ザ・タイガース 「廃虚の鳩」
from 『ヒューマン・ルネッサンス』、1968
1. 光ある世界
2. 生命のカンタータ
3. 730日目の朝
4. 青い鳥
5. 緑の丘
6. リラの祭り
7. 帆のない小舟
8. 朝に別れのほほえみを
9. 忘れかけた子守唄
10. 雨のレクイエム
11. 割れた地球
12. 廃虚の鳩
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すみません~。
本館、ずいぶん更新間隔が開いてしまいました。
バンド関連の作業が入ったり、遠征滞在期間が長かったせいもあって、大阪レポ完成に1週間もかかってしまいまして・・・申し訳ありません。
巷では先日、吉田Qさんが多くのジュリーファンの投票の末見事出演を果たした「ASAHI SUPER DRY THE LIVE」のTV放映がありました。
僕の家ではタイムリーで観ることができなかったのですが、近いうちに録画鑑賞できる予定。
演奏されたセットリスト3曲のうち、「女は女でつらいのよ」「恋のひとこと」の2曲がオンエアされた模様です。
これで、気持ち的にはひと区切り。夏が終わった、という感じです。
僕にとって次の大きな行事は、10月末の渋谷ということになりますか。
まだいらっしゃるのかな・・・ソロツアーのネタバレ我慢を継続しているみなさま。
本当にその忍耐と精神力には頭が下がります。
”やたらとネタバレ禁止期間が長いじゅり風呂”を目指しておりますこちら本館ですが、一応解禁日を10月10日の福岡公演終了後、と決めようと思います。
(さすがにお題選択が苦しくなってきた)
よろしくお願い申しあげます。
さて。
順番からいきますと今回は、前回「1回飛ばします」と言った「若者よ」を執筆すべきなのですが、大阪の打ち上げにていわみ先輩から授かったヒント(DY君この曲の柴山さんの作曲はジャガーズだよの件)を検証すべく、先日ザ・ジャガーズのベスト盤をネットで購入いたしました。
そちらが近日中に届くと思われますので、充分聴いて考察を重ねてから、「若者よ」の記事にとりかかる所存でございます。
今日は、前回記事「こっちを向いて」に引き続きまして、ジュリー・ソロツアーのネタバレの心配が無いタイガースナンバー(リードヴォーカルがジュリーではない曲)をお題に採り上げたいと思います。
新規ファンの僕にとってはいささか重いテーマのように思え、一度は執筆を敬遠した(「生きてることは素敵さ」記事参照)トッポ・ヴォーカルによるタイガースの代表的なナンバーですが、いきなり書きたいことが溢れ出てきてしまいました。
これはやはり不朽の名曲と言えるでしょうね。
「廃虚の鳩」、畏れながら伝授!
(真面目に感動したのでこの記事を書くわけですが、ごく一部、大変失礼なはしゃぎ方をします。ごめんなさい。)
この曲について書きたい!と考えたのは、大阪遠征の際に足を運んだシネ・ヌーヴォさんで上映された映画『華やかなる招待』を観た時でした。
『世界はボクらを待っている』同様、挿入曲それぞれがPVのような作りになっていて、どの曲がどんなシーンに溶け込んでいるか、というのが僕の一番注目していた点でしたが、印象に残ったのが「ジンジン・バンバン」、そしてこの「廃虚の鳩」でした。
その2曲共が、オリジナル音源とはガラリとアレンジを変えた斬新な別ヴァージョンだったことが、特に僕の琴線に触れたのです。
まず「ジンジン・バンバン」について少し。
この曲は、ひょんなことで鑑別所(ただの牢屋だけどね)を脱走した少年達の身代わりとなって収監されてしまったタイガースの面々が
「楽器がなきゃ音楽はできない」
と弱音を吐いたのを聞いた鑑別所の少年ボスが、タイガースに喝を入れ、
「見てろ!」
とばかりに壁に落書きしたラッパを吹いて音を出す、という愉快なシーンからバックに流れます。
つまりこの映画での「ジンジン・バンバン」は、鑑別所の少年達が管楽器でタイガースをサポートしている、という設定になっており、映画版のアレンジはそれを受けて、バリバリのホーン・セクション入りで演奏されるのです。
上手い!これは上手い演出だ!
