2017年2月19日 (日)

沢田研二 「PLANET」

from『単純な永遠』、1990

Sinpurunaeienn

1. a・b・c...i love you
2. 世界はUp & Fall
3. PLANET
4. プライド
5. 光線
6. New Song
7. この僕が消える時
8. 不安にさせよう
9. 気にしてない
10. ジェラシーが濡れてゆく
11. 月のギター
12. 単純な永遠

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今日は「”恥ずかしながら今さら知った”シリーズ」といったところでしょうか。

ここまで50年のジュリーの歴史、後追いで勉強してゆくのは大変ながらも本当に楽しい作業です。
そんな中、たまに「もう完全に血肉とした」つもりでいた名曲にまつわるエピソードを新たに知って「えっ、そうだったの?」と驚くことがあります。その度にジュリーの歴史の偉大さのみならず、ジュリーの名曲に関わった多くの人達の素晴らしさを知ることになるのですが、今日の記事は正にそんなお話となります。

採り上げるお題は、アルバム『単純な永遠』から「PLANET」です。早速伝授!


僕は、アルバム『単純な永遠』を大好きになるまでに結構時間がかかっています。
購入したのは2006年でしたか、”第一次ジュリー堕ち期”でポリドール時代のアルバムのリマスター再発盤をすべて買い終えた後のこと。
ポリドール以降のアルバムも一応聴いてみるか、と思い『REALLY LOVE YA !!』に続いて購入したが『単純な永遠』だったのですが、まず初聴で感じたのが「さすがに過剰プロデュースなのでは」と。
何故その時もっとよく聴きこまなかったのか自分自身でもサッパリ分からなくなっているんですけど、とにかく当時は数回聴いて放り投げてしまいました。
本当に恥ずかしいことです。だって僕は今、その「過剰さ」こそがこのアルバム最大の魅力だと思っているくらいなのですから。

2008年に『ジュリー祭り』を体感し、”第二次ジュリー堕ち期”に突入(”第三次”はやってきません。第二次がこの先永遠に続くからです)。直後はとにかく膨大な枚数の未聴のアルバムを買い漁り血肉とすることに終始したので、「既に購入済み」であった『単純な永遠』の再評価は遅れまくりました。
2009年、このブログが「じゅり風呂」として軌道に乗ってきたそんなある日、どういう経緯だったかは覚えていませんが、確か「月のギター」の記事を書こうとしたこともありCDを部屋で流していたところ・・・
突然「こ、これは大変な名盤じゃないか!」と何だか説明しようもない感覚が「降りて」きました。
あっという間に『単純な永遠』は「EMI期の中で1番好きなアルバム」に昇格、現在に至っています。

ただ、正当な評価こそ遅れましたが初聴時から「おっ、この曲は素晴らしいな」と贔屓に思っていた収録曲が2曲ありました。
「PLANET」と「プライド」です(もちろん今でも特に大好きな2曲です。ただしアルバム収録曲の「好き」1番手は、2009年から「気にしてない」で不動)。

僕は感性が鋭い方ではないので、まったく初めてのロック作品を聴く時、これまで自分の中に溜めこんできた「好みの引き出し」に見合う曲をまず最初に好きになります。「プライド」ではデヴィッド・ボウイのグラム・ロック、そして「PLANET」には「ネオ・モッズ」を想起させられたことが決め手でした。
「ネオ・モッズ」なるジャンルについてはこれまでアルバム『G. S. I LOVE YOU』収録曲の記事中で散々書いてきましたからここでは割愛しますが、「PLANET」はもろにモッズ、というわけではなくて、和製モッズの雄である加藤ひさしさんが提供した曲をいじり倒して最終的にこうなったんだろうなぁ、と思っていました。元々はマートン・パーカス(僕が特に好きなネオ・モッズ・バンドのひとつ)みたいな曲だったんじゃないかな、と。

その考え自体に今も変わりはありません。
ただ1点、僕はずっとこの曲を加藤さんがジュリーの『単純な永遠』のために「書き下ろし」た曲だと思い込んでいたこと・・・いやぁ、大好きな曲だからといって早めに考察記事を書いておかないで良かったですよ。
昨年のある日、本当にたまたま長崎の先輩から教えて頂いた「原曲」の存在。
「PLANET」は、かつて加藤さんが結成、活動していたバンド、THE BIKEの「僕はひどいパラノイア」という曲に新たな歌詞を載せ換えた「カバー」だったのですね。

ザ・ジェットセット、シークレット・アフェアー、ダイレクト・ヒッツ、スクワイア、クリーナーズ・フロム・ヴィーナス、そしてマートン・パーカス・・・僕はこれら洋楽ネオ・モッズ・バンドをパブ・ロック・バンドに負けないくらい愛していますが、長い間邦楽モッズについてはまったく見向きもしていませんでした。
己の無知を自覚させられたのは、瞳みのる&二十二世紀バンドのLIVEを観てJEFFさんに興味を持ち、JEFFさんとNELOさんが在籍するバンド、オレンジズのアルバムを購入した時。
日本にもこんなに素敵なモッズ達がいたのか!と。
でもそれを言うなら僕は和製モッズの第一人者である加藤さん(現・コレクターズ)についてあまりにも知らない・・・(キンクス関連の文章はよく拝見していたのですが)。THE BIKEというバンドもこのPVを教えて頂いて初めて知ったのです。

ジュリーファンの先輩方はとうにご存知かもしれませんが、まずはここで先述の先輩に教えて頂いた「僕はひどいパラノイア」のPVをご視聴ください(こちら)。
これはTHE BIKEのオリジナル・ヴァージョンではなく、2000年代に再録音されたものらしく、PVのストーリーは、この曲を最初に録音してから再録するまでの時間の長さを表現しているのかな。
とにかく1から10までモッズそのもの!な名曲。

ジュリーの「PLANET」に施されているあれやこれやのアレンジ手管をトコトンまで削ぎ落としたらこうなるわけです(いや、順序としてはそれ逆なんですけど)。
ちなみにPVにも登場していますが、モッズが乗るバイクは「ベスパ」というスクーターと決まっています。

Mod5

Mod6


↑ 手持ちのモッズ・コンピレーションのCD裏ジャケより

ウィキによれば、やっぱり加藤さんも乗ってるって。

さて、さらに話が少し逸れますが・・・。
「僕はひどいパラノイア」を知って俄然THE BIKEに興味そそられた僕は、色々とネット検索してみました。そこで拝見したのが、THE BIKEのカバー曲をズラリと紹介してくださっているブログ様。

残念ながらジュリーの「PLANET」についての記述はなかったものの、初めて得る知識に大いに楽しませて頂きまして、その素晴らしい記事中で紹介されていた1曲が、小泉今日子さんの「Heart of the hills」(加藤さん作曲のTHE BIKEのナンバー「TOO SHY BOY」を、小泉さん自身が新たに詞を書き換えてカバー)。
早速聴いてみますと・・・(
こちら)。

これ何と、ギターが下山さんなんですよ!
この曲が収録されている88年リリースの小泉さんのアルバム『BEAT-POP』は名だたるロック・パーソンが演奏を固めているらしく、加藤さんがもうひとつ提供した曲では、ギターが布袋寅泰さんとのこと。
「ルースターズの下山」「ボウイの布袋」として並び立つ両雄が、小泉さんの1枚のアルバム内でギター競演とは凄い。しかもどちらも加藤さんの曲で・・・。
機会あれば通して聴いてみたい1枚です。

「Heart of the hills」(「TOO SHY BOY」)での加藤さんの作曲が、クリーナーズ・フロム・ヴィーナスへのオマージュであることは間違いないと思いますが、下山さんのギターの音色、タッチがクリーナーズそっくりで驚きました。しかも本家より上手いし!
下山さん、やっぱり天才です。

それでは話を戻して(汗)。
ここからは「PLANET」と「僕はひどいパラノイア」の比較考察をしていきたいと思います。

まずは歌詞。尾上文さんが新たにジュリーに書いてくれた詞は最高にカッコイイ(アルバム『単純な永遠』のコンセプトにもピッタリ)ですけど、原曲のオリジナル歌詞部を踏襲している箇所もところどころにあって。
目立つのはサビ部。THE BIKEでは「僕は海、僕は空♪」と歌われるところで、「僕は・・・」の後に世界の都市名を次々に繋げる手法です。
また、この曲最大の肝であるAメロ

夜明けのダイナで
A              F#m

見知らぬ恋におちる baby baby ♪
G                 A        E7

この「baby baby♪」はそのまま残されました。
これが無くてはモッズではない!というほど強烈なキメの「baby♪」をいじらずに採用するとは、さすがのセンスですね。

一方、原曲を一変させている歌詞部で僕が素晴らしいと思うのは、Aメロ2回し目。
オリジナルでは1回し目の「baby baby♪」と同じメロディーで歌われる箇所で、尾上さんは「dancing in the space♪」と載せてきました。これがメチャクチャ良い!
ここは音符割りもメロディーも原曲とは微妙に変わっているんです。作詞家さんがメロディーの解釈まで変えてしまうというパターン。ジュリーの歌の切れ味も併せ、「曲先」ならではの名フレーズではないでしょうか。

あと、最後のヴァースで世界中を駆け回るダメ押しの都市名連呼・・・定かではないんですが、サエキけんぞうさんが「街の名前をひねり出していくのが面白かった」みたいなことを話している映像を以前に観た記憶があるのです。とすれば最後の段階でサエキさんが都市名を付け足し歌詞を仕上げた可能性も。
勘違いかな?
そう言えば、初聴時に気持ちよく曲を聴いていたら「ブエノスアイレス」が「メルセデス」に聴こえて、「はい?」と思って歌詞カードを確認したことがあったなぁ。

で、これらの「都市名連呼」はすべて

かけぬける 僕はPlanet ♪
   A        G              A

という最後の一節に全部纏めてかかってくる・・・こういうレトリックは何か呼び方があるのかなぁ?

続いて、アレンジ、演奏の比較考察を。
これは挙げだすと本当にきりがなくて大長文になってしまいますから、僕が特に惹かれるポイント数点に絞って書いておきましょう。

まずイントロ。「僕はひどいパラノイア」はモッズらしくバシッ!とエレキのコード・リフからスタート。このリフは曲中何度も繰り返され、間奏ではキンクス直系の「リフごと転調」も登場します。
一方ジュリーの「PLANET」は、リフはリフでもアコギの単音とチープに(←褒め言葉です)裏拍を刻むキーボードのかけ合いに変貌。
しかもこのイントロ、最初の8小節だけ転調してます。「PLANET」の歌メロはイ長調ですがここだけは嬰ハ長調(「C#7→A7」2小節ずつで4小節×2)。「イントロだけ転調させる」手法は白井良明さんが「麗しき裏切り」で採用しますが、実は建さんもやってたんですねぇ。

「PLANET」は間奏のギター・ソロも面白くて、「大陸風」な音階での独特のフレージングは、明らかに尾上さんの新たな歌詞を受けて編み出されたソロでしょう。
軌道を外れた遊星が世界各地を駆け巡っている雰囲気、ズバリ!ですよね。

あと、どうしても書いておかなければならないのが2曲のキー設定です。
今回僕は先に「PLANET」の方から採譜しました。先述の通りキーはイ長調で、メロディーの最高音は

行きつくとこなど誰も知らない ♪
F#m                               E

この「知らない♪」の「な」が高いファ#の音。
ジュリーとすれば楽々届く絶好の設定ですから、なめらかにかけ登っていくヴォーカルは当然「素晴らしい」のひと言です。

さて加藤さんはどうだろう、ジュリーより高いのか低いのか、と思いながら「僕はひどいパラノイア」を採譜してみて仰天しました。何とニ長調!
この原曲はジュリーより2音半も高いキーで歌われているのです。最高音は高い「シ」にまで至ります(ちなみに最高音部が登場する箇所は、キーだけでなくコード進行の理屈も2曲で異なります)。
元々モッズって、出せるか出せないか、くらいのギリギリの高音を縦ノリのリズムに載って搾り出すスタイルのヴォーカルが多いとは言え、これは凄まじい・・・声質も合わせ、どうやら加藤さんはデイヴ・デイヴィスばりのハイトーンの持ち主のようですね(キンクスでは、兄貴レイのメイン・ヴォーカルを信じられないほど高いところでハモる弟デイヴのコーラス・ワークが魅力のひとつ)。

ただ、「PLANET」でのジュリーの2音半下げのキー設定は大正解で、先に書いた最高音部のなめらかさもさることながら、中ほどの音域の艶がまた絶品。
「夜明け~のダイ~ナで♪」で「け~♪」「イ~♪」と音階移動しながら音を伸ばす箇所などは、たまらない色気があります。
そしてエンディング・・・最後の最後に「ジュリーのヴォーカルだけ残る」アイデアが素晴らしい!
「僕はひどいパラノイア」の方は王道のリフで終わりますね。2曲ともに、「こういう曲ではフェイド・アウトはしない!」というのがモッズ魂ですかね~。

手持ちのツアーDVDの中、「PLANET」は『1999正月コンサート』でLIVE映像を楽しむことができます(バックは鉄人バンド+依知川さん!「PLANET」では、イントロのリフを、下山さんのエレキと依知川さんのベースのユニゾンで弾くというアレンジ・アイデアに驚嘆)。
この時のセットリストは本当に素晴らしく、「PLANET」以外では「遠い旅」「ハッピー・レディー」「ママとドキドキ」「夜の河を渡る前に」といったレアな70年代の名曲なども歌われます。もう一度こんな感じのセトリでツアーをやってくれないかなぁ、ジュリー。

アルバム『単純な永遠』ということだと、僕が現時点で生で体感できているのは、「a・b・c...i love you」「光線」「ジェラシーが濡れてゆく」「単純な永遠」の4曲。
そこで、今年の全国ツアーでは何としても「世界はUp & Fall」を歌って欲しい(昨年の手術直前、根性無しの僕に勇気をくれた名シングル曲!)ところですが、50曲の枠内に選ばれるかどうかは微妙ですかね・・・。


それでは、オマケです!
昨年J先輩より安価でお譲り頂きました、『単純な永遠』ツアー・パンフレットから数ショットどうぞ~。


199005

199007

199009

199010


では次回更新は、2000年代の名曲を書きたいと思います。まだまだ「アルバムで一番好きな」記事未執筆の曲が残っているのですよ~。


今日は暖かな日曜日でした。こちらは明日も気温は高めの予報です(強風が凄いらしい)。
このまま春になって欲しいですがそうはいかないでしょう。これが三寒四温というやつですか。
2月は勤務先の決算月で、来週からメチャクチャ忙しいのですが、体調に気をつけつつブログ更新ともどもベストを尽くし頑張っていきたいと思います!

