沢田研二 「テーブル4の女」
from『S/T/R/I/P/P/E/R』、1981
1. オーバチュア
2. ス・ト・リ・ッ・パ・-
3. BYE BYE HANDY LOVE
4. そばにいたい
5. DIRTY WORK
6. バイバイジェラシー
7. 想い出のアニー・ローリー
8. FOXY FOX
9. テーブル4の女
10. 渚のラブレター
11. テレフォン
12. シャワー
13. バタフライ・ムーン
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一昨日はジュリーのトークショーでした。
参加された先輩方のブログを拝見したり、情報を伺ったりしたところによりますと、4曲入りのニューシングルのレコーディングも無事終わったようですね。
収録曲すべてジュリー(作詞)&鉄人バンド(作曲)のペンによる作品だそうです。
ワイルドワンズとのコラボで”バンドの絆”を味わったジュリーが、それを糧とし、本来のスタイルで再び4人のプロフェッショナルと共に動き出しました。
ソロツアー共々、楽しみで仕方がありません。
でも、まずはジュリーwithザ・ワイルドワンズのツアー『僕達ほとんどいいんじゃあない』。
いよいよ初日まで1ケ月と迫ってまいりまして、拙ブログでは、もうしばらく加瀬さん作曲のナンバーに浸っていきたいと思います。
加瀬さんは、タイガースの頃からジュリーのそばにいて、公私ともに仲が良かっただけでなく、「シー・シー・シー」なんてイカした曲を提供したり。
その後もずっと、ジュリーのためにカッコイイ曲をたくさん書いたお人なのですよねぇ。
ワイルドワンズというバンドをほぼ名前しか知らない状態でジュリーに堕ちた僕は、今さらながら感動するわけなのですが・・・。
あらためて、加瀬さん作曲のジュリーナンバーを頭の中で整理してみますと、驚かされるばかりです。
70年代、80年代、それぞれにジュリーの色というものがあり、その中でもさらに年代区分できるジュリー楽曲の特色。
目まぐるしく色を変えていくジュリー。そのいずれの時代にも、常に加瀬さんの名曲があり、それがそのまま各時代ごとのジュリー・ナンバーの核となっている・・・すごい作曲家、すごいジュリー愛なのですよねぇ、加瀬さん・・・。
ジュリーが後に、「忙しい時期に、僕にすべてを捧げてくれた」と発言しているのは、こういうことを指しての言葉なのでしょう。
加瀬さんの生み出した隠れたジュリー名曲群を、セットリスト予想として語れることは、まず書いている僕自身が大変な幸せなのですね。
でも、当てには、行っておりませぬ。
そんな調子ですが、本日もよろしくおつきあいくださいませ~。
シリーズ第2回は、ロッケン・ジュリーなお題です。
絢爛なる80年代ジュリー。その象徴のような完全無欠のロック・アルバム、大名盤『S/T/R/I/P/P/E/R』から。
ジュリーにならストーカーされたいですか~?
という壮大なテーマのもとに(おいおい)、「テーブル4の女」、伝授!
この手の歌詞がカッコイイとされたのも、80年代の大きな特徴のひとつですねぇ。
今では誰も真面目に取り組まないようなシチュエーションです。でも、それがカッコ良かった時代。
そう、これは現代で言うストーカー行為の歌です。
いきつけの喫茶店(と言ってもちょっといかがわしいお店が舞台なのかもしれませんが)の女の子に熱を上げるも、なかなか手が出せない男の物語・・・でしょうか。
三浦徳子さんの手にかかると、ウェイトレスが注文とりに来るだけでも大変なドラマに化けるんですよね~。
以前「どうして朝」(こちらの作詞は岡田冨美子さん)の記事にも書いたことがありますが、ジュリーがいわゆる”情けない男”の歌を歌うと、何故か一転してメチャクチャにカッコ良く聴こえてしまいます。
ジュリー・マジックおそるべし!
では実際あの時代に、この歌詞のような恋愛手管がまかり通っていたのか、と申しますと・・・現実、そのような事は普通に起こっていたのですね。
例えば、佐野元春さんに心酔していた高校生時代の友人が
「モトハルはいきつけの喫茶店のウェイトレスとかと結婚しそうな気がする」
と真顔で言っていたことをふと思い出しましたが、当時それは決して安易なイメージではなく、”オシャレ”な発想だったのです。本当だよ~。
僕がアルバイトしていた喫茶店でも、似たような事はありました。
同僚のウェイトレスに熱を上げてアピールしてくるお客さんがいたのですが、変な感じは受けなかったですよ。日常の中の普通の景色でしたね。
え?
