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2010年10月

2010年10月31日 (日)

沢田研二 「やさしく愛して」

from『AFTERMATH』、1996
original released 1987(シングル「きわどい季節」B面)

Aftermath


1. 月のギター
2. SPLEEN~六月の風に揺れて~
3. 堕天使の羽音
4. AFTERMATH
5. きわどい季節
6. やさしく愛して
7. 絹の部屋
8. 君が泣くのを見た
9. 坂道
10. 月明かりなら眩しすぎない
11. 明星 -Venus-
12. さよならを待たせて
13. ルナ
14. 静かなまぼろし
15. Don't be afraid to LOVE

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一昨日の10月29日、遂にやらかしてしまいました・・・。
ジュリーLIVE病欠という、大失態。

元々頑丈とは言えない身体。いつかはそういうこともあり得るだろう、とは想定していましたが・・・。
まさかこれまでで最高の神席を賜った日にそれが起きてしまうとは。
悔しいやら、情けないやら、自分に憤りを覚えました。

結局、油断していたのでしょう。

ちょっと風邪気味で調子悪いな、とは思っていましたが、なぁにLIVE当日になればハイテンションで病気も吹き飛ぶだろう、という甘い考え。
恥じ入るばかりです。

付き添って自分も欠席する、と言ってくれたカミさんを何とか宥め拝み倒して参加してもらい、僕の席は、会場でお会いした2階席チケットをお持ちのJ先輩のどなたかに代わってもらって欲しい、と託しまして、何とかジュリーから丸見えの神席をポッカリ空けることだけは回避しました。
それでも、一つの空席を作ってしまったことには変わりありません。
申し訳ない気持ちでいっぱいです・・・。

当日、ちょうどLIVEが始まろうとする頃。
迷ったのですが、やっぱりジュリーを聴きながら臥せっていよう、と思いました。
さすがに自分で編集した今ツアー・セットリストのCDは悔しくて聴く気になれません。
熱で頭痛もあるし、あんまり激しくない作品にしよう、と思い立って何とはなしに取り出したのは。
普段あまり通してじっくり聴く機会のなかった、”バラッド・セレクション”な企画盤、『AFTERMATH』。

何ということでしょう。
どうという意図も無しに、この状況下で聴き出してしまった1枚。ジュリーのデビュー30周年を記念して制作された・・・という割にはあまりもマニアックな選曲群。
これが、切ないほど沁みた・・・。

来年お正月の『Ballad and Rock'n Roll』ツアーでは、この『AFTERMATH』という作品から選曲があるんじゃなかろうか、などと思いながら・・・今日は最高にいたたまれない大名曲(と言うのもなんだかおかしな表現ですが)を採り上げてみたいと思います。

ふがいない自分を追い込むには、最適なバラッド。
コメントを頂いたみなさまや、個人的にメールなどで心配してくださったみなさまへのお返事よりも先に記事を執筆してしまうのは心苦しいのですが、不参加となってしまった渋谷への思いを清算するため、まずはこの名曲について書かせてくださいませ。
「やさしく愛して」、伝授!
(今回の『秋の大運動会~涙色の空』セットリストには入ってませんよ~。念のため)

オリジナル・リリースはCO-Coloスタイル初期のシングル「きわどい季節」のB面ですが、当時のセールスなど考え合わせると、この「やさしく愛して」を『AFTERMATH』で初めてじっくり聴いた、という先輩も多かったのかなぁ。
いや、ジュリーファンの先輩方はそこまでチェックが甘くはないか・・・。

僕はこの29日夜、本当に何の気なしに『AFTERMATH』を選んで聴いていたのですが、せっかくのLIVEを病欠するという失態・・・そんな自分に憤り、「どうしようもない男」として自らを責めたい気持ちというのは確かにあったのでしょうね。
そんな罠、いや、必然かな・・・。
自分の気持ちにズッポリと嵌った曲が用意されていた、というわけです。

『AFTERMATH』の甘美な世界が心地よく、熱さまシートを当てた額がなんとか爽やかに感じ始めた、6曲目。
この「やさしく愛して」は突然僕の体内をグサリと突き刺すように、襲ってきました。

♪ スポットライトの光の中で ♪
     B♭          C     F      Dm

  やさしく歌えた、と思った ♪
     B♭            C       F

泣けた・・・。涙、出ました。
確かに今頃、ジュリーは渋谷のスポットライトの光の中でやさしく歌っているのだろうな、と。
「やさしく愛して」は、これまでも名曲だと思って聴いていましたが、今回は聴こえ方がまるっきり違ったんです。
歌っているジュリーを「聴きに行きたい」ではなく、「逢いに行きたい」と思ってしまった・・・これではまるで乙女ではないですか~。

これがジュリーか。
男性であり、当然ながらジュリーにとって何者でもありえない僕のようなファンにとっては、縁の無い聴き方だと思っていた・・・ジュリーが、自分に向けて歌っているような錯覚に陥るという、魔法。
この感覚なのですね、よく先輩方が熱く語っているのは・・・。

いや、歌っている内容はもっとシビアな愛の世界だし、本来男性ファンの入り込む隙間なんて無いのです。
でも。
「あぁ、いまごろジュリーは歌ってる頃だなぁ」
なんて考えながら、熱で火照った頭で聴く「やさしく愛して」は、ちょっとヤバイですよ。

だから、多くは触れないけれど、リリース当時の状況の中で実際この曲を歌っていたジュリー自身も、相当ヤバかったんじゃないかなぁ。

♪ コインの落ちる音と 発車を告げるベルの音
    F    Am            Dm  B♭          C        F    F7

  追いかければもっと悲しくなる
     B♭        C        F         Dm

  そんな気がしたんだ ♪
     B♭       C         F   C7

「コインの落ちる音と~♪」
の最後の
「と~♪」
でスパ~ン!と高く跳ね上がるメロディーは、いわゆる”あざとい”フォークソング特有のメロディーだったりします。
また、
「そんな気がしたんだ~♪」
と字余りで譜割りを追いかける箇所は、「講釈」と言われるこれまたフォークソング独特のもの。

しかし、ロック・リスナーにとってそれがまったく嫌味ではなく、最大の聴かせ所となっているのは、作詞・作曲のBOROが凄いのか、ジュリーのヴォーカルが凄いのか・・・。
おそらく両方なんでしょうけど。

そして。
これは本当に仕方の無いことなんだけど、僕より少し下の完全携帯電話世代からは、この詞の良さは半分も解らなくなってしまっているんじゃないかなぁ。

「コインの落ちる音」

公衆電話の、コインの音ですよね。
コインが途切れるまでに、伝えたいことを伝えなければならない・・・そんな焦燥感と切なさが、かえって言葉をつまらせてしまう。
100円玉を使い切ってしまって、ありったけの10円玉をつぎ込むんだけど、何も言葉に出来ないまま、コインの落ちる音だけが次々に耳に突き刺さってくる。
最後の言葉が、最後のコインの落ちる音にかき消される。

今の携帯電話の「無言」とコインの公衆電話の「無言」は全然違うんだなぁ。
ごく普通にそのやるせない「無言」が誰の身にも起こっていた時代は、確かについこの間・・・10年ちょっと前までは、あったんです。
僕は、ギリギリこの詞の世界を現体験している世代なのですね。

しかもこの詞は、日本語限定です。
「やさしく愛して」という曲の世界を、例えば英語圏の人に伝えようとして、さてタイトルを何と訳せば良いのでしょうか。
絶対に「Love Me Tender」では伝わらないと思います。直訳するならそれしかないんだけど・・・意図したい内容は全然違う。
「やさしく愛せばよかった」とか、「やさしく愛することができずに」とか意訳しなければならないのでしょうが、いずれも、ひとつの意味に収束し過ぎてしまうような気がします。

