2020年7月 4日 (土)

ザ・タイガース 「コットン・フィールズ」

from『ザ・タイガース・サウンズ・イン・コロシアム』

Soundsincolosseum

disc-1
1. ホンキー・トンク・ウィメン
2. サティスファクション
3. スージーQ
4. アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー
5. ルート66!
6. ドック・オヴ・ザ・ベイ
7. ザ・ビージーズ・メドレー
8. ルーキー・ルーキー
9. コットン・フィールズ
10. 監獄ロック
11. トラベリン・バンド
12. ラレーニア
13. ホワッド・アイ・セイ
disc-2
1. 都会
2. ザ・タイガース・オリジナル・メドレー
3. スマイル・フォー・ミー
4. 散りゆく青春
5. 美しき愛の掟
6. 想い出を胸に
7. ヘイ・ジュテーム
8. エニーバディズ・アンサー
9. ハートブレイカー
10. 素晴しい旅行
11. 怒りの鐘を鳴らせ
12. ラヴ・ラヴ・ラヴ

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本日7月4日は、長い間格別に親しくさせて頂いていたタイガースファンの先輩、真樹さんの命日です。
早いものでもう丸2年が経ちました。

お会いしてお話する時、普段は聞き上手な真樹さんが一転会話をリードしてくださるのはやはりザ・タイガースの話題で、特に田園コロシアムLIVEについてはご自身が歴史的なステージに立ち合われたということもあり、詳しくお話を聞かせて頂いたものでした。
真樹さんに限らず、「タイガースのLIVEと言えばまず田コロ」というのは多くの先輩方がそう仰います。
後追いファンの僕などは、72年1月24日武道館が最も感動的なステージだったのではないかと当初は思いがちでしたが、そう単純な話ではないと徐々に分かってきました。とは言え実際の肌の感覚は持ち得ませんから、一生懸命それぞれのステージを想像するしかないんですけどね。

今日は他でもないその田園コロシアムLIVE音源『ザ・タイガース・サウンズ・イン・コロシアム』から、彼等の重要な洋楽カバー・レパートリーである「コットン・フィールズ」を採り上げ、今年のこの日に捧げたいと思います。
よろしくお願い申し上げます。


「コットン・フィールズ」は元々アメリカのトラディショナル(歌・レッドベリー)なのだそうです。

Cottonfields 

↑ 『カントリー&ウエスタン名曲全集』より


ただ、ジュリーはこの曲の前のMCで「ロックンロール」だと紹介しているんですね。
当時この曲がロック・ナンバーとして認知されていたのは、60年代末からのカントリー・ロック・ブームによりアメリカのみならず世界中のロック・バンド、アーティストが土着的なメロディーのトラッド・ソングをカバーしロックへと昇華させた・・・「コットン・フィールズ」もその1曲であったということでしょう。

リアルタイムのタイガース・ファンのみなさまは、彼等の洋楽カバーを先に聴いてからカバー元の音源を知る、というパターンが多かったと想像します。
僕はタイガースもジュリーも後追いで、自分が既に知っている様々な洋楽のカバーも「こんな曲をやっていたんだなぁ」という感じで聴いていました。
ただ、中にはみなさまと同じようにタイガース(またはジュリーのソロ)から遡ってカバー元を知った曲もあります。「コットン・フィールズ」は特にCCRのヴァージョンがとても有名らしいですが、僕にとっては正に「タイガースが先」のパターンでした。

恥ずかしながら、僕は実はCCRを本格的に聴き始めたのがここ数年のことで。
タイガース・レパートリーにはCCRのカバー(或いはCCRがカバーしたことで有名になったロック・スタンダード)がかなり多いですよね。
「コットン・フィールズ」以外だと、「スージーQ」「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」「トラヴェリン・バンド」「グッド・ゴリー・ミス・モリー」・・・他にもあるかなぁ?
「スージーQ」はローリング・ストーンズが歌っていたのでずっと前から知っていたけど、残りの曲は2008年の「ジュリー堕ち」以降に遡って知識を得ていった曲です。「グッド・ゴリー・ミス・モリー」なんて、瞳みのる&二十二世紀バンドのLIVEセットリスト入りを体感して初めて「名曲」として意識したほどでした。

