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2009年12月25日 (金)

沢田研二 「everyday Joe」

from『耒タルベキ素敵』、2000

Kitarubeki

disc-1
1. A・C・B
2. ねじれた祈り
3. 世紀の片恋
4. アルシオネ
5. ベンチャー・サーフ
6. ブルーバード・ブルーバード
7. 月からの秋波
8. 遠い夜明け
9. 猛毒の蜜
10. 確信
11. マッサラ
12. 無事でありますよう
disc-2
1. 君のキレイのために
2. everyday Joe
3. キューバな女
4. 凡庸がいいな
5. あなたでよかった
6. ゼロになれ
7. 孤高のピアニスト
8. 生きてる実感
9. この空を見てたら
10. 海に還るべき・だろう
11. 耒タルベキ素敵

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何人かの方々からご指摘頂いております拙ブログの特徴といたしまして

「やたらと余計な深読み楽曲解説を書くわりには、ジュリーファンにとって常識とも言えるワキの知識に疎い」

というのがありまして。
まったくその通りで、それは本人自覚するところでもございます。

実は今日のお題についても、みなさまからすれば「そりゃ常識じゃん」という事を自分が知らないのではないか、とビビっている件が(汗)。

みかん様より、大名盤「耒タルベキ素敵」収録の、カッコよく尖がったロックナンバーをリクエスト頂いております。
「everyday Joe」、おそるおそる伝授!

まず早速、己の無知をさらけ出すことから始めてまいりましょう。
僕はこの曲「everyday Joe」、タイトルの意味・由来がまったくわかりません!
覚和歌子さんの詞だし、何かあるんだろうけどねぇ。
何故「everyday Joe」という連呼が歌詞の途中で登場するのやらサッパリ・・・この点、素直に土下座いたしまして先輩方にご教授願いたく、なにとぞ~!

以前より遊びに来て頂いている方々はご存知の通り、僕は「耒タルベキ素敵」のCDを長期紛失しておりました。
夏、部屋の大掃除でようやく発掘するまで、収録曲の作詞・作曲者はおろか楽曲それ自体の把握も曖昧なまま過ごしておりまして、正直「everyday Joe」という曲の構成をしっかり脳内に叩きこんだのは、CD盤を聴いて、ではありませんでした。

それは今年の春先のこと。DVD「ワイルドボアの平和」鑑賞時だったのです。

「ワイルドボアの平和」でのこの曲の演奏映像は大変素晴らしく、食い入るように観たものですが、そこで僕は「この詞は間違いなくジュリーだろう」と思ってしまい、ライナーで覚さんの作詞だと確認した時にはちょっとびっくりしましたね。
「everyday Joe」にとどまらず、2000年以降の覚さんの詞って、ジュリー自身の言葉のセンスを連想させるナンバーが多いような気がしませんか?
きっと覚さんはジュリーに、
「こういう日常のフレーズでも、メロディーに載せるとイイ感じでしょ?ジュリーもどんどん詞を書いて」
と、メッセージを送っていたんじゃないかなぁ。
考えすぎでしょうか。

さて、ではそろそろ本題、楽曲の仕組みについて語ってまいりましょうか。

まず、「everyday Joe」が、ロック史・金字塔の中の1曲、ジミー・ヘンドリックス「パープル・ヘイズ」のオマージュである事はご存知の方も多いでしょう。有名な曲ですからね。
しかしそれはあくまで白井良明さんが施したアレンジのお話。白井さんならではの、いい意味での遊び心です。
純然たるメロディーに関しては、「パープル・ヘイズ」とは様子の異なる構成です。
無論、作曲者であるムッシュ=かまやつひろしさんの頭の中に「尖った楽曲、アジテーション色のある仕上がり」という狙いはあったものと思いますが、この旋律、「パープル・ヘイズ」よりは断然、クリームの「ホワイト・ルーム」に近い作曲手法なのです。
特にAメロ。
歌メロは最高音から入り、同じ間隔で連なったメロディーの断片が、徐々にうねうねと低音部へ移動していきます。まさに、「やってられない♪」感がたっぷりの刺激的な導入部と言えるでしょう。

では、白井さんの「パープルヘイズ」オマージュによるアレンジを経た演奏面については、どのような特色が挙げられるでしょうか。
イントロのリードギター・フレーズが、オマージュとしては一番目立つ箇所ではありますが・・・。
ここでは何と言いましても、プロアマ問わず多くのロック・ギタリストが腕を磨く過程で必ず習得せねばならない、「ジミヘン・コード」と呼ばれる特殊な和音をご紹介せねばなりません。

