

いや、いつからか
「同じアルバムについて同時に書く日があるかなぁ」
なんて、漠然と思ったりはしていたんですけど。

僕が何処かで更新を1日前倒ししていたら・・・前回の父の日もそうですけど、今回の『MIS CAST』がズバリ「ジャスト・フィット」だったのか!!
惜しいことをしました・・・。

まぁ、僕のような者がそこまでビシッとやると、カッコつけ過ぎで逆に恥ずかしいですからね~。
1日遅れくらいが丁度良いかも。

ということで、今日は『MIS CAST』。
拙ブログでこのアルバムからお題を採り上げるのは、今回が初めてとなります。
何と言ってもやはりこの曲から書くべきでしょう。何人かの先輩方から、リクエストも頂いているナンバー。
超・LIVE盛り上がり曲、ソロツアーのセットリスト定番曲だというのに、僕はまだ一度も生で体感したことがないぞ~(泣)。
と叫びながら、「ジャスト フィット」、伝授!

まずは、ちょっと『MIS CAST』から時代が離れるお話から始めたいのですが・・・。
僕などが言うまでもないことですが、エキゾティクスと離れ独立したジュリーは、CO-CoLO期、JAZZ MASTER期を経て、1995年に自身何度目かの大きな転機を迎えます。
自らの作品制作に対する信念を貫くべく、ということなのでしょう・・・アルバムのセルフ・プロデュースに踏み切ったのです。
以来、ジュリーはオリジナル・アルバム制作をすべてそのスタイルで通してきていますね。

ただ、本格的にセルフ・プロデュース期に突入するにあたって、熟慮しなければならない点がひとつ、あったのではないかと僕は考えています。

長いキャリアと類稀なる才能によって、音源作品制作に関わるほとんどの作業を自ら指示・統括することが可能なジュリーですが、ただ1点、自力ではなく、イニシアチブを他の人に託さなければならないことがあります。
それが、アレンジメント・・・編曲ですね。
他のことはすべて自分で決定するわけですから、編曲についてのみ託すとなると、技量以前に、よほどジュリー自身が信頼を置ける人物でなければなりません。

1995年のアルバム『sur←』でジュリーが選んだプロフェッショナルの中、特に大きな比重でアレンジメントを任されたのは、お2人。
白井良明さんと、大村憲司さんです。
大村さんは、前94年のツアーに帯同していらっしゃったようですので、その流れでの起用だったのでしょうか。

いずれも卓越したアレンジ・センスを持つギタリスト。
アルバム『sur←』はそんなお2人がまるで「ジュリーの信頼を勝ち取るのは俺だ!」と競い合っているかのように素晴らしいアレンジを擁した楽曲の連続。どちらの個性も充分に発揮され、それが作品の完成度を高めているように思います。

結局、白井さんはその後十数年にわたりジュリーのアルバムのアレンジメントを単独で任されることになり、一方の大村さんは・・・みなさまご存知でしょう、その後すぐに若くして亡くなってしまったのです・・・。

『sur←』の大村さんの編曲は本当に素晴らしく、このアルバムに限って言えば、僕はどちらかというと大村さんのアレンジ担当した楽曲の音作りの方が好みだったりします。
これだけの成果を残したのですから、ひょっとしたら『sur←』リリース後には、この先ずっと大村さんに・・・とか、大村さんと白井さんを交互に・・・という案もあったのかもしれません。あくまで想像でしかありませんが・・・。

そんな大村さんと白井さんの個性のぶつかり合いを、ジュリーファンならば同じ楽曲のアレンジを通して堪能してみたいところ。
同一の曲に、アレンジャーによってどんな違いが表れるのか・・・それが実際に味わえるナンバーこそ、「ジャスト フィット」なのです!

白井さんのアレンジはジュリーの『MIS CAST』で。
そして、大村さんのアレンジは、作詞・作曲者である井上陽水さんのヴァージョンで。

先述の通り、僕がアルバム『MIS CAST』収録曲を記事に採り上げるのは今回が初めてになります。
『MIS CAST』の白井さんのアレンジはとても高度で語るべき点が多く、いくつかの曲については早く書きたい気持ちが強かったのですが、このアルバムの曲を語るには、井上陽水さんについて少し勉強してからでなくては、と考えていました。
そこでこの度、昔レンタルで1度聴いたきりになっていた陽水さんのライヴ・アルバムを改めて購入いたしました。
それがこちら。

Justfit 

『クラムチャウダー』というアルバムです。
大村さんがアレンジャー&ギタリストとして大活躍。
大村さんの他にも、ジュリーファンにはお馴染みの村上ポンタさんがドラムスを担当。あと、泉谷しげるさんの『オールナイト・ライヴ』収録の「つなひき」での戦慄の名演で19歳の僕をノックアウトしたピアノの中西さんなど、錚々たるメンバーによる情熱的な作品・・・名盤ですね。

収録曲の中でで有名なのは、若き日の陽水さんと忌野清志郎さんが作詞・作曲を共にした「帰れない二人」。或いは、安全地帯の大ヒット・ナンバーである「ワインレッドの心」あたりでしょうか。
しかしジュリーファンの目を惹くのは、「ミスキャスト」そして「ジャスト フィット」の2曲です。

「ミスキャスト」(曲の方ね)について少し触れますと、ジュリー・ヴァージョンでは良い意味で変テコな、サイケ・テクノみたいな雰囲気に仕上げられていますが、陽水さんのヴァージョンはシャッフル、スウィングのリズムを強調した、直球のジャジー・バラードです。
この違いも面白いですよ。いつか「ミスキャスト」もお題に採り上げ、その辺りを詳しく語りたいと考えています。

さらに、陽水さんヴァージョンの「ジャスト フィット」「ミスキャスト」については、資料となる譜面もあります。

20101227

Justfit3


ドレミ楽譜出版社・刊 『井上陽水/ギター弾き語り曲集』より

「ジャスト フィット」は、ジュリーも陽水さんも同じキー(イ短調)で歌っています。
メロディーもコード進行も、ほぼ一緒。
ではそれぞれがどのように違うのか、というのがアレンジの話になるわけですが・・・。

何と言いましても、ギターの音色がずいぶん違う。まず陽水さんヴァージョンの「ジャスト フィット」は、ライヴテイクということもあるのでしょう・・・トータルタイムが8分を超える大作なんですよ~。
そして・・・とにかく大村さん、弾きまくりです!

陽水さんのこのライヴ、バンド編成はJAZZ MASTERと似通っている点が多くて、ギターは大村さん一人なのです。
つまり、バッキングもソロもバシバシ!と縦横無尽のギタリスト一人舞台。ギター・ソロ部ではシンセサイザーとパーカッションがバッキングに回ります。

そのギター・ソロ。
2番と3番の間、時間にして2分30秒にも及ぶ熱演、これは凄いです。デイヴ・ギルモアのようなハード・リヴァーブな音色で、スリリングな不協和音なども交えながら疾走します。
エンディングもギター・ソロですが、そちらでは陽水さんのシャウトと大村さんのギターの掛け合いのような感じになっています。

一方のジュリー・ヴァージョンですが・・・。
これはもう、ジュリーの過去ツアーのセットリストを勉強したり、DVD『REALLY LOVE YA!!』を鑑賞したりした後では本末転倒な評価になってしまっているとも言えるのですが、LIVE演奏への着眼よりも、純粋にレコーディング作品として、音源作品として力を込めた仕上がりなんですよ~。
ギターの音色もどこかクールで、計算され尽くしている感じでね。

『MIS CAST』は、モロに”ムーンライダーズの白井良明”という感じがします。
1982年と言えば、ムーンライダーズというバンドのキャリアにおいても重要な年。
前衛的と言って良い、”王道な変化球”(というのも変な言い方ですが)が頂点を極めた時期。求道の志、湯水のごとく溢れ出すアイデア・・・そんな状況の中で、ムーンライダーズの白井さんがその才気をそのまま持ち込んで。
しかも歌うのはジュリー、曲は井上陽水さんとくればこれは正にミスキャスト!

今回2つのヴァージョンを聴き比べ、「ジャスト フィット」の白井さんのアレンジで「あっ、明らかに陽水さんヴァージョンと違う!」と思ったのは

♪ カーラジオがからかう ♪

の部分。
陽水さんの方はこの2小節を「C」のコード(ド・ミ・ソの和音)を逸脱せずにストレートに引っ張るのに対し、ジュリー・ヴァージョンでは各楽器がCコード演奏の中、ベースラインを2拍ずつ「C→B→A→G」と下降させます。
続く「メイン道路の外れで♪」のコードがF(ファ・ラ・ドの和音)ですから、音階移動で言うと「ド→シ→ラ→ソ→ファ」まで一気に駆け下りる感じになるのです。
同じ和音を引っ張り続けてトランスしながらも、ベースラインだけが目まぐるしく動く手法は、いかにもテクノ・サウンドっぽいアプローチ。当時の”白井良明”のイメージと合致するものだと考えます。

後のジュリー・セルフプロデュース期のアレンジに耳慣れた今だと、「白井さんもずいぶん変わったなぁ」なんて思ってしまいますけど、まぁとにかく変態的、という点につては不変ですかね(褒めてます!)。

そんな、凝りに凝った、レコーディング作業に特化したようなアルバムの中から、「ジャスト フィット」をエロティックなロック・ナンバーとしてLIVEの定番曲へと変貌させてしまう・・・それがジュリーなんです!
みなさま、タイムリーでアルバム『MIS CAST』を聴いた際
「いいアルバムなんだけど・・・LIVEでは盛り上がるの?」
みたいな感想を持たれたりはしなかったでしょうか?
「ジャスト フィット」があれほど凄まじいステージングになり、その後ずっと歌い続けられていくことになると予想できました?
ジュリーのLIVE感覚というのは、本当に凄いですよね・・・。


ジュリー、井上陽水、白井良明。
この、当時としては一見、てんでバラバラなトライアングルが見事に融合したアルバムが『MIS CAST』。
エキゾティクス期の中では地味なようですが、大変重要な1枚だと思っています。

『MIS CAST』は幾多のジュリー・アルバム全体の歴史においても、最大の異色作であることは確かでしょう。
陽水さんのこと、エキゾティクスのこと、そしてジュリーの変幻自在のヴォーカルについてはこれまで多くの方々が語ってきたに違いありませんから、僕は今後このアルバムからお題を採り上げる際には、アレンジに着目して書いていきたいな、と思っている次第です~。
次に書くとすれば、タイトルチューンの「ミスキャスト」か、それともアルバムの中で僕が一番好きなナンバー「News」か・・・いずれかになるでしょうね。

さてさて次回更新・・・3日後は26日ですか。
またまた”1日遅れ”な内容になるんですが、ジュリーの誕生日をお祝いする短い記事になる予定です。
お題は、ジュリー作詞・作曲の初期のナンバー。
ってここまで言ったら、みなさまにはもう何の曲なのか丸わかりだとは思いますが・・・。

短い記事になるというのは、実は今週末、カミさんのご両親が我が家に遊びにきてくれるので、長文執筆する時間がとれないのよ~。
でも、そこはほら、”初期のジュリー作詞・作曲作品”ということにかこつけて、『女学生の友』連載の”フォト&ポエム”画像をご紹介させて頂きますから!