いずれにしても、「タイム・オン・マイ・サイド」をローリング・ストーンズのカバーとして演奏していたように(この曲はストーンズもカバー)、タイガースにとっては「コットン・フィールズ」も「CCRのカバー」なる認識だったのではないでしょうか。

僕はここ数年CCRの勉強を急ピッチで進め、『マルディ・グラ』以外のアルバムをすべて聴きました。
「コットン・フィールズ」は『ウィリー・アンド・プアボーイズ』というアルバムに収録されています(こちら)。
CDだと一瞬分かりにくいのですが、『ウィリー・アンド・プアボーイズ』 はレコード両面で収録楽曲が(ジャンル的に)対を成す面白い構成の名盤。A面3曲目「コットン・フィールズ」は、B面3曲目「ミッドナイト・スペシャル」とトラディショナル・カバーの括りで対となっています。

田園コロシアムの音源と比較しますと、2番歌詞部の割愛はあるものの、タイガースは基本このCCRの音源を踏襲し演奏していると分かります。ショート・ヴァージョンにアレンジされたカバーですね。
CCRはイ長調 ですが、タイガースは嬰ヘ長調に移調しています。タローさんの間奏リード・ギターがいかにもタイガース、というガレージ感を押し出しているものの、サリーさんのベースやジュリーのヴォーカル・ラインはCCRのヴァージョンにかなり忠実。
シローさんの音がよく聴き取れないのですが、もしアコギ・ストロークであれば完璧です。

ただ、ピーさんのドラムだけがCCRとはずいぶん違うんです。
そこでもうひとつ、「コットン・フィールズ」のカバー音源例で挙げておきたいのがビーチ・ボーイズのアルバム・ヴァージョン。リリースはCCRと同時期で、やはりカントリー・ブーム全盛期に採り上げたことになります。

僕はビーチ・ボーイズについても最近になってようやく熱心に聴いていて(若い頃に有名な『ペット・サウンズ』だけ聴いたけどその時はあまりピンと来ず。数年前に『フレンズ』というアルバムを聴いて感動、その後ほぼ全時代のアルバムを集めました)、ズバリ60年代末から70年代前半のアルバムが気に入っています。
「コットン・フィールズ」は『20/20』という69年のアルバムに収録(ただし、シングルはドラムスも含めアレンジが全然違っていて、一般的にはそちらの方が有名。残念ながらYou Tubeではスネア・ドラムが特徴的なアルバム・ヴァージョンは探ししきれませんでした)。
このビーチ・ボーイズのアルバム・ヴァージョンではドラムが1小節内のスネアの打点を1打と2打に分け、これで一気に「サーフ・ロック」のノリが出ます。
そして、田コロでのピーさんの演奏もそうなんですよ(打点配置は「2・1」で、ビーチ・ボーイズの「1・2」とは逆)。

タイガース全体としては一世を風靡したCCRヴァージョンのカバーとして採り上げながらも、ピーさんは独自に原曲や多くのカバー音源を研究したのか、または原点回帰のベンチャーズ・ビートが合う曲だと判断したのか・・・とにかく他メンバーとは異なるヴァリエーションを提示していますね。
今もなお研究熱心なピーさんのことです。近い将来「アメリカン・トラッド」の括りの中、「タイガース・ファンならご存知の歌」ということで、新たに日本語詞或いは漢詩を載せた「コットン・フィールズ」を、二十二世紀バンドとのLIVEで披露してくれるかもしれません。

タイガース、CCR、ビーチ・ボーイズいずれを聴いても、「コットン・フィールズ」はコーナス・ワークが重要な曲なのだと分かります。
タイガースのハーモニーの素晴らしさはCCR、ビーチボーイズにも負けていません。
その上でジュリーの主旋律のインパクトが強烈。
少なくとも後期タイガースについては、間違いなくヴォーカルのジュリーがステージ・バランサーです。
タイガースでLIVEを重ねるうち、鳴っているすべての音を聴き分けるセンスが磨かれたのでしょうか・・・1.24武道館でも演奏メンバーが溢れる思いのあまりテンポを乱しそうになった時、いち早く立て直したり。
そんなジュリーですから、「コットン・フィールズ」の「コーラス・ワークを聴かせたい箇所」では無意識にでも自分の声だけが前に出過ぎないように、と配慮していると思うのです。それでこの存在感なのですからね。

