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2010年4月

2010年4月29日 (木)

沢田研二 「テーブル4の女」

from『S/T/R/I/P/P/E/R』、1981

Stripper

1. オーバチュア
2. ス・ト・リ・ッ・パ・-
3. BYE BYE HANDY LOVE
4. そばにいたい
5. DIRTY WORK
6. バイバイジェラシー
7. 想い出のアニー・ローリー
8. FOXY FOX
9. テーブル4の女
10. 渚のラブレター
11. テレフォン
12. シャワー
13. バタフライ・ムーン

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一昨日はジュリーのトークショーでした。
参加された先輩方のブログを拝見したり、情報を伺ったりしたところによりますと、4曲入りのニューシングルのレコーディングも無事終わったようですね。
収録曲すべてジュリー(作詞)&鉄人バンド(作曲)のペンによる作品だそうです。
ワイルドワンズとのコラボで”バンドの絆”を味わったジュリーが、それを糧とし、本来のスタイルで再び4人のプロフェッショナルと共に動き出しました。

ソロツアー共々、楽しみで仕方がありません。

でも、まずはジュリーwithザ・ワイルドワンズのツアー『僕達ほとんどいいんじゃあない』。
いよいよ初日まで1ケ月と迫ってまいりまして、拙ブログでは、もうしばらく加瀬さん作曲のナンバーに浸っていきたいと思います。

加瀬さんは、タイガースの頃からジュリーのそばにいて、公私ともに仲が良かっただけでなく、「シー・シー・シー」なんてイカした曲を提供したり。
その後もずっと、ジュリーのためにカッコイイ曲をたくさん書いたお人なのですよねぇ。
ワイルドワンズというバンドをほぼ名前しか知らない状態でジュリーに堕ちた僕は、今さらながら感動するわけなのですが・・・。

あらためて、加瀬さん作曲のジュリーナンバーを頭の中で整理してみますと、驚かされるばかりです。
70年代、80年代、それぞれにジュリーの色というものがあり、その中でもさらに年代区分できるジュリー楽曲の特色。
目まぐるしく色を変えていくジュリー。そのいずれの時代にも、常に加瀬さんの名曲があり、それがそのまま各時代ごとのジュリー・ナンバーの核となっている・・・すごい作曲家、すごいジュリー愛なのですよねぇ、加瀬さん・・・。
ジュリーが後に、「忙しい時期に、僕にすべてを捧げてくれた」と発言しているのは、こういうことを指しての言葉なのでしょう。

加瀬さんの生み出した隠れたジュリー名曲群を、セットリスト予想として語れることは、まず書いている僕自身が大変な幸せなのですね。
でも、当てには、行っておりませぬ。
そんな調子ですが、本日もよろしくおつきあいくださいませ~。

シリーズ第2回は、ロッケン・ジュリーなお題です。
絢爛なる80年代ジュリー。その象徴のような完全無欠のロック・アルバム、大名盤『S/T/R/I/P/P/E/R』から。
ジュリーにならストーカーされたいですか~?
という壮大なテーマのもとに
(おいおい)、「テーブル4の女」、伝授!

この手の歌詞がカッコイイとされたのも、80年代の大きな特徴のひとつですねぇ。
今では誰も真面目に取り組まないようなシチュエーションです。でも、それがカッコ良かった時代。
そう、これは現代で言うストーカー行為の歌です。

いきつけの喫茶店(と言ってもちょっといかがわしいお店が舞台なのかもしれませんが)の女の子に熱を上げるも、なかなか手が出せない男の物語・・・でしょうか。
三浦徳子さんの手にかかると、ウェイトレスが注文とりに来るだけでも大変なドラマに化けるんですよね~。

以前「
どうして朝」(こちらの作詞は岡田冨美子さん)の記事にも書いたことがありますが、ジュリーがいわゆる”情けない男”の歌を歌うと、何故か一転してメチャクチャにカッコ良く聴こえてしまいます。
ジュリー・マジックおそるべし!

では実際あの時代に、この歌詞のような恋愛手管がまかり通っていたのか、と申しますと・・・現実、そのような事は普通に起こっていたのですね。

例えば、佐野元春さんに心酔していた高校生時代の友人が
「モトハルはいきつけの喫茶店のウェイトレスとかと結婚しそうな気がする」
と真顔で言っていたことをふと思い出しましたが、当時それは決して安易なイメージではなく、”オシャレ”な発想だったのです。本当だよ~。


僕がアルバイトしていた喫茶店でも、似たような事はありました。
同僚のウェイトレスに熱を上げてアピールしてくるお客さんがいたのですが、変な感じは受けなかったですよ。日常の中の普通の景色でしたね。

え?
いや、僕は20代前半まで、上井草って駅前の喫茶店でウェイターやってたんですが・・・それが何か?
想像できない?
スパゲッティーとかサンドウィッチとか、作ってたのよ。
レタスを「ぱ~ん!」なんて言わせて掌で拡げたりしてね。若かった・・・。

話がそれますが、少しだけ思い出話を。
そのお店のマスターが音楽好きで、プロのハープ奏者を招いてお店でコンサートを開催したりしてました。ドリンク付で。思いのほかお客さんが押しかけてきて、僕らウェイターに「すまん、お前ら立って観てくれ」とか言ってましたっけ・・・。
現在、インド古典音楽のタブラ、声楽師範として活躍中の友人、佐藤哲也君と出会ったのも、この喫茶店でウェイターのアルバイト同士だったからです。
彼に誘われて、荻窪のライブハウスにギター弾き語りスタイルで出演していなかったら、僕はYOKO君とも出会っていない。すなわち、ジュリー祭りにも行っていない、という次第で。
「運命に偶然はないから♪」とジュリーも歌っていますが、しみじみと青春を思い出してしまいました。
その喫茶店、地元ではかなり人気のあったお店でしたが、今はもう閉店となっているようです。

で、僕の青春の思い出から強引に話を繋げますが、喫茶店って、店内のテーブルに通し番号をふるんですよ。注文を頂いたら、伝票に品名とテーブル番号を書き込むんです。
お店には何人もの常連さんがいます。そういったお客さん達は(混雑時は別にして)、来店時間や座るテーブルがほぼ決まっているのです。
顔馴染みになってきますと、そのお客さんのために、まだ片付いていない所定のテーブルをササッとキレイに準備して「こちらへどうぞ」、と。これもサービスの一環なのですね。

そこでお題のこの曲ですが、「テーブル4の女」とタイトルでは言うものの、実際テーブルに座っているのは主人公の方です。

♪ 今日もテーブル4に座るぜ 窓際の席 ♪
         
4番テーブルが、指定席なのですね。
ウェイトレスがやってきて、一応「何にしますか?」と尋ねつつも、心中では主人公のご注文は先刻承知。それがいわゆる、常連さんなのですから。

ところが
「本当に注文したいのは、キミだ!」
というのが、この歌のテーマなんだなぁ(爆)。

みなさまお気づきでしょうが、作詞の三浦徳子さんがうまいのは、主人公の指定席を4番テーブルに決めたことです。
”3度目の正直”に続く番号というのもありますし、何と言ってもサビの

♪ It's ONE(ワン!)、It's TWO(トゥー!
  It's THREE~!

とのフレーズの連続性。
お目当ての彼女が主人公のテーブルに接近してくる感じがしますね~。
こんなふうに、何気ない動作を大きく感情的に膨張させて捉えるセンスは、この時期の三浦さん作詞ジュリー・ナンバーの必殺技です。以前記事に書いた「月曜日までお元気で」などは、まさしくそうですね。
あ、歌詞の太字表記してある部分は、この先万が一「テーブル4の女」をLIVEで聴く機会があったら是非シャウト参加したい、と僕が勝手に考えている箇所です。
「ONE」「TWO」が追っかけで、「THREE」は同時。指で数字を作って、拳振り上げようと思ってます。
タイムリーでこの曲をLIVE体験なさっている先輩方、当時はいかがでしたか?

では、曲構成について。
一見、高速エイトビートのように思えますが、じっくり聴き込んでみますと、エキゾチックスの演奏が2・4拍目の裏拍にアクセントをつけていることが分かります。

アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』は、正統派のリズムにのっとったナンバーが多い前作『G. S. I LOVE YOU』とは打って変わり、素直なエイトビートの楽曲が収録されていません(3連符、或いは16ビートを駆使した曲が目立ちます)。この事ひとつとっても、『S/T/R/I/P/P/E/R』が単なるアイドル歌手の作品でないことは明白と言えます。

技術が進化し、演奏にある意味”ごまかし”が通用するようになったこの時代。
それに反発するように、剥き出しの音でバンド一体となったグルーヴを追求するムーブメントは海外でも起こっていました。
エリヴィス・コステロ&ジ・アトラクションズ、XTCの初期作品などがそうです。
エキゾチックス然り。
これらのバンドに共通するのは、優れたキーボード奏者がサウンドをリードしていることかと思います。

「テーブル4の女」は非常にシンプルなオルガン系の音色が効いていますが、ほんの少しだけチューニングがずれていることがお分かりでしょうか。
70年代後半から80年代初頭に、ささやかながら流行したアフターパンク・ムーブメントの中、海外でもこのようなホンキー・トンク調のオルガンが多用されていました。

アフターパンクの流れから生まれたネオ・モッズや初期ニューウェーヴの名だたる面々の中で、ホンキー・トンク・キーボードの一番の使い手だと僕が思うのは、マートン・パーカスという、キンクス系ネオ・モッズ・バンドに在籍したミック・タルボットという人物です。
ミックはその後、ザ・ジャムのリーダーだったポール・ウェラーと結びつき、スタイル・カウンシルを結成して格調高いピアノなど弾いてしまうようになりますが、マートン・パーカス時代の酔いどれキーボードこそ、彼の本質と見ます。

『PLEASURE PLEASURE』で初めて「BAMBINO EXCUSE」を聴いた時、僕はすぐに「テーブル4の女」を思い出しました。少し考えて、それがキーボード音色の使い方から受ける印象であることに気づき、記事でもそのような事を書きました。
キーボードでは、特定のオルガンパッチは最初から若干低目のチューニングで内臓されています。泰輝さんのセンスが、その音を求めたのですね。柴山さん、懐かしく思ったりは、しなかったかなぁ・・・。

もちろんキーボード以外の各楽器の演奏も素晴らしい。特にこの頃の吉田建さんのベースは、どの曲もほとんど神技の域です。ギターやベースを嗜まないみなさまにはわかりにくい表現になってしまうのですが、”弾いてない箇所(アタックとアタックの隙間)のグルーヴ”が凄まじいのですよ。
ジュリーの作品で比較した場合、安定度はEMI期の方が上かと思いますが、何かが乗り移ったかのようなインタープレイは、エキゾチックス期独特のものなのです。
建さんの音を追えば分かるように、アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』は、エキゾチックスが最も勢いに乗っていた時のレコーディングである事は疑いないですね。

『S/T/R/I/P/P/E/R』は、ベストテンでのおぼろげなジュリーの記憶しかなかった僕にとって、信じられないくらいのロック・アルバムでした。
そして、エキゾチックスの演奏や、楽曲の完成度など数ある要素の中で、最もロックしているのがジュリーのヴォーカル!というのが一番の驚きでもありました。

ジュリーは常に、自身のヴォーカルについては評価が辛いようですが、このアルバムの歌唱で、「自分にはこの歌い方が向いてる!」と思ったかもしれません。
”唾を飛ばすヴォーカル”(ロックでは最高級の称賛の言葉)なのです。
「テーブル4の女」での、ブレスの計算などおかまいなしに疾走するヴォーカルも、ジュリーにとても似合っていると思うのですが、いかがでしょうか?

最後に、ちょっと余談を・・・。
『S/T/R/I/P/P/E/R』は本当にカッコいいアルバムですが、レコードで聴くのとCDで聴くのとだいぶん印象が違うのではないかと想像するのです。
CDですと、元々どの曲までがA面だったのか、掴みにくいんですよね~。「バイバイジェラシー」?「想い出のアニー・ローリー」?
やっぱり、A面ラスト、とかB面トップ、というのは重要なキャスティングだと思うのです。それに付随して、B面2曲目、3曲目、などにも意味づけが出てくるのです。
レコード時代のリリース作品で、AB面収録配置がわからなくなってしまうがために悔しい思いをしてCDを聴くことがままある僕ですが、『S/T/R/I/P/P/E/R』もそんな1枚でした。

さて、「テーブル4の女」・・・こんな曲をこの先LIVEで聴く機会はあるんじゃろか、と思いつつも、セットリスト予想として書いてしまいましたが。
万が一にもジュリワンで演ったら、盛り上がると思うんだけどなぁ。

そうそう、トークショーではジュリワンツアーについて、「加瀬さんの曲をたくさん歌う」と話してくれたそうです。
1曲くらいは変化球・・・来るかもよ~!

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2010年4月27日 (火)

ジュリーと仕事をした人はブレイクする!

という事で。

”全然当たらないセットリスト予想”シリーズが始まったばかりなんですけど、ちょっとお知らせ記事をはさみます。
ご存知の方も多いでしょうが、このたびジュリーwithザ・ワイルドワンズのアルバムで「涙がこぼれちゃう」「いつかの”熱視線ギャル”」という大名曲を我々ジュリーファンにプレゼントしてくださった吉田Qさんが、今、大きな勝負に打って出ています。

ASAHI SUPER DRY THE LIVE

という、この真夏の祭典出演アーティストに、吉田Qさんがエントリーしているのです。webの一般投票で4位以内に入れば、出演が決まります。
恩返しのチャンスです!

