瀬戸口雅資の乱れ撃ち一発伝授!

2018年12月 8日 (土)

スージー鈴木 『イントロの法則 80's』

12月ということで、仕事もプライヴェートも年末に向けて予定が立て込んでおりますが・・・まずその第1弾、先の木曜日の仕事関係の飲み会で不肖DYNAMITE、久々にやらかしてしまいました。
いつもよりペースも量も飛ばし気味だな、という感覚はあったんですけどまぁ大丈夫だろう、と思っていて。さぁお開き、と立ち上がって数歩歩いてトイレを済ませたらいきなり酔いが回り、見事「ドカ~ン!」という感じでね、ブッ倒れて顔から流血。
その後、お店で小1時間ほど休ませて貰ってようやく普通に歩けるようになったという・・・少しの無理も効かなくなってきる年齢なのだ、と痛感した次第です。
みなさまも今月は忘年会のご予定などありましょうが、くれぐれもペースを乱さぬよう気をつけましょう!


さて今日は「本」のレビュー、と言うかこれからお読みになるみなさまのために内容のネタバレは極力控えますので、「オススメ」記事と捉えて頂けたら幸いです。
採り上げますは、いつも的確な表現と熱い研究心でジュリーについても頻繁に発信をしてくださっているスージー鈴木さんの最新著『イントロの法則 80's』。
早速本題へ!

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スージーさんは素晴らしい「言葉遣い師」であり、しかもそのフレーズや言い回しが悉く明快で、ポップです。
楽曲やアーティストの考察において適当な伝聞はまったく無いですし、主観を述べる際にも絶対に「ひとりよがり」にはせず、一般に分かり易い記述を徹底していらっしゃる。あくまでも自らの血肉とされた考察・検証から成る簡潔な言葉と文章こそ究極のプロフェッショナル・・・僕のような素人とはその点大きく違います。

例えば僕は以前このブログで先輩方に「シティ・ポップ」の定義を尋ねられて悪戦苦闘、とても分かりにくい文章をこねくり回した経験があります。
スージーさんはそのシティ・ポップを「田舎、ヤンキーが仮想敵」の音楽と例えられました(『1984年の歌謡曲』より)。これは別に田舎や若者をバカにしているとかそういうことではなくて、緻密なアレンジに飾られた無機質なまでにクールな都会性とアダルト色をムーヴメントの由来から掘り下げ導かれた表現であり、時代背景まで加味した本質の言葉なのです。
そんなスージーさんの「本質を突く」スタイルはジュリーを語る寄稿でも等しく発揮され、それ故多くのジュリーファンからの熱烈な支持を得るのでしょう。

僕が初めてスージーさんを知ったのもやはりジュリー絡みの発信で2010年のことだったと思いますが、その後の2013年にスージーさんが放った強烈なまでに感動的な一文を拝見した瞬間から、僕は完全にスージーさんに惚れ込んでしまいました。
それは、ジュリーのことをロクに知りもしないであろう人が書いた某三文記事をスージーさんが正に「一喝」する内容で、今でも一字一句記憶しています。

「沢田研二はもう、あなた方マスコミが浮き沈みを論ずる地平にいないのだ。勉強して出直して欲しい」

僕も含めて多くのジュリーファンがその三文記事には憤慨しつつも、あまりの低俗さに反応のしようもなく唇を噛みしめていたところに、このスージーさんの見事な一喝があり胸のすく思いがしたものでした。プロのライターの手にかかれば相手のレベルがどうあれこれほど簡潔爽快に一刀両断できるものなんだなぁ、と。

以来スージーさんは僕の憧れの人となりました。
また、その言葉の素晴らしさ以外のところで何故僕がこうもスージーさんの文章やその奥に垣間見える生活感、時代背景に共鳴するのか・・・理由はスージーさんのプロフィールを知った時に氷解しました。僕とは1966年生まれの同い年で、いわゆる「丙午のタメ」。加えて何と大学の同窓。かつて知らず知らずキャンバスですれ違っていたことは確実にあるとして、中古レコード店『タイム』で掘り出し物を漁っていたり、『ムトウ』で弦やピックを買っていたり、終電を逃して喫茶『白ゆり』で仲間と音楽を語らいながら一夜を明かしたりしていた時、すぐ近くに居合わせてまったく同じように過ごしていた見知らぬ青年が実は若き日のスージーさんだった、という可能性は充分にあります。
つまり、テレビから流れてくるヒット曲をどの年齢で、どんな環境で耳にしていたかという「原風景」がスージーさんと僕とでは完全に重なるのですね。
ですから、もちろんスージーさんは僕にとって雲の上の存在ではあるけれど、万一酒席を共にしたら相当盛り上がる自信があります(笑)。