普段が基本、
字ばっかりのじゅり風呂なんでね・・・(汗)。
たまには美しいジュリー画像を・・・楽しみにお待ちくださいませ~。

| | コメント (20) | トラックバック (0)

2011年6月20日 (月)

沢田研二 「親父のように」

from『JEWEL JULIE -追憶-』、1974

Jeweljulie_2

1. お前は魔法使い
2. 書きかけのメロディー
3. 親父のように
4. ママとドキドキ
5. 四月の雪
6. ジュリアン
7. 衣装
8. ヘイ・デイヴ
9. 悲しい戦い
10. バイ・バイ・バイ
11. 追憶

----------------------------------

1日遅れですが、「父の日」に記事を捧げます。
と言ってもいつもの感じの楽曲考察記事ですけどね。お題を「父親」を扱ったジュリー・ナンバーから選ぼうと思い立った、というだけのことで・・・。


で、”父親”を歌ったジュリーナンバーって、結構あるんですよね。

すぐに思いつくのは、アルバム『告白-CONFESSION-』収録の「DEAR MY FATHER」と、『耒タルベキ素敵』収録の「あなたでよかった」。
パターンは異なりますが、『JULIEⅡ』収録の「男の友情」も、ジュリーの分身のようなアルバムの主人公の少年が、港町で出逢った年上の船乗りと友人になり、
「顔さえしらないけど、親父を思い出すよ♪」
と歌う一節があります。

どの曲も素晴らしく採り上げるお題に迷うところですが・・・今回は、アルバム『JEWEL JULIE 追憶』にひっそりと収録されている佳曲を選ばせて頂きました。

「親父のように」、伝授です~。

(註:このお題、shamrock様に見事に先を越されてしまいましたが・・・それが逆に嬉しかったです。最近更新が滞っていらっしゃったから・・・お元気そうで安心しました~)

息子から見た”親父”。
ジュリーファンはやはり女性が多いですから、男性ファンの僕としては、まずそのあたりの感覚から語ってまいりましょう。

先日、同僚M君の結婚披露宴に出席してまいりましたが・・・まんまと泣かされてしまいました。
最後の新郎挨拶でね。
かしこまった言葉じゃなかった分、響いた・・・。

M君の左隣には親父さんがひとりだけ。
まずはそちらを向いて
「親父、今日はありがとう。長生きしてくれ」
と。
親友に語りかけるような口調でした。
(父親と息子って、息子がある年齢に達すると、友達同士のような関係になるんですよ。これは女性には分からないことかも・・・)
そして、今度は空を見上げて
「おふくろ~!やっと結婚したよ。喜んでるかな?これからも、天国から見ていてくれ~!」

これでノックアウトされたDYNAMITE、滂沱の涙、涙。
M君自身は、少し声が上ずっていたけど、最後まで泣かなかったなぁ・・・凄い。

僕とM君は家庭の境遇が似通っていて、二人とも長男であるにもかかわらず家を飛び出て上京し、バンド活動などしつつ、そのまま都会にいついてしまいました。
そうこうしているうちに母親を早くに亡くし、父親を遠く離れた故郷に一人残しているという・・・(M君は北海道、僕は鹿児島)これも一緒。
「帰ってこなくていい。オマエの好きにしろ」
二人とも、父親からはそう言われています。
有り難いことですし、”親父”というのはやっぱり大きいなぁ、とも思います。

僕はずっと前から父親に
「女性は一人でも大丈夫。だが男は結婚してなきゃ所詮半人前だ。無理に結婚しなくてもいいが、自分が半人前だという自覚はしておけ」
と言われてきました。

楽譜の仕事で東京に留まることを決めた時も
「帰ってこなくていい。ただ、お母さんには時々手紙を書け」
と。
母を亡くした時には
「俺も半人前に戻ったなぁ」
というようなことを言ってたっけ・・・。

男3兄弟の中、長男の僕だけがいつまでも独身でいましたが、ご存知の通り僕は年齢的にもちょうど『ジュリー祭り』で厄を超え(というか吹き飛んだ)、父親すら「ええっ!」と驚くほどに、突然の結婚をしました。
安心したんでしょうね・・・父は今、70越えて元気に走り回って遊んでいますよ。
柔道などで身体を鍛えていますし、僕と違って健康的に太っています。そんな父を見ていると、ジュリーの元気な70越えの姿も想像できる・・・と言ったら失礼かもしれませんが・・・。

ジュリーは長男ではありませんが、早くに母親を亡くして、故郷に父親を残し都会で頑張っていることは共通していますねぇ。
だから、「親父を思う」気持ちはひょっとしたら近いものがあるかもしれない・・・なんて、不遜なことを考えたりします。
父の日にジュリーはどんな贈り物をしたのでしょうか。
僕は、ウケを狙ってステテコを贈りましたが・・・。

さて、「親父のように」という楽曲。
これはサリーの作詞。
ジュリーの父親については何となく想像していた僕でしたが、ついこの間までは、「サリーの父親」に思いを馳せることなどなかった・・・。
ついこの間・・・というのは、みなさまならもうお分かりでしょう。ピーがラジオで、サリー(とシロー)の親父さんについて少し語っていましたね。

「サリーの親父は口が上手い。シローも上手いけど親父さんはもっと・・・」
といった内容のことを、ピーが教えてくれました。
何も知らない後追いの僕としては
「えっ?シローは口が上手かったの?・・・あぁそうか、ステージでおしゃべりコーナーとかあったんだっけ。本人も、トークに活路を見出した、とか言ってたんだっけかな・・・」
と、まずはそこらあたりから認識し直したりする時間を必要とするわけですが。

♪ なにげなく 変わらない 
      G      D   

  優しさ             教えた
    Em  Em(onD)   C   C#m7-5

  小さかった私  達に
     G       B7  Em  C#m7-5

  愛される人になれと ♪
     G      D         C7

”私達”とは、姉弟全員でしょうか。サリーとタローのことでしょうか。
それとも、「東京の奴らなど怖るるに足らず」とピーが教えてくれた逸話を知った今では・・・タイガースのメンバーなど、サリーの周りにいた仲間を含めてのことだろうか、とも考えてしまったりしますが、まぁこれは岸部兄弟幼少のイメージなのでしょうかね。

とにかく、男はなんだかんだ言っても、親父の背中を見て成長するわけです。親父に何を言われて来たかで、人生の岐路を選ぶと言っていいでしょう。

僕も色々と言われました。
兄弟の中では一番手のかかる奴だったと思います。それだけ、受けた言葉も弟達より多かったと言えるかもしれません。

♪ あなたは      歩いて来た
            C  Cm       G    Em           

  この人生の舞台を ♪
   Am7  F        D7

光も当たらない、拍手もない・・・こんなことは普通の世間一般の平凡な父親像としては当たり前ですが・・・。
何気ないありきたりの言葉を切実に聴かせるというサリー作詞の個性は、この曲でも随所に味わうことができます。
嫌味がなく、余分な力が入ってなくて淡々としているのが、特に70年代の空気に合っているのです。”自らを俯瞰して突き放す感覚”の詞がロックと言われ始めた時代ですからね。
歌詞中、「あなたを手本に」みたいなことはまったく言っていないわけですが、タイトルは「親父のように」。この奇妙な距離感がイイのです。

ジュリーは当然、自らを投影して歌ったのでしょう。
アルバム『JEWEL JULIE 追憶』では、バンドメンバーの作品をジュリーが我が事のように歌う、という大きな特性があります。この特性を見出せる作品は、長いジュリーの歴史上でも、この1枚きりではないでしょうか。

作曲は速水清司さんですね。
実は僕は『ジュリー祭り』参加の頃、ポリドール時代のアルバムはすべて聴いていましたけど、この『JEWEL JULIE 追憶』について正統な評価ができていませんでした。
聴きこみが足りなかったんでしょうねぇ・・・”良い意味で荒削りなアルバム”という、うわべだけの感想を持っていたのです。
そんな中、当時の段階で気に入った収録曲として「ジュリアン」「バイ、バイ、バイ」「ヘイ・デイヴ」をYOKO君と語る際には挙げていました。
偶然にも3曲中2曲までもが、速水さんの作曲作品なんですよねぇ。

その後アルバムを聴きこみ、『JWEWL JULIE 追憶』は僕にとっても格別好きな作品となっていますが、新たに「親父のように」を含めた速水さんの3作品を特に評価している点は変わりません。
まぁ、1番好きな曲は「ジュリアン」から「衣裳」(大野さんの作曲作品)に変わってしまったのですが・・・。

「親父のように」は3連符のロッカ・バラード。
アルバムをタイムリーでお聴きになったジュリーファンの先輩でしたら、この曲の演奏や譜割パターンは、「LOVE IN VAIN」が馴染み深く思い出されるのではないですか?
しかし僕は同じローリング・ストーンズのナンバーの中でも、「親父のように」に近いのは「LOVE IN VAIN」よりも「I GOT THE BLUES」というナンバーだと考えています。
「LOVE IN VAIN」よりも少し後にリリースされたアルバム『スティッキー・フィンガース』に収録されている曲です。
速水さんは「親父のように」の作曲で、「アイ・ガット・ザ・ブルース」の雰囲気に加えてプログレッシブ・ロックのエッセンスも取り入れており、コーラスワークも含めかなり凝ったバンド・アレンジを引き出していますね。
大野さんのオルガンなど、たまらなく渋いです。

ギターのフレーズはかなり泥臭いブルース音階を繰り出します。
ブルースらしいコード進行はAメロからすでに登場していて、先述した歌詞部に登場する「C#m7-5」という和音が特徴的。
「C#m7-5」(=C#m7♭5)なんて言うと、なんだか複雑そうな印象を受けるかもしれませんが、フォームは簡単なローコードで押さえられます。

Cm75_2 


『PAUL McCARTNEY CHORD SONGBOOK COLECTION』収載
「HERE TODAY」より。


覚えておくと何かと便利なコードフォームのひとつです。
「親父のように」のギター・アンサンブルは左がブルース・リード・ギター、右がアルペジオと分かれてミックスされていますので、聴き取りやすかったです(ただし、ピッチが少しおかしい。まぁ、絶対音感のある方以外にとっては、その点まったく問題ありませんが・・・僕もギターで合わせてみて初めて「あれっ?」と気がついたくらいですから)。

『ジュリー祭り』参加時にはまだまだ分かっていなかったこのアルバムの魅力・・・改めてアルバムを通して聴き込むきっかけを作ってくれたのは、『奇跡元年』で歌われた「ヘイ・デイヴ」。
今考えると、奇跡の選曲だったのですね・・・当時、ネット各地で先輩方が「ヘイ・デイヴ」を激賞なさっていたのを、懐かしく思い出します。
「ヘイ・デイヴ」も3連符のブルージーなロッカ・バラードということで、「親父のように」と似たグルーヴがあります。

結局この『JEWEL JULIE 追憶』というアルバムは、バンドサウンドの魅力ということになるんですよね。
ですから、いかな大ヒット、いかに大名曲と言えど、アルバムのラストが「追憶」というのは違和感がある・・・僕は最近、そっちの方が気になり始めましたよ・・・。
「バイ・バイ・バイ」で終わっていた方が潔かったんじゃないかなぁ。「追憶」は確かに素晴らしい名曲ですけど、このアルバムのコンセプトには合致していないような・・・。

ただ、じゃあここでは割愛して、リスナーが「追憶」を聴くのは『A面コレクション』で・・・、というワケにもいきません。このアルバムに収録された「追憶」のヴァージョンは、シングルとはまったく違うスペシャルなものなのですから。
仕方なかったのですか・・・。
「追憶」は多くの先輩方が絶賛のナンバーですし、案外この8枚目は先輩方にとって『追憶』というアルバムなのかもしれません。

