沢田研二 「港の日々」
from『JULIEⅡ』、1971
1. 霧笛
2. 港の日々
3. おれたちは船乗りだ
4. 男の友情
5. 美しい予感
6. 揺れるこころ
7. 純白の夜明け
8. 二人の生活
9. 愛に死す
10. 許されない愛
11. 嘆きの人生
12. 船出の朝
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唐突ですが、僕は相当な動物好きです。
しかも哺乳類に留まらず、その対象は爬虫類、両生類、節足動物に至るまで。
別れが辛すぎることが経験から骨身にしみて分かっているので、今後ペットを飼うことはありませんが、時々勤務先の嘱託のおじいちゃんがゴールデンレトリバーを連れて出社すると、昼休みには必ず戯れています。
まぁ、何と言ってもやはり哺乳類ですね。四足歩行のね(←ココ大事)。
犬と猫とどっちが好きかなんて決められませんが、両巨頭であることは確か・・・いや、僕の場合はウサギも加わって三大巨頭、かな。
さらに個人的に思い出のあるハムスター、シジュウカラを含めても良いけれど・・・。三大巨頭しかりですが、特定のかつてのペットについてはここでは語りません。いずれにしても最後は泣いてしまうからです。
しかしながら、大まかにそれらの中でも特に好きなタイプというのがありまして、そちらについて少し書きますと。
例えば猫なら、身体がデカく、しかも顔も大きいムスッとしたヘの字口の愛想の無い奴。これがタマらん。
そして、足は短ければ短いほどよろしい。
初めて”マンチカン”という種を見た時の衝撃は今でも忘れません。ひと目惚れとはまさにこのこと・・・人間は足が短いとおかしいのに、何故動物は足が短いとカワイイのか・・・僕にとっては永遠の考察テーマです。
↑驚異の短足萌え猫の王者、マンチカン
続いてウサギ。
とにかく護ってあげたい・・・そんな目で見てしまう動物。
ですから、肉食獣から逃れるために長くピンと立った状態に進化していったと言われるあの耳ね。その大事な大事な耳を、何故だか垂らしてしまっている奴・・・それで大丈夫なのか、そんな垂れた耳で敵が来るのを察知できるのか、と気になって気になって放っておけない、”たれ耳ウサギ”。
これがまたタマらん。
そして、犬。
猫と同じく身体が大きいのが良いんですが、猫と違う点は、こちらは極端に足が短いと言うよりは、大きな身体で適度に短足なのがよろしい。
バランスの良いガッシリとした奴。それが好みです。
分かりやすい例で言いますと、名犬ラッシーやパトラッシュくらいの大きさが特に萌えます。『フランダースの犬』最終回など、僕には辛過ぎて正視できません。
といったところで、いよいよ本題でございます。
「みなさまの脳内で、”マルチェロ”とはどんな犬ですか?」
という崇高な考察課題を中心に。
アルバム『JULIEⅡ』から、「港の日々」、伝授~!
母の思い出と、顔も知らぬ父の幻影を抱いて、とある港町へと辿り着いた放浪の少年。
小さなカフェに住み込みで働くことになった少年が、町で最初に友達になったのは、店の主人が飼っていた「マルチェロ」という小犬でした。
♪ 小犬を 連れ 波止場の道
B♭m E♭7 B♭m E♭7
朝日の 中を 駆けていく ♪
B♭m E♭m7 Fm7 B♭m
CDの歌詞表記は「小犬」ですけれど、僕の脳内では「子犬」。子供の犬です。相対年齢はちょうど主人公の少年と同じくらい。
「小」ではなく「子」だと思いこみたいのは、犬の種類によっては、「子犬」とはいえ相当デカいんじゃないか、というね・・・。
僕の中で「マルチェロ」は、巨大なゴールデン・レトリバーなんですよ~。
イメージ的には、主人公の少年と比べてもさほど体躯が変わらないくらい。
自分と同じくらいの大きさの大型犬の子供と一緒に、少年(無論ジュリーっぽいルックスの美少年ですな)がそこら中を駆け回っているという・・・。
鎖?
繋がれていません。
朝の散歩?