それはさておき、「ジュリー堕ち」以降僕の中では「歌謡曲復権」のマイムーヴが起こり、この数年スージーさんの発信や著作には多くを学ぶこととなりました。
『1979年の歌謡曲』『1984年の歌謡曲』の2冊も名著でしたが、今回ご紹介する最新著『イントロの法則 '80s』についてブログでレビューまで書こうと思い立ったのは、何と言ってもジュリー・ナンバー2曲の考察がとても面白く、ジュリーファンのみなさまにも読んで頂きたい、との気持ちを強く持ったからに他なりません。

採り上げられているのは、まず「80年代」の括りならば万人納得の「TOKIO」。
シングル盤『TOKIO』が80年代の幕開けとする位置づけは当然ですから、スージーさんもこの名著の冒頭を飾る1曲として抜擢。気合が筆から滲み出ているようです。あのイントロをパンクの「キワモノ」性と重ねるスージーさんの考察には目からウロコでした。
そしてもう1曲は、この本のコンセプトが「イントロ」に特化した考察であるからこそ選ばれたであろう「”おまえにチェック・イン”」です。
伝説のコーラス・ワークによるイントロ・インパクト・・・伊藤銀次さんから直接お話を聞いていらっしゃるスージーさんとしては、外すことのできない曲だったのでしょう。考えてみれば、冒頭いきなり擬音コーラス(或いはスキャット)からスタートするヒット曲って邦楽だとなかなか無いんですよね~。
このジュリーの2曲の項だけでも一読の価値あり、と自信を持ってお勧めできます。

収載された他歌手(バンド)の曲もすべて「有名な曲」ばかりが採り上げられています(全40曲)から、世代の異なるみなさまもご存知の曲が多いのではないかと思います(世代的に僕は全曲知っていましたが)。
例えば「時の流れに身をまかせ」(テレサ・テンさん)。もしみなさまの中に今年の人見豊先生の講義を聞いた方がいらっしゃったら、スージーさんの考察に人見先生の歌詞解釈を重ねることができるでしょう。
また、「ルビーの指輪」(寺尾聰さん)のイントロ・リフが曲中で何度登場するか、とカウントしてみる感覚などは、畏れながら他人とは思えなかったりします(笑)。
本のラストを飾る曲は「君は天然色」(大滝詠一さん)。何故この曲がラスト収載なのかは、スージーさんのリスペクト溢れる大滝さんへの思いと追悼の文章を読めば分かります。

などなど、数々の名曲群のイントロにどんな仕掛けや手管が潜んでいるのか・・・スージーさんならではの考察、本当に面白いですよ~。

最後に。
スージーさんには是非今度は80年代の「アルバム」考察本を、と期待しています。
スージーさんならジュリーはまず『S/T/R/I/P/P/E/R』で決まりでしょうが、ここはもう1枚奮発して何か「隠れた名盤」を・・・例えば『NON POLICY』なんてどうでしょう?スージーさんがこのアルバムを語るとすれば、アレンジの井上鑑さんを絡めて「ジュリー流シティ・ポップ」を掘り下げてくださるはず。

他歌手、バンドでは寺尾さんの『Reflections』、大滝さんの『A LONG VACATION』はマスト。
そしてスージーさんが最も得意とするサザンオールスターズからは、『NUDE MAN』を希望します。
「アルバム解説」となれば、世間一般には有名とは言えないシングル・ナンバー以外の収録曲、ヴァージョンなども語られるということ・・・以前スージーさんがラジオで「親鶏」のお話をされていたことがありましたが、僕にとって「夏をあきらめて」は桑田さんが歌う『NUDE MAN』収録のサザン・ヴァージョンが親鶏なのです。
研ナオコさんが歌って大ヒットしたヴァージョンももちろん素晴らしいですけど、もしサザンがこの曲を『NUDE MAN』からのシングルとして切っていたら、記録的なスーパー・ヒットとなっていたんじゃないか、と僕は今でも思っていますが、スージーさんはどのようにお考えなのか・・・とても興味深いです。

それに、僕はどちらかと言うと若い頃は洋楽志向のリスナーでしたから、未だ出逢えていない邦楽の名盤がたくさん残されているはずで、それをスージーさんに教えて頂きたい!との気持ちがあります。

今はちょっと興味を持った対象楽曲を簡単にネット検索できて、簡単に流し聴きできてしまう時代ではありますが、「便利さ」は「脆さ」と紙一重と知るべし、です。この場合の「脆さ」とは、伝え手と受け手の信頼関係に表れてしまう、と自戒すべきでしょう。
それこそ80年代には、僕らは洋楽であれ邦楽であれ「次は誰の何を聴いてみようか」と必死になって自分の嗜好に合う音楽の情報を仕入れたものです。
そんな時頼りになるのは、自分が信頼している人が纏めてくれたディスコグラフィー的な要素を含む本でした。僕もスージーさんと同じく10代で渋谷陽一さんの『ロック・ミュージック進化論』を読んで目覚めた世代・・・スージーさんの感性と考察を信頼していますから。
いずれにしても、スージーさんの次作が楽しみです!