「親父のように」「ジュリアン」「バイ・バイ・バイ」収録のこのアルバム、速水さんにとっても思い出深い作品なのでしょうね。
僕は速水さんについてはまったくタイムリーな知識が無く、過去のジュリー・ナンバーで勉強するしかありませんが、先輩から「おまえは魔法つかい」のリード・ギターが速水さんだと伺ったりしますと、なかなか考えさせられるものがあります。

屈指のテクニッシャン・ギタリストであり、その一方で、素晴らしい作曲家。
ジュリーの周りには、若い頃から本当にバラエティーに富んだ才能が集結していたのですね・・・。

| | コメント (18) | トラックバック (0)

2011年6月17日 (金)

沢田研二 「青春藪ん中」

from『告白-CONFESSION-』、1987

Kokuhaku


1. 女びいき
2. 般若湯
3. FADE IN
4. STEPPIN' STONES
5. 明星-Venus-
6. DEAR MY FATHER
7. 青春藪ん中
8. 晴れた日
9. 透明な孔雀
10. 護り給え

--------------------------------

福島のことを思うと、何故か同時に自分の故郷を重ねて思うようになっているこの頃・・・。

先日、トッポファンの先輩から頂いたコメントで、トッポが鹿児島に縁のあることを教わり、何となく故郷に思いを馳せておりましたら・・・。
故郷・鹿児島の高校で同級生だったN君から突然電話がありました。

なんでも、毎年夏に行われている母校の卒業生主催の同窓会・・・今年は僕等の学年が幹事なんだそうで。
その件で何人かの同級生が集まって打ち合わせしている飲みの席で、ふと思い立って電話してきたみたい。

例年、幹事年度組の同窓生は出席率が高くて
「(自分達の学年)みんなが一同に揃うのは、これが最後かも」
とのことでしたが・・・。

開催日が8月7日って!
日曜やん・・・次の日の仕事をどうすれば~!
お盆前のタイトなスケジュールの時期だからなぁ。簡単に有給とれないよ・・・。

そりゃあ、みんなに会いにいきたい。

20年くらい会ってない奴等が、結構な人数いますしね。
警察官になった奴、教師になった奴、地元で会社を興した奴、これまた地元でお好み焼き屋を始めた奴・・・。
会ってないなぁ、20年。

「あのマサシが結婚したらしいぞ。相手は何考えてんだ」

(註:クラスメートに同姓がいるので、下の名前で呼ばれてるんです)

な~んて皆に言われてるに決まってるから、イチから顛末を説明しとかにゃならんような気もするし・・・。

N君は持ち前の豪快な口調で
「ちった~無理しっせ~け!」
(翻訳:「少しは無理してでも来い!」)
と言い放っていました。

どうにかならんか、少し考えてみるか・・・。

ということで、今回は
”20年ぶりの友人に、抜き打ちで会いに行く”
というテーマの名曲がジュリー・ナンバーにあったことを思い出しましたので、お題に採り上げさせて頂きます。

アルバム『告白-CONFESSION-』から。
「青春藪ん中」、伝授!

『告白-CONFESSION-』は、全曲ジュリー自身による作詞。オリジナル・アルバムとしては、『JULIEⅣ~今僕は倖せです』以来になりますか。
そして作曲は当時のバンド、CO-CoLOのメンバーが担当という中で、「青春藪ん中」だけは作曲もジュリーなのですね。

♪ 20年ぶり手紙が届いたから
  E                           F#

  返事も出さず車を飛ばして ♪
  B                               E

え~と、最後の歌詞は「飛ばして」ではなく「飛ばした」なのかもしれません。
僕はこのアルバムの歌詞カードを持っていないんですよ・・・(涙)。だからこれまで、『告白-CONFESSION-』収録曲の記事執筆率が低いとも言えるのです。

ジュリーのヴォーカルは、他の歌手やバンドに比べて圧倒的に歌詞は聴き取りやすいのですが、この『告白-CONFESSION-』というアルバムは、ジュリーの作品の中で唯一と言っていいかもしれない・・・「た・ち・つ・て・と」が「つぁ・つぃ・つ・つぇ・つぉ」な感じで発音されているんですよね・・・。

これは80年代邦楽ポップスの流行り。
先日「Tell Me...blue」の記事で書きました大澤誉志幸さんも、そう。
まぁ大澤さんは今でも
「逢えてよかっつぁ♪」
と歌っていらっしゃいましたが、ジュリーがこの手の発音を連発するのは『告白-CONFESSION-』だけじゃないかなぁ。

ですから上記箇所のヴォーカルが「た」なのか「て」なのかハッキリ分からないんです。
CDが再発されたら、絶対購入し直します。僕のようなリスナーにとって、歌詞カードというのはとても重要なものなのですよ~。

いずれにしても、この導入部の歌詞には大きな共感を覚えます。
懐かしい友人・・・10代半ばの友人でしょうね。20年ぶりに「手紙が届いた」ことを受けて、ジュリーはいてもたってもいられなくなり、返事を書くより先に直接会いに行ってしまう、という歌です。

心躍るナンバーですよ!
僕だって、同じ状況ならそうしたい。
でも、ジュリーは京都でしょ~?それに比べて鹿児島は・・・やっぱり遠いですよ~。

『告白-CONFESSION-』は私的なアルバムと言われ、ちょっと内にこもったような印象が確かにあります。
しかし「般若湯」「STEPPIN' STONES」「透明な孔雀」と共に、「青春藪ん中」のカラリとした等身大の明るさは、ジュリーがこの頃最も表現していきたかったテーマ、曲調なのではないでしょうか。

先程、ジュリー全収録曲作詞の作品として『JULIEⅣ~今僕は倖せです』を挙げましたが・・・ジュリーのスタンスは何ら変わってはいない(と言うか、独立を機に本来のスタンスに戻ったのでしょうか)・・・その純粋な志に驚きます。
身の回りの些細な出来事を歌に託す・・・その中で「友情」というファクターが、デビュー当時からずっと大きいのでしょうね。
特に「青春藪ん中」は、作詞・作曲ともにジュリーということで、『JULIEⅣ~今僕は倖せです』の制作コンセプトに近い、と考えてしまうのは僕だけでしょうか・・・。

さてさて、導入部の話はまだ続きます。
この「E」→「F#」→「B」→「E」というAメロのコード進行について。
音階で言いますと「ミ・ソ#・シ」→「ファ#・ラ#・ド#」→「レ#・ファ#・シ」→「ミ・ソ#・シ」ということになります。

2番目に配置されている和音「F#」=「ファ#・ラ#・ド#」が、まぁ珍しいというほどではありませんが、一般的にさほど使用頻度の多くない、ちょっとひねった進行なのです。
トニック・コードから始まって、次にいきなり1音分跳ね上がる、というね。

ジュリーがこの「E」から「F#」へと移動する進行を会得したのは、キーは違いますがおそらくローリング・ストーンズの「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」かな?
或いはビートルズの「ユー・ウォント・シー・ミー」かもしれない。
とにかくジュリーはこの進行が気に入っているようです。何故そう言えるかというと、

♪ 寒いくらいにエアコンきかして
  E                                  F#

  おまえが来るのを待ちぼうけ ♪
  B                                  E

ね?
「E」→「F#」→「B」→「E」。
アルバム『A WONDERFUL TIME』に収録されている、ジュリーの作曲作品「ZOKKON」でも、全く同じ進行が採用されているんですよ!

で、いきなり話を僕の同窓生・・・電話をくれたN君に戻します。
N君は高校時代、極真カラテの猛者でした。
さらに言うと彼の弟さんは格闘技通にとっては超有名人で、極真カラテのトップクラスとして名を馳せ、また長○剛さんの親友としても名高いN保師範なのです。
N君の方は大学進学と共に空手をやめてしまったので、弟さんとは差が開きましたが、当時相当強かったことは確かです。
で・・・強くて悪かった(笑)。
でもそれは、タチが悪いという類のものではなく、”カラッとした粗暴”な感じの愛すべき友人でした。
僕の好きな言葉”粗にして野なれど卑ではない”を地で行く男。

ジュリーが高校時代に空手をやっていた、ということから、何となく僕の中ではN君のイメージが「青春藪ん中」の主人公(=ジュリー)とダブったりするのです。当然ながら容姿はずいぶん違いますけどね。

♪ 真面目なおまえ ハンパな俺とが 何故
  E                                        F#

  仲がいいのと 街中の噂で ♪
  B                               E

まぁ、N君がハンパで僕が真面目だったとは言い難いですが(汗)、二人揃っていると周囲からデコボコでアンバランスに見えていたことは間違いないでしょうね。
仲が良かったのは、主にプロレスの話で盛り上がっていたのですが(二人とも、維新軍団が好きだった)。

N君とは、少し前に20年ぶりの再会を果たしています。それが何と、2008年の年末ですよ。
あの、僕が『ジュリー祭り』直後の熱病のような状態にあった、あの年です。
遠方ということもあってずっとゆっくり帰省もしていなかった(母の命日に時々帰って、すぐにトンボ帰りをするくらいでした)僕が、久しぶりに年末年始の数日間を故郷・鹿児島で過ごしたのは、初めて同級生の訃報を経験したからです。
クラスのリーダー的存在だったH君が、突然亡くなってしまったのでした。

今回のような「同窓会の幹事」なんてのは、本来H君の役割だったはず。
その志を、N君が引き継いでいるのです。

♪ 友よ 驚けよ 笑う 顔を見せろ ♪
     A     E          A               B7

懐かしい友との再会は、お互いが生きていればこそ。
20年ぶりの友との再会を歌にしたジュリーは、そのまた20年後に、今度は約40年ぶりという友との再会を果たすことになりました。「歌」がきっかけで・・・。
それも、生きていればこそ・・・だったのですね。

「青春藪ん中」は、そんな心躍る詞とメロディーが一体となった、隠れた名曲。
アレンジもカッコイイです。
でも初めて聴いた時は、イントロで後ずさりしちゃった。ベースが入ってきて、シンセの刻みが噛み込んできた瞬間


「JUMP」かよ~!!


