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2009年5月22日 (金)

沢田研二 「雨だれの挽歌」

from『LOVE~愛とは不幸をおそれないこと』、1978

Love


1. TWO
2. 24時間のバラード
3. アメリカン・バラエティ
4. サンセット広場
5. 想い出をつくるために愛するのではない
6. 赤と黒
7. 雨だれの挽歌
8. 居酒屋
9. 薔薇の門
10. LOVE(抱きしめたい)

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僕は、ほとんど洋楽ロックしか聴いていなかった時代からずっとそうなのですが、「明らかにやり過ぎ」たアルバムが好きです。
キンクスの「プリザヴェイション」、ストーンズの「サタニック・マジェスティーズ」、ジョージ・ハリスンの「オール・シングス・マスト・パス」、エルヴィス・コステロの「インペリアル・ベッドルーム」、ビリー・ジョエルの「ナイロン・カーテン」・・・。
また、あまりにも有名すぎて「やり過ぎ」とは言いにくいですが、実はビートルズの「ホワイト・アルバム」やクイーンの「オペラ座の夜」もそういったスタンスで僕は聴いています。

何がやり過ぎなのか、ってのはアルバムそれぞれで、コンセプトであったり、ミックスであったり、アレンジであったりするのですが、今日ご紹介するジュリーのこのアルバムは、ちょっと珍しいパターンで。

やり過ぎてるのは、歌詞!

阿久悠=大野克夫コンビの3部作、ラストを飾るアルバムです。
「LOVE~愛とは不幸をおそれないこと」から、今回は「雨だれの挽歌」を採り上げ、阿久さん一世一代のやり過ぎについて語ってまいりましょう。伝授!

♪ホテルの部屋は寒い
 あなたが熱いだけ
 くすんだ天井に

 息絶えた虫がはりついている♪

ひぇ~~~~~!!!
ジュリー、この詞を入魂も入魂のヴォーカル(フラット?オッケ~オッケ~)。大マジです。

大体、歌謡曲(と、敢えて言うね)で「虫」ってフレーズはアリなのか?

実はジュリーナンバーでもう1曲、「思いきり気障な人生」にも「虫」って単語が出てきますが、こちらは「羽根のない蝶」というフォローのフレーズ(なんだそりゃ)がありますから、聴き手は「虫」=「蝶」という感覚でいられます。

しかしこの「雨だれの挽歌」は・・・。
歴然と、虫。いわゆる、虫。

これは冬の曲ですので(アルバム全曲そうだけどね)、夏の終わりに生涯を終えた虫が、掃除もされずに真冬になってもそのまま部屋の天井にくっついている、という(汗)。
なんかね、夏の夕暮れ時、自転車でカッ飛ばしてると勢いよく目の中に飛び込んでくる、通称「ばか虫」・・・アイツを想像しちゃうんですけど!

このシュールな情景描写は、歌謡曲でありえません。
しかも、ジュリーですよ。お子様のファンだって、たくさんいるでしょうに。

要するに、このアルバムでの阿久さんの冒険は、言葉の組み合わせなのです。
前作「今度は、華麗な宴にどうぞ」で、壮大なストーリー、言い換えると歌詞で限りなく小説に近づいた阿久さんは、とうとう己のストーリーの中で更に遊び心を持つ、という境地にまで至りました。

アルバムを通じて、突拍子もない単語が連発します。
しかも(これは、阿久さんが敢えてそうしたのだと思いますが)、当時はモダンなフレーズではあるものの、時代が変われば素っ頓狂な表現になってしまうような単語を、多く取り入れているのです。

「雨だれの挽歌」の場合だと

♪凍てついた舗道を
 揺れながらメトロまで行く♪

「メトロ」って・・・。
また、困った事に短調のバラードなんだ、この曲は。

僕はこのアルバム、初めて聴いた時は大ウケだったんです。「雨だれの挽歌」のみならず、全編どこかしらに「プッ」と吹いてしまう箇所があって。
ところが、聴きこんでいくうち、そんな単語が重く楽曲にのしかかり、ストーリーで語られる主人公=ジュリー(だって、スゴイ歌詞に入り込んで歌うんだもん)のダメージを共感するに至りました。
クセになる、という言い方がピッタリきます。恐ろしい名盤だと、すぐに認識を改めましたね。

