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2009年11月21日 (土)

沢田研二 「立ちどまるな ふりむくな」

from『ROYAL STRAIGHT FLUSH 2』
original released on 1976、single

Royal2

1. ス・ト・リ・ッ・パ・-
2. おまえがパラダイス
3. 恋のバッド・チューニング
4. TOKIO
5. OH!ギャル
6. ウインクでさよなら
7. 渚のラブレター
8. 酒場でDABADA
9. ロンリー・ウルフ
10. さよならをいう気もない
11. 立ちどまるな ふりむくな
12. コバルトの季節の中で

---------------------------------------

え~、明日からの3連休、お留守にします。
で、月曜の夜に帰ってきまして、みなさまのコメントをチェックしたのち、今度は1週間ほど更新をお休みします。
月末に引越しなんですよ~。部屋、全然片付いてない・・・(汗)。PCもそろそろ厳重に格納しなければ。
引越し代を浮かすべく、職場同僚の力持ちのお兄さんを二人ほどコキ使う予定でおりますが、なんせその二人、男気はあれど運転は荒い!

ブログ復帰予定日は、12月3日に間に合わせたい。

そう、僕が完全にジュリー堕ちした東京ドーム1周年の日に、と考えています。
頼むよ、ニフティさん。

これまで僕の住所をお知らせしてきたJ先輩やJ友さん達にも、折を見て新住所の御報告をしてまいりたいと思っております次第。
しばしのお別れの前に。
本日は、先頃見事ニアピンの20,0001アクセスをヒットなさったhayamiさまのリクエストにお応えしたいと思います。

渋い曲が来ましたよ~。嬉しいですね。

大ヒットした「時の過ぎゆくままに」の後を受けて、同じ阿久=大野ナンバーでヒット連発を目論んだものの、セールス的には今ひとつだった、マニア以外には印象の薄いであろうシングル曲。
しかし僕たちジュリーファンは、このナンバーが、あの70年代後半に大爆発した楽曲群の幕開けとも言える曲であることを、知っています。
今回はその意味合いを、サウンド面から紐解いてみましょう。
「立ち止まるな ふりむくな」、伝授!

リクエストを頂きましたhayami様が、こう仰っています。
「ジュリーナンバーとしては異色の演歌調に聴こえ、それでいて自分が何故この曲が大好きなのか説明できない」

そりゃ、ヴォーカルでしょ~。
え?そんな事は先刻ご承知ですか・・・。

いやいや、結構秘密があるんですよ、この曲のヴォーカルは。

まず、レコーディング技術面。
「思いきり気障な人生」で開花するヴォーカル処理の手法が、ジュリーナンバーで最初に試されたのがこの「立ち止まるな ふりむくな」なのです。
いわゆる「お風呂エコー」の最先端の形(当時ね)で、バックの音に対してすごく山盛り状態に聴こえるのが特徴です。
マイク自体の進歩も関係しているでしょうが、ジュリーのヴォーカルにこの処理が施された最初の理由はおそらく

徹底的に、レコード向けの声になる

という事だったと思います。
ですから、デジタルCD全盛の今の時代、このヴォーカル処理は多少の古くささを感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。


レコーディングの技術革新が次々に起こった70年代。
それ以前の楽曲では、耳元で囁くようなヴォーカル処理だったのが、少し離れた位置から大声で恫喝するような(って、他に上手い言い方がないのか?)処理にとって代わりました。
好みはそれぞれでしょうが、ジュリーならばどちらの手法でも魅力はあるワケで。

そして、録音技術ばかりではない、ジュリーが「天性のヴォーカリスト」である事を証明する箇所が、この曲にはひっそりと存在します。
おそらく、大野さんの作曲段階とは違ったメロディーを歌っている箇所が。

1番
♪コートの襟を立
て~走っていけよ~♪

2番
♪あてなく揺れながら~歩いてゆけよ~♪

お分かりでしょうか。
生粋のジュリーファンを集めてカラオケでこの曲を歌って頂いたとしても、この部分をジュリーと同じように歌える人は10人に1人くらいだと僕は踏みますね。
音階で表記しますが、ほとんどの方は