音楽というのは別に理屈など知らずとも楽しめるものです。むしろ知らずに聴く方が良い場合もありましょう。でも、少しだけでもコードやリフの凡例や類似パターンの知識を自分の引き出しに入れてから改めて聴いた時、「よく知っている」つもりだったあんな曲、こんな曲が劇的なまでに新鮮に変化して聴こえる、感じとれるということがあります。
とは言えやみくもに理論を勉強しようなどと考え悩む必要はまったくありません。
気軽に読めて、これまで知らなかったことを分かり易く伝えてくれる格好の1冊がここにあります。

この年末年始少しゆっくりしたいな、という時間のお供に、スージーさんの『イントロの法則 80's』、みなさまも是非一読されてはいかがでしょうか・・・。


それでは、僕は明日いよいよ瞳みのる&二十二世紀バンドの四谷公演に参加します。
一方ジュリーは・・・関西シリーズ、昨年非常に評判の良かった三田の公演ですね。
今年一番の寒さになるということなので、お互い万全の準備で出かけましょう!
レポupまで、しばしお時間くださいね。

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2013年3月13日 (水)

『ロックジェット』 51号!

前回記事でコメントを閉じる設定にさせて頂いていたからでしょうか、なんだかちょっとお久しぶり・・・な感じがしています。

みなさま、もうジュリーの新譜『Pray』はお聴きになりましたか?
僕はもう軽く50回以上は聴きました。昨年に続き、素晴らしい大名盤です。確かに重い・・・でも素直に「これは凄い!」と思います。

今、東日本大震災後を採り上げたテレビ番組では、風化の問題が報じられています。
阪神の震災を経験しているカミさんは、「震災からたった2年で風化の問題なんて、あの時は聞いたことがなかった」と驚いています。
それが今回は・・・。

何故でしょう。人の心が変わってしまったのでしょうか。

そんな時、もし自分がジュリーファンでなかったら、とハッとする思いがよぎります。でも、少なくともジュリーファンにとっては、東日本大震災の風化などありえません。
風化する世間の流れに立ち向かった新譜・・・ひとことでは言えませんが、『Pray』にはそんなコンセプトがあるのかな、とも思います。

その分、楽曲考察記事を書くのは大変です。
今、1曲目「Pray~神の与え賜いし」の下書きに取り組んでいます。書きたいことも大体固まってきて・・・記事完成まで、もうひと息といったところ。
いずれにせよ、この先の新譜4曲のお題記事は、やはりそれなりに重い内容になるかと思っています。

今日はその前にひとつ、楽しい話題で一旦更新をしておきますね・・・。

明日14日の発売日を多くのタイガース・ファンに待たれている、『ザ・タイガース再結成』を巻頭特集に組んだシンコー・ミュージックさん発行のムック。

『ロックジェット』 51号!


この素晴らしい本を、強力プッシュいたします!
(註:本の具体的な記事内容や掲載フォトについて、ここではネタバレしておりません。その点、安心して読み進めてくださいませ)


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僕はいち早く入手し、読むことができました。
この若造が畏れ多いことではありますが、音楽書籍に関してだけは、仕事上の恩恵に預かることができます。先輩方に先んじてしまい、申し訳ありません。
今日のうちに市場流通されたという情報を得ましたので、僭越ながらいざご紹介!とさせて頂きます。

『ロックジェット』というのはかなりカルトな本で、タイガース・ファンの先輩方の間では馴染みが薄いらしく・・・特集内容や記事構成について不安視のお声も聞きますので、僕なりにその辺りを簡単に説明して、払拭できれば・・・と。

まず気をつけて頂きたい点・・・これは、決して若虎の写真やデータが満載、という類の本ではありません。カルトなロック雑誌の巻頭特集にタイガースが採り上げられている、という感じ。
全体のページ数の3分の1ほどが特集として組まれていて、そのほとんどがロック・パーソンなプレイヤー、アーティストやライターさんのインタビュー、評論です。
それぞれの観点から浮かび上がるタイガース像は、これまで僕がタイガース関連の書物で目にしたことのないほど、ロックに特化した記事となっています。

後追いの僕には信じられないことですが、タイガースは活動当時「あんなのは音楽じゃない」などと大人達から言われていた、と先輩方から聞いています。
しかし今・・・こうした形で”ロックバンド、ザ・タイガース”が正当に評価される時がやってきました。当時”少年”だったロッカー達が”大人”となり、少年のままの熱い思いをもって語り始めたのです。

『ロックジェット』のカルト性について少しお話しますと・・・例えば我が家には『クイーン特集号』(31号)がありまして。

Rockjet31_2

これがただ単にクイーンについて、という切り口ではなく、トコトンまでファースト・アルバムについて考察、検証しているという・・・。
『オペラ座の夜』でも『華麗なるレース』でも『世界に捧ぐ』でもなく、またマニアックなクイーン・ファンの間で支持の集中するセカンド・アルバムや『ジャズ』でもなく、ファーストを語り倒す・・・これをカルトと言わずして、何と言えましょうか。