阿久さんのこの言葉の選び方が、タイムリーでジュリーを聴いていらっしゃった先輩方に対してどのような影響力を持っているのか、非常に興味があります。
想像するに、好き嫌いは分かれるかもしれませんが、久しぶりに聴いた時に、このアルバムがリリースされた真冬の風景に、強引に押し戻される・・・そんな作品なのではないでしょうか。

アルバムの他収録曲にも触れますと、まずシングルは「LOVE~抱きしめたい」。
重いナンバーですよね。でも、アルバム全体からするとこの曲はまだ爽やか(おいおい)な方なんです。

「想い出をつくるために愛するのではない」、これが一番スゴイでしょう。

♪イーグルスきいた
 五杯目の酒を飲んだ
 壁紙がセピア色に色あせたホテルで
 冬の夜を過ごしている♪

ホテルって言っても、主人公が聴いてるのは「ホテル・カリフォルニア」ではあり得ない。ソコがポイント。

「薔薇の門」、これもスゴイ。

♪恋は嵐、愛は命
 そして二人は 薔薇の門、薔薇の門♪

ワケわかりません。
「薔薇の門♪」を2回繰り返す、という、この部分!
この曲がお好きな人は、絶対ココにヤラレてるはずです。

最後に、「アメリカン・バラエティー」行っときますか。

♪テネシー生まれの熱いウィスキー
 テンガロンハットの中に満たし
 あなたと二人だけで飲めば
 摩天楼飛び越すスーパーマン♪

いや、自由の女神をクドく男の話なんですけどね。
これからアルバムをお聴きになられる方々、この「アメリカン・バラエティー」と「TWO」「サンセット広場」の3曲以外は、すべてダメージソングですので御覚悟を。

でも、今聴かない方がイイね。
真冬になってから、ストーブ1コだけの閑散とした部屋で聴いて欲しいなぁ。
暑い時に聴くと、「大野さん、大変だっただろうなぁ」とか、余計な事を考えてしまう自分です・・・。

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瀬戸口雅資のジュリー一撃伝授!」カテゴリの記事

コメント

お久しぶりですこんばんわ。
コメントは久々ですが、こちらには日参して楽しんでおります。
いつも新鮮な視点の「伝授」ありがとうございます。
このアルバムの中から「雨だれの挽歌」をチョイスとは素晴らしい!!と思ってまた顔を出してしまいました。
も~大好きなんです。
当時は歌詞をノートに書き写して持っていた位です。
ジュリーの歌の世界が染み入るように心の中に入って来て・・・クラクラするほどだったのを覚えています。
次点が「想い出をつくるために愛するのではない」・・・です。
昔のヨーロッパ映画のイメージですよね。歌詞+曲+ジュリーの歌唱で、一つの世界がそのまま体の中に入って来て、細部を気にすることもなかったですね~。
このアルバムは映画のような情景が浮かぶので、今でもヘビー・ローテで聴いています。
先日の「月のギター」も好きな曲の一つなので、ジュリー・ファンとしてのツボが 同じだと、とても嬉しかったです。(^_^)/

投稿: oba | 2009年5月23日 (土) 00時30分

>「アメリカン・バラエティー」と「TWO」「サンセット広場」の3曲
同意でございます。他の曲は生で聴いててもたぶん寝てたと思いますw

しかし30年前のラジオ番組でこのアルバムを紹介しているジュリーは
「雨だれの挽歌」「薔薇の門」も取り上げておられます
「サンセット広場」は
「ええ曲なんや、これが!でも今日はかけないんです」とか言ってたような…
(記憶はあやふやですが)

思うに、ジュリーは阿久さんの詞は好きではなかったので
あまり真剣に読んでなくて、メロ重視だったんでしょうか?