♪ラシレレレレレ~シラ~、ララッソラソソ~♪

と、歌うでしょう。
でも、ジュリーが歌っているメロディーは

♪ラシレレレレレ~シラ~、ララッソラソソ~♪

なのですよ。
しかも、この太字の「シ」の声を、吐息のようにしてスッとさりげなく歌っています。

これはジュリーがまさにこの当時、フランス語の歌唱を勉強していた事と無関係ではないでしょう。

みなさまが、耳で聴いてこの曲のメロディーを覚えてはいても、いざ自分で歌ってみるとその通りには歌っていない・・・そしてそれに気づかない。そんな事態が、多くのベテランのジュリーファンの方々にさえ起こり得る、と思っています。

さらに、ジュリーのヴォーカル秘技はそれに留まらず。
さりげない吐息があれば、一方でははっきりとしたセクシー声もある、ということ。
日本人については、「たちつてと」をセクシーに歌うヴォーカリストに僕は惹かれます。
女性だと、刑事ドラマ「Gメン75」のエンディングを歌った頃の、しまざき由理さん。
そして男性では当然、阿久=大野時代のジュリー。この「立ち止まるな ふりむくな」では、ジュリーの「タ行セクシー声」の全貌が露出します。

何と言ってもこの曲の歌詞、「たちつてと」率が異常に高いですから!
初っ端の「立ち止まるな~♪」は言うに及ばず、「ちぎれた糸を~♪」とか、「うわ~」って感じ。
でも、これは僕だけの感覚かもしれません。

しかしながらこの路線はその後しばらくお休みとなり(当時のジュリーの置かれた環境をようやく認識した今日この頃)、「ウィンクでさよなら」の加瀬さん路線や、アルバム「チャコールグレイの肖像」での囁き路線をもう一度経たのち、「立ち止まるな ふりむくな」のパターンを踏襲した、阿久=大野=ジュリーのセールス黄金時代がやって来るのですね。

それ故、「立ち止まるな ふりむくな」というナンバーは、アルバム「思いきり気障な人生」に収録されていたとしてもおそらく違和感はありません。
つくづく、面白いシングル盤だなぁと思います。だって、一方のB面曲は、「いくつかの場面」以外のどのアルバムに収録されていても違和感バリバリであろう「流転」なんですから。
この2曲がドーナツ盤のカップリングってのは、ジュリーの歴史、2つの大きな波が交差した時代の産物とは言え、スゴ過ぎますわ。

最後に。
「立ち止まるな ふりむくな」が、なんとなく「演歌っぽく聴こえる」原因を説明いたしますと。
これ、実際に演歌でよく使われるパターンなのですが

キメのリードギターとストリングスがユニゾン(同じメロを弾いている)!

というアレンジの為せる業なんです。短調の曲でそれをやる、ってのがポイントね。
試しに・・・そうだなぁ、「恋は邪魔もの」とか「追憶」のイントロ。
リードギターに、脳内で全く同じメロディーのストリングスを重ねてみてごらんくださいませ。
演歌っぽいでしょ~?

でも、ジュリーが歌うと演歌にはなりえない。
アレンジに左右される歌手ではなく、アレンジを噛みくだいて飲み込んでしまうヴォーカリストなんですよね、ジュリーは。

ちなみに、相互リンクさせて頂いておりますkeinatumeg様のブログ「僕らは、いつも楽しい驚き!」さんに、「立ち止まるな ふりむくな」の季節感について書かれた御記事がございます。
keinatumeg様の流麗な文章群の中でも、僕が個人的に大好きな内容の御記事です。
みなさまも是非、お読みになってくださいね。

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みなさまからのリクエスト伝授!」カテゴリの記事

コメント

DYさん、おはようございます。
今回のレビューは、素晴らしい!いうことなし!花丸あげたいです。私が言葉にできなかったことを書いていただき、ありがとうございます。

投稿: 74年生まれ | 2009年11月21日 (土) 09時26分

DYNAMITE さま

お引越し前の大変お忙しい時期にもかかわらず
早速の伝授、ありがとうございましたm(__)m
74年生まれ様もおっしゃっておられるように、
自分では説明の付かなかった心の中の思いを、
的確に文章にしてくださって本当に嬉しいです。
また音楽面での専門的な解釈も、なるほど~!と思う事ばかりで
物凄く勉強になります。
久々に「立ちどまるなふりむくな」のシングルレコードを引っ張り出して
ヘッドホンで聴いてみましたよ^^