ジミヘン・コード・・・「パープル・ヘイズ」で一気に大衆に膾炙した、ギターという楽器の表現能力でこそ生かされる和音です。
コード表記は「7+9(セブンス+ナインス)」、シャープド・ナインスとも呼ばれるこの和音を一言で表現するなら

限りなくマイナーコードに近いメジャーコード

です。

「限りなくマイナーに近いなら、それはすでにメジャーコードとは言えないのではないか」
などと、芥川賞選考委員のような事を仰るなかれ。「7+9」はメジャーコードを極限までハードに装飾した和音には、違いないのですよ。
でも、特にクラシック畑の方々の中には、僕が「everyday Joe」は長調だ、と言ったら「え~っ?」と首をかしげる方も多いでしょうね。
ジミヘン・コードは、それほどまでにロックギター経験者独特の解釈を要します。
とにかく、「everyday Joe」は嬰ヘ長調!譜面にしたら、ト音記号の横には#が6つつきますよ~。
もちろん、出てくる音符にナチュラル記号つきまくりですけど・・・。

ジミヘン・コードのフォームは、一般的に2通りの押え方があります。
嬰ヘ長調の「everyday Joe」に沿って、ここではF#7+9のフォームで説明しますと

① ひとさし指=4弦8フレット
   中指=5弦9フレット
   薬指=3弦9フレット
   小指=2弦10フレット
   (1弦、6弦はミュート=「弾かない」の意)

② ひとさし指=4弦8フレット
   中指=3弦9フレット
   薬指=1弦9フレット
   小指=2弦10フレット
   (5弦、6弦はミュート)

どちらのフォームで弾いても、ジミヘン度バリバリの響きとなり、「everyday Joe」感覚に浸ることができます。
これ以外にも、さらにハイポジションのフォーム(薬指で複数の弦をセーハする高度な押え方)が2通りあり、柴山さんも下山さんも、「everyday Joe」では4つのフォームを楽曲進行に応じて使い分けてプレイしていますね。同じ和音構成でも、フォームによって「鳴り」が違う・・・それこそが、ギターという楽器の最大の個性なのです。

ところで、これら4つのフォームに登場する個々の音は
ファ#・ラ・ラ#・ド#・ミ
の5つの音のいずれかです。

ファ#は嬰ホ長調のルート(ベース)音。ド#がドミナント、ミが7thの役割を果たしていますが・・・ジミヘン・コードの特殊性は、どのフォームで弾いても「ラ」と「ラ#」が同居して登場する点にあります。
先に述べた、「限りなくマイナーコードに近いメジャーコード」という表現は、この点を指しているのです。

基本から紐解きます。
シンプルな「F#」コードの和音構成は、「ファ#」「ラ#」「ド#」です。
一方これが「F#m」コードになると、「ファ#」「ラ」「ド#」。
つまり、「ラ」の音がシャープしていればFシャープ・メジャーコード、ナチュラルならばFシャープ・マイナーコード、と分別される理屈なのですが、ジミヘンコードでは、「ラ」も「ラ#」も同時に鳴っているのですね。
長調と短調の識別がややこしくなるのは、そのためです。

では、なぜ長調だと判断できるのか。
それは、サブ・ドミナントの和音としてB(シ・レ#・ファ#)が使用されているからです。
故に「everyday Joe」は、下地にF#→B→C#7というロックンロール・スリーコードを内包する楽曲と言えます。
しかしながら白井さんのアレンジにより、トニックのF#がジミヘン・コードに化けているため、よりヘヴィーな楽曲となり、マイナーコードのニュアンスが強く引き出されているワケです。

あ~、ずいぶん長くなってしまった・・・。
散々書いておいてナンですが、そんな理屈は解らずともまったく問題はありません。
ただ、伝えておきたいポイントがひとつ。
ジミヘン・コードの連打は、楽曲にトランス効果を与えます。
「everyday Joe」、CD音源では「ちょっと尺が長いな~」と感じる部分もある僕ですが、LIVE映像にはトコトン引きこまれました。
特に、DVD「ワイルドボアの平和」でのジュリーのヴォーカル、そして下山さんの弾きまくり映像は、本当にカッコイイ。これは、プリンスト・azur様のお墨つき。

生で聴いていたら、さぞかし・・・。
「歌門来福」セットリストに、期待の1曲です!