それと、3つのヴァージョン中BPMが一番速いのがタイガースの演奏です。
それによりキメのコーラス部でテンポをグッと落としている効果が明快となりますし、ドラムのフィル一発で速いテンポに切り替えるあたりには、バンドの稽古量が窺えます。
当時タイガースは猛烈に忙しかったのは当然として、メンバーそれぞれの考え方の違いも大きくなってきた時期だったと想像します。それでも田園コロシアムでの「コットン・フィールズ」を聴けば、ステージに向け全員が集まりリハーサルを重ねてきた・・・そんな光景が目に浮かびます。
よそ見していたりうわの空のメンバーがいたら、決して出来ない演奏なのです。

先日、コメントにてmomo様がタイガースの田園コロシアムLIVEを「長い刹那」(act『ELVIS PRESLEY』「愛していると言っておくれ」でジュリーの日本語詞に登場するフレーズ)と例えていらっしゃいました。
現実体感の無い僕は想像でしか言えないのですが、それはタイガース・オリジナル・ナンバーよりむしろここで採り上げられている洋楽カバーを聴き込み、それぞれの歌が当時(世間的に)どのようなスタンスであったかを理解してこそ得られる感覚なのかな、と思います。
来年のこの日もまた『サウンズ・イン・コロシアム』から洋楽カバーの記事を書けたら、と考えています。

70082206

↑ 『ザ・タイガース・サウンズ・イン・コロシアム』パンフレットより


それでは、申し訳ありませんがしばらくの間(ブログ更新の)夏休みを頂きます。

勤務先の8月〆の本決算作業がひと段落してから再始動しますので、次回更新は9月中旬になるかなぁ。
復帰1発目のお題曲はたぶんこれになるかな?という目星はつけているのですが、流動的です。

僕の故郷、九州ではまた大変な災害が起こりました。
本当に試練の大きい1年となっています。暑さの厳しい夏に向け、万全の備えと注意を払ってゆきましょう。
みなさまのご無事をお祈りしています。

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2020年6月25日 (木)

沢田研二 「エディットへ」

from『act#6 EDITH PIAF』、1994

Edith1

1. 変わらぬ愛 ~恋人たち~
2. バラ色の人生
3. 私の兵隊さん
4. PADAM PADAM
5. 大騒ぎだね エディット
6. 王様の牢屋
7. 群衆
8. 詩人の魂
9. 青くさい春
10. MON DIEU ~私の神様~
11. 想い出の恋人たち
12. 私は後悔しない ~水に流して~
13. パリは踊る 歌う
14. エディットへ
15. 愛の讃歌
16. 世界は廻る
17. すべてが愛のために

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今年もやってきました。6月25日。
今日は全国各地でジュリーファンからのお祝いの言葉が飛び交っていることでしょう。
もちろん、ここでも叫ばせて頂きます。

ジュリー、72歳のお誕生日おめでとうございます!

Paper074

↑ 毎年恒例、「ありがとう」と言ってそうな若ジュリーのショット

今年のジュリー誕生月を『ACT月間』とした時から、今日のお題はこの曲!と決めていました。
すべてのACTナンバーの中、現時点で僕が最も好きな歌。『EDITH PIAF』から「エディットへ」です。
ジュリー自作(作詞・作曲)のこの名曲の更新で、ジュリー72歳の誕生日をお祝いしたいと思います!