そうそう、BOROと言えば、随分前にYOKO君から「捨てぜりふ」を書いてくれ、って言われていて・・・僕も大好きな曲ですし是非書きたいのですが、なかなか構想が纏まりません。難解というのではなく、自分の表現力が追いつかない状況なのです。
今回の「やさしく愛して」のように、何か強烈なきっかけを得なければ、執筆は難しいかも・・・。
LIVEで聴けたら、一発なんですけどね。

それにしても。
ジュリーの楽曲は、ある瞬間を境にして劇的に聴こえ方が違ってくる、というナンバーが次から次へと出てきます。これは、本当に凄いこと。

CO-Colo時代のナンバーは、意外と今の鉄人バンドスタイルで表現しやすいんじゃないかと思っています。
というのも、「CD音源の完全な再現」というジュリーの試みに限りなく近づいた最初のバンドがCO-Coloで、それこそがCO-Colo期ジュリーの大きな意義だったのではないか、と僕なりに考えているからです。
これは大阪でいわみ先輩にもお話しましたが・・・何となく言わんとしたことがお解り頂けたようでした。
その手法を突き詰めた楽曲が、今ツアータイトルにもなっている鉄人バンドの「涙色の空」だったりするわけですから・・・。

ただ、CO-Colo時代の場合はどうしても、ジュリーのヴォーカルが圧倒的にLIVEの方が良いと感じてしまうのですが。
これは『正月歌劇』が凄過ぎるのかな?

「やさしく愛して」を生で聴ける日は、果たしてこの先やって来るのでしょうか。
僕はきっとその時、2010年10月29日を思い出すのでしょうね・・・。

日頃から親しくさせて頂いているJ先輩が、いつかこんなふうにお話していました。
「自分が病気になったのは、他の誰かの分を代わりに背負ったのだ、と考える」
と。

今回病欠してしまったジュリーのLIVE。
僕はひょっとしたら、ジュリーや鉄人バンド、或いは久しぶりのジュリーLIVEを楽しみにしていたファンの方々・・・誰かの体調不良を代わりに背負ったのかもしれません。自己完結とは言えそう思うと、いくばくかの平穏な気分が戻ってくるようです。

そういえば、今日は仙台だ。
大丈夫だよね、下山さん。
芋煮会も実現したしね。

僕が今回背負ったものなんて小さいけれど・・・そう考えることにしよう!

そして、早くこの身体を治すのだ~。
幸い、千葉がすぐ後に待っているのです。
ここでは、今回がジュリーLIVE初参加となる、仕事関係の同世代の男性を誘っています。
数年越しの大きな構想の、最初の重要な仕込みになるかな?

その人は今、ジュリーのことを”懐かしの歌謡歌手”みたいな感覚でいると思うんだ。
火傷必至だね!

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2010年10月26日 (火)

沢田研二 「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」

from『サーモスタットな夏』、1997

Samosutatto


1. サーモスタットな夏
2. オリーブ・オイル
3. 言葉にできない僕の気持ち
4. 僕がせめぎあう
5. PEARL HARBOR LOVE STORY
6. 愛は痛い
7. ミネラル・ランチ
8. ダメ
9. 恋なんて呼ばない
10. マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!

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みなさま、たくさんのジュリワンレポ、感想などをどうもありがとうございました。
僕はもう観ることができないのですが・・・改めて、本当に楽しいコラボだったんだなぁ、との思いを強くしております。
そして、年末にDVD発売との情報!
嬉しい~!

あのステージが映像に残る・・・これでファイナル不参加の無念もチャラです(そりゃ、平日じゃなかったら絶対観たいけどね)。

シー・シー・シー
ハンドクラップの衝撃といきなりの一体感。
涙がこぼれちゃう
イントロのどよめきと陶酔、その余韻。
TOKIO
現役ロッカー、ジュリーの炸裂する熱気。
FRIENDSHIP
ジュリーとワンズ、鉄人バンドの感動の絆。
愛するアニタ
バンドの大熱演と、島さん&ジュリーの絶叫。


他にもまだまだ・・・すべてが一生モノです。
そして、忘れちゃいけない鉄人バンドの最高傑作、「情熱の渚」~「マーメイド・ドリーム」
(しつこうようですが仮称です)。柴山さんのパート、完コピしたるぜぃ!

僕はこれまでクリスマスなんてまったく縁の無い、関係ない生活を送ってきたけれど、今年ばかりは特別。
いつもお世話になってる密林さんには申し訳ないですが、先行発売でキッチリ24日に鑑賞したいと思っています~。

☆    ☆    ☆

さて本題です。
今回は、熱苦しい記事になりますよ~。
お題は、ずっと「書きたい!」と思いながらも、「生のLIVEで観たときにとっておこう」と決めて今日まで我慢し続けてきたナンバー。

思えば僕が『ジュリー祭り』東京ドームで完全堕ちして、怒涛の大人買い期間に突入・・・『忘却の天才』の次に購入したのが、『サーモスタットな夏』でした。
もうね、それ以来このアルバムそれ自体が大好きなんです。ジュリーのアルバムの中で、10本の指には入ります。
そこで出逢った、とてつもなく力強くハッピーなナンバーを今日は絶賛しまくりますよ~。
「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」、伝授!

僕のブログがじゅり風呂としてどうやら軌道に乗り、それがきっかけで多くのジュリ友さんとお話させて頂く中、何人かの方々に、こう言ったことがあります。

とにかく、『ジュリー祭り』の「マンジャーレ!~」でポッカ~ンとしていた自分が許せない!今の状態で、あの日に帰りたい!

と。
ちなみに
東京ドームのレポートで、僕は「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」についてこのように書いています。

アルバム『サーモスタットな夏』収録という事は知っていた。まぁ歌詞を追ってようやく気づいたのだが。全く知らない曲なのだがここまで来れば盛り上がるしかない。

コラコラコラ!
今の僕がコイツの後ろにいたら、殴ってるね。
でも、後日こんなふうに追記もしてます。


12月14日、アルバム『サーモスタットな夏』、迷った末CDの方を購入。素晴らしい名盤である事に驚愕。90年代以降のアルバム購入を見送っていた自分が情けない。「マンジャーレ~」はアルバムラスト収録にふさわしい極上のハッピーソング。速攻でコード譜起こして弾き語りまくりました。アリーナが盛り上がってたワケだ。あぁ、12月3日に戻りたい・・・。

それならまぁ、よろしい。
と、多くの先輩方もその時思ってくださっていたなら良いのですが・・・。

とにかくこのヒヨッコは、2008年12月中旬にはすっかりこの大名曲の虜になっていました。
いつか生で聴ける・・・たぶんこの曲ならそう待たずに、近いうちに聴ける。「ビータ~!」と拳を振り上げる時が来る。
何故か、そんな確信を持ちました。

以後、『奇跡元年』『PLEASURE PLEASURE』『歌門来福』と我慢が続きました。
考えればたった1年半の期間なのですが、ずいぶん長く感じます。YOKO君の呪いか~?と思ったり(彼も「マンジャーレ!~」が大好きで、自分が行けないLIVEで演奏される日をずっと怖れて暮らしていました)。
今ツアー『秋の大運動会~涙色の空』で、ようやく時は来たのです。