右上の”会員登録”で簡単な手続きを済ませるだけで、すぐに投票できます。
応援メッセージもつけられます。「ジュリーファンです」という方の投票もありましたよ!
僕もさきほど投票してきました。

エントリーのバンドすべて聴きましたが、やはり吉田Qさんは一番輝いていました。
エントリーではバンドスタイルの面々が居並ぶ中、我らがQさまは、ギター1本で堂々と乗り込んでいます。

ジュリーファンの力、今こそ見せましょ~!
景気づけに、スーパードライの写真貼っておきます。

Superdry

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2010年4月25日 (日)

沢田研二 「薔薇の真心」

from single、1976

Wink

1. ウィンクでさよなら
2. 薔薇の真心

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さぁ、いよいよ始まります。
恒例となりました、”全然当たらないセットリスト予想”シリーズ。
もちろん、あと一ヶ月ちょっとにまで迫っているジュリーwithザ・ワイルドワンズのツアー『僕達ほとんどいいんじゃあない』へ向けての準備なのですが。

チケットは、まだですか~!!

そんなに待てない 大人の僕には ♪
この愛は 決して許さない 落選を~ ♪

と、すでに5月28日は有給休暇予約も済ませ、初日に行く気満々の僕です。
しかし、結果的に親切な先輩方のご好意が重なって無事参加できたとは言え、僕は『歌門来福』ファイナルの抽選を外していますしね~。外しグセがついてやしないか、と心配です。
土地勘の無い八王子(第2希望)でウロウロしている自分の姿も、目に浮かんだりします(土地勘があろうがなかろうが、方向音痴に変わりはないですが)。

さて。
結構本気で当てにいった『歌門来福』のセットリスト予想が見事に全敗。「どうせ当たらないのなら」と開き直った今回は・・・正直、当てる気ゼロ!
予想にかこつけて、これまで記事にしていない加瀬さん作曲のジュリー・ナンバー(本当に名曲ばかりです)を、ツアー開始ギリギリまで、次々に語っていこうと思っています。

アルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』収録曲、それに加えてワンズのレパートリーから「愛するアニタ」と「想い出の渚」、タイガースから「シーサイド・バウンド」と「落葉の物語」、そして加瀬さん作曲のジュリー代表作「危険なふたり」「TOKIO」。
選曲が確定しているのは今のところこれら16曲ですね。
少なく見積もってもあと5、6曲は演奏するはず。とすると、ワンズから2曲、洋楽カバー2曲、ジュリーナンバーが2曲・・・くらいかなぁ。

ワンズのナンバーですと、いわみ様ご推薦の「青空のある限り」LIVEヴァージョンが聴いてみたいですね。「アオゾラ」繋がりということで是非ひとつ。
ワンズではもう1曲、「セシリア」を希望。「夕なぎ」の記事コメントで先輩に教えて頂くまで、僕はこの曲の存在すら知りませんでした。
これはジュリーにも絡んでほしいなぁ。

洋楽カバーは、加瀬さんがいることですし、ビートルズが来るんじゃないかなぁ。
個人的には大喜び。
大人数ですから、派手なコーラスを売りにした曲が選ばれるでしょう。ビートルズにとってもカバー曲になりますが、「ツイスト・アンド・シャウト」が最有力。
渋いトコでは「ボーイズ」なんか楽しそうだなぁ。植田さんがドラムス&ヴォーカルで、残り全員が「バッ・シュワッ!」と賑やかに。サビ直前のシャウトパートは当然ジュリーということで、ね。
あとは、「イット・ウォント・ビー・ロング」「ホールド・ミー・タイト」とか、どうだろう・・・ジュリーのヴォーカル、凄そうだ~。

ジュリーナンバーについては、やはり加瀬さん作曲のものが選ばれるでしょう。
普通に考えると、「気になるお前」「海に向けて」あたりでしょうか。
せっかくギタリストの頭数が足りていますし、ここはひとつ「おまえがパラダイス」で柴山さんが好き放題コーラスに専念→ジュリーにいたぶられまくる、という展開も期待できます。

そして、”おまけのおまけ”でアンコールの大トリが、タイガースの「シー・シー・シー」ということでどうでしょう?
コーラス会場全員参加、間違いなし!
で、この曲につきましては・・・某箱さんから激しいプレッシャーがかかってるんですけど。
リクエストと受け取ってよろしいのでしょうか。それとも、「キッチリ2段攻撃しとけい!」という命令?
わかりました・・・書きますよ書きます~、セットリスト予想の大トリでね。

と、まぁここまでは普通の予想ですね。
僕も、そしておそらくみなさまもそんなラインナップで充分に満足はできるのでしょうが、やっぱり「あっ!」と驚く選曲もね・・・期待してしまいます。
それがセットリスト予想の楽しさでもありますしね。

それではここからが本題。異常な予想です。
今日は、「夕なぎ」と同様に、僕が漠然と”ワイルドワンズ”というバンドに抱いていたイメージと重なる、加瀬さん作曲の傑作をお題に選びました。
完璧なポップチューンでありながら、いくつかのハンデも抱えてしまっている、という「これぞシングルB面の醍醐味!」なナンバーです。
「薔薇の真心」、伝授!

ハンデ、と言うと語弊があるかもしれませんが・・・この完璧なカップリング・シングル『ウィンクでさよなら/薔薇の真心』、セールスとしてはかなり苦戦だったようですね。
個人的には『危険なふたり/青い恋人たち』(加瀬さん作曲作品ということだけでなく、両面ともにイメージがかぶるのです)にも匹敵する超・強力なシングル盤だと思っておりまして、後追いの僕は当初このシングルについて、「さぞ売れたんだろうなぁ」と想像していました。

何故セールスが今ひとつだったのでしょうか。
後追いながらジュリー史を勉強した今なら、色々と想像はできます。
当時はささやかな低迷期と位置づけられていること。暗い翳りが魅力の「時の過ぎゆくままに」「立ちどまるな ふりむくな」というシングルの流れからすると、能天気なまでに明るいタッチの「ウィンクでさよなら」には唐突なイメージがあったのではないか、と考えられること。
あとは、髪型ですか・・・(違)。

でも、加瀬さんだけの流れを追ってみますと、ジュリーへの提供曲にはキチンとした連続性があって、このシングル両面曲とも「ここらでガツ~ン!」的な気合を感じるんだけどなぁ。

荒井由実さんの詞もとても素晴らしく、詳しく語りたいのですが・・・。
その昔渋谷陽一さんが(松任谷)由実さんの当時の新曲「ノーサイド」(後註:「ディスティニィ」だったような気がしてきました・・・)にとても感動し、「この詞のココがこのようにイイ!」といった具合に熱く熱く考察したところ、のちに由実さんご本人から
「渋谷君、これアタシが作ったの、アタシが!」
と抗議されてしまった・・・と、サウンドストリートでお話していました。
渋谷さんと由実さんの場合は微笑ましいエピソードで済むのですが、カリスマ的人気を誇る荒井由実さんの作詞世界をここで語るには、僕はまったく勉強不足、およびもつかないことです。由実さんのアルバムも4枚しか聴いたことがありませんし・・・。

ただ、ひとつ言えることは、由実さんが「ポップミュージック」の世界観を決して逸脱しない天性のセンスを持っていて、例えジュリーが彼女の詞を歌うことになっても何ら違和感はない、ということ。
まさに天才同士の組み合わせだと思います。

そんな顔合わせにも動ずることのない、加瀬さんの爽やかなメロディー。
「青い恋人たち」「風吹く頃」「明日では遅すぎる」といった楽曲の流れを汲む、加瀬さん作曲・ジュリーB面名曲群のひとつです。
これらの楽曲は、後の「夕なぎ」も含めて”ワイルドワンズの加瀬邦彦”という色が強いように思われます。
「危険なふたり」「恋は邪魔もの」「ウィンクでさよなら」などの”作曲家・加瀬邦彦”とは色が違うのです。この相違をして、加瀬さんが卓越した職人肌であることの証明なのではないかと思うのですが。

曲はト長調で、意表をつく和音進行はありません。直球系と言えるでしょう。
ただし、ブリッジでテンポが倍の長さになるなど、細かなアイデアが効いていますね。

しかしこれ、サビが。
先輩方、初めて聴いた時、どうでした?
何も感じなかった、ってことはないでしょう。少なくとも「あれ、これ何だっけ?」くらいのデジャヴはあったでしょうね。
楽曲構成をノメり込んで聴くタイプの僕は思わず

♪ きっ・と・いつかは ♪
♪ だ・れ・の手にも ♪

と一緒に歌ってしまいましたがな。
そうなのです。「薔薇の真心」のサビは、「気になるお前」のパクリです!
ほんの一瞬、ワンフレーズだけなのにここまで目立つというのも、それだけ「気になるお前」のサビが強烈だって事ですよね。
どうします加瀬さん、パクられてますぜ!
・・・って、パクったのもパクられたのも、本人か。

さすがに加瀬さん御本人、作曲段階で気がついていたとは思いますが。
そこはそれ、B面ですから、問題なし
と判断したのでしょうか。いずれにしても、曲というのは一旦出来上がってしまえばそういう曲として成立してしまっているワケで、素晴らしい仕上がりの作品をわざわざ手直す必要もありません。

ただ、聴き手のハンデには、なるのよね。
僕はこの「薔薇の真心」を初めて聴いてから数ヶ月くらいの期間だったでしょうか、高く評価できないでいたのです。「気になるお前」のイメージを引きずってしまいましてねぇ・・・。単独の楽曲評価ができなかったのですよ。

今は、違います。
これほど完璧なポップチューンには、そうそう出逢えない!時代を超えて、「いつかの”熱視線ギャル”」にも通じる名曲ですよ。

そもそも加瀬さんの”ワンズ系”ジュリーナンバーはどれも、アルバム『JULIEⅥ~ある青春』に収録されていても違和感のないアレンジが施されているのですね。
基本バンドスタイルでありながら、やわらかなストリングスに包まれ、「薔薇の真心」でのティンパニ導入なども、『JULIEⅥ』の世界観にピッタリきます。
ロック色を強調するために武骨なアレンジで仕上げられた「気になるお前」の方が、どちらかと言うとアルバムの中で浮いている・・・かも?

そして、この手の加瀬さんナンバーを歌う時のジュリー・ヴォーカルには、楽曲に対する不安がまったく見えません。
音程、音階、そして表現の方向性。
何ひとつ疑いのない状態でジュリーは歌います。それこそが、ジュリーと加瀬さんのただならぬ関係だと言えるのです。

さて、この「薔薇の真心」、最低でも2音色を捌くことになりそうな泰輝さんの頑張りさえあれば、とてもジュリワンLIVE向きなナンバーだと思うのですよ。
僕がこのナンバーで一番心を揺り動かされる演奏パートは、ハイハットで16分音符を駆使しながら、目まぐるしくパターンを変えていくドラムスです。
いかにもGRACE姉さんの歌心が爆発しそうな楽曲ではありませんか。そして、植田さんがティンパニのパートをフロアタムで叩く、という寸法でいかがでしょう。

「一生懸命作ったのに、1回しか歌っていない曲がある」
という、プレプレツアーでのジュリーの言葉。「1回しか」というのは言葉のアヤとしても、ジュリーが
「歌う曲はまだまだたくさんある」
という決意を持って今後に臨もうとしていることは確かです。

同じ思いは、加瀬さんにもあると思います。
たくさんの曲を、ジュリーのために作ってきた・・・ステージ再現される機会になかなか恵まれてこなかった曲たちを、今加瀬さんはどういう思いで振り返っているのでしょう。

ジュリーの決意と加瀬さんの思いが合致した時、あっと驚くナンバーが、ジュリワンLIVEに降臨するかもしれません。
そんな楽しい勘ぐりをしながら、僕はジュリーwithザ・ワイルドワンズ『僕達ほとんどいいんじゃあない』ツアー初日を待っているところです。

今回「薔薇の真心」でスタートを切った、”全然当たらないセットリスト予想”シリーズ。
懲りずにまだまだ続きます!

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2010年4月23日 (金)

お宝ですか?⑤

今回のブツは、ジュリーファン全員にとっての「お宝」とは言い難い局地的なアイテムなのですが・・・。
僕にとりましては、日頃油断しがちな自らの背筋を伸ばしてくれる、貴重なお宝。
これを手にとってパラパラとめくるだけで、喝が入る・・・そんな本(楽譜)を紹介したいと思います。

なにごとにも先達はあらまほしきことなり。

で、良かったっけ・・・。
意味合いは少し違うんですけど、今日は”偉大なる先輩を称える”記事を書かせて頂きます!

実は先日、勤務先でこのような古本を発掘いたしました。

Gsfile

返本の中にひっそりと、それはありました。
版型はA5、いわゆるポケットサイズ。
「へ~、こんなものがあったか~」と、何気なく目次ページをめくって、まずビックリ。


Gsfikemokuji

タ、タイガースが15曲収載ですと~?!!
しかも、選曲がスゴイ・・・。

「白夜の騎士」「都会」「光ある世界」の渋さもかなりキテますが、何といっても目を引くのは「忘れかけた子守唄」でしょう。
シングルB面曲ですらない、アルバム『ヒューマン・ルネッサンス』の1収録曲。
キチンとタイガースを聴き込んでいなければありえない大抜擢・大英断のピックアップです。
たとえシングルではなくても、自身が名曲と見込んだナンバーは是が非にも収載する!という情熱。
キーの嬰ハ長調に悩み、加えて時間を惜しんだばかりに、大名曲「涙がこぼれちゃう」のGS復刻本への緊急収載指示を敢えて見送ってしまった僕としては、自らのせせこましい了見を本当に恥じ入るばかりです。
自分が名曲と思ったら、貫け!
ということですね・・・。

参りました!

しかし、GS楽譜リニューアルの企画なら、この本をやるべきだったんじゃないか~?!