と思ってしまったのです。ヴァン・ヘイレンのね。
曲が進んだら、全然違うことが分かってすぐに安堵しましたけど。
(でも、イントロに限っては相当似てますね・・・)

ジュリーのヴォーカルでグッとくる箇所は、先述した「友よ、驚けよ 笑う顔を見せろ♪」の部分。
「驚けよぉぉ♪」の「ぉぉ」、それに「見せろ~イエェェ♪」の「ェェ」・・・この語尾音階を段階を踏んで下げる歌唱は、ジュリーの得意技のひとつ。
この唱法をジュリーが使うたびに、僕はジョン・レノンを思い出すのです・・・。

ジョン・レノンを思い出すということは、まぁ僕の青春の大部分と重なると言って良いかなぁ。

♪ Brother、I wanna see you 青春は
  C#m                  G#m      B    C#m

  Brother、I wanna talk to you タバコの匂い ♪
  C#m                  G#m             B          C#m

ハハ・・・確かにタバコの匂いだわ。
この「青春藪ん中」という曲は、男性ファンに人気のあるナンバーなのかもしれませんね。
「不良時代」以上に、男度数が強いような気がします。

それでは。
次回更新、例によって3日後ですから、「父の日」1日遅れですが・・・父親に捧げる記事を予定しています~。

| | コメント (18) | トラックバック (0)

2011年6月14日 (火)

沢田研二 「15の時」

『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Yeas』収録
original released on 1973 シングル「魅せられた夜」B面

Singlecollection1


disc-1
1. 君をのせて
2. 恋から愛へ
disc-2
1. 許されない愛
2. 美しい予感
disc-3
1. あなただけでいい
2. 別れのテーマ
disc-4
1. 死んでもいい
2. 愛はもう偽り
disc-5
1. あなたへの愛
2. 淋しい想い出
disc-6
1. 危険なふたり
2. 青い恋人たち
disc-7
1. 胸いっぱいの悲しみ
2. 気になるお前
disc-8
1. 魅せられた夜
2. 15の時
disc-9
1. 恋は邪魔もの
2. 遠い旅
disc-10
1. 追憶
2. 甘いたわむれ
disc-11
1. THE FUGITIVE~愛の逃亡者
2. I WAS BORN TO LOVE YOU
disc-12
1. 白い部屋
2. 風吹く頃
disc-13
1. 巴里にひとり
2. 明日では遅すぎる
disc-14
1. 時の過ぎゆくままに
2. 旅立つ朝
disc-15
1. 立ちどまるな ふりむくな
2. 流転
disc-16
1. ウィンクでさよなら
2. 薔薇の真心
disc-17
1. コバルトの季節の中で
2. 夕なぎ
disc-18
1. さよならをいう気もない
2. つめたい抱擁
disc-19
1. 勝手にしやがれ
2. 若き日の手紙
disc-20
1. MEMORIES
2. LONG AGO AND FAR AWAY
disc-21
1. 憎みきれないろくでなし
2. 俺とお前
disc-22
1. サムライ
2. あなたに今夜はワインをふりかけ
disc-23
1. ダーリング
2. お嬢さんお手上げだ
disc-24
1. ヤマトより愛をこめて
2. 酔いどれ関係
disc-25
1. LOVE(抱きしめたい)
2. 真夜中の喝采
disc-26
1. カサブランカ・ダンディ
2. バタフライ革命
disc-27
1. OH!ギャル
2. おまえのハートは札つきだ
disc-28
1. ロンリー・ウルフ
2. アムネジア
disc-29
1. TOKIO
2. I am I(俺は俺)
disc-30
1. 恋のバッド・チューニング
2. 世紀末ブルース
disc-31
1. 酒場でDABADA
2. 嘘はつけない
disc-32
1. おまえがパラダイス
2. クライマックス
disc-33
1. 渚のラブレター
2. バイバイジェラシー
disc-34
1. ス・ト・リ・ッ・パ・-
2. ジャンジャンロック
disc-35
1. 麗人
2. 月曜日までお元気で
disc-36
1. ”おまえにチェック・イン”
2. ZOKKON
disc-37
1. 6番目のユ・ウ・ウ・ツ
2. ロマンティックはご一緒に
disc-38
1. 背中まで45分
2. How Many "Good Bye"
disc-39
1. 晴れのちBLUE BOY
2. 出来心でセンチメンタル
disc-40
1. きめてやる今夜
2. 枯葉のように囁いて
disc-41
1. どん底
2. 愛情物語
disc-42
1. 渡り鳥 はぐれ鳥
2. New York Chic Connection
disc-43
1. AMAPOLA(アマポーラ)
2. CHI SEI(君は誰)
bonus disc
1. 晴れのちBLUE BOY(Disco Version)

----------------------------------

ふ~(汗)。
ご覧の通り今回は、お題収録作品のご紹介といたしまして、『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Yeas』収録曲、すべてを書き起こしてしまいました。
みなさまにおかれましては

これは、DYNAMITEが時間の無い中でなんとか大長文記事のノルマを果たそうとして無理矢理書き起こしたのではないか?

などと、考えてはいらっしゃいませんか?

・・・・・・その通りです!

前回の「ふたりの橋」がちょっと特殊な感じで短めの記事になったわけですが・・・。
DYNAMITEは最早
「2回続けてサクッとした短い記事にすることが自分で我慢ならない」
という異常な意気込みの元で、このブログ執筆に取り組んでいるのです・・・(汗)。

ところが、19日に行われた、同僚のジューン・ブライドな結婚式・・・2次会までノリノリで参加し、ヘロヘロになって帰宅。

(無事に『greenboy』を手渡すと、「そういや、荷物整理してたら『勝手にしやがれ』のシングルが出てきた、と言っていました。新郎のM君は僕と同い年ですから・・・やはりそういう世代ということなんですねぇ・・・)
料理はほとんど食べずに、奨められるままに酒ばかり飲んでいて(特に、披露宴の方ではテーブルで一番の若輩だったので、集中砲火に逢った)、そのせいか当日深夜3時頃にゴソゴソとアイスなど食べたり・・・結果、普通に出勤した翌月曜日は当然の寝不足。
そんな調子では、帰宅しても思うように筆は進みません。

ということで、最近自分に課しております”3日に1曲伝授”を果たすためには、本日1日で記事のほとんどの部分をを仕上げなければならない、という事態に追い込まれました。
僕は、大長文の記事を書く場合は、書きたいことを先に下書きで箇条書きにしながら構想を練ったりネタを探したりして、基本的に数日かけて仕上げているんですよ~。
1日でダ~ッと書く、ということは滅多にありません。

実は今回用に、CO-CoLO時代のナンバーをお題にして下書きを進めていたのですが、楽曲考察の中で、お題曲以外に2曲ほどコード進行やアレンジを再度確認する必要が出てきて(1曲はお題とは別のジュリー・ナンバー。もう1曲はヴァン・ヘイレンの「JUMP」!)ちょっと予定日には間に合いそうもなくなった・・・。

そこで急遽はさみこむことになったのが、今日のお題です。
シングル『魅せられた夜』B面の、ジュリー作詞・作曲による初期の隠れた名曲のひとつ。
「15の
」、緊急伝授~!
(丸1日、「15の夜」で晒されていました泣)

個人的に「15の時」という曲は、(おそらく)安井かずみさんを手本として、ジュリーが「詞を書く」というコツコツと続けてきた努力が見事に身を結び、70年代のジュリー自作詞作品の頂点を極めたナンバーだと思っています。
難しいフレーズは使わず、自分の日常、身の回りの悲しい出来事、楽しいことを題材とし、素直な表現でもって「歌」へと昇華させる手法。
これは現在のジュリーの作詞スタンスにも受け継がれるところがありますが、70年代の作品にはやはり、初々しくかわいらしいものが多いですよね。

僕はこれまで、そんな70年代のジュリー作詞の考察対象を、アルバム『JULIEⅣ~今僕は倖せです』に収束して求めていたのですが、それとは別にとても重要な、貴重な資料が存在していたことを最近知ったのです・・・。

今回のように、ヴォリュームのある記事を、しかも急いで仕上げなければならない際に、とてもありがたく有効なのは、多くのJ先輩から頂いたりお預かりしている貴重な資料をご紹介させて頂くことです。
そこで今日ご紹介するのは、以前執筆した「」の記事を読んでくださったことがきっかけで、あるJ先輩がわざわざ画像データ処理の上、僕に送ってくださったもの。

雑誌『女学生の友』に連載されていた、ジュリーの”フォト&ポエム”の切り抜きでございます~。

頂いた中のごく僅かですが、どうぞご覧くださいませ。

(クリックで大きくなります!という処理方法が今頃分かったアナログ男・DYNAMITE)

Poem1

このように、最大のポイントは、何と言ってもジュリーの直筆ということでしょう。個性のある力強い筆致です。
でも、企画としてはやっぱり写真の方が重要だったのかなぁ。

Poem8


Poem7

(たぶんここまでご紹介した3枚のショットが同じ号・・・だと思う。違ってたらごめんなさい!)

さてさて、”フォト”より”ポエム”派のDYNAMITE(いや、もちろん写真も「キレイな青年だな~」とか思いながら鑑賞してはいますよ!)、とにかく貴重な自作詞を読みふけります。

で、頂いたデータの中で僕が最も気に入っている詞は、「鳩時計」という作品です。

Poem4

ジュリーが自身の幼年時代を振り返る、本当にかわいらしい名作。頂いた中では、何故かこの”時計”を題材にしている回
だけ、手書きではないんですけどね。
「のぶちゃん」というのはジュリーのお兄さんのことなんだそうです。「ケンちゃん」はもちろんジュリーですね。

ということでいくつかご覧頂きましたが。
まぁ、みなさまご想像の通り、僕が今回この『女学生の友』の資料を記事で紹介させて頂こうと思いついたのは、先日のsaba様の御記事を拝見したからでございます。
僕にとっては超・貴重な資料ですが・・・多くの先輩方がキチンとお持ちでいらっしゃるんですね~。

てか、『女学生の友』という雑誌を僕は実際見たことも、これまで聞いたこともなかったんですが・・・一体どんな本なんですか?
知らない身としましては、結構な謎です!

で、話を強引に戻しますと、これら”フォト&ポエム”に発表された詞は、ジュリーの純朴さ、感性、そして70年代ジュリーの成長を知るのにはうってつけの資料で、ジュリーが早くから詞の鍛錬に重きを置いて活動していたことが分かります。
そして、気に入った作品やリズム感のある作品には、ギターを手にプライヴェートな時間を割いて積極的に曲をつけたりしたことでしょう。
当然、連載が終わっても(僕はこの連載がいつ頃に始まりいつ頃に終わったのかさえ知らないのですが・・・)、同様のスタイルでの作詞・作曲作業は続けられたと確信します。
その過程での大きな成果が、「15の時」であるように僕には思われるのです。

何故そう考えるのか。
・・・確かに当時のジュリーの詞作には、安井かずみさんのような天才的なフレーズ配置や、卓越した倒置法技術はまだまだ見出せません。
しかし、ジュリーには大きな武器がありました。
それは、「自分で作ったものなら上手く歌える、もっと伝えられる、という確信。自分で曲をつけ、自分で歌えばトータルで良いものになるであろうという確信です。
ジュリーは、「歌う」ことに貪欲であり向上心を持っていたため、同時に作詞・作曲についても同様の向上心を持ち得たわけです。
才におぼれぬ向上心、それがジュリー最大の武器。

当時のジュリーの作品は、単独に詞だけスラッと読んでしまえば、そりゃあ安井さんの作品には敵わない。
でも、”フォト&ポエム”連載などでコツコツ努力していくうちに、光るフレーズが随所に現れたり、語感のコツを掴んだり、何よりも「決定的に伝えたい」ことが、ある瞬間に突然ハッキリ見えてきたり・・・と、色々な感覚を身につけていったに違いありません。
「15の時」の魅力は、そこから導かれたと思うのです。

この、詞曲一体となった素晴らしさよ!

自分で曲をつけたからこその素晴らしさ・・・最大の肝は、本編のメロディーとは別に、コーダ部に「大サビ」を配置したことでしょう。

♪ 今日からは おそれることは 何もない ♪
  B♭                  F       G7       C7  A7


(註:珍しく、深夜放送ファン別冊・『沢田研二のすばらしい世界』収載のスコアと自分の採譜が一致しました笑。楽曲考察にあたって必ず自分で弾き語ってみる、ということを課している僕にとって、今回のスピード執筆、手元にスコアがある、というのも重要な条件でした)

躍動するメロディー。
何処まで行くの~!と聴いていてハラハラするくらいに、どんどん高音へと駆け上がっていくジュリーのヴォーカル・・・素晴らしい!