初日、この曲のウキウキなイントロが始まった瞬間、僕は自分がジュリーの事をブログに書き始めた2008年12月へと気持ちが押し戻されるような感覚に包まれました。
何故なのでしょう・・・。
まだジュリーについて何も知らなかった頃・・・「マンジャーレ!~」を初めてCDで聴いて、「俺はドームで何をやってたんだ!」と後悔しまくっていたあの頃が、無性に懐かしいというのは。

実は、ちょっとしたことなのですが、ドーム記事に関しての思い出があります。

『ジュリー祭り』レポート執筆直後の拙ブログは、まだジュリーファンの先輩方にはほとんど発見されておらず(メイ様にご紹介頂くまでは、アクセス数は1日平均5~6件でした)、コメント欄などは淋しい限りでございました。
そんな中、何故か小田和正さんのファンと思われる方からコメントを頂きました。小田さんも同じ時期にドーム興行を敢行なさっていることは知っていましたが、その方は、小田さんは東京ドームフルハウスであった、と書いていらっしゃいました。
「上には上がいるものです」
とのことだったのですが・・・。

なんだろう、僕はまったく悔しくなかったですし、引け目を感じることもなかったのです。
まず、ジュリーと他のアーティストを比較すること自体頭に浮かびませんでした。
ドーム堕ちの僕は、とにかく『ジュリー祭り』の衝撃を受けたばかりだったからでしょう、自分の中でジュリーが突出した存在になり、自然に「唯一無二」という感覚が身についてしまっていたのです。

確かに小田さんの動員は素晴らしいですし、ジュリーのドーム興行は、純粋なフルハウスではありませんでした。
ただ、そんなことは問題ではなかった・・・。
他アーティストとの比較がどうこうよりも、ジュリーがドームで何を歌い、何を伝えたのか、それを考えることだけが僕の頭にありました。

♪ 隣の芝生は 勝手に萌えてろ
  G♭        A♭G♭            A♭

  違うハートは  比べられない
        B♭m7 E♭7   Cm7      F7

  La bella vita  僕に は 自慢の君がい る ♪
         D♭  E♭7    A♭ Fm  B♭m7 E♭7  D♭

これは、僕が「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」の中で最も好きな箇所です。

隣の芝生は勝手に萌えてろ。
僕らには、自慢のジュリーがいる

自然に、まったく気負わずにそう思える自分が、なんと誇らしかったでしょう。
そしてその気持ちは、今でも続いています。

この、僕の大好きな箇所についてはね。
最後のコード「D♭」はそのままルートをC→B♭と下げていき、その部分のシンセサイザーのアルペジオの旋律が、ビートルズの「Here Comes The Sun」のブリッジ部と「You Never Give Me Your Money」のエンディング部を取り混ぜた合わせ技であったりとか、シンセの音色がジョージ・ハリスンの好みにそっくりで、白井さんは相当のジョージ好きなんじゃないか、など語るべき点も多いのですが・・・。
そんな解説もどきを掘り下げるのは勿体ない!
何と素晴らしい、勇気の沸く詞、曲、アレンジ、そしてジュリーのヴォーカルであろうか!
と、ただそれだけを訴えたいところなのです。

特に「La bella bita 僕には♪」と跳ね上がるメロディーを歌うヴォーカルには、今でもCD音源を聴いただけで「ぞぞぞ~」と背筋に電気が走ります。
そして、言いようのない勇気が沸いてくるのです。

そして今、アルバム『サーモスタットな夏』をリリースした1997年という時期・・・ジュリーをとりまく環境などを、後追いファンの僕は想像するのですが。
ジュリーファンにとって、苦しい頃だったのかもしれません。今のように、各会場が満員になるというわけでもなかったようです。
しかしジュリーは何ら変わることなく、「年に1枚アルバムを出して、そのツアーをやる」ことを続けていました(もちろんそれだけではありませんが)。
一方では、やきもきしたり、息切れしそうになったファンの先輩方もいらっしゃったのでは・・・とも考えてしまいます。
そんな時期に、覚和歌子さんが「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」のような詞をジュリーに提供したことが、どれほどファンの励ましとなったか・・・僕にはそう思えてならないのです。
この歌詞は、ジュリーの生き方そのものですからね。

♪ 食べ尽くしたいよ        歌い尽 くした     い
  A♭               A♭sus4       E♭D♭dim  Fm  Fm7

  愛し尽くしたい 君のこと
    B♭            D♭      E♭ E♭7  E♭6  E♭

ジュリーがハッピーならば、ファンもハッピー。
そんな単純明快な気持ちにさせてくれます。
先述した「隣りの芝生は勝手に萌えてろ♪」だって、覚さんのフレーズには卑屈な感覚など微塵もありません。

ジュリーはジュリーである、ということ。
そして、ジュリーファン一人一人も、それぞれ唯一無二の「個性」を持った人間だということ。
「違うハートは比べられない♪」のです。

周囲に惑わされない。
自分と他人を照らし合わせたりしない。

ジュリーファンは、もっともっと誇っていいと思います。それぞれの立場から。それぞれの観点から。
引け目を感じることなんて、何ひとつないんですよ!
「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」は、そういう曲だと僕は思うのです。
主観と言われればそれまでなのですが・・・でも、今年のツアーで歌ってくれたことは、多くの先輩方にとっても、とても嬉しい選曲だったのではないでしょうか。

ドーム直後の僕は、まだ覚和歌子さんのジュリーへの貢献度についても解っていませんでした。
『奇跡元年』でお隣りになったOさんに
「ジュリーは覚さんの詞が好きなのよ」
と教えて頂いた時にも、脳内で「角さん?加來さん?あ、覚さんか!」と、漢字変換に数秒かかったくらいですから(恥)。

さらに解っていなかったのは、覚和歌子さん=八島順一さんという黄金コンビの素晴らしさ。
特に八島さんが、前向きで力強いパワーポップを作曲した際のジュリーヴォーカルとの相性の良さは、格別。「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」は必然の名曲だったのですね。

あと、僕はアルバム『サーモスタットな夏』全編を通じて白井良明さんのアレンジがとても好みなのですが、「マンジャーレ!」のエンディングで波音のS.E.に加えて「PEARL HARBOR LOVE STORY」の旋律がフィードバックしてくる構成にもヤラれました。
つくづく”コンセプトアルバムフェチ”な自分です。

ところで、「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」は出だしが変イ長調で、2番直後の間奏から1音上昇して変ロ長調へと転調しています。
転調後の3度目のサビは、すべての音が高い「レ」よりもさらに高く、基本的に「ファ」と「ソ」を行き来するという、男声にとってはかなりキツイ音階です。特に年齢を重ねた人にとっては。

ジュリーはいくつかの会場で
「意地になって、昔の曲もキーを下げずに歌ってる」
と発言していることを、多くのじゅり風呂さんで知りました。
確かに「ダーリング」や「君をのせて」などは下がっていませんでしたね。それはここまでの参加会場にて、下山さんのコードフォームで確認済み。

「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」は僕としても「待ちに待った1曲」という思いもさることながら、例の”おいっちに体操”に体力を継ぎ込まなければならず、冷静に鉄人バンドの演奏チェックをこれまでできていませんでした。
週末の渋谷では、このキッツい高音を擁するナンバーまで原曲キーのままなのかどうか、確認してこようと思います。
ちなみに、『ジュリー祭り』では原曲キーのまま歌ってます。凄いね!