と、僕が一瞬激しく頭を抱えたことは言う間でもありません。
ただ、よくよく中身を見てみますと・・・あぁなるほど、メロディー譜かぁ。
昔よく雑誌の付録などについていた採譜形式で、イントロ・間奏・エンディングを割愛し、歌メロ部のみを抜粋した譜面なのですね。
渚でシャララ」をイントロ・間奏抜きで収載ってのはさすがに・・・ねぇ。

で、メロディー譜の上部には一応コードが付いているのですが、まぁそこは、おおらかな時代だったというべきでしょうか。
「廃墟の鳩」とか、「いったいいつまで同じコードで歌わすの~!」というほどFコードで押しまくる箇所があったりとか。
全曲校正するには、かなり時間がかかりそうでした。いずれにせよ、今回のタイミングでの復刻はちょっと実現できなかったでしょうね。

でもね。
なぜそういうおおらかなコード表記になっているかっていうと、逆に言えばこれは編集者の情熱の証明でもあるのですよ。

限られた予算と少ない時間の中、「コードくらいはつけてあげたい」という心意気。外注に頼らず、自分でギターを弾いて、1字1字丁寧に書き込んでいったわけです。
範としなければならない姿勢だと思いました。

商品評価というものは、すぐに答えが出るものではない・・・使い捨てが当たり前の現代、このように熱い情熱に裏付けられて制作された楽譜は、「歌い継がれる」ということを考えさせてくれます。これこそ、時代を超えた豊穣なるお宝です。
本来、「歌」というジャンルが、そうであるように。

さてさて、目次ページではいくつかのバンドの写真が掲載されています。
さすがにタイガースは無理だったようで見当たらず・・・残念。
しかしながら、若き日のショーケンや、堯之さん、大野さんの姿を確認できて嬉しかったです~。

Gsfilemokuji2

小さくてわかりにくいかな?

話題のワイルドワンズは、このたび復刻した「グループ・サウンズ・コレクション」と比較しますと、「愛するアニタ」の代わりに「夕陽と共に」という曲が収載されています。
僕が今回のツアー予習のために購入したワンズのベスト盤には、2曲目に入っていました。
先日、いわみ先輩のブログで「加瀬さんは夕陽(SUNSET)が好き」ということを勉強したばかりです。
「夕陽と共に」も、そんな加瀬さんの一面が見える名曲のひとつなのでしょうね。

さて最後に。
僕がこの本の収載曲目で一番驚いたのは、実はタイガースのラインナップではありません。
これ!

Saharin

うへ~!
何という渾身の選曲!
さらに言うと、少し前の僕なら、この選曲のスゴさにまったく気づけなかったワケで・・・。

この本の編集を担当した大先輩のFさんは、ベンチャーズが大好きな気さくなおじさまでしたが、もうずいぶん前に退社してしまいました。
でも、こうして後輩の僕等に情熱や心意気をしめしてくれるものが、形として残っています。ありがたいことですし、偉大な
先輩が切り開いた道を歩んでいけることは、男子の本懐だと思いました。

またひとつ、ジュリーに導かれて人生の糧を得たような気がするなぁ・・・。

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2010年4月20日 (火)

沢田研二 「"B"サイドガール」~「夜のみだらな鳥達」

from『CO-CoLO1~夜のみだらな鳥達』、1986

Cocolo1

1. "B"サイドガール
2. 夜のみだらな鳥達
3. 無宿(むしゅく)
4. ドシャ降り、抜けて・・・
5. あの女(ひと)
6. 幻想(イリュージョン)
7. 流されて・・・
8. 時の街角
9. 闇舞踏(やみぶとう)

-------------------------------------

さて今回のお題は。
常連さんとして、最近すっかりお世話になってしまっておりますnekomodoki様の、30万ヒット・キリ番リクエストでございます。

今となっては超レア盤となってしまいましたが。
アルバム『CO-CoLO1~夜のみだらな鳥達』より、「"B"サイドガール」~「夜のみだらな鳥達」、2曲をメドレー伝授!

拙ブログは、CO-CoLO時代3枚の楽曲について、他の時期の作品に比べかなり記事数が少ないです。
理由は単純(シンプル)で、僕自身の聴き込み度がまだまだ足りないからです。

でも、『CO-CoLO1~夜のみだらな鳥達』は、結構聴いてるんですよ~。(問題は『TRUE BLUE』ですわ←momo様すみません汗。)

後追いの身にしてみますと、CO-CoLO3作品についての正確な制作背景が把握しにくく、それ故に、下手な事は書けないという危惧があることも事実です。
リクエストを頂いたnekomodoki様も、冷静に聴けるようになったのは最近、と仰っておられますしね。
その葛藤を乗り越えた経験なくして、果たして新参者にどこまでこの時代のジュリーが語れるのでしょうか。

ただ、ひとつハッキリ認識していることがあります。
僕がこの時期のジュリーの作品に一番感じていること。

自作曲収録への渇望と実践

これですね。
これは、おもに次作『告白~CONFESSION』で語られることの多い”心情の赤裸々な吐露”とは意味合いが違います。

ジュリーは70年代の時点ですでに
「自分の作った曲ならもっと上手く歌える(伝えられる)と思うが、今の自分はまだそれができない(自作曲の完成度に納得していない)」

と、遠い将来のアーティストとしての自分の在り方まで睨んでいるような、「さすがジュリー!」と思わせる発言をしていますよね。
ジュリーの言葉はずっと後になってから意味が解る事がある、と多くの先輩方も仰っています。その通りだと思います。
つまり

本当に上手く伝えられる歌・・・自作の楽曲中心のアルバム制作
今、その時が来た!

そんなジュリーの挑戦が、CO-CoLOから始まったのではないかと。

確かに『CO-CoLO1~夜のみだらな鳥達』の時点では、ジュリー自身のペンによるナンバーは半分にも達してはいません。
しかし、この作品を私的なコンセプト・アルバムとして考えた場合。
まず冒頭に物語導入的な短めの楽曲を配し、メドレー形式で続く2曲目に、シングル級に気合の入った、作品の核となる名曲を収録する・・・そんな構成の中、その冒頭2曲が自らのペンによるナンバー(「夜のみだらな鳥達」は作曲のみ、作詞は大輪茂男さん)である事は、ジュリーにとって非常に意義深いプロデュースだったはずです。

特にジュリーの作曲の才能は、それ以前の本人の謙遜をはるかに凌駕するものです。
本腰を入れて作曲に取り組んだCO-CoLO期(「灰とダイヤモンド」「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ」なども含めて)は、一気にその才能が解放された時期とも言えます。

作詞については、(今でもその傾向はありますが)人称の使い分けに謎が多く難解だったりするわけですが、これはやはり「私的」ということなのでしょうかねぇ。
例えば「"B"サイドガール」で使われる”奴”という呼称。
これは、”僕”の裏表現なのでしょうか・・・解釈が難しい。

では、このようにアルバム1曲目・2曲目をメドレーで飾ることになったこれら2曲の特徴を、詳しく分析してみましょう。
ずっと以前にコードを起していた「夜のみだらな鳥達」に加えて、今回は「"B"サイドガール」も採譜し、準備は万端です。

まず目立つのは、2曲共に非常に高い音域のメロディーを擁していることですね。
特に「"B"サイドガール」は、一番低い箇所ですら、「ソ」の音なのです。

ひとみ しのぶ 日々に ♪

の、太字部です。
この曲の最高音は1オクターブ上の高い「ソ」で、メロディーの上記箇所は、一番低い「ソ」から一番高い「ソ」へとせり上がっていく、大変美しい一節だと思います。「"B"サイドガール」のこの部分が好き、という方々も多いのではないでしょうか。

特筆すべきは、全体に高い「ド」から高い「ソ」を行ったり来たりする、というメロディーラインで、これはどう考えても男声キーとしては音域が高過ぎます。

しかし何と言ってもジュリーはヴォーカリストですから、自身作曲の段階から「この曲はこういう感じで歌おう」という主眼があるはずです。
この高音域のメロディーも、敢えてそう作曲しているに違いありません。わざとそう作っているという事です。

これは先日Rスズキ様のブログにお邪魔して「四月の雪」についての御記事を拝見し、確信を持ったことでもあります。
ジュリーは「四月の雪」をわざとギリギリの高音で歌った、とのことですね。大変興味深いお話でした。

では、その狙いは何でしょうか?

ここで参考までに(話の流れついでで恐縮ですが)、同じように”ギリギリの音階で作曲する”ことを武器にしているアーティストを紹介したいと思います。
誰あろう、ポール・マッカートニー。

曲の例で言いますと「DESTRACTION」や「I DO」といったナンバーがそうです。
で、その際のポールの狙いは何かと言いますと、これは明白。自身の持つ圧倒的な音域を誇示しようというものです。
この2曲は、1番のヴォーカルを低音部で、2番以降は同じメロディーを1オクターブ上の高音部で歌うという離れ業が炸裂するのですね。
また、ビートルズ時代には、「I WILL」という曲があります。
この場合は、演奏のベースパートを自身のスキャットで歌うという意表をつくアイデアがあり、その対比を際立たせるために、普通の歌メロをギリギリの高音で作曲しているわけです。
いずれにしても、持って生まれた広い発声音域を生かすための作曲と言えます。

では、同様に天性のヴォーカルの才を持つジュリーの作曲の場合もそうかと言うと、こちらには違う狙いがあるものと思われます。
ここで、「四月の雪」のお話がヒントになりました。

ジュリーは作曲段階からすでにこの「"B"サイドガール」を、せつない感じのヴォーカルに仕上げたい、と考えていたのではないでしょうか。
「四月の雪」のような声がかすれるほどの表現はありませんが、「「"B"サイドガール」で聴くことができるのは、常に高音域で、囁くように、また喘ぐように歌われるヴォーカル。
せつないジュリーですね。

「"B"サイドガール」「四月の雪」・・・他にも同じ狙いを持って作曲されているジュリーナンバーがあるかもしれない・・・今回の記事の構想を練るにあたって、僕はそんなことを考えたのでした。
聴き込んでいるつもりの楽曲でも、まだまだ新しい発見があるものですね。

このように、「"B"サイドガール」はヴォーカルスタイルを意識した作りだと僕は考えますが、和音進行など楽曲の作りこみそれ自体も非常に面白いです。
ハ長調のコード進行にト長調のメロディーが載っているような、不思議な感覚があります。

楽器を嗜むみなさまは、この曲の出だし

♪ SHE'S "B"SIDE GIRL ♪
                           Em

・・・まずCのコードを鳴らしてから歌い始めますよね。
ハ長調の曲ですから、それは必然。
ところがジュリーはおそらく、いきなりEmを鳴らして頭のメロディーを作曲していますよ。最初のこの部分は、ト長調あるいはホ短調の流れに沿ったメロディーに聴こえるのです。
次のコードにDm7を選んだが故に”偶然”ハ長調の曲に仕上がったわけですが、この曲でのジュリーのコード進行は、ハ長調のトニック「C」ではなく、何度も何度も「G」に回帰しようとして粘ります。
曲に独特の浮遊感があるのはそのためです。

♪ 僕の愛   を とまどいながら尽くしてくれた ♪
    Dm7  E7 G7 Am7     D7          G       G7

アレンジの段階で、CO-CoLOの演奏が
さらに捻って「G」の回帰点にセブンスの音を加えていますね。
Aメロのこの戸惑うような進行が歌詞にもマッチしています。
この”迷い”があってこそ、意を決したように明解なハ長調のメロディーへと移行するサビ部の力強さが際立つように思います。


コード進行にとらわれ、コードの構成和音に流されたようなメロディーを作るアーティストが多い中、コード進行、メロディーそれぞれ独立した魅力を持つジュリーの作曲作品には、やはり天賦の才を感じますね。

さて、せつなく不安ながらも強い意思を思わせる「"B"サイドガール」が短い歌と演奏を終え、耽美的な名曲「夜のみだらな鳥達」へと繋がっていくのですが。
素人ミキサーの耳判断ですと、この2曲は別録りであるように思われます。
では、どこからどこまでが分けて録音されたのでしょうか。

おそらく、「"B"サイドガール」の録音が

♪ SHE'S SO BEAUTIFUL
                              Em    B♭   Am   Gm   C7

このC7の和音まで。
美しく幻想的なシンセサイザー演奏です。
で、太字で表記した最後の2つのコードに注目して頂きたいのです。

これは

♪ 泣きたいためにはしゃいでた
     F                   Am
   巡りあうため彷徨い
    Gm          C7

という「夜のみだらな鳥達」Aメロ1節のトメの部分と同じ進行。
つまり、ヘ長調の楽曲である「夜のみだらな鳥達」の歌メロへと向けてアレンジ・演奏されているのです。
たとえ僕の推測通りにこの2曲が別録りだったとしても、最初からメドレー収録になることを前提としてそれぞれのレコーディングが行われた事は、明らかですね。

「夜のみだらな鳥達」も比較的高音域が活躍するメロディーですが、こちらは低音部もしっかりとあり、高音ばかりをうろつくヴォーカルではありません(と言ってもジュリーの高音の抜けは素晴らしいですが)。
純粋に、美しく自然なメロディーを追求した作曲だったのでしょう。

ところで、「あの女(ひと)」の記事にて白状したように、僕はこのアルバムを初見で”すべてジュリーの作詞”という勘違い(『告白~CONFESSION』と混同した)で聴いてしまいました。
ですから

♪ 男の心の奥を 隠すことはないんだと
    Am7     Dm     Gm            C7
   おまえのその生意気が やけに身にしむ夜だぜ ♪
       F              Gm7       B♭    C7

この辺りは聴いていてなんだかソワソワしてしまいました。
誤解でございました。
でも、それだけの切迫した雰囲気があるということ。ジュリーのヴォーカルの説得力だけでなく、大輪さんの詞も素晴らしいのです。テンションが高いですね。

あぁ、またまた大長文になってます。
いつもすみませんね・・・汗汗。今回は2曲分ということで、どうかひとつ。

次回、いわみ様をはじめとするプレイヤー向きの地味~なお宝記事を書きました後、いよいよジュリワンツアー、”全然当たらないセットリスト予想”シリーズ。
・・・にかこつけた、ここぞとばかりの、加瀬さん作曲ジュリー・ナンバー連発コーナーに突入いたしますよ~。

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2010年4月18日 (日)

えっ、そうなの?!