いえいえ、毎朝少年が勝手に連れ出して遊びにいっちゃうんです。お店のご主人は正直呆れ果てています。
・・・僕のイメージは、こうなのね。
悲しい境遇だけれど、少年は無垢なまでにヤンチャ。
これは当時のジュリーのヴォーカルが”不良少年のイノセンス”という、ロックにおいて最も重要な要素を天性に兼ね備えていることからも、容易に連想しやすいイメージなんです。
それに、『JULIEⅡ』の少年のシチュエーションって、栗本薫さんが書いた『グイン・サーガ』に登場する、イシュトヴァーンの少年時代そのものじゃないの~。
やっぱり、手のつけられないながらも憎めない”不良少年”ですよ。そして、無垢でありながらどこか大人びた面もある、という。
後に出逢う船乗りの親父は、当然カメロン提督ということになりますね。
(あ、読んでない方、ワケわからなくてすみません・・・)
『JULIEⅡ』収録曲の山上路夫さんの詞は、本当に素晴らしい。
名うての作曲家陣、東海林修さんの華麗なアレンジ、そしてジュリーのヴォーカルも完璧だけれど、詞が適当なものだったら、ここまで僕が心動かされ、『JULIEⅡ』が一番好きなアルバム、と断言できていたかどうか。
(世にジュリーファン多しと言えど、僕のように”一番好きなアルバム”がハッキリしている人は稀のような気もしますが・・・)
プロフェッショナルであり、遊び心もあり、何より当時のジュリーのヴォーカルが生きまくる詞です。
奇をてらった表現は皆無。誰にでも分かる言葉で、簡潔に情景を描写し、それぞれのナンバーが実に見事にアルバム全体の物語を構築する大切なピースとなっています。
これから「大人になる」「大きくなる」。
来たるべき人生に向かい、躍動する少年の心。
♪ 走れよ 走れよ マルチェロ
D♭ E♭m7
大きくなるのだ お前も
E♭m7 D♭
楽しい時には 歌えよ ♪
D♭ G♭ Gdim
「港の日々」は、「霧笛」で絶望の底にいた少年の表情に底抜けの明るさが戻り、「生きる」ことへ貪欲な愛すべき少年の性格を聴き手に印象づける、「第二のイントロダクション」なのですね。
そこに「マルチェロ」という犬が絡むというのが、詞においては大成功していると思うのですがいかがでしょうか。
ジュリーの素晴らし過ぎるヴォーカルについては、これまで『JULIEⅡ』収録曲の記事で散々語ってきたことの繰り返しになってしまいますので、そちらを参照して頂くこととして・・・。
ここでは「港の日々」の、ゴキゲンな演奏面を紐解いてまいりましょう。
楽曲のテンポ自体は割とゆったりしたミディアム・ロックですが、リズムは16分音符で細かくグルーヴしています。
こういう曲は演奏がとても忙しくなりますし、難易度が高いのです。
まず特筆すべき点は。
「港の日々」が、アルバムからシングル・カットされ大ヒットした「許されない愛」に勝るとも劣らない、強力なブラス・ロックだということです。
16ビートにカッコよく載った、ファンキーなホーン・セクション。効果的に右サイドにミックスされていますね。僕は70年代のこうした明快なミックスが大好きなのです。
土台となるドラムスとベースは、まるで生き物のように動き回ります。それでも、あれだけ激しく演奏しながら、全体のアレンジやヴォーカルの邪魔にはまったくなっていません。
正にプロの技。
「あの海に聴かせよう♪」直後の演奏部で、ドラムスとベースは息を合わせてリズムを倍速にしたり、細かい冒険箇所が要所に散りばめられています。
エレキギターは、16ビートにピッタリのワーミーな演奏。ヴォーカルの合間合間のカッティング・リードに魅了されます。
そして左サイドのオルガン。
ヘッドホン無しで分かるかなぁ・・・イントロでも薄~く弾いているんですよ。これが渋い!
オルガン版のボリューム・ペダルのようなプレイです。
さらに、「坂を登り♪」から始まるヴォーカル部・・・演奏時間で言いますと、2分ちょい過ぎのあたりに注目してください。
聴き手がジュリー渾身のヴォーカルに耳が行く中、隠し味と言うにはあまりに凄まじい手数のオルガン・ソロが始まります。
1番の同じ進行箇所「小犬をつれ♪」のところとずいぶん異なった印象を受けるのは、このオルガンの効果なのです。素晴らしい!
さてさて、お題が初期ジュリー・ソロ作品ということで、今回も執筆にあたって参考にさせて頂いたのが、先輩からお借りしております超お宝スコア本『沢田研二のすべて』。
今回のお題「港の日々」については、オリジナルの変ニ長調(=D♭)をハ長調(=C)に移調し、演奏しやすく表記しているわけですが・・・。
相変わらず、大らかな採譜ですな(笑)。
「小犬をつれ 波止場の道 朝日の♪」
までを、すべて「Am」で押し通すというのは・・・。弾いていて、今イチ楽しくないぞ!
でも、貴重な譜面、参考になりました。ありがとうございますありがとうございます。
ところで、『JULIEⅡ』の少年が旅立ち、10年後くらいにいっぱしの船乗りに成長している姿を描いた作品がアルバム『JULIEⅥ~ある青春』、というのが僕の中の勝手なイメージ。
こちらも大変な名盤ですが・・・。
結局少年は、大層女好きな若者に育ってしまった・・・のかな?
『JULIEⅡ』は個人的にイチオシのアルバムですから、いずれ全収録曲を拙ブログで記事網羅することは確実なのですが。
これ、現在廃盤状態みたいなんだよねぇ・・・。
何とかなりませんかねぇ。
レコードしか持ってなくて、長い間通して聴いていない、という先輩方が多くいらっしゃるみたいですし、新しいファンの方にも是非聴いて欲しいアルバムなのですが・・・。
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