> 1番
> ♪コートの襟を立て~走っていけよ~♪

> 2番
> ♪あてなく揺れながら~歩いてゆけよ~♪

> お分かりでしょうか。


わかります、わかります^^
まさにこの歌い方がジュリーのボーカルの特徴であり魅力ではないでしょうか。
この部分の歌い方とは論点がちょっと違うかもしれませんが、
思えばタイガース時代から「おひきずりのジュリー」などと言われていましたね~。
(この頃は褒め言葉ではなく、たぶん音程が定まらず違う音から入って引っ張りながら正しい音に持っていく、という意味であったような^^;)
その、ある意味欠点であったものを、
努力による歌唱力の向上と共にジュリーならではの武器に変えていったような気がします。
ジュリーのボーカルはたぶん譜面とは全く違うものでしょうね^^

ボーカルだけでなく、この曲のアレンジ、特にイントロの部分に引き付けられました。
地味な曲にもかかわらず、かなりのインパクトがあり、その後のジュリーの振り、
♪立ちどまるな~(手を前に突き出す)ふりむくな~(手のひらを反す)♪
も、何故か大好きでした。

keinatumeg様のブログも時々拝見していますよ。
DYNAMITEさんをはじめ、男の方の視点は新鮮です。

♪コートの襟を立て~♪のところで私はいつもこのシングルの
セピア色のジャケット写真を思い描いていたんですが・・・
良く見ると、ジュリーのコートは襟ではなくフード付きだったんですね^^;

長々とすみません。
伝授本当にありがとうございました。

投稿: hayami | 2009年11月21日 (土) 13時09分

DYNAMITEさま、伝授、ありがとうございます。

さきほど、「下郎参上」を途中で止めて、
「立ちどまるな ふりむくな」を聴いてみました。
実は、私、大すきなんです、「立ちどまるな ふりむくな」
いつも、口ずさんでいました。
でも、こんなに深く考えたことがなく、
ああ、そうだったのか・・・と思いました。

私は、ジュリーの「こ」もすきなんです。
♪生きて行くことはせつないけれど
の「ことは」の「こ」
これは、いくらまねしようとしてもなかなかできません。
「花・太陽・雨」(祭り)の「この青春に」というときの「こ」も。
このときは、強く「こ」と発音するのですか、
それがただ強いだけじゃないんですよね。
なんどやっても、私にはできなくて!(あたりまえですけど)
ジュリーのすごさを痛感しました。

投稿: azur | 2009年11月21日 (土) 16時04分

こんばんは!

私は専門的な事はわからないんですが、演歌っぽいとは思っていました。でも私もなんか、この曲が好きなんです。この次の「さよならをいう気もない」も好きなんです。あまりこの2曲は成績が良くなかったんですけど・・次が「ドカーン」ですから(笑)この2曲は懐かしく聞こえるのは演歌の要素が入ってるからなんですか?
難しい事はわかりませんが、DYNAMITEさんの説を読んで「うーーん」納得しました。

ほんとに勉強になります。

投稿: kumiko | 2009年11月21日 (土) 22時41分

瀬戸口様、
伝授の文章の中に、
私の名前を出して頂き感謝と恐縮です。
有難うございます。
hayami様、拙ブログを覗いて頂いているとのこと、有難うございます。
「立ちどまるな~」「さよならを言う~」などの76年、大ブレーク前の曲は、
なにか劇画漫画のようなイメージでありまして、その虚構の中のリアルさ加減が、
切なく胸に突き刺さってくるものがあります。ほんとうにいい曲ですね。
歳をとるごとに染みる曲です。

投稿: keinatumeg | 2009年11月21日 (土) 23時20分

みなさま~。

一時帰還いたしました。
また、明日あたりからいなくなります…。

浮世の暮らしに染まっておりますと、その間動きのあった非浮世のジュリー界に追いつくのが大変です。
いつもお邪魔させて頂いているサイトさんやブログさん巡りだけでエライ時間が…。

そして何よりも。
管理人留守間のコメント、ありがとうございました~。

74年生まれ様

ありがとうございます。
いつも色々な角度から僕の知らない事を教えてくださる74年生まれ様。
今回は「言う事なし!」でございましたか~。
それはそれで寂しいような…。

いや、過分なお言葉、感謝感激です。

hayami様

リクエストありがとうございました~。
こちらこそ、感謝しておりますです。この曲については、いつか書きたいと思っていましたから!

