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2010年7月 1日 (木)

沢田研二 「遠い夏」

from『俺たち最高』、2006

Oretatisaikou

1. 涙のhappy new year
2. 俺たち最高
3. Caress
4. 勇気凛々
5. 桜舞う
6. weeping swallow
7. 遠い夏
8. now here man
9. Aurora
10. 未来地図

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つい先日、ワールドカップのパラグアイ戦がもうじき始まろうかという6月29日夜。
午後7時から9時くらいにかけてのことですが。
大阪でジュリワンが大盛り上がりを見せていたであろう同刻、僕の住む埼玉県南部地方を、メチャクチャ激しい雷雨が襲いました。

稲光が走った瞬間、暗闇に包まれている景色が一瞬だけ白昼のように明るくなり、間髪入れず
「どんがらがっしゃ~ん!」
と凄まじい轟音が続きます。
近くに住んでいる職場の同僚に昨日聞いた話だと、信号機に落雷して大変だったみたい。

でね。
実は僕はカミナリ大好き青年
(←コラコラ)なのでございます。
夏のカミナリ全開の夕立が特に好き。

蒸し暑い部屋の窓を開け放ち、降りしきる豪雨、轟く雷鳴を見つめているだけで身が洗われるようで、とても涼しく心地よい・・・それは、季節感などの趣に乏しい感性の僕が唯一「夏」をいとおかしく感じる瞬間であり、最も好きな風景なのです。

当然、その日も嬉々として窓を開け、ボ~ッと外を見つめていたのですが。

「ピカッ!」
「ギャ~!!」
「がらがらがっしゃん!」
「うぎゃ~!」

・・・と、なんか、情緒を破壊する擬音がすぐ近くで聞こえる・・・。

何のことはない。
カミさんはカミナリが大嫌いらしく、一刻も早く窓を閉めて欲しがっていた、という話でございました。
てか、そのビビリ具合に逆にビビるんですけど。

仕方ない。
カミナリ堪能をあきらめ、夕立の匂いのする「夏」の情緒を求めて僕が聴いたジュリー・ナンバーは・・・。

アルバム『俺たち最高』から。
「遠い夏」、伝授!

作詞・作曲ともにジュリー。
変な曲です。
僕は「変な曲フェチ」ですからこの手のナンバーは大歓迎なのですが、みなさまの間ではどんな評価なのでしょう、「遠い夏」って。

まず、これは一体何長調なんだ、というね。
ジュリーのことですから、ギターコードをつまびきながらの作曲作業だったのでしょう。
以前拙ブログコメント欄にて、井上堯之さんが「ジュリーは普通では考えられないようなコード進行の曲を作る」と発言していたことを教えて頂きましたが、それを言うなら「遠い夏」という曲は圧倒的です。

譜面なんて、ジュリーの頭には無い。
こういう場合はギターコードから楽曲を分析していくしかありません。

♪ 青空 白い雲 風そよぐ 木陰 ♪
    F        G         A            B

何と、1音ずつ和音がガッタンガッタンと上昇していくという、シンプル故に斬新過ぎるAメロ。
音階だと、「ファ・ラ・ド」→「ソ・シ・レ」→「ラ・ド#・ミ」→「シ・レ#・ファ#」ということになりますね。恐ろしいことに、この段階では誰にも調は特定できません。
曲の正体は、続くBメロで明らかになります。

♪ 遠い夏に還って行く 夕立から逃れていた ♪
    G        F            G            F             G

というワケで、まぁ強引に「遠い夏」を譜面表記するなら、一応シャープ1個のト長調で纏めたいところ。ただ、追加のシャープ、ナチュラルなどの記号はメチャクチャ多くなります。
そして息つく間もなく

♪ 白いもやに囲まれてく  囲  まれてく ♪
    A♭    B♭ E♭       G7 A♭B♭   C


音階だと「ラ♭・ド・ミ♭」→「シ♭・レ・ファ」→「ミ♭・ソ・シ♭」→「ソ・シ・レ・ファ」がG7まで。
「ラ♭・ド・ミ♭」→「シ♭・レ・ファ」→「ド・ミ・ソ」がCまで。この部分も1音ずつの上昇進行になっています。

