沢田研二 「居酒屋」
from『LOVE~愛とは不幸をおそれないこと』、1978
1. TWO
2. 24時間のバラード
3. アメリカン・バラエティー
4. サンセット広場
5. 想い出をつくるために愛するのではない
6. 赤と黒
7. 雨だれの挽歌
8. 居酒屋
9. 薔薇の門
10. LOVE(抱きしめたい)
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いよいよ明日は川口です。
今回のワイルドワンズとのコラボ、最初にスケジュールを見た時には
「2回行けばいいかな」
くらいに考えたのですが・・・あの素晴らしいステージを目の当たりにしてしまいますとねぇ。
結局僕は5会場も参加、ということに。
色々、他のことで節約していかないとね。
川口リリアは、僕にとって最後の参加となるジュリワンLIVEということで、彼等のステージをしっかり目に焼き付けておきたい、と思っています。
メチャクチャ集中するでしょうし、残念ながら”川口の熱視線ギャル”をガン見する余裕はなさそうです。
しかし、個人的な見所でひとつだけどうしても見逃せないポイントがございます。
それは
果たしてYOKO君は、シャララで踊るのか?
彼は川口公演が最初で最後のジュリワンです。
修行僧のように数ヶ月間のネタバレ禁止を貫き、セットリストを知らずにに臨みますから(ワンズの曲だけ予習させた)、ジュリーの好きな”ビビッドな反応”を一手に請け負ってくれるはず。
そんな彼が・・・会場一体となった「渚でシャララ」を観て、どんな状況に陥るのか。
楽しみです~。
あ、YOKO君は175cm以上あるけど、たぶん立っちゃうと思います。
後ろのみなさま、どうか許してあげてくださいね。僕と違って、彼は仕事や自身のLIVEスケジュールの関係上、1年に1度コンサート参加できるかどうか、というジュリーファンなのです・・・。
さて一方、セットリストを知り尽くし今ツアーも完全にリピーターと化したDYNAMITE。
7月には長野にまで遠征の機会を得る、という僥倖にも恵まれました。
見知らぬ土地で夕食の場所に困りウロウロしていた僕とカミさんを(駅前の大きなお店は何処も混んでいたのです)、地元のジュリーファンであるどーも様が助けてくださいました。
わざわざ連絡をくださり、おち合った後案内してくださったのは、路地裏の和食系の小じんまりした居酒屋さん(お店の名前チェックするの忘れました)。
木造りのカウンターとテーブル。お客さんの年齢層は高め。
ここが、美味しかったのよ~!
ニラもやし炒めが一番旨いのは「世界の山ちゃん」だと今まで思ってたけど、上には上があるものですね。
しかもね。
一品一品のお値段はまぁ、東京の普通の居酒屋さんとそう変わりない。・・・でも、運ばれてきたお皿を見てビックリ。
超・山盛りです!
どの料理を注文しても、通常の倍くらいの量がありました~。
そんなシアワセな状況の中、初対面にも関わらず気さくにジュリーのお話をしてくださったどーも様・ご指定のナンバーを、今日はお題に採り上げたいと思います。
アルバム『LOVE~愛とは不幸をおそれないこと』から。
ズバリ「居酒屋」、伝授!
とにかく、『LOVE~愛とは不幸をおそれないこと』の話題が出たというのが、まず嬉しかったのですよ~。
僕がこれまでこのアルバムについて熱く語り合ったのは、YOKO君くらいのものでしたから。
「冬に聴くのが最高」
と、どーも様が仰ってくださっただけで、瞬時にアドレナリンが出ましたね。
で、喜び勇んで
よ~し、どの曲のお話で盛り上がったろか~!
と、僕が一瞬思案した隙に、どーも様がすかさず最初に挙げた収録曲は・・・。
「居酒屋」!
し、ししし渋い~!!
参りました。
僕の中ではまったく心構えのなかった意外な曲の登場に
「ほ~っ!居酒屋できますか~!!」
と素っ頓狂な声を上げてしまいましたがな。
思えば、YOKO君と初めて『LOVE~愛とは不幸をおそれないこと』について長電話した時、彼も”「居酒屋」が意外とイイぞ”と言ってたっけ・・・。
僕はそれに対して
「好きだけど、あのラインナップの中では印象が薄いな」
みたいな返事をしたような。
しかし、実際に『LOVE~愛とは不幸をおそれないこと』・絶賛トークを交わしたお二人までが、揃って「居酒屋」を推すとなると・・・こりゃあ考えを改め、もう一度気合を入れて聴き直してみるしかありません!