先程の逆もまた然りで、自分で書いた詞だから、自分が伝えたいことだから、こんな曲がつけられるのです。どちらかが自作ではないとなると、ここまでの一体感は出ません。
エンディングへ向かい昂ぶる、情熱のメッセージは・・・詞曲一体となっているからこそ熱い!熱過ぎて驚くほどではありませんか。

あと、細かいことですが、演奏部挟んでもう一丁!と大サビが帰ってくる箇所。
直前の「愛は~♪」の単純な繰り返しではなく、「この愛は~♪」となります。たったの2文字、「この」を付け足しただけなのに、臨場感が大きく増しているのも驚異の出来栄えだと思います。

ブラス・ロックなアレンジもカッコよく、最後の最後がビタッ!とドラムロールで終わるのは初期の作品によく見られる手法で、この潔さがまたイイんですよね~。
もちろんA面の「魅せられた夜」は大名曲ですけど、「15の時」はB面にしておくのは勿体無いほどの完成度だと思います。
ジュリーのシングルB面は、特に初期作品にはA面級の説得力を持つナンバーが本当に多いですね。

今回は資料の紹介やなんだかんだで分量を稼ぐ予定で執筆を始め、仕事の移動中に携帯で清書にかかりましたが、やっぱりいったん書き出すと・・・思いが溢れて暑苦しく語り倒してしまいました。
・・・それだけ大好きな曲だということでひとつ。

あ、”フォト&ポエム”はまだまだ頂いたデータがございますので、これから先、初期のジュリー作詞・作曲ナンバーをお題に採り上げる際に、引き続きご紹介させて頂こうと思います。

それでは次回記事、現在下書き中のCO-CoLO時代のナンバーにて、また3日後にお会いしましょう。

で、実はその次のお題も、もう決めてあるのよん。
ちょっと企んでる、と言うか、狙ってることがあるものですから・・・。

| | コメント (22) | トラックバック (0)

2011年6月11日 (土)

沢田研二 「ふたりの橋」

from『greenboy』、2005

Greenboy


1. greenboy
2. atom power
3. Snow Blind
4. 永遠系
5. 笑う動物
6. ふたりの橋
7. GO-READY-GO
8. リアリズム
9. MENOPAUSE
10. 君の笑顔が最高

-----------------------------

明日。
会社の同僚であり、同い年の友人でもあるM君の結婚式に出席します。

実は僕の勤務する会社、何故だか僕と同学年の社員がやたらと多いのです。
しかも、そのほとんどが40歳を超えても独身のままでした。
・・・数年前までは。

「まさか!」と言われた僕の結婚を皮切りに、皆次々に片付いていきました。
何なんでしょうね・・・こういうのって、伝染するもの?

そして、最後まで残っていたM君も遂に身を固めます。
明日は、「粛々と日常を」とか「どんな君も受け止め」とか「占いは吉さ」とか、色々と講釈かましてこようと思います。

ということで・・・。
申し訳ありませんが、今日はちょっといつもとは違う感じの記事になります。
まぁ、それでも一応・・・決めゼリフくらいは言っておきますね。

アルバム『greenboy』から。

「ふたりの橋」、伝授~!
(伝授と呼べる内容の記事ではありませんが汗)

☆    ☆    ☆

M君、結婚おめでとう。
一緒に働き出してもう20年。初めて会った頃には2人ともバンドマンで、バリバリにライヴもやってて、脱色の金髪ロン毛で・・・まともな社会人には見えなかったよな、お互い。

いやぁまさかM君が結婚するとは・・・2年前に俺が言われた言葉を、そっくりそのまま返しておくよ。

それにしても、嫁さんになる人は18コ下だって?
で、いきなり「新しいパパ」だって?
ロックだな。
そこはM君らしい・・・と、かえって納得。
俺もそうしてるけど、自分の矜持さえ理解してくれる嫁さんなら、すべて相手の言いなりになっていればいい。ガンガン折れればいい。

しかし、俺等ももう40過ぎてて、しばらくすると、気がついたらあっという間に爺さんに、ってことになるだろう。
若い嫁さんもらって、その分不安もあるだろうな。
年齢を重ねてきて、これから先シンドイことも増えてくる。老いを身にしみながら、どうすればいいのか分からなくなることにも、たくさん出食わしていくだろう。

そこで、お祝いにこんなCDの贈り物を持ってきた。
今年63歳になる沢田研二=ジュリーが、50代後半の頃にリリースしたアルバム『greenboy』だ。
いやいや、恐縮しなくていい。ちょうどこのCDが、家に2枚あったんだ。俺のカミさんが結婚前に買っていて、そのまま俺のとダブって今まで持っていたんだ。キレイに保管されている方を選んで、1枚この機会に贈るだけだから。

これから歳をとって、何か壁にブチ当たることがあったら、このCD『greenboy』を聴いて欲しい。
家庭を持って老いていく男、その過程でぶつかる様々な悩みの答えが、きっとこのアルバムの何処かに見つかるはずなんだ。

例えば、この記事のタイトルにした「ふたりの橋」というナンバー。
M君と嫁さんになる人は、同じハードロック、ヘヴィメタル好きということで出逢って、ゴールインするんだよな?
好きな音楽が一緒でも、歳も離れているし、同じものを聴いていても感じ方はずいぶん違ったりするだろう。
「ふたりの橋」には、夫婦が同じものを見ているのに、感じ方が違う・・・その違いがいとおしく、その違いこそが仲良くする秘訣だ、というメッセージも入ってる。
これは実は俺の場合でもドンピシャに当てはまることで・・・まぁ言ってみれば縁起の良い曲だ。

その他の曲にも、これから襲ってくるたくさんの問題を解決してくれそうなメッセージがいたるところに散りばめられている。
嫁さんを怒らせた時どうすればよいか、
更年期障害にどう立ち向かうか。

それに、このアルバムはジュリーの作品の中でも1、2を争うくらいにアレンジ、演奏がハードなんだ。
きっと、ハードロック好きのM君夫婦も気に入ってくれる。
音的には、M君だったら「リアリズム」という曲が一番気に入るだろうな。

ただ、たったひとつだけジュリーが教えてくれないことがある。
「ハゲたらどうしよう」
という深刻な問題についてだ。
このことについては、『greenboy』をいくら聴いても答えは用意されていない。
仕方ない・・・だってジュリーは63歳にしてまだ全然フサフサなんだよ。
でもこれは、お互い今一番直面している問題だよな。
俺は元々髪の量が多いせいで周囲にあまり気づかれずにいるけど・・・M君は数年前からかなりヤバくなってきていたよな。
いつからか、常に帽子をかぶって出社して、そのまま働くようになって。

ところが、そんなM君が去年の秋くらいに突然サッパリと短髪にして、帽子をかぶらなくなったのには、ちょっと驚いていたんだ。
今考えると、M君はちょうどその頃に、嫁さんになる人と生きていくことを決めていたんだな。
カッコいいとか悪いとか、そんなこと、もうどうでもよくなったんだね。あ、これはジュリーの別のアルバムに入っている「確信」という曲の歌詞からの引用なんだけど。

今度、嫁さんも誘ってジュリーのLIVEに一緒に行こう。
今年はちょっと特殊なツアーになるから、来年の夏かな。

明日は、元ヘヴィメタ兄ちゃんと、現役パンク姉ちゃんの、豪快な子連れ結婚式を期待しているよ!
お偉い連中のド肝抜いたれ~!

☆    ☆    ☆

そんなわけで、行ってまいります。

Futarinohashi

ただひとつ心配なのは。
式場が、JR宇都宮線の「土呂」って・・・何処それ?
駅から徒歩9分か・・・一番迷うパターンですね。

大宮ソニックシティ-すら、駅前からJ友さんに電話で助けを求めてしまったという、超・方向音痴のDYNAMITE、果たして無事に辿り着くことができるのか~。

| | コメント (5) | トラックバック (0)

2011年6月 8日 (水)

沢田研二 「Tell Me...blue」

from『彼は眠れない』、1989

Karehanemurenai


1. ポラロイドGIRL
2. 彼は眠れない
3. 噂のモニター
4. KI・MA・GU・RE
5. 僕は泣く
6. 堕天使の羽音
7. 静かなまぼろし
8. むくわれない水曜日
9. 君がいる窓
10. Tell Me...blue
11. DOWN
12. DAYS
13. ルナ

--------------------------------

え~、本日は
「ちゅっ、ちゅる、ちゅっ♪」
というコーラスから始まる曲を作った本家の人のことを語ろうと思います。
(註:僕の周囲では退きまくってる方が多いのですが・・・本家じゃない方の人の「お願いジュリー」も相当にイイ曲ではないか!と僕は思うのです笑)

実は先週の土曜日、カミさんと買い物に出かけたアウトレット・ショッピングモール”越谷レイクタウン”にて、大澤誉志幸さんのミニライヴに遭遇するというラッキーな偶然に恵まれました。

ホント、たまたま行った日がイベントの日だったみたいで・・・。
越谷レイクタウンには以前からカミさんの用事で行く予定があったのですが、このところ僕が仕事で忙しくしていて、ずっとズレこんでいたのです。
で、ようやく土曜日に行ってきたわけですが、武蔵野線・越谷レイクタウン駅につくといきなり

午後1時より
大澤誉志幸 ミニLIVE (観覧無料)


のポスターが。

今年、柴山さんが大澤さんのバックでギターを弾く予定があるらしい、と聞いていましたから
「まさか、柴山さんも来てるのか?」
と色めきたった我々夫婦でございましたが・・・。
さすがにショッピングモール内でのイベントということで、結局演奏はすべてカラオケ、大澤さんがヴォーカルだけ披露するというスタイルでのLIVEでした。

しかし僕もカミさんも、大澤さんについては生で観るのも生で歌を聴くのも初めてでしたから、本当にラッキーでした。
大澤さんのヴォーカル、さすがです!地声が相当高いんですね~。

「通算23枚目のアルバムを出しました。結構長くやっております」
とMCで仰っていました。
23枚目かぁ・・・。
って、ジュリーで23枚目と言うと『CO-CoLO1~夜のみだらな鳥達』ですか!
どれだけ長くやっているんだ、ジュリー!

でも、大澤さんも長いです。
おいくつになられたのでしょうか。歌声は健在でしたが、エスカレーターからステージを見下ろした時に見えた、譜面台に置いてある歌詞の文字が・・・とても大きかった・・・。

ということで。
ジュリーファンなら誰もがご存知の通り、大澤誉志幸さんはジュリーととても縁の深いアーティストですね。
今日は、”たまたま生のお姿を見てしまった”という僥倖にあやかり、その大澤さんがジュリーに提供した幾多の名曲群の中で、僕が最も好きなナンバーをお題に採り上げたいと思います。

アルバム『彼は眠れない』から。
「Tell Me...blue」、伝授!

