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2010年3月

2010年3月31日 (水)

ジュリーwithザ・ワイルドワンズ 「僕達ほとんどいいんじゃあない」

東京タワーに明かりがついて
一番星がその上に
「あの星とって、君にあげる」と
言ったら ふき出した

(詞・加瀬邦彦)

~from『JULIE WITH THE WILD ONES』、2010

予告よりも早い更新です~。
とにかくスゴイです、『JULIE WITH THE WILD ONES』は。
まったく飽きません。
毎日毎日、通勤時間、移動中、帰宅後、何度も繰り返し聴いているというのに・・・。

しかも、まだまだ新しい発見があります。
既に書き終えた収録曲の記事に、この後に及んで手を加えたくなるほどです。語りつくしてしまいたい。
プロフィール」の美しいコード進行(「メジャ~リ~ガ~なんざ~♪」の箇所でA→G#m7→F#m7と下降していく感じがシビレる)とか、「熱愛台風」の3本目のエレキギターは下山さんであろう、とか、「Oh Sandy」の間奏リードギターがGSテイストなんだなぁ、とか。

そこはグッと堪えて、今日からいよいよアルバム後半。
楽曲記事の前に、ますはお約束の「ジュリワンアルバム・8大感動事項」から参ります。
今回採り上げる感動ポイントは・・・。

新しいCDにジュリーの写真がパッケージされるのは、2000年のアルバム『耒タルベキ素敵』以来・・・何と10年ぶり!

これですわ。
長いファンの方々にとっては、かなりの大事件ではなかったですか?

裏ジャケはほとんどシルエットだけですが、CD盤の中敷部に、あまりにもカッコ良いジュリーの立ち姿が~。
これは、「渚でシャララ」PVの際の写真ですね。
何か重要な打ち合わせのタイミングだったのでしょうか、ジュリーもワイルドワンズのメンバーも真剣な表情です。
ジュリー、加瀬さん、島さんの3人が左前方向を見つめていますね。そちらにモニターがあったのでしょう。

この写真のジュリーのカッコ良さにつきましては、多くの先輩ブロガーさんが画像付きで採り上げて熱く語っていらっしゃいますから、僕としては敢えて、別の角度からこの写真を考察してみたいと思います。

これ、PV撮影現場のショットである事は明らかですから、ワンズのメンバーが演奏姿を披露しようとしている楽曲は、当然「渚でシャララ」ということになりますよね。
そんな前提のもと、弦楽器のお三方をじっくり観察してみますと・・・。

File04921_2

↑ ベースの島さん。
   4弦5フレットを押さえています。これはAコードのルート音「ラ」のポジションです。「渚でシャララ」のキーはAですからね!

File04922

↑ ギターの鳥塚さん。
  島さんや加瀬さんが「準備オッケ~!」の面持ちでスタンバっているのに対し、鳥塚さんは「もう1回、おさらい!」といった雰囲気です。
 押さえているコードはE。
 「渚でシャ~ララッ♪」のA→Eの部分を再度試し弾きしてるんじゃないかな?

File04923

↑ 代名詞でもある12弦ギターの加瀬さん。
  このフォームを見て、僕はとても嬉しかった!
 出している音はAの和音なのですが、変則的なフォームです。ひとさし指で1弦と2弦の5フレットをセーハ、中指で3弦6フレット、薬指で4弦7フレットを押さえています。Fのローコード・フォームをそのままずらして、5フレットを起点にしてAの和音を出しているのですね。
これはコードがAだからこそ威力があるフォーム。何故なら、開放の5弦をルート音として併用できるからです。加瀬さんは12弦ギターですし、この押え方だと高音から低音まで網羅した厚い響きが得られます。
空いている小指を使って、susu4などのアレンジメント・コードを細かく挿入することもできます。
そして、これは指の長いプレイヤーに限られるのですが、親指で6弦5フレットを押さえてルート音を倍増!という荒業も可能。加瀬さんの親指は見事に6弦に届いていますね~。

何が嬉しかったのかと言いますと、僕もよくAで同じ押さえ方をするんです(僕も結構指が長いんですよ)。
僕はビートルズの「涙の乗車券」でこのフォームを覚えました。加瀬さんもそうだといいなぁ・・・。


今日はそんな加瀬さん、作詞・作曲のナンバーがお題。
アルバム6曲目。ジュリー曰く「笑うで~」な、ジュリワン・ツアー・タイトルにもなっております。
「僕達ほとんどいいんじゃあない」、伝授!

アルバムの中ではこの曲だけ、リズム隊が生音ではありません。
ドラムスは打ち込み、ベースは打ち込みではなく、キーボードのベース音パッチで実際に弾いているものと思います。
ただ、打ち込みとは言っても、これもまたある意味昭和の音なんだよね~。ドラムスのプログラミングは、わざとチープに仕上げていますよ。
こういったシンプルかつちょっとオシャレなリズムの打ち込みに合わせて囁きかけるように歌うスタイルは、80年代の懐かしい匂いがします。

思わずニヤニヤとしてしうような、加瀬さん自身によるほのぼのとした歌詞。
この詞について実は僕には大胆な仮説がございまして・・・。これはね、まだ記事にしていない「いつかの”熱視線ギャル”」の考察と密接な関わりがあるものですから、その時に。近日の機会をお待ちください。

今回は何と言っても加瀬さんのヴォーカル。ソコに触れないわけにはまいりません。
何人かのJ先輩が仰るように、確かに憂歌団を思い起しますね。
でも、僕がこの曲を初めて聴いた時に連想したのは、意外なバンドの意外なナンバーでした。あまり有名な曲ではないけれど

ユニコーンの「Oh, What a beautiful morning」。

♪白衣のマドンナ ルミさんの検温♪

・・・だったかな?そんな詞なんですけどね。
穏やかでコミカルで、それでいてちょっぴり切ない老境男性の独白。ヴォーカルのみならず、そんな歌詞の雰囲気も「僕達ほとんどいいんじゃあない」と似ているなぁ、って。

声質は全然違うのですが、歌唱に向かうアプローチがね・・・。
”年齢かえりみず、ちょっとエッチに駄々こねる”という共通のコンセプトがそう思わせたのかもしれません。
それにこの2曲、メロディーやアレンジの狙うところ、つまり曲作りの際にインスパイアされた洋楽のオマージュ元が同じであるように僕は想像するのです。

それは、ビートルズの

「ホエン・アイム・シックスティー・フォー」
「ハニー・パイ」

このあたり。
迫力あるロックンロールや、至高のバラードが身上のポール・マッカートニーが時折見せる得意技のひとつ。
懐古的でのどかな曲調とアレンジ、そして甘えるようなヴォーカルがこれらの楽曲の特徴です。
加瀬さんはもちろんのこと、「Oh, What a beautiful morning」の作曲者である奥田民生さんも、ビートルズの引き出しをたくさん持っていますから。オマージュの源が重なっても不思議ではありません。

加瀬さんは当初、「僕達ほとんどいいんじゃあない」をジュリーに歌ってもらおうとしたそうですね。
おそらく、先に挙げた2曲での、ポールの甘えん坊ヴォーカルのような感じで歌ってほしかったんだと思います。良くも悪くも、ポールのこの手のヴォーカルには、自然と”可愛らしいいやらしさ”が加味されるんですよ。
それをジュリーに求めたんじゃないかなぁ。
「もっといやらしく」と、さかんにジュリーにリクエストしていたようですからね。

結局ジュリーが「うまく歌えない」とのことで、加瀬さん「自分で歌っちゃえ」と。
いいんじゃあない?
加瀬さんのヴォーカル。
熟年カップル(或いは、長年の友人)の、さりげない求愛の歌声。
特別でなくても、風格感じる♪

アルバム全体を通して、「ちょっとリラックス」的な位置に収録されているのがまた良くて。無論、加瀬さんヴォーカルになったが故のこの配置、だとは思いますが。
ジュリーが歌っていたら、アルバムの核にもなりかねない(笑)。なんたってツアータイトルですからね~。

キーはホ長調で、転調こそしませんが複雑な進行、コードチェンジも激しいです。加瀬さん、さりげなく刀を抜きましたね。
LIVEで、加瀬さんはギターを弾きながら歌うのでしょうか。加瀬さんがBaugのコードをどんなフォームで押さえるのか、興味深々です。

あとこの曲、淡々と演奏しているようですが、LIVEでは2本のギターに注目です。
おそらく右サイドから聴こえるパートが柴山さんになるでしょう。コードカッティングもボサノバ風、さらに間奏ギターソロは4小節と短いのですが、この音階はぬお顔率高し!と見ましたよ。
そして、下山さん担当になるかと思われる左サイドの音。これ、ひょっとしたら下山さん、スティールギターを弾くかもしれません!寝かせて弾く、ハワイアンなギターね。
下山さんは過去のジュリーLIVEでも、スティールギターを弾いたことがありますよね。この曲のLIVE、僕は密かに下山さんガン見に期待しています。
最初から最後まで泰輝さんが活躍するのは当然でしょう。キーボードの音色は2種類を使用かな?またまた大忙しですね。

さてさて、注目はジュリーですよ。
この曲でジュリーは何をするのか。コーラスと言っても、出番はほとんどなさそうですし・・・。
僕としては、タンバリンを持ってほしいなぁ。
後追いながら、過去の映像を観たり音源を聴いたりしますと、タイガース時代からジュリーのタンバリンには、どの曲でも強烈なグルーブ感がある事がわかります。特にLIVEはね!
一方のタンバリンの雄・シローはただ叩いてるだけのようでしたが・・・。

キッス音は加瀬さんが自分でやってしまいそうな気がしますが、お姉さま方はジュリーに期待しているのではないですか~?

さぁ、そんなこんなで『JULIE WITH THE WILD ONES』、アルバム発売から1週間、今日はいよいよNHK「songs」ですね。
今日の放映はGS時代のヒット曲中心のラインナップで、アルバム収録曲は流れないかもしれませんが、シングル「渚でシャララ」だけは観れるようです。
みなさま、どうかお見逃しなく!

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2010年3月28日 (日)

ジュリーwithザ・ワイルドワンズ 「Oh Sandy」

街から10マイル
水平線はゴールド
満ち始めた 波打ち際
君が手を振る

(詞・GRACE)

~from『JULIE WITH THE WILD ONES』、2010

音楽劇「新・センセイの鞄」の評判がよろしいようでございまして。
僕はLIVE以外のジュリーはちょっと控えよう、という考え方でおるのですが、勿体ないですか・・・。

今日は、僕等自身は観劇しないにも関わらず、お芝居を観に上京してきたJ先輩にランチを招かれ、お昼前にカミさんと新宿高島屋まで出かけました。
ま、場所がズバリの場所だったからでしょうか、いつの間にやら人数も増えておりまして楽しいひととき。
みなさま当然、アルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』をヘビロテ中でいらして、僕の記事にも目を通して頂けているようで・・・ありがとうございますありがとうございます。

そんなワケで、アルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』伝授シリーズ、今日も元気に続きます。
まずは恒例、”ジュリワンアルバム8大感動事項”から~。

ひょっとしたら覚えていらっしゃる方も。
僕、どこかの記事のコメントで
”mumoの試聴コーナーだと、ベースが聴きとれない曲がいくつかある。心配だ~!”
と、書きました。

せっかく「渚でシャララ」シングル盤で、ジュリーwithザ・ワイルドワンズという新たなバンドサウンドを世に知らしめたのだから、アルバムで一般の方がとっつきにくいベースレス・レコーディングは、新しいリスナーの初見イメージをマイナスで固定してしう恐れがあります。今回だけは、それは避けて欲しかったのです。

杞憂でしたわ~。
全曲ガツンとベースあり(「僕達ほとんどいいんじゃあない」だけ、キーボードで弾いてますけどね)の完璧なポップ対応サウンド!
あらためて、「このアルバムはマジに行ける!」と思えました。

しかし。
大先輩のいわみ様もこちらで書いていらっしゃるように、もはやオリコンチャートに一喜一憂する必要はない・・・そんな内容のアルバムであるように思えてもきました。
本当に優れた作品が評価されるのは当然のこと、夏を越えてロングセラーに、それもまた良し。
僕としては、このアルバムの素晴らしさを、世の中に向けてできる限り詳しく発信するのみですね!

それではまいりましょうか。
今日はアルバム5曲目です。
ハード・ロカビリーなナンバーは、実は加瀬さんの作曲において隠れた得意技。
しかもこのパターンの楽曲は、LIVEでジュリーの熱唱モード・スイッチが入ること間違いナシです。
「Oh Sandy」、伝授!

