沢田研二 「今夜の雨はいい奴」
from『BAD TUNING』、1980
1. 恋のバッド・チューニング
2. どうして朝
3. WOMAN WOMAN
4. PRETENDER
5. マダムⅩ
6. アンドロメダ
7. 世紀末ブルース
8. みんないい娘
9. お月さん万才!
10. 今夜の雨はいい奴
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おもに関東地方を中心に猛威をふるったジュリワン・ツアー初日の抽選騒動もどうやらおさまり、自分の気持ちも完全にシフトさせました。
とにかく、秘かにワンズのメンバーの中で最大のキーマンとして期待していた島さんの一挙手一投足をガン見できそうなお席にて、”炎の8王子(と、グレース姫)”レポを書くことになりそうです。
頑張ります。
それにしても、この間新宿高島屋で偶然お会いして「じゃ、次はジュリワン渋谷初日にお会いしましょ~!」と言って別れたお三方全員と、見事八王子で再会決定のようですわ。やっぱり、スゴイ競争率だったのですね・・・。
さぁ、拙ブログではその八王子へ向けまして、”全然当たらないセットリスト予想”シリーズを続けてまいりましょう!
今日はですね。
アコースティック・ギター或いはオーケシトレーションに頼らずとも、普通のロック・バンドの楽器編成だけで、こんなにもしっとりとしたバラードが演奏表現できるのだ!
という話をしようと思います。
加瀬さん作曲の作品に、格好のナンバーがあるのです。
「沢田研二はロックをやっているんだ!」と万人に対して断言し得る、最初のジュリーのオリジナルアルバム『BAD TUNING』。
お題はその大トリを飾る、ブルージーながらも何故か明るさを感じさせる瑞々しいバラード・ナンバーです。
「今夜の雨はいい奴」、伝授!
先日、今回のお題について”元サヤバラード”って予告をしたんですけど、この「今夜の雨はいい奴」をそういう風に捉えているのは、僕とYOKO君、他おそらく数名という超・少数派でしょう。
普通に聴けば、別れた女性を思い出しながら深夜にくだを巻いている情けない男の歌。
でも僕は、この歌にまったく悲壮感を見出せない。
キラキラと輝かしい”明日”すら見えちゃうんだなぁ・・・。これが、ロック的なアレンジのマジックだと思うんだ。
加瀬さんの作曲作品って、実はいわゆる楽曲構成ジャンルとしての”バラード”が数えるほどしか無いのです。
ここで言う”バラード”というのは、ゆったりしっとりと、スローに聴かせる類のヤツね。
例えば「あなたへの愛」などはバラードと言えなくもないのですが、テンポはミディアムで、僕の中では”キャッチーなポップチューン”という印象なのですね。
きっと加瀬さんは基本的にウキウキするような曲が好きで、得意なのでしょう。そんな中「今夜の雨はいい奴」などのバラードナンバーは、「刀を抜いた」という感じで逆に加瀬さんの魅力が光ります。
「今夜の雨はいい奴」は歌詞の表面だけなぞると、恋人と「激しい諍い」の末に別れてしまい、酒場で飲んだくれている孤独な男の物語です。
♪ おまえの思い出が入ってくる ♪
C Em7 Dm7 C C7
とか
♪ もう一度この手で抱きしめたい ♪
F Em Am Fm
など、別れた女性を思う切実な描写も出てきます。
しかし、僕には主人公とその恋人(または奥さま)がこのまま音信不通となり、不幸な幕切れを迎えたようには、聴こえない。これが重要、アレンジの為せる技!