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2017年2月16日 (木)

沢田研二 「絹の部屋」

from『架空のオペラ』、1985

Kakuu

1. 指
2. はるかに遠い夢
3. 灰とダイヤモンド
4. 君が泣くのを見た
5. 吟遊詩人
6. 砂漠のバレリーナ
7. 影 -ルーマニアン・ナイト
8. 私生活のない女
9. 絹の部屋

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矢継ぎ早の更新が続きます。
読む方も大変でしょうが、適当にナナメ読みするとか、午後のおやつの時間のお供にするとか、とにかく気楽におつき合いくださいませ。
なるべくコンパクトに、まいります!

先日のオリコン特番で若き日のジュリーを観ていたせいか・・・ジュリーの「デビュー50周年」を振り返る日々の中で、どうしても自分の「ジュリー愛」が長いファンの先輩方に比べて劣っている、ハンデがある、と感じることが時々あるな、と思い至りました。
新規ファンである、ということももちろんですが、まず僕は男性という時点で大きなハンデを負っている・・・つまり僕は「ジュリーに恋をした経験が無い」のですよ。

もちろん、それをして世のすべての男性ジュリーファンが女性ファンに劣っている、と思ってはいません。特にジュリーと世代の近い男性ファンには、同姓ならではの特別な親愛の情の持ち方があって、そのことはたぶん近々の考察記事お題で触れられると思います。それに、真剣にジュリーに「恋をした」経験を持つ男性ファンも少なからずいらっしゃるのでしょうし・・・。
ここで書いているのはあくまでジュリーよりかなり年下、かつノン気な僕個人に限ってのお話です。

そんなハンデを特に強く感じるのが、「官能のジュリー・バラード」を聴いている時。
ただ、例えば「AFTERMATH」「Pin PointでLove」あたりはもう記事を書き終えていますが、これらは男性視点から「行為軸」(ゲスな表現ですみません)と脳内でリンクさせながら聴ける特性があって、同姓だからこそ「分かる」面もあるかもしれません。
ところが、完全に「ジュリーから誘われている受け手」として聴くしかないほどの官能のバラードとなると、これは女性リスナーの感性に敵わないでしょう。
今日採り上げるのはそんな名曲です。

女性ファンの先輩方に比べて、その素晴らしさがどこまで理解できているか分からない、自分のジュリー愛が劣っていることを自覚せざるを得ない・・・。
それでも、大好きな曲。個人的にはアルバム『架空のオペラ』収録曲の中で一番好きな曲です。
「絹の部屋」、畏れながら伝授!


この曲、何といっても圧倒的なのはジュリーのあのヴォーカルですわな~。
ジュリーはデビューからずっと(「ほぼ虎」のあった2011年以外は)毎年新譜をリリースし続けています。
これは本当に世界に類を見ない凄まじい偉業なのですが、毎年リアルタイムで新譜を追いかけていた先輩方が「たったの1年で前作とはガラリと印象が変わった」と感じた作品がこれまでいくつかあったことでしょう。
中でも、84年の『NON POLICY』から85年の『架空のオペラ』の変化には特に驚いたのではないですか?
これはもう、ジュリーのヴォーカルが違う、それに尽きると思うんですよ。

もちろん84年までのヴォーカルだって素晴らしい。
どちらが優れている、という話ではありません。それに、声や歌い方それ自体は、例えば84年の「シルクの夜」と85年の「絹の部屋」を聴き比べれば自然に繋がっている、なだらかに進化している、と思えます。
『架空のオペラ』の衝撃とは、アレンジやミックスといった「楽曲の作りこみ、仕上げ方がジュリーの声をこうも違えるのか」という1点だと僕は考えています。
エキゾティクスのロックな演奏があって、そこで類稀なセンスでヴォーカリストとしての機能を果たしていたそれまでの手法から、ただただジュリーの歌がそこにある、まずジュリーの声があって伴奏がサポートに徹している、という手法への変化。
劇変ですよね。
ヴァイオリンと掛け合う「灰とダイヤモンド」、実験的なダブル・トラックを採り入れた「影-ルーマニアン・ナイト」と各曲ごとの切り口はそれぞれ違えども、「歌を押し出す」曲の作り込みはアルバム『架空のオペラ』全体のコンセプトであったようです。

「絹の部屋」での大野さんの作曲は、長調のバラード王道中の王道です。
特にAメロのコード進行については、キーやメロディーこそ異なりますがまったく同じ理屈で「愛の出帆」「約束の地」「護られているI LOVE YOU」などの純度の高いジュリー・バラードで採り入れてられています。
普通こういう曲って、仕上げに豪華な装飾をしたくなるものなんですよ。厚いオーケストラを入れたり、満を持して転調させたり、コーラスを重ねたり・・・でも『架空のオペラ』はそういうことを排するところで成立している名盤ではないでしょうか。

「絹の部屋」の場合は、「よくぞコーラスを思い留まったなぁ」と。特にBメロです。

お互いにさりげなく 小さな嘘達を
A♭            B♭        E♭        E♭7

ちりばめて見せるのが
A♭                F7

恋のドラマトウルギー ♪
      B♭            B♭7

耳に心地よく綺麗で覚え易いメロディー。音感に疎い僕ですらここは
「ラ♭ラ♭ラ♭ラ♭ラ♭~、ラ♭ラ♭ソソソ~・・・♪」
と字ハモのメロディーをすぐに脳内で音源に重ねることができます。
でもこの曲は最初から最後まで「あくまでジュリーのメイン・ヴォーカル1本!」なんですよね。

ただし、黒子に徹する演奏も、だからと言ってただ漫然としているわけでは当然なく、個人的にはジュリーのヴォーカルの間隙を縫うホイッスルのような感じのシンセの音色に特に惹かれます。
あと、独特の雰囲気があるベース・・・これは普通のフレットレスでしょうか。それともシンセ?
僕の耳では分かりません。『架空のオペラ』の演奏については未だハッキリしない謎が多いです。

この曲でのジュリーの発声の特徴は、「そっと置く」ように語尾を歌っている箇所が多いこと。
1番Aメロがとにかく凄くて

君の頬で妖しく     輝   く
   E♭        Gm7(onD)  Cm7  Cm7(onB♭)

美しい罠  だ ♪
Fm7  B♭  E♭     A♭  B♭

の「罠だ♪」の「だ」であったり

瞳を閉じ
  A♭

たまらずゆらりと揺れた ♪
                  Fm7      B♭

の「揺れた♪」の「た」であったり。
前年までの「放り投げる」ロックな語尾表現とはまた違う、「そっと置く」としか言いようのない独特の発声感覚。
特に1番では「さぁ、こっちへおいで」というシーンを歌っているわけですからねぇ。凄い凄いと思いながらも、ここが男性の僕には大きなハンデ。
どうですか、先輩方?「罠だ♪」のところで早くも「もう好きにして~」とメロメロになっちゃうものですか?

さて、ジュリーのヴォーカル、大野さんのメロディーと同じく素晴らしいのが及川恒平さんの詞です。
ジュリーが自作詞以外は女性の作詞作品を好むことは周知の事実ですが、当然男性が作詞したジュリー・ナンバーも名篇揃い。個人的には、ジュリー・ナンバーを通して初めてその才を知った及川恒平さんの作詞作品には格別な思い入れがあります。
”第一次ジュリー堕ち期”に購入したアルバム『いくつかの場面』で出逢った「外は吹雪」「人待ち顔」「U.F.O」の3篇には本当に驚いたものです。これほど素晴らしい詩人を今まで知らずにいたのか、と。

「絹の部屋」は『いくつかの場面』収録の3篇とはちょっと空気感が違いますけど、素晴らしさは不変。
煽動性の無い特殊な剥き出しのエロス・・・ズバリ書いてしまいますが、性交渉を「お互いの不自由を喜びあえる」と表現するセンスは只事ではありません。
「男性が聴くにはハンデがある」と書かざるを得ないジュリー官能のバラードを男性の及川さんが作詞している、ということからして既に凄い。

ゆこうよ君 ゆこうよ君
      E♭ Gdim   A♭  Bdim

真夜中の絹の   部屋へ ♪
       E♭     A♭  B♭7   E♭

このサビの詞、歌に自然に身を委ねることのできる女性ジュリーファンの先輩方が本当に羨ましく・・・今日はなかなかに悔しい(?)伝授でございました~。

それにしても。
この数年、年末にお2人のJ先輩との忘年会開催が恒例となっているんですけど、やっぱりその時期にお会いすると「お正月LIVEはどんな曲を歌ってくれるのか」という話題になります。そのたびに
「今回は”絹の部屋”を歌ってくれそうな気がするんですよ。でも僕がセットリスト予想記事で書いちゃうと外れるので敢えて書きません」
などと自信満々に言い続けて一体何年目になるのか(←去年も言った汗)。

ちなみに毎年、お1人の先輩が「”夜のみだらな鳥たち”を歌って欲しいのよ~」と言った後に僕が「いや、可能性が高いのは”絹の部屋”ですよ!」と応える、というのが完全にパターン化しています。ジュリー、どちらもなかなか歌ってくれません(笑)。
果たしてこの先、生のLIVEでその2曲を体感する機会は訪れるのでしょうか。

とにかく、『ジュリー祭り』デビューの僕は『架空のオペラ』収録曲の中ではまだ「砂漠のバレリーナ」1曲しか生で体感できていないのですよ~(その唯一の曲が「砂漠のバレリーナ」ってのがまた凄い話ですが)。
とりあえずは、夏からの全国ツアーで「未体験シングル曲」の一角にして代表格、「灰とダイヤモンド」に期待しています。歌ってくれるよね、ジュリー?


それでは、オマケです!
今日は、これも福岡の先輩からお預かりしている資料で、85年の『アサヒグラフ』をどうぞ~。


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ということで、怒涛の更新ペースについていけない方が続出しているかとは思いますが・・・まだまだ手を緩めず攻め続けますよ!
次回お題は、吉田建さんプロデュース期の名曲です。ネオ・モッズについても書くことになるかな~。

各地の雪の被害、その後が心配されます。みなさまお住まいの地は大丈夫でしょうか。
こちらは明日の気温が19℃の予報。暖かい日と寒い日、気温の差が激しい季節になってきたようです。

僕は風邪の症状がようやく治まりました。
今の風邪は一度かかってしまうと咳が長引いて大変ですよ。みなさま、充分お気をつけください。

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2017年2月13日 (月)

沢田研二 「恋がしたいな」

from『sur←』、1995

Sur

1. sur←
2. 緑色の部屋
3. ZA ZA ZA
4. 恋がしたいな
5. 時計/夏がいく
6. さよならを待たせて
7. あんじょうやりや
8. 君が嫁いだ景色
9. 泥棒
10. 銀の骨

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大好きなジュリー・ナンバーをお題にサクサク更新していくシリーズ、第3弾です。
今日は90年代に飛びまして、ジュリーのセルフ・プロデュース最初のアルバム『sur←』から「恋がしたいな」を採り上げたいと思います。

個人的には、アルバムの中では「時計/夏がいく」に次いで2番目に好きな曲(日によって他収録曲に並ばれることもありますけどね)。
CD購入時から変わらず大好きなんですけど、これは全ジュリー・ナンバーの中でも詞・曲とも非常に難解な1曲でもあります。特に覚和歌子さんの歌詞ですね。
不思議な名編で、「答がハッキリ見つからない」ところにまた魅力を感じます。

ずっと前に「I'LL BE ON MY WAY」の考察記事で、三浦徳子さんの歌詞について「唐突に”沈黙が金だぜ”なんて言葉が登場する必然性が分からない」と書いたところ、コメントで先輩方の解釈を伺うことができスッキリした、ということがありました。
でも、「恋がしたいな」については既に僕なりに歌詞全体のストーリー設定に「答」を見つけていて、それがおそらくみなさまにとっては相当に突拍子もないと言うか大胆な解釈なのです。
今日は恥覚悟で思いきってそれをご紹介しようと・・・。同時に、あわよくば先輩方に「正しい解釈」を教えて頂きたい、という主旨でございます(汗)。
枕もそこそこに・・・乞、逆伝授!


ここんとこ僕の辞書に 事件という文字がない
F               B♭     C  Dm          E♭       

スバ ラシイことだ ♪
B♭  C         F      B♭ C

スーツにゆでたまごの
F                B♭    C

人生はコピーだが ワイフは美しい ♪
Dm     E♭           B♭ C      F

冒頭のAメロ歌詞部からまず僕の頭に浮かんだ主人公像は、ごくごく普通の「勤め人」。
普通に家庭を持ち、平凡ながらそれなりに充実した毎日を送っている中年男性の日常・・・かと思いきや。
Bメロに入ると

シア ワセと退屈は うら おもてだなんて
B♭  C        F         B♭  C             Dm

夢  の見かた忘れた
B♭  C           F     Am7(onE)

幼  稚な    奴等の いいぐさだ ♪
Dm   Dm7(onC)  B♭        C

何か様子がおかしい・・・主人公はそんな平凡な日常に違和感を覚えているようです。
そしてサビでは

さやに銀のナイフ そっとおさめて僕も
Fm  E♭6  B♭     Fm     E♭6     B♭

タブロイドの陰に つぶやきを隠そう ♪
Fm E♭6    B♭   Fm   E♭6    B♭

硬質でぎこちない「衝動」が描かれます。
そして唐突に、「恋がしたいな」のタイトルフレーズを隠れるようにしてつぶやく主人公。
これは一体・・・?