『ロックジェット』って、そういう本なんです。
ですから、タイガース特集号の告知には正直驚きや不安もありましたよ・・・。でもいざ読んでみて、何も心配することはなかったんだなぁ、と。
ザ・タイガースは、『ロックジェット』の切り口で語られるにふさわしいバンドでした。まぁ、当然と言えば当然なんですけどね。

さて、今回の『タイガース再結成特集号』・・・もちろん目玉は、我らがピー先生のロング・インタビューです。
インタビュー自体も読みごたえ充分ですし、現在のピーの写真がカラー、モノクロ合わせて14枚。老虎武道館でのショットに加え、”哲人・ピー”といった印象の、撮り下ろしと思われるショットも数枚掲載されています!
今回の特集のきっかけになったであろう、ピー監修の『赤盤』『青盤』のみならず、ピーのソロ・ワークス3枚のCDがしっかりディスコグラフィー紹介されているのも嬉しいんですよね~。

ピーのインタビュー記事以外で僕が特にみなさまにお勧めしたいのは、名うてのロック・ドラマーお二人がタイガースについて語っているインタビューです。


お一人は、河村”カースケ”智康さん。
ジュリーのアルバムにドラマーとして参加されている、あのカースケさんです。「インチキ小町」や「ゼロになれ」「1989」「オーガニック・オーガズム」などのハードなナンバーでゴキゲンなドラムスを聴かせてくれたカースケさんが、少年時代、タイガースというバンド、ドラマーとしてのピー、そしてジュリーにこんな思いをお持ちだったとは・・・。
ザ・タイガースに憧れた少年は成長し、プロのドラマーとなり、遂にジュリーのアルバムに参加することになりました。その時カースケさんは・・・というお話。
カースケさん、熱いですよ!

もうお一人は、杉山章二丸さん。
タイガースについてのお話自体は少ないんですが・・・とても素敵なインタビューです。
忌野清志郎さんが中心となって結成された、GSパロディ・バンドの”タイマーズ”をみなさまご存知でしょうか。彼等の「デイドリーム・ビリーバー」カバー・ヴァージョンは、今でもCMなどでよく耳にしますね。
”タイマーズ”から”タイガース”を連想することは容易く、加えてタイマーズのメンバーにはそれぞれ、いかにもそれっぽい”愛称”がついていました。ドラムの杉山さんの愛称は「パー」。言うまでもなく、「ピー」をもじったものです。
タイムリーなタイガース・ファンのみなさまには信じられないことでしょうが、僕は「パー」の愛称元ネタとして、かつて「ピー」というドラマーがいた、ということを初めてその時知ったんですよ。順番がメチャクチャですね。
タイマーズが活躍した頃、僕は20代前半だったのかな・・・。

ドラマーお二人の他にも、何処から見ても”ロック・パーソン”としか言いようのない名プレーヤー達が、少年に戻ったかのように熱く語るタイガース。
『ロックジェット』という本だからこそ、そうなったのです。
そして、普段からこのムックを愛読しているタイガース世代のロックなおじさま達が、この号を読んで忘れかけていた少年の魂を再び燃え上がらせ、年末のザ・タイガース再結成ツアー会場に駆けつける姿が、今から目に見えるようです。

ジュリーがお正月コンサートで
「あの当時、タイガースを見たくても見られなかった人達・・・特に男の人達が(12月のツアーでは)来てくれるんじゃないか」
と言った意味が、この本を読むと分かるような気がするのです。

さらに。
佐藤睦さんによるジュリーの新譜『Pray』についての投稿が素晴らし過ぎます(自分がブログでジュリーについて書いている文章が恥ずかしくなります)。
僅か2ページの記事ですが、僕はこの短い記事のためだけにでも、多くのジュリーファンにこの本を読んで頂きたい、と思ってしまいます。

さすがは天下のシンコーさん。
そして、さすがは『ロックジェット』!

百聞は一見に如かず。
すべてのタイガース・ファンのみなさま、ジュリーファン、ピーファンのみなさま。是非、お読みくださいませ。
おススメです!

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2011年9月25日 (日)

『GSパニック ~グループ・サウンズ最終楽章~』

シンコー・ミュージック 刊、2011

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僕にとりましては。
ひとことで言って、とってもうらやまし~い本でございます。

この『GSパニック』の発行元であるシンコー・ミュージックさんは、長年僕の憧れの出版社さんでした。
10代のDYNAMITE少年にとって、出版社と言えば第一にシンコー・ミュージック、第二に早川書房であったわけです。
つまり、僕の青春を大きく彩った出版社さんだと言えるのですね。

僕はスコア(楽譜)を独学で勉強しましたが、その礎となったのが、シンコー・ミュージックさんから発行されていた『ザ・ビートルス・ベスト曲集』。
『Vol.1』から『Vol.3』の全3巻・・・これは当時ギター初心者のビートルズ・フリークにとってはバイブルとも言えるスコアで、掲載写真、選曲構成ともに素晴らしい内容でした。
残念ながら現在は絶版状態で、神保町の古書街では相当の値段がついています。

