PYG 「花、太陽、雨」
註:この曲の記事は、2020年12月3日に再度書き直しています。
楽曲考察としては、できましたらそちらの方を読んで頂けると有難いです(汗)。
親知らずを抜いてきました。
ご飯もキチンと食べてます。ツアーへ向け、楽曲知識のみならず身体の方も準備万端、万全にしておかねばなりません。現時点で告知のあるツアー前半部だけで、5ケ所もの参戦が確定しておりますので。
自らの意思で金銭面、健康面の自己管理をする、なんて生まれて初めてじゃなかろうか。
それはそれ、まぁ肝要なのはやはり楽曲の予習で。
3ケ月の猛勉強と親切な方々のおかげで、過去のアルバムについてはかなり網羅できました。
CoCo-lo時代がゴソッと抜けてますけどね(CD「架空のオペラ」がAMAZON最安値20云万円って、一体どうなっとるねん!)。
あとは、タイガース&PYGの勉強ですわ。
これについてはねぇ。楽曲の知識だけでは、イカンのよねぇ。
ライブで演るのは有名な曲が多いし、ベスト盤買ってみたら、ジュリー堕ち以前から仕事関係やら何やらで既に知ってた曲が大半で。
でも、リリース当時のジュリー(或いは他メンバー)をとりまく環境・・・これを知らないままだと、どこまで楽曲を理解できてるかどうか。
特にPYGは、作詞のメインが岸部兄さん(まだ、気軽に「サリー」と表記できない。この辺りも今後の課題だなぁ)ですから、尚更なんですよ。
以前「あのままだよ」の記事で少し触れましたが、岸部兄さんの詞って、どうもその時の個人的感情がハッキリ反映するみたいなのです。
PYGについては、結構試練のステージがあったとか色々噂は聞いていますが、タイムリーの知識でないと、どうも解りにくくて・・・。
今日の記事は、そんなPYGから。ズバリ、代表曲「花、太陽、雨」です。
夏ツアーのチケットで、今回大変なご好意を賜る事になったfuji様からのリクエスト。
実は、「御礼に何か1曲、お好きな曲の記事を書きます」と申し出ましたのが先週土曜の夜で、fuji様、最初は「遠い旅」をリクエストしようとなさったそうです。
で、日曜の朝に当ブログに来てみたら、何も言わないうちから「遠い旅」が既にアップされていて驚かれたとか。
そのお話を伺った時は、自分の神がかった行為に僕自身も驚きましたけどね。
じゃあ他のを1曲、ということで頂いたのが「花、太陽、雨」。
ついに来たか・・・。
試練が。
タイガースやPYGの有名な曲って、ずいぶん前に音楽業界でグループサウンズの復刻が当たってた頃に覚えたものが多くて。
その頃はまだジュリー堕ち以前ですから、個々の楽曲として音源を持っていて、どれがタイガースでどれがテンプターズでどれがPYGで・・・とか区別していなかったのですね。
今でも若干その影響が・・・。ライブDVD観てても、これはタイガースだっけPYGだっけ、みたいな。
こんな状況でまともな記事書けるんでしょうか。
しかし、やらねばならんのです。
大恩人の先輩からのリクエストなのですから。もう僕は、fuji様のためなら人の誹り受けて牢屋で死んでもかまいはしない・・・って、だからそれはPYGじゃなくてタイガースやって!