ジュリーの振りは…知りませんでした!
70~80年代ジュリーの僕の映像基本は「快傑ジュリーの冒険」なんですよ~。
この曲と「ウィンクでさよなら」はギリギリ収録前なんですよね。

シングル盤、大切にお持ちなのですね。
いつか、「流転」についても書かせてくださいね!

azur様

はい!
ジュリーの「かきくけこ」も最高ですよ!
力強く発音する事が多いですよね~。

アルバム「ストリッパー」での叩き斬るような「かきくけこ」。
「チャコールグレイ」での、突き刺すような「かきくけこ」。
いずれも、ドキッとしてしまいます。

僕は「かきくけこ」の魅力を感じるナンバーの中では
「影絵」
を推します!
胸が張り裂けそうな発音です。

kumiko様

やはりみなさん、なんとなく「演歌っぽい」というイメージはおありになるのですね~。
短調の曲であることと、ギター+ストリングスのユニゾンアレンジがそうさせているとは思いますが、
考えてみますとそれは、「思い切り気障な人生」大ヒットへの布石かと思います。
「立ち止まるな」「さよならを」の2曲は、ファンにあの音作りを無意識にでも浸透させる役目を果たしたのではないでしょうか。

重要な曲だと思います。
タイムリーなファンの方々にとっては、「爆発直前」というのがまた、懐かしさを増長させる要因かもしれませんね。
それは僕にとっては、とてもうらやましい感覚です~。

keinatumeg様

僕はkeinatumeg様の、楽曲と情景がリンクした文章のファンなのですが、「立ち止まるな」の御記事は特に新鮮でした。

「雪の情景のないこの曲に冬のイメージが湧かない」
という観点が何よりも刺激的で…。
そう思って歌詞を紐解きますと、確かにこれは真冬の曲ではないのですね。
冬の入口に立ち止まっている人の、背中から歌っている楽曲のように思いました。

この御記事を初めて拝見した頃は、まさか自分のブログをkeinatumeg様にリンクして頂くなど、想像だにしておりませんでした。

今でも、大変光栄に思っております!
今後とも末永く、よろしくお願い申しあげます~。

投稿: DYNAMITE | 2009年11月24日 (火) 00時03分

こんばんわー。いつもありがとうございます。私のこの曲も印象は「セブンスターショー」です。左手首に巻かれたロープをブチッと引きちぎる演出が印象的でした。久々に見たらJULIEの細い手首がやけにエロチックでした。昔のビデオをあさっていたのですが、当時は何の考えもなく適当に録画していたもので、マツタケもワライタケもいっしょくたで整理しようがありません。
でも、お宝も出てきました。
ひとつは1977年の武道館ライブです。
「今を生きる」「夜汽車の中で」「熱いまなざし」などが入ってます。ダビングさせてもらった物なので、画質はひどいですが、見つかってうれしかったです。
もうひとつ比叡山のフリーコンサートのライブビデオ(これもダビング)があったはずなのですが。(多分姉のところに)「さがして!!」と頼んであります。
でもDVDにしておかないとこれ以上テープが劣化したら見れなくなっちゃうかも、とあせっています。うまくDVD化できたらまたDY様に伝授していただきたいです。

投稿: nekomodeki | 2009年11月24日 (火) 21時32分

nekomodoki様

いらっしゃいませ~。
たった今、nekomodoki様よりお譲り頂きました写真集よりスキャンしました画像を置き土産に、お休み期間に入ったところです~。

で。
コメント頂きました映像は、2番の出だしが橋にケリを入れている、あの映像のことですよね?
観ましたよ観ましたよ。
1番、カッコいいですよね!
ロープ引きちぎって、クルッと振り向いて歌いだすシーン。
振り付けも、一瞬たじろぎましたが、カッコイイ!

立ち止まるな(バ~ン♪)→手刀
ふりむくな(バ~ン♪)→裏拳
あなた~♪

冷たい握手(バ~ン♪)→手刀
もう二度と(バ~ン♪)→正拳
できない~♪

いや~クセになります。素晴らしい!
是非一度、生で観たいですね!
(自分がLIVEでマネしたいだけ、という説もあり)

投稿: DYNAMITE | 2009年11月25日 (水) 00時42分

ロープを引きちぎってたのは右手でした。(汗)なに見てたんだか。
引越しお疲れ様です。片付けの最中にヘタにお宝を見つけてしまうと作業が半日おくれますのでご注意!(経験上)
再開を楽しみにしています、

投稿: nekomodoki | 2009年11月25日 (水) 21時22分

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