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2011年2月

2011年2月28日 (月)

TEA FOR THREE 「あなたが見える」

from single
『君を真実に愛せなくては他の何も続けられない』B面
1997、TEA FOR THREE


予定曲をひとつ先に送っての更新です。
”『Ballad and Rock'n Roll』セットリスト・おさらいシリーズ”・・・予告しておりました大トリは「彼女はデリケート」の記事。
鋭意下書き中ではありますが、今日はちょっと1曲まったく別のお題にて短い記事を書かせて頂きます。

曲は、TEA FOR THREEの「あなたが見える」。

伝授、というのはあてはまりません。
僕は本当に、この曲について、TEA FOR THREEについて、これまで何も知らなかったんだなぁ、と思いながら書いているところです。

TEA FOR THREE・・・先輩方は当然ご存知でしょうが、これはジュリー、サリー、タローの3人によるユニット。
ちょうどジュリーが40代を終えようかという時期に結成されています。
僕も、ドーム以降の勉強で、そういうユニットがあったことは認識していました。シングル「君を真実に愛せなくては他の何も続けられない」を始めとする、レコーディングされたナンバーも、昨年秋にすべての音源を聴くことができました。

ただ、結成のいきさつなど、詳しいことは何も知りませんでした。

そんな中つい先日、いつもお世話になっている先輩からちょっとした情報を頂きました。
誰もが知る長寿番組、NHK『みんなのうた』が今年で放映50周年を迎え、ホームページにて
「あなたがもう一度聴きたい曲を募集」
しているのだそうです。


http://www.nhk.or.jp/minna/

その先輩は、何とかもう一度TEA FOR THREEの「あなたが見える」が観たい、と仰っていましたが・・・。
僕は、全然知らなかった!
『みんなのうた』という国民的番組で、90年代の終わりにジュリーの歌声が毎日日常の中に流れていた、という事実。
かつて(と言うか比較的最近、という気すらしてしまう)そんなことが本当にあったのですね・・・。


「思い出の曲を探してリクエスト」をクリックすると
http://cgi2.nhk.or.jp/minna/req/index.cgi

そして、「キーワードで検索する」に「あなたが見える」と入力すると

20100228

うぅ・・・動いてるトコが観たい・・・。

僕は今回初めて知ったのですが・・・TEA FOR THREEの結成も、まずはこの「あなたが見える」という楽曲ありきで進んだ話だったようですね。
最初は、『みんなのうた』で絵を描いていらっしゃる中島潔さんから、タローに曲の依頼があったそうです。
中島さんの「可能ならジュリーに歌って欲しい」という要望を受け、タローはその旨ジュリーに打診。
ジュリーは快諾し、「じゃあ、歌詞はサリーに」と矢継ぎ早に話が膨らんでいったとか・・・。
遂にはサリーが本当に久しぶりにベースのレコーディングまで!

「あなたが見える」は結局CD盤では、「君を真実に愛せなくては他の何も続けられない」のカップリング曲ということになり、後追いの僕はこの「あなたが見える」をいわば”B面曲”などと認識していたわけですが、実はとても重要な楽曲だったのですねぇ・・・。

タローの作曲は『みんなのうた』のコンセプトがしっかり頭にあったのでしょう。
タイガース時代に大ヒットした「青い鳥」の系列を組む、短調の、朴訥ながら優しい雰囲気を重視した作曲手法ですね。
いや、”フォーク”の要素は確かにありますが、これはどちらかと言うと童謡的と言うのかなぁ。
『みんなのうた』にふさわしく、リスナーの年齢層を問わない普遍的なメロディーと言えます。
この手法は、「青い鳥」で作曲開眼したタローの最も得意とするところ。

そして、TEA FOR THREEのコンセプトにまつわるTV対談では
「タイガースが全員揃えばなぁ」
という意味のジュリーの発言もあったそうですね。

「あなたが見える」を改めて聴いてみると、ジュリーのこの言葉がより強く響きます。
というのも、僕がこの「あなたが見える」を聴いて想起するタイガース・ナンバーが「青い鳥」以外にもう1曲あるのです。

『THE TIGERS 1982』に収録されている「新世界」。
これもまた、「青い鳥」直系の作風かと思いますが、最大の特徴はヴォーカル・パートです。
『ヒューマン・ルネッサンス』の「忘れられた子守歌」を踏襲したような、Aメロ=ジュリー→高音Bメロ=トッポ、という振り分けですね。

もしも、「あなたが見える」を機にタイガースが集結していたとすれば、この曲も同様のヴォーカル配置がふさわしかったのでは・・・と僕は考えてしまうのです。

♪ 心の中に めまいが残る ♪
    Dm    Am  Gm    A7  Dm

までがジュリー。
続く

♪ 誰もいない 家の中で ♪
    C          F    Gm     A7

のBメロ部がトッポ。
・・・ね?
この「あなたが見える」という曲は、「新世界」に似てるんですよ。いかにもタローらしい曲で、ジュリーの声にもトッポの声にも合っています。

結局3人だけの”集結”となった実際の音源では、ほとんどジュリーが歌ってますけどね。
もちろんそれはそれで素晴らしいですが・・・。

そうそう、”集結”と言えば。
先日発売され話題沸騰の、ピーの本を読まれた先輩方の中に
「”再結成”以前に、”再集結”(ピー自身の言葉です)が実現したことで、彼等にとって大事なことがほぼ成し遂げられたと言えるのではないでしょうか」
と仰る方が、多くいらっしゃいます。

それほど、タイガースの初期メンバー5人が顔を揃える、ということは難しいことだったのでしょう。
ですからここから先”再結成”してレコーディングする、ツアーをやる、というのはまた別の話になってくるのでしょうね。
メンバー同士、お互いが無事に顔を合わせた今となっては。

それで、色々と時間がかかっているのかもしれませんよね。
気を長くして待ちましょう・・・。

さて、「あなたが見える」は、YOU TUBEに音源が上がっていることもあり、曲を聴くことは簡単です。
しかし、『みんなのうた』オンエアそのままの、中島さんの絵と共に流れる「あなたが見える」の映像となると・・・僕は見つけることができませんでした。

『みんなのうた』50週年記念の再放送の1曲として、そんな映像がもう一度お茶の間に流れたとしたら、それは感動的でしょうね!
「もう一度見たい」と仰る他の先輩方も多いでしょうし、ここのところ増え続けている新規ジュリーファンのみなさまにとっては、「まったく未知の映像」ということにもなるでしょう。

僕も、この機にリクエストさせて頂きました。

ジュリーファンの行動力を持ってすれば、まんざら再放送も夢ではないような気がしているのです。
今日はそんなことを考えて、『みんなのうた』リクエストページの情報を多くの先輩方に知って頂くべく、急遽簡単な記事を書かせて頂きました。

みなさまも、是非リクエストを~。

リクエスト時には、オプションで400字以内のコメントをつける事も可能です。
タイガースへの思いなどを語るのも良いかもしれませんね!

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2011年2月25日 (金)

速報!

前記事に頂きましたコメントのお返事がまだなのですが…。

先程、先輩より情報を頂きました♪
一刻も早くみなさまにお知らせしたいので、急遽、初めて携帯から記事更新します。

ピーのオフィシャルサイトがオープンしてます!

みなさま、もうご覧になりましたか~?
ピー本人の手作業が目に浮かんでくるような純朴なサイトですよね・・・。

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2011年2月24日 (木)

沢田研二 「耒タルベキ素敵」

from『耒タルベキ素敵』、2000

Kitarubeki


disc-1
1. A・C・B
2. ねじれた祈り
3. 世紀の片恋
4. アルシオネ
5. ベンチャー・サーフ
6. ブルーバード・ブルーバード
7. 月からの秋波
8. 遠い夜明け
9. 猛毒の蜜
10. 確信
11. マッサラ
12. 無事でありますよう
disc-2
1. 君のキレイのために
2. everyday Joe
3. キューバな女
4. 凡庸がいいな
5. あなたでよかった
6. ゼロになれ
7. 孤高のピアニスト
8. 生きてる実感
9. この空を見てたら
10. 海に還るべき・だろう
11. 耒タルベキ素敵

-----------------------------

会社の決算期で、なかなか忙しい月末。
更新が遅れがちになってますが、毎回入魂で書かせて頂いていますからね!

本題の前に、まずは時事ネタからです。
多くのみなさまが既に話題に採り上げていらっしゃるので、今さら感も否めませんが・・・ジュリーのトークショーのタイトルが

「ザ・タイガース君だけに愛をとはとわに、ああ花の首飾りとは
(最後の「とは」はごく最近つけ加えられたようですね)

後追いファンの僕ですらちょっとソワソワしてしまうような、意味深なフレーズが並んでいます。
いや、意味深と言うよりは「ズバッときた!」感じ・・・なのでしょうか。

僕は「トークショーに行きたい」と思ったことは一度も無いんですけど、今回ばかりは「一体何を話してくれるのか」と気になって仕方がないですね~。
「タイガース」という直球もそうなんですが、ジュリーが「花の首飾り」を自身の語る言葉として大々的にアピールしている意味。僕が最も気になるのは、その点です。

参加なさる予定のみなさまのご報告、楽しみにお待ちしていますよ!

さてそれでは。
『Balla and Rock'n Roll』セットリストおさらいシリーズ、今回はその2曲目です。
前回記事に書きましたように、このシリーズでは

① 「おおっ、この曲やってくれるとは!」
② 「うわ~、こんなにイイ曲だったのか!」
③ 「くぅ~、何度聴いても盛り上がる曲だ!」

という3つの観点からそれぞれ1曲ずつ採り上げます。
今日は②ですね。
ジュリーのLIVEに参加する度に、②の衝撃を受けるナンバーが必ずあります。今回の『Ballad and Rock'n Roll』で僕は「耒タルベキ素敵」「1989」の2曲に打ちのめされました。

遊びにいらしてくださる方のリクエストも全くの互角・・・どちらを記事にしたものか迷いましたが、結局「耒タルベキ素敵」を選ばせて頂きます。
君にだけの感情」「PEARL HARBOR LOVE STORY」と合わせ、セットリストの中で僕が個人的に”バラッド”を感じた曲ということもありますし、ステージ構成に何年ぶりかの変化が見られた今回のツアー、「耒タルベキ素敵」というナンバーが何か暗示するところがあるように思うのです。
『Ballad and Rock'n Roll』に込めたジュリーの意図が、この曲に象徴されているような。

「1989」はね・・・演奏やアレンジで語りたい事がたくさんあるんですけど、肝心の歌詞解釈が全然・・・。
そもそも「1989」という年号は何ぞ?
と、ヒヨッコの僕はそこから考えなければならないわけで・・・。
今のところ「昭和最後の年」くらいしか思いついていません。この状態で執筆しますと

僕は大喪の礼の日に、塾講師のアルバイト先から呼び出しを食らって、生徒の受験後のケアーについてミーティングを受けていましてね・・・。

などと、個人的な思い出話を長々と書く事態になりかねません。
内容の薄い記事になってしまいますよね・・・。

『秋の大運動会~涙色の空』セットリストの「太陽」のように、「う~ん、分からん!」と執筆を先送りにしていたら、ある日突然ポ~ンと解釈が天から降りてくるパターンもあります。
「1989」については、そんな日を待ちつつ、良い機会を選ばせて頂きたいと思います。

ということで今日は

照明とワンセットでさらに不穏さUP、立てないもどかしさで焦燥感もUP!

まさに仰る通り!というwine様のお言葉。
『Ballad and Rock'n Roll』で、僕もその圧倒的な迫力、楽曲の存在感に気圧されました。
アルバム『耒タルベキ素敵』から、タイトルチューンの変態バラード・「耒タルベキ素敵」、伝授です!

と決めまして、いつものように執筆準備(ネタ探しとも言う)の採譜をはじめてみたのですが・・・。
手こずりました!

僕の引き出しには無い進行なのです。
コードそのものが複雑と言うより、組み合わせや進行順序が変わっていて、手クセで起こしていると「あれ、何か微妙に違うぞ」と立ち止まってしまう・・・そんな作業の繰り返し。
首が痛くなりました~。

90年代から2000年代のジュリー、名だたる作曲家さんがそれぞれ多くの名曲を残していますが、中でも、主にパワー・ポップ系を代表するのが八島順一さん、そしてセメント・ハード系を代表するのが吉田光さんと言えるのではないでしょうか。
僕の大好きな「
Shangri-la」、或いは『歌門来福』で体感し素晴らしい大名曲だと気づかされた「光線」。
これらの楽曲を考察してみますと、作曲者の吉田光さんは単にハードロックに留まらず、プログレッシブ・ロックの要素を多く取り入れた作曲手法を得意とされているようです。

僕は、プログレの楽曲を採譜したり市販の譜面を購入したりしたことがほとんど無いのですよ・・・。
”弾き語る”よりは”聴いて味わう”パターンでしたね。
仕方ないのです。僕は楽器の超絶テクニックとは無縁ですから(泣)。
一番好きなプログレバンドがピンク・フロイドで、キング・クリムゾンで一番好きな曲は「サーカス」だ、とか言っていたら、熱狂的なプログレファンの仲間から「待て待てい!」とたしなめられたりしたものです。
吉田光さんは、僕の知らない、さらにマニアックなプログレ・ナンバーに見られる作曲センスを多く会得しているような気がします。

「耒タルベキ素敵」のキーは、変ホ短調。
従ってトニックはミ♭ということになるのですが、イントロやAメロの3つの和音進行繰り返し部からして、なんだか様子がおかしい。

E♭m→G♭→A♭7

怪しい雰囲気を醸し出しているのは、最後のA♭7の効果でしょう。宙に突き放したような印象になります。
常にどこかしらで「ソ♭」の音が鳴り続けているのがポイントです。
和音進行を音階表記すると「シ♭・ミ♭・ソ♭」→「シ♭・レ♭・ソ♭」→「ラ♭・ド・ミ♭・ソ♭」という事になります。
ギター・カッティングがメインですから、「ソ♭」の音は和音の中間位置あたりで鳴っていますけどね。

そして、何と言ってもこの曲の最大の見せ場は、クールに抑えられてきた歌詞、メロディー、アレンジ、ヴォーカルすべてが爆裂するサビ部です。
このコード進行がまた、ヒヨッコ不勉強な僕の意表を衝くのです。

♪ 夜      に 注げよ 星     屑の シャワー
  E♭m D♭ A♭7    E♭m D♭  A♭7

  輝くものが 弾け合うのが
  E    E♭m   A♭7 G♭

  耒タルベキ素敵だろう ♪
  E          B♭7 A♭7

ハードです。
よくこんな順序で組み合わせられるなぁ・・・。
サビで大活躍するのがE(ミ・ソ#・シ)の和音。これがとてつもなくハードなのです。
移調して考えると、キーがAm(=イ短調)の楽曲でB♭(シ♭・レ・ファの和音)がたびたび登場する、という理屈になります。
ポップな楽曲だと、なかなか無いパターンです。

そしてサビ部でもAメロ同様、着地和音はA♭7。
変ホ短調の着地点として有力なE♭m、G♭、或いはD♭、Bなどは、変態的な(褒めてます)着地点へ到達するための経過でしかありません。

また多くの方は、サビで突然暴れ出すハードな各演奏楽器に耳を奪われることでしょう。
普通は、「全体の音量が上がった」とか「エレキギターがガツ~ン!ときた」というイメージでしょうね。
もちろん、その聴き方で合っています。

しかし僕が『Ballad and Rock'n Roll』で「耒タルベキ素敵」を体感し、その勢いで後日歌詞カードを熟読しながらCD音源を改めてじっくり聴いて初めて
「おおっ!」
と感じたのは、サビ部突入のタイミングでドカ~ン!と炸裂するドラムスのチューニングの唐突な変化なんですよね~。
2トラックに分けて別録りされているのでは!と考えてしまったほどです。

サビ以外の部分は、ユルユル。
サビはガチガチ。

ガチガチの硬いドラムス・チューニングは、同じアルバム『耒タルベキ素敵』収録曲「君のキレイのために」や「ゼロになれ」などで、ほぼ同じような音色が聴かれますが、それらの楽曲はいずれも、当然楽曲通じて一定に硬いチューニングになっているのです。
しかし「耒タルベキ素敵」は、サビ部とそれ以外でそれぞれ違う曲を演奏するような感じで設定されているんですよね。

それまで渋~く影のように叩かれていたのが、サビ部では一転、ガッチガチのチューニングで暴れまくる、というアレンジ。

ということで、ふと演奏クレジットに目をやりますと

Tum Take/白井良明

これ、何でしょう?
「Tum」・・・ドラムスのタムなら「Tom」ですから、何を意味するのか謎なんですけどね・・・。とにかく、白井さんがギター以外に何か特別なトラックを加えていることが示されています。

もしそれがタムの追加トラックだとしたら・・・白井さん、素晴らし過ぎる!!
その仮定ですと、全ての楽器がレコーディングされ、ひょっとしたらヴォーカルやコーラスすら録られた後の最終段階で、変態アレンジャー(え~と褒めてます)白井さんが
「何かが足りない!サビ突入部でもっと迫力が必要だ!」
と思い立ち、タムを自ら叩いたテイクを追加した、としか考えられないではありませんか~!
それは、あの「
U・F・O」の

跳べ!(どか~ん!)

