沢田研二 「憎みきれないろくでなし」
from『思いきり気障な人生』、1977
1. 思いきり気障な人生
2. あなたに今夜はワインをふりかけ
3. 再会
4. さよならをいう気もない
5. ラム酒入りのオレンジ
6. 勝手にしやがれ
7. サムライ
8. ナイフをとれよ
9. 憎みきれないろくでなし
10. ママ……
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リクエストを下さりお待ちのみなさま・・・年内にお応えできず申し訳ありません。
しっかりした記事考案が固まるまで、今しばらくお時間を頂くことになりそうです。
・書きたいことが決まっていなかったり
(「灰とダイヤモンド」・・・ヴァイオリンパートを耳コピ、という凄まじいレビューをお書きになったあいら様に比肩しうるネタがまだ見つからない泣)
・書きたいことが検証されていなかったり
(「ジュリアン」・・・コード進行がキング・クリムゾンの「エピタフ」のオマージュだと思うんだけど、採譜に苦闘中汗)
・書きたいことが二転三転していたり
(「ロンリー・ウルフ」・・・歌詞が、主人公の男(=ロンリー・ウルフ)の在り方を肯定しているのか否定しているのか決められない涙)
など、他の曲についても諸々ありまして。
あり得ないくらいの大長文で1曲のみを語る、というのが売りですから(と、思う)、いい加減には書けないのですよ・・・。
いつか必ず。
え~と、今日は先日のブロマイドの話から思いついたネタなんですけど。
女性ファンと男性ファンでは、
「圧倒的に虜にされるジュリーの映像」
というのが、微妙にズレているような気がします。
僕にセンスが無いだけなのかもしれませんが・・・。
不肖DYNAMITE、有名な「タタミザムライ」の美しさがいまひとつ解らず、悔しい思いをしております次第。
で、僕が一番好きな映像というのが。
PVなら、「ポラロイドGirl」。
そしてTV映像だと、この↓「憎みきれないろくでなし」!
浅学にて、出演番組がよくわからないんですけどね。
この映像のジュリー、なんというか、「男」全開なワケですよ。
ジュリーって、男の極みのような男だと僕は思っています。容姿が女性的な映像は、苦手・・・とか言ったらやはり石を投げられますか・・・。
「おまえにチェック・イン」の記事にも似たような事を書きましたが、ジュリーのスゴさは、ノッてくるとその男力で周囲を巻き込み、普段は渋くキメているバンドメンバーのアクションが大変な状態になる、という絵でこそ計れるのではないでしょうか。
上映像での井上尭之さんも、相当キテます。
さて、今日はその「憎みきれないろくでなし」の楽曲記事にて、景気良く今年をシメさせて頂きたいと思っております。
爆発的大ヒットアルバム、「思いきり気障な人生」より、伝授!
このナンバー、ジュリーのセールス絶頂期にあっては結構地味な印象をお持ちの方が多いかもしれませんが(「勝手にしやがれ」の次だしねぇ)、これは日本ロック史上、最も重要な楽曲のひとつです!
お近くにガチガチのロックリスナー男性がいらしゃる方々、彼をジュリーにオトすなら、まず「憎みきれないろくでなし」を聴かせるべし。自信を持っておススメしますよ~。
作曲の大野さん、そして編曲・船山さん。お二人ともこの曲のバッキング・テイクを録った瞬間、「やってやったぜ!」と思ったに違いありません。
「憎みきれないろくでなし」は、あの時代の歌謡曲の範疇を考えますと「超」がつく異端児のナンバーなのですよ。
まずは作曲面。
ヤバイくらいに駄々をこねる進行です。
「決まり文句だね~♪」
の「ね~♪」が瞬間転調している、とか
「憎みきれない~♪」
の「い~♪」が瞬間ブルース音階である、とか。
理屈は解らずとも、「風変わりなメロディーだなぁ」というのは、みなさんお感じのはず。
最近でこそこの手法は珍しくありませんが(例えば、「サーモスタットな夏」などがこのテの一瞬転調の進化形です)、歌謡曲全盛、暗黙のルールもあったであろう当時としてはかなりの冒険です。
作曲当初の大野さんはシングルリリース、なんて頭になかったんじゃないかなぁ。
「若き日の手紙」くらい、ヤンチャ(無茶)していますね。
やはり阿久さんの歌詞の影響があるのでしょう。「憎みきれないろくでなし」は、ねばって、ねばって、サビ!な構成なのですが、そのサビというのが
♪憎みきれない~~ろっくでなし~♪
という、歌詞にしてたった1行、譜面にしてたった2小節の部分なんですよねぇ。
洋楽でも滅多に見ない、独特の手法です。
さらに、アレンジ面。
ジュリー祭り参戦の相方・YOKO君が何処からか仕入れてきた話によりますと。
録音スタッフは、実は「憎みきれないろくでなし」の最後の仕上げアレンジに相当煮詰まっていたようです。
アイデアに詰まり皆で休憩していた時、表を自転車で豆腐屋さんが通りかかった。
ぷ~♪
「これだッ!」
大野さん達は「我が意を得たり!」と手を打ち、あのホーンセクションのアイデアが固まったのだそうです。
つまり、逆転のアイデアなんですよ。
ホーンセクションというのはバリバリとカッコ良く、オシャレなものであるというのが通常の発想。そこまでは誰しもが思いつくことです。
それでは、何か物足りない・・・と煮詰まっていた時の、豆腐屋さんの「ぷ~♪」で、
思い切りルーズに、マヌケに!