Edith3

「曲」と言うより「歌」と言いたくなるバラードです。
ACTの映像を未だ観ていない僕は、「エディットへ」がどのようなシーンで歌われていたのか分かりません。あくまで『CD大全集』の音源のみで感じとった詞の内容は、(ステージ上の)リアルな現実時間からピアフの時代へと遡るようにメッセージを届ける、というもの。
レクイエムのようにも感じるし、ラブレターのようでもあります。実際の舞台はそういうシーンではないのかもしれませんが、ジュリー自身がピアフに捧げた強い思い、リスペクトがひしひしと伝わってくる詞で、ジュリーがこれほどピアフへの敬愛の念を持っていたことを、僕はこの歌で初めて知りました。

まして僕は恥ずかしながらそれまでエディット・ピアフのいう有名な歌手の生い立ちや人生、どのような人であったかなどをほとんど知らずにいて、まずジュリーの「エディットへ」を聴くことで彼女の偉大さを知った、と言っても過言ではありません。
その後勤務先のシャンソン関連スコアに添えられた解説を読んだり、You Tube等でピアフが歌う映像を見たりした時、「ジュリーの歌の通りの歌手だったんだなぁ」と思ったものでした。

全然違うようでもあり、とても似ているようでもあるジュリーとピアフ。
ただ、「エディットへ」の歌詞中の「愛」はそのまま「歌」と置き換えることができ、それは近年のジュリーの創作姿勢と重なるところが多々ある、とは思っています。

最近の2年、ジュリーは新譜マキシシングルを柴山さんの作曲作品と自作曲の2曲入りという形(作詞はすべてジュリー)でリリースしていて、自身で作曲を担った昨年の「SHOUT!」、今年の「頑張んべえよ」はいずれも自らの歌人生をテーマとした詞が載っています。
凝った進行ではなく、ロックのスリー・コードを基本軸としヴォーカル・インパクトを重視した作曲。
血肉を伝えるようなメロディーが特徴的で、これは「エディットへ」と非常に近い作曲手法です。叙情的なメロディーなのにマイナー・コードへ移行しない、或いはリズムを分解すると8分の12のロッカ・バラードであることが分かるなど、「エディットへ」でジュリーは真っ直ぐに「ロック」なベクトルに立っているのです。
ピアフのことを歌うからといって無理にシャンソンに寄せたりしなかったことが、逆に説得力をもってピアフへのリスペクトを表現し得たのではないでしょうか。

cobaさんのアレンジももちろん、ジュリーの作曲の素晴らしさに応えています。
『EDITH PIAF』でのcobaさんのアレンジはACTシリーズの中では抜きん出て複雑な変化球ですが(「王様の牢屋」を『BORIS VIAN』ヴァージョンと比較するとよく分かります)、「エディットへ」は最もドラマティックかつ俯瞰的でもあると思います。

例えば、オーソドックスにサブ・ドミナントやドミナントへコードが展開しても、ルートだけはトニック音をじっと持続させる手法。
僕は最初、Aメロ2つ目のコードを「Fsus4」でとってストロークでコピーしていましたが、響きが微妙に違う・・・。
そこで指弾きのアルペジオに切り替え、「B♭onF」に辿り着きました。
ジュリー作曲時点では普通に「B♭」だったに違いなく、近年の自作曲2作と共通する、武骨でシンプルな曲作りであることを逆算的に理解できたのです。

他にも、間奏部から緊張感のあるスネアが噛んできたり、最後のサビのリフレインで徐々にアコーディオンの刻みが増え最終的にはスネアとユニゾンするなど細かい部分での素晴らしさもありつつ、僕が曲中で最も大きなインパクトを感じたのはイントロ、間奏、後奏に登場する歌メロには無い進行部でした。
「女声コーラスのパート」と言った方が分かり易いでしょうか。歌メロとは別の独立したヴァース、つまりここでのコーラスはピアフの歌声を模していて、ジュリーのヴォーカル部とは「過去」と「現在」で時間が分かれている・・・そこまで計算されたアレンジなのかな、と。
そして、別時間故にイントロと間奏では重なることのなかった女声コーラスとジュリーの歌が最後の最後、サビの着地点でクロスするという、ここは本当に鳥肌ものです。ジュリーの時代とピアフの時代が歌の力で奇跡のように「共にある」瞬間ですね。