の「どか~ん!」なアレンジと全く同じ作業ですよ!
そりゃあ、白井さんとしては是非ともクレジットが必要です。「ワタシがこれを発案して、ワタシが叩いてます」とね。
まぁ、それはさすがにナイですか・・・。
ともかく、イントロ→Aメロ→Bメロのドラムスと、サビのそれとでは、表情が全く違うのです。

しかし・・・LIVEであれほどの感動を味わえなかったら、こうして集中してCD音源を聴き返すことも無かった・・・。
当然、この白井さんの渾身のアレンジ&ニクいクレジットに気がつくのもずっと先になっていたはず。
まったくジュリーナンバーは油断がなりません。僕が気づいていない魅力が、他の楽曲にもまだどれだけ隠されていることやら・・・。

そうそう、クレジットでもうひとつ目を引くのは、コーラスパートですね。
伊豆田さんと並んで、依知川さんの表記があります。「ベース&コーラス」だと見逃してしまいそうですが、コーラスのみのクレジット。
LIVEツアーを通じて、ジュリーが依知川さんのコーラスに大きな信頼を寄せてきているのがこのクレジットから見てとれます。何故そう言えるかというと、ジュリー自身が素晴らしいコーラスの使い手ですから(主旋律をハモる抑え気味の歌い方など、ソロ初期からその才能は様々な楽曲で堪能できます)、センスのある人がセンスのある人を認めた、ということではないでしょうか。

「麗しき裏切り」の頃は肩に力が入っているようにも感じますが、依知川さんのコーラスは2000年代に入って以降、年々洗練されていきますね。
それはDVD作品を年代ごとに比較して観れば、よく分かることなのです。

さて、先程はサビの豪快に暴れまわるガチンコ・ドラムスについて書きましたが・・・。
それ以外の箇所での渋く跳ねる(1小節に2つの16分音符裏拍打ちがあります)柔らかいチューニングのドラムスもまた素晴らしい。
スネアのロール残響音を採り入れた、なかなか素人では叩けないプレイです。バンドのドラマーに聞くところによれば、「ゴースト」というテクニックなのだそうです。
影で不穏な響き鳴らす・・・「ゴースト」とは言いえて妙ですね。

そう、「耒タルベキ素敵」は不穏な楽曲です。
何か重大なことが起こる予兆・・・そんな雰囲気を感じさせる、どちらかと言うと「美しい」より「おどろおどろしい」ナンバーのはずです。
曲構成やアレンジ、演奏だけを考えれば・・・。

しかし「耒タルベキ素敵」を「美しい」と考える人は多いでしょう。
そこでいよいよ、歌詞、そしてジュリーのヴォーカルに着目しなければなりません。

♪ 何もいらない
  僕たちの夢が この世の平和と告白したら
  みんな笑うだろうな

歌詞の肝は明らかに、2番以降のサビ(先程コード進行表記した部分)のリフレインで登場するこのメッセージでしょう。
覚さんが志したのは、歌詞の流れを追って考えれば「孤高の潔さ」のような気がします。
ただ、ジュリーはそれを「個人の覚悟」として歌っているように思われるのですがいかがでしょうか。

「耒タルベキ素敵」リリースから10年ちょっと。
「みんな笑うだろうな」
と歌ったタイムリーな2000年から月日が流れ、今、「笑えない」時代がやって来ようとしているのでしょう。
だからこそ、『Ballad and Rock'n Roll』セットリストの鍵は「耒タルベキ素敵」が握っているように僕は思います。
ジュリーは決して後ろ向きにこの曲を歌っていない・・・そこが凄いと思うわけです。


これまで幾多の曲で何度も同じことを書いていますが・・・「耒タルベキ素敵」についてもやはり断トツで素晴らしいのはヴォーカル。
以前、「誰れかがいるはず」の記事でジュリーのヴォーカルを、「叫ぶように囁く」と表現したことがあります。『Ballad and Rock'n Roll』でのこのナンバーでの歌唱は、まさにそんな感じでした。


そんな「耒タルベキ素敵」・・・『Ballad and Rock'n Roll』では素晴らしい照明の効果で、不穏さも美しさも倍増状態でしたね。
とにかくイントロからずっと、まったくの闇。2階席で参加した渋谷ファイナルでは、ステージの人影すら見えませんでした。
それがサビのコーラスで「バ~ン!」と白光のライトが、ステージも客席も突然に覆い尽くすのですから、鳥肌モノです。


そしてエンディング。
まずジュリーに当てられていらライトが、ヴォーカル部が終わると同時に消え、ジュリーは闇の中へ。
その後はCD音源と同じように、ベース、ギターの順にかき消え、最後はただひとつ残ったドラムスのGRACE姉さんにライトが当たり、演奏が終わると再びステージは完全な闇に包まれました。
照明、完璧。

そして、泰輝さんがこの曲でどうしてもシンセベースを弾かなければならなかった意味も解りました。「弾く」演奏シーンよりもむしろ、「消える」瞬間が重要だったのです。
それでもBメロではしっかり怪しげなキーボードの音色も網羅していた泰輝さん・・・この曲でもやはり”神の両手”は健在でした。

先輩方は、『Ballad and Rock'n Roll』以外にも、数回この「耒タルベキ素敵」を生で体感なさっているのですね・・・羨ましい。
幸い、2000年代のLIVEは多くのDVD作品として残されています。「耒タルベキ素敵」が演奏されたものも数点ありますが、「観てない」と仰る方々がいらっしゃいましたら、僕が強烈にお勧めしたい「耒タルベキ素敵」収録の作品は

CROQUEMADAME AND HOTCAKES

です!
「耒タルベキ素敵」は後半2曲目。
後半1曲目が「君のキレイのために」なんですよ。当然ジュリーはいつものようにステージを走り回り、旋回します。
「君のキレイのために」が終わり、ヘロヘロ状態になりながらジュリーは

ハァハァ・・・

と息を整えるわけです。
これを、わざとマイクを通して、会場全員に聞こえるようにやるんですね~。
で、ジュリーの激しい息遣いが続いているうちに、重なるようにして「耒タルベキ素敵」のあのクールなイントロが始まるのです。
観ていらっしゃる方々なら賛同して下さると思いますが、あれは絶対計算ずくですよね~。
色っぽい喘ぎ声が、「耒タルベキ素敵」のイントロと完璧にマッチしています!

え?
「走り回ったとは言え、そんなにハァハァするほど疲れてるの、ジュリー?」ですって?

それはね・・・。
衣装が・・・いやいや、そこは実際に観てみてくださいね!

あぁ、今回もまた大長文になってしまいました。
毎度申し訳ないです・・・。
次回「彼女はデリケート」のお題にて、またお会いいたしましょう!

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2011年2月17日 (木)

沢田研二 「君にだけの感情(第六感)」

from 『第六感』、1998

Dairokkan

1. ホームページLOVE
2. エンジェル
3. いとしいひとがいる
4. グランドクロス
5. 等圧線
6. 夏の陽炎
7. 永遠に(Guitar Orchestra Version)
8. 麗しき裏切り
9. 風にそよいで
10. 君にだけの感情(第六感)
11. ラジカル・ヒストリー

---------------------------

それでは今回記事より拙ブログでは、1月に終わったばかりのジュリー2011年のお正月ツアー、『Ballad and Rock'n Roll』おさらいシリーズへと突入いたします。
毎度のことながら、1曲1曲を振り返ることに大いに意義があるセットリストでした。

今回も、最近のツアーおさらいシリーズでは恒例となっている以下の”3つの観点”から、それぞれ感銘を受けたナンバーを1曲ずつ書いていこうと思います。

① 「おおっ、この曲やってくれるとは!」
② 「うわ~、こんなにイイ曲だったのか!」
③ 「くぅ~、何度聴いても盛り上がる曲だ!」

第1回目の本日のお題は、①から。
いやね・・・昨年の『歌門来福』同様に、今回のツアーでも①の楽曲はすごく多かったんですよ。夏のツアーだと、②と③の割合が多くなるのですが・・・①が多いってのは、多くのジュリーファンにとって、お正月コンサートの醍醐味のようですね。

で、①は確かに多かったんですけど。
今回のツアーはですね、①について、「もう記事書いてる!」って曲がほとんどだったんです。
記事書いて「いつか生で聴きたいなぁ」とか、「いつか生で聴けることがあるのかなぁ」と考えていた楽曲が矢継ぎ早に繰り出されて。
そりゃ、僕がネタバレ我慢中に多くの先輩方が「我慢は報われるよ!」と仰ってくださるも、道理。

「君が嫁いだ景色」「PEARL HARBOR LOVE STORY」「砂丘でダイヤ」・・・いやぁ、名古屋で初めてセットリストを体感した時には、本当にシビれました~。

でも考えてみれば、僕も少しずつではありますがジュリーナンバーの記事を網羅しつつありますから、執筆済の曲が多いセットリスト、というのはこれからどんどん増えるのかもしれません。
いつか、「うわ、もう全曲記事に書いとる!」なんていう時が来るのでしょうか。
一度はそれも体験してみたいですね・・・。
もし今回がそうだったら、おさらいシリーズでは「PEARL HARBOR LOVE STORY」」を改めてもう1回書いたりするんだろうなぁ。

という事ですから、今回まだ記事の無い①の楽曲は結局「愛は痛い」「マッサラ」・・・そして「君にだけの感情」。
今日はこの中から、僕が”バラッド”を強く感じた「君にだけの感情」を採り上げたいと思います。
アルバム『第六感』から、伝授!

LIVEレポート記事でも書いたように、僕にとって『Ballad and Rock'n Roll』というツアータイトルの”バラッド”とは、「君にだけの感情」「耒タルベキ素敵」「PEARL HARBOR LOVE STORY」の3曲でした。
いずれも、アレンジに大胆な仕掛け、工夫があるナンバーという共通点があります。
うまく説明できないのですが、ちょっと不安を煽るようなアンサンブル・・・それが良いのです。僕は元々、洋楽のサイケデリック・バラードが好きですからね。それは白井良明さんのアレンジ嗜好でもあると思っているのですが。

僕はみなさまご存知のように、『ジュリー祭り』以降に1990年代から2000年代のアルバムを必死になって次々と大人買いしました。
大人買いというのは実は弊害もあって、新たに初めて聴くアルバムがどんどん増えていくわけですから、すべての収録曲を考察消化していく作業が追いつかなくなってくるのです。
1度目に聴いた瞬間に気に入ったアルバム(例えば僕の場合だと『サーモスタットな夏』や『CROQUEMADAME & HOTCAKES』など)は時間を割いて繰り返し聴いて・・・ますます好きになっていくのですが、初っ端の印象が薄かったアルバムをじっくり聴き直してみよう、という機会がなかなか巡ってきません。

僕が『第六感』を「名盤だ!」と認識するまでには、数ヶ月かかりました。
大人買いをしたアルバムの中では、評価が最も遅れた作品です。

何故そんなに遅れたのか・・・理由はハッキリしています。
『ジュリー祭り』で、このアルバムから1曲も歌われていない、ということ。
やっぱり、ドームでポカ~ンと聴いてしまった名曲達を何とか早く正当に評価したい・・・僕の大人買いは、そこが大きなテーマだったのです。
ですから、”ドームで聴いた”という経験の楽曲が無い、まったくの未知なる『第六感』の世界と真剣に向き合うことを、後回しにしてしまっていたのですね。

ようやく、じっくりと腰を据えて聴いた『第六感』は、凄まじく内容の濃い名盤でした。すぐに「風にそよいで」の記事を書いたっけ・・・。
前後にリリースされた『サーモスタットな夏』『いい風よ吹け』2枚の、まったく別の良さを見事に線で繋げる作品です。
それは主に、ジュリーの作詞と白井さんのアレンジについて言えることだと思います。

ジュリーの詞が、壮大な物語や架空のシチュエーションを組み立てていく手法(「愛は痛い」については、どちらかと言うとCO-CoLO時代の手法だと考えています)から、身近なテーマを掘り下げながら、メロディーとの互換性を重視する手法へ変化していったこと。

そして白井さんのアレンジが、まるで自身のキャリアを踏襲するように、ビートルズ直系の多種楽器アンサンブルから、ハードなギターアンサブルを主張し前面に押し出し始めたこと。

詞、アレンジともに、『第六感』ではそれぞれの変化、両面の魅力が同居しています。
それは、歌謡曲の匂いを強烈に残しながらも、本格的なロック志向への転換が同時に見てとれるアルバム『TOKIO』のイメージと重なるようにも感じます。

『第六感』収録曲のアレンジ、レコーディング・アプローチで、ハッキリ『サーモスタットな夏』寄りと言えるものは「麗しき裏切り」(「恋なんて呼ばない」)、「ホームページLOVE(「サーモスタットな夏」)。
一方、『いい風よ吹け』寄りなのが「等圧線」(「ティキティキ物語」)「グランドクロス」(「鼓動」)でしょうか。

また、『第六感』ならでは・・・このアルバムでしか聴けないタイプとして挙げられるのが、「エンジェル」「いとしいひとがいる」「永遠に」。
この3曲は、白井さんのギターがクイーンのブライアン・メイような音作りなのです。
これは他のジュリー・アルバムには無い音です。サスティンが長く、しかも異なった音階で複数のリード・ギター・トラックを録音し、ハモリの効果を重視した手法ですね。

他の収録曲は、『サーモスタットな夏』『いい風よ吹け』いずれの側面をも持つ不思議なアレンジになっています。
白井さんは凝り性と言うか、アイデア実現のためには手間を惜しまないアレンジャーなのだと改めて思います。

さて、そこで「君にだけの感情」です。
豪華で緻密。志の高いアレンジですよ~。

CD音源からレコーディング・トラックを列記しますと

・ドラムス
・ベース
・パーカッション(タンバリン)
・アコースティック・ギター(最左チャンネル)
・エレキギター(右チャンネル)
・ピアノ(左チャンネル)
・シンセサイザー①
 (ストリングス。最右チャンネルから、エンディング部で徐々に中央へ移動)
・シンセサイザー②
 (ストリングス。左チャンネルから、エンディング部で徐々に中央へ移動)
・キーボード①
 (メロトロン系。右チャンネルでアルペジオを弾く、ビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」のような音色)
・キーボード②
 (オルガン・ハーモニウム系。左チャンネル、2番Aメロでヴォーカルに絡んでくる音)
・ヴォーカル
・コーラス

以上、合計12トラックと考えられます。

こうしてみますと、『Ballad and Rock'n Roll』・・・よくぞ鉄人バンドはこの曲を、今のスタイルの4人編成で再現してくれたものです!

