沢田研二 「気にしてない」
from「単純な永遠」、1990
1. a.b.c...i love you
2. 世界はUp & Fall
3. PLANET
4. プライド
5. 光線
6. New Song
7. この僕が消える時
8. 不安にさせよう
9. 気にしてない
10. ジェラシーが濡れてゆく
11. 月のギター
12. 単純な永遠
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ごめんなさい。
つい数日前と、真逆な事、書きます。
やっぱり、アルバムってのは1枚通して聴かないとダメですね。本日、改めて痛感しましたよ。
前回、「月のギター」についてエラそうな記事を書きまして、ふと「そういや、単純な永遠って、長いこと通して聴いてないなぁ」と思い立ち、何の気なしに今日、移動用のBGMとしてCD持ってったんですよ。
名盤!大名盤!!
驚愕しましたがな。
なんで今まで、こんなカッコいいアルバムを正当に評価できてなかったんだ?
自分が情けなくなりました。
「単純な永遠」・・・最近は、ドームと奇跡元年で演奏された曲のみ抜粋して聴く、という状況だったのです。
この辺は大人買いの弊害かもしれません。新しく聴くモノが多すぎて、それまであまり聴きこんでいなかった作品を再評価する機会が遠のいていたのですね。
「単純な永遠」「Realy Love Ya!」以外の吉田建さんプロデュース期作品は、すべてドーム以降に入手したものですから、そちらばかりを熱心に聴いておりました。
改めてアルバム通して聴いてみて、「単純な永遠」が、尋常でなく志の高い名盤である事を今さらながら認識しました。今回のお題は、前回記事内容訂正の意味もこめて。
今日を機に特別に好きになった楽曲群の中から、思いきり僕のツボなナンバー(って、何で今まで気づかなかっんだろ)「気にしてない」、伝授です!
これまたジョージ・ハリスン流の楽曲なのですが、この手の曲に関しては、本家ジョージよりもその後のフォロワー達の方が明らかにカッコよく作れているという(笑)。
無論、「気にしてない」も見事な進化形。
ジョージで言うと「アップル・スクラッフス」「マヤ・ラブ」といったあたりの楽曲が原型となります。
基本スリーコードのロックンロールを、硬質かつルーズなアレンジで演奏する、というもので、進化形を目指したフォロワー達にとっては、ちょっとマヌケな鍵盤とパーカッション装飾が重要なポイントのようです。
「気にしてない」では右サイドに通常のドラムス、そして左サイド、後からキメの部分にパーカッション装飾としてタムをドコドコと重ねています。
鍵盤はポヨ~ンとしたオルガン系で、これも多くの英米アーティストのビートルズ・フォロワー達が使う手管のひとつ。
が、「気にしてない」にはもうひとつ、大きな工夫が盛り込まれています。
Aメロ&サビに対して、Bメロがやたらと美しく、ポップなんです。
この部分はガクンと転調してます。以前「違いのわかる男」の記事で書きました通り、こういった転調は、元調へと舞い戻る着地部分をどれだけカッコよくキメるか、というのが重要で。
サビで
「♪I Don't Mind・・・気にしてない♪」
と歌う箇所は、シンコペーション(小節の終わりから次の小節へと向かっていくようなメロの載せ方)になっていて、ソコへ着地するわけなんですが。
1番で言うと、Bメロのポップな旋律、最後の部分は
「♪渡してくれた誰かの時計~♪」
構成で言うとこの「誰かの♪」までがBメロ。
ここで着地して、「時計~♪」の部分は何と、もうすでにサビメロに移行してしまっているのです。
従って1番のサビ、最初のひと回しは
「♪I Don’t Mind・・・気にしてない♪」
ではなく、
「♪時計・・・気にしてない♪」と歌います。
つまり
「時計♪」と「I Don't Mind♪」は同じメロ!
(いや、微妙に違うが)
コレは、カッコいい構成ですよ!(う~ん、伝わるかなぁ)
さらに僕のツボなのは、この硬質でルーズなサビ部および間奏部のセブンスコード進行に、ブルーノート音階でストリングスが絡んでくるアレンジ。
これは80年代以降に流行ってきたロック的なストリングス使用法で、佐野元春さんも「愛のシステム」という曲で大胆に導入したりしています。
もちろん僕の好きな洋楽曲にも、このアレンジを取り入れたナンバーが多くあります。
「気にしてない」は、詞もまた、イイんだよねぇ。
正直、森雪之丞さんって、ジュリーナンバーで聴くまでは変な先入観があったんです。いかにも職業作詞家、みたいな。
とんでもない、時代の寵児でいらしたのですね。
語感がスゴイし、センスの出し惜しみをしていません。また、森さんの構築する突き放した感じが、こういう曲調にとても良く合っています。
ジュリーも例によって詞の世界にどっぷりと入り込み、「怒ってない♪」を囁くように歌うあたりが絶品。
以前記事に書いた「FOXY FOX」同様、全体的に母音を叩き斬ってます。楽曲の洋楽オマージュ度が高い、ということですね。
この「気にしてない」もそうなのですが、アルバム「単純な永遠」にはコンセプトもあって、”ロックスターの自虐的露出”とか”退廃の美学”といったイメージが見えます。
これは70年代のデヴィッド・ボウイがおハコにしていたコンセプトでもあります。
こうしたグラム・ロック的な要素が、ジュリーに似合わないはずがありません。
建さんプロデュース期作品の中で、このアルバムを強く推す先輩方が多いのが、今日やっと解りました。
本当に、ジュリーのアルバムをすべて聴きこむ、というのは底無しの作業であり、楽しみなのですね。
それ故に。
この大名盤が普通に入手できない現況は、どう考えてもおかしいと思う・・・。
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コメント
こんばんは
「単純な永遠」、私も購入からあまり聞いていない、「光線」のみ気に入っています…多分真夜中に相応しくないのせいかな~あまり流れていません。
EMIさんから復刻の件は可能性もあるのかな、気がついたら岡林さん90年代のアルバムが復刻されたんようです。
投稿: 04 | 2009年5月16日 (土) 04時35分
瀬戸口さま
最後の一文に力いっぱい同意します!
