沢田研二 「あの女(ひと)」
from『CO-CoLO1~夜のみだらな鳥達』、1986
1. "B"サイドガール
2. 夜のみだらな鳥達
3. 無宿(むしゅく)
4. ドシャ降り、抜けて・・・
5. あの女(ひと)
6. 幻想(イリュージョン)
7. 流されて・・・
8. 時の街角
9. 闇舞踏(やみぶとう)
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CO-CoLO時代のジュリーのアルバムについては、ずっと聴けないでいた間、まず先入観としてマイナスのイメージがありました。
リリース時の僕はまだ10代後半で、ジュリーをアイドル歌手として見ていた時期ですが、「TVで全然見かけなくなってきたなぁ」と漠然と思ったりはしていまして。年をとって飽きられ、売れなくなってきたんだろう、などと考えていました。
事務所から離れて独立したとか、そういう事情は一切知らなかったのです。
ジュリー祭り以降、その頃のジュリーの様々な事情についても何となく把握はしてきましたが、それでもCO-CoLO時代の作品に対しての、マイナスの先入観はなかなか消えてくれませんでした。
だって、評判が悪すぎるんですもん。
売れなかった、とか、地味、とか、果ては暗黒期、とか。
そんな評判の中に「私小説的」というのがあって、それがちょっとひっかかってはいました。
「私小説的」ってのは別に悪い言葉ではないと思うのだけど、何故かマイナス要因として挙げられている・・・ははぁ、これは、音源作品とは別の意味での評価なんだろうな・・・と思いまして。
それに、エキゾチックスと離れてしまった事により、ジュリーのロック的要素が好きだったファンが少し引いてしまった可能性もあるでしょうし。
当時のジュリーをタイムリーで知らない分、ひょっとしたら新規ファンの自分の方が冷静な聴き方ができるのかもしれない・・・そう思えてきた最近になって、ようやく音源を聴く機会に恵まれたのです。
結論から先に申しますと、確かに地味ではありますが、「CO-CoLO1~夜のみだらな鳥達」「告白~CONFFESION」の2枚は、相当気に入りました。「TRUE BLUE」は、違和感があって、現時点ではよく解らないんですけど。
今日はそんな中から、アルバム「CO-CoLO1~夜のみだらな鳥達」から、ズバリ「あの女(ひと)」を採り上げます(うわ~大丈夫か~)、伝授!
まず、勘違いな話から。
「私小説的」なんていう評価にこだわっていたものですから、このアルバム、全部ジュリーの作詞作品だと思って聴いてしまいました。
次作「告白~CONFFESION」は事実そうなのですが、「CO-CoLO1~」でのジュリー作詞作品は3曲のみで、「あの女(ひと)」は浅川マキさんの詞です。
思い込みとは恐ろしいもので、「あの女(ひと)」をジュリーの詞だと勘違するとは・・・ハナから最も濃い聴き方をしてしまいました。
「うへ~!いくらなんでも具体的過ぎ~」
と、こうなるワケです。
素晴らしく美しい詞ですが、これはちょっと聴くのがキツい人もいるんじゃないか・・・と。
♪ あの女(ひと)の部屋を出ると 非常階段を降りる
地下駐車場に行く頃には
僕はもう あの女(ひと)が解らない ♪
こんな情景描写→感情吐露を、思い入れたっぷりに、あの声で歌い上げるジュリー。僕は男ですから、良い意味での「うわ~!」だったんですけどね。
この曲でのジュリーのヴォーカル入れ込み度は相当なレベルで、歌い方は「船はインドへ」「いい風よ吹け」と同じような、慟哭のスタイルです。
そりゃ、本人の詞とも思うわな。
CO-CoLOというバンドの演奏も、今回初めてじっくりと聴きました。
渋いです。確かに、エキゾチックス時代と比較すると真逆とも言えるアプローチですから、多くのファンの戸惑いがあったのは仕方ない事かもしれません。
そういった方々にも改めて聴き直して頂きたいのですが、彼等の一番の特徴は、同じ進行のヴァース演奏であっても、ジュリーのヴォーカルの有無によって各楽器の表現が全く違う、という点です。
通常、ヴォーカルの無い間奏部って、リードギター、あるいはキーボードなどの「ソロ」という概念があり、ソリスト以外の演奏者は歌メロ部と同じ演奏をする、という手法なのです。
CO-CoLOの演奏はその点がちょっと変わっていて、リズムの取り方であったり、グルーヴであったり、間奏部では、とにかく全ての楽器が表現を変えてきます。
これは「あの女(ひと)」に限らず、その他多くのCO-CoLO楽曲に見られます。
逆に言うと、「派手な間奏ソロの印象が薄い」という事にも繋がりますので、気をつけて聴かないと、曲によっては単調な感じを受けてしまうかもしれませんね。その点注意して聴いてみてはいかがでしょうか。
「あの女(ひと)」の場合、1番と2番の間、主役のソロ楽器はありません。
しかし、妙なグルーヴを感じるはずです。ギター、ピアノ、シンセそれぞれ少し変化をつけた演奏をしていますし、何よりベースは、それまでの1番での演奏とは全然違う弾き方で、かなり大胆な小節の頭抜きがあったりします。そして、その雰囲気を加味したまま、1番とは違ったラインで2番へなだれこんでいくのです。
CO-CoLOの演奏は、AORと評されることが多いようです。