僕は、大澤さんの作品についてはジュリーへの提供曲以外は有名どころしか知らないのですが、まずは少し大澤さんのことを書きますね。

越谷のミニLIVEで、大澤誉志幸さんは5曲を歌いました。
ニューアルバムのプロモーションと、サイン会(大澤さん曰く、「人生初のサイン会」。30周年だから色々なことをやっています、とのことでした)がメインで、披露された歌は新曲が中心だったのでしょうか・・・僕が知っているナンバーは、「そして僕は途方に暮れる」1曲だけでした。

ニューアルバムは「久しぶりに銀色夏生さんと組んだ」とのこと・・・。ジュリーファンとしては思わず反応してしまうコンビの復活が、大澤さんのアニバーサリー・イヤーに遂げられたようです。
そうそう、ミニLIVEが始まる直前、スピーカーからは、大澤さんヴァージョンの「晴れのちBLUE BOY」が流れていましたよ~。

披露された曲の中では、おそらく新曲でしょう

♪幸せだろうか それからの君は♪

と歌うバラードが印象に残りました。
でもやはり会場が沸いたのは、「そして僕は途方に暮れる」を歌った時でしたね。

大澤さんの「そして僕は途方に暮れる」は、邦楽ポップス史上に大きな意義を残した大名曲です。
それまでワビサビの手管で覆われていた邦楽ポップスのヒット市場に初めて、「クール」という要素を注入したナンバーだと言えます。
いえ、無論それまでにもクールなロック・ポップスの名曲は、色々なアーティストやバンドによって創り出されていました。しかし、「そして僕は途方に暮れる」の場合は、爆発的に売れた”大ヒット・チューン”として初めてそれを成し遂げたことに大きな意味があります。
「ヒット曲を手がける」多くのプロフェッショナルな人々が、「これもアリの時代になったんだ」と気づくきっかけになった、重要な1曲なのです。

全世界を席巻した、エイティーズ・ロックのクールな波。
それを見事に日本語と融合させ、しかもそのスタイルを”売れ線”のジャンルにまで押し上げた・・・それが大澤さんの大きな功績のひとつではないでしょうか。

「そして僕は途方に暮れる」は、ポリスの「見つめていたい」・・・といったように、明確なオマージュ元がある(と考えられる)場合でも、大澤さんにはそれを日本語のヒットチューンとして昇華させる独自の才能があるように思います。
最先端のロックと同時進行という”鮮度”を持ちつつ、海の向こうで売れているスタイルを日本流の解釈で爆発的にヒットさせる能力。
作られた楽曲が日本語の音楽として進化し、オマージュ元とはまったく別ベクトルの完成度を誇るという点が凄いことですし、だからこそ大澤さんの作品は売れたのだと僕は思います。

それでは、アルバム『彼は眠れない』の1収録曲である「Tell Me...blue」で、大澤さんはどんな洋楽ロックの特性を受け継いでいるのでしょうか。

これはリズムが明解ですから分かりやすい。
同じリズムを擁した洋楽ヒットで一番有名な曲を挙げるなら、フィル・コリンズの「恋はあせらず」でしょう。
しかしオマージュ元として最も有力だと僕が考えているのは、この名曲!

http://www.youtube.com/watch?v=D_Bj8wrXslk

(up主さまありがとうございます!
 そして、未だに動画の貼り付け方が分からないDYNAMITE・・・)


雰囲気あるでしょ~?
まぁ、ここまで雰囲気が近くなっているのは、西平彰さんのアレンジによるところも大きいのですが・・・。

”80年代のカッコイイ女性”の代表格であるクリッシー・ハインド。この曲は彼女が率いるザ・プリテンダーズが1986年に放ったヒット曲「ドント・ゲット・ミー・ロング」です。
ちなみにプリテンダーズは幾多のメンバーチェンジを繰り返していますが、ギタリストの遍歴が凄い!
何とあのザ・スミスのジョニー・マーや、そしてビリー・ブレムナーが一時的に在籍していたことがあるのです!
DIRTY WORK」の記事でみなさまにご紹介させて頂いた、僕の最も敬愛するギタリスト、ビリー・ブレムナーが、最も稼いでいた時期です・・・。

「Tell Me...blue」はそんな洋楽の下地がありつつ、これまた見事に日本語の歌詞と相性抜群のポップ・チューンに仕上げられていて、僕は大澤さんの手がけたジュリー・ナンバーの中でも屈指の名曲だと考えています。

この曲がシングルカットされていれば・・・とも思います。
もちろん『彼は眠れない』からシングルとなった2曲「ポラロイドGirl」「DOWN」は大名曲ですし、シングルにふさわしい曲なのですが・・・一般的なイメージとしては、「ジュリーの新曲が昔みたいな感じに戻った」という印象が強かったんですよ。
もちろん、長いファンのみなさまは、そんな単純なことではない、と分かっていたのでしょうが・・・お恥ずかしい話、これは特にジュリーファンでなかった頃の僕が、タイムリーにTVで「DOWN」を観た時の感想でして・・・。

ファンではないなりに、ジュリーという歌手は常に最先端、という幻想があったのです。ジュリーの新曲は、当時世を席捲していたイカ天バンド達の鮮度には届かない・・・演奏が上手い、歌が上手い、ということが大切ではない時代が来ていて、何よりコンセプトが要だ、そういうものが売れる、と僕はバンドブームというものをそう捉えていましたから、とにかく「隙の無い」サウンドで固められた「DOWN」がセールスに結びつく雰囲気は感じなかった(あくまでも、当時の僕の感想ですよ!)・・・。
その時に、試しにアルバム『彼は眠れない』を聴いてさえいれば、そんな愚かな感想には至らなかったはずだ、と思うと、後悔するばかりなのですが。

結局僕が「DOWN」を最高にカッコイイ、完璧な曲だと思えたのは、アルバムを購入してじっくり聴いてからのことでしたね。

でも、シングルが「Tell Me...blue」だったら、少なくとも僕はその時点で引っかかっていただろうなぁ。
自分の好きな洋楽にヒケをとらない曲だと思ったに違いありません。ましてや大澤さんの作品となればね・・・その時点で制作スタンスを信頼して、アルバム『彼は眠れない』購入に踏み切った可能性も。

というワケで、実現はしませんでしたが、僕がジュリーに本格堕ちする最初のタイミングは、この吉田建さんプロデュース期にこそあったはずなんです。
まぁ、当時の僕は自分でもバンドマンとして野心のあった頃ですし、頭デッカチなファンになってしまっていたでしょうけど・・・。

さて、「Tell Me...blue」は曲の端々に細かくカッコ良い箇所がたくさんありますが、中でも僕が一番惹かれるのは

♪ 1秒でも長く夢を見たかった おまえとなら
  A♭          E♭          Fm       D♭

  愛してくれ それだけさ ooh baby ♪
  A♭                    Fm         D♭

この2行の繋がり方。
「おまえとなら♪」から間髪入れずに「愛してくれ♪」へと雪崩れ込む、この譜割が好きなのです。
要は、サビの後にもう一度Aメロが来て1番が終わる、という形なんですけど、その一気の駆け抜け方がメチャメチャにカッコイイと思うんですよ・・・って、細か過ぎですか。伝わるかなぁ・・・。

これは、Aメロそれ自体が(下手するとサビ部以上に)インパクトのあるメロディーということでもありますし、そう思うとジュリーの
「おまえとなら♪」
の部分のヴォーカルが、ビシ~ッ!と完璧にキマって聴こえる気がするんですよねぇ。

あと、この曲には「Ooo、baby♪」ってフレーズが何回も出てきますよね。
その度にジュリーのヴォーカルに悶えている方、いらっしゃいませんか?

同志です!


並のヴォーカル、並の曲ならちょっとしつこくなってしまうかもしれない「Ooo、baby」連発が、「Tell Me...blue」では何と引き締まって聴こえることか。
(まぁ、「渚のラブレター」の「baby♪」なども相当なモンですけどね)

歌詞表記は「Ooo、baby」だけど、ジュリーの発音は「ん~、べいべ~♪」なんですよね。
「べいべ~♪」もとても良いですが、直前の「ん~♪」が最高にヤバイ!
僕などはアルバムを通して聴いているにも関わらず、「Tell Me...blue」がエンディングにさしかかると、「ん~、べいべ~♪」聴きたさに、思わずCDプレイヤーに指を伸ばし、再度この曲の頭出しに備えてスタンバイしてしまいます~。

ミニLIVEを観て分かったのですが、大澤誉志幸さんはハスキーというのか、地声が相当高いですから、作曲のキー自体も高いんでしょうね。
「Tell Me...blue」は変イ長調でレコーディングされていますけど、大澤さんの作曲の時点では、コード進行から推察するとおそらくイ長調。それをジュリーは半音下げて歌うようにしたんじゃないかなぁ。
当然、ジュリーもかなり高い音は出せるんですけどね。ジュリーの場合は地声が高いというより、声域が広いというタイプだと思いますから。
(この点については8月に「スマイル・フォー・ミー」の記事で書きます。予告しておきますよ!)

さて、この曲の演奏について特に書いておきたいことがひとつ。それは、吉田建さんのベースです。
「Tell Me...blue」のベースは、譜面だけでは表せないグルーヴを擁した、まさに超一流の演奏なんですよ!

譜面にすると、単純に

♪ラ♭・ラ♭・ラ♭・ラ♭・ラ♭・・・♪

と、8分音符がズラズラと並ぶだけなんですね。
しかしこの曲ではこれを

♪で~で~で~で~で~・・・♪

と、弾いてはいけません!
かと言って

♪でっ、でっ、でっ、でっ、でっ・・・♪

と、スタッカートをつければ良い、という問題でもないのです。

建さんはですね

♪でっつ、でっつ、でっつ、でっつ、でっつ・・・♪

と弾いています!
この、音の鳴っていない部分・・・つまり「っつ♪」というのが、「Tell Me...blue」のグルーヴを生み出しているのです。音の粒がそれぞれ瞬時に跳ねているんですね。
曲のテンポを考えれば、この奏法がいかに神業であるかが分かります。

で、その「っつ♪」の部分にまで音階を施してしまったという、超・超絶プレイを披露している曲が、建さんエキゾティクス時代の「ジャンジャンロック」なワケですが・・・。
まぁ、そちらについてもまた、機会を見て暑苦しく語り倒したいと考えております~。

それにしても・・・また愚痴のようになってしまいますが、この記事を読んでくださった方が「CD持ってないけど、この機に買ってアルバム聴いてみよう!」と、簡単にはいかないのが、悲しい現実です。
吉田建さんプロデュース期の5枚、『彼は眠れない』『単純な永遠』『パノラマ』『BEAUTIFUL WORLD』『REALLY LOVE YA!!』はいずれ劣らぬ大名盤だというのに、CD入手困難な状況が長年続いているんですよね・・・。

以前何かの曲の記事に書きましたけど、5枚組BOX豪華盤として復刻、なんてどうでしょうかねぇ・・・。
新たにライナーとして、建さんや覚さんに寄稿してもらう、とか・・・(無理かな)。
EMIさん、もうかりまっせ!

| | コメント (11) | トラックバック (0)

2011年6月 5日 (日)

沢田研二 「恋のバッド・チューニング」

from『BAD TUNING』、1980

Badtuning

1. 恋のバッド・チューニング
2. どうして朝
3. WOMAN WOMAN
4. PRETENDER
5. マダムX
6. アンドロメダ
7. 世紀末ブルース
8. みんないい娘
9. お月さん万才!
10. 今夜の雨はいい奴

-------------------------------

今日は”スーパーヒット”コーナーでございます。
少し前・・・4月に、「青い鳥」「麗人」と続けましたけど、たまにこのような超有名シングル曲を採り上げる時には、やっぱり気合が入ります。

有名な曲について書く、というのもとても楽しいですね。ジュリーはヒット曲をたくさん持っていますから、そんな楽しみも尽きることがありません。
今回採り上げるのは、これまた大名盤のアルバム『BAD TUNING』から。
「恋のバッド・チューニング」、伝授です~。

実はDYNAMITE
、これはタイムリーで思い出深い曲だったりします。
音楽というものに本格的に興味を持ち始めて、『ザ・ベストテン』をラジカセで録音しようと思い立った13歳のDYNAMITE少年が、初めてその思いを実行した日、ベストテンに初登場ランクインした曲が、「恋のバッド・チューニング」だったのです。
もちろん、録音しました。
初めてそんなことをしたので、当時何度も繰り返し聴きまして、それで覚えているんです。
ラジカセはモノラルのオモチャみたいなヤツ。
当然、内臓マイクでそのまま録るというシンプルなタイプです。

