沢田研二「探偵(哀しきチェイサー)」
from『今度は、華麗な宴にどうぞ』、1978
1. ダーリング
2. 酔いどれ関係
3. ハッピー・レディー
4. 女はワルだ
5. 探偵(哀しきチェイサー)
6. ヤマトより愛をこめて
7. お嬢さんお手上げだ
8. グッバイ・マリア
9. スピリット
---------------------
ジュリー祭り参戦以来、公私共に激動の毎日でございます。
バタバタしている間に、3月も終わろうとしておりまして。
気がつけば、音楽劇「探偵~哀しきチェイサー」初日がもうすぐ間近に迫っているわけですよ。
実は、僕は少し前まではこの音楽劇にはほとんど興味が無かったのですが、先月のとある日にメイ様のところでACTのレポを拝読、大変感激いたしまして。
「ロッケンなLIVE以外のジュリーも観ておこう!」と、音楽劇「探偵~」のチケットをとろうとしたのですが、都合の良い東京公演日程は既にソールドアウトでございました。
まぁメイ様曰く、「ACTはお芝居もある歌、今回の音楽劇は、歌もあるお芝居」ということで、僕の想像とはかなり違った趣の舞台のようですが、観ておくとしたら今回、かと思ったんですけどねぇ。
今回の音楽劇「探偵~」は、初っ端大阪から始まる、というのが熱心なファンの間ではミソのようで。
ところが、大阪のチケットはどうも余りまくっているらしい。これは、関東のジュリーファンの方が熱心である、というのではなく、どうやら蘭ちゃんファンの関東者が大層張り切っておられるようで、微笑ましいお話ではありますが。
時間のある関西のみなさま、つかの間の恋よりいいものがあるかもしれません、観ときなさい・・・って、僕も全く知らんのですが、この音楽劇というジャンルについては。
とりあえず、「探偵~哀しきチェイサー」という楽曲が、70年代後期ジュリーバラードの代表作である、という確信はありますので、今日はそちらのお話を。
アルバム「今度は、華麗な宴にどうぞ」から、伝授!
以前少し書きましたが、数年前の僕には「第一期ジュリー堕ち」時代というのがありまして、まぁその時1度でもLIVEに足を運んでいれば、今頃は余裕で澤会会員になっていたと思われますが、残念ながらポリドール期の再発CDを聴きまくる、という閉塞的な行為に終始しておりました。
その頃の僕に、好きなアルバムを3枚挙げろ、と言ったら、まず迷わず「JULIEⅡ」、少し悩んで「ストリッパー」&「今度は華麗な~」と答えていたはずです。
作詞・阿久さん+作曲・大野さん+歌唱・ジュリーという黄金のトライアングル。これはジュリーの歴史を語る上で間違いなく大きなウェイトを占める作品時期かと思いますが、このトライアングルで完全に固められたアルバム、というのはたった3枚しか存在しません。逆に言えばそれだけ内容やセールスが濃かったという事なのでしょうが、時期的にはほんの一瞬のことなのですね。
「思いきり気障な人生」「今度は、華麗な宴にどうぞ」「LOVE~愛とは不幸を怖れないこと」。年代順に挙げるとこの3枚です。
阿久さんの追悼番組で、ピンクレディーの楽曲でコンビを組んだ都倉さんが語っておられましたが、70年代後半から80年代にかけての阿久さんの詞は、作曲家とのエキサイティングな創作やりとりを通じて、手を変え品を変え時には裏をかき合う、という非常にエキセントリックな進化・革新を身上とされていたようです。
「これでどうだ!」という阿久さんの詞に、どういう手管で作曲家が応えていくか。
この刺激的な関係は当然の如く、ジュリーという類稀なるヴォーカリストを巡って、作曲家・大野さんとの間にも怒涛に展開されています。
アルバム「思いきり気障な人生」で、まずは男の生き様を多角的に表現した阿久=大野コンビ。次作「今度は、華麗な~」においては、それまで描いてきた男の、具体的な生活臭に踏み込みます。
もちろん、普通にありえる男ではありません。荒唐無稽と言っても差し支えない、そんなバーチャルキャラクター的なハチャメチャな男が、ハチャメチャな行動の中に哀愁を漂わせる、という何ともややこしいテーマの詩作。
アルバム「今度は、華麗な宴にどうぞ」両面ラスト収録の「探偵~哀しきチェイサー」「スピリット」の2曲は、正にジュリーが歌うことによってのみ表現しうる、そんなありえない男の生活臭がリアルに描かれた、阿久=大野ナンバーの最高峰と言えます。
「スピリット」は、まだシチュエーションとして誰の人生にも起こりうる内容(・・・とは言っても、主人公の言動が突拍子もないことは確かだが)なのですが、「探偵~」の方は、まず現実にはあり得ないストーリー。ジュリー以外の人が歌ったら、楽曲として普通に成立するかどうか、すら怪しい(爆)。
大野さんは、この2曲をいずれもピアノのアルペジオを骨子としたバラード大作に仕上げておりまして、シングル「ヤマトより愛をこめて」を加えた3曲が、アルバム「今度は、華麗な~」の核となっています。
で、「探偵~」には作曲構成に素晴らしい工夫があるのです。
基本的にはA+B+Cの構成。内訳は「Aメロ+Bメロ(ブリッジ)+サビ」なのですが、これが1番・2番と繰り返し。
バラード大作なわけですから、2番の後にダメ押しが来るのは必然・・・なのですが。
そういう場合って、普通、サビメロがもう一発来ますよねぇ。
ところが大野さん、ここにBメロを配置しました。「たんて~いがぁ~、見る夢はぁ~♪」の部分ですけどね。・・・1番・2番のBメロと全く同じ旋律なのですが、全く別物のコーダ大サビに聴こえます。この構成は、ちょっとスゴい。
やはりこの時代、都倉さんの言われるように、詞と曲の強烈な相互作用という創作手法があり、その中心に阿久さんがいた、というのは確かのようです。
加えて阿久=大野ナンバーの場合、そうして完成した楽曲をジュリーが歌う、という前提があったがために、お二人とも思いきり冒険ができたし、通常考えにくいアイデアを惜しげなくつぎこむ事ができたのでしょう。
それが行くトコまでイッってしまったのが次アルバム「LOVE~愛とは不幸を怖れないこと」になるのですが、そのお話はまたいずれ。
最強トライアングルの頂点作品、この機に是非。
しかし、そんな曲がタイトルになってる音楽劇って・・・一体どんなスゴい代物なのよ?
| 固定リンク
| コメント (18)
| トラックバック (0)
最近のコメント