この曲も、ベースがとても重要。
大体、シャッフルリズムの2ビート系、4ビート系の楽曲は、ベースの果たす役割ってすごく大きいんです。あるとないでは、聴こえ方がまるで違います。
僕はアルバム『俺たち最高』収録の「NOW HERE MAN」には今でも違和感があるんです。素晴らしい楽曲だと思うだけにね。
少なくともレコーディング音源に関して、ああいったリズムの楽曲には、ベースが必要なんですよ。


すべてのジュリーナンバーの中で、最もベースが素晴らしい楽曲を挙げろと言われれば、僕は文句なく「ジャンジャンロック」ですし。
これまたロカビリー・タッチのナンバーですよね。

さて、ジュリーにとっては、そんな久しぶりのロカビリーナンバー。「Oh Sandy」は上田さんのイカしたベースも活躍し、完成度の高い仕上がりですが。
左右のギターが、ブランキー・ジェット・シティーばりの、ハード・ロカビリーなんだなぁ。
特に左サイド。2番から忽然と姿を現すカッコ良さが、現在のミュージックシーンでは、ロカビリーの王道とされる技なのです。
右サイドのギターは、「I wanna hold you~♪」と歌いながらAmを起点にエロエロな雰囲気を醸し出す部分で、サウンドのエロ化に激しい小指のフォームチェンジで一役買っていますね。
大体は、楽曲全体を通じてベースとドラムスの噛みで伴奏をこなし、ギターは生き物のように変幻自在に動き回る、というのがハード・ロカビリーの醍醐味と言えます

まさにこのタイプの楽曲が、過去のジュリーナンバー、しかも加瀬さん作曲の作品群の中にあったことを、みなさま覚えていらっしゃいますか?

アルバム『耒タルベキ素敵』収録の「ねじれた祈り」。

「Oh Sandy」は、同じハード・ロカビリー・タッチというだけでなく、GRACE=加瀬邦彦コンビの続編だったというワケですね~。

GRACE姉さんの作詞の素晴らしさは、視線に何のてらいもなく、それでいて歌い手(ジュリー)への憧れがあり、キラキラとしたフレーズを織り交ぜられている点です。
「逆光線のライン♪」とか。
そういったキラキラなフレーズをいくつか組み合わせて、「歌」へと昇華させていく作詞作業。GRACE姉さんはドラムス演奏にせよ作詞にせよ、”決して器用ではないが、素直な歌心”を持っているのが最大の強みではないでしょうか。
それはそのまま、”加瀬さんと手が合う”ことにも繋がると思います。

その加瀬さんの曲。上田さんのアレンジもゴキゲンな仕上がりで。
イントロは、Am→Bm→C→D(add9で弾くと雰囲気が出ます)と刺激的なカッティングで導入。このアレンジはザ・バーズの「WHY」じゃないかなぁ。

ならば普通のエイト・ビートか・・・と思わせておいて、3小節目でドミナントのE7に着地した瞬間、この曲がロカビリーのリズムである事が初めて解る仕掛けです。

ロカビリーと言えば、そりゃもうプレスリーの時代から・・・。60年代のマージービートにも大きく影響を与えているワケですし、したがって日本のGSにも要所要所で取り入れられていたはずです。
僕はタイムリーでないのでその空気感は掴みにくいのですが、この曲を「GSっぽい」という先輩方の評価には、そんな下地があるんだろうなぁ、と思え、とても共感できます。

「Oh Sandy」のキーはイ短調(Am)です。登場するコードはシンプルながら、うねりのある進行(F→Gの部分だけ譜割が長かったりとか)。
短調のロカビリーは、ストレイ・キャッツの影響もあったエキゾチックス時代からジュリー・ヴォーカルとの相性は抜群ですし、「Oh Sandy」はアルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』収録曲の中で最もLIVE映えする可能性があります。
楽しみですね~。

ところでこの曲、ジュリーのエロティックな
♪I wanna hold you~♪

の後に、もう一発
♪I wanna hold you~!♪

と、メチャクチャ渋い追っかけコーラスがあります。
曲が進むに連れてどんどん爆発していくコーラスなのですが、これ、誰ですかね~。
植田さんのようでもありますが、少し声質が違うような。
鳥塚さんではないようですし、加瀬さんがまさか。
島さん・・・?
僕は詳しく知らないのですが、島さんって「愛するアニタ」のシャウトの人なんですよね?

とにかくこのコーラス担当のお方、終盤のハジけっぷりは見事です。
エンディング間際の

♪Oh sandy~!♪

ジュリーを食ってしまいそうなシャウトが、次曲「僕達ほとんどいいんじゃあない」の脳天気なほのぼのした感じを引き立てているような気がします。
『JULIE WITH THE WILD ONES』というアルバムは、そんな各曲の収録順、繋がり方がまた素敵。
どの時代でも大切な、名盤の条件ですね。

さてさて矢継ぎ早に『JULIE WITH THE WILD ONES』から3曲連日の記事更新をさせて頂きました。
もちろんこれから、残り5曲も続けて記事を書くのですが、明日からはキビシイお仕事が待っております。
月末はね~。色々とね~。
次回更新はsongs観た後になるかなぁ。

てなことで、みなさま。
3月31日のsongsをどうかお忘れなく~!

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2010年3月27日 (土)

ジュリーwithザ・ワイルドワンズ 「熱愛台風」

軋む骨まで
裂かれるような恋になろうぜ
号泣する恋になろうぜ

(詞・沢田研二)

~from『JULIE WITH THE WILD ONES』、2010

引き続きアルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』よりお届けいたします。
楽曲の前にまずはお約束の”ジュリワンアルバム8大感動事項”からまいりましょうか。昨日の「プロフィール」では、ワイルドワンズのみなさまのヴォーカルパートが素晴らしい、という点を挙げましたが、さて今回は。
これ、本日のお題とあまりにも密接に関係する、重要なポイントでございます。

鉄人バンドを引き連れ!
ソロモードのジュリーが炸裂する!

『JULIE WITH THE WILD ONES』の豪華ヴァラエティーに加味された嬉しい刺激、絶妙のスパイス。そんなソロモードのロッケン・ジュリーナンバーが2曲も収録されているのですよ~。
今日はその中から、ガツンと昂ぶるアルバム4曲目。
老いて盛んな「熱愛台風」、伝授!

作詞・作曲・沢田研二
ドラムス・GRACE
ベース・上田健司
ギター・柴山和彦、下山淳
キーボード・泰輝

おぉ~~~!
ジュリーオリジナルの楽曲で、鉄人バンド、上田さん、そしてワイルドワンズが酒池肉林の大共演だぁ~!

GRACE姉さんのオープン・ハイハットのカウントに始まり、柴山さんのゴキゲンなフレーズと、下山さんのアコギ(「Pleasure Pleasure」とまったく同じ鳴りなんだこれが)がガッシャンガッシャンのストローク。
お~っと、泰輝さんは「BAMBINO EXCUSE」ばりの音色でホンキー・トンクなオルガン、そして上田さん職人芸のベースが絡みます。
ジュリーのさわやかでハートウォームな恫喝ヴォーカル(なんだろうねその表現は)を、ワンズのみなさんが愉快なコーラスで追っかけるっ!

・・・待てよ。
このコーラス、LIVEでは僕らも参加して追っかける・・・のでしょうか?

どれどれ。
コーラス部分の詞は、と・・・。
なんたって、作詞がジュリーですからね~。おそるおそる・・・。

♪瞳も唇も指も♪

うぉ~、老いて盛んな、エッチなジュリー節。
視線で舐めるパーツが、若造とは一味違うワケです。リズムに載って発音すると、楽しいですね~。

♪別離がつらくて♪

歌詞カード読んで自然に「わかれ」と発音転換してしまいましたが、ストレートに「べつり」と読ませるのね。ジュリーらしい。うんうん。

♪神経も脳も六感も♪

おお、いいじゃないですか。メロディーの抑揚に合わせて母音が伸びるフレーズ。「ロッカン」って語感も気持ち良いですし。

♪ふたりじゃ熱くて♪

良いですね、歯止めの効かない感じ。

♪夜は家で男料理♪

はは・・・独特ですね~。

♪触れ合おうイチャイチャ♪

・・・・・・。
う~む、もしも客席でコーラス参加してるのが自分一人だった場合、ここは結構恥ずかしいぞ・・・大丈夫かなぁ。

まぁ、ハナから参加することばかり考えている僕こそがオカシイですか。
「台風(タイフ~ン♪)」って箇所のハモりは、是非参加したいのですが・・・。

「熱愛台風」はこのように、”いつものジュリー”色が満載の愉快でハッピーな歌詞が、これまた”いつものジュリー”的に一筋縄ではいかないトリッキーな構成の曲に載せて展開するという、ジュリーファンにとって安心感いっぱい・ずっぱまりの名曲です。
さらに、これは多くの先輩方もそうかと思いますが、イントロの瞬間に「おぉっ鉄人バンド!」という、耳馴染んだ演奏がタマランのですね。

上田さんは鉄人バンドと相性抜群ですよ。アレンジも、メンバーの個性を重視しています。
イントロのギターフレーズ部は最初「E→E7、E→E7」とハードにコード進行するのに、フィルイン後の5小節目から、同じギターフレーズに合わせているにもかかわらず、コードが「E→A7」とポップなニュアンスの進行にチェンジしています。初めて聴いた時にはドキッとしました。
難しい箇所ではなく、何てことのない、それでいて必ず聴き手の耳に残るであろうポイントでこのひとひねり。細かいですが素晴らしいアレンジセンスです。
おそらくジュリーが作った「E→A7」のイントロ・コードに、上田さんがハードな4小節分の導入部を加えた、って感じでしょうね。

詞のヤンチャが目立つ曲ではありますが、相変わらずジュリーの作るコード進行は面白い。
型に嵌った着地をせず、小節のキメの部分で放り出すような進行なのです。

♪ア~、情熱のキスだ~♪
   A       B7  E        G#7

このG#7の放り投げ。
普通ホ長調の曲でG#7使う場合はもっと露骨に泣かせ進行にしちゃうモンだけどねぇ。やっぱり、そのあたりがジュリー作曲の魅力ですか。
僕はこの部分、同じホ長調のナンバーで

♪ゾッコンなんだよね~♪
   E                     G#7

ってのを思い起こしましたけどね。
でもこれは、他にモロ同じな進行のジュリーナンバーがある!と僕の貧弱な記憶をたよりに脳が叫んでいます。思い出したらまた註で書きますわ~。

ヤケクソのようなサビメロ(褒めてます!)もジュリーらしくて、これ、音階だけで言うと

♪ミミミミ~ミミミ、ミミミミ~ミミミ~♪

オイオイ、ってなもんですが、コード進行は

♪シビレル~ような、恋にな~ろうぜ~♪
   C                       A               E

ギターを弾く方はお気づきかと思いますが、ここに登場する「C」「A」「E」の3つの和音をローポジションで弾いた際、コードフォーム上、1弦はすべて開放なのですね。
1弦の開放音は、高い「ミ」です。つまり

ジュリーはこの曲をギターのローポジションでコードチェンジしながら、1弦の音を耳で拾ってメロディーをつけた

という作曲手法の証明ができてしまうサビなんです、これは。
ずっと伸ばしていた爪を切ってギター弾いて
「エエ曲ができたんですよ~」
と、プレプレツアーのMCで報告してくれたのは、どうやらこの「熱愛台風」ですかね~。いやぁ、エエ曲ですよ、ジュリー!

それにしても、ここへきて鉄人バンドは本当に、ジュリーも含め、「このメンバーでないと出せない!」というバンドとしての音を確立してしまいましたねぇ。
長く長く、続けてほしい。
そんなことも感じさせてくれた『JULIE WITH THE WILD ONES』の4曲目。
こんな収録曲が入っていることもまた、予想以上の歓びでした。
つくづく、懐の深いアルバムですよね~。

そうそう、最後にひとつだけ。
歌詞で

♪Ah 熟愛テクだ~♪

という、いかにもジュリー!ってフレーズが出てくるじゃないですか。
これ、「熟愛手管」のダブルミーニングですかね。
深読みし過ぎ?