今ツアー『秋の大運動会~涙色の空』セットリストでは、本編ラスト3曲にこの「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」→「愛まで待てない」→「遠い夜明け」と、まるでジュリーの生き方を代弁するような覚和歌子さん作詞のナンバーが続きます。
GRACE姉さん作詞の「明日」「ひかり」、そしてニュー・マキシ・シングル『涙色の空』収録曲と合わせ、ジュリーの個人的な思いを具現化したタイプの楽曲が多い選曲になっているのは、見逃せない点ですね。

未踏の地を踏みしめ、70歳超えを視野に捕らえ始めたジュリーのステージを目に焼きつけ、もう一度僕自身の足元をも確認する・・・。
今週末は、いよいよ渋谷
神席です!

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2010年10月20日 (水)

沢田研二 「ひかり」

from『生きてたらシアワセ』、2007

Ikitetarasiawase


1. 生きてたらシアワセ
2. そっとくちづけを
3. ひかり
4. GOD BLESS YOU
5. 太陽
6. 天使に涙は似合わない
7. 明日
8. 希望
9. 黒いピエロと黒いマリア

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長かった酷暑も終わりめっきり涼しくなり、『秋の大運動会』にふさわしい気候になってまいりましたが、一方で、いよいよジュリーwithザ・ワイルドワンズ『僕達ほとんどいいんじゃあない』ツアーも再開されます。

ソロツアーとの並行。ジュリーや鉄人バンドは大変だなぁ、と思ったりもするわけですが、おそらく僕はもう観ることはできないジュリーwithザ・ワイルドワンズのステージ、様子が気になりますね~。
本日の茅野でのLIVE、日頃お世話になっている先輩が参加なさるようですし、最近お邪魔し始めたブログの管理人さんも大層張り切っていらっしゃるようで、僕も我が事のようにワクワクしたりして。
長野にはもうひとかた、仲良くさせて頂いている先輩がいらしゃいます。参加なさるのでしょうか・・・。みなさまからの熱いご報告や感想、レポを心待ちにしている次第です。

☆    ☆    ☆

さて、そんな中、拙ブログでは前回より『秋の大運動会~涙色の空』セットリストの中から数曲を採り上げての記事執筆期間に入りました。とりあえず絶対に書いておきたい、というナンバーが3曲あり、まずはそちらから記事にさせて頂いているところです。
第2弾の今日は、ジュリーLIVE毎度お馴染みの

こ、こんなイイ曲だったのか!
と今さらながら気づかされた!シリーズ


でございます。
アルバム『生きてたらシアワセ』から。
「ひかり」、伝授です!

今回のセットリスト、『生きてたらシアワセ』から3曲抜擢されたのが意外でもあり、(ドーム堕ちの僕にとっては、すべて初めて生で聴く曲ということもあって)嬉しくもあり、大きな特徴と言えます。
演奏順に

「明日」
「ひかり」
「太陽」

この3曲です。

元々、今の鉄人バンドのメンバーで2007年に演奏されていたラインナップで、安心な選曲、という理由もあったでしょう。
何と言いましても先述の通り、今年はジュリーwithザ・ワイルドワンズのツアーも並行して行われていますから、上記3曲、或いは『ジュリー祭り』のセットリスト曲といった、ある程度バンドの手に馴染んだ曲が選ばれたのではないでしょうか。

僕は『生きてたらシアワセ』というアルバム、実はドーム堕ち以降の大人買い期間に購入し損ねているんです。聴いたのは、プレプレツアー直前になってからでした。
ネット販売店のレビューなど、あまり良い評判を聞いていなかったんですよ。
ベースレスのアルバムだという事は当時の僕はもう解っていましたし、どうやらドラムスも全曲完全な打ち込みらしい。
同様の作りである『ROCK'N ROLL MARCH』に比べて、概して評価が低いのは、おそらくアレンジの白井良明さんをはじめとする制作スタッフがまだ試行錯誤途上にあったのではないか、と想像してしまったのです。

で、購入をためらっていたというわけ。
『奇跡元年』で「希望」という大好きな曲ができたのですが、DVD『ワイルドボアの平和』を先に買って、それで満足していました。
『ワイルドボアの平和』では、もう1曲『生きてたらシアワセ』から「明日」も演奏されていて、タイトルチューンの「生きてたらシアワセ」と合わせ、この3曲がまぁ目玉のアルバムなんだろう、と。
つくづく甘く見たもんですよね。そうこうしているうちにいつの間にやらアルバムは廃盤になり、気がついたら密林さんの中古価格が10,000円になってた・・・。

そんな折、カミさんが
(その当時はまだ全然カミさんではないが)「かなり好きなアルバム」と言って僕の知らない曲をズラズラと挙げていて・・・。
(確か「GOD BLESS YOU」と「太陽」を挙げていた)
まぁそんな流れで僕も、ようやく音源だけ入手と相成ったわけです
(←コラ!)

一発で気に入りました。
特に「太陽」、それにやっぱり「明日」「希望」という2文字シリーズ3曲
(なんだそれは)を激リピ。
この時点では、情けないことに「ひかり」の素晴らしさにはまだ気づいていなかったのですが・・・とにかく!
白井さんが試行錯誤途上なんて、とんでもない勘違いでした。
ベースレスのロック、しかも打ち込みドラムスという道なき道を、完璧に手中にしていると思いました。いくつかの曲で「う~んこれは・・・」と首をひねってしまった前作『俺たち最高』に比べると、少なくともアレンジ面においては明らかに上です。

そして僕は、今回の『秋の大運動会~涙色の空』セットリストで聴いて初めてその素晴らしさに打ちのめされたナンバー「ひかり」の、特にGRACE姉さんのドラムスに強く惹かれました。
それは、ほぼCD音源で白井さんがプログラムしたドラムパターンと同じだったわけですが、それを実際に生のドラムスで再現されたことにより、新たな発見があったのです。

そもそもベースレスのバンド演奏は、具体的にどのような弊害を引き起こすのものなのでしょうか?
まず、ドラムスのキックとベースの粒をキッチリ揃える!というのがロック・バンドの基礎の基礎としてあります。アマチュアがバンドを組んで、最初に練習するのはズバリその点です。
その練習を怠り、
「初期のストーンズだって揃ってないじゃないか」
と曼荼羅のテスト演奏後に審査スタッフのお兄さんに偉そうな能書きを垂れたバンドは、出演契約してもらえません。
「おまえらはストーンズと同格のつもりか?」
と嘲られ、スゴスゴと退散することになります。

・・・あ、具体的な実話でごめんね
(でもその後、別のバンドで出たのよ)

とにかく、キック(=バスドラ)とベースが揃っているのが、ロックバンドの基本。
僕らは普段音楽を聴いていて、知らぬ間にそういった粒の揃った低音に耳が慣れてしまっているのです。ですからベースが欠けた場合に、かえってバスドラの音が聴き取り辛い、という本末転倒な現象が起こります。
もしかすると、『greenboy』『俺たち最高』ツアーで多くのお客さんの身に実際そういう事が起こっていたのかもしれません。生で観ていないのであくまでも想像でしかありませんが・・・。

白井さんが、CD『生きてたらシアワセ』のドラムス打ち込みで留意し、工夫を重ねたのはその点なのですね。
ドラムセットの中で、極端なまでに高音と低音のメリハリをつける、という手法です。
特にハイハットが凄いのです。

『生きてたらシアワセ』の打ち込みドラムの聴かせ方には2通りあって、ひとつは”ループ”方式、もうひとつが生ドラムでのアタックバランスをハッキリ念頭に置いた方式です。
曲で言いますと、前者が「生きてたらシアワセ」「太陽」など、後者が「ひかり」「明日」など。
今回のツアー、「ひかり」→「太陽」と『生きてたらシアワセ』収録曲が続くシーンがありますが、「太陽」のイントロで、ドラムスの聴こえ方がずいぶん「ひかり」とは違うなぁ、となんとなく感じた方は多いのではないでしょうか。
「ひかり」に比べて、「太陽」は機械的な感じがしませんか?
それは、どちらの楽曲をも、GRACE姉さんが忠実にCD音源を再現しているからに他なりません。