当時は自分が将来同じ楽譜業界に飛び込むことなど想像だにしていませんでしたから当然分からなかったのですが・・・この中でも”掲載写真”という要素。
これが、楽譜出版社のステイタス、或いは得意分野とおおむね比例するわけです。

ビートルズについてそうであったように。
シンコー・ミュージックさん発刊の『GSパニック』は、まず、タイガース・ファン垂涎の写真が満載の豪華本でありました。
各方面で言われております「中身はほとんどタイガース」という評は、まったく間違いありません。最も力を注いでいるのがピーとタローのインタビューであることは明白ですが、その他のページで、多くの貴重なタイガース・グッズの紹介をカラーで割いているのが、この本の魅力、ひいては編集に関わったスタッフさん達の底力です。

写真の多くは、僕のような後追いファンにとって目を見張るものばかり。
カッコいいもの、変テコなもの、色々あるんですが・・・僕はどちらかというと「ほぇ~っ!」という変テコなグッズに惹かれるなぁ。

当時はタイガース人気にあやかって、ずいぶん風変わりなアイテムも多くあったようですねぇ。
まず、「ぷっ!」と吹いてしまったのがこれ。

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タイガース傘!

いやいや、「吹いてしまった」というのはね、僕が無知だったからですよ。
僕は、当時の小中学生、女子高生の乙女達が、雨の日に実際にこのタイガース傘をさして登校している図を思い浮かべたわけですよ。なんだか凄い光景だよなぁ、なんて考えてしまって。

そうしたら、J先輩のAKI様が
「直径20センチくらいの可愛い傘でしたよ」
と、教えてくださいました。
な~んだ、オブジェだったのですね。実際にさすわけじゃないんだ・・・と、ホッとしたようなガッカリしたような。
まぁ、注意して読むと「ミニミニ傘」とは書いてあるんですけどね。

もうひとつ僕のツボに入ったのは、タイガース傘と同じページに掲載されている、これ。

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「あなたとジュリー」Tシャツ!

これも、例えば今だったら結構シュールですよねぇ。でも、1970年当時の女の子達が着ていたんだと考えると微笑ましい・・・テレビ番組のタイトル・ロゴなのですね。
これは拙ブログの読者の先輩方の中に実際「着てました~!」と仰る方がいらっしゃるかも・・・。

グッズの中でも代表格と言えば、当時の芸能雑誌。
『明星』『平凡』のタイガース、或いはジュリー、ピーの表紙の号がズラズラ~っと紹介された数ページはやはり圧巻です。
そんな中、J先輩のミカン@様が「気になる~!」と身悶えていらっしゃるのが、これ。

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みだしに注目。
『特別手記 沢田研二の赤裸々な愛の告白!!


ビックリマーク2つですからねぇ。
お姉さま方ばかりでなくとも気になるところではありますが・・・かつてこの号をお持ちで、どんな内容の記述があったか覚えていらっしゃる先輩はおられませんかねぇ・・・。

さて、こんなに貴重な写真の数々があれば、スコアはかえって邪魔なのかな・・・。僕が期待していた、タイガース・ナンバーの貴重でマニアックなスコアの収載はありませんでした。有名ドコのシングル曲のコード譜が少し載っているだけです。
仕方ないですよね・・・タイガース・ファンの多くが求めているのは、スコアではありませんから。
ファンのニーズに的確に応えることのできるシンコー・ミュージックさんは、やはり大きな大きな、僕の憧れの出版社さんです。

またこれが、ツアー幕開けとほぼ同時の発売というのが素晴らしかったですね・・・。
国際フォーラム初日にお会いした、遠征参加の先輩が、八重洲ブックセンターに平台で置かれているのを見たそうです。
中身がほぼタイガース、という以前に、この時点で弱小出版社とはスケールが違うのです。

そんな、永久保存版とも言うべき『GSパニック』・・・僕は発売日の前日に購入することができ、ツアー初日を待つドキドキ感と共に熟読しました。
巻頭の目玉であるピーとタローのインタビューは、それぞれのキャラクターが滲み出る素晴らしい記事ですが、ここでは敢えてご紹介しません。多くの方に実際購入して読んで欲しいからです。

タイガース・ファンならば、一家に一冊。
2011年のジュリーのツアーが生み出した最初の大きな副産物を、是非今からでもご堪能ください!