僕はアルバム購入後しばらくの間この曲に強く惹かれつつも、サビの最後に登場する「恋がしたいな」というキメのフレーズがそれまでのAメロ、Bメロからの流れと結びけられず、歌詞解釈に悶々としていたものでした。
これはつまり、幸せなんだけど退屈な日常の裏で、「人生を変えたい」と密かな願望を持っている、という感じなのかな。でも何か釈然としないな、と・・・。

それが、「あっ、そうか!」とスッと腑におちたのが、このアルバムからタイトルチューンの「sur←」の考察記事を書いた直後のことでした。
とは言っても、例によって僕なりの「深読み」(邪推とも言う)です。みなさまにおかれましては、ここからは「こんな解釈があるのか」という感じで、もの珍しさで読んで頂ければと思います(汗)。

覚さんって、絶対SF小説を読む人だと思うんですね。
何故なら、アルバム1曲目「sur←」の中に「ニューロマンサー」というフレーズが登場するから。
これは80年代末から90年代にかけてSF界を席巻し、今も多くのフォロワーを輩出しているニュー・ジャンル『サイバーパンク』の元祖とも言われる、ウィリアム・ギブスンの名作『ニューロマンサー』をオマージュしているものと思われます。
とは言え、ロックよりも先にSF小説に嵌っていた僕はギブスンの『ニューロマンサー』を読んだことがありましたが、このフレーズに「?」となったジュリーファンはきっと多かったのかな。

一方「恋がしたいな」の歌詞全体に「?」を抱えていた僕とすれば、同じ覚さん作詞作品である「sur←」の「ニューロマンサー」に倣って「SF」のキーワードでこの詞を読み解けるかもしれない、と考えてみました。
「分からない」言葉はどれだ?と探してまず着目したのが、1番Aメロの「人生はコピーだが」なる表現です。
思い当たったのが、「これは、クローン・アンドロイドの物語ではないだろうか」という。

遠い未来の話なんでしょうけど、「複製人間」が普通の人と同じように暮らし、その生をまっとうしてゆく時代がいつか来るのかもしれません。「恋がしたいな」はそんな世界をさらにSF的におし進めた物語。
主人公は、ランダムに選ばれた「誰か」の人生をそのままなぞって生きているクローン・アンドロイドの一人。彼等の「人生」は試験的に政府機関の監視を受け、ゴシップ雑誌からも興味本位に情報開示されています(もうひとつのキーワード「タブロイド」からの連想)。
クローン本人は「感情」こそあれ生き方を自分で選べる立場にはなく、ただ誰かが以前辿った道をそのまま歩いているだけ。特にその人生に不満があるわけではないけれど、ふと、この決められたルートを逸脱する「個」の衝動に駆られる主人公。
どうすれば自分は変われるんだろう。

「恋がしたいな」

うん、これはロバート・シルヴァーバーグあたりが書きそうなストーリだぞ!
いかがでしょうか。やっぱり飛躍が過ぎるかな?

キーワードはさらにもうひとつ・・・2番に「回転ドア」というフレーズが出てきますよね。
日本SF作家のレジェンドの1人である半村良さんに『回転扉』という作品があります。ごくごく平凡な毎日を送っていたある兄弟が、亡くなった父親と瓜二つの男と出逢ってから突然、事業など何もかもトントン拍子にうまく事が運ぶようになり生活が劇変するのですが実は・・・という話で、ひとつにはその「劇変」を象徴する言葉の意味含めてタイトルが『回転扉』。
僕は覚さんが使った「回転ドア」に同じイメージを重ねます。例え解釈自体は強引としても、覚さんの「恋がしたいな」が「コピーの日々」からの変化、打破を求める物語であることは言えるでしょう。

ただ、最終的に主人公が恋をしたのか、「恋し方」が分からなくて苦悩したんじゃないか・・・などと、僕はそんなところまで考えてしまっているんですけどね・・・。
いやいや、得意の邪推を長々と失礼しました。

それではここで、覚さんが大いにインスピレーションをかき立てられたであろう吉田光さんのメロディーについても書いておきませんとね。
特徴的、個性的な曲です。こういう曲だからこそ、覚さんのあの歌詞が載ったのか、とも思います。

吉田さんと言えば、単に「ハード」にとどまらず、プログレであったり、オルタナであったり、アフターパンク寄りのゴシック・ロックであったり・・・阿久=大野時代とはまた違うヴィジュアル、構想力に秀でた「ギンギンのジュリー」を体現してくれるド派手なロック・ナンバーの数々をまず思い出しますよね。
僕が吉田さんのジュリー提供曲の中で最も好きな「Shangri-la」は正にそんなナンバーですが、2番目に好きなこの「恋がしたいな」は幾多ある吉田さん作曲のジュリー・ナンバーとしては「静かなる野心作、異色作」といった位置づけになりましょう。

吉田さんの曲はどれも、小節割りからコード進行から「ひと筋縄ではいかない」高度に練りこまれた作り込みが最大の個性。
その点、「恋がしたいな」はド派手な一連のロック・ナンバー以上に凄いんですよ。こんなにポップで行儀の良い曲なのに、紐解けば特級の変化球であり、ジュリーのヴォーカルが楽々とそれに応えている、という二重の驚きに目を見張ることになります。

最大の特徴はサビ部。
ヘ長調からヘ短調の転調です。これは「同主音による近親移調」で、これまで「追憶」「涙色の空」などの数曲のジュリー・ナンバー考察記事で触れたことがあります。ただし、それらはすべて短調でAメロが始まり、サビで明るい長調に転ずるというものでした。
「恋がしたいな」の場合は逆。長調で始まった曲がサビで哀愁を纏う短調へと一転するのです。

実は邦楽で採り入れられる「同主音による近親移調」はそのほとんどが「追憶」のような「短調から長調」のパターンです。もちろん例外も多くありますが、比率とすれば相当偏ってはいます。
これは長年個人的に「不思議だなぁ」と考えていたこと。ある意味、国民性なのでしょうかねぇ。

洋楽に目を向ければ、比率は半々くらいでしょうか。
例えばビートルズ。「同主音による近親移調」を用いた曲は数多く挙げられる中、「短調→長調」は「今日の誓い」「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」「アイ・ミー・マイン」(いずれもイ短調からイ長調)。一方「長調→短調」だと「ノルウェーの森」「フール・オン・ザ・ヒル」(いずれもニ長調からニ短調)、「ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア」(ト長調からト短調)と、みなさまご存知であろう有名な曲が次々に頭に出てきますし、ポール・マッカートニーのソロになると圧倒的に「長調→短調」の比率が上がって、「ワンス・アポン・ア・ロング・アゴー」「ラヴリエスト・シング」「ビューティフル・ナイト」など。
ビリー・ジョエルなんかも「プレッシャー」「レニングラード」といった「長調→短調」パターンの曲の方が先に思い当たるくらいです。
これをして、「恋がしたいな」に吉田光さんの「洋楽嗜好」を見てとることはできると思います。

また、Aメロが1回し目と2回し目で微妙に進行、メロディーを変えてくるという手法も吉田さんならでは。これは他の吉田さん作曲ジュリー・ナンバーにも見られる特色で、とにかく細部の煮詰め方が半端ないのですね。
「一筋縄ではいかない」・・・でも、最高にポップに聴こえます。何より、淡々としつつも優しげな雰囲気があるじゃないですか。素晴らしい名曲だと思います。

ジュリーの、何気ない中にふと色気を見せるクールな歌い方は、90年代独特のものかな。
かと言ってアルバム全編そうではなくて、むしろ「恋がしたいな」は唯一無二ですよね。
他収録曲には「時計/夏がいく」のような歌い方もあれば、「ZA ZA ZA」があり「あんじょうやりや」のような歌もあり・・・とんでもないヴォーカル・アルバムですよ。
ジュリー、セルフ・プロデュース時代の幕開けにふさわしい名盤です。

僕はこれまでこのアルバムからは「緑色の部屋」「時計/夏がいく」「さよならを待たせて」「あんじょうやりや」「君が嫁いだ景色」「銀の骨」と、半分以上の6曲を生のLIVEで体感できています。
『ジュリー祭り』デビューの僕からすると、『sur←』は2007年までのオリジナル・アルバムの中では特にセットリスト入り率の高い1枚、という印象なのです。
残された4曲の中、「ZA ZA ZA」そしてこの「恋がしたいな」の2曲については、いずれ聴く機会があるのでは?と期待していますが・・・さて実現するでしょうか。


それでは、オマケです!
今日は、福岡の先輩からお預かりしている資料の中から『BRUTUS』1996年2月1日号。
この時点でジュリーの最新アルバムは前年95年にリリースされていた『sur←』で、DVD『Zuzusongs』と共に記事中で紹介されていますよ~。


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「Don't Look Back In Anger」なる踊り文句はなかなか意味深です。これが単に「Look Back In Anger」だとよく聞く言葉で、例えばデヴィッド・ボウイにもそのままのタイトルの曲があります(79年リリースのアルバム『ロジャー』収録、邦題は「怒りをこめてふり返れ)。
このジュリーの記事はそこに「Don't」がついているわけですね。どういう意味になるのかなぁ。


・・・ということで。
新譜リリースまではだいたいこのくらいのペースでビッシビシ更新していきます。
今は、その期間に「書きたい」と意欲を持っている曲達を1枚のCDに纏めて通勤や勤務内移動の時間に聴いています。本当に、どれもこれも名曲ばかりです。

みなさまのご贔屓の曲がその中に1曲でも入っていると良いのですが・・・。
次回は80年代、絶品のバラードを採り上げる予定です。どうぞお楽しみに!

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2017年2月10日 (金)

沢田研二 「何を失くしてもかまわない」

from『チャコール・グレイの肖像』、1976

Tyakoruglay

1. ジョセフィーヌのために
2. 夜の河を渡る前に
3. 何を失くしてもかまわない
4. コバルトの季節の中で
5. 桃いろの旅行者
6. 片腕の賭博師
7. ヘヴィーだね
8. ロ・メロメロ
9. 影絵
10. あのままだよ

---------------------

怒涛のペースで更新しているので、読んでくださるみなさまに大変な労力をおかけしているのではないかと思いますが(汗)、今日も張り切ってまいります。
みなさまのご自由にナナメ読みして頂ければ・・・。
更新頻度が高いぶん、なるべくコンパクトに書くことは心がけますので!

ということで枕は短めに・・・今日は、アルバム『チャコール・グレイの肖像』から「何を失くしてもかまわない」を採り上げたいと思います。

僕らは今、「全編ジュリー作詞」の新譜を毎年聴けるというとても幸せな状況にありますが、「全編ジュリーの作曲」ということになると、この76年リリースのアルバムまで遡らなければならないんですよね。
ジュリーの作曲のみならず、豪華な作詞陣による抒情性も、そして演奏、アレンジについても驚くほどにクオリティーの高い大名盤です。

僕がこのアルバムで最も好きな曲は、70年代和製グラム・ロックの最高傑作とも言える「夜の河を渡る前に」。僅差で続くのが「桃いろの旅行者」です。
では3番手は?
これが難しい。どの曲も大好きだし何かしら傑出したところがあって・・・決められません。
ただ、ジュリーの持つ「清潔さ」「生真面目さ」がそのまま自作のメロディーや藤公之介さんの詞、バックの演奏にまで反映されていること、ジュリーの当時の稀有な美声だけではない、楽曲全体の「美しさ」という点で、「何を失くしてもかまわない」は特に素晴らしい1曲ではないでしょうか。
今日は「ジュリー50周年」を僕なりにしみじみと考えつつ、妄想も織り交ぜつつ(汗)・・・伝授です!


「何を失くしてもかまわない」を「とても悲しい歌」だと思っているかたは多いのではないでしょうか。
それは確かにそうなんです。切なくなるメロディー、歌詞ですよね。

そもそも、50年の歴史の中でジュリー自身による作曲作品は数あれど、比率とすればジュリーは圧倒的に長調で作曲することの方が多いです。
ところが、『チャコール・グレイの肖像』では、「何を失くしてもかまわない」「桃いろの旅行者」「ヘヴィーだね」「影絵」「あのままだよ」と、収録曲の半分が短調。それだけでも異例のアルバムと言えます。
これは、当時のジュリーの環境、状況が色濃く反映されたと考えるより他ありません。
76年のジュリーにどんなことがあったのかを僕が知ったのは『ジュリー祭り』以降のことでした。
”第一次ジュリー堕ち期”のポリドールのアルバム大人買いの頃は何も知らず・・・僕は本当にそんなことすら分からないまま『チャコール・グレイの肖像』を聴いていたんですよねぇ。

一方リアルタイムでこのアルバムを聴いた先輩方は、短調のバラードである「何を失くしてもかまわない」で、その美しさに感動しつつも、胸をしめつけられるような感覚があったのではないでしょうか。

でも、ちょっと待って下さい。
「何を失くしてもかまわない」って、本当にそんなに悲しい歌でしょうか。悲しい物語なのでしょうか。
例えば(可能性はほぼゼロに近いでしょうけど)今のジュリーがこの曲を歌っているシーンを想像してみましょう。どんなふうに聴こえるでしょうか。(引用)

がむしゃらに 走り続けていると
   Em                  Bm

まわりの景色が  わからない
G                Am    B7        Em

まして後を 振り返ることなど
G          D  Am                G   B7

思いもよらないことだった ♪
   Em       G    B7        Em

唐突ですが、僕は男としては歩くのが遅い方です。
先述した先輩とは「歩く速度」の相性がすごく良くて、もうひとりの先輩とカミさんと4人でお会いした時に街をブラブラと散歩していると、いつの間にか完全に2対2に分かれてしまっていることがよくあります。2人して相当ゆっくり歩いているのでしょうな~。
逆に、こちらもいつも仲良くしてくださる先輩で「女性でここまで」と思うほど速いスピードで颯爽と歩くかたもいらっしゃいます。僕は先輩に合わせて頑張って速く歩きますが、それは苦ではありません。いつもより早く歩いているので、景色がいつもと違って見えます。それもまた楽しいものです。
あと、完全に余談ながら、YOKO君は僕以上に歩くのが遅いです。彼はどうやら同時に2つのことをするのが苦手なタイプのようで、おしゃべりしながらだと信じられないほどゆっくり歩きます(笑)。

まぁ僕やYOKO君の例は置いとくとして、一般的には女性より男性の方が歩幅も広いし歩くのが速いですよね。彼氏の歩くスピードについていくのが大変、という女性の話は、現実でもよく聞くことがあります。

「何を失くしてもかまわない」では、男女が共に生きてきた道のりを「歩く速度の違い」に例えて男性視点で語っています。
主人公の男性は凄まじい猛スピードで人生を駆けてきたようで、ふと「彼女は後ろから必死でついてきているんだけど、自分があまりに速いのでいつの間にか2人の間に途方もない距離ができていた」ことに気がつくわけですね。
ジュリーの50年、その1年目、2年目からずっと応援してきた先輩方は実感していらっしゃると思います。
ジュリーはとてつもないスピードでどんどん先に進んで、それこそがむしゃらに走り続けていて・・・背中を見失わないように追いかけることは、楽しいながらもとても大変だったのではないですか?