「ひかり」はハードなサイケデリック・ロックで良く使われるドラムスパターンでアレンジされていて、肝は跳ねる(16分音符の裏打ちがある)スネアとバスドラ、そしてオープンハイハットの連打でしょうか。

一応説明をいたしますと、「ハイハット」というのは、ドラムセットを正面から見た時に一番右側にセッティングされている、シンバルが二重になっているアレのことです。
二重のシンバルを隙間無く閉じて叩くと「チッ、チッ、チッ」という音がしますが、隙間を作ってあげると「シャ~、シャ~」と鳴るのです。
隙間の大きさは左足でペダルを踏んで調節し、隙間が大きければ大きいほど、ハードな感じになっていきます。
「ひかり」のハイハットはほとんどペダルを踏まない隙間全開の設定で、この状態を「オープン・ハイハット」と呼ぶのですね。
「ひかり」でのオープン・ハイハットの連打は、ベースレスの楽曲に厚みを持たせる重要な役割を担っています。

もうひとつ、アルバム『生きてたらシアワセ』で白井さんがこだわっているのはアコースティック・ギターだと思います。
決して目立ちませんが、「ひかり」ではやや右寄りのミックスで、ガッシャンガッシャンと弾き倒しています。これもベースレスを補う効果があります。
「明日」などは、左右両方の位置で2本導入されているんですよ。両曲とも今ツアーでアコギの出番は割愛されています(鉄人バンドはエレキギターのアンサンブルを重視し、その分泰輝さんの手数で勝負)が、CD音源で僕が注意して聴くのはアコースティック・ギターのストロークなのです。

「ひかり」ではさらに、サイケデリック色を強調するように、シンセ・ストリングスが大々的にフィーチャーされていますね。
この手のアレンジは、白井さんの得意技のようです。

♪ この空の下の すべては~ ♪
     B♭          C           G

のすぐ後にに続く

♪ソ~、ソ~、ファソシ♭ッ・ドシ♭ッソ~♪

という豪快なストリングスの旋律と音色・・・みなさま、他のジュリーナンバーで何か思い出したりはしませんか?
僕がすぐ想起したのは、「PEARL HARBOR LOVE STORY」の、「大人達の後悔は重く♪」直後のストリングス。
「PEARL HARBOR~」はヘ長調で「ひかり」はト長調ですが、音階移動や音色、ゆったりした曲調に豪快に噛みこんでくる挿入の仕方など、共通点が多いと思っています。

あと、ストリングスは8分音符で「ボッ、ボッ、ボッ♪」と刻みを入れたりもします。
これは何となくジョージ・ハリスンの「FAB」みたい。白井さんって、かなりジョージ好きなんじゃないかと僕は想像してます。
この点については、次の記事でも書くけどね!

さて、「ひかり」は詞曲ともにGRACE姉さんの作品です。
ドラマーとしてだけでなく、「ひかり」のような最高に渋い曲を一人で作ってしまう・・・今回のセットリストを機に、僕は改めてGRACE姉さんの才媛ぶりに感銘しました。
この詞については、ツアー初日後にある先輩から
「GRACEさんがジュリーから感じ取るオーラのようなものを表現したのではないか」
という感想を伺って、「なるほどなぁ」と思いました。

GRACE姉さんの作詞には、大きく2つの表現手法があるように思います。
ひとつは、まるでジュリー自身の作詞かと思われるような、ジュリーの生き方、考え方のスタンスを代弁しているもの(「明日」「確信」「Pleasure Pleasure」など)。
もうひとつは、情景や心情を淡々と並べ、ドラマティックな全体像を浮き上がらせるもの(「Beloved」「不死鳥の調べ」など)です。
「ひかり」は後者でしょう。
今回改めてじっくり聴きこみますと、「クール」と言うよりは、情景の「涼しさ」に癒されるような感じがして、とても良いですね。

作曲構成は、以前「届かない花々」の記事で書いたことと重複しますが、マイナーコードを使用せずに叙情性を表現する”媚びないバラード”系。
イントロは、「G→F→E♭」と1音づつ下降し、いざ歌メロに入ってからは、Gコードを基盤にしてルート音のみが「ソ→ファ#→ファ→ミ♪」と半音づつの下降になっています。
今ツアー、バッキングでこの下降音階を演奏するのは下山さんの役目。月末の渋谷で、至近距離からガン見するつもりです!

さぁ、『秋の大運動会~涙色の空』セットリストの中で「絶対に書いておきたい3曲」もこれで残すところあと1曲です。
次回は、最高にハッピーで、極上の構成を擁した大々々名曲を予定していますからね!
とてつもなく好きなナンバーで、いつか生で観ることができたらその時書こう!って、ずっと前から決めてたんだ~。
「僕らには自慢のジュリーがいる!」という記事になるでしょう。

それではみなさま。
茅野、そして三重、奈良でのジュリワンLIVEの感想もお待ちしていますからね!
参加なさる方々、本当にうらやましいです~。

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2010年10月13日 (水)

沢田研二 「I' M IN BLUE」

from『G. S. I LOVE YOU』、1980

Gsiloveyou


1. HEY!MR. MONKEY
2. NOISE
3. 彼女はデリケート
4. 午前3時のエレベーター
5. MAYBE TONIGHT
6. CAFE ビアンカ
7. おまえがパラダイス
8. I' M IN BLUE
9. I' LL BE ON MY WAY
10. SHE SAID・・・・・・
11. THE VANITY FACTORY
12. G. S. I LOVE YOU

---------------------------------

それでは今回より、現在絶賛敢行中のジュリー・ソロツアー『秋の大運動会~涙色の空』セットリスト・ネタバレ記事へと突入します。

ジュリーの持ち歌、600曲超。
この2年、必死でジュリ勉に励んできた僕ですが、そのすべての楽曲構成を頭に叩きこめているわけではありません。
さほど積極的に好きになれずに、アルバムを通して聴く際にしか味わう機会の無い曲、さらには、部分的に曖昧な記憶しかない楽曲も、実はかなりあったりするのです。
これまで何度も書いている通り、ジュリーのLIVEに行くと、そんな甘い認識しか持てていなかったナンバーに打ちのめされることが、必ずあります。僕がネタバレ無しのツアー初日にこだわるのは、その感覚を味わいたいがためと言っても過言ではありません。
だって、ネタバレしたら絶対予習してしまうじゃないですか・・・。本気で予習したら、当日までには好きになるに決まってるしねぇ。

一方で、”大好きなジュリーナンバー”という自覚がありつつ、未だLIVEでは未体験・・・そういった曲をいきなりガツン!とぶつけられることもまたネタバレ我慢の醍醐味です。

今日のお題は、どちらかと言うとそのタイプのナンバーってことになるのかな。
シングル・ヒットではない1アルバム収録曲にもかかわらず、僕がずいぶん昔から知っていて、聴き続けてきた楽曲。
アルバム『G. S. I LOVE YOU』から、「I' M IN BLUE」、伝授!