ということで、帰京してから聴きましたよ~。
気温35度超えの真夏日に、このアルバムを。
こんなに「冬の冷たさ」をダイレクトに感じる名盤は他に無い。聴けば確実に涼しくなるはず・・・という考えは甘く、かえって汗ダクになったりして。
やっぱり凄まじい作品です。
ジュリーの重厚かつ美しいヴォーカル、大野さんの流麗でツボを押しまくるメロディー、船山さんの的確なアレンジ。
それらすべてを凌駕してしまうような、阿久さんの”超絶”としか言いようのないフレーズ乱舞。
そして8曲目「居酒屋」。
ひえ~!
だ、大名曲ではないですか~!!
見逃してたなぁ。
世の中すごく便利になって、新しいスタイルでの音源の楽しみ方も色々あるけれど、iPodを始めとするシャッフルの魅力に慣れてしまった弊害ってあるんですね。いや、シャッフルって凄く楽しいんですけどね。
やっぱり、じっくり歌詞カード読みながらアルバムを通して聴くというのは、大切なことなんだなぁ・・・。
『LOVE~愛とは不幸をおそれないこと』収録曲すべてに言えることですが、阿久さんのこの歌詞に、よくぞこの曲がついてるなぁ、という感動。
大野さんという人は、王道のマイナーコード進行に抑揚とエッジの効いた美しいメロディーを載せる天才なのだ、と再確認いたしました。
それにしてもこのアルバムの阿久さんの詞は、改めて聴いても凄まじいです。
前作『今度は、華麗な宴にどうぞ』で、「探偵~哀しきチェイサー」「スピリット」など、壮大なスケールの物語創作というスタイルを確立させた阿久さん。
本作『LOVE~愛とは不幸をおそれないこと』では、とにかく刺激的なフレーズ(固有名詞含む)を歌詞の隅々にまで散りばめ、良い意味で”やり過ぎ”ている、ということは、「雨だれの挽歌」の記事にて以前語らせて頂きました。
「居酒屋」も例外ではありません。
♪ タータンチェックのジャケットの老人は
Dm Gm
昔、「カサノバ」と呼ばれていたという ♪
Dm C Dm
出だしからして、非日常。
「タータンチェックの♪」というジュリーのヴォーカルを追って、リスナーは描写通りの老人の姿をなんとなく頭に描きますが、彼が「昔カサノバと呼ばれていた」とか言われると、現実問題、想像力が追いつかなくなるワケです(爆)。
その瞬間「凄ぇな阿久さん・・・」という苦笑に見舞われた人は多いはず。これが決してマイナスの苦笑ではなく、圧倒された証し=賛辞であるというのが、アルバム全体を通して大きな魅力ではないか、と僕は思っています。
そんな荒唐無稽なイメージの怪しげな老人が、たまたま隣席になった若いカップルに声をかけながらくだを巻いている、というのが僕のように平凡な一般人の想像力の限界。阿久さんの目は、まったく違う世界を見ているのかもしれません。
ただ、シチュエーションとしてこのパターンは、実生活でもあり得ますね。
20代の頃、バンド仲間の佐藤哲也君と武蔵関の焼き鳥屋さんに入った時、カウンター席の隣で飲んだくれていたオジサンに話しかけられたことがあります。
僕等は二人ともギターケースを抱えていましたから、これを見て
「お前達バンドやってんのか。俺は昔、フォークギター弾いて店で歌ってたことがあるんだよ」
とか。
最初は、オッサンが適当な話を作って若い奴の気を引こうとしてるのかな、と思い、そっけなく返事してたのね。
そうしたらオジサンはそんな僕等の雰囲気を察したのか、
「嘘じゃねぇよ。触ってみな」
と、自分の指先をさしだしたのです。
針を刺したら「プスッ」と行ってしまう、ギタリスト特有のカチカチの皮膚に覆われた指を触った僕等二人は、急遽直立姿勢になったという・・・。
本当に、ギターの先輩だったワケです。
まぁ「一杯奢れよ」とは言われなかったけど、カサノバ老人並みの人生指南は受けましたね・・・。
おっと閑休話題。
フレーズの突飛さという点で言いますと、「居酒屋」で最も強力なのは
「バラライカ」
ですな~。
ザ・ジェノバ「さよならサハリン」の歌詞にも登場するこの”バラライカ”という楽器。日本語の歌詞の中に混ざると、何故こうも強烈な語感を主張してしまうのでしょうか。
阿久さんのそういった嗅覚は、「赤と黒」の”エトランゼ”や、「想い出をつくるために愛するのではない」の”イーグルス”にも表れていると思いますが・・・「待てよ」と、ここでちょっと考え直してみます。
「バラライカ」「エトランゼ」「イーグルス」・・・他にも「トラボルタ」とか「メトロ」とか「スーパーマン」とかあるけど・・・突飛とは言え、そこまで(笑うほど)おかしな単語か~?