対して、『ジュリー祭り』からジュリーを追いかけ始めた僕の距離感覚はどうかと言うと・・・。
もちろん、ジュリーは僕より遥か先を行っています。その時その時の「時代」を見つめながら、先のことを考えて歌い続けていますね。
でも、遠くに辛うじて見えるジュリーの背中は、それ以上遠ざかっていく感じはしません。離れて歩いていても、その歩幅自体はファンと同じである気がします。
ジュリーがいつからそんな感じになっていったのか僕には分からないのですが、先輩方ならなんとなく時期を思い浮かべることができるのかもしれませんね。やっぱり、セルフ・プロデュースでアルバムを作り始めた頃なのかな。或いは2001年あたりから?
それとも、もっと最近になってからでしょうか。

そして今年、50周年のメモリアル・イヤー。
夏からの全国ツアーについて「デビューから50年間のシングルの中から50曲を選んで歌う」と宣言してくれたジュリー。これはもう、新しいファンも新規ファンもみんなが「ジュリーの1年目」に立ち返り
「僕(ジュリー)と一緒に50年をおさらいしてみよう」
というステージになること、間違いありません。

ここで待っていよう 追いつくのを
Bm                          Am       Em

それからにしよう 先のことは
       Bm               Am       D7

何を失くしてもかまわない
   Em       G   F#7       B7

あなたの心をとり戻せるなら ♪
      Am   Em      D          Em

お正月コンサートが終わった直後は毎年そうですが、今ジュリーファンは深刻な「じゅり枯れ」の時期。
でも、夏の全国ツアーがはじまるまでの間を「遠くからずっとジュリーを追いかけていたみんなを、ジュリーが自分の横に追いつくまで待ってくれている時間」だと考えてみてはどうでしょう。
これはボ~ッとしてはいられませんよ!
そして

「それからにしよう、先のことは♪」

僕は直接聞いていませんが、お正月のMCでジュリーは「70を超えたらみんなを楽しませることを考えている」と言ってくれたそうですね。
50周年を区切りとして、その先はジュリーもファンも同じ歩幅で、並んでゆっくりと歩いてゆく・・・ジュリーはそんな歌人生を考えているのかもしれません。

そんな妄想に耽りながら「何を失くしてもかまわない」を聴いていると、この歌は短調のバラードでありながら全然切なくはなくて、心躍るジュリーとファンとの相思相愛の歌のようにも聴こえてきます。
「何を失くしても・・・」とは確かに悲愴な印象を受けるタイトル・フレーズなんだけど、リリースから41年経った今それを、「大切な人、大切なもの以外はもういらない」という素敵な断捨離ソングとして解釈するのもアリではないでしょうか。
これが、今回僕が「何を失くしてもかまわない」を採り上げて書きたかったことです。
いかがでしょうか?


さて、これだけで記事を終えてもナンなので、この曲の素晴らしい演奏について少し書いておきましょう。
左右にミックスを分けた2本のエレキギターによるツイン・リード・アレンジの感触から、これは井上バンドの演奏ではないかと僕は考えています。
『チャコール・グレイの肖像』は各曲ごとの演奏クレジット明記はないのですが、昨年書いた「桃いろの旅行者」の記事に、「堯之さんか大野さんがアレンジを担当している曲が井上バンドで、船山さんアレンジの曲が羽田健太郎さん、後藤次利さん達の演奏と考えるのが自然」という、ねこ仮面様からの目からウロコなコメントを頂きました。
「何を失くしてもかまわない」は堯之さんのアレンジですから、そのお言葉とも合致します。

初聴の印象に反して、意外にトラック数の多い曲です。
例えば鍵盤は、左サイドにミックスされたピアノの他、センターではシンセ・ストリングス、2番から登場するバンドネオンのような音色のキーボードの計3トラック。
ギターは左右のエレキギターに加え、センターにアコギ、スティールの計4トラックです。
左サイドのエレキは要所要所で右サイドのメイン・リードとハモるセカンド・リードとなっています。こういう仕上げ方はいかにも井上バンド、だと思うんですよ。

全トラックの中で僕が最も惹かれるのは、間奏の最後の最後、2番のジュリーの歌が始まる直前に美しくヒラヒラと3連符で舞うピアノのフレーズです。
以前「櫻舗道」の記事で触れた「桜アレンジ」とよく似ていますが、アルバムが『チャコール・グレイの肖像』ですから、ここは「枯葉アレンジ」と呼びたいところ。
まるで「わくらば」(←恥ずかしながらピーの「一枚の写真」を聴くまで知らなかった言葉。もう覚えました!)が風に舞い飛んでいるかのようなピアノは、この曲、このアルバムにピッタリの名演だと思います。


それでは、オマケです!
今日は、Mママ様からお預かりしている切り抜き資料から、『沢田研二/イメージの世界』という特集記事を。

お題曲とは少し年が違うのですが、ジュリーがラジオ番組『沢田研二の愛を求めて』の中で藤公之介さんの詩を朗読したことがあって、それを題材にジュリーのフォトと共に構成した内容となっています。


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僕は『沢田研二の愛を求めて』なるラジオ番組についてまったく知りませんし、そもそもこの記事が何の雑誌に掲載されていたのかも分かっていません。
サイズ、紙質から考えると『女学生の友』でしょうか。
先輩方からの伝授、お待ちしています。特にラジオ番組については知りたいなぁ。
特番だったのか、それともある程度継続してオンエアされた番組があったのか・・・。


では次回更新は、90年代の名曲を予定しています。
いくらジュリーが夏からのツアーまでの間「ここで待っていよう、追いつくのを♪」と言ってくれている(妄想ですけどね)としても、新規ファンの僕は先輩方と違って、相当ダッシュで駆けなければジュリーの背中には追いつきません。そりゃあ、とんでもない距離ですよ。

リアルタイムでは知らなかったジュリーの名曲達をどんどん採り上げて、ひとまずがむしゃらにジュリーの背中を追いかけてみようと思っています。
引き続き、更新頑張ります!

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2017年2月 7日 (火)

沢田研二 「そばにいたい」

from『S/T/R/I/P/P/E/R』、1981

Stripper

1. オーバチュア
2. ス・ト・リ・ッ・パ・-
3. BYE BYE HANDY LOVE
4. そばにいたい
5. DIRTY WORK
6. バイバイジェラシー
7. 想い出のアニー・ローリー
8. FOXY FOX
9. テーブル4の女
10. 渚のラブレター
11. テレフォン
12. シャワー
13. バタフライ・ムーン

--------------------

2日遅れではありますが。
ジュリー、そしてザ・タイガース・・・デビュー50周年おめでとうございます!

当時、生まれて1ケ月ちょっとだった僕はデビュー・シングル『僕のマリー』リリースの記憶をもちろんリアルタイムでは持ちませんが、その歴史的第一歩はしっかりと後追いで勉強し胸に刻んでいます。
ちょうどこの日付をとりまくようにして、映画『ヤマトより愛をこめて2202』のニュース(2つ目のPVに感涙)や、マイク越谷さんのLIVE評など、ジュリーファンにとって嬉しい情報が次々に届けられていますね。
遂にジュリーの「50周年」イヤーが始まった・・・そんな感じです。澤會さんHPトップのロゴを見ると、心躍り高まってくるものがありますな~。

ジュリーは1967年からここまで50年間、まったく休むことなく歌い続けてきました。
変わりなく、いつものように続けること。積み重なって半世紀、50年・・・本当に凄いことです。

夏からの全国ツアーのセットリストにジュリーが選ぶ「50曲」、気になるなぁ。
先日も先輩と食事をしながら
「タイガースが4曲って、かなり限定的ですよねぇ」
と話しながら色々と予想しましたが、先日、星のかけら様の御記事を拝見して「あっ!」と思いました。
そうか!50年間をそれぞれ1年1曲ずつ、ということにしたら、タイガースは4曲になるんだ・・・確かにそういうアプローチは考えられますね。
でもそれでいくと、78年なんて一体どうするんだろう?1曲に絞れる?逆にリリースの無かった2011年は?
・・・と、そんなふうにあれこれ考えるだけで楽しいのです。今からツアーが待ち遠しいですね。

そんな中、拙ブログでは3月11日の新譜リリースまでの間、怒涛の更新期間に突入いたします!

色々考えたんですけど、やはりここは「自分が特に大好きなジュリー・ナンバー」をお題とした考察記事をどんどん書いてゆくことにしました。
「大好き」の気持ちがあれば、お題が激しいロックだろうが哀しいバラードだろうが、どんなテーマの曲だろうがそこに邪気の入り込む隙間が無くなります。
お正月の「頑張れ」エールに、ジュリーからファンへの「好き」の気持ちを受け取った先輩方も多いと思います。エールって究極にはその気持ちに尽きると思いますし、僕も及ばずながらジュリーを見倣って「今、頑張っている人」のために頑張っていきます。

第1回の今日は、アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』から「そばにいたい」を選びました。
いつも仲良くしてくださる、大好きな先輩がいます。
その先輩とは別のもうひとりの先輩とカミさんと4人で食事をする機会が多いのですが、その際もっぱら喋り倒しているのは僕ともうひとりの先輩で(汗)、その先輩はとても聞き上手なものですから、特にどの曲が好き、と仰っているのを伺った記憶がほとんどありません。でも確か一度だけ、この「そばにいたい」について「好きな歌」と仰っていたように思います。

もちろん僕も大好きな曲で、特に「3連のバラード」とくればジュリー・ヴォーカルの素晴らしさも明快。いずれ書こう書こうと思いつつここまできてしまいました。
「50周年」をひと言で語ることなどできませんが、ひとつには「3連ロッカ・バラードを歌うジュリー」に魅せられ続けたファンの歴史がそこにあるでしょう。

文量はいくらか短めに、とにかくどんどん更新する月間です。頑張って書いていきます。伝授!



Stripper04

Sobaniitai1

↑ 本日の参考スコアは当然の『ス・ト・リ・ッ・パ・-/沢田研二楽譜集』でございます。


昨年、BSで放映されていたエルヴィス・プレスリーの特集番組をカミさんが録画してくれて、じっくりと鑑賞したことがありました。
僕はこれまで何故かプレスリーをまともに聴いたことがなくて、有名な曲をいくつか知っている、という程度でした。ジュリーのact『ELVIS PRESLEY』で初めて知った曲もあったくらいで。

ですから、「どれどれ」という軽い感じで観始めたんですけど、これが思いもかけずグイグイと引き込まれていきましてね。
初期のTVショー出演映像と、70年代のLIVEを交互に流す、という番組構成で、僕が次第に身を乗り出していったのは初期のプレスリーの映像。
歌、立ち振る舞い、圧倒的なオーラ。「なんだこれは!」と衝撃を受けました。
ショーの進行司会者、コーラスメンバー、バンドメンバー・・・画面にはたくさんの人が同時に映るのですが、エルヴィス1人だけ別次元の人なんですよ。これは大スターにならない方がおかしいです。
ジュリーのデビュー当時もそんな感じだったのではないですか、先輩方?

そんなわけで遅まきながらプレスリーの音源を勉強中の僕ですが、YOKO君にその話をしたら
「エルヴィスに似ていないものはロックではない」
というブライアン・セッツァー(ストレイ・キャッツ)の名言があることを教えてくれました。
極論と言えばそうなんですが、あの番組を観た後で聞くと納得の名言。ジョン・レノンの名言「ロックンロールだけがリアルで、他のものはアンリアル」と、発想は似ていると思いました。
どんなロックもどこかしらプレスリーに繋がっている・・・だからこそロックにはいつまでも「不良少年のイノセンス」が息づいているのでしょう。

では、膨大な数のジュリー・ナンバーの中で特に強くプレスリーを想起させる曲と言えばどれでしょうか。
ロックンロール、ロカビリー系だと「MAYBE TONIGHT」、次いで「想い出のアニー・ローリー」。
しゃくりあげるようなファルセットを駆使した挑発的なヴォーカルは、誰にでもできる歌い方ではありません。ジュリーには「エルヴィスに似ている」ロックの適性、資質があったということですね。
そして3連ロッカ・バラード系だと・・・1番に挙げられるのが今日のお題「そばにいたい」ではないでしょうか(続くのが「無限のタブロー」ですが、これはそもそもcobaさんがactでプレスリーをテーマに書き下ろした曲なのですから当然と言えば当然)。
この点では「おまえがパラダイス」「渚のラブレター」よりも、「そばにいたい」というのがポイント。それがアルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』の個性でもあるでしょう。

ジュリーのヴォーカルの素晴らしさは、この曲中4度登場する「Please, Please♪」に尽きます。
1度目と2度目はほぼ同じながら、3度目、4度目は歌のニュアンス、タイミングが全然違いますよね。特に最後の「さっきまでより1小節ぶん長く粘ってます」という4度目についてはバンドとの呼吸含めて絶品という他なく、リリース当時はここでジュリーにヤラレてしまう先輩方が続出したのではないでしょうか。
粘りに粘った余韻か、直後の「そばにいたい♪」の最初の「い」に思わず気合が入るジュリー。
バンドの音の入りと気持ちがシンクロして、小節の頭を強く発声したのでしょう。
「1発録り」ならではのヴォーカル、素晴らしい!

先に、「不良少年のイノセンス」という話をしました。
アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』では三浦徳子さんがズバリそんなコンセプトをつぎ込んでいるようです。
「そばにいたい」の主人公であるヤンチャな不良少年(とは言っても20代後半くらいのイメージかな)は、ちょっと恋人に冷たい仕打ちをしちゃったんでしょうね。本命の彼女を放って、仲間達とガールハント(死語)に興じていたのでしょうか。
散々遊び倒してから帰宅して1人部屋にいると、おや、なんだか心に穴が開いたような?
「ひと言フォローしてから寝るか~」と彼女に電話をかけても出てくれません。ヤバイ、怒らせたっぽいぞ、と焦った瞬間から、普段はワルでならし怖いものナシ!な主人公がみるみる「弱気・懇願モード」に。挙句、彼女は誰かと一緒にこの夜を過ごしているんじゃないか、などと妄想してしまいます。

結局自分にやましいところがあるからそんなふうに考えるわけで、男なんて現実世界においてもおおむねその程度の生き物ではありますが、この曲のように「普段は自分の弱さなど微塵も見せない」イイ男がたった1人の彼女に対してだけはグダグダになってしまう、というパターンが古き良きロック・ミュージックの定番。ひいては「エルヴィスに似ている」ことにも繋がります。
ジュリーは難なくそれを演じられるだけの声と容姿を持っている上、「普段は完璧に強い男」というのはジュリーの「地」ではないでしょうか。本人はそう思っていなくても・・・傍から見れば強靭な「男」ですよね。
世の女性はそんな男が見せる「弱気」に惚れちゃうみたい・・・それが「そばにいたい」という曲です。

Please, Please そばにいたい 夜はせつなくて
                                F                           B♭

枕を濡らし オマエの  名前を叫ぶよ
Bdim             F    Dm  Gm   C7      Am  A♭m

名前を叫ぶよ ♪
Gm  C7      F  Dm

『ス・ト・リ・ッ・パ・-/沢田研二楽譜集』では、サビのメロディーの肝と言えるディミニッシュの採譜を割愛しているのが惜しいですが、歌、詞、メロディーいずれにしても強烈なのはこの最後のサビ部です。
みなさま、当時は「私のために枕を涙で濡らす」ジュリーを想像したりしていましたか?
ジュリワンの「涙がこぼれちゃう」の時は、そんな先輩がいらっしゃいましたけど?(笑)。

さて、昨年の全国ツアーで「渚のラブレター」が歌われたことにより、銀次さんから思わぬ「製作秘話」が少しだけ明らかにされました。
そのお言葉から推測できることがいくつかあります。アルバム『S/T/R/P/P/E/R』当時のレコーディングは基本的に「1発録り」ですが、「ミドルエイト」(おもに60年代のロックで言う「間奏8小節」の意。銀次さんはこうした基本的なロックの手法に深い愛着と敬意を持っていらっしゃるようで、プロデュースしたジュリーの多くの作品でキッチリと「8小節のソロ」を採り入れることを心がけていらっしゃったようです。ご自身作曲の「I'LL BE ON MY WAY」はそのお手本のような曲でした)のソロは後入れであった、というのもそのひとつです。

ただしそれは「追加トラック」が存在する曲に限っての話。「そばにいたい」のミドルエイトは西平さんのピアノをフィーチャーしていますが、これは最初から継続して鳴っているピアノのパートと同一のトラックですから、「1発録り」の臨場感溢れるソロとなっています。
フレージングは「歌メロ崩し」の典型パターンながら、押し引きが絶妙でグイグイ引き込まれますね。
また西平さんはジュリーのヴォーカル部についても、Aメロは繊細な3連符のコード弾き、Bメロはヴォーカルを追いかけるゴージャスな裏メロ、といった感じでガラリと表情を変えてきます。これは名演です!

アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』からは、「渚のラブレター」「ス・ト・リ・ッ・パ・-」のジュリー作曲の2つのナンバーがシングルとなりましたが、製作段階では「佐野元春さんか小田裕一郎さんの曲をシングルに」との案があったと聞いたことがあります。
佐野さんなら「BYE BYE HANDY LOVE」だけど、小田さんはどっちだろう?
やっぱり「DIRTY WORK」の方なのかな。でも、「おまえがパラダイス」→「渚のラブレター」→「そばにいたい」という怒涛の「3連ロッカ・バラード、シングル3連発」も面白かったかもしれませんね。

「そばにいたい」は、この先のLIVEでは体感することのない「隠れた名曲」なのかなぁとは思います。
でも・・・「70を超えたらみなさんを楽しませることを色々と考えている」とジュリーはお正月に語ってくれたそうですから、ファンとしてはいつの日か「シングル以外のアルバム収録曲のみで構成されたセットリスト」なんてのも期待してしまいます。
その時は是非この曲を採り上げて欲しいですね。


それでは、オマケです!
福岡の先輩からお預かりしている、『ヤング』81年9月号から数枚どうぞ~。

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さらに、オマケのオマケを1枚。こちらは同い年の男性のJ友さんからお預かりしている切り抜きです。

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では、次回以降も僕自身が大好きなジュリー・ナンバーを採り上げ、勢いに乗ってできる限りのハイペースで更新を頑張っていきます。

それぞれのお題曲はリリース時期をランダムに駆け回ることになりますが、ジュリーの偉大な「50周年」を、ひとまずは各時代の「シングル以外の世間的には知られていない名曲」の考察から振り返りたいと思います。
(もちろん全国ツアーが近くなったら、”恒例・全然当たらないセットリスト予想”シリーズにてシングルの名曲もいくつか書きますよ!)
よろしくお願い申し上げます!

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2017年2月 4日 (土)

沢田研二 「坂道」

from『Beautiful World』、1992

Beautifulworld

1. alone
2. SOMEBODY'S CRYIN'
3. 太陽のひとりごと
4. 坂道
5. a long good-bye
6. Beautiful World
7. 懲りないスクリプト
8. SAYONARA
9. 月明かりなら眩しすぎない
10. 約束の地
11. Courage

---------------------

本館では大変ご無沙汰してしまいました。
こちらでは久々の更新なのですが・・・すみません、今日は年末年始の旅日記です。
撮った写真のぶんだけ駆け足でサッと済ませますので、ちょっとだけおつき合いくださいませ。

お題にあやかったのジュリー・ナンバーは、アルバム『Beautiful world』収録の「坂道」。
いえね、年末年始はカミさんの実家がある関西で過ごしていて、大阪で”『真田丸』関連の地巡り”をしてきまして。恥ずかしながら僕はこの歳になって初めて、大阪が「でっかい坂道の上にある街」だと知ったわけです。なるほどそれで昔は「大坂」って言ったのかぁ、と・・・ホント、今さらですけど。


出かけたのは12月31日。新幹線は大変な混雑でしたが、指定席をとっていたので楽々の移動。午前11時ちょっと過ぎに京都駅に到着、下車しました。


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↑ すっかり迎春仕様の京都駅前ロータリー舗道。

いざ向ったのは駅から歩いて5分ほどの場所にある有名ラーメン店、『第一旭』。この日は僕のワガママでここで昼食、と決めていました。

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11時20分頃にお店の前に着いたんですけど、既にもの凄い行列が。結局1時間ちょっと並んで・・・僕が満を持して注文したのは「特製ラーメン」。

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美味しかった!素晴らしい!
純粋な「醤油系」の中では生涯ベストのラーメンだったと思います。麺はストレートの中細、「ライス」を注文すると上写真の通り漬物がついてきます。

夕方にカミさんの実家に到着。カミさんの弟家族も来ていて、姪っ子達とも久々の再会。
明けて2017年・・・今回の帰省で楽しみにしていたのが、初めて食べるカミさんの実家のお雑煮です。
僕はお雑煮が大好物。各地各家庭でそれぞれ味も具も違う、というのがまた良いんですよね~。お母さんには前もって「特別なことはしないで、いつも食べているそのままのお雑煮を」とリクエストしていました。
早速、新年の朝ご飯に頂きます。


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おぉ、味噌仕立て・・・具は根菜と葱ですか~。
美味しかったです!
元旦はその後お父さんが車を出してくれて、御上神社、竜王アウトレットパークに行きましたが、とにかく凄い人と車の混雑で、少し疲れました。

翌2日はいよいよ「大坂」で『真田丸巡り』。まずは当然の大坂城から。


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城それ自体はやっぱり「作り物」感が否めませんでしたが、敷地の広さや立地感は圧倒的でしたし、何より石垣組みが素晴らしかったです。

大坂城からは徒歩でひたすら坂道を下り、「天王寺口」付近へと向かいました。


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細川忠興屋敷跡。
カミさんが「誰だっけ?」と聞くので、「三成が家康と張り合って宴を主催した時、一応顔を見せて帰ってから散々文句言ってた人」と言ったら分かったようでした。「あぁ、ガラシャの旦那か!」と。始めからそう説明すれば良かったのですな・・・。

「真田石」の三光神社を経て、いよいよ「佐助の年齢発覚の地」・・・もとい、幸村最期の地と伝わる安居神社に到着。これがまた、坂を下った地にいきなり高台があって、その頂上にこじんまりとね・・・。


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『真田丸』のあの幸村の介錯のシーンは、実際にここでロケしたのかな?

安居神社で、近くにお住いのいっけん姐さんと待ち合わせ、そこから先は近場の名所案内をしてくださいました。
『真田丸』とは関係ありませんが、そりゃあここまで来たら四天王寺も歩きませんとね。


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そして、「山」と言うより小さな「丘」って感じでしたが、茶臼山にも登ってきました。

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いっけん姐さんにとって茶臼山は、子供の頃から普通に駆け回っていた遊び場、というイメージだったそうですが、昨年いきなり『真田丸』の旗が立てられ「原風景」は一変してしまったのだとか。

「一変」と言えば、天王寺近辺の大阪っ子にとって大きかったのが、コレでしょうね~。


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あべのハルカス!
これがね、実際に近くで見上げると分かるのですが、「高くは見えない」んですよ。立地の問題かなぁ。
五重塔や大坂城が高く見えるのは、そう「魅せる」ことも計算の上、建立されているわけです。あべのハルカスはその点がちょっと残念ですかね・・・。

そんなこんなで満喫した関西の旅。疲れが出たのか帰京してから見事に風邪をひき、一度治ってまたぶり返して現在に至る・・・そんな年末年始でございました。


最後に、お題にあやかったジュリーの「坂道」についても少しだけ(汗)。

僕がムーンライダースを聴くようになったのは、大学進学で上京してからのこと。
レコードを買うのは洋楽ばかり、邦楽の方はFM雑誌を買って自分の知らないバンド、アーティストをチェックする、という日々の中でラジオで出逢った「夏の日のオーガズム」に衝撃を受けたのが最初でした。
こういう「男らしさ」ってアリなのか、と。
遡ってレコード、CDを購入し始めたのは社会人になってお金に余裕ができてからだったけど、「夏の日のオーガズム」の影響で、大学時代からラジオでエアチェックした「Kのトランク」などのムーンライダースの曲を編集してよく聴いていたものでした。

そのムーンライダースのメインライター、鈴木慶一さんがジュリーに楽曲提供。当時は話題になったでしょう。EMI繋がりだったのでしょうか。

「坂道」はいかにも鈴木さんらしい素敵な曲です。
特にジュリーのヴォーカルが最初に入ってくるAメロには何とも言えない雰囲気があって。クールなんだけど、静かに心揺さぶられるようなメロディー。

あの時君とさよならを 言わなくてよかった
      A

今にも降り出しそうな
   A

空の下 で  やっとこらえて ♪
   C#m7 Dmaj7     C#m7   Dmaj7

こういう曲がサラリと収録されているのがアルバム『Beautiful World』の強みかなぁ。

あと、「坂道」は何と言っても覚和歌子さんの詞が良いんですよね。
僕は今回の『真田丸』巡りをしながら、よし、「坂道」のお題で旅日記を書こう、と思い立ちました。
それは、『祈り歌LOVESONG特集』初日を一週間後に控えて「この覚さんの詞は今のジュリーが歌うにふさわしい!」と考えたから。歩きながら歌詞をソラで反芻していて、歌詞中に「祈り」「LOVE」という2つのフレーズが登場することに気がつき、「これは絶対歌ってくれる!」と(得意の思い込み汗)。
残念ながら時間がなくセットリスト予想シリーズには間に合いませんでしたが、「絶対歌うに決まってるんだから、”セットリストを振り返る”シリーズで書こう、と勝手に心に決めていたという(恥)。

いざ『祈り歌LOVESONG特集』が開幕し、実際のセットリストはご存知の通り。
LIVEが終わってカミさんにそんな話をしたら、「浅はかやな~」と呆れられました。
ですから今日の記事は恥をさらしているに等しいんですけど、やっぱり書いてしまいました。だってほら、フォーラムでジュリーが言ってたそうじゃないですか。


人生には3つの坂がある。上り坂、下り坂、まさか。
やぶさか、いやさかというのもある。

僕程度の人生経験では、まだまだ出てこない言葉なんですよね。
「坂道」を初めて歌った当時のジュリーはどうだったでしょうか。今の僕よりは全然若いけど、色々なことを体験して、頑張ってきたからこの透き通るような声が出て、「坂道」を表現できたのかな?

2007年お正月『ワイルドボアの平和』では、58歳(LIVE当時)のジュリーが歌う「坂道」をDVDで観ることができますが、やっぱりその時その年齢の「坂道」という歌になっている、と感じます。
この先、70代、80代のジュリーが歌う「坂道」・・・いつか生で体感できる1曲だと思っています!



ということで今日は旅日記でしたが、次回更新から”「今、頑張っている人」のために頑張るシリーズ”として、様々な時代のジュリーの名曲の考察記事を矢継ぎ早に書いていきたいと思います。

お正月のジュリーのエールの話を聞いて、僕は「頑張れ」側に立とうと決めました。今日、普段から「師」と仰ぐJ先輩にお会いして、背中も押されてきました。
3月11日リリースの新譜2曲についてはさすがにじっくり時間をかけての執筆になるかと思いますが、とりあえず次回から1ケ月ちょっとの期間は、ビッシビシ更新していきますからね。ついてきてくださいよ~。

まず第1回はエキゾティクス時代のナンバーを予定しています。お楽しみに!

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2017年1月 5日 (木)

新年のごあいさつ&ネタバレ専門別館side-Bのご案内

新年あけましておめでとうございます!

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今年の「新年眼福ショット」は、ちょうど40年前のお正月コンサート(日本劇場『沢田研二ショー』)のパンフレットから。
今年は「さよならをいう気もない」を歌ってくれるかな?


いやはや、新年のご挨拶記事の更新がずいぶん遅れてしまい申し訳ありませんでした。
予定通り年末年始は関西のカミさんの実家に帰省、『真田丸』ゆかりの地をあちこち巡ってきたのですが、疲れが出たのか、こちらに帰ってきてすぐに風邪をひいてしまい・・・今もズルズルの状態で慌ただしい年始の仕事に追われています。
なんとか8日までには治さないと・・・。

さて、新年最初の更新では毎年「今年の(ジュリーがらみの)目標」を掲げています。
ズバリ2017年の目標は
ジュリーのデビュー50周年メモリアル・ツアーに1人でも多くの友人、知人を誘う!
今年はこれにつきますね。

「2017年のジュリーのデビュー50周年ツアーは、珍しく有名シングル曲をたくさん歌うらしい」と、僕は昨年からあちらこちらに「仕込み」を入れています。
音楽仲間の友人の中には、新年のメールで「今年は沢田研二のLIVEに是非参加したい」と書いてくれた人もいたほど。通常のツアー会場に誘うのももちろんアリだけど、そうした友人達には、噂されている「武道館公演3days」のいずれかを体感して貰うのが良いんじゃないか、と今のところは考えています。
『ジュリー祭り』の時に多くの浮動票を開拓してくださった先輩方を見倣って・・・この不肖・DYNAMITE、頑張ってひと肌もふた肌も脱ぐ所存です!

まぁ、それは夏からの全国ツアーの話。
先んじてのお正月LIVE初日、『祈り歌LOVESONG特集』NHKホール公演がいよいよ迫ってきました。
今回も拙ブログでは月末のツアー終了まで
セットリスト・ネタバレ完全禁止体制
とさせて頂き、いつものようにネタバレ専門の別館

dynamite-encyclopedia(side-B)

に初日のレポートを書きます。

僕は今年もお正月はこの初日のみ1回きりの参加。
そのぶん集中して、ジュリーのデビュー50周年メモリアル・イヤーの幕開きのステージをしっかりと目と耳に焼きつけたいものです。

その後の名古屋、大阪、そしてフォーラム各会場のご感想も含め、今年もみなさまのネタバレコメントは、side-Bの方でお待ちしていますよ~。
(レポを書き始めるまでにはLIVE当日から数日かかるかもしれませんので、例によってside-Bには簡単な記事をひとつupしておきました)

今回もどうぞよろしくお願い申し上げます!