僕がこの曲と出逢ったのは、15の時
ビートルズから洋楽ロックに入って、「日本語のロックなんて・・・」と大きな勘違いで頭が固まろうかとしていた時期に、突然現れたのが佐野元春さんでした。
アルバム
『SOMEDAY』を同級生のM君に貸してもらったのが最初。
「Rock'n Roll Night」「Happy Man」という楽曲のコンセプトに何よりもびっくりしたわけですが、他の曲でも何曲かすごく気に入った曲があって。その中の2曲が、ジュリーへの提供楽曲だったのですね。

今考えると、とても不思議な感覚。
「I' M IN BLUE」や「VANITY FACTORY」を、15歳の僕が繰り返し聴いていた、というのがね・・・。

「日本語でこんなことが出来るんだなぁ」と衝撃を受け、佐野さんの過去のアルバムもすべて聴いて、しばらくの間佐野さんは、邦楽ロックの中で唯一の例外だと位置づけていました。
ちょうど作曲なぞ始めたのがその頃ですから、コード進行など、よく佐野さんのナンバーを手本にしたものです。

例えば「I' M IN BLUE」サビ部の

♪ Maybe I'm a loser、 baby I'm just a dreamer ♪
                       C      Caug              C6        C7

という、3つ目の構成和音が半音ずつ上昇していくコード進行の理屈を僕はこの曲で覚え、その進行が巷の多くのポップスに取り入れられていることにも、敏感に気づくようになりました。
また、dimコードの和音構成が(ルート音を別にして)3種類しか存在しない事を理解したのも「I' M IN BLUE」でした。

♪ Everyday Everynight その気持ちはいつまでも ♪
     C           F#dim       Fmaj7              Em7

この「F#dim」。
当時、ギターコード・フォームの習得途上だった僕には非常に押さえ辛いコードでした。
そこで、dimコードの特性を利用し、1フレットをセーハ、2フレットの1弦と3弦を抑える「E♭dim」で代用して弾いたものです。そのせいか、次の「Fmaj7」を普通に「F」で弾いた方がフォーム移動が自然で、今でもこの部分は「E♭maj7」→「F」と弾いています。
楽曲のアレンジ的には「Fmaj7」が正解ですが、一人で弾き語る場合は「F」で弾く方が歌い易く、おススメですよ!

この「F#dim」を果たして下山さんがどのフォームで押さえるのか・・・。
大阪ではその点を見逃してしまったので、月末の渋谷でしっかり確認してこようと思っています。

さて。
僕が佐野さんを聴いていた頃はまだLP盤の時代で、「I' M IN BLUE」はアルバム『SOMEDAY』のB面1曲目に収録されていました。
レコードをひっくり返して1曲目、というのはLP時代の重要な楽曲配置です。佐野さんのリメイクしたヴァージョンは、ジュリーのヴァージョンとは、だいぶ印象が異なり、演奏時間も長く、「ロック」と言うよりは「良質なポップス」といった感じのキラキラした仕上がりになっています。

レコーディングはジュリーの方が先だったようです。と言うよりも、ジュリーに楽曲提供した後に、佐野さんが自身のアルバムでリメイクした、という流れだったらしいですね。
「VANITY FACTORY」などは、その佐野さんのリメイク・ヴァージョンにジュリーがシャウト全開のバックコーラスで参加する、という豪華なテイク。これは是非ジュリーファンのみなさまにも聴いて頂きたいところです。

で、僕は長年親しんだ佐野さんヴァージョンのイメージが強かったせいか、アルバム『G. S. I LOVE YOU』でジュリーの「I' M IN BLUE」を初めて聴いた際、「ずいぶん短く纏めたな・・・」と思ってしまいました。
(註:佐野さんのヴァージョンは、演奏時間が4分以上あります。サビの繰り返し部が加えられていて、エンディングもフェイド・アウトでかなりの時間引っ張ります)

しかし、それぞれのヴァージョンのレコーディング経緯を知った今では、おそらくジュリーヴァージョンの方が、佐野さん作曲段階での楽曲イメージに近いのではないか、と推測できるわけです。
演奏時間の短い、畳み掛けるようなアレンジ。
これはそのまま、アルバム『G. S. I LOVE YOU』の特性にも合致するのです。

『G. S. I LOVE YOU』は、ネオ・モッズやパブ・ロック系ニューウェーヴの洋楽バンド、アーティスト達の間で流行した、いわゆる”ビートルズライク”なアルバム制作手法の影響を受けていることは間違いありません。
短い楽曲が多く収録され、それらが曲間の無音部無しに矢継ぎ早に繰り出される、というものです。

「午前3時のエレベーター」
「CAFE ビアンカ」
「I' LL BE ON MY WAY」

このあたりのアルバム収録曲は、そんな洋楽の流行に敏感だったムッシュかまやつさん、伊藤銀次さんが敢えて短い演奏時間を狙って作曲したのではないでしょうか。そして、「I' M IN BLUE」についても、加瀬さん或いは銀次さんから佐野さんに「短めのビート・ナンバーを」というリクエストがあったのかもしれません。

『G. S. I LOVE YOU』というアルバムは、誤解を恐れずに言えば「おもちゃ箱ロック」とも言うべき、過剰にプロデュース、アレンジ、そしてミキシングされた異色作です。
ジュリーのヴォーカルすら、大量のディレイがかけられたり、残響音に破天荒な後処理があったり、果ては極端な位置にミキシングされたり、とイジられ放題なのですが・・・それがヴォーカルの制約とならず、すべて飲み込んで楽しんでしまっているところに、ジュリーの凄さがかえって際立っている作品とも言えます。
これは、後の建さんプロデュースのEMI期(ロックを「演じる」というスタンス)とは似て非なる点かと考えますが、その辺りの比較はいずれ「噂のモニター」の記事に際して書こうと思っています。

いずれにしても、『G. S. I LOVE YOU』の制作スタッフがいよいよジュリーを「ロック」として推し出そうとはっきり意図した最初のアルバムではあるでしょう。『BAD TUNING』でのオールウェズによるLIVEレコーディングという手法があっという間に進化して、早くもコンセプト・アルバムへと辿り着いた・・・まるで、ビートルズを始めとする洋楽バンドが数年かけて辿った道程を、たった2年足らずでやってのけた、という印象を受けます。
僕にとってオールウェイズ時代のジュリー作品には、そんな意義を見出せたりするのです。

ジュリー版「I' M IN BLIE」は、アレンジもネオ・モッズ系の潔い疾走感が肝で、こっちに慣れてしまうと佐野さんヴァージョンはなんだか・・・遅い(笑)。
で、アレンジについては全く違うこの2つのヴァージョン、それではヴォーカルメロディーを比較した場合、どうでしょうか。

基本的にジュリーも佐野さんも同じメロディーで歌っています。
歌い方はもちろん違いますけどね。ジュリーは伸ばす感じで、佐野さんは斬る感じ。
ただ、1箇所だけ明らかに音階が異なる部分があります。
Aメロの1回し目の最後。
1番で言いますと

♪ 街灯り流れてゆく without your love ♪
    Dm7          G7 Gaug           Cmaj7

の「without your love♪」だけが、全然違うメロディーなのです。

佐野さんは「ソソ~、ミ、ミッ♪」と叩き斬るのですが。
ジュリーは「ソソ~ラ~、シ~~ドシラ♪」と抑揚をつけて上昇→下降します。

この点については、佐野さんのオリジナルメロディーはご自身のリメイクの方ではないかと思います。
ジュリーの楽曲には、レコーディングの瞬間にバックの演奏を本能的に感じてその場で新たに歌い変えているのではないか、と考えられるヴォーカルが多く見受けられますが、「I' M IN BLUE」のこの箇所もそうなんじゃないかなぁ。