そんなアレンジに象徴されるように、「エディットへ」でのジュリーの詞にはピアフへのリスペクトのみならず、ジュリー自身が一流の歌手だからこそ持てるであろう「共感」を、僕ら聴き手は探らずにはいられません。
特に強烈なのは以下の歌詞部。

エディット 今の時代に
F                       B♭(onF)

生まれて   いたら
       C(onF)        F

窮屈で    厄介で 息もできない
    B♭(onF)    F          G7       C7sus4  C7

愛は 見世物にされ
F                  B♭(onF)

自由に   ならぬ
      C(onF)      F

あなたなら それでも やめない 愛を ♪
      B♭(onF)   F             G7       C7

「あなた(ピアフ)の時代」と「自分(ジュリー)の時代」。ジュリーが作詞をした「今の時代」とはひとまず『EDITH PIAF』公演のあった1994年と考えるとして、どうやら僕らはその後さらに窮屈で厄介な世の中へと流され続けているように思います。
現在2020年、ジュリーのこの詞が一層身につまされる。

先述の通り僕は「エディットへ」歌詞中の「愛」はすべて「歌」に置き換えることができると考えています。
すなわち窮屈で厄介な時代において今なお「歌は見世物にされ」ていると。そんな世に生まれていたとしてもあなたなら歌をやめないだろう、と94年のジュリーはピアフに向けて歌いました。これは正に、今現在のジュリーの覚悟そのものではないですか!

歌が「自由にならぬ」時代に徹底気的に「自由」を志す姿勢然り。だから僕は今回「エディットへ」のお題を、ジュリーが自らの歌人生をテーマとし作詞・作曲した「SHOUT!」「頑張んべぇよ」と並べて考えてみたくなったのです。

与え、裏切られ、それでも許し・・・40代にしてそんなふうにピアフの歌人生を表現できたジュリー。
自らゆく道もピアフに劣らず凄いです。

エディット・ピアフは言うまでもなく有名な歌手で、全世界に彼女のファンが数えきれないほどいらっしゃるでしょう。その中でどれくらいの人達が、ジュリーのACT『EDITH PIAF』を知っているでしょうか。ジュリーがピアフに捧げ作詞・作曲した「エディットへ」という真に愛の歌を知っているでしょうか。
少しでも多くのピアフのファンにこの歌を知って欲しい、と思っています。


ということで、4曲分と少ない曲数でしたが今年のジュリー誕生月の『ACT月間』はこれにて終了。
そして今後の予定ですが、7月4日にタイガース・ナンバーのお題で1本書いた後、すみませんが(ブログ更新の)夏休みを頂きます。
仕事では8月が本決算(コロナ禍に見舞われた今季は、当然ながら大変厳しい数字と向き合うことになりましょう)。加えてプライヴェートにおいて今年は猛烈に忙しい夏になりそうです。

秋からまた再始動いたします。とりあえずは来週、タイガースの記事でお会いしましょう。

今年はこれから厳しい暑さがやって来るようです。
みなさま体調にはくれぐれもお気をつけください。

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2020年6月21日 (日)

沢田研二 「VERDE ~みどり~」

from『act#4 SALVADOR DALI』、1992

Salvador1

1. スペイン・愛の記憶
2. 愛の神話・祝祭という名のお前
3. ガラの私
4. VERDE ~みどり~
5. 眠りよ
6. 愛はもう
7. 黒い天使
8. 恋のアランフェス
9. 白のタンゴ
10. 誕生にあたっての別れの歌

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梅雨ですな~。
ここ数日は割と涼しいですが、先週は気温が高く湿気が多く天気が安定せず・・・という日が続きました。
コロナ禍のこともあり、例年以上に体調管理に気を遣う季節となりましたね。

さて、6月の『ACT月間』更新シリーズも3曲目。
今日は『SALVADOR DALI』から、フラメンコ・ナンバーのカバーにしてジュリーの日本語詞のセンスが光る名曲「VERDE~みどり」を採り上げたいと思います。
よろしくおつき合いください。

Salvador3

現時点で『SALVADOR DALI』は、『CD大全集』の中で個人的に最も気に入っている作品です。
ジュリーの声がACTシリーズ中、抜きん出て妖艶に聴こえるのは僕だけでしょうか・・・?