この曲の楽器編成を、ステレオ位置関係から挙げていきますと
(LEFT to RIGHT)
エレキギター(2nd)
エレキギター(1st)
ドラムス
ベース
シンセサイザー(organ)
シンセサイザー(electric piano)
この6つ。
アコースティック・ギターやオーケストレーションに頼らないバラード・アレンジは、60年代後半から70年代前半のアメリカン・ロックの特徴でもあります。オマージュはザ・バンドあたりにあるのかなぁ、と考えますが、僕がこの「今夜の雨はいい奴」を初めて聴いて想起したのは、大好きなロッカーであるジョン・ハイアットの「FEELS LIKE RAIN」という曲でした。楽器編成がほぼ同じバラードなんです。
自分の中にささやかながら築き上げてきた洋楽エッセンスとピッタリ重ね合わさった時のジュリー・ナンバーというのは、僕にとって大きな破壊力を持ちますね~。
「今夜の雨はいい奴」では、上記6つの楽器パートが巧みに入れ替わり立ち替わり、計算され尽くした演奏を見せます。
編曲は後藤次利さん。さすがです!
1番では最右サイドのエレクトリック・ピアノの音色が大活躍しますが、2番ではス~ッと後ろに退いて地味な演奏に徹し、代わりに叙情的なオルガンがやや右寄りに忽然と登場します。
印象的な「ド~レミレドファ~♪」というリフを奏でるのは中央のファーストリード・ギターであるのに対し、歌メロの隙間を縫うようにして、バッキングと単音を使い分ける最左サイドのセカンド・リー・ド・ギターも素晴らしい。
ジュリーwithザ・ワイルドワンズのLIVEで万が一「今夜の雨はいい奴」が聴けるのであれば、ギターについてはファーストリードを下山さん、セカンドリードを柴山さん、という配置でお願いしたいなぁ。
あと、泰輝さんは間違いなくピアノでしょうが、この曲のピアノはさほど難易度が高くないし、是非とも泰輝さんの”神の左手”によるオルガン・パートを加えて頂くことも期待した~い!
そして、何と言ってもこの曲のドラムスはGRACE姉さん向きです。
こういったブルース・ロックっぽいアレンジのバラードの場合、ドラマーは通常のスティックの代わりに「ブラシ」という特殊な武器を使用します。
一番の効果は、アタックがやわらかくなること。
クラッシュシンバルが荘厳な響きになったり、ハイハットではなくスネアドラムの縁に近い部分を使って8分音符や16分音符の刻みを入れたり。
チューニングが緩めの演奏が多いGRACE姉さんにはピッタリのバラードだと思うのですが・・・。
・・・そんなワケで、徹底的にロックなアプローチのこのナンバー、おかげで僕は哀しいイメージをまったく持てないのですが、岡田冨美子さんの詞も相変わらずのカッコ良さでございます。
何度も登場する「今夜の雨はいい奴♪」というフレーズが、最後の最後
♪ 今夜の雨は・・・mmm~mmm~ ♪
Em7 Dm7 G7 C F C F
というハミングに取って代わります。ジュリーのヴォーカル、これが最高にシビれるのですが、この部分は岡田さん作詞の段階から言葉を途切れさせていたのではないかと思うのです。
夜明けに雨が止んだのか。思い人が迎えにやってきたのか。
そんな明るさを象徴しているような気がします。”元サヤ”の予感、バリバリです。
この「今夜の雨は・・・」という絶句をして”嗚咽”と受け止める方もいらっしゃるかもしれませんが、僕はそうではないように思うんですよね・・・。だって、ジュリーのヴォーカルに悲壮感が無い。むしろ温かいものが伝わってくるんですよ。
ちょっと、他のジュリー・ナンバーと比較してみましょうか。
例えば、歌詞の表面だけだと完全な「元サヤバラード」とも言える、これまた加瀬さん作曲の「二人の肖像」という楽曲があります(作詞は安井かずみさん)。
アルバム『JULIEⅥ~ある青春』の収録曲ですね。
こちらは、”何回揉めてもやっぱり君が好きだ”という内容なのですが、キーは短調で、ジュリーも悲しげに歌うものですから、「最終的には別れてしまう二人なのかなぁ」という気がしてしまうのです。
これはこれで名曲です(いつか記事を書きますね)けど、明るい気持ちにはなりにくくて。
やっぱり、メロディーやアレンジから受ける印象は大きいです。しかもジュリーは、バックの演奏に敏感なヴォーカリストですからね。