コード進行の理屈で言うと、トニックに戻って着地、というのが「love♪」の部分になるのです。しかしその着地和音は単純に「C(ド・ミ・ソ)」ではなく「Cmaj7(ド・ミ・ソ・シ)」で演奏されているのですね。
ジュリーはきっと、加えられたmaj7の音(=シ)を本能的に強調し、このヴォーカルが生まれたのではないでしょうか。
ス~ッと空へ抜けていくようなメロディーで、曲の雰囲気によく合っていますよね。ジュリーの楽曲解釈の能力が如何なく発揮されたテイクなのだと、僕は思っています。

余談ですが、ジュリーwithザ・ワイルドワンズの大名曲「
涙がこぼれちゃう」についても、オリジナルのメロディーとは決定的に異なるヴォーカルニュアンスが登場する箇所があるのだそうですよ。
いつか聴き比べる機会に恵まれたいものです。

ということで、他ならぬオールウェイズ時代の楽曲を今回のツアーで聴けたことに、僕はとても満足しています。
でも、アルバム『BAD TUNING』からはまだ1曲も生で聴けてないんだよなぁ・・・。
ジュリー、そろそろ「どうして朝」とか「アンドロメダ」なんて、どう~?
今の鉄人バンドの演奏がビタッとハマる曲だと思うんだけどな~。

それでは、こんな調子でしばらくの間は『秋の大運動会~涙色の空』セットリストからのお題記事を続けていきますね。
次回はアルバム『生きてたらシアワセ』から!

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2010年10月 9日 (土)

次回記事からネタバレしますよ~

楽曲記事の更新がご無沙汰になってしまい、ごめんなさい。

福岡公演が終わったら、『秋の大運動会~涙色の空』セットリストのネタバレシリーズに入ります。
まずは、7曲目に演奏されたあの曲から書きますからね!

それでは九州のみなさま。行ってらっしゃいませ~。

File0544

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2010年10月 6日 (水)

もう観た人いるかな?

今日は荒川ですね。
参加なさったみなさま、side-Bにて感想お待ちしています!

先日お知らせしたように、拙ブログ・こちら本館の方でも、いよいよ10日の福岡以降はネタバレしますからね~。
セットリストから数曲選んで記事を書く予定でいます。
絶対書きたい曲が3曲ある!

☆    ☆    ☆

さて。
たった今、SUPERDRY THE LIVE・事務局さんからインフォメーション・メールが届きました。

SUPERDRY THE LIVE公式ページに、千葉フェスのドキュメンタリー映像がアップされたようですね。
しかも今回は、一般公募アーティスト

・熱~いLIVEの様子
・ステージの袖でドキドキする様子
・パフォーマンス終了直後の突撃インタビュー
・スーパードライで乾杯!

という内容の映像のようです!

ステージの袖で腰をクイックイッさせて完全通常モードでスタンバイする吉田Qさま(僕らの位置からは丸見えでした)が映っているのでしょうか?

とりあえず僕は、帰宅するまで観れません。
もう観た人いるかな?

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2010年10月 4日 (月)

Ballad and Rock'n Roll

さすがに、『2011 正月LIVE』はインフォーメーション時点の仮称だったようで。

そりゃそうですよね。
「毎回、ツアータイトル考えてくれ~、言われんねん!」
と、大阪のMCで言ってましたし。

じゃあ、『1999正月コンサート』ってのも熟慮の末で命名したツアータイトルだったんだよね、きっと・・・。

で、来年のお正月コンサートは

『Ballad and Rock'n Roll』

これ、多くの先輩方が仰るように、「バラッド・アンド・ロッケンロール」と読みたいところですね~。
「バラード(Ballade)
」じゃなくて「バラッド(Ballad)」。
ジュリー自身がどう読ませているかは、まだ分からないですけど。

「バラッド」という言葉の響きは、すごく好き。
僕がまだ10代の頃に出逢った、泉谷しげるさんのアルバム『80'sのバラッド』のイメージが強くあるんです。
「バラッド」・・・スローな曲のことだけ指すのではなく、もっと深いニュアンスが感じられる作品でしたから。

泉谷さんはその後、『吠えるバラッド』『90'sのバラッド』といった作品をリリースしていって、それはそのままLOSERの演奏イメージと重なっていくんです。
ですから僕にとって、ジュリーナンバーで「バラッド」のイメージを想起させるのは、JAZMASTER時代から、『HELLO』の頃の楽曲群だったりします。

スローテンポの「月の刃」「カラッジ」のみならず、「憂鬱なパルス」なんてのも、「バッラド」な感じ。
そして・・・ジュリー版”吠えるバラッド”と言えば、僕の中では「Shangri-la」!

津波のようなセットリストを期待しちゃってます!!

問題は、渋谷中日までネタバレを我慢できるのかどうか・・・。
正直、自信なし・・・。

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2010年10月 1日 (金)

沢田研二 「若者よ」

from 『涙色の空』、2010

Namidairo


1. 涙色の空
2. エメラルド・アイズ
3. まほろばの地球
4. 若者よ

------------------------


随分お待たせしてしまいました~。
本日のお題は、ジュリーのニュー・マキシシングル『涙色の空』からいよいよ大トリ。
発売前からじゅり風呂界の話題を攫い、蓋を開けてみるまで誰もその実態を予測できなかった、ストレートが故の問題作(?)。
そして僕の観たところ、絶賛開催中のソロツアー『秋の大運動会~涙色の空』のセットリストにおいて、新曲4曲の中では最もお客さんのノリが良い、ロッケン・ジュリーなナンバーです。

ちょっと書くことが増えてしまったので、枕はここまで。
「若者よ」、伝授!

まず、今回の記事執筆にあたって、僕はこのようなものを購入いたしました。

Jagers

ザ・ジャガーズのベスト盤。
シングル集・・・なのかな?ライナーが簡単なバンド履歴紹介しか掲載していないもので、よく分かりません。

先だっての大阪グランキューブ公演後の打ち上げにて、いわみ先輩が高らかに宣言した
「柴山さんの作曲はジャガーズなんだよDY君」
というお言葉。
大先輩にそんな伝授をされてしまった以上、そこを無視して楽曲記事を書くわけにはまいりませんよ!

で、聴いてみました。
おぉ、勝手に描いていたイメージとは全然違うバンドだぞ!

僕はジャガーズについてはまったく知識を持たず、「キサナドゥーの伝説」に原曲があったことすら、例のGS楽譜集復刻の際に初めて知ったというような状況。
で、音をちょっとだけ聴いて
「ベンチャーズの影響を受けた湘南系・・・ワイルドワンズに近いな」
などと、決めつけてしまっていたのでした~。すみませんすみません。

CDを購入して驚いたのは、全収録10曲のうち半分までをも、あの筒美京平さんが作曲なさっているという事実。
オックス「スワンの涙」が筒美さんの作品であることは知っていましたが、ジャガーズにも深く関わっていらっしゃったのですね。

筒美さんは、僕が大野克夫さんと同じくらいに尊敬する、昭和の大作曲家です。
下地に明らかな洋楽のエッセンスがあるのが大きな特徴で、各作品の元ネタを列挙するだけで1冊本が書けてしまうほどです。
よく巷で「パクリ」という言葉を耳にしますが、これには2種類あって

①卓越したセンスで元ネタの楽曲を新たに発展させ、違う解釈におとしこむ志によるもの
②さも自らのオリジナルであるように見せかける厚顔無恥な表現によるもの

で、筒美さんは当然ながら①。と言いますか、①において右に出るものはいない、というくらいのプロフェッショナルです。
僕は②についてはハッキリ侮蔑しますが、①が卓越している作曲家さんにはとても憧れるのです。