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2010年8月21日 (土)

相良光紀・著 『作詞術101の秘密+(プラス)』

泰輝さんのブログにupされている写真の下山さんが、「バック・トゥー・ザ・フューチャー」のドクに見えて仕方ない今日この頃です。
ともあれ、遂に鉄人バンド全員集合。めでたや~。

さて、拙ブログでは現在『秋の大運動会~涙色の空』セットリスト予想の最中でございますが、今回の記事は、ジュリーのお話ではありません。
でも、僕が『ジュリー祭り』以降、このブログを執筆するようになったことと、まったく無関係な話でもありません。
不思議な縁が繋がって、このたび発売されることになった1冊の本を、恐縮ながら今日は紹介させて頂きたいと思います。

きっかけは、いわみ先輩のブログでした。
それは、DEVILSというバンドのヴォーカリストだった高橋不二人さんの復活について語られる御記事で、不勉強な僕にとっては未知の世界・・・知らなかったことが詳しく紹介されていました。

http://sekkaikou.tenkomori.tv/e173385.html

興味深く読み進めるうち、不意に文中に懐かしい名前が目に飛び込んできたのです。

相良光紀さん。
DEVILSではサイドギターと作詞を担当していた、といわみ先輩が書いてくださっていましたが、これは僕のまったく知らなかったことでした。

・・・実は相良さんと僕は数年間、僕の勤務する会社関連で一緒に仕事をしていた時期があるのです。

とは言っても、相良さんは当然ながら企画のトップ中のトップ。それに対して僕は当時まだ20代、底辺でウロウロしていた一兵卒でした。
ですから相良さんが果たして僕のことなど覚えていらっしゃるかどうか・・・それは分かりません。
その頃の僕はプライドばかり先行しているどうしようもない奴で、目上の方に対しても思いついたことはズケズケと言う、それがロックだ、などという浅はか極まりない態度で働いていましたから、まぁ覚えていらっしゃらない方がありがたいのですが(恥)。

そんな僕ですが、ご本人に伝わっていたかどうかはともかく、周囲の人とは違う目で相良さんを見ていました。
それは単純に、僕が初めて身近にした”プロのロックの先輩”という気がしていたからです。
ただ、相良さんのキャリアは当時の僕が考えていたものとはずいぶん違っていたことを、今になっていわみ先輩の御記事で知ったのでした。

最初、僕は相良さんを「LOOKの詞を書いていた方」と紹介されたのです。
昔バンドを組んでいらっしゃった、という話も後に聞きましたが、それはアマチュアとしてのキャリアなのかな、と(今さらですが)大きな勘違いをしてしまいました。
そんな訳で僕はその頃、相良さんを”作詞家”として見ていたのです。

それから数年が経ち、僕も30代に突入。
一方相良さんは、メインの企画とは別に『作詞術101の秘密』という本を執筆、発行なさいました。
本は良く売れ、僕も熟読しました。
プロの作詞家さんがどんなことを考えているのか、どんな状況で仕事をなさっているのか、それを知るだけでも面白かったのですが、とにかく濃密な内容で、いわゆる指南本というものではなく、読み物として充分楽しめる著作。
とても感動したものでした。

その直後くらいだったと思います。
これはまず相良さんは覚えていらっしゃらないでしょうが、仕事絡みの酒宴の席で、僕は相良さんと同じテーブルになったのです。
相良さんは、若造の無遠慮な態度にも嫌な顔を見せず、色々なお話をしてくださいました。
若き中島みゆきさんのステージを観て、歌の聴き方が変わったことなど、詞に関するお話はもちろん、ジャズのお話、剣道のお話・・・等々。

そんな中、「自分で自分の限界を作るな」「他人の評価とは別に、自分の好きなものを大切に」といった言葉はやはり印象に残りましたが、それは『作詞術101の秘密』という著作にも書かれていらしゃったことでした。

月日が流れ、そんな記憶も薄れてきていた2010年。

いわみ先輩のブログで相良さんのお名前を見かけ、僕はそんな名著が現在品切れ状態であることを思い出しました。
ダメ元で編集部のK嬢に、相良さんに出版依頼の連絡がとれるかどうか聞いてみたところ、半年ほど前にコンタクトがあったと言うではないですか!
僕はすぐさま『作詞術101の秘密』復刻の企画案を出し、K嬢を通じて
「DEVILS時代の思い出話などがあったら是非追加して書いてください」
とお願いしました。

相良さん、ビックリしたでしょうね。
誰がそんなことを言ってるんだろう?と。

そんな経緯で、正に来週早々にも発売となるのが、相良光紀・著『作詞術101の秘密+(プラス)』。

Sakusi101

この「+(プラス)」というのが、相良さんが今回復刻にあたって熱筆してくださった巻末の文章を表しているのです。
そこで相良さんは、DEVILSについてはもちろん、ご自身のバンドキャリアをすべて書いてくださっています。

またもや僕の知らないことだらけで・・・。
特に、布袋寅泰さんも加わっていたTHE PETSというバンドでエコー&ザ・バニーメンのオープニング・アクトを務め、演奏後の楽屋でイアン・マッカロクに「リバプールに来いよ」と誘われた、というお話には驚きました。
やっぱりそういう体験をしてきた方だったんだなぁ、あのオーラは・・・と、今さらながら納得してしまいました。