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2010年3月26日 (金)

ジュリーwithザ・ワイルドワンズ 「プロフィール」

子供の頃と変わらぬものが
今僕に語りかける
まだ見ぬ場所が 次のページが
「歩みを止めるな」と言う

(詞・Sunset Oil)

~from『JULIE WITH THE WILD ONES』、2010

アルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』は、期待を遥かに上回る大名盤でした。
誇張ではありません。
加瀬さんの自信。「ええのができましたよ」という、「歌門来福」でのジュリーの報告。よくよく思い起せば、当然の傑作。
つまり、僕の予想が甘かっただけです。
「難しいことは考えず、楽しめればそれでよい」
と、その程度の心構えしかなかったのでした・・・。

客観的に、超良質なアルバム。全曲にそれぞれ違った良さがある見事なヴァリエーションです。
贔屓目なしに、「これは売れる」と思える・・・これは初めてタイムリーでジュリーの新音源を聴いた『Pleasure Pleasure』の時の、一人のジュリーファンとしての「名盤!」という感想とはまったく異なる意味のものです。
『Pleasure Pleasure』は、新規ジュリーファンとしての大切な宝物。『JULIE WITH THE WILD ONES』は、ジュリーやワイルドワンズのファンを問わず、一般世間に対して、「聴いてくれ!」と思ってしまう作品なのです。

予想を越えて感動したポイントはいくつも挙げられます。
僕はこれから時間をかけて8曲分の記事を書きますから(1曲目「涙がこぼれちゃう」、2曲目「渚でシャララ」については、シングルリリース時にすでに書いておりますのでどうかあらためてご参照のほどを)、8つの感動ポイントを小出しにその都度書いていきますが、まず1つ目。
これは良い意味で一番裏切られた点なのですが、鳥塚さん、植田さん、そして加瀬さんをフィーチャーしたリードヴォーカル・パートが、とても素晴らしくポップであった、ということ。
ワンズのみなさんは、日々ヴォイストレーニングに励んでいたそうですね。それを知っていながら、僕はその成果のほどを軽く予想し過ぎていました。
できればアルバム収録曲すべて、最初から最後まで、ジュリー一人のリードヴォーカルで行ってほしいなぁ、なんて考えていたのです。
アルバムを聴いた今となっては、そんな自分が恥ずかしい。穴があったら入りたいですよ。

この埋め合わせは、微力ながら全力で各曲の記事を書き、少しでも多くのみなさまにこのアルバムの素晴らしさを伝え、一般の方々にも興味を持って頂くこと、それしかありません。
頑張ります。

さて、収録曲の中で
「ジュリー一筋で歩いてこられた先輩方には、ひょっとしたらイメージがずれてとっつきにくいのかもしれない」
と僕が考えるナンバーが2曲あります。
「プロフィール」と「いつかの”熱視線ギャル”」。
全曲素晴らしいという中で、僕はこの2曲を猛烈に推します
これまでジュリーや加瀬さん達に興味のなかった若いリスナー層に訴えるパワーを、充分に秘めていると考えたからです。
・・・いや、「若い」というのも少し違うのかな。

ここで、「歌門来福」2月5日でのジュリーのMCを思い起してみましょうか。

「レコード会社は、”ジュリーwithザ・ワイルドワンズのターゲットは40代”って言うのよ。そんなん、団塊の世代に決まってるじゃないですか。人数多いトコ狙わんでどうするの~!」

その時は僕も、「仰せの通り!」と思いました。僕はその時すでにシングル「渚でシャララ/涙がこぼれちゃう」を聴いていたわけですが、それを踏まえてなおかつ、ジュリーの言う通りだ、と思ったのです。

ところがアルバムを通して聴いてまず、「これは、GS回帰以上に、まったく新しい、ジュリーや加瀬さんなりのバンドスタイルの音だ」という印象を受けました。
その点を考えるうちに引っかかってきたのが、「プロフィール」「いつかの”熱視線ギャル”」の2曲でした。

エイベックスさんは販促のプロです。
ジュリーやワンズへの思い入れ抜きにして、現実に完成したアルバムを吟味し、どの層にウケる音に仕上がっているのか、をプロの耳で判断した結果「40代」という答えが出たのではないでしょうか。

40代・・・ズバリ僕ですね。

例えば、僕が東京ドームにも行かず、相変わらずのまま2010年を迎えていたと仮定してみます。
当然、このブログもじゅり風呂にはなっていません。先輩方の熱い声を聞くすべもなく、ジュリーが今何をやっているかも知らない状態だったでしょうね。
そんな時、ふとどこかで「プロフィール」か「いつかの”熱視線ギャル”」を耳にしたとしましょう。

「おっ、イイ曲!今はこんなのが流行ってるのか~」

とまずは軽く反応・・・のちに

「あれ、もしかしてジュリーじゃないのこれ?」

と気がつき、色々と調べてみる。
で、アルバムを買ってみる。感動。
YOKO君を誘いLIVEに行く(たぶん川口ですね)。
さらに感動して、二人して「ジュリー祭り」DVDを買ってみる。

ハイ、40代が2名、一丁あがり。

もちろんこれは、”新しいリスナーを獲得”という狙いにおけるターゲット層の話です。
まずジュリーと同年代の方々が聴いて感動できる、というのはセールスのスタート地点、前提としてあるのではないかと。
ずっとジュリーやワンズを追いかけてきた先輩方は、販促が無くともついてきてくださいます。
GS世代で音楽から離れていた方々も、「渚でシャララ」で戻ってきてくださる。エイベックスさん、そして加瀬さんの狙いは、その先の開拓層にまで視野にあるのではないでしょうか。

とすれば、次の作戦として上記2曲のうち「プロフィール」を巷でガンガン流してほしい、と僕は思います。
メロディーと音作りで新規ファンをとりこめますし、この曲は、加えてじっくり聴いた時に、多くの幅広い層に共感を呼ぶメッセージがこめられた詞を擁しているからです。

今日はそんな期待感を込めて、アルバム3曲目「プロフィール」の記事を書きます。
しなやかな飛翔、湧き上がる勇気、明日への決意。
実は最大の謎を残したまま、伝授!

とにかくですね。

作詞・作曲・Sunset-Oil

このクレジットが大きな謎としてまだ残っているのです。
僕はそのお名前(ユニット名?)に何の心当たりもなかったものですから、検索しまくりましたが・・・。
何もわからない。
いつも頼りにしている博識の先輩方数人にお尋ねしてもわからず、会社で聞きまくり調べまくっても、わからない!

アルバム制作に臨んで、加瀬さんが聴いたという、知られざる200曲の中のひとつ?
それとも、特別な企画作曲?

無名の若手なのか、未だ僕の知らない実力者でいらっしゃるのか。
いや、まさか覆面クレジットの超大物?

わかりません。
僕のつたない想像では、30代~40代の男性アーティストの作品なのではないか、と愚考しておりますが・・・。
この詞の主人公が、それくらいの年代として描かれているように思えるんですよ。

”折り目のとれたスーツ”を着て、通勤途中の海岸線で”波待ち人をうらやんでいる”、社会に出て慣れてきた頃の年代。
そんな働きざかりの年代が、しばし若かりしヤンチャな少年時代を振り返り足を止めますが、「まだまだこれから!」と気合を入れ直す歌のように思えます。

「プロフィール」というタイトルの付け方、また”バッティングセンター”→”特大のホームラン”→”メジャーリーガー”という独特の連続するフレーズ・センスは、オーガスタ系の「ス」がつく大物アーティストの得意技を連想します。
また、流麗に流れ、うねるようなロングトーンのメロディーは、「レ」がつく大物バンドの作風を彷彿させますが・・・どうなんでしょう。

謎は、謎のまま♪

しかしですよ。
この詞をジュリーwithザ・ワイルドワンズが歌うと、風景が変わるのです。だって、”プロフィール”のページ数自体が違う(人生経験特記項目が多いってことですわな)のですから、時空が飛び、スケールが大きくなります。
これは、「涙がこぼれちゃう」の記事で書いた感想とも重なります。

では、ジュリーwithザ・ワイルドワンズの歌によって、新たにどんな風景が見えてくるのでしょうか。
恒例の深読み(個人的な妄想とも言う)で、まずはその辺りを紐解いてまいりましょう。

初めて聴いて、その場で泣けてしまう楽曲なんて、滅多にないですよね。
僕はこの「プロフィール」を初めて聴いて(すまん、アルバム到着即、いきなり3曲目から聴きました。そういう人多いかも・・・。今はちゃんと最初から通して聴いています)、カミさんに隠れて泣きましたよ。

ホント、泣ける・・・!
泣ける曲というのがどんなナンバーなのかは人によって違うと思いますが、そうそうあることではない・・・いや、僕も年をとったってことなのかな?

「年のせいか、涙腺が弱くなってな」

なんて、ジュリーもドームで言ってましたっけ。

では、年をとるとは、どういうことなのでしょう。若い頃と比べ、何が変わっていくのでしょう。

♪傍若無人に酔う 大器晩成を希望
  思った通りには行かなかった ♪

1番のこの詞。

♪傍若無人に酔う♪
これ、周囲迷惑かえりみず酔っ払ってる、なんて意味では決してないですからね(いや、深読みですからご容赦を)。
若い少年の頃には未来に恐れを持たず、「俺は俺だ」「俺がルールだ」・・・極端に言えばそんな世界に住んでいます。そんな前途洋洋たる己の存在にに陶酔する(酔う)ことが簡単にできるのです。

♪大器晩成を希望♪
そして少年は、青年となり、社会に出てゆきます。
「うん?俺の人生、考えていたのとは少し違う。いつの間にか皆と同じように、世間に右倣えか?・・・いやいや、まだまだ、俺はこれからだ」

♪思った通りには、行かなかった♪
しかし時は流れ、気がつけばこんな年に・・・。
昔は明日のことなんかまったく考えなかった。遠い未来を考えれていれば。
でも、そんな事を語り合ったあの頃の仲間は皆、何かが劇的に変わる”明日”を待ちわびていたんだ。

・・・考えてみれば、今でも俺はそうなんじゃないか。

そう考える自分は、素敵な大人になったんじゃないか。

♪あの日の空と あの日観た夢
  あの日の僕はここにいる ♪

年をとるということは、物事が解ってくるということ。
う~ん、こりゃ当たり前の事です。先輩方はとっくに境地、その域には達していらしゃるかもしれません。
しかし、僕はこの「プロフィール」という曲を聴いて、初めてそんなことを考えたのでした。
年をとることが、怖くなくなった・・・楽しみにすらなってきました。

そんなことを気づかせてくれたのは、卓越した詞曲もさることながら、この素敵過ぎるヴォーカルの威力のおかげですよ。

Aメロのヴォーカルは鳥塚さんです。
鳥塚さんのパートは、何度か拙ブログで解説したことのある、ダブルトラック処理。”ひとりで2度歌う”パターンではなく、”ひとつのテイクをコンマ数秒ずらして重ね合わせる”という、ジュリーナンバーで言えば「バイ・バイ・バイ」で使われたレコーディング技術ですね。
いいです、このヴォーカル!
ちょっと足を止めて若かりし頃に思いを馳せている「普通の」おじさま。
Aメロは、1番にしろ2番にしろ、そんな人物像が浮かびあがる歌詞です。それをこの鳥塚さんのヴォーカルは何の脚色もなく自然に表現しています。

鳥塚さんは今回のレコーディングではかなり苦労された、という話もあったようですが、例えば1番2回し目の

♪ あいつらどうしてるかな
   地元はあいかわらずかな ♪

の「かな」を「かな~♪」と抑揚をつけるのが鳥塚さんにならではの独特のアプローチで、とても良い!楽曲の求めるところと合っています。

で、そんな鳥塚さんの歌を聴きながら、
「ジュリーは?ジュリーの歌は、まだ?」
と身構えておりますと

♪ 明日のことなど どうでもよかった頃 ♪

ジュリーきた~!!ぐぁ~カッコえ~~~!!

ここはメロディーのニュアンスも一変する重要な箇所。
大体、キーがEの曲でC#m→B→Aとサブ・ドミナントに向けて降下していく進行(アコギのストロークにとても合う)は基本的にそれだけで泣けます。
それがガツ~ン!とこの曲お初のジュリーヴォーカルでカマされるわけですから。

「どうでも良かった頃♪」の「頃」を、「こぉろ♪」と段階をつけて語尾着地するのが、今も昔も変わらぬジュリーの必殺技です。
最後の「ぉろ♪」が果てしなく色っぽい。この歌唱法はジョン・レノンとジュリーが双璧だと僕は思っています。

でねでね、ここでは、「おぉっジュリー来たぁ!」とリスナーの脳と身体が反応した直後のタイミングにズバリ合わせるかのように、

3拍目の裏から突然キーボードが噛んでくる!

その「シ~ソ#~」というたった2音の導入部が、小便チビるくらいにカッコ良いのです!
左サイドから聴こえてくるオルガン系の音です。少し注意して聴けばみなさん容易に気づけるはずですよ。

という流れで、ここでいきなりアレンジの話に飛ぶのですが、編曲の上田健司さんを僭越ながらご紹介いたしますと。
元ザ・ピロウズのリーダーにしてベーシスト。
和製オルタナ系の猛者。プロ中のプロ。職人中の職人。
上田さんは途中で離れてしまいますが、ザ・ピロウズは平成のミュージックシーンを席捲したミスター・チルドレンなどのバンドメンバー多くからリスペクトを受けている超・実力派バンドです。
(関係ないですがバンドスコアもよう売れとるのよ)

「JULIE WITH THE WILD ONES」の楽曲クレジットが公になった時、編曲者に上田さんの名前を見つけ、僕は祈るように
「いつもの上田さんの感じでお願いします。できればベースも弾いててくださいませ~」
と期待いたしました。
見事、期待通り!
地味ですが本当に素晴らしい技とセンスを持ったお方なのです。良い音楽のオイシイ聴かせ方を心得ていらっしゃる。
上田さんのベースはまさしく職人芸。
また、間奏もリードギターも、心が燃え上がるようなフレーズですよね。
これは、LIVEではおそらく柴山さんのパートになりますよ!想像するだけで胸が高鳴るではありませんか~。

アレンジでは、2番Aメロ部にもかなりシビレます。
ギターカッティングとハイハットを残して静まる演奏。
情景は、車の窓からふと見かけた若い波待ち人を眺め、心の足を止めている渋滞の海岸線通勤ロード。
「いや、まだやれるはず!」
と、主人公が徐々に躍動を開始するのは、4連打で忽然と噛みこむドラムスのキックが表現しています。
そして・・・。

♪今だってビッグウェイブ(ざっぱ~~~ん!)
   狙っている~(ざざ~~~ん!) ♪

この大きな波音のS.E.(サウンド・エフェクト)こそが、抑えきれない魂の咆哮。
ブリッジとサビのジュリーももちろんカッコいいけど、このアレンジに溶け込んだAメロを歌う鳥塚さんは、最高にカッコいいぜっ!
やっぱりこのアルバムは夏だ。
夏に爆発する!

