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2009年5月19日 (火)

沢田研二 「風にそよいで」

from『第六感』、1998

Dairokkan

1. ホームページLOVE
2. エンジェル
3. いとしいひとがいる
4. グランドクロス
5. 等圧線
6. 夏の陽炎
7. 永遠に(Guitar Ohchestra Version)
8. 麗しき裏切り
9. 風にそよいで
10. 君にだけの感情
11. ラジカル ヒストリー

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去る日曜にじっくり聴いた2枚のアルバム。
控え目にオススメした「NON POLICY」に続いては、”名盤”と断言してしまった「第六感」に御登場願いましょう。

さて。
実は自分、ハードロックというジャンルがずっと苦手でした。
別に、音自体や楽曲構成がダメなワケではないと思います。ビートルズの「ヘルター・スケルター」とか、キンクスの「パワーマン」とか、大好きですから。

どうもね、語感フェチみたいなんです。歌詞に「サンダー」とか「ファイヤー」とか出てくるのがダメだったんじゃないかと。

ところが、最近大丈夫なんだよねぇ。
って、進んで聴いてるワケじゃないんですが、職場でそのテの曲を聴いたりしてると
「あ、今のトコ、忘却っぽい!」
とかいう感じで、ジュリーナンバーを通じて、純粋に音を楽しめるようになってきてます。

こと2000年以降のジュリーのアルバム、白井良明さんのアレンジはかなりのハード路線で、少し前の僕なら敬遠するタイプの音作りで。
数年前に「耒タルベキ素敵」を数回聴いた段階で部屋の奥深くに紛失してしまったのも、「なんか、俺には合わんアレンジだな」と大変な誤解をしてしまっていたからなのです。
実際、YOKO君に向かって、「耒タルベキ素敵」はイマイチだった、などと発言しておりました。
と、今のうちに白状しておこう。YOKO君がひょんなトコで喋っちゃう前に。
その後、必死で掘り起こして聴き直しましたからね。
大名盤ですよ。その代償が、風邪。数年分の埃を吸い続けながら掃除してましたので。

いや、今日は「耒タルベキ素敵」の話ではありませんでした。
白井さんのハードなアレンジ、について。
「愛まで待てない」「サーモスタットな夏」あたりのアルバムだと、割と60~70年代イギリス寄りの変態路線なんですよ、白井さん。
それが、いつハードな変態路線(どっちにしても変態かい!てか、”ハード”の意味が違うぞ)へとシフトしたのでしょうか。

忽然とその路線が鎌首をもたげたのは、1998年リリースのこの曲。
アルバム「第六感」から、「風にそよいで」伝授!

僕は前述の通り、このタイプの音作りの楽曲を聴きこんでこなかったので、どのあたりから影響を受けたアレンジか、ってのは書けないんですけど、洋楽ハードロック系である事は間違いありません。
おそらくリズムパターン先行の作曲で、後からジュリーが詞を載せたものと思われます。

白井さんの工夫は、単にハードロックへのオマージュに留まらず、90年代にノシてきたいわゆる”パワーポップ”というムーブメントをも取り入れている事にも窺えます。
「風にそよいで」では、いきなりフラメンコ風のギターとパーカッションが顔を出したり。
それも、大っぴらに見せつけるのではなく、サラッと隠し味的にやる、というのがパワーポップの流儀。

エンディングでチェンバロ音が取り残されるのも、センスの根幹は同じです。

しかし、この工夫を名曲へと昇華させているのは、ジュリーのヴォーカルと詞の載せ方なのではないか、と。
ヴォーカルそれ自体の素晴らしさは、聴いて頂ければ納得のはず。
採り上げたいのは、ヴォーカルと詞フレーズの一体感なのです。
1番、「君の憂い♪」と「右に倣え♪」は連続する同じメロ部で韻を踏んでいます

この”連続する”というのがミソで、韻を踏んだフレーズを、立て続けに、吐き出すように歌うことで、ハードな楽曲が強調されています。
曲先(推測ですが)ならではの詞の良さもあって、1番で言えば「虚しいだけじゃない♪」の「じゃない♪」の部分。これは白井さんの作曲時点では、合いの手のような個人的クセ部だったかと思いますが、ジュリーは見事にそのメロディーを生かしきりました。
ジュリー自身もこの部分は詞とヴォーカルの融合に手ごたえがあったと見えて、2番では「とぼけるだけじゃない♪」、3番では「変わっただけじゃない♪」といった様に、「じゃない♪」連発で攻めます。

