沢田研二 「夜明けに溶けても」
from『REALLY LOVE YA!!』、1993
1. Come On !! Come On !!
2. 憂鬱なパルス
3. そのキスが欲しい
4. DON'T SAY IT
5. 幻の恋
6. あなたを想う以外には
7. Child
8. F. S. M.
9. 勝利者
10. 夜明けに溶けても
11. AFTERMATH
-----------------------------
まだまだ大変な状況が続いています。
自分はこんなことをしてていいのか・・・自問自答にもならない焦りのような気持ちが時折襲ってきます。
そんな中、僕は本当に、被災地の方々に逆に勇気を貰っているのです・・・。
被災地に近い多くのじゅり風呂さん、そしてコメントを書いていらっしゃるみなさまからも。
azur様は、折れそうな心を鞭打ちながら、必死の発信を続けていらっしゃいます。
SONGE様は更新を再開され、変わらぬ爽やかな言葉を聞かせてくださいます。
コメントを書いていらっしゃるみなさまの言葉に、奮い立たされます。
実は、今回の「夜明けに溶けても」の記事は2日前にもう書き上げていました。
更新をためらっていたのは、「溶けても」というフレーズを今、発信してよいのだろうか、とクヨクヨと細かく考えてしまったからです。
しかし、僕はやはり、自分がジュリーナンバーの中で一番「やさしさ」を感じるこのナンバーの記事を発信したい、と思い直しました。
僕は無力。
できることは、ジュリーファンのみなさまに、変わらずジュリー・ナンバーの素晴らしさを発信することしかありません。
これからも、大好きな曲を、大好きな感情のままに書いてみようと思っています。
☆ ☆ ☆
「やさしさ」とは、平凡な日常を尊ぶ気持ちから生まれるものかもしれない・・・。
ジュリーを聴くようになって、なんとなく気づいていたことだけれど、この2週間、強くそう感じます。
僕が『ジュリー祭り』で決定的に堕ちてしまったのは、それまで僕の中で大きな偶像崇拝的なイメージ対象としてそそり立っていたジュリーが、実は途方もなく強い「人間」であり、その強さを持って「日常」を説き・・・「明日からはまた粛々と」と語ったMCから受けた衝撃。その「人間性」に他なりません。
その後、セルフ・プロデュース時代に突入して以降のジュリーのアルバムを次々と聴き、特にジュリー自作詞による収録曲を追い求めていくと、「日常」を尊ぶ気持ちがジュリー最大のやさしさであり、作品にとっての大きな武器となっていることが分かってきました。
その根幹となるスタイルは、元々はやはり覚和歌子さんの影響によってもたらされたかと思えますが、実は覚さんがジュリー作品に大きく噛んできたちょうど同じような時期にもう一人、ジュリーの「やさしさ」を詞に投影した素晴らしい女性作詞家がいらっしゃいます。
朝水彼方さん。
優しさの中に、歌の主人公の強い決意が雄伏しているのが分かる・・・そんな作風はジュリーにピッタリだと思っています。このことは以前、「愛しい勇気」の記事を執筆した際にも書かせて頂きました。
今回はそんな朝水さん作詞作品の中で僕が最も「優しさ」を感じる、大好きなナンバーをお題に採り上げたいと思います。
アルバム『REALLY LOVE YA!!』から。
「夜明けに溶けても」、伝授!