その演出のために、「ジンジン・バンバン」は映画用に新たにアレンジし直されているワケです。ホーン・セクションの導入は、必然なんですよ。
ちなみに、少年ボスの
「楽器なんか無くても音楽はできる!」
という言葉は、物語の最終局面への重要な複線になっています。
僕はこれまで、まともに全編通して鑑賞もしていないのに、ちょっとこの映画をナメていましたね。いや~これは素晴らしい構成です。
さてそれでは、「廃虚の鳩」の方はどういう使われ方をしているか。
これがまた渋い。
ここで、『世界はボクらを待っている』での「花の首飾り」のシーンを思い出してみましょう。
「花の首飾り」が流れるのは幻想的な演奏シーンで、PVとしてはとても素晴らしいのですが、映画のストーリーとの関連性は薄く、「いきなりトッポが歌い出した」といった感じの唐突さは否めません。
しかし『華やかなる招待』では、トッポのヴォーカルで「廃虚の鳩」を演奏するシーンにも、しっかりしたストーリーの意味づけがあるのです。
ばあやに防音の部屋と楽器一式を用意してもらい、俄然ヤル気のタイガース。
いろいろ落ち込むことにも出くわしてきたけど、未来に向かって「さぁ、練習、練習!」とメンバーが張り切っている時、ただ一人、浮かない顔のジュリー。
実はジュリーは、上京しひょんなことで居候になっていたお家の娘主、瀬戸口久美子さんと、このところずっと会えていないことが気にかかっていました。
そう、いつの間にかジュリーは瀬戸口さんのことが好きになっていたのです!
次々に楽器を持ってスタンバイするメンバー。それでもジュリーはうつむいて物憂げなまま。
するとサリーが
「そっとしといてやれよ」
とジュリーを気遣います。
さすがリーダー!
サリーは、ジュリーの瀬戸口さんへの恋心を察知していたのです。
といった経緯で4人だけの練習が始まり、トッポのヴォーカル曲「廃虚の鳩」が演奏されるのですね。
これまたアレンジはオリジナルとは全然違い、よりサイケデリック色を強めています。ゴスペル風のオルガンが大きくフィーチャーされているのです。
印象的なのが、あのオルガンを弾くタローの手元をアップしたカット。
先に述べた「ジンジン・バンバン」のシーンで、ボスの真似をしてメンバーが思い思いに壁に楽器を落書きして音を鳴らし始めた時、タローが描いたのがキーボードでした。
つまり映画を観ている人は、タロー=鍵盤というシーンを先に体験しているので、ここでも何の違和感もなく演奏映像に入り込んでいけます。
もしもこの「廃虚の鳩」の映像が原曲と同じテイクで、タローがリコーダーを持っていたら・・・ちょっと映画的にはどうかと思うんですよね。
まぁそれはそれで、全然違った意味で絵的に面白くなったのかもしれませんが・・・。
僕は、映画の展開に合わせて労を惜しまず別テイクを用意する、というその志にとても感動しました。
2曲ともに、素晴らしいアレンジに生まれ変わっていると思います。
ただ、「廃虚の鳩」の原曲も、もちろん素晴らしいアレンジで、やはりこれはタイガースを代表する大名曲です。
ここからは、純粋にオリジナル音源のお話に移りますね。
まず。
平和の象徴。動物で言うならそれは「鳩」。
では、楽器で言うなら?