ちなみに私も♪薔薇の~も~ん、薔薇の~もん
というフレーズだけ頭にこびりついてますw

投稿: メイ | 2009年5月23日 (土) 00時35分

発売当時、高校2年生男子だった投稿者。詞に感情移入するというよりも、映画や小説を鑑賞するように,大人の世界を覗く気持で聴いてました。

そして12月24日〔ジュリーin武道館PartⅢ〕…投稿者は沢田研二コンサートを初体験しました。

〜二部構成。第1部は,このアルバムを中心に展開されて[♪想いでをつくるために愛するのではない]で閉じられました。
第2部は,ヒット曲含めポップでホットな選曲でした。

翌日が二学期最終日で、音楽を好むクラスメイト達に「始まり1曲目は何だった?」と訊かれ,「ストーンズのミスユーだった」と答えて、「へーぇ!?」と驚かれたのでした。♪

投稿: 鉛筆 | 2009年5月23日 (土) 01時07分

瀬戸口さま、はじめまして。
ドーム前にいきなり嵌りまして、その後こちらでジュリー音楽道を学ばさせていただいております。
確か同世代だと拝見したような気がするのですが、私も洋楽一筋(HR系でしたがルーツはQueenですw)だったのでこの歳でジュリーに夢中になるというのが天変地異並みにビックリでした。
でも知れば知るほど、素晴らしい楽曲群と唯一無二の歌声に惚れこんでしまいもう抜けられそうもありません!

まだ21世紀のジュリ勉がほとんどできていないのですが(汗)好きなアルバムはいろいろあれど最近特に聴きこんでいるのはまさにこの全盛期時代です。
瀬戸口さんがおっしゃるやりすぎ感!すごくよくわかりますww
なんというか阿久さんにとってのジュリー劇場様式美炸裂みたいなw
もうこれはあの頃の現実離れ人間離れした(?)ジュリーだからこそ!歌えたんだと思います。
でもご本人はこの世界を表現するのに相当苦労されたようですね。

私は「赤と黒」もめちゃくちゃ気に入ってるのですが・・エトランゼ~だとかあのサビの大盛り上がりがw
唐突ともいえるハリウッドイメージの3曲も大好きですね。
「サンセット広場」なんてもう今ではヲイヲイ・・って感じの♪フィーバー~とかマジで~なんて言葉が気恥ずかしくなりますがいい曲ですよね。
個人的には「今度は華麗な~」は全体的にそんな曲調なので、もうむやみに楽しくて聴いてるとテンションどんどん上がっちゃいます。「酔いどれ関係」のベースライン、最高ですよね!

お初から長々と失礼しました。
大野さんのファンキーな楽曲が大っ好きなので、どうかまた70年代後半~80年にかけての曲をご紹介ください。
よろしくお願いします♪

投稿: まめふじ | 2009年5月23日 (土) 02時11分

みなさま、夜分にコメントいただきありがとうございます~。

本当に、新しい記事を素早くチェックして頂けてるんだなぁ、と感動してます。

oba様

おひさしぶりです~。

今でもこのアルバム、ヘビロテですかぁ!
嬉しいですね~。
東京ドーム相方のYOKOにも知らせてあげたいですよ。彼もこのアルバムの信奉者ですから。

僕はこのアルバム、1位が「想い出をつくるために~」、2位が「雨だれの挽歌」です。
ツボが同じですね~。

で、何故今回の記事が1位の「想い出~」ではなく2位の「雨だれ」なのかと申しますと…。

実は今、長年放置し続けてた部屋を徹底的に掃除している最中なのですが。
今日、見つけてしまいました。
はりついてたんです(爆)。
天井ではなく、壁でしたが。

…シュールな話で申し訳ありません。

ちなみにYOKO君は「想い出」「サンセット」「薔薇の門」がお気に入り。

どの曲もLIVEで是非聴きたいですけど、さすがにナイですかねぇ…。

メイ様

寝ますかぁ~。
いや、解らなくもないです。メイ様は常にタイムリーでいらっしゃったでしょうから、このアルバムのLIVEも、タイムリーですよね。

ちょっと、好きになるのに時間のかかる曲が多いというのは、確かなんですよ。
好きにならないうちにLIVEで聴いてしまったら…想像できます。

しかし、ですよ。
今のジュリーが「薔薇の門」とか歌ったら、寝てられないと思います。

なんたって、「薔薇のもん、薔薇のもん」ですよ!
目、覚めますって!

まぁ、演らないですけどね…。

鉛筆様

なるほど、ジュリーLIVE初参戦が、このアルバムと結びついていらっしゃいましたか!