ちょっとびっくりしたお話を。

今日(日付変わっちゃったけど、17日土曜日のことです)は、バンドのレコーディングで1日中スタジオでした。
今日はバンドメンバー以外にもゲストをたくさん呼んで大人数だったのですが、みなさまお馴染みのYOKO君と、『JULIE WITH THE WILD ONES』アルバムリリース以来初めて顔を合わせたワケです。

当然、あの大名盤の話をしますわな。
で、「どの曲が一番好きか」ということになって。
何とYOKO君、即座に

僕達ほとんどいいんじゃあない

と答えたんですよ!
いや、確かにイイ曲だけど、そんな即答するほど圧倒的に好きなん?
と僕ならずとも思うでしょ?当然

「何で?」
ということになります。
すると、ですね。彼はさも当然という顔で

だってアレ、男同士の歌でおもしろいじゃん!

はい?
えっ?

そ、そうなのか?
僕、つい最近、「熟年夫婦愛のナンバーだ!」と、大々的に伝授したばかりなんだけど・・・。

てか、
だから、この曲が好きなのかキミは?
(いい加減、「DYNAMITEの元カレのYOKOです」とあちこちで真顔で言うのは、やめれ)

・・・。
しかし、するってぇと僕が「僕達ほとんどいいんじゃあない
」伝授記事の冒頭に書きとめた

♪ 東京タワーに明かりがついて
  一番星がその上に
  「あの星とって、君にあげる」と
  言ったら ふき出した ♪

これは、

「おまえにもう一度夢を見せてやる、オリコン1位だ!」
「そんなん・・・ええやん」

ってシーンを歌詞にしたってこと?
そうなの?
みなさま、どう思います~?

---------------------------------

で、スタジオの打ち上げは男6人でカラオケ。
僕が歌ったのは

Knife

↑ コレははっきりと男同士の歌だけどさ・・・。

Syalala

↑ JOYSOUNDのオケは、コーラスが入ってなくてさびしかったです・・・。

では、寝ます。
おやすみなさい。

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2010年4月16日 (金)

沢田研二 「いくつかの場面」

from『いくつかの場面』、1975

Ikutuka

1. 時の過ぎゆくままに
2. 外は吹雪
3. 燃えつきた二人
4. 人待ち顔
5. 遥かなるラグタイム
6. U・F・O
7. めぐり逢う日のために
8. 黄昏の中で
9. あの娘に御用心
10. 流転
11. いくつかの場面

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今日は突然、どうしてもこの曲について書きたくなりました。
ジュリー歴の浅い僕が語るにはちょっと時期尚早かな、とも考えていたナンバーなのですが・・・少しだけ語らせてくださいませ。
アルバム『いくつかの場面』大トリのタイトルチューン、僭越ながら伝授!

みなさま、今朝のサンケイスポーツはチェックなさいましたか?
河島英五さんの豪華企画CDリリースについての記事が掲載されています。
その中に見慣れた素敵なお顔の写真が。
(てか、僕は一体、新聞などで”ジュリー”という文字にビクンと反応してしまう身体に、いつからなったのだろう・・・?)

News

で、このCDは「セルフ&カバー」という斬新な企画盤で、全16曲を河島さんのオリジナル音源と他アーティストによるカヴァー音源を、交互に並べて収録されているそうです。つまり収録曲数自体は倍、2枚組の作品となっています。
当然、「いくつかの場面」も河島さんとジュリーのヴァージョンが続けて収録されているわけです。
3曲目に河島さんの「いくつかの場面」、4曲目にジュリーの「いくつかの場面」という配置になっているようですね。

ところで僕はこれまで、河島さんの作品を購入した事がありません。
亡くなった母が大ファンだった河島さんのCDを、この機に買ってみようかな、と思っているところです・・・。

実は桜舞うこの季節、母の命日が近づいています。
母が、還暦まであと数ヶ月という状況で亡くなってからずいぶん経ちますが、7回忌以降は何をするでもなく漠然と命日をやり過ごしていました。

ところが昨年は違いました。
昨年のこの時期、僕は公私共に怒涛・激動の波に自ら飛び込んでいき、その渦中にあったのです。
「公」では、仕事で責任の重い立場に就いたり。
「私」では、まぁジュリーですわな~。
その余波で、意を決し腹をくくって部屋の徹底的な大掃除にとりかかることになったり(←ソレかい)。

自分の現況を母に報告したい気持ちになり、命日を少し過ぎてから、「桜舞う」の記事を書きました。

そんな気持ちになったのも、昨年が特別だったからだろうな、と思っていたのですが、今年もまたちょうどこの時期に河島さんのCDリリース記事を目にして、母の命日を思いながら過ごすことになったのです。
特に最近は、母よりは全然若いけれど、僕からすればずっと目上のお姉さま方と懇意にさせて頂いていたりしますし・・・。僕の日常生活感覚も、変わってきているのかもしれません。
これらのこと、ほとんどすべてジュリーの導きというのが、本当にスゴイ話だよなぁ。

さて、「いくつかの場面」。
ジュリーは当時、あの有名な”泣きテイク”のリリースに難色を示していたそうですね。
自身の歌に厳しくストイックな、ジュリーらしい逸話と言えます。
最終的には大野さんに押し切られたとか。
アルバムのタイトルチューンにまでなってしまいましたが、ジュリーの胸中に、このレコーディング・テイクの何が引っかかっていたのでしょうか。

ファン歴の浅い僕のことですからまた勘違いがあるかもしれないのですが、今は何となくその答がわかるような気がしています。

僕が生のLIVEで「いくつかの場面」を聴いたのは合計8回。
まず東京ドームでの「ジュリー祭り」。その後、「プレジャー×プレジャー」ツアーでは7回聴きました。

ジュリー祭りの時は、僕はまだまだ何も解っていませんでした。
遂に実現した2大ドーム興行で、ジュリーが「いくつかの場面」を熱唱することの意味。集まったファンの先輩方と、ジュリーの涙。
今日「FRIENDSHIP」の記事にコメントを下さった由菜様の、7年前のお話。それとまったく同じことが、あの日の東京ドームで起こっていました。
周囲で号泣するお姉さま方を、「うわ、泣いちゃった・・・」と3度見するYOKO君とDYNAMITE。
かすかにもらい泣きしましたよ、確かに。
でも、ジュリーや先輩のお姉さま方の涙の意味は、よく解っていなかったのです。
そんな状態でよくあれだけ大々的にレビューなど書いたものだ、と我ながら呆れたりします・・・。

そして、一応猛勉強の末に臨んだのが、プレプレツアー。
ここでもセットリストに選ばれた「いくつかの場面」については、9・24渋谷ファイナルが一番素晴らしかったと思っています(6・6渋谷2日目も別の意味で衝撃でしたが)。
そして、「あぁ、ジュリーはこの曲をこういうふうに歌いたかったんだなぁ」という解釈が、自分の中に生まれたのです。

9・24渋谷ファイナルで「いくつかの場面」を歌うジュリーを観て、僕は”慟哭”よりも”優しさ”が強調されているように感じました。
”嗚咽”と言える表現は変わらずありましたけど。それも含めて、ジュリーはこの曲を「優しく歌う」ことで完成させたのではないか、と。

僕が気がつかなかっただけで、ジュリーはずっと以前のLIVEからそうしていたのかもしれませね。
みなさまは、どうお感じでしょうか。

そうは書きながらも、レコーディングヴァージョンの”慟哭”を強調したヴォーカルも大変素晴らしいもので、アルバムの大トリにふさわしい仕上がりです。
例え当時のジュリーに心残りがあったにせよ、今回の河島さんの「セルフ&カバー」リリースで多くの人がジュリーの「いくつかの場面」を知ることは、とても嬉しい。
この機に河島さんのヴァージョンと聴き比べるのも、楽しいでしょう。

さぁ今日は、たまたま目にした新聞記事がきっかけで突発的に「いくつかの場面」を採り上げ、母のことなど触れてしまいましたが、今の僕も決して”慟哭”とか、悲しい思いでこの記事を書いてはいませんよ。
優しくあらねば、と思います。

今回は、最近にしては文章が比較的短くて、みなさまの目にもいくぶん優しかった・・・でしょうか。
ココは今や、大長文が売りになってしまいましたからね~。
いつもおつきあい、ありがとうございます。

今後の予定は。
リクエストとお宝を1件ずつ記事に書いた後、「僕達ほとんどいいんじゃあない」ツアーに向けまして、恒例の”全然当たらないセットリスト予想”シリーズに突入いたします~。

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2010年4月14日 (水)

ザ・タイガース(の方の)「愛するアニタ」

~from『THE TIGERS CD-BOX』
disc-5『LEGEND of THE TIGERS』収録
original recorded on JULY、1967

Tigersbox

お題とはまったく関係ありませぬが、まずはみなさまに朗報です。
FRIENDSHIP」の追っかけコーラス部、歌詞が判明いたしました~。

♪流れはこっちだ(Time is on!)
  流れを集めて(Time is now!) ♪

無論、自力で究明したわけではございません。
親切な先輩に教えて頂きました。ありがたや~。

てか、「Burning is love♪」はあまりにヒド過ぎるぞDYNAMITE。

LIVEではどうかみなさまご一緒に~!

さて本題です。
先日の「アオゾラ」の記事にて。
NHK「songs」で放映された「愛するアニタ」のワイルド・ワンズの演奏にとても感動した、という事を書きましたところ、多くの先輩方からご賛同頂くと共に、タイガース・ヴァージョンの「愛するアニタ」のお話が盛り上がりましてですね。
その話題がきっかけで初めてコメントを下さったマルコ様、megu様のリクエストにお応えすべく、今週ずっと記事の構想を練っておりました。

僕はと言えばちょうど、名盤『JULIE WITH THE WILD ONES』全曲レビューという大仕事を終えまして、ホッと一息。安堵のただ中でございます。
の~んびりと下書きなぞしております間に。

箱さんに思いきり先を越されました~!

気持ちとしましては
あぁ、今書こうと思ったのに♪

という事で、今回は枯葉のような後追い記事ではございますが・・・。
「クライマックス」や「オーガニック・オーガズム」とは全然意味合いが違えど、これほどまでジュリーの悶えヴォーカルが聴けるというのは、大変貴重な音源かと思います。
タイガース版「愛するアニタ」、伝授!

このヴァージョン、強者揃いでいらっしゃる多くの先輩方をして「何と表現して良いのか・・・」と言わしめております、ある意味「伝説のテイク」のようで
一方で、音源としては『THE TIGERS CD-BOX』という5枚組CDの相当お高い商品でしか聴けないため、若いファンのみなさまにとっては「幻のテイク」であるとも言えそうです。
でもね、このCD-BOXは少々奮発して購入しても損は無いですから!
ブックレットが充実していますし、なにより僕としてはこの5枚組で、単体では入手困難となってしまっている大名盤『自由と憧れと友情』を多くのみなさまに聴いて頂きたい、という気持ちもあるのです・・・。

さて、本日のお題はdisc-5から。
『LEGEND of THE TIGERS』と銘打たれ、レア・トラックをふんだんに盛り込んだこのdisc-5の中に、「愛するアニタ」が堂々とラインナップされているのですが。
このテイクが本当に、箱さんの御記事通りの無法状態なヴォーカルでございます。
ワンズヴァージョンで言うと

♪ オ~!可愛いアニタ ♪

の、「オー!」の連呼部分で

ああぁぁ~ん!
あおぉぉぉん!
おうぉぁぁぁん!