これ、実は大野さんの付けたメロディーが、フレーズの突飛さを増幅しているんじゃなかろうか。
つい先日、大野さんの作曲は詞先であるという事を、先輩のコメントで教わったばかりです。
「やはり」と納得しましたね。
例えば、阿久さんの追悼番組で色々なエピソードを披露してくださった都倉さんの場合は、お話を伺っているとどうも曲先らしくて。
刺激的で突飛なフレーズが多用されるのは、他アーティストの阿久さん作品も同様かと思います。でも、大野さんとのコンビ(=ジュリーナンバー)での自由度の高さは突出しているように感じるのです。
それは、どんなハチャメチャな詞を書いてもキッチリとジュリー・ナンバーの楽曲にふさわしいメロディーをつけてくる大野さんに挑むような形で、阿久さんがさらに破天荒な詞を書く、というスタンス(=大野さんとのレベルの高いライバル関係、信頼関係)への進化。『LOVE~愛とは不幸をおそれないこと』でのソングライティングは、そんな状況下で行われたのではないでしょうか。
大野さんが、阿久さんの破天荒に自らも破天荒で切り返しているように思われてなりません。
さぁ、仕上げにやはりジュリーのヴォーカルに触れなければなりませんね。
ここで僕が思い出すのは、こちらも以前J先輩にコメントにて教えて頂いたジュリーの言葉です。
歌われている年齢と、自分の実年齢に差があって・・・
という、歌の世界にに入り込むことからヴォーカルに対峙するジュリーらしい発言。無論この場合、歌われている年齢の方が上、ということでしょう。
とすればその意味で、最も年齢差が開いているナンバーが「居酒屋」だったと言えないでしょうか。
何と言ってもここでの歌い手は、「色男のなれの果て」=カサノバ老人ですからね。
しかし、そんな状況でマジックがかかるのがジュリーの凄いところです。
「純白の夜明け」の記事でアルバム『JULIEⅡ』のヴォーカルについて語ったことが、ここでも起きているのです。
ある意味「歌わされている」状況。そこで、ジュリー本人も、スタッフも、「歌の神」の降臨に気づかないままリリースされたアルバム(いや、結局「LOVE~抱きしめたい」で最優秀歌唱賞とか取ってるんですけど、僕が感じるのはいわゆる「上手い」というのとは別の意味です)として、僕は『LOVE~愛とは不幸をおそれないこと』に強く惹かれています。
♪ いい女に巡り合うってのは
B♭ Am7
めったに ないもんだぜ ♪
Gm7 C7 F
この「めったにないもんだぜ♪」の箇所など、ジュリー史上初のヴォーカル・ニュアンスなのではないでしょうか。
そんなジュリーも、もう62歳。
今だったら、カサノバ老人の言葉をどのように解釈して歌うのでしょうか。
秋のソロで「居酒屋」を歌うことはまず無いでしょうが、「居酒屋」のシチュエーションに近い、62歳のジュリーの心情・・・ひとつの答えを導いてくれそうな曲が、必ず歌われることは、確定しています。
「若者よ」。
どんな曲なんでしょうね~。
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