このアルバム、僕が「一番好きな曲」を挙げようと考えますと、最終的に3曲で悩みまくることになります。「幻の恋」「F.S.M.」、そして「夜明けに溶けても」。
いずれも途方もなく好きなナンバーで、とても1曲には決められません~。
もちろん、「COME ON !! COME ON !!」「憂鬱なパルス」「そのキスが欲しい」・・・と続く他収録曲もすべて好きで、要は『REALLY LOVE YA!!』という作品が屈指の大名盤である、ということ。
実際、これまで頂いたコメントや、他のじゅり風呂さんの御記事などで多くのジュリーファンのみなさまが、この『REALLY LOVE YA!!』をイチオシなさっているのをよく見かけます。
しかし、「夜明けに溶けても」について熱く語っていらっしゃる方は、アルバムの人気に比すると少ないように思います。
ちょっと地味な印象を持たれているのかなぁ。
前回のお題「ナイフをとれよ」に引き続き、いまひとつみなまの反応が薄い記事になってしまうのでしょうかねぇ・・・。
これまで何度も書きましたように、僕はポリドール時代のCDをすべて買い終えた段階で、一度ジュリー熱が少し落ち着いてしまっていました。
ポリドール期以降のCDには何故か手を出さず、YOKO君と二人で「次は、映像作品を少し観てみるか」ということになり、YOKO君と分担でDVD4枚を入手、交換作業をいたしました(YOKO君が『快傑ジュリーの冒険』『ジュリーマニア』、僕が『ZUZU SONGS』『REALLY LOVE YA!!』)。
その中で、さほど期待もせずに「ま、一応」という感じで購入した『REALLY LOVE YA!!』の、特にアルバム収録曲の素晴らしさに僕もYOKO君も揃って感動・・・すぐにCDの方も追って購入した、という次第。
それが2007年ですかね・・・この頃はまだ、吉田建さんプロデュース時代のアルバムも普通に売られていました。
ですから
「まぁ慌てずとも、いつでも買えるな・・・」
と、他アルバムに積極的に手を出さなかった・・・。『ジュリー祭り』直後にどれほど後悔したことか。
『REALLY LOVE YA!!』というのはジュリーの歴史においても興味深い位置づけの作品だと思っています。前作『BEAUTIFUL WORLD』で一度後方に押しやられた”ロックスターの孤独”という建さんプロデュース期独特のコンセプトが復活し、その結果非常にロック色が強まっていると同時に、ジュリーの自作詞ナンバーにも重きが置かれ、来たるセルフ・プロデュース時代への扉がしっかりと開かれているという、贅沢な作りになっています。
穿った見方をすれば、建さんの「これが最後!」という気合が満ちているような感じもしますね・・・。
改めて、僕はこの「夜明けに溶けても」については、まずは朝水さんの素晴らしい感性を手放しで絶賛したい・・・本当に大好きな詞なのです。
その「やさしさ」は、DVD『REALLY LOVE YA!!』を鑑賞した瞬間から強く感じていましたが、今まさにこんな時だからこそ、2番Aメロの詞がたまらなく愛おしい。
♪ 春が近づくみたいと 振り返って風の中
F#m7 E Fdim C#7
この距離を遠ざけずに 見つめていたい よ ♪
F#m7 E C# C#7
・・・今年ほど、春が待ち遠しい年はありません。
東北の地に、1日でも早く暖かい風が吹いて欲しい・・・今、すべての人の願いでしょう。
「夜明けに溶けても」の主人公は、限りなく優しい目で恋人を見つめています。朝水さんの描くその距離感は、何と絶妙なことでしょう。
これは、女性ならではの感覚なのでしょうね。
「日常の中で、ふとときめく瞬間」をずっとずっととっておきたい・・・そんな思いが手にとるように分かります。
さて、僕にとって「夜明けに溶けても」はこのように優しさ全開のナンバーなのですが、それは朝水さんの詞に留まらず、佐橋佳幸さんの作曲、建さんのアレンジ、ジュリーのヴォーカルすべてについて総合的に感じるところでもあります。
♪ 僕のジャケットの襟を そっと直してくれてる ♪
F#m7 E Fdim C#7
この出だしだけで、言いようもない暖かい気持ちになる・・・数あるジュリーの胸キュン系ナンバーの中でも屈指の大名曲だと思うんだけどなぁ。
作曲の佐橋さんは、ビッグネームのバッキングや編曲で、仕事絡みでもよく名前を見かけていた人でしたが、作曲クレジットはジュリーで初めて知りました。
素晴らしいメロディーメイカーでもあったのですね。
特にこの『REALLY LOVE YA!!』では、「憂鬱なパルス」「夜明けに溶けても」というまったくタイプの異なる2曲でその秀逸な作曲センスを世に知らしめたと言って良いでしょう。
ただ、僕はとにかくワキの知識に甘い!