この「プロフィール」という楽曲には、本当に勇気を貰いました。
僕の中では、「愛しい勇気」と同じくらい、魂を揺さぶられ、活力が湧き上がるナンバーです。
そして、ジュリーwithザ・ワイルドワンズが歌うことによって、僕よりずっと年上の先輩方にとっても、明日への指標となっている、これは大名曲ではないでしょうか。

コツコツと積み重ねてきた、分厚い”プロフィール”(年齢)を最大の武器にして、今しなやかに飛翔したイーグル達。
69歳・加瀬さんが狙う”ビッグウェイブ”を、僕もみなさまと同じように、応援しています!

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2010年3月24日 (水)

流れはジュリーwithザ・ワイルドワンズだ!

「JULIE WITH THE WILD ONES」

聴きました。
まさかここまでの名盤とは・・・。

今回のコラボに少し戸惑いのあった人。
長くジュリーやワンズ、GSから離れていた人。
今のジュリーが好きな人。
昔ジュリーが好きだった人。
ワンズが青春だった人。
タイガースが青春だった人。

最近ジュリーにハマった人。

必聴!
泣くかもよ。

戦略的に言えば、良い意味で今のJ-POP寄りなナンバー「プロフィール」でセカンドシングル切れば、若い人も充分取り込めるんじゃないだろうか?
贔屓目無しに、このアルバムの完成度なら、加瀬さんの夢は叶うかもしれない。

そうだった。
ジュリーが「歌門来福」のMCで

「ええのができましたよ~」
って言ってたじゃないの~!
信じた人の勝ちですね。

僕も、僭越ながら近日中に、順を追って拙ブログにて全曲レビューいたします。

こりゃLIVEもきっとスゴイぞ~!
まずは、渋谷当たれ~。

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2010年3月23日 (火)

いよいよジュリワン週間!

みなさま、レスが遅れております。ごめんなさい。

ジュリーに堕ちて以降、「えっ?こんな時期にこの人とからんでたの?」とか「うわ、この曲はジュリーとからんだあのお方の作品だったのか!」といったような驚きの連続なのでございますが。
昨日はひょんなことからず~っと、「悪魔の手毬唄」(市川昆監督・石坂浩二主演)のサントラを延々と聴きまくっておりました。
音楽は村井邦彦さんだったんですね。「哀しみのバラード」「仙人峠」は大名曲です。しかもシンセサイザー演奏は深町純さんだし!

てなことで時間がなくなりまして。
レスは本日帰宅後までお待ちくださいませ~。

さて、今朝待ちに待った密林さんからの発送メールが届きました。
ジュリwithザ・ワイルドワンズのアルバムです。
今夜着くのかな?
しようと思えばできたフライングを我慢し、みなさまと同じようにこの日を待ち焦がれていたワケですが・・・。
密林さんのメールがさ。

本日、ご予約頂いておりました「未定」を発送しました

・・・「未定」って!
密林さん、早くタイトル登録してくださいよ~。

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2010年3月21日 (日)

ザ・ジェノバ 「さよならサハリン」

いきなり、ごめん!
本当は、昨日のRRGのライブに行こうと以前から思っておりまして、記事もそうなるはずだったんですが・・・。
バンドの最終ミックス作業により断念。
何か代わりに・・・と考えて突如思いついたのが今日のお題。

ジュリワンアルバム発売を目前にして、未だにジェノバ中毒が僕の体内に潜伏し続けている模様なのです(怖)。
とりあえず、何か記事でも書いて自分のスイッチを切り替えなければ・・・と。
興味の無いみなさまは、今回はどうかスルーしてやってくださいませ。

しかし。
ジュリーとまったく関係ない(まぁGSという括りはあるにせよ)記事を書くのは2年ぶりかぁ。しかもそれがザ・ジェノバなんていう、少し前までまったく知らなかった邦楽バンドの曲になるとはなぁ・・・。
いや、今や完全にじゅり風呂化した拙ブログですから、読んでくださっているみなさまの方が、もっとワケわかりませんかね。


何故僕が、ジェノバの音楽性に引っかかったのか。
今日は彼等のサード・シングル「さよならサハリン」を採り上げ、その辺りを、自分自身に整理をつける意味でも突っ込んで書いてまいりたいと思います。
伝授!

まず、ジェノバにハマった一番大きな要因として、リンクさせて頂いておりますいわみ様のこちらの紹介記事があまりにも面白かった、という事が挙げられます。
御記事には丁寧に音源まで添えられておりますから、こりゃ誰しも聴いてしまいますわな。
しかもいわみ様がニクイのは、音源を小出しにして少しずつ煽って、焚きつけていくわけですよ。
で、最後の最後に「はい、どうぞ」と纏めてすべて聴かせてくださいます。

やられた~!!

なんですかこの人達は。

まずはそれしか言いようが無かったです。
コンセプトの素晴らしさ(と一応言っておきましょう)はいわみ様のお言葉にお任せするとしまして、色々自分なりに解釈した結果。
やはり僕は、やり過ぎた音楽が好きなんだな、と。

明らかにやり過ぎですから、ジェノバ。

メロディーだけについて言うと、わりと当たり前な歌なのですね。ロシア民謡と日本のメロディーは相性が良いという動機もあったようですが、これは正統派の昭和歌謡です。
ですから、いくらGSの多くが洋楽を下地とし、なおかつ日本人的なメロディーを加味していたとは言え、ジェノバの曲はその範疇からはちょっとズレています。
キーはハ短調。ひねったコード進行はまったく出てきません。歌の上手い人が直球で聴かせるようなメロディーなのです。
ザ・ジェノバの場合、そんな昭和歌謡のメロディーをバンドで演奏、「
バンドサウンドならば一応GSと呼べるだろう」というやり口。
それだけでは非常に安易な、実態のない音にもなりかねません。
それを打破しているのは。

まずは歌詞です。
「さよならサハリン」は特にそうですが、”ロシア=北”をイメージさせるフレーズを、何でも良いからとにかく大上段に振りかざし、歌詞のあちらこちらにまんべんなく落下させる、という荒技です。
僕はいわみ様の御記事拝見直後、この「さよならサハリン」のレコーディング音源を求め
カルトGSコレクションVol. 2(クラウン編)』というコンピレーションCDを購入いたしました。
中村俊夫さん、黒沢進さんの楽曲解説は大変素晴らしいのですが、どの収録曲も作詞・作曲者のクレジット、そして歌詞カードそのものが無いんですよ!
何かマズイ事情でもあるんでしょうか・・・。

「さよならサハリン」で落下する特殊フレーズをいくつか挙げますと、

♪別れの歌を歌ってた 泣くな泣くなよバラライカ

♪暗い海だよ流氷は 海峡越えて何処へゆく♪

「バラライカ」はロシアの民族楽器。
しかし、「バラライカ」って!
何よりもこの語感の素晴らしいことよ。
ちなみに、シベリアサウンドのバンドにイタリアの都市名がついているのがジェノバ最大の謎でしょうが、この「さよならサハリン」では、「バラライカ」と歌っておきながらアレンジで導入された楽器はマンドリンだったりもします。
ちょっとズレてる方がいい♪

「流氷」は言わずもがな。
この一見GSソングの道具にはなりそうもない、ある意味マヌケな「バラライカ」「流氷」といったフレーズが、ジェノバの演奏に載せてメロディーになるといきなり破壊力抜群なのは、一体どういうマジックでしょうか。

その鍵は、やはりヴォーカルでしょうねぇ。
陶酔度においては、レンジャーズやプレイボーイ(いずれも上記CDに収録)には敵わない。ただひとつジェノバのヴォーカルが彼等の技を凌いでいるとすれば・・・。
到達点の高さでしょう。

何故、「バ・ラ・ラ・イ・カ~♪」と大げさに発音しているように聴こえるのか。
「りゅ~~う~ひょうわぁ~~♪」というヤケクソのようなメロディーに哀愁が漂っているのは何故か?
それは、ヴォーカルが捨身で歌のコンセプトに対峙しているからです。


例えば陶酔・痙攣のバンド、ザ・レンジャーズ。
このバンドのヴォーカルはこれで当然、まったく別の素晴らしさがあるのですが、ヴォーカルのスタイルがキャラクター表現の方向性を持っている事は確かだと思われます。
ザ・プレイボーイについても同じ(このバンドはギターもキャラ表現だったりしますが)印象を受けます。

ところがジェノバは・・・キャラとか、自己表現とか、そんな余裕がまったく感じられません。
必死で歌の世界に立ち向かうしかない。他に生きる術はない。

♪さよなら(つぶやくように) さよなぁぁら(叫ぶように) サハリン(落下フレーズを大ゲサに)♪

歌唱力は決して秀でていない。だから、生きるために歌の世界に対峙しよう。
その”負”のエネルギーが生み出した到達力。
この曲のヴォーカルを「どんなヴォーカルですか?」と問われれば、

サハリンにさよならするようなヴォーカル

と答えるしかない。技術的な形容詞は一切つきません。
それが、ザ・ジェノバの歌なのです。

常に追い込まれている感じ。一口に”情念のヴォーカル”と言っても、他バンドとは意味合いが異なるのですよ。向いてる方向が違うワケです。
コンピレーションCDを聴き、「おぉっ!」と思ったバンドはいくつかありましたが、僕の耳には、ジェノバのヴォーカルは突出して聴こえました。

では、彼等の演奏についてはどうなのでしょうか。
これが、スゴイんです!
上手い、とは言っておりません。スゴイんです。
「さよならサハリン」では何と言っても狂乱のドラムスが最も印象に残ります。失礼ながら、上手いプレイヤーにこの空気は出せない。これもやはり歌への対峙・志の高さと言うべきでしょう。
デビュー曲「サハリンの灯は消えず」では、リードギターについてまったく同じことが言えます。「さよならサハリン」ではリードギターの見せ場は用意されていませんが、右で鳴っている単音はキチンと練りこまれ組み立てられ
た音で、1番歌メロ直前導入部のベースとのアンサンブルが素晴らしいですね。

ザ・ジェノバにはコーラスにも特徴がありまして。
基本、ユニゾンという・・・。
さすがにキメ部ではハモりますが、基本ヴォーカルと同じメロディーを複数で歌う・・・そんな、プロのGSコーラスサウンドを逸脱した手法が炸裂。
これはコーラスというものではなく、ハモりの技術に劣るメンバーをもってして、大人数で歌って音の厚みを出せば楽曲の迫力が増すであろうという、非常に乱暴な、玄人にあるまじき考えによるものかと思いますが、何とザ・ジェノバの場合、それが成功してしまっているのです!
この肉厚のユニゾン部があればこそ、ヴォーカルソロ部の慟哭が光っているとも言えます。

1番→2番→3番という間奏ナシの昭和歌謡構成。
しかも3番はサビすら割愛され、

♪会えるその日は まだ遠い
  まだ遠い まだ遠い まだ遠い♪

と連呼しながらのフェイドアウト。
「え~っ?」と言う間に終わってしまう、サハリンとの別れの物語。
「キャラクター」という言葉に囚われ見逃されている「普通のお兄ちゃんの真剣な格闘」というものがGSの中に多くある事を僕は最近学んでいますが、普通のお兄ちゃん達が、何かの境地に到達する様を感じることのできる楽曲はそう多くはありません。

ザ・ジェノバはそんな数少ないバンドなのではないかと。
そして、突き抜けているものはロックなんだな、と改めて思った次第でございました。

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2010年3月17日 (水)

沢田研二 「純白の夜明け」

from『JULIEⅡ』、1971

Julie2


1. 霧笛
2. 港の日々
3. 俺たちは船乗りだ
4. 男の友情
5. 美しい予感
6. 揺れるこころ
7. 純白の夜明け
8. 二人の生活
9. 愛に死す
10. 許されない愛
11. 嘆きの人生
12. 船出の朝

--------------------

僕が1番好きなジュリーのアルバムは、ダントツで『JULIEⅡ』。
このことは、拙ブログ読者のみなさまの多くが御存知のようで、しかもそれがどうやらみなさまにとっては「結構意外なアルバムが1番好きなのね」という感覚を持たれるらしく・・・。
今までお会いしてきた先輩方に「何で?」と尋ねられた事、実はもう十数回。

未だに、その場でうまく説明できておりません。

初めて聴いた時は、そうでもなかったんですよ。
まぁこの時はね、『いくつかの場面』『チャコールグレイの肖像』『今度は、華麗な宴にどうぞ』『A WONDERFUL TIME』と合わせてアルバム5枚一気買いでしたから。
かわるがわる一気に聴いてたら、そりゃすぐに結論は出ません。
最初の印象は、「演奏のミックスが強めで、歌わされてる&やらされてる感バリバリの作品だな」という、言語道断な感想でした。
大変お恥ずかしい。