今回のLIVE、この曲で泰輝さんは一体いくつのパートをたった一人で網羅していたのでしょうか。
”神の両手”に脱帽するばかりですが、やはり映像でじっくりその辺りを復習する手立てが無いのは、寂しいですよね。
インスト復活のこともそうですが、ソロコンサートのツアーDVDをまた出していって欲しいと願うのは、みなさま同じ思いでしょう。

「君にだけの感情」のCD音源、ミックスもかなり凝っています。
重厚なストリングスはシンセサイザーの音ですが、2トラックレコーディングされていて左右に振り分けられ、刻みと旋律が入れ替わり絡まり合いながら、エンディングでは徐々にそれぞれのトラックが中央へと移動していき、融合します。
ワウの効いたエレキギターの昂ぶりに合わせ、影の主役・ストリングスは美しくも混沌としたイメージを演出。
緊張感を出す狙いでしょう。渾身のミックス作業だと思います。

ピアノの音色とフレーズは、ビートルズの「I Am The Walrus」や、ポール・マッカートニーの「Maybe I'm Amazed(恋することのもどかしさ)」を彷彿させる、ちょっと危険でブッ飛んだ感じ。
そのため、生のピアノ音の感触ではありません。もっと甲高い、悲鳴のような音です。

これらは当然、ジュリーの

♪ いとおしく もどかしい 君にだけの感情 ♪
    D♭maj7                        Cm7

という、”五感ごとそれ以上”(細かいことですが、「感情」と韻を踏んでいますね)の激しいテーマを解釈してのアレンジと言えます。
『いい風よ吹け』以降のジュリー作詞作品の多くで顕著となる、”アレンジと歌詞の乖離”(それはそれで非常に面白く、僕はとても好きですが)は、『第六感』のタイトルチューンであるこの曲では、まだ見られませんね。

逆に言えば、『いい風よ吹け』収録のジュリー作詞ナンバーで唯一、そういった乖離を感じさせないナンバーは、タイトルチューンの「いい風よ吹け」。
「君にだけの感情」、ともに樋口了一さんの作曲です。
「愛は痛い」→「君にだけの感情」→「いい風よ吹け」と、ジュリーが樋口さんの作品を重視していくこの流れは、非常に興味深いところです。

LIVEレポートにも書きましたが、「君にだけの感情」はイントロとエンディングにおどろおどろしく”危うい”アレンジがあり、ことにエンディングは
「G♭(onA♭)→A♭」
の進行を延々と循環し、
CD音源では突然ブツリと途切れて次曲「ラジカル・ヒストリー」へと雪崩込みという構成。
これはカタルシス、と捉えて良いのかな・・・。
”第六感”とは、そこまで激しい起伏を擁した感覚なのでしょうか。

この曲で歌われる”感情”について、僕は今回LIVEで聴いて初めて感じたことがあります。
それは、セットリストを知った上で参加したファイナルでのこと。
「君にだけの感情」を聴きながら、これはリリース前作『サーモスタットな夏』から「PEARL HARBOR LOVE STORY」を受け継いでいる楽曲ではないのか、と考えたのです。

アレンジは、似ていると言えば似ています。
でも僕がそれを感じたのは、ジュリーのヴォーカルに入り込んでいた瞬間でした。だから、原因は歌詞じゃないかと思うのです。

ジュリーがこの2曲の詞を書いた時期は、当然ながら接近しています。
”ジャパニーズ・マコト”に、ジュリーはどんな自分を投影したのか。それは”純粋に愛に身を捧げる”ということではなかっただろうか。
それが「君にだけの感情」という歌詞をすぐ後に生んだのでは・・・。

♪ 僕の誠を賭け 君に届けたい歌 ♪
    D♭maj7             Cm7         Fsus4  F7

この部分が、「君にだけの感情」でジュリーが最も己を込めたフレーズであるように思えるのです。
あくまでも個人的な解釈ですが・・・。

今思い返しても、こんなに早くこの曲が生で聴ける日が来るとは思っていませんでした。
大好きな曲を、さらに深く考えさせてくれたジュリー。いつものことながら、一体どれだけ名曲持ってるんだ、という話ですよね。

さて。
次回記事は
「うわ~、こんなにイイ曲だったのか!」
という、まさに”ジュリーにしてやられた”パターンでのお題にて、『Ballad and Rock'n Rolll』おさらいシリースが続きます。

「耒タルベキ素敵」にするか「1989」にするか・・・激悩み中です!

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2011年2月12日 (土)

鉄人バンドのインスト on 『僕達ほとんどいいんじゃあない』

Juliewiththewildonesdvd

お正月コンサート『Ballad and Rock'n Roll』も無事終わりました。
しかし僕の気持ちとしては、今回の記事執筆でひと区切り、というのが正直なところです。

素晴らしいセットリスト、新たなステージングの中にあって、ただひとつだけ残念に思ったのは、やはり鉄人バンドのインストが割愛されてしまったこと。
何度も書きますが、僕は多くのJ先輩、J友さんが予想した”DYNAMITEの反応”とは逆の感想を持ち、前半後に休憩をはさむ構成を支持する、という気持ちになりました。

ただ、それとインスト割愛とはワンセットで考えてはいません。ステージ後半1曲目として、是非インストの復活を!と望んでいます。
この件につきましては、『Ballad and Rock'n Roll』名古屋公演のLIVEレポートをご参照ください。

さて今回の記事が第1回目となる新たなカテゴリーでは、これまでのジュリーLIVEで演奏されたバンドのインストゥルメンタル・ナンバーを採り上げていきます。
依知川さん在籍時、或いは井上バンド。注目すべき楽曲は枚挙にいとまがありません。
今回、まずは何と言っても今のジュリーを支える鉄人バンド。
しょあ様からリクエストを頂いております、ジュリーwithザ・ワイルドワンズ『僕達ほとんどいいんじゃあない』のインストについて書かせて頂きます。

で。
本題に入る前に、ちょっと書いておきたいことがあります。
これは僕が昨年春に、ジュリー堕ち以降初めて気持ちの壁にぶつかった時に考えたことで、ブログで書こうとは考えていなかったのですが・・・『Ballad and Rock'n Roll』を体験する過程で色々と考えさせられることもあって・・・「書く日が来たのかな」と思いました。
それは僕が個人的に想像する、”ジュリーの男気”について、なんですけど。

”男気”というフレーズは、ここ数日になって突然ジュリーファンの間でクローズアップされた言葉でしょうね。
そう、一躍時の人となったピーが、ジュリーの男気を語ったのです。
後追いファンの僕も、とても嬉しく思いました。

ピーという人は、自分の意思や考え方を簡潔に、自然に話すのですね。”伝達力”がある人だと感じました。
長い年月が空いていたからこそ、ジュリーとの再会から響くものがあった・・・ピーはそれを”男気”という言葉でジュリーファンに伝えてくれました。

あぁ、話が逸れています。鉄人バンドの話でした。

僕は『ジュリー祭り』以降、ジュリーに関する作品や表現すべてを受け止め、大げさに言うと人生の糧として吸収し続けてきました。共感やリスペクト、思い入れを持ってジュリーに向き合ってきたのです。
ところが昨年春、ジュリーファンとして初めて大きな困惑に駆られることがありました。
それは、NHK『songs』にて、ジュリーwithザ・ワイルドワンズ特集の第1週で放映された「涙がこぼれちゃう」を観た瞬間。
番組の大トリで放映された「涙がこぼれちゃう」は、ヴォーカル、演奏ともに、CD音源がそのまま使用されたものでした・・・。

「渚でシャララ」も同様でしたが、これは微笑ましく観ていられました。
ダンスがメインになることは予想していましたからね。

しかし、「涙がこぼれちゃう」までもがCD音源そのままだったことには、相当ショックを受けました。
それまで、多くの過去のジュリーのTV映像をネットで観ていて「この時代に専属バンドの生演奏!それだけでジュリーがいかにロックしていたかが解る」
というファンとしての誇りを得ていた僕にとって、その日の放映のあり方は到底受け入れられるものではなかったのです。

「何故だ、どうしてなんだ。ジュリー、加瀬さん・・・」
そう思うばかりでした。

「ヤバい、どうしよう」
と言いながら見事なまでにショげこんでいる僕を、カミさんは呆れて見ていましたけどね・・・。「どうしよう」というのはつまり、ジュリーに対して否定的な気持ちを持ってしまった自分に、うろたえていたというわけです。

僕はその頃、アルバム『ジュリーwithザ・ワイルドワンズ』収録曲を順にブログで採り上げて記事更新していて、「僕達ほとんどいいんじゃあない」執筆直後にそんなことがあり、コメントでヤケ気味の発言をしたりして・・・多くの方に心配をおかけしてしまいました。
記事の更新意欲もなくなっていました。

立ち直る直接のきっかけになったのは、吉田Qさまのブログを拝見したことです。
「つまらん事で落ち込んでいないで、早く俺の曲(いつかの”熱視線ギャル”)の記事を書けい!」
というメッセージを間接的に頂いたのです。

単純な僕はたちまち元気になり
「よし、もう一度よく考えてみよう。ジュリーのすることには必ず意味があるはずだ!」
と、気持ちをリセットすることができました。


以下は、僕の個人的な推測になりますが・・・。

まず考えたのは、放映の映像収録時点では、まだワイルドワンズと鉄人バンド合わせてのセッションには至っていなかっただろうし、演奏に関してはCD音源を使用せざるを得ない状況だったのだろう、ということ。

で、ジュリーほどの人なら
「演奏はアリもので止むを得ないにしても、ヴォーカルは生の音声で」
という主張は簡単にできたでしょうし、実現可能だったはず。
でもジュリーは、それをしなかった。
何故か?

そう考えた時、ハッと思い当たりました。

もしも
”ヴォーカルが生、にもかかわらず演奏がCD音源”
という映像がTVで流れたとしたら、心無い世間の中傷にさらされたのは、ワイルドワンズや鉄人バンドのメンバーになっていたのではないか、と・・・。
「エア演奏」とか言われたり・・・。
ジュリーにとって、それは我慢できることではないはずです。

ジュリーは、特に鉄人バンドに対して
「メンバーにそんな思いをさせるくらいなら、俺が全部かぶってやる」
と考えたのではないでしょうか。

そうだ、ジュリーは今までもそうしてきた・・・。
大切な人、大切な仲間を護るために、自らが矢面に立ち、一切の弁解もしない。
人を「護る」ということは、その人のために矢面に立ち、自らを差し出すということ。
ジュリーにはそんな矜持があるのでは、と思います。

『songs』放映後、ファンでない人が少なからずジュリーの「涙がこぼれちゃう」ヴォーカルの放映手段を、非難したと聞いています。
しかしジュリーは、自らがそう言われることで、完璧なまでにバンドを護ったとは言えないでしょうか。
僕はそう思いました。
やっぱりジュリーは男の中の男・・・男の手本だ、と思いました。

僕はすっかり心が晴れ、翌週放映の1曲目で「プロフィール」がやはりCD音源で流れてもまったく動揺しませんでした。
しかも、流れているのは確かにCDの音だけれど、現場ではジュリーが実際に歌い、バンドも音を出している・・・そう確信することもできました。

そんな経緯もあって・・・今年のお正月コンサート『Ballad and Rock'n Roll』で鉄人バンドのインストが割愛されてしまったことも、ジュリーが公にしない大きな理由があるのだと、僕には思えます。
それが何かは解りませんが、ジュリーの決めた事に意味の無い事などないはずだ、と考えるからです。

・・・と、ここまで随分枕が長くなりましたが、これまで数人の先輩方にしか話さず心にしまっていた個人的な思いを、この機に書かせて頂きました。

さぁ、本題です。
今まで生で体験した鉄人バンドのインストの中で、圧倒的に好きになった曲のリクエストを頂いたこと、そしてその曲がDVDという形でいつでもみなさまが鑑賞できること・・・とても嬉しく思っています。
ジュリーwithザ・ワイルドワンズ『僕達ほとんどいいんじゃあない』ツアーから、鉄人バンドの素晴らしいインストゥルメンタル・ナンバー、「情熱の渚」・・・伝授です!