とか言っちゃってるワケですよ、ジュリー。
誇張ではありません。
いつ「あはぁ~ん」とか「いやぁ~ん」とか言い出すんじゃないか、と聴いていて思わず身構えてしまうほどです。いや、微妙ながら「あはぁ~ん」とは実際言ってる・・・かもしれない。

名だたる先輩方が戸惑った(ラジオの特集で流れたそうですね)のも、解る気がします。
このヴァージョンにはまだデビューして間もない頃のタイガース、最大の持ち味である「品格」が欠落していますからね(おぉ~暴言だったか?)。

最終的には
「ちょっとエグいね」
という事でボツになったのでしょうか。
考えようによっては、後期タイガースならこれでオッケ~だったのでは。う~ん、それもどうだろう・・・。

で、しがない素人プロデューサー歴20年の僕は、ここでも深読みをしてしまうワケです。
このジュリーのヴォーカルは、アレンジ導入されている素っ頓狂なホーンセクション(たぶん全部トランペット。トロンボーンは鳴ってないように聴こえるなぁ)に同化した結果じゃないかと思うのよ~。

やっぱりブラスロックを目指すならば、トランペットとトロンボーン、或いはテナーサックスのアンサンブルあってこそ、が最強なのではないかと。
「愛するアニタ」で唐突に「パッパ~♪」と噛んでくる恥ずかしげなオンリー・トランペット部隊には、思わずギョッとしてしまいますもん。

我が友人ながら、優れた歌い手としてリスペクトしておりますJ友のYOKO君は、昔からこう言っています。
「ヴォーカリストは、バックの音とケンカするんだ」
と。
極端な表現ですが、「演奏に負けてなるか!」という気持ちなのでしょう。逆に言えば、良い演奏、歌い手好みの演奏であるほど、ヴォーカリストの真価は発揮しやすい、ということ。
ジュリーが鉄人バンドを大切にしている意味も、この辺りにヒントがありそうです。

これすなわち、優れたヴォーカリストほど、バックの演奏の音を感覚で捉えて同化する能力が高いのだと思います。
常に同じような歌い方しかできない歌手と違い、おそらくジュリーは例え同じ楽曲であっても、演奏やアレンジの違いでガラリとヴォーカル表現が変わるでしょう。これはみなさまも同じ意見をお持ちのはず。

もしもタイガース版「愛するアニタ」のテイクにトランペットが入っていなかったら・・・ジュリーはもっと普通にカッコ良く歌っていたのではないかなぁ。

おそらくジュリーは基本的に、短調の曲にバリバリ・ゴリゴリのホーンセクションが入ってるアレンジって、好みだと思うんです。
例えば。
いわゆる”歌謡曲”の枠組みの中で、どのようにロック的なアプローチを盛り込めるのか、というヴォーカルスタイル。
ジュリーがそれに最初に開眼したのは「許されない愛」でしょう。あのカッコいいホーンセクションが、ジュリーの情熱を掻き立て、ヴォーカリストとしての才能がいかんなく発揮されたのではないでしょうか。
最大の理解者である加瀬さんがそれを見逃すはずがありません。意を得た加瀬さんは、その後もイカしたブラスロック・ナンバーを次々にジュリーに提供していくことになります。
その根幹に、タイガース版「愛するアニタ」のリベンジがあったのではないか・・・というのは考えが飛躍し過ぎでしょうか。

「愛するアニタ」はタイガース4枚目のシングルに予定されていたそうですね。
「シーサイド・バウンド」「モナリザの微笑」と続いた、次の戦略として

今度は、挑発的で豪快なサウンド!

という狙いがあったものと思われます。
ガツ~ン!とカマすサビで始まり、憂いのある主メロ、そしてサビのダメ押し。「愛するアニタ」の楽曲構成がその戦略に合致していた事は、間違いありません。

ただ、詳しい作曲作業の順序など経緯はわかりませんが、「君だけに愛を」という強烈な曲ができてしまったらねぇ。
そりゃ、そちらを取るかな・・・。
「愛するアニタ」お蔵入りについては、楽曲の良し悪しと言うよりも、タイガースの適性の問題だったのでしょう。

ところで、タイガース版「愛するアニタ」の音源ですが、これは仮のミックス段階のものだったと思われます。
この時代はまだアナログMTRレコーディングの時代。通常のミックス手順としては

1. 録音された各トラックをほど良いバランスに設定し、ミックスダウンした仮のテイクを作成。
2. プロデュサーやエンジニアをはじめとするスタッフ、アーティストがプレイバックを聴き、是正すべき点を検討。
3. 検討に応じてPANを確定し、必要があれば楽器・ヴォーカルなどのパートを録り直す。
4. ミキサーが渾身のフェーダー操作でヴォーカルテイクの音量を統一し、正規のミックスダウンを行う。

実はミキサーの醍醐味は4番目の”ヴォーカルテイク操作”です。
普通、人は気合を入れて大声を出す時には姿勢が前のめりになり、静かに歌う時には顎を引きます。その結果、マイクとの距離に差が生じ、どうしてもヴォーカルのレコーディング音量は一定しません。
そこで、「気持ちと姿勢を逆にしてくれ」「大声でワ~ッとやる時はマイクから顔を離してくれ」などとヴォーカリストに要求するミキサーは言語道断。

「後で俺がしっかり仕事するから、自由に歌ってくれ」

これが、アナログ時代のミキサーの一番カッコいい台詞だと僕は思っています。

その意味でアナログ時代のタイガース、初期ジュリー音源は素晴らしいミックス作品の宝庫ですが、「愛するアニタ」はその作業手前でボツ確定だったようですね。
この音源でのジュリーのヴォーカルテイクは、フェーダー操作がまったく行われていません。

おそらく演奏についての録り直し案も出たでしょう。例えばサリーのベースが、Gのスケールで演奏すべき箇所を、仮テイクという事でDmのまま引き伸ばしたりしていますから。
しかしそれすらも行われないまま、「愛するアニタ」の音源完成は見送られます。

そんなナンバーが、作曲者の加瀬さん率いるワイルドワンズの演奏でリリースされヒットする、というのも痛快なお話ですよね~。
アップテンポにも関わらず、ヴォーカル、演奏ともに無理押しな感じがまったく無いのがヒット要因ではないでしょうか。
これ、意外とジュリーの無理矢理な悶えヴォーカルが反面教師になってたりして・・・。

豪快・パワフルという
狙いで売り出されようとした「愛するアニタ」が、実は非常に朴訥でシンプルな魅力を持っていたことを、結果として加瀬さん達が証明したと言えるでしょう。

あと、マリッジ・ソングというコンセプトも、ワイルドワンズの方に適性があったかもしれませんね。
僕の世代ですと知る由もない事ですが、当時この曲が結婚式で歌われたり・・・したのでしょうか?
歌と演奏が友人有志で、最後の島さんの絶叫パートだけ新郎がやる、とか。
もちろん花嫁さんの名前でね。

さて、ワイルドワンズのLIVEヴァージョンについても是非触れなければなりません。
先日放映された「songs」でのスタジオライブ。
最高!
この朴訥で愛らしいナンバーが、研ぎ澄まされたロックへと転換する魔法。ワイルドワンズというバンドについても後追いのファンとして、僕は今さらながらこの曲に感動、大変興奮いたしました。

加瀬さんのリードギターが炸裂した瞬間、「やるなぁ、ワイルドワンズ!」などと偉そうに叫んでしまった事は以前書きましたが、本当に素晴らしかった。
植田さんのヴォーカル&ドラム捌きは、まさにキャリアの証明・圧倒的な風格ですし、何と言っても島さんがオイシ過ぎます!
レコーディング音源だと、あの絶叫もさりげない感じなんですけど。それが一転、LIVEでの「愛するアニタ」の演奏は、島さんのためにあると言っても過言ではないような気が・・・。

予言します。
ジュリワンLIVEでのワンズ1番人気は島さんだと。
「アニタ~!」の瞬間、「キャ~!」と来ますよ~。
その勢いで「Oh!Sandy」にも大いに期待。
「アイウォナ・ホ~ジュ~!」とか「サ~ンデ~!」を思い切りやってくれたら、下手すると島さん、その瞬間はジュリーを食ってしまうかもしれません。
今回のコラボ、演奏にかかる負担は島さんが一番大きいと思いますが、頑張ってほしいです。応援しようと思います!

最後になり恐縮ですが、拙ブログで以前お薦めさせて頂きました楽譜「グループ・サウンズ・コレクション」につきまして、お買いあげくださったみなさまにお知らせ、と言いますかお詫びがあるのです・・・。

「愛するアニタ」のコード表記ですが、「A」の部分をすべて「Am」で弾いて頂きたいのですよ~。
これですねぇ、レコーディング音源だけ聴く分には間違いとは言えない、というのが辛いトコなのです。
「A」と「Am」表記の区別・・・問題はギター、あるいはベースが「ド」の音をシャープさせているかどうかにかかっているのですが。
確かに長調特有のシャープ音は、聴こえるんですよねぇ。

ただ、今回LIVEを観て確信いたしました。加瀬さんはAメロもAmで作曲なさっています。
LIVEでは、鳥塚さんがバッチリAmで弾いていましたし、島さんの演奏も典型的なAmスケールでした。
いくらハッキリ間違いとは言えないとは言え、”ギター弾き語り”を標榜している以上、「歌っていて自然」な伴奏を第一とすべきであり、この場合のコード表記はAmであるべきです。

校正段階でチェックされなかった事は、本当に悔やまれます。
単に音源を聴いて解析するだけでは、ダメなのですね。
採譜というのは、楽曲に対する真の理解(LIVEで実際どのように演奏されているのか、などの考察)が、何よりも重要なのだと気づかされました。

「愛するアニタ」を表記通りに弾いて、違和感を覚えた方もいらっしゃったと思います。
本当に申し訳ありませんでした。

教訓とし、必ず次に生かします。

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2010年4月 9日 (金)

ジュリーwithザ・ワイルドワンズ 「FRIENDSHIP」

流れはこっちだ
流れを集めて 一筋の輝きに向かって行く
未来を睨んでる 止まることのない
「アリガトウ」を振り撒いて
oh my FRIENDSHIP

(詞・沢田研二)

~from『JULIE WITH THE WILD ONES』、2010

拙ブログ、今回が200件目の記念記事になります。
ジュリーとはまったく関係のない偉そうな伝授からスタートしたこのブログ、ジュリー祭りを契機に様相がガラリと変わり、ついでに言葉遣いも徐々に変わり、今やじゅり風呂の末席に名を連ねるまでに。
多くのみなさまが読んでくださらなかったら、こうはいかなかったでしょう。
あらためて、御礼申しあげます。

しかし、そんなブログの経緯が示す通り、僕が完璧に”ジュリー道”に足を踏み入れてから、まだ1年半程度しか経っていません。
僕はその短い期間の間に、色々なことを経験しました。

ならば、ジュリーや加瀬さんはじめワイルドワンズのメンバー、さらには長きに渡ってジュリーと共に歩んできた柴山さんやタケジさん達、そしてファンの先輩方は、一体どれほどの経験を積んでこられたのでしょう。

その長い道程を、”奇跡としか言いようのない航海”に例えた屈指のバラードが、アルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』の大トリを飾ります。

このナンバーを200件目の記念記事で採り上げられたことに、僕もささやかながらの運命を感じずにはいられません。
「FRIENDSHIP」、伝授!

やはりTVの威力はすごい。
予想した通り、「プロフィール」の記事検索数が伸びています。嬉しいですね~。
早く「FRIENDSHIP」も書いて、アルバムレビューを完璧にしておかないと!

まずは、”ジュリワンアルバム8大感動事項”最終回。

このアルバムで、ジュリーと加瀬さんのただならぬ仲が陽の下にさらされた!

とか言うと大ゲサかなぁ、な~んてつい先日までは思っていましたが、
NHK「songs」で見事全国にカミングアウト。
何枚も写真が紹介されましたが、ジュリー&加瀬さんのツーショット数枚はかなりヤバいぞ、あれは。
完全に密着してるように見える。

まぁそれは冗談としても(ジュリー曰く「ただならぬ仲と言っても、肌を合わせたことはありません」←「歌門来福」LIVEでのお言葉です)、この番組で2人の友情を初めて知った方も多かったと思います。
最後の曲「FRIENDSHIP」の映像にすべてが収束するようなコンセプトで企画編集されていましたよね。

僕はローリング・ストーンズの「友を待つ」という曲が大好きで、PVを観て泣いてしまったほどですが、そのせいかしらんロック・ナンバーで「friend」という単語が出てくる場合、それは男に向けた歌である、という先入観があります。なんだかなぁ。
「FRIENDSHIP」も最初そうやって聴いてしまいましたね。この曲が女性に分かるかなぁ、なんて。
すみませんでした~!

この船は、長い航海の途中。まだまだ未来へと向かっていく船なのです。
これまでの航跡を知っていらっしゃる先輩方にしか分からない、深い魅力があるに違いありません。
もちろん、ジュリーと加瀬さんにしかわからないことも、多くあるでしょう。
先輩のお姉さま達は、
「この曲が、新規ファンに分かるかなぁ」
と逆に思っていらっしゃったかもしれませんね。

だから、「songs」でこの曲が採り上げられ、掘り下げされた事はとても意義深い。
「songs」のトークは、「FRIENDSHIP」放映のためにあったと言っても過言ではありませんね。
アーティスト本人の言葉で、「この曲はこうこうこうやって作った」なんて聴く機会は滅多にないですし、僕はググッと身を乗り出しましたよ。

「二人のことを曲にしよう、という話になって」
「(ジュリーの)詞が先だったんだよね」
「後から加瀬さんが別のサビを作って・・・」

魔法のような、宝物のような会話。感動です。
詞先かぁ・・・。
加瀬さん、泣きながら曲つけたんじゃないの~。
と余計な詮索をしながら、ちょっとギターで合わせて歌メロ部を弾いてみますと。

「え?Bメジャー?」

ロ長調。
アルペジオで作ったはずの曲だから、これにはビックリ。
(ロ長調=Bメジャーがキーの曲は、ギターで弾くとほとんどの和音がハイポジションになり、やわらかいアルペジオ奏法には不向きなのです)
首をかしげながらも、イントロに戻ってアルペジオの構成音を拾って、「はは~ん」と。

実際どうかは解りませんが、この曲、加瀬さんは最初Dメジャー(ニ長調)で作曲したのではないでしょうか。
1弦から3弦までを、スリーフィンガーで、フォームを替えながらハイポジションで奏でる導入部。これは、ビートルズの「ヒア・カムズ・ザ・サン」間奏アルペジオの応用だと思うのです。
ビートルズが好きでギターを弾いていたみなさまはお分かり頂けると思います。この奏法が、手クセのように身体に染み付いてしまっている感覚。

ハイポジションでアルペジオを弾き、トニックのDのローコードに舞い戻ってくる快感は、「ヒア・カムズ・ザ・サン」を必死にコピーしたビートルズファンにとって、格別のものなのです。

そのようにDのキーで作曲されたものが、ジュリーの希望でBに移調されたんじゃないかなぁ。
本当のところは加瀬さんにしか解らないですけどね。


♪ ひとりは湘南ボーイ ひとりは京都ボーイ ♪
           E          B              F#7       B

太字で表記した最高音の部分を、ジュリーはスッと抜けるような感じで歌いたかったのではないでしょうか。

加瀬さんの作る曲は、初期のジュリーナンバーに多く見られるように音域がかなり広いです。
そのため、冒頭の

♪ 昔 運命という大きな船に乗り ♪
      B      D#m       E           B

この「むかし~♪」の「む」の音が、何と低い「ファ#」。
無理!