最初に聴いた時、この作品のヴォーカルは「鉄人バンドで歌うジュリーに近いな」と感じたものです。
ベースレスというだけでなく、パーカッションのアレンジへの貢献度や、エレアコの音色とライヴ感。元々「アレンジフェチ」で、生のジュリーをまず鉄人バンドの演奏で知った僕にとって、『SALVADOR DALI』は特に「ジュリーの歌」をリアルに聴きとる上でとても自然な音に包まれているように思われます。
まぁ、アレンジについてはフラメンコを意識しているのですからベースレスは必然なんですけど。
収録楽曲のタイプも多彩で、中でも「愛の神話・祝祭という名のお前」そして今日のお題「VERDE~みどり」は、短調のメロディーが軽快なテンポでグイグイ押してくるあたり、いかにもジュリー・ヴォーカルの真骨頂という感じがして大好きです。

以前、「ジュリーは緑色が好き」という話を聞いたことがありました。
言われてみますとジュリーには自作詞で「greenboy」「緑色のKiss Kiss Kiss」という重要な曲があります。
「エメラルド・アイズ」も緑系。また朝水彼方さん作詞の「緑色の部屋」も名曲。あとはトッポさんのヴォーカル曲ではありますが、タイガース時代にも思索的なナンバー「緑の丘」。そして今日のお題「VERDE~みどり」・・・他にジュリー関連で緑系の曲ってあるかなぁ?

で、僕はこの「VERDE~みどり」、熱烈に「ジュリーの日本語詞」推しです。
冒頭キメの部分については「直訳」とも言ってよく、その上で語感が素晴らしいわけですが、物語的にはさすがACTシリーズ、さすがジュリーで、歌が進むに連れ「ダリ」を演じる上でのオリジナルとは異なる展開、言葉使いが堪能できます。
とにかく「驚くほど自然にメロディーに載ってる」点ではACTで採り上げられた幾多のカバー曲で(加藤直さんの詞も含めても)屈指の名篇ではないでしょうか。

その魅力を味わうためにも、まずは原曲、原詞を知っておきたいところ。
残念ながらスコアは発見できませんでしたが、とても勉強になるブログ様が見つかりました。

濱田吾愛さんの『フラメンコ・シティオ』

実は僕は不勉強にてジュリーのACTで出逢うまで「VERDE」という原曲自体を知りませんでした。
濱田さんの解説は大変詳しく分かり易く、楽曲の背景やフラメンコの特色、歴史をも学ぶことができます。
例えばこの曲をヒットさせた「ホセ・マヌエル・オルテガ・エレディア」の芸名が「マンサニータ」とのことで、これは「沢田研二」と「ジュリー」のような感じの使い分けなのかなと思いきや、調べたらそうではなく、昔はスペインの人って同姓同名がとても多かったので、本名ではなく「あだ名」で呼び合うことが通例となり慣習的に引き継がれてきているんですって。
歌手しかり、なのですねぇ。初めて知りました。

さらには「VERDE」の詞の原題が「夢遊病者のロマンセ」というのだそうで、これを知るだけでもジュリーの日本語詞への理解が深まります(特に3番のサイケデリックなフレーズ群)。
それに濱田さんの訳詞を読めば、いくつかの単語についてはジュリーもそのまま日本語詞に採用し端々に散りばめていることも分かります。

僕が凄いと思うのは、物語と情景描写が正に「シュール・レアリズム」であるにも関わらず、ジュリーの言葉の並べ方、語感、畳み掛けにより歌全体に漲る「求愛」のテンションです。
メロディーの勢いを加速させるかのようなフレーズ。日本語だからこその疾走感。
短調という共通点もありましょうが、「愛の神話・祝祭という名のお前」と同じテンションを感じます。さらにはほぼ同時期のオリジナル・アルバムに収録された「涙が満月を曇らせる」や「そのキスが欲しい」と同じような、ある意味破滅的なほど激しい「求愛」を自らのヴォーカルに託す・・・そんな日本語詞だと思うのですよ。