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コメント

DYさん、お邪魔します。
ムッシュかまやつ&白井良明の音楽はあまりにも奥が深すぎるので、私のMy資料から、「TVBros」92年掲載の「ビューティフルワールド」についてのインタビューで、覚和歌子さんと組むきっかけを語った部分を転載します。
「詞から入っていくものを作ってみたいな、というのが僕にもスタッフの間にもあったんですよ。去年、スタンダード曲に日本語の歌詞をつけたアルバムを出したんですけどね。覚(和歌子)さんという人に書いてもらった詞がとっても良くて、次のアルバムも彼女に詞を書いてもらおうと思っていた。女性だし、僕よりずっと若いから、それが良かったのかもしれない。かといって、僕が歌うんだから、変に今の若い人ふうになっても困りますよね(笑)それで、無駄話をしながら、色々、彼女に伝えて……。まぁ、僕はそういうことを伝えるのがひじょうにヘタなんだけどね。」
参考になりましたでしょうか?

投稿: 74年生まれ | 2009年12月25日 (金) 21時28分

こんばんわー。
これも「ついていけない曲」のひとつだったもので…。SDカードに落としてさえいませんでした。(今入れて聞いてます)
「everyday Joe」とネットで検索すると色々出てくるんですが、ますます謎になってきます。
ライブで聞いたほうがやっぱりいい曲ですね。「ワイルドボアの平和」ボーナスの残りで買うかな。お正月ライブでやって欲しいです。

投稿: nekomodoki | 2009年12月25日 (金) 23時18分

DYNAMITEさん、おはようございます。

「everyday Joe」というタイトルに、
のこのこと出張ってまいりました。(笑)
朝からこのDVDを見て、
あらためてかっこいい曲だと思いました。
何度も聴くうちに、よりはまっていく曲のように感じます。
コードのことなど、まだ十分には理解できないのですが、
とても勉強になりました。
来年はギターの勉強(知識)をがんばってみようと
思っているので、どうぞよろしくお願いいたします。

このときの下山さんは、今よりもやせているのでは・・・。
昔からの下山さんのファンのかたが、
十数年前と違って、満面笑顔の下山さんがいる・・・
というようなことを書いてらっしゃって、
何かが変わられたのかなと思ったりします。

このときの下山さん、たしかにかっこいいのですが、
今年のツアーのほうがより魅力的になったような気がして、
映像にのこらなかったのが残念でなりません。

投稿: azur | 2009年12月26日 (土) 09時54分

みなさま~!
今回も早速のコメントありがとうございます!
読み返すと、ちょっと考察が極地的過ぎますね…。

74年生まれ様

この頃のジュリーが、詞から広がっていく世界を渇望し始めたことは、作品を聴けば納得できますね。
覚さんの存在は大きかったでしょう。

ですが、「スタッフ」とまで言われると少し怪しい。
特に建さんは、「まず詞ありき」なんて考え方は絶対しない人ですし…。
セルフプロデュースへの移行の萌芽は、案外この時期に生まれていたのかもしれないですね。

nekomodoki様

この曲は好き嫌いはあると思いますよ。
「第六感」から開始されたハードな方法論によるアレンジメントは、それまでのジュリーの音作りとは異質のものですから。
「everyday Joe」は、モロにそれをやってしまえ!という野心作。
おそらくこの頃からジュリーは、LIVEで演奏できてこそ音源として完成する、という信念を持ち始めたものと考えます。

こういう曲は、是非ともおめでたい新年に聴きたいですね~。

azur様

スルメのように、何度も聴いていくうちにクセになる曲って、イイですよね~。
そういう曲は、飽きるという事がないですから。

下山さんは、LOSERの頃が一番痩せていたように思います。アブナかったですわ~。
今年のツアーでは、「ベストを脱いだら意外と中年体型?」な印象も受けましたが、とにかく力強い下山さんでしたね。

大丈夫、鉄人バンドのメンバーは、この先どんどんカッコよくなりますから。
最新のLIVEが一番カッコイイ、という贅沢が待っていますよ。
歌門来福、録画を期待しましょう!