僕には出せません、この音。
無垢に伸び上がる高音が初期のジュリーヴォーカルの魅力だとすれば、太く艶のある低音が、今のジュリーの最大の武器であるように思います。

アオゾラ」でも編曲をなさっている坂本昌之さんは、あの坂本昌之さんですよね。超大物です。ドラマティックかつオールマイティーなアレンジを得意とされていますが、「FRIENDSHIP」に敢えてストリングス系の音色を一切使用しなかったのが素晴らしい!
その代わりにオルガンが大活躍するのです。この暖かいオルガンが、アレンジの肝でしょう。
この曲は、湿っぽいストリングスの音作りだと逆に泣けなくなってしまうと思うのです。


さて、新規ファンが簡単に感想を語れる類のものではないとは思いますが、ジュリー自身による作詞についても、少しだけ。

「二人のことを曲にしよう」という話になって、ジュリーは即座に「友情」「絆」「道程」というテーマを思いついたでしょう。
言うまでもなく、「FRIENDSHIP」の「SHIP」を”船”に見立てています。

♪ 流れに棹さし 流れに抗い 星に導かれて ♪
        E       B         E      B        E    B   G#7

決して平坦な道程、穏やかな航海では・・・なかったのですね。でも、強い志を持って、海原を来た、と。
凄いなぁ、と思うのは、「まだ航海の途中」という意思をジュリーがこの詞に込めている事です。
ジュリーはいつも、現在よりも先を見ている。未来を睨んでいるのです。
加瀬さんとの絆、またジュリー自身の航海も、これからまだまだ続いていくのだという、堂々たる決意表明ですよね。

♪ 一人はTHE TIGER 一人はTHE WILD ONE ♪

ココは、僕などが語るのは畏れ多い気が・・・。
聴いていてドキッとした方々、きっと大勢いらっしゃるでしょう。

トークによりますと、このジュリーの歌詞を叩き台にして加瀬さんと共同で練り上げていき、「FRIENDSHIP」は完成したそうです。
そのお話の中に出てきた、加瀬さんが「新たにつけ加えた」サビ。
おそらく最後の大サビ部のことですね。

1番~3番のサビとはメロディーを一変させた、強力なコーダです。
いかにも、「LIVEでは会場全員で合唱して!」的な箇所なのに、ハハ・・・歌詞カードは記載が無いですね。
これは

♪ Sail our way,  Sail away forever ♪

と歌っています。
と、この部分については自信満々に書いてみましたが、問題はこの大サビ直前、3番の通常サビでの追っかけコーラスのパートなのですね~。
そこが良く聴き取れない。
まぁ2つ目は

♪ Burnin’ is love ♪
(後日註:全然違います!
♪ Time is now ♪
です!


で合ってそうですが(後日註:嘘です!Time is now♪でよろしく!)1つ目が・・・。
初見では「あんにゅい・そんぐ」って聴こえた(そんなバカな)。
(後日註:「♪Time is on♪」でございます。

♪ 流れはこっちだ(Time is on
    流れを集めて(Time is now) ♪

で、コーラス参加しましょ~!)

『JULIE WITH THE WILD ONES』というCDを聴き込むに連れて、このアルバムが「涙がこぼれちゃう」で始まり「FRIENDSHIP」で終る意味というものが、おぼろげながら見えてきました。
歌われている内容は、年齢を重ねているからこその物語です。
友情、夫婦の愛、若き日の仲間、恋人。
しかしその上で、”聴き手との再会”というテーマが浮き上がってくるように思われます。

ジュリーファンとしての再会。
ワイルドワンズのファンとしての再会。
或いは、GSファンとしての再会。

ジュリーwithザ・ワイルドワンズのメンバーが、
「僕らは今、こんな感じだよ。そっちはどう?」
と語りかけてくれている・・・そんな作品ではないでしょうか。
だからこそ、聴き手が元気になる。

そんなふうにして『JULIE WITH THE WILD ONES』を体感できる年長の方々が、僕は今、うらやましくてなりません。

さぁ、それでは。
本日のお題、「FRIENDSHIP」で見事に完結したNHK「songs」の感想にて、この記事を締めくくりたいと思います。
先週、第1回の放送直後は駄々をこねてしまいましたが(恥)、やっぱり素晴らしい番組だなぁ、と。

結局、2週に渡って『JULIE WITH THE WILD ONES』から選ばれた4曲については、すべてCD音源が流れたワケなんだけど。

今回の見せ方についてね、ほんの数人の先輩にしかお話できていないんですけど、僕なりに考えに考え抜いた末の解釈がありまして。
結局、ジュリーの男気って話になるんです。
本当は、全曲レビューが終ったらそれをこのブログで書こうと思っていました。
でも、もういいんだ、それは。
今はとてもスッキリしています。
だから今日は、本当に素直に、この素晴らしい番組の感想を書きますよ!

1. 「プロフィール」

先週の放送で、僕は「涙がこぼれちゃう」の演奏途中から、柴山さんと下山さんの姿をまともに観れなくなっていました。
しかし、今週しっかりと観てみたら、なんとお二人の楽しげであることか。

すさまじいテンションで身体を動かしながらアコギを引き倒す柴山さん。
間奏、いつもと同じスタイルで高音部をかき鳴らす下山さん。

あぁ、現場では確かにバンドの音が出ている。
それが嬉しい。

先週は、観ている方の僕の姿勢に問題があったということ。お二人の勇姿に立ち向かう度量が自分に無かっただけです。

「プロフィール」という大名曲がこうして世に出たことが、ファンを誇らしい気持ちにさせてくれます。
きっと多くの方々が、この曲に興味を持ってくださったでしょう。

特大のホームランを打つ鳥塚さんがカッコ良かった~。

2. 「危険なふたり

このスタジオLIVEの臨場感。やはりコレですよコレ。
え~、あいら様、リードギターはすべて柴山さんです(てか、僕はちゃんと本文読んでますって!)。
2008年放映の演奏とは異なり、加瀬さんはコードバッキングに徹していました。
下山さんのバッキングもいつも通りですから、その分柴山さんは単音に集中できたようです。今まで観た「危険なふたり」の映像の中で一番サスティンが効いていました。
この音色設定だと、1音突き放して弾いても果てしなく音が鳴り続けます。音を切るためには、弦の振動を指で軽く押さえる事が必要になりますが、柴山さんはいったんフレット全体を豪快にすべらせて「ぎゅい~ん!」と言わせてから、「きゅっ」って感じで、音を切るのです

全国のカズラーのみなさま、その「ぎゅい~ん」「きゅっ」に是非とも萌えてくださいませ。

などと興奮して観ていた横で、「カメラ、寄り過ぎ寄り過ぎ!」とか、「お腹が、お腹が~!」とかいう悲鳴が聞こえていたような、いなかったような。
というワケですので、僕は多くのみなさまが話題にしていらっしゃる、この曲でのジュリーの衣装を・・・まったく覚えておりません(汗)。
えっ、「歌門来福」と同じだった?
この状況は、ジュリーファンとしては失格でしょう。

あと、この曲では、僕が今回の放映で最もツボったシーンがあります。

「いや、オレあんまり目立たなくてもいいっすから・・・」
てな感じで奥ゆかしげにギターを弾く下山さんに、執拗に絡みまくる島さん!

是非LIVEでもやって頂きた~い!!

3. 「TOKIO」

これは・・・まるで「歌門来福」ファイナルのアンコールばりのテンションではないですか!
素晴らしいスタジオLIVEです。

「わちゃ~!」「あ~ぅお!」
ジュリーの雄叫びに、「TOKIO」を歌謡曲の記憶としてお持ちの一般の方々がひっくり返ったでしょうね。
浮動票の方々が、LIVEに行きたくなったのではないでしょうか。
これが、ジュリーなんですよ。

4. 「FRIENDSHIP」

書きたいことは先にもう書いちゃいました。
ただ、映像を観ていてね・・・。カメラがジュリーと加瀬さんのツーショットになった時、何とも言い難い感動がこみあげてきましたよね。
これは、一般の方々がまだ知らない、ファン特権の感覚だと思います。

LIVEはきっと、この映像と同じ楽器編成なのでしょうね。楽しみです。
加瀬さんのこぼれちゃう涙にも期待しましょう!

最後に、蛇足でございますが。
拙ブログ、アルバム(CD1枚分)全曲レビューを達成したのは『PLEASURE PLEASURE』に引き続いてこの『JULIE WITH THE WILD ONES』が2枚目となりました。
この機に、収録全曲を網羅したアルバムの記事については、カテゴリーをアルバムタイトルに変更させて頂きます。
記事数も多くなり、みなさまにおかれましても、過去に遡っての検索が大変でしょうし。

すべてのアルバムカテゴリー化を達成する事は夢のまた夢です。普通に考えれば無理でしょう。
でも、「FRIENDSHIP」という歌にある通り、長い航海に臆せず、未来を睨んで進んでいきたい。
僕はまだまだヒヨッコですが、「ジュリーファン」というスーツの折り目がとれてきた頃に、年齢を武器にビッグウェイブを狙う・・・そんな意気込みでありたいものです。

今後とも、どうぞよろしくお願い申しあげます!

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2010年4月 7日 (水)

ジュリーwithザ・ワイルドワンズ 「ハートにズキューン」

ズキュ~ン!
ズキュ~ン!
ズキュ~ン!
ドキュン!
バキュ~ン!(ばきゅ~ん♪)
バキュ~ン!(ばきゅ~ん♪)
バキュ~ン!(ばきゅ~ん♪)
ド・キュ~ン!・・・ぅうう~、あ!あ!あ!

(詞・沢田研二)

~from『JULIE WITH THE WILD ONES』、2010

今日のお題は、「ハートにズキュ~ン」。
で、いきなり汗汗。
冒頭の引用箇所は、これで良かったのだろうか・・・。

みなさま既にお気づきの通り。
このたびの”大名盤『JULIE WITH THE WILD ONES』全曲レビュー”一連の記事冒頭には、各曲の中で僕が個人的に最も感銘を受けた箇所の歌詞をご紹介しております。
元々、「プロフィール」の記事に臨むにあたって、どうしても書き留めておきたい歌詞の一節があったがために始めたことですが・・・。
今日は、いきなりエライ部分を抜粋することに。

先輩じゅり風呂さん達も同じ状況かと思いますが、先週の「songs」放映直後から拙ブログも、ツアー開催期間に匹敵するほど多くのアクセスを頂いております。
TVを観た浮動票の方々が、「ジュリーwithザ・ワイルドワンズ」「涙がこぼれちゃう」といった検索フレーズで、情報を求めているのです。
今夜の放送で、それはさらに勢いを増すでしょう。
僕のブログをヒットしてくださった方々が、いきなり「ズキュ~ン」だの「バキュ~ン」だの、そんな文章で始まる記事を普通に読んでくださるものでしょうか。

でも。
嘘はつけない、大人のひとに♪
僕がこの曲で一番グッとしたのは、まぎれもなくこの箇所での、圧倒的にパワフルで挑発的なジュリーのヴォーカルだったのですから・・・。

ということで、今回は『JULIE WITH THE WILD ONES』収録曲の中でも抜きん出た存在感を持つ、炸裂・爆裂のナンバーが登場です。
「songs」放映の今日までに、この曲までは何としてもやっておきたかったんだ~。
「ハートにズキューン」、伝授!

昨年末にワイルドワンズとのコラボが公になった時、元気なおじさま達の力強い発動に胸を躍らせる一方で、「ジュリーらしさが封印されてしまうのではないか」と心配したファンの方々も多かったですよね。
そんなことは無かった・・・それどころか。

「ハートにズキューン」・・・作曲は加瀬さんですが、なんとジュリーらしいンンバーでしょうか!

GRACE姉さんのドラムスから始まる刺激的なイントロ、曲のタイトルだけ先に知っていたリスナーに、「これから何が始まるのか」と思わせておいていきなり

ばっきゅ~ん!!

この時点ですでに、名曲確定ですよ。
いわみ様が40年後もブログを続けていらっしゃったら、「史上最大最高齢の爆裂バンド」として確実にネタに挙げられるナンバーではないでしょうか。

そして僕の脳裏には、LIVE会場のお客さん全員が指差しポーズで「ばきゅ~ん!」と叫んでいる様子がまざまざと浮かびあがります。
え・・・またしても僕だけ?
みなさまは、おやりにならない・・・?
一人ぼっちはいやです・・・。

曲は進み、本編Aメロの歌詞も、叩きつけるようなフレーズの連続です。

♪ 犯罪だと妬いてやがる ♪

いいねぇ~、この語感とヴォーカル。
「新・センセイの鞄」にちなんでの”年の差愛”がテーマの詞かな?・・・などという真面目な深読みをする間も曲は元気に続き、再び

「ズキュ~ン!」「ドキュ~ン!」

このフレーズがすべての煩悩を吹き飛ばすのです。
わかったよ、ジュリー。
もっともっと続けて言ってくれ!他に何もすることはない!
そんな気持ちになります。

ただ、「ハートにズキューン」は単にエキセントリックな楽曲、ってだけじゃないんだなぁ。
ここで、「ジュリワンアルバム8大感動事項」のお話に移るのですが

このアルバム、ミックスが神です!