いや、僕は20代前半まで、上井草って駅前の喫茶店でウェイターやってたんですが・・・それが何か?
想像できない?
スパゲッティーとかサンドウィッチとか、作ってたのよ。
レタスを「ぱ~ん!」なんて言わせて掌で拡げたりしてね。若かった・・・。
話がそれますが、少しだけ思い出話を。
そのお店のマスターが音楽好きで、プロのハープ奏者を招いてお店でコンサートを開催したりしてました。ドリンク付で。思いのほかお客さんが押しかけてきて、僕らウェイターに「すまん、お前ら立って観てくれ」とか言ってましたっけ・・・。
現在、インド古典音楽のタブラ、声楽師範として活躍中の友人、佐藤哲也君と出会ったのも、この喫茶店でウェイターのアルバイト同士だったからです。
彼に誘われて、荻窪のライブハウスにギター弾き語りスタイルで出演していなかったら、僕はYOKO君とも出会っていない。すなわち、ジュリー祭りにも行っていない、という次第で。
「運命に偶然はないから♪」とジュリーも歌っていますが、しみじみと青春を思い出してしまいました。
その喫茶店、地元ではかなり人気のあったお店でしたが、今はもう閉店となっているようです。
で、僕の青春の思い出から強引に話を繋げますが、喫茶店って、店内のテーブルに通し番号をふるんですよ。注文を頂いたら、伝票に品名とテーブル番号を書き込むんです。
お店には何人もの常連さんがいます。そういったお客さん達は(混雑時は別にして)、来店時間や座るテーブルがほぼ決まっているのです。
顔馴染みになってきますと、そのお客さんのために、まだ片付いていない所定のテーブルをササッとキレイに準備して「こちらへどうぞ」、と。これもサービスの一環なのですね。
そこでお題のこの曲ですが、「テーブル4の女」とタイトルでは言うものの、実際テーブルに座っているのは主人公の方です。
♪ 今日もテーブル4に座るぜ 窓際の席 ♪
4番テーブルが、指定席なのですね。
ウェイトレスがやってきて、一応「何にしますか?」と尋ねつつも、心中では主人公のご注文は先刻承知。それがいわゆる、常連さんなのですから。
ところが
「本当に注文したいのは、キミだ!」
というのが、この歌のテーマなんだなぁ(爆)。
みなさまお気づきでしょうが、作詞の三浦徳子さんがうまいのは、主人公の指定席を4番テーブルに決めたことです。
”3度目の正直”に続く番号というのもありますし、何と言ってもサビの
♪ It's ONE(ワン!)、It's TWO(トゥー!)
It's THREE~!♪
とのフレーズの連続性。
お目当ての彼女が主人公のテーブルに接近してくる感じがしますね~。
こんなふうに、何気ない動作を大きく感情的に膨張させて捉えるセンスは、この時期の三浦さん作詞ジュリー・ナンバーの必殺技です。以前記事に書いた「月曜日までお元気で」などは、まさしくそうですね。
あ、歌詞の太字表記してある部分は、この先万が一「テーブル4の女」をLIVEで聴く機会があったら是非シャウト参加したい、と僕が勝手に考えている箇所です。
「ONE」「TWO」が追っかけで、「THREE」は同時。指で数字を作って、拳振り上げようと思ってます。
タイムリーでこの曲をLIVE体験なさっている先輩方、当時はいかがでしたか?