まず断っておかねばなりませんが、「情熱の渚」(続くスローテンポのナンバーは「マーメイド・ドリーム」)というのは、今回リクエストをくださったしょあ様が以前につけた仮題です。
正式なタイトルがついているとの情報もありますが、残念ながらDVDにはクレジットがありませんでした。

しかし「情熱の渚」とは・・・何と素敵で、この楽曲にふさわしい仮題でしょうか。何と言っても、ジュリーwithザ・ワイルドワンズのコンセプトにピタリと合致しています。

インストの作曲構成やアレンジそれ自体が、言ってみれば”ワイルドワンズ仕様”を目指していることは明白ですから、やはりタイトルもそれに見合ったコンセプトであるべき。
そう考えると、「情熱の渚」・・・僕はこの仮題をとても気に入っています。

そうそう、リクエストをくださったしょあ様には、1月23日の渋谷『Ballad and Rock'n Roll』ファイナルでお会いすることができて、有難くもおみやげを頂いていたんだっけ。
どれどれ・・・。

20110123_2

”DYNAMITE CANDLES”

ダイナマイト・キャンドル?
あぁ、ローソクですかぁ。ダイナマイトという名の、10本入りのローソクのケースです。さすが、洒落てますねぇ・・・。

ローソクと言えば、僕が幼少時代に読み漁った作家、江戸川乱歩にこんな逸話があります。
普通に明るい電灯の下で原稿を書くとどうも気が入らず、敢えてローソク1本を灯して作品の雰囲気を盛り上げて執筆した、という・・・。
確か、相原コージさんの漫画でその話を知ったんだったなぁ。
ローソク1本の光によって、あの魑魅魍魎の耽美世界が生まれたのか・・・解るような気もしますねぇ。

この”DYNAMITE CANDLES”にも、そういう力があるのでしょうか。
他ならぬしょあ様が授けてくださったものです。何か、特別な効果があるに違いありません。

よし、試してみよう。
乱歩ばりに、ローソク1本で記事執筆してみるんだ。
電灯を落とし、キャンドルに灯をつけて・・・。

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DYNAMITE-CANDLES (1本目)

☆    ☆    ☆

「爺・・・爺・・・!俺だ。今帰ったぞ!」

時に忘れられたロストワールド。或いは、超五次元のハイパー空間か。
人智遠く及ばぬ大霊界。
その片隅、人間界との唯一の連結空間を擁した小さな執事部屋で、いそいそとアナログDVD機をセットしている老人が一人。その横で今、ゆらゆらと空気がゆらめき、黒ずくめの衣服を身に纏った痩身の男が姿を現した。
一見、50代前半の人間にしか見えないが、彼こそ、この霊界の正統な皇子・・・プリンス・ジュンであった。

彼が高貴な地位を捨て、人間界で生きていくことを決断した一大イベント『ジュリー祭り』から、早くも2年の月日が流れ過ぎていた。

「わっ・・・若!一体どうしたのです、突然のお帰りで・・・。ようやくこの霊界にお戻りなる決心がつきましたか!?」
爺と呼ばれた老人・・・プリンスの教育係として一生を捧げた小柄な老人は、いささか慌てながらも、嬉しさからか顔をクシャクシャにして、かつての「皇子」を出迎えた。

時は、人間界で言うところの2010年12月24日。

「いやいや、霊界の皇子なぞに戻る気はないが・・・クリスマス・イヴに爺の顔が見たくなってな。年が明けたら早速沢田さんのツアーがあるし、しばらく忙しくなるからなぁ」
痩身の”プリンス=若”は、よっこらしょ、と胡坐を組むと、ポンポン、と爺の肩を優しく叩くのであった。

爺はいっそう表情を緩めて
「左様でございますか!しかし大丈夫なのですか・・・。いきなり人間界からいなくなって、騒ぎになりませんかな?」

「平気だよ、今日1日だけだし。人間界には、俺はノロウィルスで隔離された、と触れ回ってもらってあるから」
「またそのような事を言って・・・。若には夏のジュリワン・ツアーで大変な前科がありますからな!人間どもが本気で心配するでしょうに・・・」
爺はそう言ってため息をついた。

「まぁまぁ・・・。その分信憑性もあるだろう?万が一にでも、霊界に行き来していることがバレたら大変だからな」
プリンスは暢気に応えると、ふと爺の手元に目を止めて
「あれ?爺、何かいやらしいDVDでも観るトコだったか?お邪魔したかな・・・」
「な・・・何ということを申されます!」
爺は真っ赤になって大声を出した。

「これはですな・・・今しがた特別に取り寄せた、本日下界で先行発売となったLIVE映像作品ですぞ!これを観ながら、大事な時に病に倒れた若に対する、己の教育不行き届きを反省しようと考えておったところです!
丁度いい、若もこれから爺と一緒に観ようではありませんか?」

今度はプリンスが慌てて
「も、もしやそれは・・・?」
「さよう。若が病で欠席なさったジュリーwithザ・ワイルドワンズのLIVEツアー『僕達ほとんどいいんじゃない』のDVDです!」

「爺、『いいんじゃない』ではなく、『いいんじゃあない』だ」

「細かいことを申されますな!」
遂に爺のカミナリが落ちた。霊界の厳かな空気が、ビリビリと振動する。
「このツアーが開催されている間、若の教育係として、不肖この爺がどれほど苦しんだと思っておられます?沢田殿や加瀬殿、柴山殿たちにもどれほど申し訳なく思ったか・・・」

「す、すまん、爺。もう決してあのような事はない・・・誓って。そうだ、お詫びというつもりではないが、これからそのDVDを一緒に観ながら、俺がもしジュリワン・ツアーに参加していたらどんな風にギターを弾いたか、爺に語ってくれようぞ」
プリンスは珍しくしおらしい表情になる。下界、霊界問わず、彼がこのような表情を見せるのは、他ならぬ、この爺に対してだけだ。

それがよく分かる爺は、感動で涙を浮かべると
「それは・・・この爺などに勿体無きお言葉・・・。爺は嬉しゅうございます。さすれば・・・この曲を」

爺はゆったりとDVDをセットし、チャプターを確認すると、真ん中より少し前の”チャプター15”のところで映像を頭出しにした。

まずドラムスにスポットが当たり、次いでキーボード。
鉄人バンドのインストである。

「うむ、爺ならばそう来ると思っていたぞ」
プリンスは目を細めながらうなずいた。
ギターが絡んでアームの音色を残したイントロが終わり、画面ではAメロが始まった。

Jounagi6

「まずこの1番の部分だが・・・。本来ならばここは俺がリードギターを弾く場面になっていただろうな」
「ええっ?そうなのですか!いかにも柴山殿のパート、といった感じですが・・・」
爺はいきなり驚く。

「いや、ここは俺がリードを弾いて、柴山さんがサポートに回るのが自然だ。何故なら、柴山さんにピッタリのアレンジがあるからだよ」
プリンスは我が意得たり、と解説する。
「俺がリードギターを弾く後ろで、柴山さんはピッキング・スクラッチでフォローする。どうだ、この曲にピッタリのアレンジアイデアだろう?」

「若・・・若。私は良いのですが、なるべく専門用語ではなく、もっと一般の衆にも分かり易い言葉で説明してくださいませぬか?」

爺の言葉に、プリンスは首を捻った。
「何故だ?」
「実は、我々のこのやりとりは、下界の人間が文章化し沢田殿のファンの間に広く発信される予定なのでございます・・・」

プリンスは膝を叩いて
「あぁ・・・聞いたことがある。霊界での俺と爺の会話の様子を下界に伝達する、優秀な女性祐筆がいるらしいな」
「いえ・・・確かにそうなのですが・・・。実はあの優秀な女性祐筆は現在筆を休めておりまして、今回の我々の様子は、残念ながら若輩の男が代わりに書いておりまする」

「男・・・なのか?イヤだなぁ。若いのか?」

「若い、とは言い難いですが・・・40過ぎの、沢田殿のファンの男だと聞いております」
「40過ぎか・・・若造だな。まだまだ沢田さんやワイルドワンズの境地など及びもつかない年齢ではないか」
「♪俺達、老人!」

「じ、爺!いつから人前で歌など歌うキャラになった?」

爺は悲しげに首を振ると
「ですから、今回は祐筆が代わっているのですよ・・・。必然的に我々のキャラも変化しております。私とて、好き好んでこんなキャラになっているわけではありません。今回は仕方無いでしょう・・・若もこの際、存分にハメをお外しなさいませ」

「うぅ・・・大丈夫かなぁ」
「観念なさいませ。ささ、解説の続きを・・・」

「う、うむ・・・え~と、ピッキング・スクラッチだったな。これはまぁ文字通り、ピックでエレキギターの弦を”ひっかく”という奏法だな」
「加瀬殿がこのツアー、「TOKIO」の間奏部にて宇宙遊泳のS.E.で応用されておりましたな」
「そう、アレだ。”きゅっ、きゅっ”という音だな。ベンチャーズに代表されるサーフィン・エレキ・サウンドで、ひいてはワイルドワンズのサウンドにも合致する音だ。このインストでは、3人体制だとそこまで網羅できないが、俺が加わって4人体制なら、曲にふさわしいアレンジだと思う。そうなったら、ピッキング・スクラッチは間違いなく柴山さんのパートになっただろう」
「なるほど・・・実現していれば、”きゅっ、きゅっ”なるフレーズが流行語大賞の上位にランクインしたかも知れませぬな。若の病のせいで惜しいことを・・・」
「言うな・・・爺」

プリンスはしばし頭を抱えていたが、気を取り直して解説を続ける。

「2番は、1番と同じメロディーを高い位置でミュート奏法・・・え~と、ミュートってのは弦に軽く触れて硬い音を出す奏法で・・・」
「ベンチャーズで有名になった、テケテケ・サウンドというヤツですな」
「そうそう、これはやはり柴山さんの出番だな」
「若はどうなさいます?」
「そうだな・・・普通に考えればコード・バッキングだが、キーボードが絶妙の刻みを入れているから、ギターコードは却ってミュート・リードの邪魔になるかもしれない」

Jounagi5

「泰輝殿のオルガン・カッティングは素晴らしいですなぁ・・・」
「俺は2番1回し目は休んで、2回し目からメロディーをハモって単音を弾くのが良いだろうな」
「ほう!若のテケテケが聴けたかもしれないのですな!まったくもって惜しいことを・・・」
「だから・・・言うなって」

画面の演奏は、ドラムソロへと移った。

Jounagi2

「GRACE嬢のドラムも素晴らしいですな・・・若は、この曲のドラムスについてはいかが思われます?」
「楽曲にセンス良く合わせているな・・・。例えばAメロで、弱拍・・・え~と、”うんた、うん、た”という、裏の拍にもアクセントがついてくるだろう?これがサーフィン・エレキ・ナンバーでのドラムノリなんだ。沢田さんの過去の曲だと、「サーモスタットな夏」などもそうだが・・・爺、気がついているか?ジュリーwithザ・ワイルドワンズのアルバム収録曲に、このインストAメロとまったく同じ構成のドラムスが採用されている曲があるんだぞ」

「若・・・。爺の耳をあなどってはなりません。それは、「いつかの”熱視線ギャル”」のBメロでございましょう」
「その通り。♪満員電車で♪から始まる部分だな。テンポもほぼ同じ。このドラムパターンこそ、ジュリーwithザ・ワイルドワンズにピッタリの奏法なんだ」

画面は、オルガン・ソロへ。

Jounagi1

「俺はここでようやくカッティングだな。柴山さんが4~6弦で突き放し気味にバッキングしているから、俺はAメロでの泰輝のオルガンフレーズと同じリズムで、細かいカッティングをやれば完璧だろう」

曲はやがてフィナーレを迎え、「マーメイド・ドリーム」へと移行していく。

Jounagi3

「あと重要なのは、このインストのキーがAmだったということかな。Amのペンタトニック・スケールは、すべてのリードギタリストが完璧に身体で覚えこんでいる。だから、柴山さんもほとんどフレットを見ずに弾いていただろう?」

Jounagi4

「確かに・・・。若の不在をものともせず、よくぞ柴山殿達はたった3人で、ここまで完成度の高い演奏をなさいましたな・・・」
「め、面目ない・・・」

「若が参加なさっていれば、柴山殿がステージ上手におられたはずですからな。やはり下手に柴山殿がおられるのは、違和感がございまする」
「い、いや・・・たぶんジュリワンの場合は、俺が参加していても、ギターの立ち位置は沢田さんのソロツアーとは逆になっていたと思う・・・」
「えっ、そうなのですか・・・一体何故・・・あっ、分かりましたぞ!若はNHKの放送収録で、ベースの島殿に絡まれるのを大層恥ずかしがっておられましたからな!島殿から逃げるおつもりだったのですな!」
「違う違う!俺がステージ下手にいたら、下手に島さんと俺、上手に加瀬さんと柴山さん・・・ステージ全体から見ると、人員配置が凸凹になってしまうから・・・」
「遠近法の問題ですか・・・まぁ、そういうことにしておきましょう」

爺はひとしきり笑い、やがて真剣な面持ちになった。
「若、もう2度とこのような・・・ツアー欠席などという事があってはなりませぬぞ。お正月コンサートのインストにも、爺は期待しております故・・・」
「あ・・・そのことだが、爺。実は今度のツアーでは、バンドのインストはやらないんだ」

「な、なんですと!」
爺は飛び上がらんばかりに驚いた。
「一体どうして・・・?」

「沢田さんは多くは語らないが、何か考えがあるんだろう。俺達は沢田さんについていくだけだ。これまでインストを演っていた前半と後半の間に、10分間の休憩が入るらしい」
「そうですか・・・。今までとは構成が変わって、若も気持ちの切り替えが大変でしょうな。その10分間、心して集中なさいませ」
「いや・・・普通におしっこ行くと思うけど・・・」
「おしっ・・・!こ、これ!何ということを申されます!今は下界に身を置くとは言え、若は高貴な霊界の皇子・・・そのようなはしたないお言葉を発せられるとは!」

「だってぇ・・・」

「おぉ、若の”だってぇ・・・”が出ましたな。今回代役の祐筆男、本家をまんまとパクリましたか・・・ってそういう事じゃなくて!」
「いやいや面目ない。俺はさほど用が近い方でもないんだが・・・『Pleasure Pleasure』ツアーの大阪で、アンコール前の沢田さんのMCの時に、油断してたら最後の最後にしたくなってな・・・。メンバー紹介に間に合わなかったことがあったもんだからさ」
「まったく・・・どれほど大量の用を足しておられたのですか・・・。爺は情けのうございます・・・」

「さて」
プリンスはおもむろに立ち上がった。

「急に訪れてすまなかったな、爺。俺は下界に戻る」
「なんと!」
爺は慌てふためいた。
「1日おられるのではなかったのですか?つもる話はこれからだというのに・・・」
爺の大きな瞳からは、みるみる涙が溢れ出した。
「溢れるなみ~だ~♪」

「・・・爺、その突然歌い出すキャラは、やっぱりどうかと思うぞ」
プリンスは薄く微笑んだ。

「俺はさっき、顔を見に来た、と言ったが・・・どうやら本心は、爺に甘えたかっただけのようだ。爺と一緒にジュリワンのインスト映像を観て、喝が入ったぞ。正月の沢田さんのツアーのセットリストはもう決まっている。かなり渋い選曲だ。俺がリードギターを担当する曲も多いんだ。帰って少しでも練習しておかねばな」

「さようでございますか・・・そういう事でしたら爺も引き止めはいたしませぬ。ただ・・・爺はいつでも、若を待っております。それだけはどうか心にとめておいてくださいませ・・・」
「うむ」

プリンスは目を閉じ、一瞬意識を集中させると
「さらばだ、爺!・・・ハッ!」
と、勢いよく跳躍し、3回転ジャンプを決め・・・上体から順に、その姿をかき消して行った。下界に戻ったのだ。
一陣の風が、爺の頬を撫でる。

「お見事なジャンプですぞ・・・若・・・」

涙で濡れた爺の瞳には、プリンスが姿を完全に消し去る直前の、まさにその瞬間に映った赤い靴の残像が、いつまでも残っているのだった・・・。

-----------------------------

はっ!
今、ローソクが消えたようです。
何を書いていたんだっけ、僕は・・・。

などと、小芝居を打つのはこのくらいにしまして(汗)、舞台裏を明かしますと。
僕は今回のインストの記事を、鉄人バンドのファンのみなさまに捧げよう、と思っていました。
ですから、お題のジュリワンツアーのインスト「情熱の渚」を、普通に従来のスタイルで記事執筆すると、下山さんについて何も書けないというのが引っかかってしまって・・・。
それで、こんな変化球記事のアイデアを思いついたわけです。

まるで図ったように、”DYNAMITE-CANDLES”という格好の小道具を授かったことも、このアイデアに拍車をかけました。

しょあ様には
「しょあ様がブログをお休みしている間、爺とプリンスのキャラを僕に預けていただけませんか?」
とお願いしました。

しょあ様は「なんちゅうことを・・・」と呆れ笑いながらも、快諾して下さいました。同時に「でも、DYさんが爺の話なんか書いて・・・大丈夫?」
と心配もして下さいました。
この「大丈夫?」に色々な意味が込められていることが、僕には分かるような気がするわけです。
でも・・・僕が今回のような爺とプリンスの物語を書くことで、僕のブログの方が矢面に立つのならば、それは本望。

面白く書けたかどうかは、また別の話ですが・・・(汗)。
まぁ、本家祐筆の代理ですからね。至らない点も多々ございましょう。

この記事を読んでしょあ様が
「キャラがなっとらん!やはり自分が書かねば!」
と思ってくださるか、はたまた
「うぅ・・・やっぱり自分も書きたい・・・」
と思ってくださるか。
いずれにしても、僕の思う壺ということで・・・。

でも、慌てずにいましょう。
DYNAMITE-CANDLES・・・このローソクは、あと9本も残されているのですから。
少なくともすべて使い切る前には、戻ってきてくださるかな・・・。

さて。
次回記事からしばらくは、本来の執筆スタイルに戻し、まずは今年のお正月コンサート”『Ballad and Rock'n Roll』セットリストおさらいシリーズ”に取り組む予定です。

この機にブログのお題として採り上げたい、と考えているナンバーは、3曲。
どうぞよろしくお願い申しあげます!