じめじめしていない爽やかなバラードもまた、ジュリーの真骨頂とも言えるわけですが・・・「今夜の雨はいい奴」のヴォーカルは本当に素晴らしい。
美しく深い味わいに満ち、心が洗われる。悲しみや躓きが四散していく・・・そんな歌声だと思うのです。
このアルバムにはもう1曲、「PRETENDER」というバラード(こちらも大名曲)も収録されていますが、いずれも「ロック」としか言いようのないアレンジ・演奏が徹底されているのが特徴です。
「ロンリー・ウルフ」でジュリーがチャレンジした”あくまでもロックなアプローチの演奏とメロディー・アレンジによるバラード”という萌芽は、『BAD TUNING』収録のこの2曲に直結して受け継がれ、その後永遠にジュリーの揺るぎない魅力として確立した、というのが僕の考え方なのです。
大げさに言葉を連ねているようですが、仕方ありません。ジュリーのこういう曲が大好きなものですから。
まぁ・・・実際にLIVEで聴ける可能性は少なそうですけどね・・・。
さてさて、次回記事ですが。
もう残すところ数週間となり、この機に是非書きたい、と決めていた曲を順番に片付けていかねばなりません。
次のお題はもう決まっていて、アルバム『G. S. I LOVE YOU』から。
ジュリワンLIVEに向けて、何人かのファンのみなさまの期待大だという事が判明いたしましたあの曲を行っときます!
「サティスファクション」だけじゃなくて、色々な洋楽エッセンスが詰まってるのよ~、という話をしますね。
とにかく!
僕は八王子の盛り上げに全力を尽くします!
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コメント
こんにちわ!沢田さんのコンサートチケット騒動…できれば、全国までひろがってほしかったですね。福岡には、沢田さんおいでにならないのです。私も、沢田さんのバラード好きです。朝日新聞に、”いつか、バラードしか歌えなくなる日がくる”とありましたが、そうなっても、ファンでいますよ。ソロのコンサートも楽しみにしています。
投稿: hiromi | 2010年5月 9日 (日) 11時49分
DYさん、お邪魔します。
今日の伝授はいうことなしです。私もこの曲の終盤部が大好きです!ジュリワンライブで歌うことは、まずないでしょうが(爆)いつかソロライブで歌ってほしいです。
投稿: 74年生まれ | 2010年5月 9日 (日) 19時15分
hiromi様
> いつか、バラードしか歌えなくなる日が来る
そういう日はきっと来るのでしょう。
逆に言えばジュリーは
「そうなっても自分はステージで歌うことをやめない」
と宣言してくれているわけで、ファンにとっては心強い言葉だと思います。
でも、ジュリーはまだまだロックするおつもりのようですから…。
その意味でも、ソロツアーは本当に楽しみですね!
☆
74年生まれ様
イイですよね~。この曲のヴォーカル。
ニュアンスが確立していると言いますか、あぁ、ロック・ヴォーカリストが歌うバラードって、こうだよなぁ…と初めて聴いた時にはエラく感動したものです。
しかも、暖かいんですよねぇ。冷たい雨ではありません。「いい奴」な雨ですねぇ~。
やはりジュリワンでは無理ですか…。
いつか聴きたい1曲ですね。
投稿: DYNAMITE | 2010年5月 9日 (日) 22時00分
大好きな曲です。
そういえば加瀬さんの作曲でしたね。(しょっちゅう携帯プレーヤーで聴いてるわりに作曲者を気にしてなかった。ゴメンナサイ、加瀬さん)私はジュリワンでやったら雰囲気が変わっていいんじゃないかと思うんですが。
チケットのこと、澤会に問い合わせたら、やっぱり開催の3週間前くらい前になるとのことでした。
申し込んであることだけは確認していただいたので、おとなしく第二希望の松戸の分を待つことにいたします。
(でも、7月…トホホ)
せめてティアラは希望通りゲットしたいです。
投稿: nekomodoki | 2010年5月10日 (月) 16時08分
私も この歌大好きです
こうゆうメロディーや、こうゆう歌詞をうたうジュリーは めちゃカッコイイと思います。「ロックヴォーカリストが歌うバラード」なんですね~~
この曲は ジメジメしていないし、ワンズといっしょに演っても、そんなに違和感はないと思うのですが。。。。。
是非是非 聴きたいです!!!