しばらく経って、夜中に歌詞カードを熟読しながら通して聴いていた瞬間いきなりヤラれ、大興奮してYOKO君に超推薦のメールを打ったのでした。
すぐに電話がかかってきて

「マルチェロマルチェロって言われても、何のこったかわかんねぇ~よ!」

的なYOKO君の質問を受けるに始まり、平日夜更けまで僕は一方的に散々語り倒したものです。

僕はまず、コンセプトアルバムが好き。これはハッキリしています。
ところが最初に『JULIEⅡ』を聴いた時は、そのコンセプト自体が陳腐、と言うか歌謡曲的、と言うか、どうにもうまく噛みくだけない状態でした。
それが突如掌を返したきっかけは、それまで知らなかったタイプのジュリー・ヴォーカルに気がついたからです。
それは、それまで僕の中に勝手に作られていたジュリーのイメージが一新された瞬間でもありました。

このアルバムのヴォーカルを「神だ!」と気がついて以降は、山上さんのコンセプトも神々しく思えるようになり、どの曲も過剰に好きになり、生き生きとした映像が浮かぶようになり・・・。元々最初に聴いた時から、演奏とアレンジの素晴らしさが突出している事は解っていたので、あっという間に『JULIEⅡ』は、僕のジュリーアルバム・ベストワンの座に踊り出ました。

決して完成形ではない、それ故に言い尽くせぬ大きな魅力のあるヴォーカル。
無垢な高音、何をしでかしても笑って許されるいたずら好きな少年が、歌を歌う瞬間だけは天使へと変貌する・・・『JULIEⅡ』のヴォーカルについて、僕にはそんな印象があります。

また、ヴォーカル・ミックスが小さめなのが逆にソソると言いますか。
ジュリー本人、そして周囲のスタッフ誰一人、この作品の録音時点ではまだ「歌の神」の存在に気がついていないまま制作されているのですよ!
(加瀬さんだけは気がついていた説も有力ですが)

それこそが、『JULIEⅡ』の特異な点であり、いまひとつ世間で軽視されている(ように僕は感じてしまいます)要因なのではないでしょうか。
だって、的確なアレンジ・演奏を推しまくった(いや、それはそれで抜群に素晴らしいのですが)ミックス、つまり、ヴォーカル中心の作りにはまったくなっていないのに、よく聴くと実はジュリーのヴォーカルが最も傑出している、というよくわからない仕上りになっているのですから。

ドーム堕ち以前の話ですが、後追いの僕はまず、「これはいわゆるロックであろう」と予想されるアルバムから順に聴いていきました。
『TOKIO』」→『G. S. I LOVE YOU』→『S/T/R/I/P/P/E/R』と攻め、自分はもう完全にジュリーにハマった、という自覚のもと購入したのが、先に挙げた5枚。
ところがこの時点で、まだ僕には「ジュリー=ド派手・ギンギン」というベストテン世代特有のイメージが強く残ったままでした。
そのせいでしょう、『いくつかの場面』『チャコールグレイの肖像』そして『JULIEⅡ』は当時の僕のジュリー像とかなりかけ離れていて、最初は「おや?」という感じでした(汗)。
タイムリーで追いかけていたみなさまは、タイガースからPYG、ソロとすべてがキチンと繋がって、ギンギンのジュリーへと辿り着いたのでしょうが、僕はいきなり時代を遡ったものですから・・・。
一度好きになってみると、70年代のジュリーの変遷、それぞれ何と素晴らしいアルバム達でしょうか。ヒヨッコは今さらながら深く反省するばかりです。

中でも『JULIEⅡ』は特別で。
楽曲の良さ、演奏のクオリティー、コンセプトの統合性、アレンジの緻密さ、洋楽とのタイムリーな関連事項。
これらについては、各収録曲ごとにいくらでも説明できますが、僕がこのアルバムに抱いている、ヴォーカルへの圧倒的な心酔については、一体どう述べて良いものやら・・・。
おそらく主観の領域であることを僕自身が自覚しているのでしょうね。
「愛に死す」なんて、

ココのアレンジがストーンズの「LOVING CUP」みたいだ、とか、3番が2番までと同じコード進行なのにまったく違う別メロの大サビで・・・

などと、色々書きたいことがあるのに、肝心のヴォーカルが好き過ぎて言葉が足らず、なかなか記事に書けないでいる、という恐ろしい状態なのです。

っておい!
いつまでアルバムの話をしている?!

今日のお題は・・・そう、加瀬邦彦さん。
「指」よりも、「感情ドライブ」よりも、僕がジュリーにエロを感じる作品が、実は加瀬さん作曲のナンバーであり、それがこの『JULIEⅡ』に収録されています。

危うい雰囲気を演出するアレンジ、妖美なるメロディー。
名曲「純白の夜明け」、伝授!
(って、前置きが長過ぎて既に読むのをやめてしまっている方々がいらっしゃる予感)

『JULIEⅡ』のヴォーカルは結果的に神レベルになっている(と僕は思う)とは言え、録音現場で、言葉は悪いですがある意味”歌わされている”状態であった事は確かだと思います。
その受身的な取り組みが”若い少年役”というコンセプトに合致し、無垢なヴォーカルへと昇華、マジックを産むワケですが、収録曲の中にいくつか、ジュリーが敢えて「こう歌いたい!」という主張を見せているナンバーがあるように思います。

タイガース時代の洋楽カバー曲の歌唱スタンスに似せた情熱的な表現により、シングル・ヒットを導いた、「許されない愛」。
過剰なまでの感情露出で、複雑な構成の楽曲を完全に手中に収めた、「嘆きの人生」。
そして、ファルセットと地声ギリギリの境界線で発声、ヨガリ・・・いや失礼、官能の言葉をメロディー表現に託した、「純白の夜明け」。
この3曲です。

『JULIEⅡ』を聴き返すたびに常に考えるのは、このアルバムの収録曲、どういう順序でヴォーカルを録っていったんだろう、ということ。
1曲目から順番に、物語に沿って感情を切り替えながら歌っていったとしか思えない・・・そんな出来映えに聴こえてしまいます。
美しい予感」→「揺れるこころ」→「純白の夜明け」と続くヴォーカルニュアンスの変化・繋がりは特に素晴らしい。それはこの3曲が、物語の上で最も美しいシーンであり、当時のジュリーの容姿・キャラクターにピッタリ重なることも影響しているのでしょう。
それぞれ堯之さん、大野さん、加瀬さんの作曲ナンバーというのも、偶然とは言え意義深いですしね。

「純白の夜明け」は主人公の少年が初めて船乗り夫人と結ばれるシーンを描いたもので、ズバリの内容ですからエロいのは至極当然ですが、ヴォーカルの入り込み度が高いことにより、耽美な雰囲気が全面に押し出ています。
僕はひょっとしたら、『JULIEⅡ』についてだけは、先輩のお姉さま方と同じ乙女目線で鑑賞しているのかもしれません。
先輩方はジュリーのすべてに対してこのエネルギーで立ち向かっているのかと思うと、凄いことだなぁと思ったり。

さて加瀬さんの作曲ですが、ヴォーカルや歌詞にも負けないくらい、妖しいムードを狙っています。
60年代後半~70年代初頭に、アフター・サイケデリックやプログレッシブ・ロックのバンドが流行させた、”長調のトニック→ドミナントのマイナー”というコード進行の応用がAメロに使われています。
普通にトニック→ドミナントの和音移動だと、これは非常に使用頻度の高い進行で、例えば、今をときめく「渚でシャララ」(おかげさまで楽譜の売れ行きは好調です。わざわざご紹介くださった、とも吉様、ねこママ様、本当にありがとうございます!)の場合は

♪渚でシャララ♪
    A  E7

このパターンですね。王道です。
しかしトニック→ドミナント・マイナーの理屈ですと、この「E7」の部分が「Em」にとって代わる、ということになります。
楽器を嗜まれるお方は、試しにEmで弾いて歌ってみてください。変な感じでしょう?
この「変な感じ」を敢えて狙う。それが、「純白の夜明け」で加瀬さんがやろうとしたことなのです。

ドミナントをマイナーに転換する進行は、あのビートルズの楽曲に使用例が無かったため、当時ロック界での新鮮度が高く、「ちょっと変」「無気味」というイメージを曲に味付けする役割を果たしました。
その後は色々なパターンの楽曲に使用され、今では「ちょっと変わっている」程度で、かなりポップス寄りの解釈がなされています。
ジュリーナンバーで例を挙げますと、

♪夜霧に頬を濡らして♪ (「愛の嵐」)
    F                Cm

♪蒼く萌える風♪ (「Beloved」)
    A           Em


調はそれぞれ違いますが、進行の理屈は同じです。
歌メロ部ではありませんが、「明日は晴れる」のイントロ、エンディングにもD→Amという同様の理屈によるコード進行が登場します。

さて、加瀬さんは「純白の夜明け」で、このパターンにさらにひと工夫加えておられまして、

♪夜明けが窓を~♪
   Cmaj7     Gm

単純にC→Gmではなく、4和音のコードに置き換えて、どんよりした気だるい(エロい)空気の表現に一役買っています。
このAメロの気だるさが、サビに切り替わったとき

♪夢では~ないの♪
   Fmaj7      Em7

という泣きのコード進行の美しさを際立たせる効果もありますね。

『JULIEⅡ』収録曲の緻密なアレンジにつきましては、僕が箱ラーデビューさせて頂くきっかけとなったあいら様の素晴らしいレビューがございますので、まずはそちらをお読み頂くとしまして。
「純白の夜明け」のみならずアルバム全体を通して言えることですが、東海林先生、意外や鋭いロックテイストをお持ちです。
「純白の夜明け」で間奏にトランペットソロを導入するのは、洋楽サイケバラードの流行と関係がありそうな気もします。
この曲は、ピアノやドラムスもカッコ良いサイケデリック・ロックの味ですね~。
僕の大好きな「シー・エミリー・プレイ」(ピンク・フロイド)のバラード版といった趣の仕上がりです。
先に述べたAメロ部、Cmaj7→Gm7の箇所は音階で言うと「ド・ミ・ソ・シ」→「レ・ファ・ソ・シ♭」という和音移動なのですが、2つの和音構成唯一の共通音である「ソ」の音を、両方のコード演奏部2小節にまたがって歌う女声コーラスも、アレンジの肝かと思います。


あと、重要なのは東海林先生入魂のアレンジに見事に応える演奏陣の高い技量。
『JULIEⅡ』は、邦洋楽問わず、1971年時点でのロック・レコードにおいて最高峰の演奏であることは強調しておきたいです。特にアコースティック・ギターのテクニックには驚かされました。
こんな音源が、あの時代の日本でリリースされていたとは。しかもそれがジュリーのアルバムですからねぇ・・・。

僕は基本的に、普通にCDを持ってさえいれば、お宝のレコード盤アイテムを集めよう、と思う気持ちはさほどありませんが、この『JULIEⅡ』だけは、中古屋でレコード盤を見つけたら買ってしまうかもしれません。
あの歌詞カードを、レコードのライナーサイズで欲しいのよ~。

CD版の歌詞カードには、細かいですがトホホな誤植もありますからね。それについては、いつか「揺れるこころ」の記事にて書かせて頂くとしましょう。
気になるお方は、一足先にCDの歌詞カード、「揺れるこころ」のページをチェックし直してみてみてくださいね。
誤植は歌詞部ではなく、ストーリー部ですよ~。

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2010年3月14日 (日)

沢田研二 「I'LL BE ON MY WAY」

from『G. S. I LOVE YOU』、1980

Gsiloveyou

1. HEY!MR.MONKEY
2. NOISE
3. 彼女はデリケート
4. 午前3時のエレベーター
5. MAYBE TONIGHT
6. CAFE ビアンカ
7. おまえがパラダイス
8. I'M IN BLUE
9. I'LL BE ON MY WAY
10. SHE SAID.....
11. THE VANITY FACTORY
12. G. S. I LOVE YOU

--------------------

予定より早く、日曜日に見参いたします。
今日はスタジオだったのですが、予約が混んでいたため朝イチで入り。おかげで早く帰ってこれたのです。
今日も渋~いナンバーで行きますよ~!

てなことで。
思えば、中高生時代の僕は基本、ビートルズやストーンズを中心に洋楽ロックばかりを聴いていたのですが、日本人アーティストをまったく無視していたワケでもありません。
当時は邦楽ロック界で佐野元春さんが頭角を現してきた時期でもあり、洋楽ロックを聴く友人達は、大体並行して佐野さんも聴いていました。
もちろん僕も。
その佐野さんがまさにその時期、ジュリーに楽曲提供していた事を約20年後に知ることになろうとは、夢にも思わなかったですが。

その時は残念ながらジュリーには辿り着かなかったものの、佐野さんに関連して杉真理さんや大瀧詠一さんなどの楽曲を知りましたし、そして・・・銀次兄さんのアルバムも聴いたっけなぁ。

今日は、その伊藤銀次さん作曲のナンバーがお題です。
公約通り、三浦徳子さん作詞の「謎のフレーズ問題」(僕が一人で謎に思っているだけ説・有力)に迫りたいと思います。
アルバム『G. S. I LOVE YOU』から、良質なロック・ポップスのお手本のようなナンバー。「I'LL BE ON MY WAY」、伝授!