高校生でこの歌詞…僕だったら、理解できなかったかもしれません。

それにしても。
1曲目が「ミス・ユー」ですか!

なんとうらやましい…。

投稿: 瀬戸口雅資 | 2009年5月23日 (土) 02時24分

まめふじ様、はじめまして~。

いや、書きたかった事が伝わってるんだなぁ、と感動ですよ~。

「赤と黒」、もちろん好きですし、もちろんイチオシの箇所も同じです。

お互いがエトランゼ♪

まさに、ソコです!
「サンセット」の「フィーバー」も、もちろん「オイオイ!」ってツッコミましたし。

同世代…ポイントが同じなんでしょうね。
リリースから20年以上経ってから初めてこのアルバムを聴いて…だからこそ味わえる感覚なのかもしれません。

「酔いどれ関係」のベース、スゴイです。
その記述に反応して頂けたのも嬉しいですよ~。

今後ともよろしくお願いいたします~。

投稿: 瀬戸口雅資 | 2009年5月23日 (土) 02時31分

DYNAMITE さま
初めまして、しゃんさんのところからお邪魔しました。

いつも 拝見させて頂いては、リアルタイムで見ていた私たちとは違った目線に新鮮な驚きを感じています。

若い方がいい、見た目のみを重視する世間、芸能界、音楽界に疑問を感じて何故大人の音楽は育っていかなかったのだろうと思う日々です。

ジュリーの音楽について熱く語ってくださるのを嬉しく思っています。

「LOVE~愛とは不幸をおそれないこと」
このアルバムが出たのは'78 12月
レコード大賞V2宣言をしてTVに雑誌にジュリーはたくさん出ていました。

阿久さん大野さん 船山さんの3部作の最後の盤で まだ私も若かったせいか 
なかなか難しく 前年レコード大賞を取り
更なる前進をしなければならないとジュリーもファンも思っていました。

30年近く経ち「'92 A SAINT IN THE NIGHT」のコンサートDVDが発売され 
♪想いでをつくるために愛するのではない が収録されていて友人達4人で見たのですが
この曲について1時間も討論(笑)してしまいました。
4人の年齢差は10歳 リアルタイムで聴いた年齢が高1~ 
解釈が4人ともまったく違うのです。
聴いた年齢が違うと受け止め方もまったく違い 私たち自身がそれぞれ思い入れがあり
お互いびっくりしたのでした。

ジュリーはよく
「聴く人の思うように解釈すればいい」
と言ってました。
だから あまり曲の説明はしないですよね。

世代が違ってもそれぞれの曲にそれぞれの想いがあり それを熱く語れる仲間がいて
最近聞き始めた方は 違った目線でまた聴くことができる。
そして5日後に聴ける新曲にワクワクして
42年やってきたジュリーの凄さを改めて感じています。

コメントも遅くなった上に、長々失礼しました。

投稿: くれーぷ | 2009年5月31日 (日) 21時54分

くれーぷ様

はじめまして。
ようこそおいでくださいました~。

まず、船山さんについてコメントで触れて頂けて…ありがとうございます。
やっぱり、3部作はこの方ナシには成立しなかったと思っておりましたが、まだ記事で採り上げられていなかったので…。
いつになるか解りませんが、「憎みきれないろくでなし」の記事を書きたいと思っているのです。
その際、「とうふ屋ホーンセクション」に絡めて船山さんの事を書かせて頂く予定です。

「愛とは不幸をおそれないこと」を、若くしてタイムリーで聴く感覚…自分にはまったく想像がつかず、うらやましい限りですが、なるほど人それぞれに違った思い入れがあるのですね。
僕はこのアルバム、何となく人に勧めるのを控えた方が良いような気がしていたのですが、高く評価していらっしゃる先輩方が多い事が分かり、とても嬉しく思っています。

僕のような新規組は、ジュリーの歴史についての知識が足りませんから、時々思わぬ的ハズレな事を語ってしまうことがあるかと思います。

くれーぷ様のようなジュリー一筋の先輩方の来訪、叱咤激励無しには、このブログも成立しません。

今後ともよろしくお願い申しあげます~。

投稿: DYNAMITE | 2009年5月31日 (日) 23時31分

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