で、渋谷 当たりました。それも もうしわけないような お松な席です。
ジュリー人生で初めてです。
有頂天になっていたら、ハッと気づきました。シャララの振り付け 何にもしていません。いまから間に合うかしら.......
投稿: keikoj | 2010年5月10日 (月) 21時07分
nekomodoki様
そうでしたか…やはり第2希望がまだまだ先の日程の場合、チケット到着も遅れるのですね…。
今回、nekomodoki様と同じ状況にとまどっていらっしゃる方が多いようですが…。
でも、悪いことばかりではありませんよ。
前回の歌門来福、そして今回と続いて解ったことですが、澤会さんは抽選に落選した方々には、第2希望会場のお席を優遇なさっているのではないか、と思うのです。
つまり、nekomodoki様の松戸はかなり良いお席かもしれないということです。
そうなると良いですね…。
☆
keikoj様
そうなんです!
この曲はバラードながら全然じめじめしていないので、ワンズとのコラボでも違和感が無いように僕も思うのですよ~。
でも、さすがにここまでマニアックな選曲は無いでしょうかね…。
良いお席で良かったですね~!
シャララの振りは、あまり完璧過ぎても良くないかも、と思うのです。
お客さんが加瀬さんより上手かったら、シャレにならないんじゃないかと…。
しょっちゅう迷いながらも、ステージの5人にリードされて何とかこなす…そのくらいがちょうどいいのかな、と思っていますよ!
投稿: DYNAMITE | 2010年5月10日 (月) 21時37分
小学生からジュリーを聞いてた当時、伯父から「ジュリーのバラードは他の歌手に比べサラっとしてて、うまい」と言われたのを思い出しました。最近の感情移入が入った、時に涙声になる歌唱は当時のイメージとは変わりましたね。
投稿: クリングル | 2010年5月11日 (火) 00時42分
DY様こんにちは。
ドンピシャのところで偶然お会いして、「次は渋谷でお会いしましょう~」と別れたのに、八王子に集合することになりました中のひとりです。
カセラ―松席で、DYさんの言うように
シャララダンスは軽く、ゆるく踊りたい
と思っています。(カセサンのように、ジュリー見ながらね)
それより、シ―シーシ―の手拍子って難しくないですか?
投稿: ミカン@ | 2010年5月11日 (火) 13時59分
クリングル様
うわ~、伯父さま。
ファンではないのに、深い、深いです。
本質を見ていらっしゃいますね。
「ロンリー・ウルフ」あたりを指してのご発言だったのでしょうか…。
最近の慟哭系のヴォーカルは確かに以前とはスタイルが異なりますが、押し付けがましさが無いのが良いと思うのです。
よりパーソナルな感じはしますけどね~。
☆
ミカン@様
八王子盛り上げ隊長は燃えますよ~。
カセラー席で思いついたのですが、加瀬さんの左にはさらに鳥塚さんがいますよね。
と言う事は、ジュリーは通常のセンターよりもやや左に陣取るのでしょうか…。
そうすると僕はかなり近くなりますが、ミカン様達からは離れていってしまいますね。
でもきっと、加瀬さんが「コッチ恋恋」と呼んでくれるでしょう。
投稿: DYNAMITE | 2010年5月11日 (火) 21時20分