沢田研二 「光と花の思い出」
from『JULIE』、1969
1. 君を許す
2. ビロードの風
3. 誰もとめはしない
4. 愛のプレリュード
5. 光と花の思い出
6. バラを捨てて
7. 君をさがして
8. 未知の友へ
9. ひとりぼっちのバラード
10. 雨の日の出来事
11. マイ・ラヴ
12. 愛の世界のために
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さて、満タンシングルの全曲記事を書き終え、通常伝授に移りたいトコなのですが(リクエストが溜まってる汗)、当ブログは未だに「Pleasure Pleasure」ツアー・セットリストのネタバレ禁止期間(新譜以外ね。新譜は、ハナから演るに決まってますから)なのでして。
世間では、あちら様もこちら様もほぼネタバレ解禁状態で羨ましい限りなのですが、僕のトコはねぇ・・・一人、いるんですわ。「大宮までは黙っててくれ」と言う男が。
長い読者の皆様にはお馴染みの人物ですけどね。
セットリストの曲は避ける、有名曲も避ける・・・するってぇと、ツアーと全く関係無い、「さすがにそれは演らんだろ」と誰もが思う楽曲を伝授するしかないのです。
しばらくはそんな感じで、マニアックなナンバーについて書いてまいります。何卒よろしくお願いいたします。
で、新譜6曲を続けざまに語った反動なのでしょうか・・・気分的に思いっきり時代を遡ってみたくなりました。
今日はズバリ、ファースト!
タイガース在籍時にリリースされたというアルバム「JULIE」より、ZUZUの真骨頂・切なくも爽やかな究極のフラレソング「光と花の思い出」、僭越ながら伝授!
ジュリーのフラレソング(すみません他に言い方が思いつかない・・・)、数々の名曲がありますが、僕はこの曲と「砂丘でダイヤ」が双璧です。全然タイプも年代もかけ離れた2曲ですけどね。
どちらも、詞にドンピシャのヴォーカルが聴けるナンバー。改めて、ジュリーの「歌に心ごと身体ごと入り込む」能力を思い知らされる楽曲なのです。
「光と花の思い出」は、2回し目で「悲しいことだけ」というフレーズも追加されますが、作詞のZUZUがガツ~ンと言い放った一言、
♪なぜ美しいことだけ いつでも思い出す♪
この導入部分に尽きます。
ひょっとしたら、恋人・・・だけとは限らないかもしれません。
愛する人との別れは、そりゃあ切ない。そんな時に人は、悲しみの場面を回顧するのではなく、相手と共有した美しい、楽しい情景ばかりを思い出す・・・なぜ、美しいことだけを思い出すのだろう。
言われてみますと、本当にその通りで。
何ひとつ難解な単語を使うでなく、解りやすい言葉で当たり前の感情を描く、という、それ故にZUZU独特の表現。
以前「遠い旅」の記事で触れたように、書いていない部分まで描き切ってしまうその才能に感動するばかりです。
この頃のジュリーはまだ、「歌に入り込もう」という意識ではなく(「自分の詞ならそれができると思うからそうしたいけど、まだ上手く詞が書けない」という、当時のジュリー自身の発言があります)、「どういう風に歌ったら伝わるのか」という事を念頭に置いてヴォーカルに臨んでいると思いますが、いずれにしてもジュリーが、詞を噛み砕くというアプローチを大前提としている歌い手である事は間違いありません。
結果、この若さで、強い意識なくとも見事に歌の世界に溶け込むヴォーカル。
そんなジュリーの才能を最も見出せるのは、まだ何色にも染まっていないこのファーストアルバムなのかもしれません。
「光と花の思い出」では、Aメロを訥々と、サビを伸びやかに歌っているジュリー。
村井邦彦さんの作曲はAメロが大変美しく、サビはどちらかというと豪快にハジける、という特徴があり、この曲ではサビでタイガースを彷彿とさせるコーラスが導入されています。
ただこの曲の場合はコーラスパートもジュリー自身ですので、タイガースを意識した2声同レベルのミックスは少し勿体無いかも。高音パートを強調した方が効果的だったかもしれません。
その分、Aメロ(曲の骨子という意味では、3回し目のAメロこそがサビと言うべきかも知れません)の美しさが尋常でなく際立っています。
そして。
Aメロは都合4回、登場するんですけど。
4回ともメロディ-それ自体は全く同じ。ですが、一番最後の4回目のみ、演奏の和音構成が違うのです。
そのため、同じメロディーの繰り返しなのに、ラストだけちょっと切ない感じに聴こえるはずです。この曲はニ長調からヘ長調への転調がありますが、便宜上転調していない、と仮定して表記しますと
D→Em→G→D→D→Em→G→D
これが3回目まで。4回目のみ
D→Em→G→D→F#m→(B7)→Em→G→D
たった1小節のコードが化けただけで、こんなにも歌の雰囲気が変わるんです。
参考までに原曲通り、ヘ長調表記に変換すると
F→Gm→B♭→F→Am→Gm→(D7)→B♭→F
となっています。
ギターや鍵盤を嗜む方は、是非弾き語ってみてください。シンプルながら、とても凝った楽曲である事が実感できると思います。
まぁ、歌うのがジュリーだから、ってのが一番大きいんですけどね。
今回、ファーストからの伝授という事で、お題の楽曲選択をこの「光と花の思い出」と最後まで争ったのは、「ひとりぼっちのバラード」「雨の日の出来事」の2曲でした。
機会がありましたら、またいずれ。
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