最も衝撃的だった箇所は最後のヴァースです。
水に身を投げた女性の動かぬ冷たい顔、その緑の髪だけが水面でゆらゆら踊っているという。
描かれる情景はシュールと言うか恐怖ですらありますが、詞も歌も強烈になまめかしい・・・ここではジュリーが2行目でメロディーを崩してきて、cobaさんのアコーディオンがすぐさま呼応し速弾きになります。
アドリブかどうかは僕には分からないものの、それがまるで野性の求愛行動のように聴こえたり。
楽器編成が少ないぶん、ドキリとさせられます。

そもそも、「情熱の音楽」と言われるフラメンコは、40代の色気でジュリーが歌い演じるには格好の題材だったと言えそうです。

濱田さんのブログによれば、原曲「VERDE」は70年代末にヒットした歌なのだそうです。
意外な感じがしました。もっと古い60年代の歌だと思っていたからです。と言うのは、「VERDE」にはいわゆる「Aメロ」「Bメロ」「サビ」の変化が無く、嬰ヘ短調の短い同一ヴァースを延々と繰り返してゆく構成なのです。
このパターンが70年代末という時期にヒットするには、まず聴きながら歌詞を追いかける面白さ、さらには主題のメロディー一発で耳を捉えるキャッチーさ、そして何より歌い手の表現力が必須です。「VERDE」にはそれが備わっていて、だからこそジュリーの日本語詞と歌もここまでの名篇、名演に成り得たのでしょう。

僕はACTシリーズの映像をまだ鑑賞できていませんが、いざ!その時が来たらまずこの『SALVADOR DALI』から見ると思います。ズバリ「VERDE~みどり」の「演じ方」に興味が大きいのです。
フラメンコと言えば、ギターメインの伴奏以外に「踊り」が重要不可欠。「VERDE~みどり」のイントロ導入を担うタップ音、或いは楽器演奏が完全に引いてヴォーカル・ソロとなる5番のヴァース途中で聴こえてくる「オ~レ!」の声(cobaさんなのかなぁ?)。
どんなふうに舞台で演じられているのか、やはり音源だけだと想像がつかないんですよね。
もちろん、ストーリーと曲がどう絡んでくるか・・・まぁそれはすべてのACT作品について言えることですが。


それでは次回は6月25日、ジュリー72歳の誕生日に更新を予定しています。
あまり日数が無いけど、こればかりは何としても間に合わせなければ・・・。

お題は、個人的にすべてのACTナンバー中、現時点で一番好きな曲を考えています。頑張ります!

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2020年6月14日 (日)

沢田研二 「愛していると言っておくれ」

from『act#9 ELVIS PRESLEY』、1997

Elvis1

1. 無限のタブロー
2. 量見
3. Don't Be Cruel
4. 夜の王国
5. 仮面の天使
6. マッド・エキジビション
7. 心からロマンス
8. 愛していると言っておくれ
9. Can't Help Falling in Love
10. アメリカに捧ぐ
11. 俺には時間がない

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こちらは今日はいくらかマシのようですが・・・この一週間は暑かったですな~。雨風も酷かったですし。

僕は水曜日に持病の腰痛(ギックリ腰)を発症しまして、とても難儀をした一週間でもありました。例年、勤務先や通勤電車で冷房が入りはじめる時期に「ピキ~ン!」とやってしまうことが多いのですが、今回は自宅で発症しましたのですぐに安静の態勢になることができ、短期間で復活しました。これが仕事中に発症すると、家に帰宅するまでに悪化して、長引くんですよね・・・。