現在、CD、音楽出版の販売業界は、ともに先行きの見えない未曾有の不況と言われています。
ただ、どう考えても「音楽」そのものが消えてなくなることはないですし、それは「文章」についても同じことが言えると思います。
『作詞術101の秘密+(プラス)』には、相良さんにしか書けない文章がギッシリ詰まっています。
そして相良さんはその中でこう仰るのです。

「あなたにも、あなたにしか書けないものを書く可能性がある。その可能性を自ら限定してはいけない」

そんなことを教えてくれる、素晴らしい本なのです。
正しい日本語を使いなさい、なんていう野暮な指南は一切無し。
”感いっぱい”上等!というワケです。

興味のある方は、是非手にとってみて下さい。
http://www.amazon.co.jp/%E8%AA%AD%E3%82%81%E3%81%B0%E8%A7%A3%E3%81%8B%E3%82%8B-%E4%BD%9C%E8%A9%9E%E8%A1%93-101%E3%81%AE%E7%A7%98%E5%AF%86/dp/428512761X/ref=sr_1_5?s=books&ie=UTF8&qid=1282280460&sr=1-5

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2010年3月21日 (日)

ザ・ジェノバ 「さよならサハリン」

いきなり、ごめん!
本当は、昨日のRRGのライブに行こうと以前から思っておりまして、記事もそうなるはずだったんですが・・・。
バンドの最終ミックス作業により断念。
何か代わりに・・・と考えて突如思いついたのが今日のお題。

ジュリワンアルバム発売を目前にして、未だにジェノバ中毒が僕の体内に潜伏し続けている模様なのです(怖)。
とりあえず、何か記事でも書いて自分のスイッチを切り替えなければ・・・と。
興味の無いみなさまは、今回はどうかスルーしてやってくださいませ。

しかし。
ジュリーとまったく関係ない(まぁGSという括りはあるにせよ)記事を書くのは2年ぶりかぁ。しかもそれがザ・ジェノバなんていう、少し前までまったく知らなかった邦楽バンドの曲になるとはなぁ・・・。
いや、今や完全にじゅり風呂化した拙ブログですから、読んでくださっているみなさまの方が、もっとワケわかりませんかね。


何故僕が、ジェノバの音楽性に引っかかったのか。
今日は彼等のサード・シングル「さよならサハリン」を採り上げ、その辺りを、自分自身に整理をつける意味でも突っ込んで書いてまいりたいと思います。
伝授!

まず、ジェノバにハマった一番大きな要因として、リンクさせて頂いておりますいわみ様のこちらの紹介記事があまりにも面白かった、という事が挙げられます。
御記事には丁寧に音源まで添えられておりますから、こりゃ誰しも聴いてしまいますわな。
しかもいわみ様がニクイのは、音源を小出しにして少しずつ煽って、焚きつけていくわけですよ。
で、最後の最後に「はい、どうぞ」と纏めてすべて聴かせてくださいます。

やられた~!!

なんですかこの人達は。

まずはそれしか言いようが無かったです。
コンセプトの素晴らしさ(と一応言っておきましょう)はいわみ様のお言葉にお任せするとしまして、色々自分なりに解釈した結果。
やはり僕は、やり過ぎた音楽が好きなんだな、と。

明らかにやり過ぎですから、ジェノバ。

メロディーだけについて言うと、わりと当たり前な歌なのですね。ロシア民謡と日本のメロディーは相性が良いという動機もあったようですが、これは正統派の昭和歌謡です。
ですから、いくらGSの多くが洋楽を下地とし、なおかつ日本人的なメロディーを加味していたとは言え、ジェノバの曲はその範疇からはちょっとズレています。
キーはハ短調。ひねったコード進行はまったく出てきません。歌の上手い人が直球で聴かせるようなメロディーなのです。
ザ・ジェノバの場合、そんな昭和歌謡のメロディーをバンドで演奏、「
バンドサウンドならば一応GSと呼べるだろう」というやり口。
それだけでは非常に安易な、実態のない音にもなりかねません。
それを打破しているのは。

まずは歌詞です。
「さよならサハリン」は特にそうですが、”ロシア=北”をイメージさせるフレーズを、何でも良いからとにかく大上段に振りかざし、歌詞のあちらこちらにまんべんなく落下させる、という荒技です。
僕はいわみ様の御記事拝見直後、この「さよならサハリン」のレコーディング音源を求め
カルトGSコレクションVol. 2(クラウン編)』というコンピレーションCDを購入いたしました。
中村俊夫さん、黒沢進さんの楽曲解説は大変素晴らしいのですが、どの収録曲も作詞・作曲者のクレジット、そして歌詞カードそのものが無いんですよ!
何かマズイ事情でもあるんでしょうか・・・。