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2016年12月28日 (水)

沢田研二 「SPLEEN~六月の風にゆれて~」

from『パノラマ』、1991

Panorama

1. 失われた楽園
2. 涙が満月を曇らせる
3. SPLEEN~六月の風にゆれて~
4. 2人はランデブー
5. BACK DOORから
6. 夜明け前のセレナーデ
7. STOIC HEAVY~盗まれた記憶~
8. テキーラ・サンセット
9. 君の憂鬱さえも愛してる
10. 月の刃
11. Don't be afraid to LOVE

---------------------

2016年も残すところあと僅か。
もう冬休みのかたも、まだまだお仕事頑張るかたも、風邪などひいていませんか?

著名なミュージシャン達の訃報が相次いだ年でした。
先日も、ジョージ・マイケルが50代の若さで旅立ったというショッキングなニュースが・・・僕は彼の作品は代表曲をいくつか知っているのみですが、高校生の時にワム!の「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」が大ヒットし、よくバンド仲間で話題になっていました。
また、ジョージの有名ソロ曲のひとつである「フェイス」については、ジュリーの楽曲考察絡みでいずれこのブログで触れる機会があろうかと思います。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。

年の瀬のニュースとしては他に、10月に突如報道され全国の将棋ファンを驚かせ戸惑わせた、三浦弘行九段のいわゆる「スマホ・カンニング疑惑」が、先日第三者調査会により三浦九段の潔白を証明する形でひとまずの結論を見ました。
安堵すると同時に、日本将棋連盟の体質改善を求める一般の将棋ファンの声が高まっています。
10月の三浦九段に対する処分発表の会見ではテレビカメラを入れ、今回の決着会見ではカメラをシャットアウトするという連盟の行為は、将棋ファンから見て決して気持ちの良いものではありません。連盟は今後に重大な課題を残したと言えるでしょう。
何より、「自分だけなら耐えられるが、家族が酷い目に逢い、悔しく辛い思いをした」と語る三浦九段への公の場での謝罪、名誉回復、不当な処分期間の対局料をはじめとする金銭的な保証問題などへの明確な意向を早急に提示しない限り、将棋界に愛想を尽かすファンが多数現れかねません。
谷川会長はじめ、連盟の誠実な対応に期待します。

さて、個人的には2016年は「人生初の手術(脱出性内痔核の切除)を体験」という40代ラストイヤーならではの出来事(?)が大きかった1年でした。
今となっては「貴重な経験をしたなぁ」と思えますが、術後は本当に大変だった・・・。
幸い経過は順調で、どうやら年明けの次回診察を以て「完治」のお墨付きを頂けそう(という前回診察での先生の見立てです)。来年、再来年のジュリーのメモリアル・イヤーLIVEにお尻を気にしながら参加、などという事態は未然に防ぐことができましょう。

また、痔の手術術前検査として「一応」という感じで受けた大腸内視鏡検査でポリープ2個が見つかりその場で除去するなど、身体にも年齢相応のガタがきていることを痛感させられましたね。
先生からは定期的な検査を勧められています。確かに大腸内視鏡検査もそれなりに苦しい体験でしたが、「痔の切除術後のあの苦しみを体験した今となってはあんなの辛いうちに入らん!」と思えますので、来年秋くらいには再び検査を受けるつもり。
僕も50代に突入し、これから毎年そんなふうに身体のメンテをしながらのジュリーLIFEとなりそうです。


では本題。
今日は2016年最後の記事更新、並びにお正月LIVE『祈り歌LOVESONG特集』に向けての”恒例・全然当たらないセットリスト予想”シリーズ大トリです。
少し前まで「今年はこの曲で〆!」と決めていた洋楽カバー曲があったのですが諸事情あって延期、さぁ代わりにどの曲を採り上げるか、と散々悩みました。
せっかくなので予想シリーズ最後の1曲は的中させたいし、かと言ってストレートに超有名シングルを選ぶというのもなんだか悔しい(笑)。
ここは「大ヒットしたとは言えず、世間的にはあまり知られていないけど、ジュリーにとっては重要(と思われる)なシングル」で、なおかつ『ジュリー祭り』セットリストからは惜しくも漏れていた名曲群の中から、デビュー50周年幕開きのステージにふさわしいだろうなぁ、と夢想できるものをお題として考えてみました。

「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ」「STEPPIN' STONES」の2曲と最後まで迷いましたが、今回のご指名は、個人的に『真田丸ロス』な最近の心境と何故かシンクロしまくる名曲「SPLEEN~六月の風にゆれて」(あ、今日は『真田丸』の話題は自重しますのでご安心を笑)。
アルバム『パノラマ』から、伝授です!


『ジュリー祭り』セットリストから外れた重要なシングル、という以外に、この曲には特記しておくべき大切なポイントがあります。それは
「2012年の全国ツアー『3月8日の雲~カガヤケイノチ』セットリスト冒頭1曲目に配された曲である」
ということ。
『PRAY FOR EAST JAPAN』1作目となる『3月8日の雲』は世間ばかりか僕らジュリーファンをも驚愕させ、惑わせ、感動させ・・・何か落ち着かない、会場の雰囲気がどうなるかすらまったく予想できない、そんな状況で迎えたツアー初日。
ジュリー自身も特別な決意を以ってスタートさせたツアーだったはずですが、その1曲目に流れたのが、泰輝さんのストリングスの音色・・・「SPLEEN~六月の風にゆれて」のイントロでした。

あの時、何故ジュリーはこの曲を1曲目に選んだのでしょうか。みなさまもそうだったでしょうけど、僕も当時はその点、色々と考えましたね・・・。
やはり意識したのは2番の歌詞です。

甘やかな日々 が
G     D(onF#)   Em  Em7

永遠に過ぎ去って
       C    D       G   D7

思い出の中  に
G    D(onF#)  Em  Em7

深い雪が降る ♪
   C   D      G

あの年のジュリーファンは皆、凄まじいメッセージをジュリーの新譜から受けとり、それぞれ真剣に3.11について考えつつもどこか無力感、喪失感のようなものを胸に抱えていました。そこへきて「何もかも失くした」と歌われる曲でツアーが始まり、「大切な日常を失ってしまった」悲しみをジュリーはこの曲に託して歌ったのではないか、と僕は考えたものでした。

でもその後、別の考え方も多く持つようになりました。その中のひとつが「分別ある大人」への断罪。
そしてその中には「自分自身への非難、悔恨」も含まれていたんじゃないか、と。
まぁこれは僕自身が自分を責め立てている状況に当時直面していたので、「ジュリーだってそうかもしれない、と思いたい」部分が大きいんですけどね。

そこで、コシミハルさんの歌詞、最後の一節に目を向けてみましょう。

僕はこんなに  大人になって初めて
G       Gmaj7(onF#)  G7(onF) E7

恋をしたのに  今では何もかも失くした ♪
   Am        Ammaj7  Am7    D7         G

近年のジュリーの作詞作品を聴いているからでしょうか、僕はどうも「大人」というフレーズに過剰なまでに敏感になっているようです。
中でも今年の「un democratic love」が痛烈過ぎた・・・。

もちろんコシミハルさんが書いた「大人」に特別な「マイナス」の意は無いでしょう。とすればこの歌の「大人」のフレーズから導き出されるのは「君」の年齢ではないか、と僕はまた得意の深読み(邪推)をしました。
主人公は「分別ある」大人で「君」はまだ純粋無垢な少女、という図式です。
無垢故に未来を拒み「幸せ」に怯える少女に対して、主人公は「物の分かった大人」の分別をふりかざした挙句、相手を傷つけた結果、愛を終わらせ何もかも失ってしまった・・・「SPLEEN~六月の風にゆれて」を、そんな自責のLOVESONGと捉える見方はどうでしょうか。

いずれにしても、常に「人の考えないところを考える」ジュリーのアルバムからシングル・カットされた曲です。ジュリーがこの曲の歌詞に深い共感を持ちそれなりの意味を持たせていたと考えることは可能でしょう。
そもそも、アルバム『PANORAMA』には他にシングル向きのキャッチーなナンバーは何曲かあるじゃないですか。曲想的には「涙が満月を曇らせる」あたりがシングルだったら、と僕などはいつも考えてしまいますが、そこを敢えて「SPLEEN~六月の風にゆれて」。確かに美しいメロディーを擁する名曲なんだけど、アレンジがトリッキーですから、「シングル向き」だったかどうかには疑問が残ります。
ただ、ファンとすればそれも込んだ上で納得、というのがジュリーの凄いところなんですけどね。

では、メロディーとアレンジについて。
作曲者である小林さんのザ・ブームからの人脈を辿ると、チト河内さんや朝本浩文さんといったジュリーファンにはお馴染みのお名前に繋がります。
僕はブームのアルバムは『極東サンバ』1枚しか聴いていないんですけど、若い頃には分からなかった魅力がたくさん発見できそうなバンドですからいずれじっくり聴き込んでみたいところです。

小林さんのジュリーへの初の楽曲提供となった「SPLEEN~六月の風にゆれて」は本当に瑞々しいメロディーの名曲。単に美しいというだけでなく、「他のジュリー・ナンバーに似た曲が無い」ことが特筆さます。
これはアレンジの特異性以外に、サビの進行がそう思わせてくれるのですね。

そして二人は    優しい風の  中
G        Gmaj7(onF#)    G7(onF)  E7

淡い夢と接吻(くちづけ)ばかりの ♪
   Am  Ammaj7        Am7         D7

クリシェの胸キュン進行としては王道なのですが、これは「同じ歌手、バンドで曲数乱発できない」パターン。
聴き手に強烈な印象を残す進行だけに、歌手やバンドにとって「この1曲!」の存在となるのです。それがジュリーの場合は「SPLEEN~六月の風にゆれて」。
もちろん邦洋問わず他アーティストに同進行の「この1曲」が数多くあって、有名なところでは山崎まさよしさんの「One more time, One more chance」。
この曲が大ヒットし街で流れまくっていた時、ふと「あれっ、このサビ、よく知ってる何かの曲に似てる気がする・・・」と考えたジュリーファンの先輩方がいらっしゃったかもしれません。それはズバリ「SPLEEN~六月の風にゆれて」のことだったのですよ。

こういうアレンジだけに、僕は初めてこの曲を聴いた際「これは・・・通常のバンド体制のLIVEで再現できるものなんだろうか」と疑問を持ったものです。
しかし実際『3月8日の雲~カガヤケイノチ』ツアーで泰輝さんのシンセ・ストリングスを体感し、改めて鉄人バンドの凄さを思い知りました。
オリジナル音源にはベースが入っていませんが、きっと依知川さんが復帰した現在の編成でも新たなアレンジ解釈で楽曲再現は可能と期待しています。

ストリングス・アレンジのオマージュ元はビートルズの「エリナー・リグビー」。これは明白。


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↑ 『ビートルズ/リボルバー』バンドスコアより

どの弦パートも、確信犯的に似せていますね。
プロデューサーの建さんが楽曲を得た段階でアイデアを練り、鶴久正基さんにストリングス・アレンジを依頼した、という流れだったのかなぁ・・・


今回セットリスト予想として選んだこの曲、タイトルに”六月”とあるので、一瞬「お正月LIVEのイメージではないかなぁ」と思ったのですが、よく考えればコシミハルさんの詞は少し前に記事を書いた「午前三時のエレベーター」と同じく、1番と2番で主人公が語る季節(時期)が違うんですよね。「六月」が幸せ絶頂の時で、「何もかも失くした」と歌う2番がおそらく真冬(「雪が降る♪」のフレーズから)です。
そもそもジュリーが真夏にクリスマス・ソング(「さよならを待たせて」「溢れる涙」)を歌ったり、お正月に真夏のナンバー(「時計/夏がいく」)歌ったり、というのは後追いファンの僕でもこれまで何度も体感済み。
その意味でも、「SPLEEN~六月の風にゆれて」・・・要チェックの 1曲だと思いますよ~。


それでは、オマケです!
91年の資料のネタが尽きておりますので、若き日のジュリーの「年末っぽい」雑誌記事資料を2つほど。いずれもMママ様からお預かりしている切り抜きです。
まずは72年。


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続いて、翌73年。

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こうしてみますと、たった2年間でジュリーがとてつもない飛躍を遂げていることが一目ですねぇ・・・。


ということで。
今年も大変お世話になりました。
個人的にはなかなか大変な1年を過ごしましたが、ブログはいつもの調子で継続できています。平和な日々だからこそ・・・ありがたいことです。
来年、再来年の大きな楽しみを前に、改めて「なにげない普段の生活」に感謝。手術とその術後の苦しかった時期の、みなさまの激励にも感謝、感謝です。
来年も相変わらずの感じで、ブログ頑張ります。

年末年始はカミさんの実家に帰省、せっかくの関西なので『真田丸』ゆかりの場所を巡ってくる予定。
そのぶん新年のご挨拶が遅れるかと思いますが、ご容赦くださいますよう・・・。
それではみなさま、よいお年を!

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2016年12月20日 (火)

沢田研二 「麗しき裏切り」

from『第六感』、1998

Dairokkan

1. ホームページLOVE
2. エンジェル
3. いとしいひとがいる
4. グランドクロス
5. 等圧線
6. 夏の陽炎
7. 永遠に(Guitar Orchestra Version)
8. 麗しき裏切り
9. 風にそよいで
10. 君にだけの感情(第六感)
11. ラジカル ヒストリー

---------------------

『真田丸ロス』で傷心真っ只中の年末ではございますが・・・本日12月20日をもちまして、不肖DYNAMITEも遂に50歳となってしまいました。
幸村公よりも長い人生に踏み込むことになります。

『ジュリー祭り』レポートを機に、末席ながらいわゆる「じゅり風呂」として拙ブログを地道に続けてゆく中、先輩方から畏れ多くも「若手ジュリーファン」と呼ばれることがあり、長年確信犯的に勘違いをして参りました。
しかし!「50歳」ともなればさすがに「若手」ではありえません(涙)。まだまだ勉強中、修行中のヒヨッコの身ではありますが、そろそろ「中堅ジュリーファン」を名乗らせて頂くわけにはいきませんでしょうか(笑)。

同年齢の友人達や職場同僚は、一様に「50歳」を大きなため息と複雑な顔で迎えています。
男って、自分がどんどん「オッサン」となり体力が衰えてゆくことを認めるのが嫌なんでしょうかねぇ。
もちろん僕にもそういう感情が無いと言えば嘘になりますし、実際身体にもガタはきています。
先日「HELLO」の記事を書いた時に思ったのですが、ほぼ半年前に「君をいま抱かせてくれ」の記事を書いた時と比べて、老眼が猛烈な勢いで進行していることも実感しています(アルバム『HELLO』の歌詞カード、今はもうほとんど読めません・・・)。

でもそこはジュリーファンですから!
ジュリーなんて49歳の時点で「ジジィを意識しないと」と言ってるわけです。あれほどの偉大なスーパースターが年齢に真っ直ぐに向き合う姿勢というものは本当に凄いと思いますし。見倣っていかないと・・・。

ただし、ジュリー50歳の年の全国ツアー・ステージ(『Rock'an Tour '98』)DVDを観て「50歳?まだまだイケる!」と思い込むのは禁物。あれはジュリーだからこそ成し得ることであって、凡人の僕らは年齢相応に、身体をいたわりつつ元気な若者を引き立て、全力で残された人生に対峙してゆく・・・それしかありません。
そんな思いも新たに、ブログについてもこれまで通りコツコツと頑張っていきますよ!