事前に、一緒にテレビを観る弟に「録音するから喋るなよ」と釘を刺しておいたのですが・・・。
初登場の「恋のバッド・チューニング」は、幼い弟にとっては衝撃が強過ぎました。
あの、コンタクトですよ!
ジュリーがカメラ目線になるたびに、クルクルと変色するカラーコンタクト。そんなジュリーの映像がツボにハマってしまった弟は、歌の間ずっと爆笑しておりました・・・。

懐かしい思い出です。
調べれば、その週に出演した歌手や曲も分かると思うのですが・・・とにかく覚えているのは「恋のバッド・チューニング」だけなのです。
偶然、弟が笑ってしまったことで覚えていたワケですけど・・・その曲がジュリーのナンバーだった、ということに今の僕は運命を感じずにはいられませんね~(大ゲサかな?)。

では本題。
まず、これはお宝というほどではないのですが、僕の持っている「恋のバッド・チューニング」の譜面を紹介しておきましょう。
昨年の夏、門前仲町の骨董市の軒先で、酷暑の陽光にさらされカピカピになって叩き売られていた大量の歌本の中から購入したもののひとつ。
ロンリー・ウルフ」の記事で紹介させて頂いた歌本と同じ日に買ったものですね。

『明星』付録の『YOUNG SONG』1980年6月号。

Myoujou198006

表紙はクリスタル・キング。
特集は、クリスタル・キング、松山千春さん、中島みゆきさん、そしてツイストという4大アーティストのニューアルバム全曲収載。
いやぁイイ時代です。メロ譜、あるいはコード付歌詞のみの簡単な採譜とはいえ、こんな贅沢な内容の歌本が毎月のように雑誌の付録についていたとは・・・。
ジュリーのアルバムの特集号とかも、この頃にあったりしたのかな?

せっかくですので、ツイストのページをひとつだけちょろっと貼っておきます。

Twist

さぁ、それでは次にジュリーのページです。
この号では、”4大新曲ピックアップ”ということで、久保田早紀さんの「25時」、ゴダイゴの「ポートピア’81」 、郷ひろみさんの「タブー(禁じられた愛)」と共にジュリーの「恋のバッド・チューニング」が巻頭カラーページに掲載されています。
形態は、コード付メロディー譜。資料としては充分満足できるものです。

201011062

File05792


今までバックをつとめた”井上堯之バンド”の解散により、この曲から新結成の”オールウェイズ”がバックをつとめる。ジュリー自身も初めての試みだが、エレキ・ギターを弾きながら歌う。透明のプラスチック製を特注した。

と、書いてあります。
え~と、記述は掲載原文ままでございます~(笑)。

加瀬さんの作曲で僕が注目したいのは、ヴォーカルに突入する直前のコード進行。
トニックのEから、G→A→Bと1音ずつ上昇する、バック演奏のキメ部です。
同じく演奏キメ部でこの進行を使用している超・有名な洋楽曲があるのです。

♪ Last night I said the word to my girl ♪

  E                                     A   E      G  A  B

そう、ビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」ですね。
G→A→Bの部分はとてもウキウキする、心の昂ぶりを的確に表現したコード進行ですが、加瀬さんはこれを「恋のバッド・チューニング」に採り入れたのです。
全然異なる曲のように聴こえますが、この2曲は他にも共通点が多くて、加瀬さんのオマージュ元は「プリーズ・プリーズ・ミー」にあったのでは、というのが僕の考えです。
無論1980年の加瀬さんの作曲は、多くの点で技術的な進化を遂げていますが。

さてさて、そんなスーパーヒット・ナンバー「恋のバッド・チューニング」は、ジュリーのヴィジュアル的な斬新さもさることながら、音的な仕掛けも多い大名曲です。

スネアドラムの音は、テクノ・サウンドの台頭を受けての当時の流行の音色。しばらく前に執筆した『TOKIO』収録の「KNOCK TURN」とほぼ同じ音ですね。
この頃のヒット曲には、ジュリー以外にもこういうドラムスを採り入れた曲がたくさんあります。
「KNOCK TURN」と言えば、この「恋のバッド・チューニング」や、前シングル曲の「TOKIO」などは”バカ・ロック”と呼んでも良い作りの曲なのですが・・・そう呼ぶにはロックとして、ポップスとしてあまりに完璧過ぎるという。
それが、糸井さん、加瀬さんの才能の大きさでもあると思います。

曲の仕掛けとして面白いのは、演奏に「バッド・チューニング」な工夫が盛り込まれていることでしょう。

まずはキーボード。
オルガン系とピ
コピコ系の2つのトラックがレコーディングされています。
それが、全体の音よりも少しだけ低いチューニングで演奏されているんですよ!
いわゆる、ホンキー・トンク調というヤツです。
この手法については拙ブログでもこれまで「テーブル4の女」や「BAMBINO EXCUSE」の記事にて語ってきましたけど・・・ズバリ「ちょっとズレてる」音色設定なんですよね。

あと、ギターを嗜まないみなさまには少し専門的なお話になってしまうかもしれませんが、「恋のバッド・チューニング」では、演奏の最後の最後に面白いアイデアが採用されているので解説したいと思います。
それは、ギターの「チューニング」に関するお話。

「チューニング」とは、特定の楽器であらかじめ決められた正しい音を設定する作業のことで、特にギターという楽器は2日も弾いていればそれぞれの弦の音が微妙に狂ってきますから、ギタリストにとっては日常的に必要不可欠な作業です。
ギターの場合、開放弦の音を1弦から順に、「ミ」「シ」「ソ」「レ」「ラ」「ミ」に設定しなければなりません。
まずチューニングメーターなどで(例えばジュリーのLIVEで、ジュリーがMCの間、柴山さんが足下を向いて何やら確認しながらギターのペグを回しているのがその作業です)、各弦の音を合わせていくわけですが・・・。
チューニング・メーターで大体の音を合わせた後、ギタリストは最終的に自分の耳で正しい音を微調整するのです。
その確認作業において絶対にマスターしておかなければならないのが、ピッキング・ハーモニックスを使ったチューニング法です。

ピッキング・ハーモニックスとは、左手の指でフレットを押さえる時に、軽く触れる程度にしておいて、ピッキングと同時に指を離し甲高い残響音を出すという、ギタリストの基本的なテクニック。
ギターには、ハーモニックス音が出しやすいフレットと出しにくいフレットというのがあって、最も出しやすいのが5フレット、7フレット、12フレットの3箇所です。
で、ピッキング・ハーモニックスによるチューニングは、そのうちの5フレットと7フレットを使えば確認作業が可能な仕組みになっています。

5フレットと7フレットのピッキング・ハーモニックスによって出る音階は

Badtuning

4~6弦までの書き殴りではありますが、間違いなくハーモニックス音はこのようになります。
ですから図の通りに、6弦5フレットと5弦7フレットの音が同じ「ミ」の音になるように微調整します。
以下、5弦5フレットと4弦7フレットを同じ「ラ」の音、4弦5フレットと3弦7フレットを同じ「レ」の音・・・といった具合に順に合わせていくのです。

で、「恋のバッド・チューニング」の演奏の最後の部分。余韻を引っ張る中で、「キ~ン♪」って高い音が3回繰り返されますよね。
あれがズバリ、6弦5フレットと5弦7フレットをピッキング・ハーモニックスでチューニングしている音なんですよ~。

どんなエレキギターでも、1曲ガツンと弾き通せば、(本当に微妙に)弦のチューニングが狂います。
ラストのピッキング・ハーモニックスの音はどちらも「ミ」の音ということになりますが、相当に音感の良い方は、かすかに2つの音がズレていることがお分かりかと思います。
僕ですか?僕は無理ですよ。
でも、鳴っているのが6弦の音と5弦の音だということは分かります。これはギターを弾く者として身についてしまっている感覚なんですけどね。

「恋のバッド・チューニング」はホ長調。
ホ長調はキーで言うと「E」ですから、楽曲全体を支配するのは「ミ」の音ということになります。
加瀬さんが、ピッキング・ハーモニックスのアイデアを念頭に置いた上でこの曲をホ長調で作曲したとするなら、本当に凄い。その、ギタリストならではの遊び心が凄いのです。

いずれにしても、このチューニングの作業音をS.E.風に差し込んで曲を終わらせるアイデアは、「ちょっとズレてる方がいい♪」という曲のコンセプトありき、で採用されていることは断言できます。
この点、長々と書いてしまいましたが、こういうことも知っているのと知っていないのとでは楽曲の楽しみ方も違ってくるのでは・・・と思い、僭越ながら解説させて頂きました。

加瀬さんの遊び心と言えば、この曲のサビ、一番最後だけ
「Bad、Bad!」
の数を1回増やして、「チュ~ニン♪」への着地までを少し粘っていますよね?これなどはいかにも加瀬さんのアイデア、という感じがします。


面白い、と思ったことは何でもやってみる。
そんな陽気な志を持ちつつも、セールス的には大ヒット曲に仕上げてしまう・・・やはり凄いです、加瀬さんのジュリーへの提供曲は。

こんな完璧なロック・ポップスなら、ジュリーのヴォーカルが素晴らしいのは当然のこと。みなさまそれぞれ歌の中でお好きな瞬間がおありでしょうが、僕が一番好きな箇所だけお話しておきますと。
最後に「サビもう一丁!」とダメ押しに入る、その冒頭のトコ。

♪ はじめから ちょっとずれてる周波数 ♪
  E               B7

ここの「はじめから♪」は、それまでの2回に比べて、ドスが効いてると思いませんか?
僕はそれが大好きなのです。
で、関係ないですけど、今文章を書きながら突然思い出したのでついでに書いておきます。ラジカセでこの曲を録音した当時のDYNAMITE少年はずっと、「周波数♪」のトコを、何か難しい英語の歌詞だろう、と思って聴いていましたっけ・・・。

ジュリワンで、この曲も聴きたかったなぁ。
きっと、加瀬さんが最初にジュリーに渡したセットリストには載ってたんでしょうね。でもジュリーが「ワイルドワンズの曲が少ない!」とダメ出ししちゃって、最後にオミットされたんだろうなぁ・・・。

『ジュリー祭り』でも歌われませんでしたし、先輩方もそろそろ「恋のバッド・チューニング」のLIVEに飢えていらっしゃるのではないですか~?
来年、期待したいですね。

みなさまには怒られるかもしれませんが、僕は
「気持ちが、ウッフン!いいから、アッハン!」
のヴァージョンを、生で観てみたいです・・・。

| | コメント (18) | トラックバック (0)

2011年6月 2日 (木)

沢田研二 「めぐり逢う日のために」

from『いくつかの場面』、1975

Ikutuka


1. 時の過ぎゆくままに
2. 外は吹雪
3. 燃えつきた二人
4. 人待ち顔
5. 遥かなるラグタイム
6. U・F・O
7. めぐり逢う日のために
8. 黄昏の中で
9. あの娘に御用心
10. 流転
11. いくつかの場面

-----------------------------------

はぁぁ。。。
9月8日のツアー初日まで、気が遠くなるほど長いですよねぇ・・・。
しょあ様のお家で、初日までのカウントダウンを表示してくださっていますが、ようやく日数が3桁を切った、といったところなんですね。
まだまだずっと先なのですねぇ。

僕も『ジュリー祭り』で初参加以来、こんなにジュリーLIVE・ツアーの間隔が開いたのは初めてです~。辛いです~。
もう有給の予約もしてあるのに・・・。まぁ、”鬼も大爆笑”(くれトモ様・談)の1・24については、さすがに逸り過ぎだと自分でも思いますけどね。あれは、「この日に武道館実現祈願!」のおまじないみたいなものですから。

「タイガース・ナンバーの記事を書きたい」という欲求は日に日に高まるばかり。
当初は7月下旬くらいまで我慢する予定でしたが・・・無理ですね(笑)。
7月突入と同時に、タイガース・モードに切り替える決意をしました。それだと、ツアーまで2ケ月でスタート、というタイミングになります。
ってことは・・・今の執筆ペースが持続しているなら、だいたい20曲くらいのセットリスト予想記事を書くという計算に・・・。

望むところですよ!