このように、臨時フラット記号だらけになってしまうサビ部だけは、変ホ長調に転調させて譜面表記した方が無難かもしれません。
それにしてもこのサビ最後のCコードが、そのままAメロ冒頭のFコードのドミナントになってるのがニクいなぁ、ジュリー。
これでますますAメロがワケわからなくなるのです。

とらえどころのないメロディーの曲って、一度聞いただけでは覚えられませんよね。
ですから何度も聞く→クセになる→大好きになる・・・どうやら僕はそんなパターンで「遠い夏」に嵌ったようです。

無論、そんな変てこな曲に載せたジュリーの作詞にも惹かれています。
涼しい夏を感じることのできる素晴らしい詞です。ただこれは「田舎」を知っている人限定の良さかもしれませんね。
最近のジュリーの詞作は、カッコをつけずに自分のフレーズで勝負する、という点が大いに後追いの僕を惹きつけるのですが、「遠い夏」で言うと

♪ 大きな 月が出て 蛾が群れる 街灯 ♪

の「蛾」というフレーズ選択に「おおっ!」と思うのですよ。
「美しい詞を書こう」という姿勢なら普通避けるような言葉です。しかし、ジュリーは純粋に自分の幼少の夏の記憶を辿ったのでしょう。
ポツンと立った街灯。その頼りない光に群れる蛾を描いたこの部分で、僕はハッキリと夏の夜を駆ける沢田研二少年の姿が瞼に浮かびます。
作り手の情景が浮かぶ詞は、やっぱり素晴らしいのです。

アルバム『俺たち最高』は、初のベースレス作品ということで、発売当初は賛否あったでしょうね。
それはおそらく制作サイドの中でもあったと思います。
経緯はどうあれ、ジュリーの「LIVEで再現可能な音作り」というスタンスを男気で受け入れた白井さんのアレンジは、入魂です。
「遠い夏」では、ピアノの左手を強調したアレンジで、低音をカバーしていますね。左サイドに振られたアコースティック・ギターの熱演ストロークも見逃せません。

昨日澤會さんから届いた、最新のジュリー・インフォメーション。
音楽劇「探偵~哀しきチェイサー」のスケジュール、その裏面にCD販売の案内も掲載されておりまして、『俺たち最高』はまだ在庫があるようです。

『生きてたらシアワセ』はジュリー祭り直後の品切れで、今ではずいぶん中古値が上がっちゃいましたけど・・・。
『俺たち最高』は、そうなる前に買っておきましょうね。

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瀬戸口雅資のジュリー一撃伝授!」カテゴリの記事

コメント

DYさん、お邪魔します。私も、カミナリ大好き人間です。あれも生ならではの醍醐味がありますよね~。
で、「遠い夏」のことですが、私は、ジュリーの歌詞が大好きです。ジュリーは、この手の歌詞を歌っても、くさみがないので、素直に叙情的な世界に浸れます。曲については、そんなに深く考えたことはないのですが、個性的な楽曲だったのですね。伝授、ありがとうございます!

投稿: 74年生まれ | 2010年7月 1日 (木) 21時37分

私も雷大好き!
旦那も大好きで…二人して落雷にうっとりの変な夫婦です。

我が家は家を建てるときにアースを四隅にしているので雷が落ちても大丈夫!

在庫があるうちに買っておかなければ…
音源だけはあるんですが…
やっぱりCDアルバム…手元に欲しいわね…

投稿: まめっち | 2010年7月 1日 (木) 22時36分

はい、私も大好きです。カミナリもこの曲も。
私は荒川のド下町出身ですが、家に風呂が無く、お風呂屋さんに通ってました。
その途中の団地の街灯、夏はいっぱい蛾が群れてました。
田舎に行った時に見たやけに大きい月、この歌には懐かしい情景が詰まっていて聴いていると同じ景色を見ているような不思議な気分になります。
でもカミナリは好きでしたが夕立は嫌いでした。建て直す前の家は雨漏りがひどかったし、しょっちゅう停電してたので。

投稿: nekomodoki | 2010年7月 1日 (木) 23時12分

うううわっ、遠い夏
キタ━━━━━(゚Д゚;)━━━━!!!!!