このタイミングで語るからにはもちろん、「ハートにズキューン」は格別に素晴らしい。

僕は、90年代に入ったあたりから、巷のロック、ポップスのミックスが好みに合わなくなり悩んだことがありました。
すべての楽器がそれぞれ同じように、音量がやたらとデカくて、楽曲の最初から最後まで常に沸騰点を押しつけられているような感覚があったんですよ・・・。
間が感じられないと言うか。
まぁ、実はジュリーのおかげで今は克服したんですけどね。

『JULIE WITH THE WILD ONES』のミックスは、痛快でした。僕の好みから逸脱する箇所はまったく無く、最後まで安心して聴けましたね。
ここまで”純情武器に正攻法”な楽器構成を、ここまでデリケートにPANを振り、やわらかく軽快な音に仕上げたミックスには、現代ではそうそう出会えません。

みなさまにも解り易い例を挙げるなら、楽器で言えばアコースティック・ギター。音の配置に注目してください。
どの曲も共通して、行儀良く左チャンネルから聴こえます(2本以上になると、逆にも振られていきますが)。
これだけバラエティーに富んだラインナップ(しかも演奏者がそれぞれの楽曲で異なる)を統一し、アルバム全体の流れを心地よく仕上げるのは、プロデューサーではなく、ミキサーの重要な仕事なのです。
ですから『JULIE WITH THE WILD ONES』は、1曲目から10曲目までの繋がりが素晴らしい!

このアルバムのアレンジ・コンセプトにおいて、アコースティックギターの積極的な導入は最大の肝かと思います。
素晴らしいミックスによって、それが最大限に生かされましたね。
特に、「ハートにズキューン」のアコギは刺激的です。
熱愛台風」にしてもそうですが、パワー型の楽曲でアコースティックギターが鳴っているのは、本当に気持ちが良いものです。

またまたイカ天の話をしますと、かつて
吉田建さんも言っていましたよ。
「この曲にアコギが入ってる、というその時点で、既にイイ!」って。
THE WEEDというバンドについてのコメントだったかと記憶しています。

ところで僕は、この曲のアコギが下山さんなのか柴山さんなのか、特定できないんですよ。
「熱愛台風」は確実に下山さんの音だけど・・・。
まだまだ修行が足りませんね。
LIVEではお二方ともエレキで臨むと思います。
中盤間奏の兄弟バトルでは、ワンズのみなさまよりもさらに一歩前に、ずずいっとせり出してきてくれるはず。

そうそう、LIVEでコーラス参加予定のみなさま。
最後のひと回しだけ「ばきゅ~ん♪」のタイミングがそれまでより1拍遅いですから、気をつけていきましょうね!

さぁ、いよいよ今夜は「songs」2週目。
まずは「プロフィール」。
この大名曲を全国にオンエアーし、多くの新たなリスナーを獲得してほしい、という僕の願望が実現します。
SUNSET-OILというクレジットについての紹介はあるかなぁ。
いわみ様の御説が当っていれば、そのあたりのナレーションがあるかもしれません。
加瀬さんは夕陽がお好きだったのですね。期待しましょう。

危険なふたり」「TOKIO」は鉄人バンドがハジけてくれるでしょう。もちろんワンズのみなさんとのバトルも必見です。

そして「FRIENDSHIP」。
過度な期待は禁物ですので一応冷静に臨みますが、やっぱり、先日「アオゾラ」の記事に書かせて頂いた僕の予想・・・というか熱望ですけど・・・そんな歌と演奏であってほしい。
いずれにせよ、次回更新は「FRIENDSHIP」をお題に、200件目の記念記事となります。
テンション高く行きたいものです。

みなさまも、どうぞお見逃しなく!

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2010年4月 4日 (日)

ジュリーwithザ・ワイルドワンズ 「いつかの”熱視線ギャル”」

年齢(とし)重ねてもグレそうになるよ
「バカ」と罵られそう
遊び慣れずに臆病なまま
内緒の午後にビビりまくる俺

(詞・吉田Q)

~from『JULIE WITH THE WILD ONES』、2010

本日は「新・センセイの鞄」観劇にお出かけのみなさまも多いでしょうが、こちらは気持ちも新たに、アルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』全曲レビューを続行いたします。
元気百倍なのでございます。
あとね、「ジュリーの事で心が苦しくなるのは、真のジュリーファンになった証」なんですって。
J先輩が、そう仰ってくださいました。
ひえ~。前途洋洋にして多難ですわ~。頑張ります。

今日はアルバム8曲目収録の、完全無欠のポップチューン。
収録曲の中、「プロフィール」と共に僕の強力推薦ナンバーですから、大長文は確定してます。あんまり長いと途中で寝てしまう方(カミさん)がいらっしゃるらしいので、枕もそこそこに、いきなりまいりましょう。
「いつかの”熱視線ギャル”」伝授!

まずは恒例、”ジュリワンアルバム8大感動事項”。
今回は僕にとってかなり重要なポイントなのですが。

ジュリーが、自身以外の男性作詞家のペンによる楽曲をレコーディングするのは、「夢見る時間が過ぎたら」(2003年)以来7年ぶり!

コレです。
しかも、ジュリーはそれ以前(90年代後半)から、おそらく覚和歌子さんとの出会いを契機に「自分自身の作詞曲意外は、女性の作詞家に限定したい」というスタンスを貫いていました。
「夢見る時間が過ぎたら」の場合は、大物・伊集院さんが「どうしてもジュリーの詞を書きたい」と猛烈にアピール、例外的に実現したワケで。
(後註:あまりにもプライヴェート感が強過ぎたせいか、サリーとの共作「Long Good-by」という重要な曲を失念しておりました。これも例外ということで・・・汗)

そして今回、ワイルドワンズとのコラボによって、本当に久しぶりの例外パターンが再び産まれました。
これは当初、「涙がこぼれちゃう」の記事で書こうと思ったことなんですよ。
しかし、グッと堪えた。ジュリワン公式サイトで、アルバムのクレジットを見てしまったからです。

「いつかの”熱視線ギャル”」
作詞・作曲・吉田Q

おぉ~っ!
常に詞の考察を不可欠として楽曲に入れ込むスタイルの僕にとって、これは大事件です。
Qさんの尋常ならざる「完全男性視点」な才能による詞については「涙がこぼれちゃう」である程度考察できましたが、僕のような凡人に、Qさんの楽曲タイトルだけで内容を予測するなど不可能。
「いつかの”熱視線ギャル”」・・・なんですかそれは!
と、楽しみにする以外、手の打ちようがないのです。

しかも、みなさま。
事もあろうに”ギャル”ですよ!

ジュリーがかつて「OH!ギャル」について語った言葉は、僕などよりみなさまの方が詳しく御存知でしょうね。
「”ギャル”って単語が、ちょっと・・・」
というワケで、あのカッコいい大名曲が「一番嫌いな曲」とすら言われてしまったのです。
あれから30年余。
今再び眼前にした”ギャル”という単語に、ジュリーはどのように挑んだのでしょうか。

大丈夫なんです。
ジュリーとしてもOKなんです、これは。
以下、得意の深読み体勢に突入いたしますが、吉田Qさんの書いた”ギャル”は、歌われる物語の時点ではもう既に・・・ちょうどジュリーファンのお姉さまくらいのお年に達しているの
ではないかと。
”ギャル”ではなくなっているのですよ。
「いつかの」というタイトル部分を、「あの日の」と置き換えることができると思います。


この『JULIE WITH THE WILD ONES』というアルバム、「あの日」というキーワードを核にしたコンセプト・アルバムである事はみなさまとっくにお気づきでしょう。
「いつかの”熱視線ギャル”」は、その中でも特に重要な1曲なのです。
タイトルを知っただけでは内容を憶測すらできなかった僕は、初めて曲を聴いた瞬間、ひっくり返りましたからね。

なんと、夫婦讃歌!

面白おかしく言葉を散らしていますから、一目では解らないように作られていますが、その実、何という豪快な直球であることか。
「真実の愛」がテーマなんですよ、この曲は(爆爆)!

そしてそれは、ジュリーwithザ・ワイルドワンズが歌っているが故に、Qさんの描いた世界よりもさらに時空が広がってしまう(いや、歌の主人公の現在年齢が上がってしまうだけ説もありますが)という、「涙がこぼれちゃう」と同じ現象を引き起こしています。

「いつかの”熱視線ギャル”」、1番→2番→3番と進むに連れて、時代が進んでいく事はみなさまお解かりでしょう。
1番の段階で物語に登場するのは、バリバリの「ギャル」ですね。当然歌い手=主人公も「バッドボーイ」であるワケです。
絵に描いたような、二人。
バッドボーイがタイトジーンズ娘にに目移りしたりもしますが、どうにかこうにかうまくやっているようです。

ところが転機は2番です。二人の間に温度差が生じてくるのです。
「ギャル」はこの次点で「ギャル」である事を卒業していると思われます。
「♪絵に描いたような暮らし」を支えられるだけの、充分に成長し、分をわきまえた素敵な女性になっています。
ところが男という生き物はどうしようもない
「バッドボーイ」の血は未だに騒ぎ落ち着かず、「絵に描いたような暮らし」は時に窮屈。
慣れてるワケでもないのに、若き日同様の刺激的な恋を求めて、海へ!

ところが。
♪ 夏の恋 待ちぼうけ ♪

若い娘に相手にしてもらえません。

それで良かったんじゃあない?
いいオヤジが、万が一うまいこと若い娘をつかまえたとしても、それこそその娘の元カレに
「しょっぼい男と見かけた街で♪」
なんて歌われかねませんからね。

3番でようやく、「恋心それなりにいつまでも♪」の境地を真に知る主人公。
とうにその域に達していた「いつかの”熱視線ギャル”」は、「やれやれ・・・やっと落ち着いたかこのガキは」と、かなりの御年になってようやく胸を撫で下ろすのでありました。
かくして夫婦は円満に。

・・・って、合ってるのか、僕のこの解釈は?
調子に乗って、歌詞について思ったことは、ほぼ語ってしまいましたが・・・。

でもね、加瀬さんは、そういう風に受け取ったと思うんだ~。
「海」がキーワードになっていますし、かつての「湘南ボーイ」加瀬さんの琴線に触れまくるナンバーだったのではないでしょうか。
そして

「まだまだ若いな・・・よし、俺がこの物語の、さらに続きを書いてやろう」

てなことで作ったのが「僕達ほとんどいいんじゃあない」なのではなかろうか・・・という大胆な仮説も打ち立ててみましたが、いかがでしょうかね~。

あ~あ、詞の考察だけで、すでに大長文になってます。
まだまだお話は半分程度しか終わっていません。


吉田Qさんは不思議なお方で、作詞については、ド直球のコンセプトを少しからかったような愉快な雰囲気に変えてしまいます。この点は僕が説明せずとも伝わりそうですが、実は作曲についても、そうなんですよ~。

高度なメロディー、シンコペーション、コード進行・・・それらを、最も聴きやすく、最も作者自身の気持ちの良い形にまで、噛んで噛んで、なだらかに丸めていくのです。
まずは楽曲として徹底的にいい曲であれ、ポップであれ、という究極の職人技。

あまりにも完璧なポップチューン過ぎて、隠された工夫に気づきにくい仕上がりになっています。

王道のメロディーのようでも、「ちょっと一味違うのよ」という細かい点を拾ってみますと

♪ 誰より熱視線ギャル 俺を好きと言って ♪
    C       Cm               G       E7

太字で表記した「Cm」と「E7」が渋い!
ここは通常ですと「C→D7→G→Em」という進行が常套。
このパターンをどのようにひねっていくか、というのはポップス職人永遠のテーマとも言えますが、例えば白井良明さんだと

♪ 君 素敵過ぎるよ もう 遠のいていく夏 ♪
         C                 D7  G               E7 
     (沢田研二 「グランドクロス」
   便宜上、ハ長調をト長調に移調して表記)

この進行は、ポップ解釈としてかなり「いつかの”熱視線ギャル”」に近いかなぁ。
ちなみに「グランドクロス」は、名盤『第六感』に収録されています(と、さりげなくダメを押しておこう)。

まぁこのあたりは実は序の口でございまして、僕が一番シビれたのは、間奏です。

♪ 夏の恋 待ちぼうけ ♪
  Am7 D7           Cmaj7→Gmaj7→Cmaj7→Gma7

海~な感じのツインリード・アンサンブル。

さらにmaj7コード独特のポヨ~ンとした和音が、待ちぼうけ~な感じをも醸し出していますね。

そして、ハッと我に返る主人公の気持ちの動きを表現したのでしょうか、この後いきなり転調します。キーボードのソロに切り替わって

Dm7→G7→Em7→Am

で、遂に大悟し、奥さんの元へ駆け出します・・・な感じで元調に舞い戻ってコーラスが加わり

A7→D7sus4→D7

以上が間奏の流れ。これはAメロにも、サビにも出てこない、間奏だけのために特別に作られた進行なのです。大変凝った構成だと言えます。

そんなに凝っている楽曲なのに、解り易く表現しまくろうとしうアレンジの心意気もまたスゴイ!
僕は90年代以降、最近のJ-POPのアレンジを聴いていて、「それはどうか」と微妙な感想に陥ることがままあります。
何故無理矢理にでも16分音符の装飾音が強調されなければならないのか。
それは、シンプルなリズム装飾だと、メロディー作りの貧しさが露呈してしまうからではないのか。


シンプルなエイトビートの威力をナメてはいけません。
おそらく吉田Qさんの作曲段階から、本当に良いメロディーが作られた時の最も効果的な”魅せ方”を狙っている・・・「いつかの”熱視線ギャル」は、そんなナンバーでもあります。

Aメロの楽器構成は

・突っ込むドラムス
・動き回るベース
・アコースティックギターの元気なストローク
・エレキギターの繊細なカッティング

それだけです。
キーボードやパーカッション、それにオーバーダブのギターは、「キメ!」という部分にしか出てきません。
これこそがビートルズ直系、エイトビートの正しき道。

だからこそ、Aメロ以外で登場するキーボードのオルガン音色がオイシイ。
そして、左サイドに姿を現すオーバーダブのギターは、シンプルな音階ながら抜群の威力を発揮します。
何よりもこのギターアレンジ、加瀬さんの12弦ギター単音が似合いそうではありませんか。つまりこの曲のリードギターは、2008年のNHK「songs」出演時に加瀬さんが弾いた「危険なふたり」に匹敵する素晴らしさを感じさせてくれるのです。

さらに、パーカッションとしてハンドクラップ(手拍子の音)が登場。
これは「涙がこぼれちゃう」でも導入されている、シンセサイザーで出している音なんですけど、とにかくビートルズの洗礼を受けた者にとって、

「うん、たた、うん、た!」

というハンドクラップの使用は・・・揺るぎない信仰心を示すようなものなんだなぁ。

♪ 黄昏電車で肩を落として ♪
     E7            Am

この部分から始まるBメロ部で導入されるのですが、ここはちょうどジュリーから植田さん(ですよね?)へとリードヴォーカルが引き継がれる箇所ではないですか!
ということは・・・。

LIVEでは、ジュリーがこのリズムで手拍子を煽ってくれる!