まずはこのナンバーの意義について。
軽やかながらどこか甘やかなアレンジ、しかもキャッチーな進行ですのでとても気づきにくい事ですが、この曲は、いわゆる「アイドル歌謡曲」では有り得ないパターンのナンバーなのです。
例えば当時、ビートルズやキンクスを崇拝する連中が掲げた”ネオ・モッズ”という旗印。
その中にふと差し込まれる、スウィートなメロディーを持つミディアムテンポの隠れた名曲。
シングルにはなり得ない地味な作りながら、アルバムの片隅でオイシイ位置をしめる小品。
これすなわち、完全な60年代洋楽直系のポップ・ロックの解釈ということ。

しかも、その曲は決してアーティストの作品の中でメインではない、というのが肝です。

頼れる脇役。「I'LL BE ON MY WAY」こそが”隠れた名曲”と呼ぶにふさわしい。
最初から、アルバムの中の地味ながらキラリと光る小品、というスタンスを目指して作られているという、これはさすが銀次兄さん。
『G. S. I LOVE YOU』全収録曲をアレンジするにあたり、自らの作曲ナンバーで仕上げに一味加えたというワケです。

ポップス王道の進行にちょっと「アレッ?」という和音を挿入するのが、銀次兄さんの計算された作曲手法で、ただ「いい曲」というのではなく、引っかかりを残そうとしているのですね。
例えば

♪やっぱりいつものキャフェに陣どる♪
   Dm7                  Fm         G7

このドミナント(G7)直前のFmの和音、少し変な感じのタメ効果があります(通常パターンだとこの位置にはFを使用するのが常道)。
であるとか

♪でももういいさ I'll be on my way~♪
   F    G7 C        E7              Am Ammaj7 Am7 Am6

のクリシェから、F→Cと以降するのは、実は「もういいさ♪」の「いいさ」の部分のコード、Cから順に、

ド→シ(E7の3番目の構成音)→ラ→ソ#→ソ→ファ#→ファ→ミ(Cの2番目の構成音)

という、1音と半音の2段クリシェの合わせ技。
和音の中の1つの音が徐々に下がっていく進行は世界共通の胸キュン進行ですが、それを敢えて目立たないスタンスの楽曲にスッと差し込むのが、ビートルズ流のロックセンスと言えます。
実は銀次兄さんは、ジュリーというアーティストを素材に、徹底したビートルズライクなアルバム制作に成功した、唯一のアレンジャーなのですね。これは、加瀬さん一人では為しえなかったことなのです。

銀次さんならば、この「I'LL BE ON MY WAY」の収録位置が”レコードB面の真ん中あたり”という事まで計算していた可能性すらありますね・・・。
Aメロの

♪朝目覚めたならぁ~あぁぁ♪

と、語尾の着地までにメロディーがブルブルと旋回するのは、杉真理さんの「NOBODY」などの楽曲を彷彿させます。
このパターンを”音感の不確かな人が作曲した際のクセのあるメロディー”という頭の堅い評価基準が日本歌謡界にはありましたが、まぁそういう方々は洋楽ロックを聴いてらっしゃらないワケだから仕方がない。
ジュリーがキチンと、銀次兄さんの作ったメロディー通りに歌っている事が何よりの答えです。

それではいよいよ、僕が「三浦徳子さんの詞の中で、これだけは意味不明」と首をひねった、「I'LL BE ON MY WAY」詞の世界について語ってまいりましょう。

文句なくカッコいいですし、ロック独特の詞です。銀次兄さんの作曲コンセプトにも合致しています。

♪悪くはないさ 俺の恋人♪

それまでには無かった新しいジュリー像(街に住む俗っぽいが何かに秀でたお兄さん)をも作り出していますよね。
この三浦さんの新路線は、アルバム「S/T/R/I/P/P/E/R」で結実することになります。

過ぎゆく時を、皆と同じように共有するジュリー。
日常に苛立ちながらも、些細な満足に身を預けるジュリー。

そんな都市物語が真骨頂の、銀次兄さんのメロディーと相性のよい詞なのですが、僕が「ん?」と引っかかってしまったのは、2番サビの最後の方。ある意味、ココがキメのフレーズ!という箇所なのですが・・・。

♪沈黙が金だぜ I'LL BE ON MY WAY♪

これは・・・何だろう。
二人の仲は周りには秘密だから、黙ってろ!ってことですかねぇ?
確かに沈黙は金なり、とは言うけど・・・なんか、歌詞の流れからすると、とても突飛なタイミングで出てくるように思えるのですが・・・。
ジュリーの詞ならね、不思議系で片付けちゃうのですが、三浦さんですからねぇ。何か意味が込められているのでしょうが、僕には解読できません(泣)。

1番の同じ箇所が
「レールのない世界へ~♪」
と、やたらカッコ良いもんですから、最後のキメ部にこの諺フレーズが出てじゅるのがどうにも違和感があるという・・・。
う~ん、どなたかが完璧にこのフレーズを解読してくださったら、「I'LL BE ON MY WAY」は晴れて僕のフェイバリット・ジュリーソングの先頭集団に仲間入りなのですが。

ジュリーのヴォーカルは、良い意味で余裕が感じられます。
以前記事に書きました「MAYBE TONIGHT」などについても言えますが、アルバム『G. S. I LOVE YOU』はそういったヴォーカルの楽曲が多く、それ故に「おまえがパラダイス」「THE VANITY FACTORY」という渾身系の2曲がとてつもなく光っているのではないでしょうか。

「Hey, Mr.Monkey」からラストの「G. S. I LOVE YOU」まで、このアルバムには楽曲間の隙間(無音時間)というものがありません。これは、ビートルズが「サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」で初めて世に送り込んだミックス手法です。
アレンジの連続性、曲順の練りこみが問われるこのミックス手法の中、加瀬さん、佐野さん、かまやつさん、鈴木キサブローさんなど名うての作家陣を嫌味なく推し立てつつ、自身の得意技を盛り込んだ「I' LL BE ON MY WAY」をオイシイ位置に組み込んだ銀次兄さんは、してやったり!の手ごたえをこのアルバムに感じたでしょうし、併せてジュリーの信頼をも勝ち取ったことでしょう。

どちらかと言うとストーンズ寄りだったジュリーが放った、ビートルズ流のコンセプト・アルバム。ネオ・モッズ、サイケデリック・ロック、メリーゴーラウンド・ロックと幅を広げ、ジュリーが本格的にロックアーティストへとシフトしたこのアルバムに、伊藤銀次さんの存在は欠かせません。
そんな銀次さんがさりげなく見せた、品の良い主張。
「I' LL BE ON MY WAY」はやはり、”キング・オブ・隠れた名曲”に違いないですね。

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2010年3月12日 (金)

沢田研二 「月曜日までお元気で」

『JULIE SINGLE COLLECTION BOX ~Polydor Yeas』収録
original released on 1982 シングル「麗人」B面

絶賛発売中、ジュリーwithザ・ワイルドワンズのデビューシングル「渚でシャララ」。
楽曲の素晴らしさもさることながら、三浦徳子=加瀬邦彦という名コンビの作品を再びジュリーが歌う、というのもファンにとっては嬉しい驚きでしたね。

今日は、そんな三浦=加瀬コンビによるジュリーナンバー傑作群の中から、この曲。
シングル「麗人」のB面です。この曲も、僕の知らないエピソードがありそう。また先輩方のお手を煩わせてしまうやも知れませぬが・・・。
「月曜日までお元気で」、伝授!

まずは、三浦徳子さんについて。
僕はザ・ベストテン全盛期世代ですので、「沢田研二」と言われて浮かんでくる映像(もちろん、ドーム堕ち以前のお話ですよ)は、「ス・ト・リ・ッ・パ・-」であり「おまえがパラダイス」であり・・・。
まさに三浦さん作詞の楽曲で突っ走っていた頃のジュリーなのです。
しかし、僕が三浦さんのお名前を初めて意識して覚えたのは、実は八神純子さんの「パープル・タウン」の方が先でした。ジュリーの作詞をなさっていた事を認識したのは、30歳を過ぎてから。「ロイヤル・ストレート・フラッシュ2」を聴いた時です。
それまで、「ス・ト・リ・ッ・パー」は湯川れい子さんの詞だと思いこんでいました。
子供の頃の記憶なんて、そんな曖昧なものなのですねぇ。

三浦さんの詞は当時のジュリーが全身に纏っていた”いいオトコ”に非常にマッチしていて、女流作家ながら完全な男視点で描ききっていて。まさしくプロ作詞家の作品だと思います。
「月曜日までお元気で」も、もちろん例外ではありません。

基本、ロマンティックなムードで攻めますが

♪1秒早くこの部屋出たって
  歴史は変わりはしないぜ

とか。
サビでいきなり

地球の男達

って・・・。
この突拍子もないタイミングで繰り出す大言壮語、スケールの大きいフレーズが、何とジュリーに似合うことか。
と言うより、これはジュリー限定の大技なのでしょうか。他の歌手が歌う様が想像できません。
ただこの詞、内容のキワドさもありますし、今後LIVEで聴くことは・・・残念ながら可能性は低いかなぁ。

加瀬さんの作曲も素晴らしい!
三浦さん同様、これこそがプロフェッショナルです。
僕は最近ジュリワンLIVE予習のため、ワイルドワンズのベスト盤を購入し勉強中なのですが、ワンズでの作曲とジュリーへの提供楽曲への作曲では、明らかにアプローチが違います。
ワンズの曲は、ワンズのイメージで。ジュリーの曲は、ジュリーのイメージで。

見事に使い分けていますよね。さすが、作曲段階からプロデューサーとしての感性をお持ちです。
それに、やみくもに曲を量産するのではなく、バンドやアーティストに対しての方向性をしっかりと織り交ぜる。それでいて多作、かつ高いクォリティー。
まぁジュリーに関しては「ただならぬ関係」なのですし、加瀬さんとしては「楽しく曲作りをしているから自然にそうなる」といったところなのでしょうか。
うらやむべき才能です。

Aメロ導入部は
ラ・ド・ミ(Am)→シ・レ#・ファ#・ラ(B7)→レ・ファ・ラ(Dm)
と和音進行します。これ、2番目のコードにB7を持ってきたのがカッコいい!動作に例えると、身体をひねりながら跳ね上がるような感じなのです。

アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』の印象と比べ、このシングル盤「麗人/月曜日までお元気で」は、良い意味で硬質な音作りになっていますが、これがまたプロフェッショナルのお仕事・・・アレンジは後藤次利さん。

サビでドラムスが2・1のアクセントで叩いて地鳴りのようなイメージ(歌詞に合わせて、地球規模ってことかな?)に転換したり、歌メロ本編には出てこない和音進行を、イントロ・間奏で使ったり。
これまで何曲かの記事でも書いていますが、ジュリーのシングルB面曲には、作曲や編曲に遊び心が満載のナンバーが多いです。ただそれは、噛み砕き自分のものにしてしまう歌い手がいなければ意味がないワケで、僕はジュリーのB面曲の魅力はそこにあると考えます。

では、そのヴォーカルです。
特にこの頃のジュリーには「妖しさ」という武器があり、歌唱自体の素晴らしさは言う間でもありませんが・・・。
僕はこの曲の

しぇいけ~っ!(「Shake it」でしょうね)

は、数あるジュリー・シャウトの中でも出色だと思うのです。
ジュリー本人のアドリブなのか、加瀬さんの構想の中に組み込まれていたのかは解りません。いずれにしても、この当時のジュリーにしか表現し得ないシャウトではないでしょうか。
ジュリーは年代に応じてヴォーカルが変わってきていますが、それはシャウト表現についても言えることだと思います。
「夜の河を渡る前に」もあれば「KI・MA・GU・RE」、「ティキティキ物語」のようなシャウトもある。そして「渚でシャララ」にも。
その年代それぞれに、独特のシャウトです。
「月曜日までお元気で」・・・この時代は、「妖艶なるシャウト」と言えるでしょう。
間奏・エンディングでひと吠えずつ。みなさまにも、是非この機に再度味わって頂きたく思います。

さて、今日は三浦=加瀬コンビの作品からお題を選ばせて頂きました。
今度はコンビ作品ではなく、三浦さん作詞ナンバー、加瀬さん作曲ナンバーでそれぞれ1つずつ書きたい曲を思いついておりますので、ただいま構想を練っているところです。
三浦さんのナンバーについては、

三浦さんの詞はいつも最高なんだけど、この曲のこの部分だけどうしても意味が解らない。誰か教えて~!

という記事に。

加瀬さんのナンバーは

「指」も「感情ドライブ」も「Shangri-la」も良いけれど、僕が一番エロさを感じるジュリー・ナンバーはこれ!