加えて、カッコイイのは伊豆田洋之さんによるコーラスです。重ねるタイミングとか、ホント天才ですこの人。
歌メロのハモリは、ジュリーですよね、これ。
ジュリーは自分のヴォーカルにハモリを重ねるの、ポリドール時代からよくやってます。得意なんですね。タイガース時代に鍛えられたのか、いや、天賦の才なのでしょうか・・・。

「風にそよいで」は、バラエティーに富んだアルバム「第六感」の中でも異色のタイプですが、2000年以降、白井さんのアレンジは、この手法がメインになっていくのです。

アルバム「第六感」、他の収録曲について。
一番の野心作は、「永遠に」。これは何と、岩谷時子さん作詞・宮川泰さん作曲。「君をのせて」を書いたコンビの作品です。
しかも演奏はエレキギター・オーケストラとも言うべき、白井さんの一人舞台。他の楽器は一切入っていません。この斬新な楽曲が、アルバム唯一のシングル!
ちょっと冒険し過ぎじゃ・・・。

ラスト収録の「ラジカル・ヒストリー」、これがシングル向き、なんだけどなぁ
直前に収録の「君にだけの感情」(おそらくアルバムタイトルチューンの役割を果たしているバラード)のエンディングノイズとの繋がりが、ドキッとさせます。この辺りが、アルバム単位での醍醐味ですよね。

「いとしいひとがいる」「グランドクロス」は、覚和歌子さんの詞がシンプル故に素晴らしい。「グランドクロス」はLIVE率が高いようで、今ツアー、ちょっと期待してます。

今回、アルバム通してじっくり聴き、名盤だと思いました。好きな曲をピックアップして聴くのも楽しいけど、やっぱり可能な限りアルバムごとに聴かなくちゃ、ね。

あとですね。
歌詞カードの写真が、とても良いです。
どれか1枚、次作「いい風よ吹け」の歌詞カードに回してあげたいくらい(爆)。

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瀬戸口雅資のジュリー一撃伝授!」カテゴリの記事

コメント

こんばんは

長い~~、関心な部分は最後だけ(ごめんよ許してくれ、笑)、「第六感」はとてもジャケ買いできませんのような感じ、「ルーシュ」はさらに...、「ルーシュ」は良いですけど^^;;

投稿: 04 | 2009年5月20日 (水) 01時41分

04様

え、「第六感」のジャケ、ダメですか?
やっぱり女性と男性では、違うのかなぁ。

僕は、歌詞カードの写真も含めて、ああいうルックスのオヤジになりたい、と思いますよ。
「ルーシュ」みたいには、なりたくないですが…

でも、「第六感」は中身も名盤だと思います。
これから聴く方にも、しばらく聴いていない、という方にも、この機会にじっくり聴いてほしいアルバムです~。

投稿: 瀬戸口雅資 | 2009年5月20日 (水) 22時50分

大好きなアルバムです!
 ただしジャケットのJulieはOKですが、ファミリー写真のようなのがNGです。
   (女性のヘアスタイルがね、ファッション性がちょっと違うぞ・・・、と。)
    なんともうしますか、任侠は「ま、許す」がヤンキーはイヤ・・みたいな。)

呼んでいただいたときには出てこれず、今頃出てきました(笑)

シングルについてですが
 「永遠に」の別バージョンなのですよ。
   アコギ1本です^^
   歌詞カードはスコア入り!
          大冒険ですね。 
 

投稿: かの | 2009年5月21日 (木) 14時12分

かの様

ありがとうございます!
またひとつ、教えていただきました。

「永遠に」のシングル。
アコギ1本で、スコア付き…。
それはスゴイ。

言われてみますと、アルバムの方には「ギター・オーケストラ・ヴァージョン」と書いてありました。

やはりシングル集が欲しいです。
「あの日は雨」のシングルヴァージョンも知らないですし、「我が窮状」もヴァージョン違いらしいですね。
まだまだ、知らないテイクが多そうです。

「第六感」は本当に名盤だと思います。
今はLIVEのDVDを検索中で。
果たして「永遠に」は、どんな演奏で歌われているのか…楽しみです。

投稿: 瀬戸口雅資 | 2009年5月22日 (金) 00時36分

こんなところにすみません。はじめまして。
以前からお邪魔させていただいていました。
DYさんのブログのおかげで、歌の楽しみが何十倍にも広がっています。ありがとうございます。

「第六感」は全体として重く激しい感じが苦手だったのですが、ふとこの記事が目にとまり、フラメンコ? チェンバロの音が残る? 自分でハモリ(ジュリーが自分でハモるの大好きです)? どんな曲だっけーと聴いてみてびっくり。
とってもいい曲ですね!
色々な音(声)が飛び出してくるのも面白いし、歌詞もジュリーの心情に触れるよう。

苦手だと思っていたものの良さに気づくことができて嬉しいです。
「第六感」の他の曲も聴いてみます。
本当にありがとうございました。
これからも伝授よろしくお願いします。

投稿: A.F | 2012年9月23日 (日) 20時59分

A.F様

はじめまして!
ようこそいらしてくださいました。過分なお言葉畏れ入ります…励みになります!