投稿: DYNAMITE | 2009年12月26日 (土) 17時31分

こんにちは。
この曲大好きです~♪「耒タルベキ~」の中でかなり上位です。
聴いてるとまさにトランス状態へ突入…には理由があったのですね。
これまで正直ギターの音にあまり興味がなかった(音としては鍵盤とベースが好き)のですが、伝授のおかげで最近は、ギターにも耳を傾けるようになりました(理論はさっぱりですが…)。
詞は、てっきりsituationを崩して歌っているのかと思っていたら、歌詞カードにきっぱり「シッチェション」と明記してあり、びっくり。
でもツボです。
ジュリーは即興詩人になることはあっても、歌詞は崩さず歌うシンガーなのでしょうね。

投稿: だんぼ | 2009年12月27日 (日) 14時42分

比較的伝授が少なかったように思う
2000年代が続いてうれしいです~~
私もダイスキです!カッコイイshine
>生で聴いていたら、さぞかし・・・。
「歌門来福」セットリストに、期待の1曲です!
ホントに聴けたらいいね~


で。
嬰ナントカ長調、とかって一般常識なんでしょうか?
辞書引いちゃいました。。


投稿: シロップ。 | 2009年12月27日 (日) 20時45分

横から、さしでぐちを一言。
たしか、嬰がつくのは♯で、変がつくのが♭の変調記号でなかったか?と記憶してます。
ト、二、イ、ホ、ロ、ヘ、と覚えてました。
♯一つがト長調、♯二つが二長調、みたいに、反対に♭一つがヘ長調、♭二つが変ホ長調、とか。
♭も♯も最大7つ?だったか、はっきり覚えていませんが、♯一つの音階の音と、♭七つの音階の音は確か同じだったような。
表と裏の関係です。
間違ってたら、ごめんなさいね…。

投稿: 船越誠 | 2009年12月27日 (日) 22時39分

レス遅れました~!

だんぼ様

この曲が「耒タルベキ~」の中でかなり上位という事は、だんぼ様、相当にLIVE向きなお方と言えますよ~。
ジュリーファンとして大変得なことです。

ジュリーは、詞も曲もレコーディングされた基本形にこだわりを持っていますね。
最近は即興詩人ぶりに拍車がかかってきたように聞いておりますが…。
新参者としましては、それもまた楽しみにしたいと思っております。

シロップ。様

え~、2000年代って記事少ないですかね~。
一応ですね、全時代からまんべんなく、と心がけてはいるのですよ。
ですから、まだ1曲も記事を書いていないアルバムが残っているのが気になって気になって…。

というワケで、今はずずいと遡って、「思いきり気障~」から1曲構想を練っているところでございます~。

船越様

わざわざありがとうございます。
仰る通りです。
#が嬰、♭が変、ですね~。

ちなみに、ロック、フォーク系の人は#の方が得意で、クラシック、ジャズ系の人は♭の方が得意です。
ギターという楽器の特性ですね。
ギターはE(ホ長調=#4つ)が一番威力を発揮する調だと言えますから。


投稿: DYNAMITE | 2009年12月28日 (月) 23時15分

DY様、わたくしのリクエストに応えていただきありがとうございます。調度、12月中旬からPCのないところにおりまして。でも、考えてみたら携帯があるじゃないか!と今頃気がついたんです。そしたら、私のリクエストが。さてさて、DY様の懇切丁寧なギターの説明により、柴山さんやプリンスの演奏が聞いてみたい!!と強く思いました。それから、私は、この歌詞は曲と同様、かまやつさんが書いたのではないかと思ったんです。この主人公の男の人って突然現れてモテモテでしょ?スバイダースの前に現れたタイガースかなって。覚さん、かまやつさんの気持ちを代弁してるんじゃないか、なんて思ったりもしました。
順序がおかしくなりましたが、明けましておめでとうございます。今年もDY様の伝授楽しみにしています。24日の歌門来福でお会いできればうれしいです。

投稿: みかん | 2010年1月 2日 (土) 01時06分

みかん様

あけましておめでとうございます!
なるほど、かまやつさんの気持ちから詞を考察なさいましたか。
それは思いつきませんでした。
スパイダースとタイガースの逆転劇の構図は、新規ファンの僕にはまだ感覚としてとらえられないものですから…。

24日、僕はまず無事にチケットがとれているかどうか、ですが…。
1番後ろの席で良い、とにかくとれている、と信じ年を越しました。
お会いできるのを楽しみにしております~。

投稿: DYNAMITE | 2010年1月 2日 (土) 18時59分

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