こうなったらね、まず
”聴きたいけど、さすがにこりゃやらんだろう”シリーズ
を5曲書き、続いて
”やるかどうか微妙・・・期待を込めて”シリーズ
をまた5曲書いて、7月を終える。
次に(間に合えば)ピーの新曲2曲を書いて・・・ラストスパートに
”これは鉄板!絶対当てる!”シリーズ
を8曲。
これで計20曲。

どうでしょうかね?
そんな計画なども立てながら、逸る心を押さえ

そんなに急がなくても、いいじゃないですか♪
めぐり逢う日を楽しみに・・・。

ということで。
6月いっぱいまではジュリーのソロ・ナンバーのお題を続けます。

それでは本題。
音楽というのは不思議なもので、どうしようもなく、救いようもなく切ない内容を歌った曲が、逆に心にやすらぎを与えてくれることがあります。
僕が邦楽女性アーティストで唯一CDをすべて持っている倉橋ヨエコさんなどはその最たる例。

もちろん、ジュリーにもそんな曲がいっぱいあります。
僕がすぐに思い起こすのは、初期シングルB面の2曲、「遠い旅」と「淋しい思い出」。
そして、アルバム収録曲で言うと・・・。

今日は、前回「港の日々」に引き続いての初期作品ということになりますが、これまた「超」につく名盤、アルバム『いくつかの場面』からお題を採り上げます。
「めぐり逢う日のために」、伝授!

今がそうなんですけど・・・僕は、辛い思いをなさっている方々に、できる限りその辛さを自分でも噛みしめて、辛い気持ちに寄り添うことが大切なのではないか、という考えに変わってきています。
それは、音楽でもそうなんじゃないか、と思ったり。
もちろん、元気で勇気の沸く曲、というのはとても良いのですが・・・。

その一方で、辛い、切ない気持ちを少しでも共有しようと考えること。
今、多くの人達がそれを求めているような気がするのです。それは、ジュリーがリストバンドに「祈り」を託したことと近い感覚のように思います。
あくまで僕の思いですけどね・・・。

「めぐり逢う日のために」は、とても切ない曲です。でも、僕はこの曲にとても癒される。
何故でしょうか。

まずジュリーのヴォーカルですよね。
美し過ぎます。
とにかく「美しい」と表現したくなるジュリー・ヴォーカル。その意味では、70年代のナンバーだとこの「めぐり逢う日のために」と『JEWEL JULIE~追憶』収録の「四月の雪」が双璧ではないでしょうか。

♪ めぐり逢う日のために
  Em   

  気まずさが残らないように ♪
  Em             Am7  D7   G    B7

少し気だるいヴォーカルは、主人公の心の葛藤を表現しているのでしょうか。
後半の「もしも~♪」で、ハッとするような歌声の変化もあります。以前タイガースの「誰れかがいるはず」の記事で書いたような”叫ぶようにささやく”ジュリー・ヴォーカル、炸裂のナンバーと言えるでしょう。

ヴォーカルの美しさをさらに際立たせているのは、曲のリズムです。
まぁワルツと言っても、この曲の場合はテンポの解釈によるのかな・・・。どういう風に譜面にすれば、みなさまは見易いのでしょうか。
適当に書き殴ってみました(ホント、適当です汗)。

ズバリの3拍子の直球表記ですと


Meguriau3

見易いは見易いですけど、小節を追っかけるのがちょっと忙しいですかね。

一番見栄え的にまとまって見えるのは


Meguriau2

これだと、前奏のピアノも16分音符になって丁度良い。あのピアノは8分音符って感じじゃないですもの。
う~ん・・・でも最近この手の曲を8分の6表記のスコアってのは、あんまり見ないなぁ。

ならばいっそ、ロッカバラード風に


Meguriau1

ありゃ、これはかなりゴチャゴチャしますね。狭いスペースにコードネームを書き込む気力が無くなってしまいました・・・。
昔とてもお世話になったスコア・・・ローリング・ストーンズの「LOVE IN VAIN」(ジュリーファンならご存知の曲ですよね?)は、この表記だったけど、あの曲は音符の数自体が少ないからなぁ。

気持ち的には「めぐり逢う日のために」という曲なら②で書き起こしたいところですが・・・ロック、ポップス系でこういう書き方は本当に最近全然見ないんですよねぇ。

結局何が言いたいのかというと、ワルツの曲って、いろいろなヴァリエーションで解釈する自由度がありつつ、基本ウキウキするようなリズムだと思うのです。
どんなに悲しい曲でもね、期待感とか、希望とか、そういった気持ちが内包されているリズムのように思います。

先にチラッと挙げた倉橋ヨエコさんの曲で、「めぐり逢う日のために」とかなり近いリズムで作られた「涙で雪は穴だらけ」というバラードがあります。シングルのカップリング曲にもかかわらず、ファンの間ではすごく人気があって・・・。
これがまたひたすら絶望的な歌詞なんですけど、何故か前向きに聴こえ、癒される・・・これは、ヨエコさんの作詞の才能もさることながら、リズムによるところも大きいんじゃないかと思っています。

ジュリー関連の他のナンバーで”ワルツ”と言うとすぐに思いつくのは、「ラヴ・ラヴ・ラヴ」「二人の生活」「夜明け前のセレナーデ」・・・他にもあるかな?
どれも、癒される。たとえ切ない内容の歌だとしても、身体を委ねて聴き入ることができ、暖かい気持ちになります。

ですから、この切ないけれどどこか自分をクールに制御しようとするような「めぐり逢う日のために」の歌詞の

「そんなに急がなくてもいいじゃないですか♪」

という冒頭の一節からワルツのリズムを想起した(たぶん、ですけど)ジュリーの作曲センスは、素晴らしいと思います。
そう、「めぐり逢う日のために」は70年代を代表する、ジュリー自身の作曲作品なのです。

自ら手がけた作品、手応えもあったからこそ、あの美しいヴォーカルなのでしょうかね~。

♪ 最後に心の 後始末をしたい ♪
  Em     D Em  Am D7 B7    Em

の「最後に心の♪」の部分。
「ちょっと言葉数が足りてません~」
みたいな独特の譜割(ジュリーの作曲作品の場合は、それが逆に途方もない魅力なのです。本来なら発音させたい箇所を補うための音符の伸びが、そのままヴォーカルの伸びに反映されるからです)は、次作『チャコールグレイの肖像』収録の「桃いろ旅行者」などにも見られ、いかにも「詞が先にあった」という感じを受けますが、どうなのでしょうか。
「あなたに声をかけよう♪」の箇所は、曲先だとああはならないはず・・・2小節分割愛されて進行するような譜割になっているんですよね。
エンディングの演奏部も同じ譜割で繰り返されます。そのせいで、フェイド・アウト部にも独特の雰囲気が出ていると思います。

それでは、名演が多い『いくつかの場面』収録曲の中でも屈指の完成度を誇る「めぐり逢う日のために」の演奏面について少し語ってまいりましょう。

この曲で僕が一番惹かれる楽器は、シンセサイザーです。
シンセサイザーは元々、ムーグ博士が開発した鍵盤楽器ということで、ズバリ”ムーグ”と呼ばれていました。
ビートルズの「マックスウェルズ・シルバー・ハンマー」などで効果的に使用されたことを受けて一躍脚光を浴び、60年代末から、ジャンル問わず多くのロックバンドがこの楽器を演奏に導入するようになりました。

そして、シンセサイザーの音色がどんどん多岐に渡っていくに連れ、最初期に「マックスウェルズ・シルバー・ハンマー」で使われた音色を特定に指して”ムーグ”と呼ばれる時代が到来しました。

「めぐり逢う日のために」のイントロで
♪ シ~ラシ~、ラレドシラ、シ~ラシ~ ♪
という物悲しくも美しい旋律が、2度繰り返されますよね。
ミックスで言うと、1度目が左側、2度目が右側から聴こえているのがお分かりでしょうか。これは、1度目の音と2度目の音ではシンセサイザーの音色設定が異なっていて、別トラックに分けて録音されているのです。
この2つの音が、モロに”ムーグ”最初期の音色なんですよ~。
木管系とオルガン系・・・でもどこか幻想的な、未来形(当時のね)の響き。

『いくつかの場面』の歌詞カードのクレジットをご覧ください。
”キーボード”とは別に、シンセサイザーのクレジットが分けて記載されていますね。しかも”ムーグ・シンセサイザー”というズバリこだわった表記です。
当時はまだシンセサイザー=ムーグという意識が高かったのでしょうか。

「めぐり逢う日のために」以外にも「燃えつきた二人」に同じ記載があります。イントロの木管系の音を指してのクレジットです。
いずれの演奏も、東海林修さんのクレジット。
2つの楽曲がとても幻想的で、セピア色の過去が甦るような感じに聴こえるのは、東海林さんの弾く”ムーグ”の為せる業なのです。

ドラムスのアクセントをスネアではなくタムにしているのは、”重い”バラードでよく見られる手法です。
こちらも名演。

そして、意外や大活躍の楽器は・・・パーカッション。
右側から聴こえる金属系の音、僕はてっきりトライアングルの超絶プレイかと思いましたが、クレジットは”ラテン・パーカッション”となっています。
細かいながら力強く、大胆さを兼ね備えた熱演ですね。

記載の斉藤不二男さんについて調べたところ、日本のラテン・ミュージックの牽引者としてリクペクトされていらっしゃるようです。
ジュリー関連の音源や映像から受ける印象だけでも、パーカッション奏者の方というのは情熱的に楽曲の世界に入り込むような演奏をなさるプレイヤーが多いことが分かります。

「めぐり逢う日のために」はアルバム『いくつかの場面』収録曲の中でも、先輩方の人気が特に高い曲のようです。
それはきっと・・・LPで聴いた時に鮮烈な印象があったからではないか、と僕は思います。つまり、レコード盤特有の”B面1曲目”という配置が「めぐり逢う日のために」の素晴らしさをさらに際立たせていたのではないのでしょうか。
CDで聴くと、「U・F・O」から間髪入れずこの曲がスタートします。慣れてしまえばそんなものなのでしょうけど・・・僕は最初からその形で聴いてしまい、「U・F・O」を一発で大好きになったこともあり、数回アルバムを聴き返すまで、「U・F・O」直後の「めぐり逢う日のために」の素晴らしさを完全には把握できていませんでした。

A面を聴き終えてレコードをひっくり返す・・・。
この素敵な瞬間を今の若い世代の音楽ファンが知らずにいるのは、なんだか気の毒に思えてきます。

先輩方にとって「めぐり逢う日のために」は、ジュリーの”B面1曲目”ナンバーにあって1、2を争う名曲だったのだと、後追いファンの僕は想像しているのです。

| | コメント (21) | トラックバック (0)

« 2011年5月 | トップページ | 2011年7月 »