今回購入したザ・ジャガーズの筒美作品の中で言いますと、例えば「マドモアゼル・ブルース」。
クールで渋~い大名曲でしたが、これは・・・。
僕と同じくビートルズ・フリークなジュリーファンでいらっしゃるひいきゃん様やちこ様がお聴きになっても一目かと思います。これは、「今日の誓い」です!
元ネタが渋過ぎますよ筒美先生・・・。

ここでまた恐縮ながら手前ミソなお話を。
もう10年以上前になりますが、僕の勤務する会社から、素晴らしい譜面が刊行されたことがありました。

『筒美京平/永遠のベスト・ヒット100』

Mjtutumi

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File0540_2 

File0541_2

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誰もが知る名曲ばかり。まさに一家に一冊、といった豊穣の品なのですが、思うようには売れませんで・・・残念でした。
その後の在庫処理などを経て、現在は絶版状態になっております。

でも、この楽曲群・・・凄まじいと思いませんか?
そして、筒美さんの作風はこの収載曲のようなキャッチーなものばかりではないところがまたスゴイ。
ジュリーファンであれば、冒険心に富んだ『女たちよ』という好例でもって、筒美さんの功績を堪能することができますね。

・・・ずいぶん話が逸れました
(だから枕を短くしたのよ)
結局、ザ・ジャガーズと柴山さん作曲「若者よ」の比較考察はどうだったかと言いますと。
こんな僕でも、共通のエッセンスを感じとることができました!

ヴォーカルに絡む哀愁のリード・ギターや、明解なマイナー・スケールを多用して押しまくる進行などがそうです。
特にリード・ギター!
間奏では、明らかにレコーディングの入力音量レベルを大幅に超えてしまった時に起こる「ブチブチブチ・・・」というノイズが入っていて、最初聴いた時には、「うへ~!」と思ってしまいましたが、どうやらこれはわざとかもしれない・・・。
他の演奏音に比して、エレキギターの単音が爆裂的にデカい!というのもまた、60年代GSの味だったりするのです。(タイガースは小さいけどね。『自由と憧れと友情』の中に数曲デカいミックスのギターがあるけど・・・その辺りについてはいずれね)
←コラコラコラ

まぁ、とにかく・・・然るに柴山さんの「若者よ」の作曲は、まさに洋楽直系と言える特色をも兼ね備えています。
例えばイ短調(=Am)の進行だとしたら、ドミナントのE7の直前にフックを入れる作曲手法がすぐに考えられますが、「若者よ」のようなメロディーでそのフックのコードに最も一般的な「Bm7-5」を使用しますと、フォーク的要素が強くなってしまいます。
そこで柴山さん、代わりに「B7」を投入します・・・これで、不思議なことにとてもGSっぽくなるのですね。

いわみ先輩の頭の中にはひょっとしたら具体的な曲名があるのかもしれませんが、僕が一番「若者よ」の雰囲気に近いと感じたのは、「君に会いたい」というナンバーでした。
こちらは筒美作品ではなく、作詞・作曲ともに瀬川正一さんです。実に明解な洋楽直系のヒットチューンです。

いわみ先輩はおそらく「若者よ」を聴いてすぐに、これらの点に気がつかれたのでしょう。さすがは、「とにかくウンチクが止まらないおじさま」と呼ばれるお方だけのことはあります。
(註:DYNAMITEは「おじさん」で、いわみ先輩は「おじさま」です。ココ大事。引っかけ問題として試験に出ます)

ただ、ですね。
僕はこの「若者よ」のCD音源は、やはり下山さんのアコースティックギターをもう1トラック追加すれば更に良くなったのではないか、という考え方でもあります。

マキシ・シングル『涙色の空』収録曲のアレンジについて、LIVE演奏との接近を狙ったものとして特にタイトルチューンの「涙色の空」を絶賛する記事を書いてきました。
「若者よ」もまた、LIVEに限りなく近い最小限のトラック数でレコーディングされています。唯一、柴山さんのリードギターが後から追加されているだけです(そのトラックこそ、GSの雰囲気を出しているのですが)。
泰輝さんのエレクトリック・ピアノがすごくセンスの良い噛み方をしているだけに、楽曲全体を通してジャカジャカかき鳴らしているアコギの音が薄く聴こえていても良かったかなぁ、と。

しかし、現在行われているソロツアーを観て、実際のLIVE演奏についてはこのアレンジでまったく問題無いことが解りました。
いや、問題無いどころか、凄まじい盛り上がりです。
柴山さんのリードギター、下山さんのサイドギターと、エレキ2本の絡みは素晴らしく、ジュリーのヴォーカルも猛々しく、また若々しい。
一体どの辺が

♪ 俺たち、老人! ♪
     B7        E7
(註:先述したGSっぽいコード進行部のひとつです)

なのでしょうか。

さらに言いますと、これは多くのじゅり風呂さんも書いていらっしゃるのですが、この曲での柴山さんのコーラスは、爆音です!
さすがは作曲者、歌っていて気持ちが良いのでしょうね。
一番声を張り上げるのは、キメのメロディー

♪ POWERLESS・・・・・・POWERLESS POWER ♪
     C                        G7                     C

の部分。
主メロのジュリーが
「ミ~ミ~ミレド、ミ~ミ~ミレド・・・♪」
という音階で歌うのに対し、柴山さんは
「ソ~ソ~ソファミ、ソ~ソ~ソファミ・・・♪」
と歌います。
結構高い音ですけど、柴山さんは色々なジュリーナンバーのLIVEで、かなりの高音コーラスを担っていますから、余裕でしょうか。

さて、ストレートなジュリー自身の歌詞について。
この「若者」というフレーズの範疇には、僕の年代も含まれていると感じました。そして、ジュリーは自分の年齢を敏感に意識している、とも。
ステージではあんなに元気なジュリーだけど、MCで身体のことを色々と言っているのは、きっと本音ですよね。でなければ・・・「まかせてるぜ」のメッセージを受け止められない。
「見守り支えていく♪」というジュリーの言葉を受け止めたいから、僕は敢えてそう考えようと思ったのです。

あと、「POWERLESS POWER」の解釈が難しい・・・。
関連して思い浮かべるのは、「我が窮状」の「老いたるは無力を気骨に変えて♪」であったり、「緑色のkiss kiss kiss」の「声なき声♪」であったり。
「パワーレス」とは、パワーが無いということではなく、「ささやかなパワー」という意味ではないか、と今は考えています。

(2013年1月註:何と恥ずかしい・・・とんでもない浅い考察です!2013年お正月コンサートで歌われたこの「若者よ」。セットリストのリンクを貼るために久々に『涙色の空』リリース当時に自分が書いた当記事を読んで愕然としています・・・。
「パワーレス・パワー」とは「武力なき力」。
希望」のコーラス・パートにも登場する、作詞家・ジュリーにとって大変重要なフレーズです!)

最後に。
「若者よ」は今回のツアー・セットリストの中で、大変盛り上がるナンバーのひとつになっています。
僕が渋谷、大阪と観てきた感じですと、Bメロの

♪ 舵取りをするのは君だ 若者たち ♪
      Dm                           Am

の部分からお客さんの手拍子が頭打ち4連打になり、サビもそのまま雪崩れ込む、というのが参加パターンになっているようです。
でも、ジュリーは2番Bメロ直後のサビ

♪ 若者よ若者よ 俺たちはまかせてるぜ ♪
     C                  G7         C

の箇所では、1拍ずつ拳を突き上げていました。
次回10月29日の渋谷で、僕はこの拳突き上げを踏襲してやってみようと思っています!

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