沢田研二 「MAYBE TONIGHT」
from『G. S. I LOVE YOU』、1980
1. HEY!MR.MONKEY
2. NOISE
3. 彼女はデリケート
4. 午前3時のエレベーター
5. MAYBE TONIGHT
6. CAFE ビアンカ
7. おまえがパラダイス
8. I'M IN BLUE
9. I'LL BE ON MY WAY
10. SHE SAID・・・・・・
11. THE VANITY FACTORY
12. G. S. I LOVE YOU
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いやぁみなさま、お正月早々シャララっとジュリーモード全開のご様子。レスは本日帰宅後にいたしますのでしばしお待ちを~。
というワケでですね。
僕は今日からバッタバッタとお仕事ですので、「ひるおび」で「渚でシャララ」を聴くのは昨日が最初で最後です。
かえってその方が、CDリリース時の楽しみが大きいんじゃないか、と自分を慰めている次第。
まぁ、テレビ観ながら瞬時のことでしたので、ハッキリ分析できたのは結局
♪渚でシャ~ララッ♪
から始まるサビ部だけでしたが。
先日「夕なぎ」を引き合いに出した僕の予想は見事にはずれました。
「渚でシャララ」・・・サビを一瞬吟味した限りでは、全体的に「Pleasure Pleasure」のような雰囲気ではないでしょうか。全部聴くまではわかりませんけどね。
サビのコード進行は、トニック→ドミナント→ドミナント→トニックという理屈で、非常にシンプルでしたが、実はこのパターン、ロック&ポップス界では意外や珍しい。
起伏が少ない進行なので、よほど良いメロディーや優れた楽曲コンセプトが無いと地味になってしまう・・・通常、もっと複雑な進行を付け足す場合が多いんですよ。
言わば、贅肉の無いむき出しのコード進行。
ですから、そこにキャッチーな歌詞と覚え易いメロディーが載った時の相互作用・破壊力もまたスゴイ。
「渚でシャララ」はそんな名曲の予感がします。
浮動票の取り込みも期待できそうですね。
さてそんな理由もあって、同コード進行を擁する楽曲は「渚でシャララ」のような大ヒット曲(と、今から決めつけてしまえば景気づくかな?)は少なく、「地味で目立たないけど実はすごくカッコイイ」というナンバーが多くなります。
ことに、大物の作曲家が敢えて地味なこの進行を採用した際には、「さすが!」と格の違いを示してくれるんですよね。
正にそんな楽曲が、ジュリーにもありますよ。
アルバム「G. S. I Love You」から。鈴木キサブロー御大作曲のブルース・ポップ・ロック・ナンバー。
「MAYBE TONIGHT」、伝授!
この曲はニ長調で、サビ(とAメロ)のコード進行は
D(レ・ファ#・ラ)→A(ミ・ラ・ド#)→A7(ミ・ソ・ラ・ド#)→D
調こそ「渚でシャララ」とは違いますが、トニックからすぐにドミナントへ移行し、粘ってまたトニックへ帰ってくる、という進行は理論的には同じです。
通常ロック&ポップス寄りの楽曲はサブ・ドミナントのコードを多用してポピュラリティーを持たせようと作られますので、トニックとドミナントだけで押す「MAYBE TONIGHT」パターンは、「渋い」進行と言えそうです。
加えてこの曲は、シャッフルリズム(3連符)を骨子としたブルースナンバーでもあります。
ビートルズ的な解釈による白っぽいブルース。それをクールにキメるのがカッコ良いとされ、「日本人がブルースをやってもオッケ~な形」として、当時は多くの邦楽アーティストがこのパターンのブルースナンバーに力を注ぎました。
和製ロックで最初にハッキリとこの形を主張したのは、佐野元春さんでした。ファーストアルバムに「Please Don't Tell Me A Lie」という曲が収録されています。そして、この曲をお手本にしたと思われるジュリー・ナンバーが、アルバム「ス・ト・リ・ッ・パ・-」収録の「DIRTY WORK」。
「MAYBE TONIGHT」はその中間にリリースされていますが、大御所鈴木キサブローさんが「お、和製ブルースロックが流行りはじめたな」と敏感に察知、ちょいと貫禄をしめしておいた・・・というのはうがった見方でしょうかねぇ。
その貫禄が、先に説明した渋いコード進行を敢えて採用する事で存分に示されたのですから。
BメロでA→Bm→G7→A7と進行、構成音を使って「ミ→ファ#→ソ→ラ」とサビ直前まで上昇していく浮遊メロ(しかもちょっと泣ける)を挿入するのがまたニクい。
同じキサブローさん作曲の「どうして朝」サビ直前のメロディーにも、同様の手法がありました。