というアプローチが浮かんだのでしょうね。
カッコ悪いことがカッコいい、というアプローチの楽曲は、特にローリング・ストーンズのオハコでもありますが、洋楽にも例は多くて。
そしてそのアイデアは、阿久さんのブッ飛んだ歌詞にも、大野さんのトリッキーな作曲にも、ピタリと合致する最善のものだったというワケです。
(数十年後に登場したトカゲがそのコンセプトに合致しているかどうか、については未だ謎ですが・・・)
ビートルズの「Got To Get You Into My Life」のホーンセクション・レコーディングのプレイバックを聴いたジョン・レノンが、アイデアを出したポール・マッカートニーに「やったな!」と、うらやましそうに賛辞を贈った話は有名ですけど、それと似たような雰囲気が大野さん達を包んだものと想像できます。
最高に「ずる~っ」としたホーンセクションを施した「憎みきれないろくでなし」は、(おそらくそれを機に)水を得たように豪華な装飾が次々と重ねられていきます。
・2つの短調移行部・・・Bメロではストリングスを加えて柔らかい感じに。間奏では、ホーンを完全に抜いてエレキギター・ソロで押し、ハードな感じに。
とか、
・ルーズなハ長調部分を突起させるために、カウベル(やかんみたいな音の打楽器)を導入する。
とか、
・間奏でベースがハ長調部と同じフレーズをマイナースケールで弾いて楽曲を混乱させる(Am→Gの進行が、A→Gの1音落下転調に聴こえる、という不思議な効果が得られています)。
とか。
ここまでマニアックにやりたい放題の曲がヒットしてしまったのだから、ジュリーのロック史貢献度はスゴイものがあります。
70年代後半の阿久=大野=船山期というのは、様々な意味で「歌謡曲」にカテゴライズした方が語り良いのですが、そんな中、「憎みきれないろくでなし」は圧倒的にロック・ナンバーなのです。
では、最後に恒例の「教えて」コーナー(爆)。
先に挙げたTV映像なんですが。
尭之さんがハジけているのもすごく印象的なんですけど、それ以上に、左サイドで手持ち状態のカウベルを叩いておられる、↓このお方!
これ、どなたですか~?
僕が無知なだけで、有名な方なのでしょうか?
スゴイ演奏です。
狂乱の舞い、無我の境地。
楽曲アレンジのコンセプト、「カッコ悪いのが最高にカッコイイ!」を身体を張って表現する、最強のカウベルマン!こんなに情熱的にカウベル叩く人を、僕は初めて見ました。
このお方は、他に「サティスファクション」の映像(同時期だと思う)でも凄まじいアクションを見せてくれます。
挙句、ジュリーと一緒のマイクでコーラス参加しちゃったりとか。
ジュリーの男力にヤラレた状態であろう事は一目。
ジュリーにヤラレた男が多い分だけ、それはロックな楽曲とも言えるわけですよ!
という事で強引にシメますが、これが2009年ラストの記事になります。
遊びにきてくださったみなさま。
1年間、ありがとうございました。本当に、心の底からそう言える事に、自分で驚くばかりです。
ご承知の通り個人的に色々と実りのあった年でしたが、単純にジュリーファンとして思うことは・・・。
何と言っても、自分のような者が「じゅり風呂」(某所で最近覚えた用語)の一員としてみなさまの認知に至った、という奇跡。
こんな突然降って沸いたようなファンが、歴史の長い先輩方にお仲間として認めて頂けた、というのはスゴイ事だと思っています。
ジュリーの辿ってきた道のりを知れば知るほど、そう思います。
手抜きせずに、自分なりにフルに情熱を傾けた事が良かったのだ、と思っていますから、その点初心を忘れずに・・・と決意いたしまして。
来年もどうぞよろしくお願い申しあげます。
よいお年を~!
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