という記事になる予定です。
それでは次回、月曜日までお元気で!(たぶん)。

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2010年3月10日 (水)

沢田研二 「忘却の天才」

from『忘却の天才』、2002

Boukyaku

1. 忘却の天才
2. 1989
3. 砂丘でダイヤ
4. Espresso Cappuccino
5. 糸車のレチタティーボ
6. 感じすぎビンビン
7. 不死鳥の調べ
8. 一枚の写真
9. 我が心のラ・セーヌ
10. 終わりの始まり
11. つづくシアワセ

---------------------

 

まずは別件のご報告から。
先日ご紹介させて頂いた楽譜集「グループ・サウンズ・コレクション」なのですが・・・。
いきなり密林さんのページが

 

一時的に在庫切れですが、入荷次第発送します
(3月12日註:通常販売体勢に戻りました~♪)

 

というコメント状況になっております。
このコメント、ドーム直後の大人買い期間に、ジュリーのCDのページでしょっちゅう見たなぁ・・・。
でも昨日までは

 

予約受付中

 

だったんですよ~、確かに。
1日で在庫切れって!
想定外の注文数が入り、密林さんの初回入庫分が切れてしまっているらしいのです。と言ってもこのGS楽譜の場合は、初期冊数が20冊くらいだったのでは・・・と思いますが。

予約してくださったの方の中に、密林さんがすぐに発送できていない方がいらっしゃるかもしれません。
追加納本の手配は本日迅速にいたしましたので、しばらくお待ちください。
本当に申し訳ございません。そして、ありがとうございます。先々に向けて、とても大きな勇気を頂いております。

 

それでは本題。
『歌門来福』セットリスト・おさらいシリーズ、とりあえず今日で締めくくりとなります。
本当は全曲書きたいところではありますが・・・漏れた楽曲はいずれの機会に。ブログを続けていれば、どの曲もいつかきっと順番がやって来るでしょう。

 

最終回を飾りますのは、以前にnekomodoki様よりリクエストを頂いておりましたナンバーでもあります。
過去記事にて書かせて頂きましたが、nekomodoki様のお姉さまでいらっしゃるチャコ様のリクエストが「砂丘でダイヤ」でしたね~。
仲良き事は素晴らしきかな。

ご姉妹揃ってリクエストのお題は、アルバム『忘却の天才』から、という事に相なりました。
ズバリ、タイトルチューン「忘却の天才」、伝授!

 

今までにも何度か書いておりますが、僕にとって『忘却の天才』というアルバムは大変思い出深い作品です。
CO-CoLO以降のアルバムをほとんど知らない状態で参加した東京ドーム、現在進行形のジュリーの凄さに打ちのめされ、怒涛の大人買い期間へと突入した僕が最初に購入したアルバムが、この『忘却の天才』でした。
良い意味で、ショッキングな1枚でしたね。

 

キーボードを排したアレンジにまずビックリ。
それは、ポリドール時代とは全然違う音作りであり、僕の中でわずかに残っていた「ジュリー=男性アイドル」というイメージを完全に払拭する、無骨なロック・サウンドでもありました。
白井良明さんの凄さを知ったのも、この作品。
それまでの僕は不勉強にて、白井さんについては「ムーンライダースのギタリスト」という認識しかなかったのです。こんなに冒険心豊かな、カッコ良いアレンジャーだったとは・・・。

 

本日のお題、アルバム・タイトルチューンの「忘却の天才」は、白井さんの変態ギター・アレンジ(褒めてます)を語るにはもってこいのナンバーです。
まずはそこからお話してまいりましょう。

 

洋楽のギタリストの中で、白井さんに一番近いスタイルの人は?と問われたら、僕はすかさず、「アンディー・パートリッジ!」と答えるでしょう。
過去記事でも何度か登場している、”XTC”というバンドのリーダーにしてヴォーカリスト、変態ギタリストにして変態作曲家です。
アンディーのギタースタイルが確立するのは、「ドラムス・アンド・ワイアース」というXTCのサードアルバムかと思います。

ほとんど音色の変わらないギター(エフェクターのかけ方が近い)を複数録音し、そのアンサンブルで楽曲装飾していくのですが、単純に音を厚くするのではなく、各トラック入れかわり立ち代わりの疾走感で攻めるのです。
楽曲のステレオミックス感覚を最大限に生かす手法と言えますね。普段からビートルズなど自分の好きな音楽ををヘッドホンで念入りに聴き込むお方なのでしょう。
右から左から、突飛なフレーズが飛び出す快感。彼が目指しているのはそこだと思います。
そして、まったく同様のアプローチが白井さんのギター・アレンジにも見られるのです。

 

「忘却の天才」でレコーディングされている白井さんのギターは、全部で3トラック。
この3つのトラックが左右・中央の位置関係で悶絶するように絡み合うのが、「忘却の天才」ギターアレンジの大きな魅力のひとつです。

そして、その3本のギターすべてが同時に鳴る箇所は、なんとイントロのみ!
普通ならベタベタ重ねて音を厚くするモンですが、この辺りはさすが白井さん、「すべての音を聴きわけやすいように」というアレンジャー気質と言いますか。

 

まず左サイドのギターは、キメ部で単音を弾きますが、基本的にカッティングでのサイドギターの役割です。
「キスしたこと♪」のBメロ部、忙しい8分音符ダウン・ストローク連打がカッコ良いですね。

 

右サイドがアンディー・パートリッジ流のセカンド・リード。
サイドギターのフォローをしつつ、時に「歌メロとは別の、第2の旋律」を弾くのです。これもBメロに注目。激しいですよ~。

 

そして中央がリードギターです。左右のトラックよりもミックスレベルが大きめで、間奏でガンガンに弾くのですが・・・大事なのは、その間、それまでひっきりなしに弾き続けていた右サイドのセカンドリードがお休みする、という点だと思います。
つまり、イントロの「ぎゅ~ん!」以外の箇所は、中央のリードギター、右のセカンド・リードは1つのテイクで演奏可能にもかかわらず、ステレオでの聴こえ方、チャンネル振り分けの効果を狙い、白井さんはわざわざわ手間をかけて、別個にレコーディングを行っているのです。


これは、ギタリストであると同時に、優れたアレンジャーでもある白井さんならではの手法と言えますが、それがジュリーの「できる限りレコーディング音源の音をLIVEで再現」というスタンスとも合致しているのが大きい。
そう、「忘却の天才」はギタリスト2人体制で自然にLIVE再現できる作りなのです。ジュリーが長きに渡って白井さんを信頼し、アレンジを一任しているのも頷ける・・・そんな一例として挙げられる楽曲ですね。

 

さて、アルバム『忘却の天才』で僕は新たに、覚和歌子さんという素敵な女流作詞家さんを意識することにもなりました。
当時、タイトルチューン「忘却の天才」の歌詞については、ドーム参戦の相方であるYOKO君ともずいぶん電話で語り合ったものです。
ジュリーにこんなカッ飛んだ歌詞がズバリと似合っていることを、二人ともずっと知らなかったのですね。
それはそのまま、90年代後半以降のジュリーの名盤達に僕が感じた大きな魅力にも繋がります。

 

実は、僕がドーム直後最初にこの『忘却の天才』を購入したのは、密林さんレビューの高い評価もありましたけど、何といってもアルバムタイトルにとても惹かれたからです。

 

『忘却の天才』

 

・・・かつて、生ける伝説とも讃えられた孤高のスターがいた。
時は流れ、人々の記憶からその男の勇姿が消えかけた、21世紀。
天才は再び牙を剥き、忘却の彼方から今、降臨する!

 

と、いうコンセプトアルバム!
これは、『単純な永遠』の続編に違いない!

 

と予想した・・・のでした(汗)。
後追いファンなんて、そんなモンです。

 

まさか、口説いた女を片っ端から忘れていく能天気な男の物語だったとは・・・。
またこの”カッコ良くないカッコ良さ”がジュリーのヴォーカルに驚くほど合うんですよね。ジュリーの新しい魅力を知った男性新規ファン二人は、
「男のリスナーが増えるべきだ!近年のジュリーが世間に知られずにいるのは勿体ない!」
などと勝手に興奮しておりましたが。

 

ベースレスの鉄人バンドではLIVEの選曲から漏れるのではないか、と考えていたら、そんな僕に喝を入れるように、『歌門来福』でバシッとキメてくれた「忘却の天才」。
今はこの曲、これからも何度かLIVEで聴く機会がありそうな気がしています。幸せだぁ~。

 

アルバムリリース年の、『忘却の天才』ツアーや、『師走-ROMANTIX』で披露されていた、”頭上クルクルポーズ”は封印されてしまったようですが、『歌門来福』では何と言ってもあの”忘却音頭”(と、僕は呼んでいます)が強烈でしたよね。
ファイナルで2列目にいらっしゃったJ先輩から、「あまりのジュリーのハジけっぷりに、下山さんが必死で笑いを堪えていた」という、楽しい情報も入ってきました。

 

『歌門来福』以前からリクエストを頂いていたnekomodoki様以外にも、「忘却の天才」をLIVEで聴けて良かった、という人を僕は何人も知っています。
そんな楽しみが、今後どれほど待っているのでしょう。

もちろんジュリワンツアーもとても楽しみにしていますけど、やっぱり直後のソロツアー。
『歌門来福』の贅沢なセットリストを体験した今となっては、期待が大きくなるのは当然ですよね。
セットリスト予想に早くも燃えてしまいそうです・・・。

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2010年3月 4日 (木)

GSで日本を元気に!

本日コメントを頂いたみなさまへのレスがまだで申し訳ございませんが、今日は寝る前に新しい記事をアップさせてくださいませ。

ジュリーwithザ・ワイルドワンズのツアー参加を前にして、今少なくとも僕のリスニングは、空前のGSブーム到来の予感。
大体、僕はGSについて、有名な楽曲しか知りません(と言うより、有名な楽曲すら知らない場合もあります)でした。

ワイルドワンズを勉強するのももちろんですが、色々なバンドの色々な楽曲を勉強して、当時のタイムリーな空気というものを少しでも感じとりたい。そんな風に考えています。

相互リンクさせて頂いているいわみ様のお家では、まさに今、僕のような者には到底知る手立てが無かった渋~いGSについての御記事攻勢真っ最中。勉強になります。
思わず、「カルトGSコレクション②」というCDを密林さんでポチってしまいました。ザ・ジェノバというバンドの曲が3曲入っておりましたもので。

さぁ、そんな感じである意味自分の行く末が心配にもなってまいりますが、みなさま、まずは基本ですよ、基本!
というわけで。
恐縮です①」の記事でご紹介させて頂きました、「ギター弾き語り/グループ・サウンズ・コレクション」、本日無事に製本されて参りました~!

File0485

↑ 表紙は、後輩が用意してくれた3つの候補の中から僕が選びました。
3ついずれも風景ショットでしたが、迷わず「海」を選びましたね。「渚」があったら絶対それにしましたけど、まぁ「海」でも雰囲気は近いものがあるかと。

File0487

↑ あぁ・・・感無量だぁ。
日本で一番早く、「渚でシャララ」の楽譜を世に送りこめた。
本を曲げないようにスキャンしたので、画像左部が汚くてごめんなさいね。実物はキレイに印刷されてますから。

File0488

↑ さすがプロ!とアレンジャーさんに脱帽した一番の箇所は、「chu,chu♪」のコーラス部。しっかり男声四人分が採譜されております。これ、マジなのだろうか・・・。僕の耳では到底ここまで聴き取れませんよ~。

File0491

↑ そうそう、「恐縮です!(幕間)」の記事でご了承をお願い申しあげた、”フリーハンド”というのはこんな感じの譜面です。これはこれで味がある、と言ってくださる方もいらっしゃいますが・・・。
曲はみなさまご存知の・・・。スキャンがナナメっちゃってごめんなさい。

File0490

↑ ギター・コードの押さえ方は、このように楽曲ごとに最後のページに掲載されています。
こちらの曲もみなさま御存知の「愛するアニタ」。上画像の通り、この曲はコードが5つしか出てこず、どれも押さえやすいフォームですので、初心者の方は是非!