「花、太陽、雨」、サウンド面については、一応色々と、洋楽フェチならではの考察がありまして。
タイガースやジュリー70年代ソロとかもそうなのですが、殊にPYGは、英米で発信されたセンセーショナルな音作りを、瞬時にして取り入れています。タイムラグは1年未満。
ロックバンドとして最先端であろう、という気概が窺えるのです。
60年代末から70年代初頭にかけての音作りは、アフターサイケ時代と言われておりまして、いよいよロックが多様化し、それぞれ枝ごとに進化していくのですね。
「情熱の60年代」だとしたら、70年代は狂乱の時代。何でもアリです。例えば「花、太陽、雨」のイントロ。ある意味、聴く者を不快にさせる(不安に落とし込む)狙いで作られていますが、こういうアプローチがアリになったのがちょうどこの時期で。
突如としてドラムスのフィルインへと続くこのイントロ構成は、プリティ・シングスというバンドの「パラシュート」というアルバム冒頭に、オマージュの源を見ることができます。「パラシュート」は70年リリース、「指輪物語」にイメージ喚起されたという、いわゆる「ロック・オペラ」の名盤。「花、太陽、雨」とのタイムラグはほとんどありませんね。
プリティ・シングスはそれほど有名なバンドではありませんが、いかにも井上尭之さんが好みそうな求道者タイプの音作りをする連中で、デヴィッド・ボウイがこのバンドの大ファンであったことは良く知られています。
もうひとつ重要なのは、ジム・モリソン、シド・バレットといった才能がロックシーンに絡んでくる事により、「ネガティヴなカッコよさ」というスタイルが確立されたのが、ちょうど70年代初頭のことなのです。
彼等の登場がロックミュージシャンに与えた影響は、はかり知れないものでした。ジョン・レノンの過激さ、ミック・ジャガーの猥雑さ、というのがしごく健全に思われてしまったほどです。
彼等には「否定」というキーワードがあります。
社会のみならず、自分の存在をも否定しようとする。ライブに足を運んだ観客をも否定する。それにリスナーがシビレる、という非日常の魅力。
ただ、それ故に彼等は孤独であり、常に戦闘状態でした。80年代になり、「ネガティブ+ヘタレの美学」というスタイル(いや、それはそれで好きですよ僕は)がザ・スミスやアズティック・カメラなどのバンドにより進化確立されるまでは、リスナーからの同情・共感を否定する事でしか、70年代の天才達の生きる道は無かったのです。
長く「花、太陽、雨」と関係ない事を語っているようですが、これは岸部兄さんの詞について、僕の可能な範囲で考えたことなのです。
この詞って、自分に関わる事象を否定する事から入っていきますよね。
よろこびの時笑えない人
色のない花
憎しみだけのさかさまの愛
水のない雨
まずは、すべてを否定しようと試みます。
ところが、感情的には否定できても、対象の存在そのものを消し去る事はできない、という壁が立ちはだかるのです。
花であれ太陽であれ雨であれ、ネガティブな言葉で罵り否定する事はできますが、その意思だけで存在自体が消滅する事はない、と。
楽曲が進行するに連れて詞の内容が、「あなたの愛」も、そんな存在であるのだろうか、花や太陽や雨のように、消えない存在であるのか、あってほしい、という肯定の思考へと変化していくように思えるのですが、どうでしょうか。
最後の最後、「あなたの愛」と「花、太陽、雨」の発音が韻を踏んでる、とか、その辺はもう、言うだけ野暮な事ですね。
一応、僕が考察できるところを書きましたが、本当にこの曲に関してどの程度自分が解釈できているのか、自信がありません。
今回、先輩の皆様には、この「花、太陽、雨」リリース当時のジュリーや、岸部兄さん・尭之さん達がどんな状況にあり、どういう経験をしていたのか、教えて頂きたいと思っているのです。
僕の浅はかな理屈をくつがえすような新しい発見があるかも。
この曲は多くのファンの皆様にとって特別な1曲である、という認識でおりますので、是非ご意見をお聞かせ下さいませ。
乞、逆伝授!
| 固定リンク
「みなさまからのリクエスト伝授!」カテゴリの記事
- 沢田研二 「君をのせて」(『SONGS』Version.)(2018.07.04)
- 沢田研二 「ジョセフィーヌのために」(2018.05.12)
- 沢田研二 「一人ベッドで」(2018.04.29)
- 沢田研二 「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ ~千夜一夜物語~」(2017.10.27)
- PYG 「自由に歩いて愛して」(2017.07.12)
コメント
架空のオペラが20万円ですって~?!
ジュリーで暴利をむさぼるなんて許せない!ここは私が!
…と思ったら。わたくし架空のオペラはレコードしか持ってませんでした^^
そうそう、これジュリーのCD第一弾だから
発売数そのものが少なくてレアなんだわ
たぶんレコードの方が多く出回っているはずです
ジュリーはその時々のファン層に合わせて歌ってきたと思いますが
「花・太陽・雨」はタイガースからそのまま移行した人にはちょっと背伸びした感じだったかも
GSの匂いを意図的に消そうとしたのではないでしょうか
B面も高尚な(笑)曲だったし
聞く方も、ジュリーはこれからはこういうロックな世界で生きていくのだ
と身構えていたような気がします
なのに「君をのせて」って。何~?と肩すかしをくらったような(>_<)
投稿: メイ | 2009年3月15日 (日) 00時48分
瀬戸口さ~ん
先週の遠い旅は・・・・驚きましたね!!