みなさま、これは是非とも予習を~。
サビ直前に演奏が一瞬ストップする
「♪灼熱の浜辺♪」(2番だと「ビビりまくる俺♪」)
のトコで、このハンドクラップ音が継続して残っているのが、メチャクチャ楽しい、重要なアレンジの肝なんですから!
会場全体でやりましょう、それを!

「涙がこぼれちゃう」でも、サビを歌い終わった後の演奏部でジュリーは同じ手拍子を煽ると思います。
こちらはプレプレツアーの「AZAYAKANI」と同じタイミング、同じリズムですから難しいことは何もありません。その場でジュリーに身をまかせましょう。

・・・本当に大長文になってきました。
すみません、あと少しだけ。ジュリーのヴォーカルに触れさせてください。

ジュリー最大の魅力は、心ごと、身体ごと歌の世界に入り込む能力。これは僕の中で譲れない絶対のものです。
先に述べたように、かつて”ギャル”というフレーズに違和感を示したジュリー。
”ギンギン”という形容詞が「虚構」を意味するならば、今「現実」を最大の武器にしているジュリーはどんな姿勢で「いつかの”熱視線ギャル”」に臨んだのでしょうか。

「OH!ギャル」の場合は、若い女性の奔放な様を、男性の猥雑な視点で描いたもの。
それはそれで素晴らしいですしまぎれもない名曲ですが、ジュリーにとって消化し難い部分が確かにあったのでしょう。

「涙がこぼれちゃう」「いつかの”熱視線ギャル”」の2篇を知り、僕の中には吉田Qさんの詞についてもまとまった感想が芽生えてきました。

女性には見せたくはない「男心」を敢えて晒す

「枕を濡らしちゃう」であったり「遊び慣れずに臆病」であったり、恥ずかしながらの「男心」の真実を、敢えてコミカルなフレーズで描いていますが、Qさんは相当に自分自身の気持ちを追い込んだ状態で作詞をされているのではないでしょうか。
2篇ともに、ギリギリの線で揺れ動く気持ちを捉えた名作でしたからね・・・。

それは、「心をさらして歌う」というジュリーのヴォーカル・スタイルと何ら反することではありません。
加瀬さんが見つけてきた吉田Qさんという若い才能は、ジュリーが自然に気持ちをこめられる楽曲を書く人でもあったのです。

♪ 街で見かけたよその タイトジーンズのあの娘に
    G                           Bm
     ぐらついてしまいそうさ ♪
        C              Cm

この部分などは、ジュリーが初めて見せるようなヴォーカルニュアンスが聴けたり、楽曲との相乗効果も大きいです。
曲のあちらこちらに、普段ジュリーが歌わないような類のフレーズもたくさんあって、新鮮ですしね。

年齢を積み重ねていく「絵に描いたような=普通の」連れ添った男女の絆。
その境地を吉田Qさんのように20代の若さで到達し、作品にしてしまう・・・それが音楽という、歌というジャンルの素晴らしい点であり、理屈で解明できない不思議な点でもあります。

アルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』に収録された吉田Qさんの2篇「涙がこぼれちゃう」「いつかの”熱視線ギャル”」は、若い作曲家の作品にもかかわらず、ジュリーwithザ・ワイルドワンズの「年齢を最大の武器にする」というコンセプトとズバリ合致し、大きな光を放ちました。
今回「songs」を観て「涙がこぼれちゃう」を知りアルバムを買った方々は、「いつかの”熱視線ギャル”」という、「吉田Qさんの作ったもう1曲」を、大いに期待して聴くことでしょう。
そして「やっぱりイイ曲を書く人だ」と思ってくださるはず。
確固たる作風を持つ、という強みが、そこにあります。

僕の場合は決して「内緒の午後にビビりまくる」ような行いはしておりませんが、人間的成長度は大きくカミさんに水をあけられていますし、男のどうしようもない面が解るだけに、「いつかの”熱視線ギャル”」には相当肩入れしてしまい、余計なゴタクを並べてしまいました。
でも、「良い詞が良いメロディーと良いアレンジに載っている」というのが、聴き手に解るただひとつのことなのです、結局。

そんな曲を、ジュリーが歌ってくれた。
それだけ書けば、良かったんだなぁ・・・。

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2010年4月 3日 (土)

ジュリーwithザ・ワイルドワンズ 「アオゾラ」

アオゾラ 「一緒にいよう」と
約束交わしたあの夏の日
変わらない青さ、変わってくキミに
何度も恋をした

(詞・hyko)

~from『JULIE WITH THE WILD ONES』、2010

すっかり元気になりました。
多くのみなさまのおかげなのです。実際、相当の深手を負いましたから。
僕と同じ凹み方をした方々も多いと思いますが、できれば一緒に立ち直って、元気になって。
共にジュリワンのLIVEに行きましょう
きっとですよ!

今日は、アルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』7曲目に収録されている「アオゾラ」の記事を書きます。
記事の順番が「アオゾラ」で、本当に良かった。
だって、先日のNHK「songs」で僕が一番感動したのは、「愛するアニタ」の植田さんだったのです。
このタイミングで植田さんヴォーカルの「アオゾラ」を語れるのは、とても心強いなぁ。

先日コメント欄でご紹介したYOKO君のメールですけど、続きがありまして。
まぁここでは書けないような文章があって、最後の最後、締めくくりが

アニタ~!

だったのです。
やはり彼もそうか・・・。
あの日放映された楽曲の中で、ずば抜けてバンドマンの心を揺すぶった・・・それが「愛するアニタ」。
植田さんが一番カッコ良かったけど、島さんが最後にオイシイとこ持ってくんですね~、あの曲。
TVを観ながら、横のカミさんに
「やるなぁ、ワイルドワンズ!」(偉そう・・・汗)
って、叫んだもんね。
加瀬さんのソロも最高でしたし。
さすが現役ですね!バッチリ稽古してる曲は、問題なかったわけだ、うんうん。
今はそう思えます。

そして今日のお題は。
その「愛するアニタ」の激しいヴォーカルとは一転、優しさに満ちた最高に渋い植田さんのヴォーカルがフィーチャーされた、これまた名曲です。
「アオゾラ」、伝授!

意外やこの曲、アルバム中、ヘタするとジュリーファンの間では1番人気なんじゃないんですか~?
アルバムから好きな曲を3曲挙げなさい、というアンケートをとって集計したら、「アオゾラ」が第1位かもしれません。
多くの先輩ブロガーさん達も、この曲がお気に入りの御様子。

中でも、「青空」と書けるところを敢えて「アオゾラ」と表記することの意味を考えさせてくださった先輩ブロガーさんの記事は、強く印象に残りました。
その方は広島の方なので、「ヒロシマ」という表記についても教えてくださっていました。

ヒントは、”人間同士の共通の思い”ということなのでしょう。
この「アオゾラ」はきっと”誰か”と”誰か”の共通の思いを示しているのです。単に景色としての”青空”ではないのですね。
僕はこの曲の作詞者・hykoさんについて全く情報を得ていません。女性の方なのでしょうか?
作曲の亀井さんは大物でいらっしゃいますが・・・。

曲の分析の前に、恒例のアレをやっておきますか。
ジュリワンアルバム・8大感動事項!
ズバリ、「アオゾラ」が象徴しているんですけど、新たな魅力が多く詰まったジュリワンとは言え、”懐かしきGSの雰囲気”というのも大切な要素だと思うんですよ。
もしもそればっかりだったら、ここまでの支持は勝ち取れなかったと思いますが、懐かしきGSアプローチは、微量であれ必要不可欠。加瀬さんはそう考えていたはずです。
そこで威力を発揮したのが「アオゾラ」という楽曲。

ただでさえ、”懐かしい感じ”の曲なんですね。
オールディーズ時代からの、古き良き”3連符のバラード”。この手の楽曲については、「君をのせて」の記事でも触れました。

ただ、「アオゾラ」はそれだけでは語れません。
この曲1番の攻めどころ、”3連符バラード”ならではの王道コード進行を、今回みなさまに是非ともご紹介差し上げたい。

♪ 変わらない青さ  変わってくキミに ♪
              G♭   Gdim D♭        B♭7

これです!
「アオゾラ」の場合はキーがちょっと難しいので、ト長調に移調して表記しますと
C→C#dim→G→E7
という事になりますね。

この進行は、日本人がとても好むもので、多くの邦楽に取り入れられてきましたが、特筆すべきは

3連符の楽曲で使用されてこそ、威力を発揮する

という特殊性でしょう。
有名な楽曲で例を挙げると、中嶋みゆきさんの「時代」がすぐに思い浮かびます。この曲はみなさま御存知でしょうから、サビをちょっと歌えば「あぁ!」と手を打って頂けるはず。

でも、僕が是非ここでご紹介しておきたい、大好きな曲があるんだなぁ。
GSと深い関わりのあるアーティストの楽曲。

♪ 生きて     ゆく道連れは 夜明けの風さ♪
    C     C#dim  G      E7    Am   D7  G

(寺尾 聰「出航 -SASURAI-」)

ザ・サベージのベーシストであった寺尾さんが1981年に放ち、あまりの大ヒットに”お化けアルバム”とも言われた『リフレクションズ』から、大トリのバラードです。
3連符というだけでなく、ワルツというのがスゴい。
この美しい盛り上がり部、途中までなのですが「アオゾラ」と同じ進行である事が、コード表記にてお解かり頂けると思います。
「アオゾラ」を聴いて、僕は久しぶりに”3連符バラードの王道進行”に身を震わせました。
理屈は知らずとも、この部分に感動した方は多いのではないか、と思っています。

レコーディング・クレジットでは、ベースを弾いた、Bank Bandの美久月千晴さんのお名前が目を引きます。
Bank Bandは、当時まだ普及半ばであった「エコ」という概念をコンセプトに持つ、超一流のアーティストが集結したユニット。
楽譜は再生紙で作らせて頂いたのですよ~。

さて、植田さんのヴォーカルです。
先日放映された「愛するアニタ」を観て改めて思ったことでもあるのですが、このお方、キャラと歌声が合ってないですね。
それまでジュリワンについては今ひとつ乗り切れていなかったカミさんが、アルバムを聴いて、「この内容に植田さんのトークがあるならLIVEが楽しみ」と、やや乗り気になってきました。
まったく同感で、植田さんのおしゃべりはLIVEの重要な核となるやもしれません。ジュリーはあんまり喋らないかも、ですよ、お姉さま方。

そんな植田さんがひとたび歌い出すと、ハスキーというだけでなく、懐の深い叙情性で魅了させられます。
普通カスレ声系のヴォーカリストには、尖った印象を受けるものですが、植田さんの場合はとても優しい。
う~ん、てことは・・・キャラと歌声は実は合ってるのかな?

この名曲、ジュリーが歌ったヴァージョンってのも、想像すると背筋に電気走りそうですが、LIVEでは多くの方が植田さんのヴォーカルに癒されることでしょう。
ワイルドワンズの演奏を「songs」で予習できて良かったなぁ。彼らの演奏も、とても楽しみになってきましたもの。

最後に。
本当は来週の「songs」までには全曲のアルバムレビューを終えたかったけど、ギリギリ間に合わないような気がしています。

だから、ちょっとだけ先に書いちゃいます。
これは、「FRIENDSHIP」の記事で書きたかったことなんだけど・・・。
次回の「songs」、見どころを予想!

アルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』からは、「プロフィール」「FRIENDSHIP」の2曲が放映されるようですね。
まずは「プロフィール」、大っ好きな曲だけど、まぁ色々な意味で覚悟はできています
それで良いのです。
だって、拙ブログ左サイドの”検索フレーズランキング”を御覧ください。
涙がこぼれちゃう」、1位2位独占ですよ。
これは明らかに「songs」の影響。
僕は以前記事にも書きました。「プロフィ-ル」をどんどん巷で流して欲しい、と。
きっと来週は「プロフィール」の検索数が爆発するでしょう。
ということで。

でもね。
「FRIENDSHIP」については、油断禁物だと思うんだ。
変な覚悟はしないでおきます。
鉄人バンドへの男気がある一方で、ジュリーには加瀬さんへの男気もあるはずだから。

「今夜だけの、スペシャルヴァージョンでお届けします」

そんなナレーションが、僕の頭の中ではすでに流れちゃってます。
柴山さんがアコギのアルペジオ、下山さんがエレキ。
泰輝さんのピアノ、GRACE姉さん渾身のフィルイン。
ワンズのみなさまが、スタンディング横並びでコーラス。
加瀬さん、目が真っ赤。

なんてことになったら、どう?
期待し過ぎかな?

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