「さよならサハリン」で落下する特殊フレーズをいくつか挙げますと、

♪別れの歌を歌ってた 泣くな泣くなよバラライカ

♪暗い海だよ流氷は 海峡越えて何処へゆく♪

「バラライカ」はロシアの民族楽器。
しかし、「バラライカ」って!
何よりもこの語感の素晴らしいことよ。
ちなみに、シベリアサウンドのバンドにイタリアの都市名がついているのがジェノバ最大の謎でしょうが、この「さよならサハリン」では、「バラライカ」と歌っておきながらアレンジで導入された楽器はマンドリンだったりもします。
ちょっとズレてる方がいい♪

「流氷」は言わずもがな。
この一見GSソングの道具にはなりそうもない、ある意味マヌケな「バラライカ」「流氷」といったフレーズが、ジェノバの演奏に載せてメロディーになるといきなり破壊力抜群なのは、一体どういうマジックでしょうか。

その鍵は、やはりヴォーカルでしょうねぇ。
陶酔度においては、レンジャーズやプレイボーイ(いずれも上記CDに収録)には敵わない。ただひとつジェノバのヴォーカルが彼等の技を凌いでいるとすれば・・・。
到達点の高さでしょう。

何故、「バ・ラ・ラ・イ・カ~♪」と大げさに発音しているように聴こえるのか。
「りゅ~~う~ひょうわぁ~~♪」というヤケクソのようなメロディーに哀愁が漂っているのは何故か?
それは、ヴォーカルが捨身で歌のコンセプトに対峙しているからです。


例えば陶酔・痙攣のバンド、ザ・レンジャーズ。
このバンドのヴォーカルはこれで当然、まったく別の素晴らしさがあるのですが、ヴォーカルのスタイルがキャラクター表現の方向性を持っている事は確かだと思われます。
ザ・プレイボーイについても同じ(このバンドはギターもキャラ表現だったりしますが)印象を受けます。

ところがジェノバは・・・キャラとか、自己表現とか、そんな余裕がまったく感じられません。
必死で歌の世界に立ち向かうしかない。他に生きる術はない。

♪さよなら(つぶやくように) さよなぁぁら(叫ぶように) サハリン(落下フレーズを大ゲサに)♪

歌唱力は決して秀でていない。だから、生きるために歌の世界に対峙しよう。
その”負”のエネルギーが生み出した到達力。
この曲のヴォーカルを「どんなヴォーカルですか?」と問われれば、

サハリンにさよならするようなヴォーカル

と答えるしかない。技術的な形容詞は一切つきません。
それが、ザ・ジェノバの歌なのです。

常に追い込まれている感じ。一口に”情念のヴォーカル”と言っても、他バンドとは意味合いが異なるのですよ。向いてる方向が違うワケです。
コンピレーションCDを聴き、「おぉっ!」と思ったバンドはいくつかありましたが、僕の耳には、ジェノバのヴォーカルは突出して聴こえました。

では、彼等の演奏についてはどうなのでしょうか。
これが、スゴイんです!
上手い、とは言っておりません。スゴイんです。
「さよならサハリン」では何と言っても狂乱のドラムスが最も印象に残ります。失礼ながら、上手いプレイヤーにこの空気は出せない。これもやはり歌への対峙・志の高さと言うべきでしょう。
デビュー曲「サハリンの灯は消えず」では、リードギターについてまったく同じことが言えます。「さよならサハリン」ではリードギターの見せ場は用意されていませんが、右で鳴っている単音はキチンと練りこまれ組み立てられ
た音で、1番歌メロ直前導入部のベースとのアンサンブルが素晴らしいですね。

ザ・ジェノバにはコーラスにも特徴がありまして。
基本、ユニゾンという・・・。
さすがにキメ部ではハモりますが、基本ヴォーカルと同じメロディーを複数で歌う・・・そんな、プロのGSコーラスサウンドを逸脱した手法が炸裂。
これはコーラスというものではなく、ハモりの技術に劣るメンバーをもってして、大人数で歌って音の厚みを出せば楽曲の迫力が増すであろうという、非常に乱暴な、玄人にあるまじき考えによるものかと思いますが、何とザ・ジェノバの場合、それが成功してしまっているのです!
この肉厚のユニゾン部があればこそ、ヴォーカルソロ部の慟哭が光っているとも言えます。

1番→2番→3番という間奏ナシの昭和歌謡構成。
しかも3番はサビすら割愛され、

♪会えるその日は まだ遠い
  まだ遠い まだ遠い まだ遠い♪

と連呼しながらのフェイドアウト。
「え~っ?」と言う間に終わってしまう、サハリンとの別れの物語。
「キャラクター」という言葉に囚われ見逃されている「普通のお兄ちゃんの真剣な格闘」というものがGSの中に多くある事を僕は最近学んでいますが、普通のお兄ちゃん達が、何かの境地に到達する様を感じることのできる楽曲はそう多くはありません。

ザ・ジェノバはそんな数少ないバンドなのではないかと。
そして、突き抜けているものはロックなんだな、と改めて思った次第でございました。

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