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2011年2月 8日 (火)

老虎再来!(さらに追記あり)

とり急ぎ。
連日の飛び込み記事でございます。

ほとんどのじゅり風呂さんがすでに記事を書いていらっしゃいますが、さすがにこれは、僕も黙ってはいられませんよ!
今朝、mimina様を始め、多くの方がこの情報を知らせてくださいました。

朝日新聞さんに、ピーの記事。
そこに

「老虎再来」というピーが書いた曲をジュリーが歌ったデモテープが出来ている

という大ニュースが~!
タイガースの新曲ですよ!

僕は以前「こっちを向いて」の記事にて

”はじめまして 僕達タイガースです”

的なコンセプトの曲で好感を持っている、ということを書きましたが、もしもタイガースの再結成があって、アルバムを制作するなら

”お久しぶりです”

な感じの曲があればいいなぁ、と思っていました。
うってつけではないですか~。

どんな曲かな・・・?
シンプルでも良いから、明るいビートポップスだといいな~。

File0596


スキャンがナナメっちゃってごめんなさい。
写真は、まさに右手のスティックを軽く振り下ろした瞬間のショットですね。
タイガース時代のピーがそうだったように、ドラマーがスティックを握って「はい、写真撮るよ~」と言われた際には、ピタッ!とドラムを叩く動作途中のポーズを作るのが普通。
でも、この写真でのピーは、にこやかに笑いながらスティックを振り下ろしています。
この自然体こそ、現在のピーなのではないでしょうか。
素晴らしいショットだと思います!

そしてラジオ出演。
翌日9日にはサンケイスポーツに関連記事が~。

20110209

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2011年2月 7日 (月)

堯之さんがステージに!

1件、緊急の記事をはさみます~。

今朝早くに飛び込んできた情報です。
既にご存知の方も多いとは思いますが・・・。

来たる2月16日
”EntRANS The 10th Anniversary Live”
に、井上堯之さんがゲスト出演なさるそうです。


活動再開の噂は聞いていましたが、いよいよです。
http://www.asano.jp/kyouwakan/event/index.html

上記サイトにて、LIVE情報一覧の2月16日のスケジュール欄に、予約受付の電話番号も記載されています。

平日ですから僕は参加できません。
本当に凄いメンバー・・・無念です。

参加なさったみなさまの感想をお待ちしております。
よろしくお願い申しあげます。

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2011年2月 4日 (金)

[ 伝授・特別編 ] 沢田研二 1.23渋谷CCレモンホール『Ballad and Rock'n Roll』ファイナル セットリスト&完全レポ

大変お待たせしてしまいました。
ようやく『Ballad and Rock'n Roll』、渋谷ファイナルのレポートをお届けです。僕の知る範囲のじゅり風呂界でも、相当遅いファイナルレポの記事でしょうか・・・申し訳ありません!

前半にバラードを配したセットリストのことや、鉄人バンドのインストが無くなってしまったこと、休憩時間を設けた構成のこと、その他諸々、短期間で色々なことを考えさせられたツアーでした。
自分の気持ちが釈然とした状態でファイナルを無事に終えられるのか・・・実は不安がありました。

でも・・・当たり前ですが、やっぱり観て良かった。ステージ構成がどうあろうと、僕の根本の気持ちは、揺らぐことはありませんでした。
気がつけばもう、”奇跡三年”なんですよね・・・。
ジュリーは変化して当たり前。後追いのファンとしては、今のジュリーが提示したことを自分なりに考え、懸命についていくだけ。

一方で、LIVEのスタイルが変わっても、会場の雰囲気は変わらない。それもまた嬉しい・・・。
いつものようにたくさんの「はじめまして」もあり、楽しいLIVEでした。
渋谷に向かうのが楽しい・・・ドキドキする。
また次のジュリーLIVEで、そんな気持ちを味わえることを確信して帰ってきました。

☆    ☆    ☆

僕は昔から、渋谷という街があまり好きではありませんでした。
ド田舎から上京した僕にとっては、街行く人の多さ、混雑も原因のひとつですが、それだけではありません。同様に人の多い街でも、新宿は最初から好きでしたから。
渋谷の場合は・・・ファッショナブルなのがね。僕には合わなかった。
ファッションとは全く無縁の田舎育ちの若者を、受け入れてくれないような雰囲気がある・・・みたいな。
要は自分自身のコンプレックスですわな。

でも、いつの間にか、渋谷を好きになってしまっている自分がいます。
ファッショナブルとか、カッコいいとか悪いとかそんなこともうどうでもいいよ♪ってことなのかな。歳を重ねてきて。

そして何と言っても渋谷は、1年に何度もジュリーがLIVEをやってくれる街。
好きにならない方がおかしいですかね~。

僕は、22歳くらいの頃かな・・・1年ほどアルバイトで渋谷に通っていました。
東急ハンズの近くでね。
なるべくセンター街を使わないように迂回して通ってたのは覚えてるんだけど、僕はひどい方向音痴だし昔の事だし、どういうルートだったかは、忘れてしまいました。
ただ、そんな嫌いな街にも、当時ほんのわずかながら心休まる場所があった・・・。それが、東急ハンズ向かいの小さな裏路地でした。

ファイナル当日、昼食を済ませた後で時間が余ったので、本当に久しぶりに、カミさんとその辺りを歩きました。

Finalrepo2


あの頃はこの路地裏で、若いアマチュア・バンドマンが煙草を吸っている風景がいつもあった・・・。
僕もよくここで、たこ焼きを食べてから一服していたっけ。
今はそんなことはなく、路面にゴミや吸殻など落ちていません。ただ、雰囲気だけが残っていますね。

路地に居並ぶのは、輸入物やインディーを扱うレコード店、古着屋、バー、そして喫茶店。
怪しげな階段を上った2階に開けるやすらぎの空間。

Funalrepo3

喫茶「モボ・モガ」でひと休みしました。
写真では分かり辛いですが、とにかくカップがアメリカン・サイズでデカい!
ジュースなんか注文した日にゃ、飲み屋の中ジョッキくらいのでっかいグラスで来ますよ~。

夕方4時になるのを待って、いざCCレモンホールへ。

そうそう、前後しますが昼食は『歌門来福』の直前にも行った、「ホームパスタ」さん。
有名店なので時間帯によってはかなり混んで、お客さんが並んでいます。
お昼ジャストをずらし、午後2時頃に行くのがおススメです。休日にジュリーLIVEでCCレモンホールに向かうみなさまにとっては、うってつけの時間ではないでしょうか。
贅沢にスープにひたし込んだパスタは、メチャクチャ美味しいですよ。

Finalrepo1

僕は”あさり・塩”。カミさんは”魚介・トマト”。
ボリュームも満点です。

☆    ☆    ☆

さて、CCレモンホール。
いつものように「はじめまして」や「こんにちは~」がありました。
saba様に初めてご挨拶させて頂いたり・・・入場後に階段下でウロウロしていたら、しょあ様が僕を見つけてくださいました。お会いできて良かった・・・。

この日の僕のお席は2階、下手中腹です。カミさんとは別にチケットをとりました。
CCレモンホールの音響は2階の方が良いですから、それがこの日の大きな楽しみのひとつですね。
2階の一番後ろっていうのを1度体験してみたいなぁ。誰よりも高い位置からステージを見下ろす感覚って、どんなんだろ?
まぁ、1度でいいですけどね(爆)。

今回は執筆に時間をかけたこともあって、1曲ごとに、後から後から書きたいことが増えてしまいました。
各地のじゅり風呂さんを巡って記事やコメントでのみなさまの感想を拝見しているうちに、忘れていたことを思い出したり、気づいていなかったことに気づかされたり、色々とあるんですよね~。
みなさま、それぞれ切り口が違いますから、考えさせられる材量もハンパない・・・。
ということですので今回も長くなります。

どのみち随分と遅れをとりましたし、携帯でご覧の方々が大長文の細切れ更新のたびに手間ひまかけてチェックなさるということが無いよう、全文書き終えてのゆったり更新とさせて頂きました。
本当に、お待たせしてしまいました。

ファイナル独特の
「思い残すことがないように」
という感じの、お客さんの気合に満ちた空気の中・・・。
開演です!

1曲目「いくつかの場面

Ikutuka

ファイナルの1曲目って、初日とはまた違った独特の雰囲気がありますね。
ほとんどのお客さんがセットリストを知っている状況かと思いますが、にも関わらず、「うわ~っ」という波のような空気が流れます。

ジュリーが1番からすでに涙声・・・気合が入っているのか、何かこの日だけの特別の思いがあったのか、とその時は思いましたが・・・。
後のMCで語られたところによりますと、ジュリーは風邪をひいてしまっていたようなのです。
「咳が出そうになるのを堪えながら歌っている」状態だったみたい・・・。
1階前方席のお客さんの中には、歌い終わったジュリーが軽く咳き込んでいるのが分かった方もいらっしゃったとのことですが・・・僕は2階席、まったく気がつかなかったなぁ。
何より、咳を堪えての歌唱には、まったく聴こえませんでしたから。普通に「おおっ、最初から声出てるぞ!」と思いました。

しかし、この曲がセットリストの1曲目・・・もちろんジュリーにとって何か理由があってのことなのでしょうが、歌の難易度を考えますと、やはり凄まじい挑戦だったと思います。
なにせ、最低音が「ド」で最高音が高い方の「ラ」という音域。
「ラ」の音から、1オクターブ上の高い「ラ」へとファルセットを使わずに一気に上昇する
「離れ~ない♪」
の部分、名古屋では少し苦しそうにも聴こえましたが、ファイナルはド迫力の、それでいて美しいヴォーカルに圧倒されました。

エンディングでの背中を向ける仕草。
僕は、鉄人バンドに向けての思いがあるように受け取ったのですが・・・やはり分かりません。
「この人達とずっと一緒にいたい、ということでしょうか」とお話してくださったのは、終演後にお会いした74年生まれ様。
またある先輩は、「ジュリーが考える”いくつかの場面”のシーンの中に、一人背中を向けている構図が浮かんでいて、それをステージで再現したのでは」と仰っていました。
正解というのは分からないんだけど・・・この曲に限らず、ステージングのこと、セットリスト全体のこと・・・ジュリーは常にお客さんに「自分で考える」余地を与えてくれているように、僕には思えます。

2曲目「風に押されぼくは

Rocknrollmarch

名古屋レポでも書いたように、この曲は鈴の音色にこだわりたい~。
キーボードの上段右部で音を作って鳴らされているのですが、泰輝さんが小節の頭に向かって大きく動いて、右手で「しゃきん!」と鍵盤に触れる(「弾く」でも「叩く」でもなく、「触れる」という感じでした)瞬間はとても優雅です。

ジュリーの曲でここまで純然たるワルツ・ナンバーって、あまり無いですよね。特に、LIVEで聴けそうな曲となると・・・。
『JULIEⅡ』収録の「二人の生活」とか、さすがに生で聴く機会は今後も無さそうだ・・・。

ちなみに名古屋の席ではステージを下から見上げるような格好でしたが、今回は全体を遠くから見下ろす感じ。
名古屋で、「Aメロ、GRACE姉さんはハイハットを足で踏んでるだけ・・・」と書きましたが、誤りでした。繊細なリズムで、リムショットを打っています。2階席からは、ドラムスやキーボード・・・演奏者の手の動きがとても良く見えるんですよね。
ただ、足が見えないんだなぁ・・・。

「いくつかの場面」のキーがF(ヘ長調)、「風に押されぼくは」のキーはA(イ長調)。
調は異なる2曲ですが、どちらも「ラ」から高い方の「ラ」へ跳ね上がる、という難易度の高い最高音到達への音階移動を共通して持っています。

「風に押されぼくは」で
”一瞬に永遠の~♪”
と歌う箇所の「の~♪」。この部分が「いくつかの場面」での
”離れない~♪”
の、「はな♪」の部分と同じ音階なのです。

片や地声、片やファルセット・・・。
変幻自在にして豪快無比。62歳のこんなヴォーカリストがいることを、世間はどれほど知っているのでしょうかね・・・。
と、30歳台後半あたりで高い「ラ」の音が出せなくなってしまった僕は、改めてそう思うのでした。

名古屋のレポにも少し書きましたが、今回のセットリストは前半にバラードを配した分、歌の難易度に妥協しないヴォーカルを最初から連発して感性を奮い立たせ、バラードゆえにトップスピードで飛ばすことを意識した選曲だったのかもしれません。
バラードで楽をしよう、というセットリストではありえませんよ!