もちろんその通りではありますが、まぁ一筋縄ではありません。僕としては、エキゾチックスがイギリス的なら、こちらはアメリカ的、といった切り口で聴きたいところです。
「あの女(ひと)」では、ニール・ヤングの「SOMEDAY」という曲を彷彿させるピアノアレンジが効果的で、「あぁ、イイ時代のアメリカだなぁ」と感じました。
アルバム「CO-CoLO1~夜のみだらな鳥達」の他の収録曲についても少しだけ。
1曲目「Bサイドガール」と2曲目「夜のみだらな鳥達」は、とても美しい繋がりを持つメドレーになっていて新鮮でした。ただ、そのためシングルカットが出来ないという・・・。2曲とも、シングルになってもおかしくない素敵な曲です。
「カッコイイ!」系の曲も入っていますよ。3曲目「無宿」と、7曲目「流されて」。「無宿」はジュリーの詞ですが、言葉の載せ方がカッコいいです。コーダ部では、尺の長いフレーズをまくしたて、字余りっぽく小節の頭で「む・しゅ・く!」と叩きつけます。
あ、「流されて」はねぇ、ヴォーカルもハジけてるし、カッコいい演奏だけど・・・。メンバーのみなさま、あの合いの手はキメですんで、恥ずかしがってちゃ、ダメ~!この辺が、「ロックと、ちゃう」と言われれば、確かにそうなんですけど。
アルバムラスト収録「闇舞踏」も、トーキングヘッズみたいなカッコ良さですが、ジュリーの詞は、ちょっと開き直り系ですね(爆)。
色々と突っ込む隙がある・・・って、それも好盤たる要素のひとつではないでしょうか。恋する男の、メロメロなアルバムです(「告白~」になると、メロメロとはちょっと違う・・・)。
それにしても。
この時期の大名曲「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ」の録音ヴァージョンは、どうやって手に入れたら良いのでしょうか。
誰か教えて~。
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コメント
瀬戸口さん
こんばんは
うわ、寝る前に好きな曲が来た!!!
このアルバムに一番好きなのは始めの「Bサイドガール」と「夜のみだらな鳥達」、後は「あの女」です。深夜によく聞いています(*^-^)
このアルバム、手に入れる前にずっとタイトルの意味が気になる、今でもぜんぜん分かりません…ググで見たらある小説の名前みたいです。
EMI時代のシングル、たぶんあの黒ベストしかありませんと思います…
投稿: 04 | 2009年4月11日 (土) 04時59分
バンドCOーCoLo結成には、当時の投稿者は心の中で諸手を挙げて悦びました。
中学生の頃、夢中で観ていたTVドラマの劇伴担当は
*井上尭之バンド
*トランザム
この二つのロックグループです。
両方、GSの勇者が核になり結成されたバンドですよね。
とくに『俺たちの旅』オリジナル・サウンド・トラックは,音楽作品として秀逸です。
この音色そのままにジュリーが乗った楽隊がCOーCoLOだ、と言えましょう…。
1stAL発表後に沢田氏が語ったなかで印象的だったものが
「メンバーは仙人みたいなミュージシャンで,いわゆるアーティストだから、納得できるまで何度でも演奏して録り直したがるんです。でも、僕は,必ずしもレコードでの歌が最高の出来じゃなくていい。ステージで唄った時に良い演奏になればいいと思う」
という言葉。
成程なぁ、彼の持つ幾つかの考え方の要素,を感じますよね。
ですから,このアルバムを聴くと、完成度は百%ではないなぁと思いました。このバンドは、ライヴで力量を発揮して成果を生むような演奏者達の資質,で成り立っていました。
投稿者は20代半ばの頃でしたから、バンドCOーCoLO時代の各演目には,ほぼ全て足を運びました。[ダウン・トゥ・ジ・アース]な音世界に我が魂は溶けていったのです。。
近年、渋谷のライヴハウスで石間秀機さんの演奏を聴き終え会計を待っていたら,話し掛けてくださったので
ジュリーと御いっ諸の頃以来20年ぶりに拝聴しました。と言うと
「あぁ…,懐かしいねぇ。。また来てよ」と名刺を手渡してくれました。御名前の上には【楽士】なる印字がなされています。
COーCoLOはライヴ体験が醍醐味でしたので…
録音盤を躍起に探すことには然程,意義はないように思いますょ。。
投稿: 鉛筆 | 2009年4月11日 (土) 19時55分
先日、CDを借りる為に図書館へ行きまして…。
ついでに、沢田研二の視聴覚資料を検索してみたら…
「貸出し中」がほとんど(還暦だぞ!効果,による潜在ファン復活状態)で、「貸出し可能」のCDが1つ……
…このアルバムだけでしたぁ(哀しげ)。
やはり,内容が暗いからかなぁ。。
アルバムとしての出来具合いは合格に達してはいなくとも、
瀬戸口様が選んだこの曲だけは,良い仕上がりだと思います。
映画的な詞に完璧な演奏、そして歌唱も他の曲に比べて最良なテイクですしね。
当時のコンサートで歌われていた記憶が薄いのは、そうゆうわけだからかな。
この曲この録音は貴重ですよ。
御記事を拝読し、そう思いました。
投稿: 鉛筆 | 2009年4月11日 (土) 21時55分
みなさま~
コメントどうもありがとうございます!