では、曲構成について。
一見、高速エイトビートのように思えますが、じっくり聴き込んでみますと、エキゾチックスの演奏が2・4拍目の裏拍にアクセントをつけていることが分かります。
アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』は、正統派のリズムにのっとったナンバーが多い前作『G. S. I LOVE YOU』とは打って変わり、素直なエイトビートの楽曲が収録されていません(3連符、或いは16ビートを駆使した曲が目立ちます)。この事ひとつとっても、『S/T/R/I/P/P/E/R』が単なるアイドル歌手の作品でないことは明白と言えます。
技術が進化し、演奏にある意味”ごまかし”が通用するようになったこの時代。
それに反発するように、剥き出しの音でバンド一体となったグルーヴを追求するムーブメントは海外でも起こっていました。
エリヴィス・コステロ&ジ・アトラクションズ、XTCの初期作品などがそうです。
エキゾチックス然り。
これらのバンドに共通するのは、優れたキーボード奏者がサウンドをリードしていることかと思います。
「テーブル4の女」は非常にシンプルなオルガン系の音色が効いていますが、ほんの少しだけチューニングがずれていることがお分かりでしょうか。
70年代後半から80年代初頭に、ささやかながら流行したアフターパンク・ムーブメントの中、海外でもこのようなホンキー・トンク調のオルガンが多用されていました。
アフターパンクの流れから生まれたネオ・モッズや初期ニューウェーヴの名だたる面々の中で、ホンキー・トンク・キーボードの一番の使い手だと僕が思うのは、マートン・パーカスという、キンクス系ネオ・モッズ・バンドに在籍したミック・タルボットという人物です。
ミックはその後、ザ・ジャムのリーダーだったポール・ウェラーと結びつき、スタイル・カウンシルを結成して格調高いピアノなど弾いてしまうようになりますが、マートン・パーカス時代の酔いどれキーボードこそ、彼の本質と見ます。
『PLEASURE PLEASURE』で初めて「BAMBINO EXCUSE」を聴いた時、僕はすぐに「テーブル4の女」を思い出しました。少し考えて、それがキーボード音色の使い方から受ける印象であることに気づき、記事でもそのような事を書きました。
キーボードでは、特定のオルガンパッチは最初から若干低目のチューニングで内臓されています。泰輝さんのセンスが、その音を求めたのですね。柴山さん、懐かしく思ったりは、しなかったかなぁ・・・。
もちろんキーボード以外の各楽器の演奏も素晴らしい。特にこの頃の吉田建さんのベースは、どの曲もほとんど神技の域です。ギターやベースを嗜まないみなさまにはわかりにくい表現になってしまうのですが、”弾いてない箇所(アタックとアタックの隙間)のグルーヴ”が凄まじいのですよ。
ジュリーの作品で比較した場合、安定度はEMI期の方が上かと思いますが、何かが乗り移ったかのようなインタープレイは、エキゾチックス期独特のものなのです。
建さんの音を追えば分かるように、アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』は、エキゾチックスが最も勢いに乗っていた時のレコーディングである事は疑いないですね。
『S/T/R/I/P/P/E/R』は、ベストテンでのおぼろげなジュリーの記憶しかなかった僕にとって、信じられないくらいのロック・アルバムでした。
そして、エキゾチックスの演奏や、楽曲の完成度など数ある要素の中で、最もロックしているのがジュリーのヴォーカル!というのが一番の驚きでもありました。
ジュリーは常に、自身のヴォーカルについては評価が辛いようですが、このアルバムの歌唱で、「自分にはこの歌い方が向いてる!」と思ったかもしれません。
”唾を飛ばすヴォーカル”(ロックでは最高級の称賛の言葉)なのです。
「テーブル4の女」での、ブレスの計算などおかまいなしに疾走するヴォーカルも、ジュリーにとても似合っていると思うのですが、いかがでしょうか?
最後に、ちょっと余談を・・・。
『S/T/R/I/P/P/E/R』は本当にカッコいいアルバムですが、レコードで聴くのとCDで聴くのとだいぶん印象が違うのではないかと想像するのです。
CDですと、元々どの曲までがA面だったのか、掴みにくいんですよね~。「バイバイジェラシー」?「想い出のアニー・ローリー」?
やっぱり、A面ラスト、とかB面トップ、というのは重要なキャスティングだと思うのです。それに付随して、B面2曲目、3曲目、などにも意味づけが出てくるのです。
レコード時代のリリース作品で、AB面収録配置がわからなくなってしまうがために悔しい思いをしてCDを聴くことがままある僕ですが、『S/T/R/I/P/P/E/R』もそんな1枚でした。
さて、「テーブル4の女」・・・こんな曲をこの先LIVEで聴く機会はあるんじゃろか、と思いつつも、セットリスト予想として書いてしまいましたが。
万が一にもジュリワンで演ったら、盛り上がると思うんだけどなぁ。
そうそう、トークショーではジュリワンツアーについて、「加瀬さんの曲をたくさん歌う」と話してくれたそうです。
1曲くらいは変化球・・・来るかもよ~!
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