~MC~

これまでの近年のLIVE同様、最初のMC(2曲目か3曲目の後)は短めにスッキリとご挨拶。
ですが。この日は
「おめでとうございま~す!」
とジュリーが言っても、返事の声が少なかったようなのです・・・。いつもなら元気のいい「おめでとうございます!」の声が僕の周囲のどこかしらから聞こえてきたものですが、それもありませんでした。

ジュリーはそれを察したのか
「もう、おめでとう、いう感じではなくなってきましたけれども・・・続いてまいりましたツアーも今日が最後、千秋楽でございます」
とかわしていましたね。
「千秋楽」の言葉にところどころで笑いが起きたのは、ジュリーのおどけた喋り方に対してのものなのか、それともこの日がちょうど大相撲初場所の千秋楽と重なっていることを思い浮かべてのものだったのか・・・分かりませんでしたが。
ともかく。

「ありがとう、ありがとう、CCレモン!」
と、軽い感じのシャウトで気負いなくシメてくれたジュリーでした。

3曲目「君が嫁いだ景色

Sur

名古屋でこの曲のイントロが来た時は、本当に感動しました・・・。

1度セットリストを把握した状態になって、並んだナンバーをじっくり眺めているだけで、色々な深みが見えてくるような気がします。
この「君が嫁いだ景色」から「耒タルベキ素敵」までの流れは、曲のタイトルを並べてみると、何か正体の知れない説得力を感じるのです。

この歌の物語の主人公は、やっぱり裕也さんのように思うなぁ。
「性質(たち)だからゴメンネ♪」という表現に、目上の人への純朴な愛情が込められていると感じるからです。生で聴いても、そう思いました。

ところで、ファイナルは2階席でしたから、名古屋ではあまり意識できなかった照明の素晴らしさを堪能しました。
今回は、部分的に暗転して、スポットがジュリーに当てられたり鉄人バンドのメンバーに当てられたり、という事が多かったように思います。

とてもきれいでしたけど、演奏する側としてはなかなか大変だったかも。時にギタリストは・・・。
例えばこのナンバーのソロでは、珍しく下山さんがフレットを見失うシーンも見られ、照明のせいかなぁ、と思いました。
スライドギターは特に、フレットとフレットの境目ギリギリの地点にボトルネックを当てる技術が必要ですから、眩しかったり暗かったりという状況はかなりキツイのかもしれません。
しかも、アコギですからね。

ファイナルということで、ジュリーツアー恒例・泰輝さんの進化したフレーズも炸裂!
この日は全体的にヴォーカルの合間にアドリブを入れるシーンが多かったですが、この曲もそうだったかなぁ。
LIVE終わってから、メモしとくんだったなぁ・・・。

4曲目「君にだけの感情」

Dairokkan

いやぁ、元々好きなナンバーとは思っていましたが、改めてLIVEで歌われると・・・。
大名曲ですよこれは。

アルバム『第六感』の収録曲は、『ジュリー祭り』のセットリストには無くて、その後もずっと聴けなくて。
なんとなく、最初に聴けるとしたら「グランドクロス」か「ラジカル・ヒストリー」かなぁ、と予想していたのですが、「君にだけの感情」だった・・・それが『Ballad and Rock'n Roll』というツアータイトルをスッと僕の胸に落とし込んでくれました。
”バラッド”とは、「君にだけの感情」であり、「耒タルベキ素敵」であり、「PEARL HARBOR LOVE STORY」である、というのが僕の個人的な解釈です。
ちょっと「危険な感じ、不安な感じ」がするアレンジ共通点があると思うんです。「君にだけの感情」の場合は、イントロとエンディングにそれがありますね。

それを表現する旗手は、何といっても柴山さんのギターです。
ワウペダルを踏みしめながらの熱演・・・そしてそれに絡む泰輝さんの豪快なストリングスやオルガンといった音色の手管を尽くしたキーボードが、ベース不在を忘れさせてくれる影の主役でしょうか。

ヴォーカル部が終わり、エンディングのバンド演奏に身を委ねるジュリー。
演奏後、鉄人バンドに手を広げるのは、ジュリーにとって当然のゼスチャーなのかもしれませんね。

5曲目「ミネラル・ランチ

Samosutatto

この曲は以前、74年生まれ様のリクエストで記事を書きました。アルバム『サーモスタットな夏』収録曲の中では僕もかなり好きな方のナンバーでしたから、気合を入れて書いた記憶があります。
74年生まれ様とは終演後にお会いでき、
「ミネラル・ランチはどうでしたか?」
とお聞きしたところ
「歌は素晴らしかったけど、手拍子が・・・でもジュリーが先導したんですから文句は言えませんね」
と。
確かにそうかもしれない、と思いました。

前半にバラードが居並ぶ今回のセットリスト、そんな中でミディアム・テンポの「ミネラル・ランチ」と「愛は痛い」の2曲に、ジュリーは役割を与えました。
手拍子を先導し、お客さんにいくばくかの動きを求めます。
これはミディアム・テンポだからという理由もさることながら、セットリストの流れの中で、歌詞の内容から”ハッピー・ソング”として捉えて欲しい、というジュリーの狙いがあるように思うのですがいかがでしょうか。

今回のセットリストでは、柴山さんがアコギ、下山さんがエレキという普段とは逆のフォーメーションが楽しめるナンバーが、2曲。
「ミネラル・ランチ」と「あの日は雨」。
「普段」と言ったのは僕が新規ファンだから・・・。『ジュリー祭り』以降の、”柴山さんエレキ&下山さんアコギ”というスタイルを見慣れてしまっていたのです。

下山さん、エフェクターは「ミネラル・ランチ」がフランジャーで、「あの日は雨」がコーラスかな?

「ミネラル・ランチ」では、リフを若干崩し気味に弾くのが下山さんならでは。
ねばっこい、エロティックなギターです。
エンディングでジュリーが喘ぐようなヴォーカルを炸裂させるのがこの曲の重要な聴かせ所でしょうから、下山さんはリードギターを弾く方が楽曲に合ってるのかもなぁ、と思ったりしました。

この曲はキーがG(ト長調)ということで、「ソ」の音がハッキリしている和音進行かと言えばさにあらず。
下山さん担当のエレキギターは「ラ~ソ、ラ~ソ、ラ、ラシソラ~ソ♪」と「ラ」の音を頭に展開しますし、柴山さん担当のアコギは、Gを弾く時だけでなく、Cを弾く時、Emを弾く時いずれも2弦で「レ」の音を鳴らしているように聞こえます。
名古屋、渋谷ともに、ローコードなのかハイコードなのかも見分けることは叶いませんでしたけどね・・・。

あと、名古屋で確認した泰輝さんの華麗なタンバリン捌き、この日は見逃してしまいました~。

6曲目「愛は痛い」

Samosutatto

この曲からジュリーはセンター定位置を離れてステージ左右まで歩いてきてくれます。
それは名古屋でもそうでしたね。

「君」ではお客さんに向かって、「僕」では自分の胸に、肘と掌を使ってアクションを入れ、歌と言葉を伝えるジュリー。
この名曲を、もっと多くの人に好きになって欲しいと思うんだ・・・。
ただ、記事を書くのは怖い。すぐには書けないでしょうね。
まだ、このブログにアクセスしてくださる人数が1日50人にも満たなかった2009年2月頃、僕は「護られているI Love You」の記事を書いて・・・upしてから4時間ほど後に全削除したことがあります。
たまたま記事を見てくださった先輩方が、怒っちゃったんですよね。無理もない、その頃の僕の考えることではね・・・。

ただ、収拾つかなくなって、全削除なんていう乱暴な処置になってしまいました。
読んでくださっていたみなさま、遅まきながらごめんなさい。
そうするしか無かったんですよね・・・。

まぁ、当時の僕は本当に何も知らなくて、今とはかなり切り口も違いましたし、考察も甘かったですから、削除したことそれ自体に未練は無いんですけど。
「護られているILove You」の再考察記事や「愛は痛い」についてはね、今すぐには書けない。もう少し日常の積み重ねを経験して歳をとって、歌の内容をリアルに考えることが多くなってきてから、書こうと思っています。

さてこのナンバーの演奏の目玉・・・柴山さんと下山さんのツインスライドが炸裂する間奏、エンディングですが、泰輝さんがmaj7の和音を出してバックアップしているんですね。
「愛は痛い」はヘ長調ですから、「ミ」の音が加わっているということになります。
Aメロ「会いたくて~♪」のトコは普通に「ド・ファ・ラ」のハッキリした和音。それが間奏部などでは「ポワ~ン」とした柔らかい和音になっているのです。

CDで聴き直してみますと、確かに・・・。
LIVEで聴いて、それまで気がつかなかった新たな発見をする、というのは、演奏についても言えることなのですね。

7曲目「あの日は雨

Atarasiiomoide

名古屋ではこの曲のイントロで、CD音源でとても印象的な「ラド#ラ~♪」というベースの高音ソロがスパンと抜けていて、一瞬戸惑ったものでした。
ずいぶんリピートしている曲ですし、依知川さんがいた頃のLIVE映像も何回も観ていますしね。

で、この日ファイナルは、「あそこは無いからな!」と一応自分に心構えを強いて臨みました。無いから演奏が駄目ということではなく、自分の耳がCD音源に慣れ親しみ過ぎていて、歌の世界にすぐに入っていけないことを怖れてのことでした。
イントロでグッ、と腹に力を入れました。
そうしたら・・・。

「ラド#ラ~♪」

泰輝さんのシンセベースではなく。
下山さんが、エレキギターのピッキング・ハーモニックスでさりげな~くこのパートを弾いたのです!
素晴らしかったなぁ・・・。
これはファイナル限定のアドリブ?
それとも名古屋がたまたま抜けただけで、他の会場ではやってた?
細か過ぎて、チェックなさった方はいらっしゃらないでしょうか・・・(泣)。

ジュリーのヴォーカルは、名古屋の方が良かったでしょうか。しかし鉄人バンドの演奏については、ファイナルが圧倒していました。
エンディングの下山さんのリードギターは、エフェクト装飾よりもフレージングに重点を置いていて、ゴリゴリしたアンプの音がそのまま伝わってくるようでしたね。

柴山さんのコーラス爆音量は、名古屋の4分の1くらいだったけど・・・。
名古屋は上手スピーカー真ん前の席だったから、そのせいでコーラスも大爆音に聴こえたのかな・・・?

8曲目「涙色の空

Namidairo

役割分担ということもさることながら、アコギとエレキ、耳に入ってくる方向が左右逆になっただけで、新鮮さを覚える不思議。
楽器に詳しくない方々でも、「あの日は雨」と「涙色の空」を続けて聴いて、2曲の印象が全然違うことを無意識に感じていらっしゃるはずです。
どちらもバラードなのにね。

柴山さんがアコギからエレキへ。下山さんがエレキからアコギへ。
役割をチェンジしたお2人が静かにスタンバイする中、まずは泰輝さんのピアノ1本で歌うジュリー。
『秋の大運動会~涙色の空』から数えて、僕がこの曲をLIVEで聴くのはこの日で6回目。
ヴォーカルがどんどん進化していくのが分かるんです。
基本は変わっていません。ただ、聴くたびに、歌がジュリーの体内に徐々に沁み込んでいってる感覚が伝わってくるようになったと言うか・・・。

イントロが流れただけで、スラスラと歌詞、メロディーが出てくる・・・身体が曲と一体化している感覚。
例えば「時の過ぎゆくままに」などの曲は、そんな域にあるでしょう。

「涙色の空」は、そういう曲になっていく気がします。
70を越え、その先もジュリーが歌い続けるとして・・・ステージにある限り、ジュリーはこの曲を歌っていくでしょう。
そんな”曲と歌い手の関係”が、ヒットチャートとは無縁のところで起こっている、生まれている・・・それがジュリーなんだ、と僕は思います。

そしてそんな曲が、”鉄人バンド1人1音”というレコーディング形態をとっていたこと。
その意味がきっとある・・・これから何年も先に、「涙色の空」という曲がひとつの大きな答を用意しているように、僕には思えるのです・・・。

10曲目「耒タルベキ素敵」

Kitarubeki

完璧。
鉄人バンドが最高の演奏をし、ジュリーが最高のヴォーカルで聴かせる・・・完璧な「耒タルベキ素敵」。
2000年のツアーの時も、こんなに完璧だったのかな。僕は観ていなから分からない・・・。

そして、完璧だったのは演奏と歌ばかりでなく、照明も・・・ということがファイナルで解りました。
これは2階席ならでは、ですよね。

前半は、バンドのみならずジュリーの姿さえも闇に隠れ、未来への不安を想起させるようなおどろおどろしくサイケデリックなメロディーとアレンジだけが会場に響いてきます。
そしてサビ「ラララララ~♪」の部分。
突如、「未来が見えた!」とでも言うように、爆発的に明るくなります。
それまでが暗かったから、ステージだけでなく客席ですら眩しい。言うならば会場全体が

白夜。
そんなイメージかな?

エンディングの照明も素晴らしい。
まず、歌を終えたジュリーの姿が闇に消え、鉄人バンド4人にスポットが当てられます。
シンセベースを弾いていた泰輝さんが、プツリと演奏を終えた瞬間、泰輝さんに当てられていたスポットが消え、同じようにサイドギターの下山さん、リードギターの柴山さんの順に、闇に包まれて・・・。
最後の2小節、たったひとつのスポットに突き刺されて、GRACE姉さんのドラムだけが残ります。
「タッタタ♪」
とスネアドラムが鳴った瞬間、音も、光も何も無くなるステージ。

これで第1部が終わるというのは最高に渋い!
「耒タルベキ素敵」は、是非、セットリストおさらいシリーズにて記事のお題に採り上げたい曲ですね~。

僕のやや前方、2階下手に座っていらっしゃったお姉さまがお一人、この曲が始まるやいなや、タタッとエントランス付近まで駆け登り、誰の邪魔にもならないよう配慮なさった位置で踊っていらっしゃいました。
どうしても、立ちたかったのですね・・・。
「耒タルベキ素敵」を座って聴くなど無理!と数人の先輩が仰っておられたのを、思い出しました。

~休憩~

”休憩”にも、僕はかなり慣れてきたかな・・・。
ただ、やっぱり「集中力が途切れる」「雰囲気が壊れる」という意見も根強いですね。親しくさせて頂いている先輩方の間でも、そんな声を多く聞きます。

ただ僕は、ジュリーの決めたことには意味がある、と思ってしまうから・・・。
「考えてみ」と言われているような気もしますしね・・・。

席を立ち、トイレに行きました。さほど用がさしせまっていたわけではありませんが、会場の雰囲気を見てみたかったのです。
2階のトイレに向かったら、数人のお姉さま方が男子トイレの方にも並んでいらっしゃいました。
「恥をしのんでこちらに並んでます。すみません・・・」と誰にともなく仰るので、「どうぞどうぞ」と話しかけてしまいました。
自分が、「こうしたらどうか」と考えていたことが実際起こっていて、何だか嬉しかったのです。

そして・・・後日先輩から教えて頂いたのですが、この日は1階の男子トイレが1箇所、最初から女性用プレートに貼り替えられていたのだそうです。
会場のスタッフさんGJ!
これからもジュリーのLIVEで、他会場でもこのような処置が慣例になれば良いなぁ、と思いました。

何人かの顔馴染みの先輩方にご挨拶し、席に戻ります。
ブザーが鳴りました。まだざわつく会場の中、名古屋でも聴いたあのS.E.が流れてきました。
これから先、生で聴く機会があるかどうか分からない・・・このツアーが最後になるかもしれない。
そんな、大好きな長篇ナンバーに備えて、僕は改めて集中力を高めます~。

10曲目「PEARL HARBOR LOVE STORY

Samosutatto

”休憩”には慣れたとは言え、やっぱりインスト無しは淋しいですね。
後半1曲目という形で、休憩後にインスト復活を・・・僕としては、名古屋で書いた通りの気持ちが強くなってきています。

ただ今回のセットリストに関しては、ジュリーが1度休憩を挟んでスイッチを入れ直し、真っ白な状態から新たな気持ちで「PEARL HARBOR LOVE STORY」の歌に対峙する、ということが必要だったのかもしれません。
曲が曲だけにね・・・。

さてこの「PEARL HARBOR LOVE STORY」は、『ジュリー祭り』直後に始まった第2期大人買い期間にて、僕の完全なジュリー堕ちを決定づけたナンバーのひとつです。
名古屋ではとにかく感動し圧倒され、ジュリーから目を逸らすことができませんでした。

生で聴くのは2度目となったファイナル。
ようやく僕にも多少の余裕が出てきて、ステージ全体を見下ろしながら、バンドの動きをも目で追うことができました。
やはり、GRACE姉さんのドラムスは入魂でした。そうでないと演奏できない楽曲なのだろう、と思いました。