この記事執筆のために改めて検索をかけて、佐橋さんが松た○子さん(あまり松さんの検索数が多いので一部伏字にしました滝汗)の旦那さんであることを初めて知りました~。
ビックリしましたよ・・・。今になってみると、以前先輩にそんなお話を伺ったような気も・・・デジャヴかな?
「夜明けに溶けても」は佐橋さんにとっても会心の1曲かと想像しています。ひょっとしたら、お家で奥さんにジュリーの音源を聴かせていたりするかもしれません。
なんだか爽やかな話ではありませんか(って、僕が今勝手に作った話ですけど汗)。
アレンジも爽快。
建さんにしては珍しいパターンでしょうかね。良質なポップスのお手本のような、のどかなアレンジです。
パーカッションがすごく効いていますし、何と言ってもこの曲はスライドギターが肝でしょう。
スライドギターについては、後の『サーモスタットな夏』収録、白井良明さんアレンジの「愛は痛い」と比較するのも面白いです。白井さんはジョージ・ハリスンの「マイ・スウィート・ロード」直系のブリティッシュ風味。対して建さんはアメリカン・カントリー・ロックの要素もとり混ぜ、より素朴な味わいに仕上げていますね。
せっかくですから、この機に「スライドギター」について簡単に解説しておきましょう。
最近のLIVEですと『秋の大運動会~涙色の空』での「世紀の片恋」や、『Ballad and Rock'n Roll』での「君が嫁いだ景色」で、下山さんが何やら銀色の筒みたいな物体を指にはめて、ギターを弾いていましたよね。そのこと自体は、お気づきの方も多いでしょう。
あれが「スライドギター」。
ギターの種類ではなく、奏法の呼称なのです。
下山さんが持っていた銀の筒は、「ボトルネック」という名称の道具です(最近は「スライドバー」と呼ばれることも多いようです)。
そのボトルネックを使ってギターの弦をすべらせて演奏するのが「スライドギター奏法」。
1音ごとの移動ではなく、なめらかに音程を上げたり下げたりします。これは弦楽器特有の奏法で、ピアノや管楽器でこのような演奏表現は不可能です。
ちなみにとても貧乏だった20歳ちょっとの僕は、初めて自作曲でスライドギターのアイデアを導入した際、ボトルネックの代わりにライターでギターを弾いてレコーディングをしたことがあります。
さすがに音は悪く、ちょっとガシャガシャした雑音が入るんですよ。「これが逆に味だ」とうそぶいておりましたら、後に目上のギタリストにひどく怒られたものです・・・(恥)。
おっと、おかしな話をしてしまいました。
朝水さん作詞のジュリー・ナンバーは、きっと「そのキスが欲しい」が代表作ということになるのでしょう。
しかし僕は「夜明けに溶けても」こそが朝水さんの本質と見ます。派手ではないけれど、ジュリーの優しい一面を大きく引き出す魅力が、確かに朝永さんの詞の中にはあるのです。
そう、ジュリーは優しい。
そして強い。
強さを感じるのは、3度登場するサビメロの歌詞。ジュリーは「君」を見つめながら、自分の変わらぬ気持ちを確かめ、強靭な意志、決意を漲らせます。
♪ 何が変わっても ふたりこうし ていよう
E A G#m7 G#7 C#m F#7 F#m7 B7
夜明けに溶けたっ て いいと 言ってよ ♪
E A G#m7 C#m F#m7 B7 E
でも・・・「夜明けに溶けたって♪」と歌うジュリーは、やっぱりどこか優しい表現を狙っていますよねぇ。
コーラスも、この曲はとても優しい・・・その効果もあるのかな(アルバムの他収録曲のコーラスは、結構とんがっています)。
僕は、「夜明けに溶けても」について、大好きなナンバーだけど、おそらく今後の生のLIVEで体感することは無いだろうと思っています。
そう考えると、『REALLY LOVE YA!!』の映像作品が残っていて、本当に良かったです・・・。
改めて、感謝。
| 固定リンク
| コメント (12)
| トラックバック (0)
最近のコメント