(何か日本語がヘンですが)
何故って、私はこれ持ってないのです。
オンライン中古レコード屋さんでタッチの差で買い逃して以来、次の機会が巡ってこないのですぅ。しくしくしく・・・
だから伝授を楽しみにしております。
いつか買える日が来た時のために、しっかり予習しておきたいな、と。
投稿: 白兎 | 2009年5月16日 (土) 20時26分
みなさま、コメントありがとうございます~。
若干、風邪で弱っております。
まぁ、6月に向けて、今のうちに免疫つけといた方が良いですか。
☆
04様
お久しぶりです~。
EMI時代、吉田建さんプロデュースの5枚は、ファンの復刻要望も相当高いようです。
しかも、すべて名盤。
復刻へ向けて、今夏盛り上がってまいりたい、と。
「単純な永遠」、真夜中に聴くなら「月のギター」が良いかと。
でも、今回はアルバム全体の流れとして好きになったのです。
04様も、機会がありましたらゆっくり聴き直してみてくださいね。
☆
白兎様
お気持ち、お察しします~。
僕も、「パノラマ」「彼は眠れない」の2枚は相当奮発して中古で買いました。
買っておいて良かったとは思ってますが、やっぱりあれだけの作品、普通に売っててほしいです。
これから買う人達のために。
ドーム以降、明らかにリスナーは増えているはずですからねぇ。
でも、AMAZONさんの中古は、毎日ハッておいて損はないですよ。
「ビューティフル・ワールド」とか、前日まで「現在お取り扱いできません」という表示だったのが、ある日突然1000円の中古が出品されてましたから。
めぐり合えた僕はラッキーでした。
ご健闘、お祈りいたしております。
今後も頑張って伝授してまいります~。
投稿: 瀬戸口雅資 | 2009年5月17日 (日) 00時52分
【イカ天ブーム】の余波に乗り,ソリッドなバンドサウンドで唄うロックシンガーとしてのジュリー像、を打ち出した時期ですね。
その頃に建さんが述べていたこと…
「ミュージシャンとサラリーマンは別世界にいる。カラオケのネタだけ提供してるのかと感じて虚しくなる時もあるけれど、彼らの気持が解るようになったよ。それも大切なことだね。/若い連中と大人の世代がストーンズのコンサートとかを共に楽しむようになった。とても良い状況だね。/僕もジュリーも泉谷さんも40代だけど、落ち着いた立場から音楽を発信していきたい。絵空事ばかりを作りたくないからね」
〜この談話にみられる彼の意志,が込められ結実したアルバムが『単純な永遠』なのだといえましょう。真の意味での吉田建プロデュース作品,ですよね。
但し、この時期に氏の思惑のもとに製作された作品郡を,沢田さんが100%納得していたかどうかは(ファンの皆様も御感じでしょうが)そののちセルフプロデュースを始めたことでも推察できましょう。建さんと沢田さんの間柄ゆえ確執は無かったにせよ、ジュリーの内面に何らかのフラストレーションは有ったでしょうね。
ところで、再発の問題についてですが…。
製作元・発売元・販売元、が全て同じ企業ならば事は容易に運ぶでしょう。
ポリドール期の製作元つまり原盤権を保有するのは,渡辺音楽出版でしょうけれど、東芝時代の未復刻CDの原盤権を今どこが所有しているか,が鍵ではないでしょうか。
とはいえ、肝心要はジュリー個人の意思です。彼が「いまは再発売したくない」とおっしれば,それまでです。
たぶん、そうなんでしょうね…(?)。
投稿: 鉛筆 | 2009年5月20日 (水) 19時19分
鉛筆様
先日は、素早いご指摘を頂き、とても助かりました。
僕がどれだけ初心に立ち返れたか、は改訂記事のとおりです。
ありがとうございました。
自分、所有権については、調べようと思えば調べられるのですが…。
やはり、一番重要なのは市場なのだと思っています。
買い手でもメーカーでもなく、市場。おかしな話では、あるんですけどね。
時代とともに、それもこれから変わるのかもしれません。
建さんプロデュース期の作品の中では、ジュリーも「単純な永遠」が一番気に入っているのではないか、と思います。
各方面の英断に期待したいですねぇ。
熱心なジュリーファンが増えてきている中、僕はこのアルバムを、新しい若いファンの人に聴いてほしいのです…。
投稿: 瀬戸口雅資 | 2009年5月20日 (水) 22時56分