ジュリーのヴォーカルを1音1音逃さずに聴いていたつもりだったにも関わらず・・・どうも僕は、とても渋~い素敵なヴォーカル・ニュアンスを見逃してしまっていたようです。
自分のレポ執筆をもたついている間、多くのじゅり風呂さんでファイナルの感想など拝見していたのですが、はちべー様がご指摘の
「セブンテ~んぬっ♪」
僕はこれをチェックし損ねています!勿体ない~。
いかにもジュリーらしい歌い方なのにね・・・(「セブンティ~=70歳)と勘違いされるのを考慮して「んぬっ」を入れたのか?というはちべー様のご高察、大爆笑させて頂きました・・・)。
気がついていたなら、ジュリーの「ぬっ」から間髪入れず柴山さんのソロ、というシーンが堪能できていたわけですね・・・。

サスティンを充分に効かせたソロをとる事が多い柴山さんですが、「PEARL HARBOR~」では叩き斬るような音色で魅了してくれます。
豪快な速弾きだけがリードギターではない、ということだと僕は思っているのです。10代の頃に、ジョージ・ハリスンに鍛えられたからでしょうね。
これは、アルバム『サーモスタットな夏』から選ばれた今回のセットリスト3曲について、共通して言えることではないでしょうか。

このナンバーは、熱狂的に支持する方が多い(僕もその末席におります)反面、「ちょっと苦手」と仰る先輩方も実は多いのです。名古屋で初めてご挨拶させて頂いた先輩も、壮快なまでにバッサリと(笑)。
評価が2分される曲のようですね・・・。

僕にとっては、ジュリー堕ち直後から変わらず、圧倒的に好きな大名曲です。
生で聴けたことに、ひたすら感謝。

11曲目「エメラルド・アイズ

Namidairo

「PEARL HARBOR LOVE STORY」の「んぬっ」は気づかず聴き逃してしまいましたが、このナンバーの「ずぁっ」は僕ならずとも多くのみなさまがチェックなさっていたはず。

♪エメラルド・アイ・・・ずぁっ♪

というヤツですね。
ジュリーは「ず」と「ざ」の中間のような語尾で、ヴォーカルを着地させます。

この曲はサビに突入して以降のメロディーが、オクターブ上の「ド」から「ソ」という高音域をうろつきますから、最後の最後で「はあっ」と息を吐く・・・単にカッコ良さを追求しただけでなく、そんな意味もあっての「ずぁっ」なのかもしれません。

それにしても「エメラルド・アイズ」は不思議な曲。
王道のAメロ、変則のサビ。そして一番ポップでおいしいメロディーが、間奏のギターソロですからねぇ。
贅沢な作曲(編曲)です。

それまでじっと溜めこんでいた気持ちが、ギターソロでブワッと開放されるような感じ。
そんな構成は、ずっと座っていたお客さんが一斉に立ち上がる感覚と同じ?

「エメラルド・アイズ」で総立ちになるシーンというのは、新たなセットリストの試みと共に、数年後の語り草になっているかもしれませんね。

12曲目「まほろばの地球

Namidairo_2

『秋の大運動会~涙色の空』ツアーの時から、ジュリーがLIVEで改訂版作詞を連発してきたナンバー。
お正月コンサートの名古屋、ファイナルと観た感じでは、乱舞する幾多のフレーズもどうやら落ち着いてきたようですが。

運動会では「かなりエロい」と思ったこの曲のヴォーカルでしたが、今回のセットリストに組み込まれますと、他に強力なナンバーが多くて、その点少し損をしているような気がします。
現時点での新譜であるマキシシングルから全曲歌うというジュリーのアプローチには「なるほど」と思いながらも・・・少し残念だったかな。

この日は泰輝さんのピアノの音量がかなり強かったですね。
ギターリフより目立って聴こえました。

13曲目「若者よ

Namidairo_3

この曲のジュリー、ファイナルでは「どうしちゃったの?」ってくらいハジけてましたね~。

エンディングで
「あ~~~ぉっ!!」
とシャウトしたのは、2回だったか3回だったか。
春のジュリワン『songs』の「TOKIO」で「うわちゃ~っ!」ってシャウトした時の、あの声。アドレナリンが出まくっている時のロッカーが、我を忘れてステージに入りこんだ時に出す声なんですよね・・・。
この日の「若者よ」で、そんなシャウトが連続で繰り出されたのです。凄かった~。

サビの「わ~か~ものよ、わ~か~ものよ♪」のトコは、頭打ちの手拍子をするお客さんよりも、ジュリーを真似て拳突き上げ参加するお客さんの方が多くなってきましたね。
そういうのって、ステージのジュリー達にはビシビシと伝わるんでしょうね。それがあのシャウト連発に繋がったように思います。

曲が終わると、ジュリーはシャウトしていたそのままの甲高い声で
「ありがとうごじゃいました!」
を連発しました。
いや、確かに「ごじゃいました」と、僕の耳には聞こえたんですが・・・。みなさまはいかがでしたでしょうか?

14曲目「1989」

Boukyaku

僕は毎度のことながら、ツアー参加初日の時点で、ジュリーや鉄人バンドの衣装、あるいは照明といった大事な見所をほとんど思い出せません。
ちゃんと観ていることは確かなのですが・・・何故なんだろ?

ジュリーの衣装で思い出せるのは、1着目が薄い紫色だったことくらい。
各地で話題になっている2着目なんて「えっ、そんなんだったっけ?」という情けない状況です。
(GRACE姉さんの足の色だけしっかり覚えているというのも何なんだか・・・)

で、照明については、1度観たくらいではさらに思い出せません。
ですから、今ツアー2度目の参加となったファイナルで、ステージ全体が見渡せる2階席だったのは、僕にとっては実はラッキーなのかな。「おおっ、こんなドラマティックな照明だったのか!名古屋じゃ全然分からんかった!」と、その点大いに楽しめましたから。

名古屋の後カミさんが「カズさんに真っ赤なライトが当たってたのが良かった」とさかんに言っていたのですが、僕にはどんなんなんだかさっぱり・・・。
で、ようやくこの日確認しました。
間奏で、ステージは漆黒の闇に・・・と思ったら、柴山さんめがけてパ~ッとライトが当たるんですね~。

真っ赤も真っ赤、燃える炎の赤です。
黒の中に赤、ってこんなに刺激的なんだ・・・。柴山さんは炎に包まれたように、ギターも身体も顔も
赤く燃え上がってソロを弾いていました。
メチャクチャにカッコ良かったです~。

名古屋同様、ジュリーは歌い終わるや「ロッケンロ~!」と絶叫。
後半のこの位置に「1989」を配したセットリスト、渋過ぎる!最高ですね。

15曲目「砂丘でダイヤ

Boukyaku_2

異常なまでに盛り上がりまくりましたね~。
曲中に3度登場する

♪あ、あんあ、あんあ、あんあ♪

のトコ
(他に上手い表現が思いつきません・・・)
ド迫力のヴォーカルと、激し過ぎる腰ひねり移動のアクション。

それがね・・・誤解を恐れずに言いますと、とてつもなくカワイイのですよ。
これは、1階後方や2階席で観ていらしたみなさまには伝わる感覚なんじゃないかなぁ、と思っているんですけど。

名古屋の至近距離で観た時には、とにかく迫力に圧倒されて口開けて放心状態になりましたが、遠くから観ると・・・メチャクチャにカワイイ。
19日のグランキューブ大阪に参加した吉田Qさまが、
「ジュリーかわいいなぁ」
とつぶやいていらっしゃったようですが、それはこの「砂丘でダイヤ」のアクションから受けた印象じゃないかなぁ。

ジュリーって、横への移動が独特ですよね。
ササッ、と獣のような動きをします。
この曲の場合、数歩のステップで横移動、腰ひねりを連動させて、円を描いているように見える・・・遠くからだと、本当に猫科の獣みたい。

ジュリー「あ、あんあ、あんあ、あんあ♪」
会場「キャ~!!」

このお客さんの反応は、必然ですわな~。
CD音源で聴いた時から大好きな曲でしたが、LIVEは格別。フラれてヤケになっている情けない男の歌を歌うジュリーは、やっぱり素晴らしい(褒めてます)。

それだのに・・・名古屋で息を飲み目を奪われた豪快なジャケットプレイがこの日も炸裂したのかどうか、全然覚えていないという・・・。
覚えてないってことは、無かったってことなのかなぁ。

16曲目「感じすぎビンビン」

Boukyaku

今回のセットリスト、アルバム『忘却の天才』から3曲の抜擢がありました。そのどれもがジュリーの官能的なヴォーカルを前面に押し出したようなナンバー、しかも後半のロックタイムに3曲ズラリと並べられたというのも、のちのちの語り草になるでしょうね。
3曲すべて、ジュリー作曲のナンバー。そして「感じすぎビンビン」は作詞もジュリー自身によるものです。

この曲は、『忘却の天才』収録曲の中ではさほど印象は強くありませんでした。男だからでしょうかね。女性のジュリーファンのみなさまには、かなり人気の高い楽曲のようです。
ただそんな僕も、LIVEで聴くとやはり理屈抜きにシビレるわけで。

いやね、「ちょっと待てよ・・・」と気持ちが立ち止まる瞬間も確かにあるんですよ。
62歳のおじさんが

♪ばばば、ばばば、ばばばば~♪
♪びびび、びびび、びびび、びっび~♪

なんて意味不明の擬音で歌いながらステージ左右を闊歩するって、果たしてこれはカッコイイんか?
・・・と、問いかける自分がいるのです。

しかし、辿り着く答えはひとつ。
だけど、だから、ジュリーがいいのさ♪

問答無用ってことです。
たぶん、カッコイイんだと・・・思う。「好き」という気持ちが大き過ぎて冷静な判断ではないのかもしれないけど、やっぱり「ばばば♪」「びびび♪」と歌うジュリーは、カッコイイんだ。

ジュリーもこの部分、気に入ってる・・・のかな?
この日は曲の最後の最後で「アイラビュ~ベイベ~♪」をスッ飛ばして、「ばばば♪」と行きかけてましたからね。
微動だにせず正しい進行で演奏を続ける鉄人バンドも、ある意味凄いですが。

後日カミさんが

「感じすぎビンビン」の”感じすぎる~ならば~♪”ってトコ、「砂丘でダイヤ」に似てるよねぇ~。

などと言うので
それは「砂丘でダイヤ」の歌詞じゃ!
と叱っておきました。
この2曲が続いてゴッチャになっちゃった方、ひょっとして他にもいらっしゃいませんか~?

17曲目「マッサラ」

Kitarubeki

至近距離だった名古屋では、フルパワーのジュリーにヤラレまくり、挙句サビ部で脳内に何故だか「無邪気な酔っ払い」のメロが流れるという慌しい状況で・・・あっという間に終わってしまった感じがしたこの曲。
ファイナルでは、じっくり堪能することができました。
これはセットリストを知った上でしか味わえない楽しみ方、とも言えるんですけどね。

まず、下山さんのギター、エフェクトの設定が斬新。
例えば、目を閉じて聴いていると「アコギかな?」と思ってしまう人もいるかもしれません。
どういうエフェクトなのかなぁ。僕の手持ちのレコーディング機材だとそのままズバリ「アコースティック」っていう名前の内臓エフェクターがありますが、単純にエレキギターにそれをカマしても、あんな音にはならない・・・何かかけ合わせているのでしょうか。
ジュリーLIVEでの下山さんは、時折かがんでプリアンプの設定を確認している姿が見られます。エフェクターだけでなく、そちらにも秘技があるのかもしれません。

一方の柴山さんは、ディストーションの効いた鋭いギターです。
CD音源で右チャンネルから聴こえる音・・・Aメロで、ヴォーカルの後を追いかけるように挿入されるカッティングがとにかくカッコイイのです。

♪ずっとずっとで
(ジャラララ!)
♪いっしょだね
(ジャラ、つ、ジャラ、つ、ジャ!)

突き放すのではなく、音を細かくブッた斬るカッティングですね。
こういうのは、弾いていて気合の入るトコですよ~(ギタリストがこの手のカッティングを弾く時には、何故か若干内股のポーズになります。柴山さんももちろんそう)。
たぶん僕、柴山さん見ながら一緒にエアギターしてたと思う・・・。自分で覚えておりませんが(汗)。

18曲目「a・b・c・・・i love you

Sinpurunaeienn

「マッサラ」が終わり、ジュリーの「ありがと~!」というシャウトに重なるようにして、まずは泰輝さんのシンセが炸裂。
身構えるDYNAMITE。

いや、何を身構えるのかと申しますと。
僕は今ツアー初参加となった名古屋で、この曲の”おいっちに体操”に加われなかったのですよ~。
「えっ?16ビートの曲でこれやるの?」
と、戸惑ってしまいました。
僕にとって”おいっちに体操”とは「エイトビートのノリ」だったんです。

名古屋では
「まぁ、残すところ数曲のうちに、もう1曲くらい”おいっちにナンバー”
(なんだそれは)があるだろう、ポラGかトキオあたりが来るかな?」
と甘々な予測を立ててしまい、普通に手拍子だけで盛り上がっていました。
激しく後悔・・・。

結局、『Balla and Rock'n Roll』のセットリストで、ジュリーが敢えて”おいっちに体操”を繰り出すとすれば、この曲以外無かった、ということなのですね。

で、ファイナル。
目いっぱい参加してまいりました~。
でもね、違和感はやっぱりあります。16ビートに載せての”おいっちに体操”はねぇ。
どうしても下半身がハネるんですよ。

『秋の大運動会~涙色の空』渋谷初日に、前のお席の男性の方(おそらくジュリーLIVE初参加。奥さまらしき女性とお二人で盛り上がっておられました)が、「ポラロイドGirl」でシャドウボクサーのような動きになっていらしゃいましたが、ファイナルの「a・b・c・・・i love you」での僕は、ハタから見るとちょうどそんな感じだったかもしれません。
拳を交互に「繰り出す」のではなく、「突き上げる」ような。
でも、会場の他のみなさまは楽々といつものように参加していらっしゃいましたね。
過去にも「a・b・c・・・i love you」でおいっちに体操が、あったのかなぁ。

さてそんな状態ながら、この曲にはもうひとつ大きな全員参加パターンがありましたよね。
もちろん、ジュリーへの「アイラブユー返し」です!

実はDYNAMITE、名古屋ではこちらもやっていません。理由は・・・照れたからです(泣)。
まぁ名古屋の段階では、「a・b・c・・・i love you」をやってくれた!というだけで興奮しましたから(ソロコンに関して、”全然当たらないセットリスト予想”が初めて報われた瞬間だったのです・・・)、終始手拍子で、それでも充分満足していたのですが。
ファイナルはそうは行かんでしょ~!