困った、どうしようーー

コメント、どうかしないでくださいな

投稿: ぬこ・好き太郎 | 2010年7月 2日 (金) 01時02分

ああ、コメントしないでといったのは、
DYさまの遠い夏のコメントすんな、
ではなく、
自分の米へのDYさまのコメントです。

律儀にひとりひとりされるので、
すっげー申し訳ないと思ってます。
フツー、ブログでこんなこと、せんよ。

でも、きっとわからない人もいるかと
思うので、
まずは第一号、
「自分はいらんですよーーーー」(叫び)


いうときます

投稿: ぬこ | 2010年7月 2日 (金) 02時22分

74年生まれ様

ありがとうございます。
ジュリーがくさみのない作詞を確立したのはいつ頃からでしょうかね~。
エキゾの頃は、結構・・・。

「遠い夏」は素晴らしい詞です。
でも、最近この手の詞が無いですね・・・。

まめっち様

ご夫婦でカミナリ好きですか~。
夏は素敵な季節でしょうね。

「俺たち最高」のパッケージは実際手にとってみるととても面白いですよ。
あと、角がすごく尖っていて、固いです!

歌詞カードもカワイイですよ~。

nekomodoki様

最近は銭湯もめっきり減ってしまいましたが・・・。
僕も上京したての頃は風呂無しアパートでございました。

銭湯帰りの団地の街灯・・・目に浮かびますね~。

nekomodoki様仰るように、歌と同じ景色を思い起こさせてくれる楽曲って、そうそうありませんよね。
もちろん僕が「遠い夏」を推すのはその点ですよ~。

ぬこ様

はは…分かってますよ~。
ぬこ様、この曲はアカンでしょうね~。カックイ~・ジュリー専門ですからね~。
いやいやそういう曲もこれからどんどんやっていきますから。
吉田といえばQか建か?否、光を忘れるな、というネタで「in bed」とか書こうと思っていたり。

レスは、みなさまにお返ししないとどうにも落ち着かないのですよ・・・。
たとえば最近Qさまも、「レスできずすまんす」謝罪記事をあげてましたよね。
ああいう気持ち、よくわかるのです~。

投稿: DYNAMITE | 2010年7月 3日 (土) 14時11分

>レスは、みなさまにお返ししないとどうにも落ち着かないのです

ううっ、いい人だなぁーー~シクシク

投稿: ぬこ | 2010年7月 3日 (土) 18時06分

ぬこ様

いやいやお恥ずかしい・・・。
でも、僕が仲良くさせて頂いているブロガーさんは、みなさまそのようになさっていますよ。

僕は当初、本当に右も左もわからず・・・。
ジュリーについて書き始めて1ケ月以上経ってからですよ、ようやく「自分はジュリーのブログをやっているんだ」と自覚したのは・・・。

投稿: DYNAMITE | 2010年7月 3日 (土) 18時51分

DYさん、再びお邪魔します。
ジュリーは、職業作詞家ではないですからねぇ…。ジュリーに“降ってくる”のを待つしかないですね。でも、その分、素敵な歌詞を見つけたときのよろこびは、格別です。
で、板橋ライブまで、カウントダウンに突入しました。皆さまにちゃんとした報告ができるように、イメージトレーニングにはげむ今日このごろです。

投稿: 74年生まれ | 2010年7月 3日 (土) 19時53分

74年生まれ様

夏に発売の「涙色の空」・・・果たしてジュリーにどのような作詞ネタが降りてきたのでしょうね。
楽しみのひとつです。

そして、74年生まれ様と御一緒する板橋まで、あと2週間ですね!
74年生まれ様は初のジュリワンLIVEですか・・・これまでよく辛抱しましたねぇ・・・。

僕は1階最後列という、後方遠慮不要のお席を頂いています。
ノッケから立って、ジュリワン&鉄人バンドを盛り上げていきたいと思っています!

投稿: DYNAMITE | 2010年7月 3日 (土) 21時47分

この歌もそうですが、「無事でありますよう」とか、当たり前の日常を大切にできることが、一番幸せなんだよ、とさりげなくにささやいてくれる歌が大好きです。
明日は最後の(ホントか?)ジュリワンライブ松戸5列目カズラー神席です!
はじけてきまーす!!

投稿: nekomodoki | 2010年7月 3日 (土) 22時20分

nekomodoki様

あ、そうか~。
nekomodoki様、今日は松戸でしたね~。
いいないいな・・・。

僕も八王子がそうでしたが、初日落選振替=神席の構図にあてはまって良かったですね!
楽しんできてくださいませ~。

投稿: DYNAMITE | 2010年7月 4日 (日) 11時19分

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