さて今日もジュリーのお正月LIVE『祈り歌LOVESONG特集』に向けて、恒例”全然当たらないセットリスト予想”シリーズとして更新するわけですが、毎年この日は「ジュリーが自分と同じ年齢の年にどんな曲を歌っていたか」ということでお題を選んでいます。

ジュリーが50歳となる年にリリースしたアルバムは『第六感』。収録曲のお題記事はここまで7曲を書き終えていて、その中だと「ラジカル ヒストリー」「グランドクロス」の2曲をマークしている、と前回更新の時に書いたのですが、その後今日の記事のために日々通勤電車内でアルバムを通して聴き込んでいて、ひょっとしたらジュリーなら「風にそよいで」を採り上げるかもしれない、と考えました。
来たる2017年は、賛否どうあれ「オリーブの木」が流行語大賞にノミネートされる1年にならなくてはおかしい、と個人的には思っていますから。

まぁいずれにしても今挙げた3曲は既にお題記事を執筆済。それ以外の未執筆のアルバム収録曲4曲の中からセットリスト予想に適うものとなると・・・。

偶然なのかもしれないけど、このところのツアーでジュリーは毎回、バンド各メンバーが作曲、或いは作詞に関わった曲の中から必ず1曲は採り上げています。
その観点から今回着目したのは・・・。
今日は、昨年華麗にメンバー復帰を果たし、ベースのみならずコーラスでも大活躍している依知川さんが、そのキャリアにおいて初めてジュリーに楽曲提供した記念すべき名曲を採り上げたいと思います。
「麗しき裏切り」、伝授!


どのジュリー・ナンバーもそうだ、と言われればそうなのですが、この曲で最も強烈な印象を残すのはやはりヴォーカルだと思います。発声が独特ですよね。
ファルセットとは言えない、でも地声とも違うハスキーで艶っぽいジュリーの声。
前作『サーモスタットな夏』収録の「恋なんて呼ばない」でも一部よく似た発声が見られますが、「麗しき裏切り」の場合は全編その歌い方で通しています。

そのためこの曲はパッと聴きだととてつもなくキーの高い曲のように感じます。でも実際はさほどでもなく・・・嬰ハ短調のメロディーで最高音が高い「ミ」の音ですから、ジュリーとすれば楽々歌えるキーです(もちろん、普通の男声としては高いですよ!)。
何故ジュリーはこの発声を思いついたのでしょう?

ひとつには、朝水彼方さん(個人的には過去にジュリーへ作品提供した作詞家さんの中で一番好きなかたと言えるかもしれません)の詞の世界に合わせて、ということがあるでしょう。
タイトルにもなった「麗しき裏切り」なる朝水さんのフレーズは、真逆の意を持つ言葉を一列に繋ぐという王道のレトリック。ジュリーはその「繋がり」を官能に求めたようで、狂おしいニュアンスを強調しています。

もうひとつは、依知川さんの作ったメロディーが、例えキー自体は高くなくとも、多くの箇所で高い「ド#」の音から「ミ」の音の間を行き来すること。「全体的には高音域に偏っている」曲なのですね。
例えば最初の歌い出し

ある夜の偶  然 始まりはなり ゆき ♪
C#m      F#m  B7  C#m     F#m  B7

最初の1音が既に「曲中の最高音」からスタート。
その後もとにかく「最高音出現率」の高いメロディー(依知川さんがハイトーンの持ち主だからこそそうなったのでしょう)ですから、ジュリーも歌い方を工夫してきたのではないでしょうか。

さらに言うと、この曲が一見「メチャクチャ高く聴こえる」大きな要因として、作曲者・依知川さん自身による字ハモのコーラス・パートの効果も挙げられます。
これは本当に高い!
依知川さんはこのアルバム以降も基本的に「自分が提供したジュリー・ナンバーでは自らコーラスをとる」ことを通例としていきますが、『第六感』では自作の「麗しき裏切り」以外に泰輝さん作曲の「夏の陽炎」でもコーラスを担当。伊豆田洋之さんがレコーディング参加しているアルバムにも関わらずの抜擢ですから、初の楽曲提供となったこの年既に依知川さんは、「高いパートのコーラスを任せられる」美声の持ち主としてジュリーや制作スタッフの信頼を得ていたようです。

僕は依知川さんが(かつて)在籍していた時期のジュリーのツアーDVD作品をほぼ購入しています。そうすると、依知川さんのコーラスの進化が一目です。
もちろん依知川さんのコーラスは90年代末の最初から上手いんですが、どんどん「ジュリーが求める」スタイルに特化してゆく感じを受けるのです。
そして昨年のメンバー復帰。
改めて直にそのコーラスに触れてみると、依知川さんって高低のパートどちらもいけるようです。それだけ確実にジュリーのヴォーカルも生きてきます。
そんな依知川さんの「コーラス第1段階」・・・「麗しき裏切り」では圧倒的な高音パートが堪能できます。

『第六感』での白井さんのアレンジは、クイーンを意識した曲が多いです。「麗しき裏切り」はさほどそれが強く押し出されてはいませんが、ブライアン・メイばりの「鬼のオーヴァーダブ」はここでも見られ、ギター・トラックは全部で5つ(エレキ3、アコギ2)。
目まぐるしく入れ替わり、時にはハモリ、と繰り出されるアンサンブルは圧巻で、それでいて「軽さ」(良い意味ですよ!)も兼ね備えています。
依知川さんの作ったコード進行がキャッチーですから、その「軽さ」にGSっぽさを感じたファンも多くいらっしゃるのでは?

「依知川さん作曲、白井さんアレンジ」のコンビのジュリー・ナンバーは、依知川さんの直球に白井さんが変化球で応える仕上がりの曲が多いように思います(そのあたりについては今年執筆した「お気楽が極楽」の記事でも触れました)。
「麗しき裏切り」では何と言っても「イントロだけキーが半音高い」という白井さんのアイデアが斬新過ぎる!
ニ短調で始まったイントロが、歌メロでガクッと嬰ハ短調に下がる、という・・・こんなことを平気でやってのける白井さんも白井さんなら、何の問題もなく歌い出せてしまうジュリーもジュリーですよ(笑)。
以前にも貼ったことのある資料ですが


200017

200018

この2000年『音楽倶楽部』誌上でのインタビューで白井さんが「イントロだけ転調したり・・・」と語っている曲こそ、98年の「麗しき裏切り」なのです。

依知川さんのコーラス、そして白井さんのアレンジの効果もあり、「麗しき裏切り」レコーディング・テイクのジュリー・ヴォーカルには先述した独特の発声による「濡れた」魅力を感じます。

僕をどこまで 惑わせるの
   C#m     B   F#m     G#7

麗し き裏切りで
C#m  B    A

こんなはずじゃなかったのに
C#m         B   F#m       G#7

騙される快楽に 溺れて ♪
C#m   B    Amaj7    C#m  B  Amaja7

これが生のLIVEとなると、そこに「熱さ」が加味されるのでしょうね。是非一度体感したい、と夢想しますが果たしてお正月の実現は成るでしょうか。
今回のセットリスト予想シリーズの中では「大穴」印の「麗しき裏切り」。的中したら褒めてください!

☆    ☆    ☆

ということで、ここまでちょっと駆け足で書いてきましたが・・・最後に、お題とは全然関係ない話を。

僕は今、信じ難いほどの『真田丸ロス』に陥っています。そこで、自分の淋しさを紛らわすためだけに

『真田丸』個人的感動シーン・ベスト5

を厳選、熟考の上ここで書かせて頂きます。
興味の無いかたは、ここから先はオマケのコーナーまで読み飛ばしてくださいね・・・(汗)。
まずは5位から。

第5位
そうか・・・胃が痛むか
(片桐且元)

夜中に粗相をしてしまった秀吉の寝具を密かに取り替えんとし、その首尾のため「胃薬を分けて貰えないか」と片桐且元相手にひと芝居打った源次郎。
人の良い且元が心から同情し、ポンポンと源次郎の肩を叩きながら言った台詞です。

三谷さんの『真田丸』では、信繁(源次郎)、昌幸、信幸の主役3人以外・・これまで「戦国武将マニア」以外にはあまり知られていなかったと思われる、サイドを固めた登場人物達が本当に魅力的に描かれました。
そんな中、「賤ヶ岳七本槍」に数えられ豊臣子飼いの武将として出世コースに乗りながら、その後は「猛将」の型から逸れて次第に大坂と江戸の板ばさみとなり苦悩の道をゆくことになる且元は、司馬遼太郎さんの『城塞』を読んで僕が好きになっていた武将の1人。
小林隆さんが演じた且元は僕のイメージ通りで、この「胃薬」のシーンは特に心に残っています。

最終回では北政所と揃って登場してくれた且元。戦国の世の終わりを複雑な心境で見届けました。

第4位
俺と腕相撲しよう!
(加藤清正)

これまで世間的にはあまり好かれていたとは言えない石田三成。今回三谷さんの脚本と山本耕史さんの名演で一気に人気武将の仲間入りを果たしました。
実は僕も少年時代は三成のことを「虫の好かん奴」と思っていました。加藤清正や福島正則といった武断派に憧れていましたからね。
それが20歳の時に読んだ司馬さんの『関ヶ原』でイメージは一変し、三成は個人的に3本の指に入るほど大好きな戦国武将となりました。

ただ、史実として加藤清正との犬猿の仲は歴然で、従来の戦国ドラマではどうしても人気者・清正に対する悪役的配置となることが多かったのも事実です。
ところが三谷さんの描いた三成と清正の関係は斬新でした。仲が悪いなりに清正が常に三成を気にかけ、事あるごとになんとか胸襟を開こうとします。
普段理詰めで動く割には、追いつめられ激情すると無謀な行動に出てしまう三成。「たまってるものがあるなら吐き出しちまえよ」ということで清正が放った「俺と腕相撲しよう!」・・・何とも感動させられました。

イケズな三成は清正の差し出した腕に応えることはありませんでしたが、関ケ原の前、清正だけには決死の意を伝え豊臣の将来を託していたことが、後に本多正信を突き飛ばしてまで秀頼と家康の対面に付き添った清正の回想シーンとして描かれます。

第3位
良き策じゃ・・・
(真田昌幸)

全国の『真田丸』視聴者全員が「私の選ぶベストシーン」を挙げたとすれば、おそらく最も支持を集めるのがこのシーンではないでしょうか。

あまりに有名な「犬伏の別れ」。
しかし従来「昌幸、信繁が豊臣方につき、信幸が徳川方につく」のは昌幸が真田家の生き残りを賭けた策として描かれるのが常でした。三谷さんの『真田丸』ではそれを「信幸最大の見せ場」として用意。
「わたしは決めました・・・わたしは決めたぁっ!」からの大泉洋さん演じる信幸渾身の「策」を聞かされた父・昌幸がうつむきながら小さく発した「良き策じゃ・・・」には背筋が震えました。それまで昌幸が信幸の策を採用したことは皆無だっただけにね・・・。

また、その昌幸の台詞直前に、信繁が兄の策に驚愕しつつも目を見開いてひとつ大きく頷く、というシーンがあります。演じる堺さんの表情からは、「兄上」への信頼、尊敬が一気に溢れ出していました。
堺さん、草刈さん、大泉さん3人それぞれの迫真の熱演が生み出した、屈指の名シーンです。

第2位
源次郎さま・・・!
(きり)

最終回。
千姫を徳川陣に送り届けるべく山道を歩いている途中、きりが天王寺口戦場で馬を駆り孤軍奮闘する幸村を遠くから偶然見つけ、発したひと言です。

カミさんが隣で一緒に観ていなかったら、僕はこのシーンで大泣きしていたと思います。涙を堪えるのが本当に大変でした。
きりは当然、もう幸村がこの戦場から生きて帰ることはないと覚悟を決めています。
千姫を無事送り届け、そのまま徳川陣に居残っていれば、きりは一命を繋いだでしょう。しかし彼女は無言でそっと姿を消しました。

夏の陣直前の「源次郎さまのいない世に生きていてもつまらない」との言葉の通り、きりは来た道をそのまま戻り落城必至の大坂城に向かって歩いたでしょう。
行きがけに偶然幸村の姿を見た場所にさしかかると、もう生きている兵は敵味方ともまったく姿無く、もちろん幸村の姿も見えず・・・きりは思いつめた表情でただ1人、城へ向け一層歩を速める、とそんなシーンすら勝手に脳内に思い描いてしまいました。

第1位
決まっているだろう・・・真田丸よ!
(真田幸村)

僕はこの44話のエンディング・シーン、You Tubeでもう100回くらいは繰り返し観ています。

遂に完成した真田丸を櫓から見下ろす幸村、大助、内記。「ようやくこれで城持ちになった」との幸村の台詞は、ここまで「誰かのために」助け役の人生を歩んできた幸村が今まさに自らの意志で配下を動かし「生きた証」を刻もうとする、その出発点ともとれます。
ふと気づいたように内記が発した「城の名は何とします?」に応えた幸村の
「決まっているだろう・・・真田丸よ!」
これが僕の『真田丸』ベスト・シーンです。

何が素晴らしいって、この44話は冒頭にメイン・テーマが流れずいきなりナレーションで始まり、最後の最後、幸村の「真田丸よ!」の台詞直後にあのヴァイオリンのイントロが来る、という構成なわけですよ!
今回の『真田丸』は音楽も素晴らしかったですが、この44話ほどメインテーマのイントロがカッコ良く聴こえた回はありませんでした。
来年はもう、日曜になってもテレビからあのヴァイオリンとティンパニが躍動する名曲が流れてくることはないんだなぁ、と思うと本当に寂しいです・・・。


いや、長々と失礼いたしました。
もし、『真田丸』を1年ずっと夢中で観ていたよ、と仰る方々がいらっしゃいましたら、みなさまそれぞれの「ベストシーン」も是非聞かせて頂きたいものです。

それでは、オマケです!
昨年でしたか、『中野まんだらけ海馬店』さんで結構お得な価格で購入した『Rockan' Tour '98』パンフレットから数枚どうぞ~。


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では・・・ちょっと早いんですけど、次回更新が2016年最後の更新、ならびに今回の”全然当たらないセットリスト予想”シリーズ大トリの記事となります。

個人的な予想では、『祈り歌LOVESONG特集』のセットリストは「じっくり聴かせる祈り&愛の歌」をまず15曲ほど立て続けに歌い、「お年賀」としてノリノリのロック・ナンバーをアンコールで7、8曲、という変則構成を思い描いています。
2014年の『ひとりぼっちのバラード』と似た感じですね。あの時はザ・タイガース再結成直後ということで曲数が少なかったのですが、今回は全20数曲でそれをやる、と。まぁ僕の予想なんて本当に当たらないのですが・・・勝手にそんなふうに夢想して盛り上がっています。
ここまで書いてきた「あなただけでいい」「HELLO」「麗しき裏切り」はその構成で言うと「じっくり」コーナー(LOVESONG)としての予想。次回はどうしましょうか。
2016年を締めくくるにふさわしいお題を、ということでいくつかの名曲を頭に思い描いているところ。できれば大トリに書く1曲くらいは当てたいのですが・・・。

お正月のチケットも届きました。
カミさんと参加する初日・NHKホール公演は望外にも1階席を賜り、気にかけていた初ジュリーLIVE参加の4人の一般ピープルのお姉さま方のために申し込んだフォーラム公演については、2階ではありましたが「立つ」「座る」に迷わずに済み、雑念無くステージに集中して頂けるようなポジションの席だったのでひとまずホッとしました。感想を伺うのが今から楽しみ・・・初日が終わったら、お姉さま方がおそらくご存知でない曲だけをセットリストから抜粋(有名シングル曲は当日のお楽しみ、ということで)したCDを作成、差し上げて予習に役立てて頂くつもりです。

『真田丸』も完結して、いよいよ年の瀬ですな~。
お互い身体には充分気をつけて、2016年の残りの日々を元気に過ごしましょう!