鍵盤をお使いの方で、コードの音構成が解らない方がいらっしゃいましたら、遠慮なく拙ブログのコメントにてお尋ねくださいね。

File0486

↑ お店で平積みになるような類の本ではありません。
青い背表紙で「渚でシャララ」の文字をお探しくださいませ~。

発売日ですが、大きな楽器店さんには、来週火曜には入荷するものと思います(3月5日註:ごめんなさい。たった今確認したところ、お店への搬入は水曜日か木曜日になる見込みだそうです)。
密林さんからの発送もその前後かと思います。
ぶっちゃけまして、そんなに多くの冊数を作っておりません。
お買い逃しのございませんよう~。

「渚でシャララ」を、弾いて、歌って、踊って、GSで日本を元気に!
なにとぞよろしくお願い申しあげます。

↓ 密林さんはこちら!

http://www.amazon.co.jp/%E3%82%AE%E3%82%BF%E3%83%BC%E5%BC%BE%E3%81%8D%E8%AA%9E%E3%82%8A-%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3/dp/4285126419/ref=sr_1_5?ie=UTF8&s=books&qid=1267711879&sr=1-5

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2010年3月 3日 (水)

沢田研二 「砂漠のバレリーナ」

from『架空のオペラ』、1985

Kakuunoopera

1. 
2. はるかに遠い夢
3. 灰とダイヤモンド
4. 君が泣くのを見た
5. 吟遊詩人
6. 砂漠のバレリーナ
7. 影 -ルーマニアン・ナイト-
8. 私生活のない女
9. 絹の部屋

---------------------

 

スマスマの余韻醒めやらず、といったジュリー界でございますが(1日、2日のアクセス数が尋常な数ではなく驚いております。ジュリーwithザ・ワイルドワンズの、一般の方々への浸透に期待!)。
ファンの間でも様々な意見があるかと思います。
僕は「歌門来福」のMCでジュリーが語った、「色々な事を覚悟して出演する」という言葉を思い出しているところです。
今度は、NHK「SONGS」。本当に楽しみになってきました。

そんな中、拙ブログでは引き続き、こちらも色々な意味で気持ちを入れ替え、歌門来福セットリスト・おさらいシリーズ、鋭意進行中。
とりあえず、門外漢のジャンルについては慎重を期すことにしたため、今日のお題でも一部ヴァイオリンについて考察した内容を割愛する事にしました。
「伝授」などと言っている以上、確かな知識なく、適当な事を書いてはダメだと思い直したからです

 

唐突ですが、下山さんと泰輝さんのコラボは「TENGE(てんげ)」という名前らしいですね。
山形庄内地方の方言で、「適当」とか「いい加減」とかいう意味のようですが、僕の故郷・鹿児島では、同じ意味のことを

「てげてげ」

と言います。ちょっと語感が似ていますね。
「わいや、てげてげ書っなぁ!」

(註:おまえ、いい加減なこと書くなよ)
というふうに、使います。
ちなみに、逆に「きちんと」「しっかりと」という意味の場合は
「わいや、はしと書かんかぁ!」
(註:あなた、きちんと書きなさいよ)
と、なります。
頑張ります。改めて、今後ともよろしくお願い申しあげます。

 

さて。
今回の歌門LIVE、僕は「うひゃ~!」「ぐわ~!」という意外な選曲の連発だったのですが、先輩方は、さすがに慣れていらっしゃる。
「××年以来ね~」
とか
「ワイルドワンズの武道館からの選曲繋がりね」
とか、セットリストの解釈が僕などより一枚も二枚も上を行っております。

 

しかしながら、そんな先輩方をも「あっ!」と言わせたナンバーが2曲。
ひとつは「ロータスの子守歌」。これがラスト、というのは並居る気合の入った先輩方でも予想だにしなかった大きなお年玉だったようです。
そしてもう1曲。
僕の周囲の先輩方の反応は、ハンパではありませんでした。曲がどう、とか、ヴォーカルがどう、とか言う以前に、まずは悲鳴のような感想しか出てこないという・・・。

ジュリー祭りのセットリストでは、1曲も選ばれなかった幻の名盤『架空のオペラ』。時を経て、歌門来福で降臨したのは、美しい幻想のバラードでした。
「砂漠のバレリーナ」、伝授!

 

僕も最近把握したのですが、『架空のオペラ』はジュリー初のCDとしての新譜発売作品だったそうですね。
当時はまだレコードも並行して売られていた時代ですし、CDプレスの枚数が少なく、それが現在の中古価格沸騰に影を落としているのではないか、という分析もあるようです。

 

エキゾチックスと離れ、まずは渾身の自作曲「灰とダイヤモンド」で新たなスタートを切ったジュリー。次いでリリースされたアルバム『架空のオペラ』では、大野克夫さんとのコンビを復活させています。
大野さんについては、
「ヴォーカルとの相性があるから」

と、ジュリー自身が語っていたようですね。

 

相性というのは、メロディーの歌いやすさもさることながら、歌うシチュエーションによって色々なアプローチで表現できる、という事もジュリーの頭の中にあったのではないでしょうか。
それはまず、レコーディングとLIVE、それぞれのヴォーカル表現の違いに現れていると思います。
『架空のオペラ』のスゴい点のひとつは、レコーディング音源とLIVE音源(正月歌劇)で、収録曲のヴォーカルニュアンスが全く違う、という事です。

 

収録曲はいずれも、官能的で、神秘的で、肉感的でありながら、どこかクールに突き放したような雰囲気があって、その二面性がこのアルバムをジュリー史上最も異端の名盤たらしめていると考えますが、それはタイムリーのファンのみなさまが、レコードとLIVEの二極化によって、二度にわたって『架空のオペラ』の世界に魅惑された事をも、容易に想像させてくれます。

まずレコーディングヴァージョンでは、すべての収録曲のヴォーカルが、エフェクターやイコライジング、センドリターンなどを駆使した加工を施されています。
これは、ちょうどこの当時、60年代中盤から幾度も塗り替えられてきたレコーディング技術に、何度目かの革新期が訪れていた事と無関係ではないでしょう。
最も革命的であったのは、ヴァーチャルテイクの登場です。
当然『架空のオペラ』録音現場でも、最先端のヴァーチャルテイク技術が幅を利かせたと考えられます。

 

ヴァーチャルテイクの長所は何と言ってもまず、テイク数がほぼ無限に保存できる、という点です。
それまでは、歌やそれぞれの楽器演奏について、出来の良いテイクをいくつか残しつつ、不要と思われる過去テイクを消去していきながら何度も録音し直す、という作業が必要でした。
ところがヴァーチャルトラックを使えば、無限に何度もやり直し、そのすべてを最後に取捨選択する事が可能なのです。ジュリーに関しては不要のことですが、歌唱に不安のあるヴォーカルの場合、数あるテイクの良いところだけを繋ぎ合わせてミックスすることも、さらに容易になりました。

消去して録り直す、という作業が不要ですので、例えばジュリーがスタジオに入って1番最初に声出しリハとして録られたテイクも、機材上では生き残っているものと思われます。
(聴き込みが足りずまだ検証できていないのですが、「アフターマス」のCO-CoLO時代の楽曲のヴォーカルが正規盤と異なるのではないか、というお話を知った時、僕はヴァーチャルトラック上に残されていた別テイクをリミックスした可能性を考えました)

OKテイク以外の他のテイクを複製加工し合体させたりする事によって、楽曲に面白い効果が得られたりすることもあり、『架空のオペラ』ではその手法も作品に大きく貢献しています。最も顕著な例として、以前拙ブログでは「影-ルーマニアン・ナイト」の記事にてその辺りを書かせて頂きました。

一方、LIVEでは。

その瞬間に発せられたヴォーカルが、たったひとつのテイクとして生き残ります。
正月歌劇『架空のオペラ』でのジュリーのヴォーカルは、その点神がかりと言うか奇蹟の声と言うか、すさまじいまでに生々しい極上の表現で迫ってきます。
レコーディング音源の加工ヴォーカルとはまったく違う歌声になっているのです。どちらの良さもありますが、音源を聴いてからLIVEに参加なさった方々は、いっそう衝撃を受けたでしょうねぇ。
こちら正月歌劇のヴォーカルにつきましては、「吟遊詩人」の記事にて書かせて頂いています。

 

「砂漠のバレリーナ」というナンバーをお好きな先輩方は、正月歌劇を観て完璧に堕ちた方々が多いのではないでしょうか。もの凄いヴォーカルですからね。
レコーディングではかすかにフラットする箇所が、LIVEでは天に突き刺さるかのように伸び上がります。

正月歌劇で歌われた数多くのナンバーについては、そのヴォーカルの素晴らしさを、正直どのように書いて良いか解りません。
僕がジュリーのヴォーカルで最も好きなのはダントツで「愛に死す」ですが、この曲も実は同様の心境で、なかなか記事に書けないでいます。

『正月歌劇』の「砂漠のバレリーナ」他収録曲は、僕の中で「愛に死す」に次ぐ、ヴォーカルにシビれる楽曲群ということになります。
CDでは上手いけどLIVEだと音程が怪しくなる、というパターンの歌い手が多い中、その逆を行くジュリー。常にLIVEに対する拘りを持っているのも、頷けますよね。

 

では、大野さんの作曲したメロディーについて。
調はニ短調(Dm)で、転調も無く、進行上素直な和音のみで構成されています。基本的に、意表をつくよりも自然なメロディーの流れと楽曲全体の整合性で勝負する大野さん、その中でも直球の作りに分類できると考えます。
シンプルな進行ゆえに、ツインドラムを基本とした贅沢なパーカッション装飾が映えますね。

みなさまは気がついていらっしゃるかなぁ。和音の使い方もそうですが、メロディーラインもかなり似ている、過去の大野さん作曲のジュリーナンバーがありますよ。

それは、

「24時間のバラード」

 

1978年のアルバム「LOVE~愛とは不幸をおそれないこと」の2曲目。みなさま、瞬時にAメロ出てきます?テンポこそ違えど、「砂漠のバレリーナ」の出だしとごっちゃになりませんか?
僕だけですか・・・。

似ているのはAメロ。どちらの曲も1回し目と2回し目ではメロディーが変化します。2回し目の方で音階が低→高とうねり上がっていく感じが、瓜二つだと感じるのです。
コード進行が似ているだけなら、他にあてはまる曲も多いのですが、メロディーの組み立て方で言うと、この2曲は相当近い関係なのではないかと。

 

僕は「24時間のバラード」だと

♪夜明けまで~かたぁ~~~りあう~♪

という粘り強いメロディーとヴォーカルが大好きで病みつきなのですが。
「砂漠のバレリーナ」で言いますと

 

♪さば~~くのバレリ~~ナ~~♪
♪はだ~~しの~ひ~とよ~~♪

 

と歌うサビ部が、やっぱり大好きで。
2番まで歌ってからこのサビが来る!という焦らしが、イイんだよなぁ。これは歌門来福で強烈に感じたことです。
一語一語を引きずるように歌われるメロディーが、「24時間のバラード」の僕の病みつき箇所と共通していると思います。

曲全体の中で、ジュリーのヴォーカルに一層力が込められる箇所でもありますし。
確かに、「大野さん作曲とジュリー・ヴォーカルの相性」が感じられますね。

 

あと、作詞の松本一起さんについても書いておかねば。
”客観的に描いたある風景の中に、対象である人物がいて、そしてその人物を熱く見つめている語り手がいる”
このシチュエーションが、松本さんの得意とする作詞手法です。
このことは、御本人のHPを拝見して再確認したのですが、僕はずっと以前からその魅力に気がついていました。

僕がずっと以前、と言うからには、それはジュリーの作品ではありません。
実は、「高速戦隊ターボレンジャー」という特撮戦隊ヒーロー番組の主題歌なのです(ごめんねマニアな話で。しかし、子供向け番組の主題歌には勉強すべき点が多い!というのが僕の座右の銘として常にありまして、まぁ仕事柄触れる機会が多いこともあり、よく吟味して聴くのです)。この作詞が松本一起さん。
戦隊ヒーローは大抵5人で、メンバー全員を統括して描く歌詞が普通なのですが、松本さんは、”戦隊”を風景として描き、その中の”個”に向けた詞を書いていらっしゃいます。
サビの♪5人の中に君がいる♪というフレーズが、「独特だなぁ」と思っていたのです。

 

「砂漠のバレリーナ」も、徹底的に”個”見つめる詞だと思います。
ジュリーの歌唱には”見つめる力”がありますから、「歌門来福」初日の緊迫した雰囲気と、歌い終わっての喝采は、当然のことでしょうか。

 

最後になりますが、LIVEレポートにも書きました通り、「歌門来福」での泰輝さんのキーボード音色選択は本当に素晴らしいものでした。
ヴァオリンパートを、木管系+金属系の音で奏でたのです。
LIVEに参加するたびに何度も書いておりますが、歌心のあるプレイヤーさんこそ、ジュリーのバンドにふさわしい!

ヴォーカルはもちろん、バンドの音作りについても、レコーディング音源とは違う楽しみが。
そんな「歌門来福」での「砂漠のバレリーナ」でした。

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2010年3月 1日 (月)

とり急ぎ告知です!

本日夜10時より放映の「S○AP×S○AP」に!

ジュリーwithザ・ワイルドワンズ
(元タイガースの沢田研二さんとGSの大御所ザ・ワイルドワンズが合体したスーパーバンド)

が出演します!

新聞TV欄に載っていないのでびっくりしました。
ファンのみなさまは大丈夫だと思うけど、これじゃ普段ジュリーやワイルドワンズの情報を収集していない浮動票のみなさまに届かないではありませんか。

僕のブログには普通の洋楽ファンの方や音楽好きの方も多少来て頂けておりますので、そんな方々のために、微力ながら一応告知させて頂いた次第でございます。

「GSで日本を元気に!」
「スマスマ、マスマス楽しみ」

と、ザ・ワイルドワンズのリーダー、加瀬邦彦さん(沢田さんの「危険なふたり」や「TOKIO」などの作曲者)も仰っておられます!

観てね。

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