ところで、アルバム「G. S. I Love You」はジュリーのキャリア中唯一の「ビートルズライクなアルバム」ですが、実はアレンジの仕かけについては、グラムロックのオマージュが多く散りばめられています。
「MAYBE TONIGHT」ではTレックスのようなギター、ベースのイコライジングが見られますね。ネオ・モッズばりの擬似ステレオ・ミックスも含めて、こういう仕かけは銀次兄さんの遊び心だと思われます。
ジュリーのヴォーカルは余裕あるロカビリーのスタイル。しゃっくりのようにひっくり返るファルセットを交えた、「不良少年」スタイルです。
つまり、次作「ス・ト・リ・ッ・パー」で更に深まるパブ・ロック的アプローチが、既にこの曲で聴くことができるのです。
周囲のサジェスチョンもあったかと思いますが、ヴォーカルについてはおそらくストレイ・キャッツの影響だったのではないでしょうか。
三浦徳子さんの詞は、どんなフレーズであっても前向きな感じで前にせり出してきますから、不良少年・ジュリーの面目躍如。キサブローさん、さすがです。「どうして朝」同様、これまたジュリーにピッタリの曲ですよね。
♪種をまいても すぐに花が咲くとは限らないのさ♪
と、1980年のジュリーが、この詞を前向きに、カッコよく歌います。
イタズラを企んでいる、不良少年のイノセンス。そういう歌唱表現は、ジュリーの得意技のひとつですね~。
当時すでに花盛りに見えたジュリーですが、本当の花はこれからだったりして。
さぁ2010年、どんな花が咲くのでしょうか?
まずは「渚でシャララ」で始動!
しっかりついてまいりましょう。
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コメント
DYさん、お邪魔します。
この作品の歌唱は、ジュリーにしかできない、ジュリーにしか似合わない歌唱ですね。「不良少年」スタイルのボーカリストは、ベテランから中堅まで、何人もいらっしゃいますが、ジュリーのように、軽くなおかつカッコよく、そして、ちょっとシニカルに歌える人は、少なくとも日本ではいないと思います。
「渚でシャララ」は前に書いたとおり、ボーカルにジュリーの成長を感じます。ジュリーが長年目指してきた、いい意味での“大人”を感じさせる歌唱に仕上がっていると思われます。だから、一気に大ヒットするよりも、ロングセラーでの大ヒットを狙ってほしいです。ここを訪れているみなさん(もちろん私自身も)一生懸命「渚でシャララ」は名曲だ!と口コミすれば、そんなに難しいことではないかもしれません。
投稿: 74年生まれ | 2010年1月 5日 (火) 18時28分
大賛成!はい、一票!!!
投稿: かぱーじ | 2010年1月 5日 (火) 21時33分
74年生まれ様
いつの時代も、ジュリーは比類なきヴォーカリストでしたね。
「MAYBE TONIGHT」も、そのひと幕です。
僕は、「pleasure pleasure」で初めて”タイムリーなジュリー”を体験したワケですが、成長も無論ですけど、あの歌声、というか歌唱は大悟レベルではないかと思っております。
「渚でシャララ」も、CDを聴いた瞬間そう感じるに違いありません。
ですから、ジュリーは加瀬さんとは違い、売れる売れないは気にしていないような気が…。
しかしながら黙ってはいられませんね~。
広めていきたいです。
僕も微力ながら頑張りますよ!
目指せ
「ひるおび」検索結果5位以内!
☆
かぱーじ様
清き一票をありがとうございます。
和食党ですから、ダイナマイト。
「渚でシャララ」を、ジュリーwithワイルドワンズを広めてまいりましょう。お供させて頂きます。
突然アフィリエイトを始めたのは、その心意気なのです。
ジュリーファンの純粋が、不可欠ですね!
投稿: DYNAMITE | 2010年1月 5日 (火) 22時58分
「明るくテキトーな不良少年」という感じですよね。
不良やってることにポリシーなんてないけどいいことやっているつもりもない。
とりあえず、自分もまわりも楽しくて自然なほうがいい、でやってると何かこうなる、みたいな。
退屈なルーティンワークもこの曲を口ずさめば少しは軽快にやれそうです。
「渚でシャララ」も自然と口ずさめる曲になりそうですね。
投稿: nekomodoki | 2010年1月 6日 (水) 19時58分
nekomodoki様
> やってると何かこうなる
イイ表現です~。正にそんな感じの曲ですね。
アルバムの中では目立たない方かと思うんですが、繰り返し聴いているとクセになるタイプのナンバー。
ジュリー、この曲好きだと思います。
「渚でシャララ」
僕はもう既に口ずさんでますよ!
サビだけですが…(涙)。
投稿: DYNAMITE | 2010年1月 6日 (水) 22時17分