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2016年12月 9日 (金)

沢田研二 「HELLO」

from『HELLO』、1994

Hello

1. HELLO
2. DON'T TOUCH
3. IN BED
4. YOKOHAMA BAY BLUES
5. 卑怯者
6. RAW
7. ダーツ
8. Shangri-la
9. 君をいま抱かせてくれ
10. 溢れる涙

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『大悪名』の申込期限が近づいていますが、みなさまもう振込は済まされましたか?
僕は先の火曜日に申込みました。

関東にお住まいのみなさまは、「あぁ、そうだった」と思い出してくださるかと思いますが、この火曜日はとても風の強い日でね~。
仕事の3時のおやつ休憩にちょっと抜け出して、払込書を裸で片手に持って気軽に最寄の郵便局へと向かったその途中、突然払込書が風に飛ばされ・・・。
瞬時に飛び上がって、「ぱんぱ~ん!」と空中のそれを両掌で捕獲しようとするも失敗。払込書はあっという間に道路の向こう側へ。
風に乗ってヒラヒラと遠ざかってゆく払込書を見失わないようにしながら車の往来が途切れるのを待ち、30メートルくらい全速力で追いかけましたよ。無事捕獲はしましたが、とても恥ずかしかったです・・・。

ともあれ。
『大悪名』申込みを済ませたら、あとはお正月LIVEのチケット到着を待つばかりですね。
僕はどうやらNHKホールの抽選はクリアしたようで(落選通知が来ていないということは大丈夫ですよね?)、初日に参加できるとあらばどんなお席でもOK!
むしろ気になるのは、今回初のジュリーLIVE参加でいらっしゃる一般ピープルの4人連れのお姉さま方のチケット申込を請け負ったファイナル、フォーラム公演。
せっかくの機会ですからなんとか良いお席で観て頂きたいなぁと思っていますが・・・こればかりは運を天に任せるしかありません。

さて今日は、先週執筆した「あなただけでいい」に続きまして、あとひと月ほどで開幕するジュリーお正月LIVE『祈り歌LOVESONG特集』に向けての”全然当たらないセットリスト予想”シリーズ、第2弾更新です。
採り上げる「LOVESONG」は、僕がまだ生で体感したことのない90年代ジュリー・シングルの代表曲「HELLO」をご指名。「あなただけでいい」同様、個人的には初聴時の段階で正当に評価できず、後々になってその素晴らしさに気づいた名曲です。
採譜に自信が無いながらも、気合で伝授!


アルバム『HELLO』、1994年リリース。
翌95年から「自分の歌いたい歌を歌ってゆく」ことを主眼としたセルフ・プロデュース期へと突入するジュリーがその前年、正に当時「時代を手に」していた後藤次利さん、秋元康さんという2人のビッグネームと組んでいた、というのはかなり興味深い歴史です。

産業に特化して音楽業界に貢献する後藤さん、秋元さんのコンビ(決して悪い意味ではありませんよ。真のプロフェッショナルでないと成し得ないことなのですから)とジュリーの組み合わせとくれば、まず「セールスの成功」が期待されたでしょう。
その意味で言えばアルバム『HELLO』は、翌95年からのジュリーの創作姿勢とは真逆の方向性を持つ特殊なスタンスの作品とするべきかもしれません。
でも、今日僕は「実はそうとばかりは言えないのかも」という話をしたいと思っているのです。

後藤さんも秋元さんもこの作品以前にジュリーと深く関わっていました。
後藤さんは『チャコール・グレイの肖像』で圧巻のベースを弾いていますし、アレンジャーとしてだけでなく、『TOKIO』収録の「ミュータント」、『BAD TUNING』収録の「マダムX」といった提供曲は強烈なインパクトを残し、ジュリーのセールス黄金期を支えました。
また秋元さんは『NON POLICY』収録の「ナンセンス」「ノンポリシー」で作詞提供。いずれも素晴らしくカッコ良い名篇ですよね。

そんなお2人が再び「ジュリー」と対峙し心血を注いだ94年のアルバム・タイトルチューン「HELLO」。
後藤さんの作曲とアレンジ、錚々たるメンバーの演奏、そして秋元さんの作詞の観点からの考察で、この名曲を紐解いていきましょう。

まずは後藤さんの作曲から。
先述したジュリーへの過去の提供曲「ミュータント」「マダムX」はいかにも才気走っていて、若い後藤さんが解釈したロックの先鋭性をジュリーにぶつけた斬新な仕上がりとなっています。対して「HELLO」は耳だけで聴く限り、オーソドックスな「見栄え」重視の熟したロック、と僕は当初思い込んでしまいました。
ところがいざ採譜してみると・・・「こりゃ、一体どうなってるんだ?」とウンウン唸ることに。
トリッキーな転調や革新的な譜割などは登場しないのに、細部が難解なんですよ。耳当たりの良いポップ性の裏に施された洗練の技。
これこそプロフェショナル!な作曲です。

僕の実力では限界がありますが、なんとか起こし終えたコードで特に悩まされたのは

今日 まで  生きた時間が
F#m   D#m7-5     E         C#m7

長すぎたせいさ ♪
Bm7      G7

この「D#m7-5」。こんなところにハーフ・ディミニッシュが使われているなんて、聴いただけでは想像もつかないことでした。って、この採譜合ってるのかな?
これが2回し目の展開部で

おま えから  Oh~ サヨナラと
F#m  F#mmaj7    F#m7     D#m7-5

切りだすのがいい ♪
D                    E

ここの「D#m7-5」の方は分かり易いんです。「ファ#→ファ→ミ→レ#→レ」のクリシェですから。そのぶんこちらは美しさが際立ちます。

「いきなりジュリーの声から!」という構成でハードに導入したと思ったら突如ポップに印象を変える0’14”の箇所は、なんと「F」から「F#m」への移行。
大村憲司さんのギターがあまりにもなめらかで、「際どい」進行を自然に聴かせていることもまた特筆すべき点。後藤さんはそこまで計算していたでしょう。

そもそも、ジュリーの名盤は数多くあれど、『HELLO』というアルバムはその演奏面については「オンリーワン」の1枚。天才アレンジャーの後藤さんが腕をふるうにはふさわしい面々が揃っていました。
タイトルチューンである「HELLO」の演奏でもやはり特徴的なのは湊雅史さんのドラムスです。
「同じ曲を2度と同じようには叩かない」と言われる湊さん。「HELLO」においても、リリース・テイクはレコーディングその時限りの名演。繰り出されるフィルの数々、ハイハットやキックのニュアンスなど細かい「その一瞬」を挙げればきりがない中、僕が最も好きなのは2’47”に突然挿し込まれるフィルです。
ここ、普通のドラマーならリズムキープに専念する箇所のはず。歌メロが始まってすぐですからね。
しかしこの湊さんのフィルはまったくジュリーのヴォーカルを邪魔していません。そのセンス、畏るべし!

また、この曲ではギターも鍵盤もそれぞれ3つのトラックが割かれているんです。でも全然「厚過ぎる」感じは受けませんよね?これもまたアルバム『HELLO』全体の古藤さんのアレンジの個性と言えます。
後藤さんは超一流のベーシストですが、アレンジの前面には出ず、隠れたところで凄いことをやっている、という・・・76年のアルバム『チャコール・グレイの肖像』収録の「夜の河を渡る前に」での「俺のベースを聴けい!」的なアプローチと比較すると、これもアレンジャーならではの「進化」なんですよね。
同じことはEMI期の吉田建さんにも言えて、そちらはいずれ「噂のモニター」あたりのお題記事の際語りたいと思っています。

では、秋元さんの作詞についてはどうでしょうか。
僕は正直最初にこの曲を聴いた時(2009年)、秋元さんの詞に惹かれることはなく、むしろ「Lonely」や「so sad」という英フレーズなどがあまりにもありきたりで、ジュリー・ナンバーとしては空回りしている、と感じました。しかし今はまったく違う感想を持ちます。

同アルバム収録の「卑怯者」(こちらも後藤=秋元コンビの大変な名曲!)と並べて聴けば歴然なのですが、流行の先端を走っていた秋元さんが改めてジュリーへの作品提供に臨むにあたり、決して「ギンギンの80年代ジュリー・ロックよもう一度」的な安易な手法をとっていない、ということが分かってきたのです。
かつて秋元さんは

おれの  気紛れだから
       Gm  Gmmaj7       Gm7

ハートを痛めるなんて ナンセンスだよ ♪
Em7-5         Cm     F   B♭             D7


↑ 「ナンセンス」より

と、愛を断ち切るダンディズムを徹底的にクールな主人公に投影して描き、それこそが正に「虚像としてのジュリー」(この表現も悪い意味ではありませんよ!)だったわけですが、「ナンセンス」の主人公たるジュリーも年齢を重ね40代後半となりました。
「別れ」の数ほど自分ばかりか相手の「痛み」までをもハートに抱え、ギリギリのところで辛うじてダンディズムを保つ・・・それが94年の秋元さんが「HELLO」「卑怯者」の2篇に託した「ジュリー像」のようです。
そして、そんな秋元さんのアプローチは驚くべきことに、70年代後半に阿久さんがジュリーに投影していたような「虚像」がここへきて40代の生身のジュリーとリンクしてくる、という不思議な輪廻をも感じさせます。

確かに、後藤さん、秋元さんを擁しても、結果アルバムもシングルもかつてのようなセールスを得ることはできませんでした。
でも、そのことをして「もうセールスなんて関係ない」とばかりにジュリーが次作からのセルフ・プロデュースに踏み切った、とするのは短絡なのかも。
誤解を怖れずに言うと、結果として後藤さんと秋元さんは見事ジュリーの「虚像」にピリオドを打ったのだ、と今なら僕はそんなふうに考えてみたいです。

どうせ愛はいつか 消えてしまうものさ
D             E          A                F#m

かたちがないよ Lonely
Bm7                  D     E

どうせ夢のように 覚めてしまうものさ
D             E         A       C#7   F#7

思い出せずに Lonely Ah ♪
Bm7               D    E     Fmaj7

「かたちがない」虚像から解放され、次に進む道。
そう考えれば、後藤さんがプロデュースし秋元さんも言葉を紡いだアルバム『HELLO』は、建さんプロデュースの5枚から、95年リリース『sur←』以降今なお続くセルフ・プロデュースへの橋渡しとしてふさわしい、ジュリーの歌人生になくてはならない名盤と位置づけることができるのではないでしょうか。

そして・・・それからさらに20余年の歳月が過ぎ、68歳となったジュリーは今やもう完全に「突き抜けた」歌手となっています。
どんなメロディーも、どんな歌詞フレーズも自らに引き込む力を真に得て、来年お正月LIVEのタイトルに堂々の「LOVESONG」を掲げてくれたジュリー。
「HELLO」に登場する「lonely」「so sad」を今のジュリーが歌えば、フレーズの響きが一周してどれほどカッコ良く聴こえることでしょう。
デビュー50周年のメモリアル・イヤーに是非歌って欲しい「シングル曲」のひとつですね。


それでは、オマケです!
手元の94年の資料のネタが現在尽きておりますので、お題曲とはまったく関係ないのですが・・・12月の更新ということで「クリスマス」繋がりから、83年の有名な年末コンサート『沢田君からのクリスマス』(NISSAN NEW BLUE BIRD SPECIAL FINAL)パンフレットから数枚のショットをご紹介したいと思います。

実はこのパンフレットは、先の痔核切除手術の直前に、いつもお世話になっているピーファンの先輩が「術後の療養のお供に」ということでわざわざ貸してくださったのでした。本当に有難いことです。
また、『沢田君からのクリスマス』公演については、2009年執筆の「
BURNING SEXY SILENT NIGHT」の記事へのコメントで、先輩方が色々と教えてくださっています。よろしければそちらもご参照ください。

それではどうぞ~!


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さて次回更新は・・・ちょっと仕事やプライベートの予定がたてこんでいることもあって、間を空けて12月20日のupを予定しています。
この日は僕の誕生日で、毎年「自分と同じ年齢の年にジュリーがどんな曲を歌っていたか」というコンセプトでお題を採り上げています。

僕はこの20日でいよいよ50歳になります。
ジュリー50歳の年にリリースされたアルバムは『第六感』。この名盤の中からお正月セットリスト予想曲を選ぶわけですが、これがなかなか難しい。
既に記事を書き終えている曲ですと、「ラジカル ヒストリー」が有力。また、「いつか一度は生で体感できる」と勝手に確信している「グランドクロス」にも期待できそう。でも記事未執筆の曲となると・・・。
そんな中、どうにか「予想根拠」を捻り出した名曲がありますので、そちらを採り上げるつもりです。

最近職場の同僚の間で「子供が風邪でお腹をやられて学校を休んでいる」という話題がしきりです。
タチの悪い胃腸炎を伴う風邪が子供達を中心に流行っているようで、大人も気をつけなければ。
日々のうがい、手洗いを心がけましょう!

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