名古屋ではね。僕は男だし、至近距離だと「ジュリーが変に思わないかな」とかしょうもない事を考えて・・・ジュリーが見てるはずもないのに意識過剰なんですよね、でもやっぱり「男がジュリーにアイラブユ~って、どうよ」とか思って、照れたわけです。
でも、ステージまで遠い位置だと、全身で参加したくなる・・・見えるわけないと思うと余計にねぇ。おかしいですよね、この感覚。
恥も外聞もなく、「アイラブユ~」してまいりました。

2階から見下ろす会場は、それは圧巻でしたよ。
また、特にエンディングの「アイラブユ~」連呼の時のジュリーが、しなやかにタメを作ってから手を差し出すのが、カッコイイです。
おかげでこの曲については、鉄人バンドの演奏を味わう余裕は無かったです~。

~MC~

う~ん、さすがにこれだけ時間が経ってしまうと、細かいところまで思い出せません。
順不同で、心に残っているジュリーの言葉を振りかえってみますと・・・。

まずは丁寧にお辞儀をしつつ

「寒い中たくさんお越しくださいまして、ありがとうございます。風邪が流行っています。インフルエンザにかかっている人、鳥インフルエンザにかかっている人、いらっしゃるかもしれませんが・・・」

鳥インフルエンザとは、また何でだろう、と僕はその時考えてしまったのですが、ファイナルが明けた翌週から、次々に大きな被害のニュースが!
ジュリーのアンテナが、「気をつけなアカン」と素早く情報をキャッチしていたのでしょうか。
ジュリーはきっと、普通にテレビでニュースを見ていても、凡人とは違う独自のアンテナが常に働いているんじゃないかと思いました。

続いてジュリーは、自分も風邪気味だ、と。
「今日は咳き込みそうになるのを堪えて歌っています。今日が終われば、明日になったらどんだけゲホゲホ言っても大丈夫なんだから、と言い聞かせて」

そうだったの?
ここまで、全然そんなふうには感じなかった・・・。

そして、ほんの少しでしたが、ジュリーの口から「タイガース」という言葉が聞けましたね。

「明日は1月24日・・・ザ・タイガースが解散した日です(大拍手)。解散してから40年ですよ・・・。月日というのは残酷なものでございます(笑)」

その後は「今年も相変わらずで、やっていきます」とスッとかわしたジュリー。会場のみなさまが期待していたような大きな発表というものは、ありませんでした。
でも、ジュリーがこのタイミングで「タイガース」の文字を発したのは事実。逆に言えば、「まだ具体的なことが言えなくてごめんな」というジュリーからのメッセージとは受け取れないでしょうか。

お正月の段階で、ここまで今後のLIVEスケジュールが知らされていない状況は珍しいそうですね。ジュリーはやっぱり、ハッキリ決まっていないことを見込みで発言する人ではないのでしょう。
それは、水面下で動いていることが確かにある、とも言えるわけで・・・。

どうかうまくいきますように。
そう願って、待つしかないですね。

僕にとって最高のスケジュールは、夏の終わりくらいからソロツアーが始まり、各地でジュリーが年末からの本格的なタイガース始動について直接ファンに告知をしていく、というものです。
かつてタイガース再結成についてジュリーが
「大きなプロモートが無くても、僕がLIVEでお客さんに話せばいいんだから」
と語った・・・そんな話をどこかで読んだことがあったっけ。

でも・・・できるだけ早く知らせて欲しいなぁ。
そうなったら、ジュリーファンのクチコミの威力は凄いし、とにかく僕がジュリー堕ち以降に感動するのは、ジュリーファンは本当にそういった労を惜しまない、ということです。
きっとタイガース復活のステージまでには、浮動票組のみなさまも充分間に合って準備万端、間違いなし!
僕もちょっと、本気で取り組んでみたいことがありますしね~。

その後もジュリーは、名古屋に比べるとずいぶん長いこと話をしてくれました。
でも、細かいことが思い出せなくなってきてます。他のじゅり風呂さんのレポートを拝見して「あぁそうだった!」とただ手を打つばかりです・・・。

いつもの通りのメンバー紹介。
ひょうきんなポーズをとる泰輝さん、後ろ手を組んで深々とお辞儀する柴山さん、下山さん、GRACE姉さん。
いつも通りです。
それだけに。ジュリワン長野での柴山さんのあのポージングは・・・一体何があったんだろう、と今さらながらに思うのでした。

この日のファイナルに限らず、最近のLIVEでの鉄人バンドに対する拍手は以前よりもすっと大きい。
この拍手がこれから先、どういう答を出すのか・・・ジュリーは考えてくれているはずですよね。

「オマケっ、です!」
と、区切るような感じで叫びながら差し出されたジュリーの指は・・・。
3本ですかそうですか。
オマケのオマケは無し!という心の準備はこの時点でできました(泣)。

19曲目「時の過ぎゆくままに」

Ikutuka

それにしても、まったく気づかなかった・・・ここまでジュリーが咳き込みそうになるのを我慢して歌っていたなんて。
逆に、「おおっ今日は最初から声出てるなぁ!」と思ってたくらいです。これは同じように感じた方も大勢いらっしゃると思います。
「時の過ぎゆくままに」以降のオマケ3曲は、「そうかぁ、風邪気味なのかぁ」と思いながら聴いた方もいらっしゃったでしょうが、ジュリーの声はいつも以上に艶やかに響きましたよね。

あと、ファイナルはやっぱりマニア度が高いのかなぁ。
今回のセットリスト、”誰もが知るヒットナンバー”と言えるのはこの「時の過ぎゆくままに」と、ラストの「ヤマトより愛をこめて」の2曲だけですが、名古屋で会場を覆った「おおっ、待ってましたぁ!」というようなどよめきはありません。

それでももちろん、この日のお客さんがこの大名曲を軽視しているわけでもありません。
いつのジュリーLIVE・ツアーもそうなのですが、ファイナルの会場の空気は独特なんですよね。
誰もが、あと3曲で今年のお正月コンサートが終わることを知っていて・・・「目に焼きつけておこう」という気迫が漲っています。

改めて・・・この曲は下山さんのアコギの鳴りが素晴らしい。
『ジュリー祭り』ではあまりに興奮し過ぎていたせいか、演奏音の記憶は無くて・・・その後、YOKO君に借りていた、ドーム前に放映された『songs』録画盤を観て初めて、そう思ったものでした。

つい先日、バンド関係の友人が電話で、「最近のアコギ用エフェクターは凄い」と唸っていました。
僕の世代だとどうしても、「エレアコってのはシャリシャリ言うもんだ」なんていう観念からなかなか離れられないものですが・・・音響技術はやっぱり信じられない速度で進歩しているようです。
それを生身の人間がどう使うのか、どう表現の幅を広げるのか。
その点が”現役”ミュージシャンの、自身が持つテクニックとのせめぎ合いになってきているのでしょうね。

20曲目「彼女はデリケート」

Gsiloveyou

引き続き「風邪気味」の話を引っ張りますけど・・・。
この日の「彼女はデリケート」のエンディング部「シーズ・ソー・デリケイ!」と繰り返すトコ、凄くなかったですか?
いや、ジュリーのヴォーカルが、ですよ。

それドコじゃなかったですか?いやいや、まぁ会場のみなさまのアクションも物凄かったですからね・・・。

「デリケイ!」の「ケ」のあたりが時折微妙に掠れるんです。風邪が関係しているのかどうかは解りませんが、ここまで全力で歌ってきて喉がそういう状態だったのかもしれないにしろ・・・何にせよ、凄まじくカッコイイ声だった!

ここで思い出すのは、ジョン・レノンのビートルズ時代最初期の逸話です。
ビートルズのファーストアルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』は、全14曲のうち、シングル用に別録りしていた4曲以外の10曲をたった1日でレコーディングした、という話は、ご存知の方も多いでしょう。
「”ビートルズ”なんちゅうよくわからん連中にそうそう何日もスタジオを使用させられない」という理由だったらしいですね。時代を感じさせる話です。

で、1日で何曲もリードヴォーカルを録ったジョンは、次第に喉を潰していった。しかも当日ジョンは風邪をひいていて、しきりにのど飴をなめながら何とか最後の曲まで歌いきったそうです。
「それなのに、後になればなるほど凄いヴォーカルになっていく!なんなんだコイツは!」
とは、プロデューサーのジョージ・マーティンが放った、感嘆の言葉。

そして、アルバムレコーディング最後の最後にジョンが歌ったナンバーが、かの有名な「ツイスト・アンド・シャウト」です。
「カモン、カモン、カモン、ベイベ~♪」と歌うジョンのヴォーカル、「カ」が明らかに掠れているんですよ。それが、理屈抜きにひたすらカッコイイ。

『Ballad and Rock'n Roll』ファイナルでのジュリーの「彼女はデリケート」のヴォーカルには、その逸話を思い起こす迫力があったのです。
みなさま、後追いコーラスと拳振り上げに夢中だったかな?
僕も前の方の席にいたら逆に見逃していたかもしれなかった、まさに渾身、この日ならではの、最高のヴォーカルでした。

ところで、「ツイスト・アンド・シャウト」と「彼女はデリケート」の2曲は、楽曲それ自体についても、なかなか面白い関係があったりするんですよ。
『ナイアガラ・トライアングルVol.2』収録の佐野元春さんのヴァージョンを聴いたことのある方は「はは~ん、アレのことだな」とお気づきでしょう。
この件については、近日中に”セットリストおさらいシリーズ”で「彼女はデリケート」をお題に採り上げる予定でおりますから、その記事にて詳しくご紹介したいと考えています。

さてさて話を戻しまして。
ジュリーのヴォーカルのみならず、もちろん鉄人バンドの演奏も最高でした。やっぱりこのセットリストだと、オマケ突入してなお、バンドもまだまだ体力充分ってところなのでしょうか。
GRACE姉さんのドッスンドッスンかつ跳ね飛ぶドラムス、泰輝さんのパンキッシュなオルガン、そして柴山さんの神技・その場駆け足リードギター。
さらには、今ツアーではこの曲で下山さんが走る走る!
ボスから、「走れ!」って指令が出ているわけでもないでしょうが、その走行範囲は、ちょうどジュリーが「君のキレイのために」「愛まで待てない」で見せてくれるような、あんな感じなんですね~。
ギター弾きながらですから、そりゃ凄い。

会場の熱気は、まさにこの曲でピークに達しました。

21曲目「ヤマトより愛をこめて」

Konndohakareina

やっぱり、イントロ一瞬だけ「燃えつきた二人」に似て・・・ないですかそうですか。

ファイナルの打ち上げで先輩に教えて頂いたのですが・・・この曲も色々あったようですねぇ。
「LOVE~抱きしめたい」と、作曲のアプローチが確かに似ているんですよ。「LOVE」が「ヤマト」に似せたということなのですが・・・普通そういう目論見は失敗に終わるものです。
でもジュリーはそれで期待に応え、最優秀歌唱賞を獲得するワケですからやはり役者が違う。

アニメのテーマソングをトップ歌手が歌うというのも、当時は新鮮だったとか。
そう言えばそうかもなぁ。一応「勝手にしやがれ」以降はタイムリーでジュリーをTVで観てはいますからね、僕も。
すぐ後にゴダイゴの「999」とか、出てきますけね。
しかしここでもまた、「ジュリーが最初」という言葉に出会うのです。

バラードで終わるセットリストって、その時(選曲を決断する時期)のジュリーの気持ちが「陽」になっているのか「陰」になっているのかで決められているような気がします。
気持ちとかけ離れた選曲をするアーティストではないと思うんですよね。だから、何か「陰」な気分があったのかもしれません。あくまでファン目線の想像ですけど・・・。

今回のセットリスト配置やステージ構成の変化が示す通り、ジュリーはその時々の自らの「意思」を聴き手に”さし出す”という手法でLIVEに向かっているのだと考えられます。
『Ballad and Rock'n Roll』は、それを万人に確信させるようなツアーだったように思うのです。

よくよく自問してみますと、僕は”聴き手に迎合する”アーティストにはあまり魅力を感じません。音源においても、LIVEにおいてもそうです。これは、ジュリーを知らず、洋楽ばかり聴いていた時代から、そうなのです。
そして、音楽のみならず小説や詩に対しても、そういう嗜好を持っています。

ジュリーという人は、まったくもって迎合などしない。そんな安易さは微塵も感じられない。
気がつくのが随分遅れましたが、僕はジュリー堕ちの初めの段階からその匂いを嗅ぎつけ、そこに惹かれて虜になっていったのかもしれない、と思えてきました。
僕にとって『Ballad and Rock'n Roll』とは、そういうツアーでした。

☆    ☆    ☆

終演後も、たくさんの方とご挨拶させて頂きました。

みなさまとあちらこちらで、素晴らしいファイナルのステージのことやタイガースのこと、昨年の思い出など立ち話しながら移動しているうちに、いつの間にか会場をちょっと出た辺りでカミさん達を見失ってしまいました。
電話すると、まだ入り口付近にいる、と言うので・・・迂回する感じで、これまでCCレモンのLIVEに参加してきて一度も通ったことのない、正面入り口のスロープを小走りに戻っていくと・・・。
何という偶然か、そこで、お友達と一緒に帰路に向かおうとなさっていたazur様にバッタリ出逢いました。
特別なことは何もお話しませんでしたが・・・お会いできて言葉をかわしただけで、なんだか安心しました。
azur様はその後、僕がレポート執筆に長々と時間をかけている間に、無事にブログを復活なさいました。

この日は翌日が夫婦ともに仕事ということで、家の最寄駅付近で一杯やってから帰宅しよう、と言っていたのですが・・・。ふと気がつくと、渋谷センター街の沖縄料理のお店でソーキソバやら角煮やらを食べながら、大勢の先輩方に囲まれて『相棒・劇場版』のお話などを伺っておりました。

僕は
この映画を観ていないのですがネタバレはしていて、が殉職したのは、『相棒』のお仕事が続いているとタイガースのスケジュールが組めないからじゃあない?とかいうお話が出たり。
実際観にいかれた先輩チームがいらっしゃったのですが
「サリーがあの大物俳優よりも後にクレジットされていて嬉しかった」
と仰っておられましたね。
・・・が、”大物俳優”の名前を思い出すまでに、チーム束になってかかって5分間くらいを要してもおられました~。
本当に楽しい時間でした。

☆    ☆    ☆

今回、レポート執筆に時間をかけてみて・・・いつもとは違う感覚になりました。
これまでは、LIVEの体感度数が減らないうちに、と、僕が繰り広げられるステージにどう反応していったかを、リアルタイムな感じで執筆していました。
ところが今回のファイナルレポは、LIVEからある程度の日数が経ち、ジュリーがこのツアーで何を提示したのか、ということを考えたり、或いはセットリスト楽曲について改めて考察し直したり、といったように・・・楽曲お題の記事に取り組んでいる時に近い感覚があったのです。
これはある意味新鮮でした。

ひょっとしたら、ツアーのファイナルはこのくらい時間を置いて書いた方が、のちのちに振り返った時には、いいのかな。
初日については絶対、筋肉痛がひかないうちに熱苦しく書きたいですけどね!

始まったばかりの2011年、この先ジュリーのLIVEがいつ行われるのか、タイガース再結成の話はどうなっているのか、まだ何も分かりません。
でも、きっと素敵な時間が用意されているでしょう。

拙ブログはこの後、しょあ様にリクエストを頂いている『僕達ほとんどいいんじゃあない』の鉄人バンド・インストの記事・・・続いて、終わったばかりの『Balld and Rock'n Roll』”セットリストおさらいシリーズ”を3曲ほど執筆の予定です。
それが終わる頃に、ちょうど音楽劇初参加となる可能性も。

春はもうすぐそこですよ~。

それでは次回、ちょっと変化球を投げますので。
慣れないことしますから時間かかるかも。今回のように、というわけではないですが、気長にお待ちくださいませ・・・。


File0592

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