これは自分としても懐かしい記事です。
僕もA.F様と同じく、購入直後は何故だかアルバム『第六感』に音の重さを感じ、しばらくリピートせずにいました。
しかしある日何気なく聴いていて何か言葉にし辛い琴線に触れるものがあり、改めて気合を入れて聴いて…突然虜になったのです。
そこで早速ブログに1曲…と思い執筆したのがこの「風にそよいで」の記事。懐かしいです~。
今では『第六感』はジュリー・アルバムの中でも特に好きな1枚となっています。
今ツアーのセットリストとして歌われている「ラジカル・ヒストリー」も、ツアーが終わったらお題に採り上げ記事を書く予定でいます。

これからもどうぞよろしくお願い申し上げます!

投稿: DYNAMITE | 2012年9月24日 (月) 21時48分

DY様

「風にそよいで」の記事を知りませんでしたので、この機会に読ませていただきました。その前にアルバム発売当初、この歌のタイトルを見た時すぐ頭を過ぎったのは、ジュリーがソロデビューして間もない頃のライブレコードに収められている自作品「風にそよぐ葦」です。曲調はまったく違いますが、何か思い当たることがあったのでしょうか?そんなことを思いながら、アルバム『第六感』を聴いていました。

「風にそよいで」はイントロが印象的で、リズムが好きです。聞き手を煽る曲ですが、実際にどう乗ったら良いのか(やはり頭を振り回すのでしょうか)迷います。後半に出てくる“チュルッチュ~ル”は嬉しくなりますね。「おまえにチェックイン」を思い出しちゃいますからね。記事にありましたフラメンコ音階と言えば名曲「勝手にしやがれ」ですよね。そんなことばかり思い出していると、いつの間にかジュリーが、ファンとの絆を作ってくれているような気がしてなりません。

ついでにアルバム『第六感』について。個人的には「吉田光作品ファン」のため、「ホームページLOVE」「等高線」「ラジカルヒストリー」はいづれも大好きです。今年は大雨が多いので、「低気圧 居座わってる」と鼻歌は出ますし、ケータイで色んなサイトに簡単にアクセスできる時代になった今の世の中の方が、「ホームページLOVE」を身近に感じられるのではないかなーとしみじみ思っています。

最後に、今コンサートのハイライトにもなっています「ラジカルヒストリー」のご伝授を首を長くしてお待ちしていますので、ぜひよろしくお願いいたします。

投稿: BAT OUT OF HELL LOVE | 2012年9月26日 (水) 23時34分

BAT OUT OF HELL LOVE様

ありがとうございます!

いやぁ恐縮です。
随分前に書いた記事で、まだまだ無知丸出しで…。読んでお分かりのように「永遠に」のシングルヴァージョンの存在すら知らずに書いていますからね~。

ジュリー作詞ということを考えると、確かに「風にそよぐ葦」は連想しますね。ジュリーが「風」を歌う詞が僕は大好きで、爽快な雰囲気にいつも魅せられていただけに、今回の新譜で「そよ風に疼きます」と歌ったジュリーに本物のやるせなさ、憤りを逆に強く感じることができました。

吉田光さんは素晴らしい曲をたくさんジュリーに提供していますね。
名盤『第六感』から「ラジカルヒストリー」、ツアー後に頑張って書かせて頂きます!

投稿: DYNAMITE | 2012年9月27日 (木) 09時02分

DY様

「等高線」→「等圧線」

情けないミスでスミマセン。

そうですね。言われてみると風の出てくる歌が多いですね。「コバルトの季節の中で」が益々、楽しみになってしまいました。明日はいよいよ、地元清水での初めてのライブです。また報告します。

投稿: BAT OUT OF HELL LOVE | 2012年9月27日 (木) 11時02分

BAT OUT OF HELL LOVE様

おぉ、今日の清水に参加されるのですね!

きっと九州シリーズの勢いそのままに、素晴らしいステージになるでしょう。
ご感想楽しみにしています!

投稿: DYNAMITE | 2012年9月28日 (金) 09時13分

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