それは、リコーダーやオカリナといった、素朴な笛系の音色なのですね。「廃虚の鳩」でリコーダーが導入されていることは、アルバム『ヒューマン・ルネッサンス』のコンセプトを最も強調しているように思います。
僕は初めて「廃虚の鳩」をタイガースのシングルコレクションで聴いた際、時代は大きく離れますが、ポール・マッカートニーの「パイプス・オブ・ピース」のアレンジと似た感じのアプローチだな、と思ったものです。
「平和の象徴」と言っても、この曲の世界で鳩が舞うのは、「悪いことを覚え過ぎた」人間達の終末世界。
鳩は、そんな荒れた廃墟の風景中での、ひとすじの小さな希望として捉えられているように思われます。
その希望はやがて新たな世界を生み出し、物語は繰り返される(アルバム1曲目に回帰する)。
コンセプト・アルバム『ヒューマン・ルネッサンス』の大トリに配置された「廃墟の鳩」には、そんな役割があります。今風に言えば「オービタル・ピリオド」としての位置づけです。
後追いの僕は、この「廃虚の鳩」という楽曲がタイムリーなタイガースファンの方々にとって、『ヒューマン・ルネッサンス』の大トリというイメージが強いのか、それともトッポがリードヴォーカルのシングル盤、というイメージなのか分かりませんが、僕としてはベスト盤のCD(シングルコレクション)で聴くよりも、『ヒューマン・ルネッサンス』の流れで聴いた方がインパクトが強いように感じます。
「割れた地球」の直後だけに、歌詞の説得力が増しているのかもしれません。
トッポのヴォーカルは、ロングトーンの際の小刻みに震えるビフラートが大きな特徴であり武器です。その点、「花の首飾り」よりも「廃虚の鳩」の方が徹底されていて、この曲は最初からトッポのヴォーカルをイメージして作られたものなのかなぁ、と思ってしまいます。
穢れない世をこの地上に 再び創るために
C Bm C Bm Em Em7 F
この部分の最後の「に~♪」のロングトーンなどは、次の小節の頭まで朗々と伸ばされていて、独特のビフラートと合わせ、ジュリーとは異質の魅力を感じます。
オリジナル音源の演奏では、間奏のリコーダーは当然として、やはりイントロや転調導入部(ト長調からイ長調への転調)の美しいオーケストレーションが耳をを惹きますね。
また、イントロ部のサリーの波打つようなベースがいかにもフラワー・ムーヴメント直系のフレーズで、僕はとても好みです。
あと、細かいことですけど、左サイドのタンバリンのミックス、大きいですね~。小節の頭拍で「しゃこん!」とやるパターンはなかなか珍しい。
鳴らし方の雰囲気は、ビートルズの「悲しみはぶっとばせ」のようです。
現場の指示通りのタイミングでジュリーが叩いている、という感じのレコーディングだったのでしょうか。
3連符の箇所で若干「おっとっと!」となっているのが逆に味わい深いです。わざとかもしれません。
そして。
トッポは今、ギターの練習に集中しているそうです。
これは、トッポに近しいミュージシャンの方(不勉強にて知らないお名前でした)がネットにそういう書き込みをしているのを、カミさんがたまたま見つけて教えてくれたのですが、トッポがそこまでギターの練習をする理由とは・・・。
どうやら本当に、大きな夢が実現に向かっているようですね。
実際は独立した別個の話なのかもしれないけど、僕は今年のワイルドワンスとのコラボから継続する流れを感じずにはいられません。
ジュリーwithザ・ワイルドワンズの話が出た時、その次はタイガーズだ、と単純に思ってしまい、ブログのコメントにもそれっぽいことを書きました。
これは後追いファンの安易な発想かもしれません。でも、遅れてファンになって後から俯瞰してジュリーの歴史を見てみると、この人はどうしてここまで澱みない一貫した流れを自らの音楽人生に呼び込めるのか、驚愕することが多々あります。
何とか間に合った・・・それが僕の実感。
ジュリー祭りの直後だったら、自分がそこまでタイガースに思い入れを持てたかどうか、分かりません。おそらくジュリーのソロ作品の勉強だけで精一杯、急いで曲を覚える程度で臨んだことでしょう。
まだまだ勉強は足りていないのですが、どの曲が披露されるのかドキドキ!なくらいには成長したつもりです。
「廃虚の鳩」。これはもうセットリスト鉄板でしょうね。
そして、この曲の演奏でタローがキーボードを弾く姿、ジュリーがタンバリンを叩く姿すら、僕は今から目に浮かんでくるのです。
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