わぁ~~
律儀なかたです、瀬戸口さんって・・・我らの青春曲の花・太陽・雨もやって下さったのね。~~♪
音楽的な事が全然わからないのですが、この曲聞くとタイムスリップ出来るのね。
ありがとう・・・・。
いつの時代のジュリーも好きですが、
PYG時代の、磨けば輝るダイヤモンドが埋もれている感じ・・・これが良いですね。
>B面も高尚な(笑)曲
メイさ~ん、やすらぎを求めて…聞き出しましたよ♪(笑)
TGは、自分たちで曲作れないなんて言われたけれど、詩人サリーと作曲家ジュリー先生が隠れていたわね。~。
投稿: fuji | 2009年3月15日 (日) 14時24分
メイ様、fuji様、いらっしゃいませ~。
コメントどうもありがとうございます!
早速、目からウロコ・・・
って、「花、太陽~」じゃなく「架空のオペラ」のお話。
ジュリーのCDリリース第1弾!
そうだったんですね。
レコードからCDへの移行期・・・そう言われると、
「あぁ、あの頃かぁ」
と、ハッキリ時代認識できます。僕は、10代ラストイヤーですわ。
その頃は洋楽を聴いていたのですが
「CDなんか絶対普及しない!」と言って、
しばらくはレコードばかり買っていましたけど。
今では、CDをCDプレイヤーに載せる事すらしない・・・。
時代には逆らえないものです。
・・・そうそう、「花、太陽、雨」でした、この記事は。
お二方とも、やはり思い出のある楽曲なのですねぇ。
タイガースからPYGへ。
確かに激変です。とまどいも、あったでしょうねぇ。
ジュリーへの愛は変わらないにしても、
「自分達だけのジュリーではなくなってしまう」
みたいな危惧とか、ありませんでしたか?
で、シングルのB面「やすらぎを求めて」!
これ、今回初めて音源聴いた曲なんです。
シビれました~。
ベースにファズがかかってる
とか
「だから~♪」の部分のミックス処理
とか
テンポチェンジ部のコーラスアイデアの背景
とか
語りたい!
いつか、キチンとした記事で・・・。
よろしくお願いいたします~。
投稿: 瀬戸口雅資 | 2009年3月15日 (日) 16時09分
カミュの小説『異邦人』に刺激され作られた歌であること。(沢田・井上、各々が明かしている)
スパイダース解散時期に尭之氏は、哲学書ふくめ多様な分野の読書に耽った。このカミュの名を氏が知ったのも、その頃。
彼の思いのたけを込めた1曲に、レコーディングでは異例の百時間が費やされた。
(御本人が1979年に語っている)
だが、沢田研二は「厭世的で暗いでしょ。シングル盤じゃ売れへんがな」(1995年に述懐している)
PYG結成の頃、尭之・岸部,両氏は、安井かずみ含め周囲の文化的有識者達から吸収したもの,を音楽表現に映すべく消化しようと励んでいたであろう、と察せられますよねぇ。
かの小説は【不条理】がテーマ性であることは知られていますが、それが社会なのか人間いち個人なのか両方なのか。
…『花・太陽・雨』の歌詞が放つ[否定・孤独・渇望]は、若者特有の「自己確立できない自分,更に取り巻く世間をも、シラケた気分で捉えながらも,歓喜に満ちる自己肯定を求める心情」なのでしょう。。
投稿: 鉛筆 | 2009年3月16日 (月) 19時49分
鉛筆様、逆伝授ありがとうございます~。
カミュの「異邦人」。
そうでしたか・・・。しかも作曲の尭之さんの方。それは・・・深い。
またイチから考え直さねば。
そして。
レコーディング100時間って・・・。
僕、一応バンドの録音とかやってる者ですから、それがどのくらい異常なレコーディング状況なのか、よく解ります。
言われてみますと、シングルヴァージョンとアルバムヴァージョン、ベーシックトラックが同じであるにも関わらず、オーヴァーダブの楽器構成やミックス処理があれだけ違うっていうのも・・・。
なるほど、きっと数多くの別テイクが存在すると思いますよ、この曲。
そのうち「PYG・アンソロジー」なんてCDが出ちゃうかも!
投稿: 瀬戸口雅資 | 2009年3月16日 (月) 22時41分
『Concert for Hiroshi』
出演:
ゴールデンカップス
TENSAW
深水龍作&Deep Mouth
佐藤隆
GHQ
ジョー山中
ムッシュかまやつ
大口プロジェクト
日程と場所:2010.01.25
渋谷duo music exchange
/大口広司.(1950.11.28
〜2009.01.25)
♪
投稿: 鉛筆 | 2009年11月28日 (土) 03時42分
鉛筆様
情報ありがとうございます。
条件が揃えば観てみたいですね。
大口さんはスネアではなく、キックとハイハットで跳ね回るドラマーさんでした。
パワー型のドラマーにはない味を持っていたと思います。そして僕は、その方が好みなのです…。
投稿: DYNAMITE | 2009年12月 3日 (木) 20時46分