☆
04様
このアルバム、聴いたことがある…のですか?
04様って、新規さんだと思ってました(汗)。ファン歴では大先輩でいらしたのですね。
ジュリーのアルバムは多彩ですから、どの順番で聴いていっても楽しいと思いますが、04様のリスニングの道のりは(想像ですが)かなり個性的ですね~。
で、黒ベスト!
恥ずかしながら、存在を知りませんでした。
調べましたが、中古ですさまじい値段がついてますね(泣)。
☆
鉛筆様
ととと…図書館!
それは盲点でした!
思えば、ジョージ・ハリスンが亡くなった時に、廃盤を探しまくっていて、結局見つからず再発まで待ったのですが、のちに旧盤が図書館にすべて揃っているのを発見し、愕然とした事がありました。
何で思いつかなかったんだろ…?
COCo-LOについては全く詳しくなかったので、今回のコメント、大変勉強になりました。
ありがとうございました~。
投稿: 瀬戸口雅資 | 2009年4月12日 (日) 01時21分
こんばんは
瀬戸口さん
私は5ヶ月くらいの新参ファンです、笑
CDを買うのは学生時代からの趣味。ある日常連の人が「ご興味の中古CDがあるですよ、見てみませんか」と言われて行きました。結局、興味あるものはないですが、EMIの「ジュリーマニア」が置いてた、ジャケット画像凄いね~と思って、安いから家へ持ち帰りました。(゚▽゚*)、後一時に聞きこんで...
>ジュリーのアルバムは多彩ですから
そうですね、どの時期の作品も素晴らしかった
どうしても聞きたい聞きたいと思って、興味あるものから値段が納得できる範囲で一枚一枚揃います、まだまだ未コンプ…
鉛筆様
『俺たちの旅』サントラは先週聞きました。
ただ一度のみで、いいアルバムと思います。
この頃ずっとジュリー三昧、他ものほぼ置いた未聴のまま~友人さん一時に買いすぎて一部CDも私の処に置くのです(゚ー゚;、ちょっと整理してライナーを眺めて、あら、ココロバンドの人じゃないかって聴いてみました。
投稿: 04 | 2009年4月12日 (日) 03時38分
04様、いらっしゃいませ~。
最初が、ジュリーマニアCDだったのですね。
それはある意味、最高の出だしかもしれません。
僕はDVDのみでしか知らないのですが、確かにCDであの作品をいきなり聴いたら衝撃かもしれないです。
それにしても、「COCoLO-1~夜のみだらな鳥達」が、納得できる値段で手に入りましたか!
それはラッキーです。
「彼は眠れない」や「単純な永遠」などの時期はこの先の再発はありそうな気がしていますが、COCo-LO時代の作品は、このまま永久に廃盤の可能性大ですから。
まだまだたくさんのアルバムがありますからね。
「JULIEⅡ」がお好きなら、おそらく「JULIEⅥ~ある青春」も気に入ると思いますよ、お勧めです。
投稿: 瀬戸口雅資 | 2009年4月14日 (火) 01時00分
こんばんは 瀬戸口さん
ただ今「JULIEⅡ」を聞いたりお茶を飲んだりコメントを書いたり、あとはお休みに。^^
「ある青春」は好きですよ、このアルバムいつも「ある青春」から聞きます…ということで「ある青春」「ララバイ・フォー・ユー」しか聞きませんです。(゚ー゚;
「単純な永遠」、たぶん持っているアルバムの中に一番聞きませんの一つです、「光線」は凄く気に入りますけどその他はどうしても向きません~
ポリドールから後半部分はまだ持ってませんですが、今は21世紀のジュリーに向きます、このごろの歌を聞くと時々「幸せ」を感じますね~
投稿: 04 | 2009年4月14日 (火) 05時52分
04様
21世紀作品に行ってますか!
僕も昨年末までは、ほとんど80年代までの曲しか知りませんでしたから、その後聴いた21世紀アルバムは衝撃でしたよ。
一般的評価は低いのですが、「新しい想い出2001」と「生きてたらシアワセ」がかなり好きです。
全部、良いですけどね~。
投稿: 瀬戸口雅資 | 2009年4月15日 (水) 21時33分