さて『ACT月間』です。今日は『ELVIS PRESLEY』からお題を採り上げます。

僕は数年前までは”キング・オブ・ロックンロール”エルヴィス・プレスリーの楽曲について、本当に有名なナンバーをいくつか知っているのみという状態でした。
『CD大全集』でジュリーのACT『ELVIS PRESLEY』を知ってオリジナル音源にも興味が沸き、さらにジュリー道の師匠の先輩からも「プレスリーは素敵だった」とのお話(その先輩はプレスリーもリアルタイムなのですから凄い!)があって本格的な勉強を開始。豪華な3枚組ベスト盤をはじめ数タイトルのCDを購入、今はようやく「少なくともジュリーが過去にカバーした楽曲はオリジナル音源も所有している」ところまでこぎつけました(70年代のステージでよく歌われたスタンダード・ロックンロールや、ACTの別作品『BUSTER KEATON』収録「淋しいのは君だけじゃない」なども含めて)。

その先輩も仰っていたのですが、プレスリーはテレビ番組出演時などの映像を合わせて聴く場合は圧倒的に初期のナンバーが魅力的です。
後追いでモノクロの映像を観るだけで途方も無いオーラが伝わってきますし、何しろあの目つきはヤバいです。視線を動かすたびに色気がだだ漏れになってる・・・「これはとんでもない歌手が現れた」と、当時全世界が釘づけになったのでしょうね。

ただ楽曲重視タイプの僕としては、「後期」と言ってよいのかな・・・60年代末から70年代のプレスリー・ナンバーも大いに気に入りました。
セールスに初期ほどの勢いが無くなってきた中で、詞曲、アレンジ、演奏、プロデュースとそれぞれのプロフェッショナルが知恵と手管を尽くして自らのアイデアをプレスリーに捧げ、実際に彼がそれを歌うというシチュエーション。ジュリーで言うと建さんプロデュースのEMI期の5枚のような雰囲気が感じられる「後期」プレスリーと、僕はとても波長が合うのです。
中でも特に惚れ込んでいる3曲が

・「イン・ザ・ゲットー」(収録アルバム『エルヴィス・イン・メンフィス』は素晴らしい名盤!)
・「バーニング・ラブ」(70年代後半のパブ・ロック・ムーヴメントにも通じる、完璧に僕好みの1曲)
そして
・「この胸のときめきを」

これが本日のお題、ジュリーACTヴァージョン「愛していると言っておくれ」の原曲です。
せりあがる3連符のグルーヴ。「あなただけでいい」「おまえがパラダイス」の例を出すまでもなく、ジュリー・ヴォーカルとの相性の良さが最初から約束されていたかのような名曲、熱唱系のバラードなのですね。
スコアも見つかりました。

Youdonthavetosayyouloveme 

↑ 『オールディーズ・ベスト・ヒット100』より。オリジナルより1音高いト短調での採譜となっています。

僕は不勉強にて最近知った曲ですが、「この胸のときめきを」はプレスリーの代表的名シングル(70年にヒット)としてのみならず、それ以前にダスティ・スプリングフィールドが歌ったりしていて、かなり有名な曲のようです。
「枯葉」進行の三連バラードという以外に、同主音による近親移調が大きな特徴。物悲しい雰囲気で始まるメロディー(ヘ短調)がサビでド~ン!と明るく視界を開く(ヘ長調)構成は、これまたジュリーのキャリアでも「追憶」をはじめとする名曲に同パターンの例は多く、ACTで採り上げたのは大正解と言えるでしょう。

加えてジュリーはプレスリーとは得意とする声域が近いようで、「愛していると言っておくれ」はもちろん、『CD大全集』収載のプレスリー・ナンバー9曲中7曲までを同じキーで歌っています。
(例外は「Surrender」→「夜の王国」がホ短調→ニ短調の1音下げ、「Love Me Tender」→「マッド・エキジビション」がニ長調→ホ長調の1音上げ)

ACT『ELVIS PRESLEY』はジュリーの「歌い方」が本当に多彩で、「無限のタブロー」を初めて聴いた時に「ジュリー、こんな歌い方もするんだ?」と驚いたものです。朗々と・・・言葉は適当ではないのでしょうが「大げさ」に発声していますよね。
「愛していると言っておくれ」のヴォーカルもこれに近いのは、三連のリズムがそうさせているのでしょうか。
とにかく普段のオリジナル・アルバムでは聴くことのできない発声と間のとり方で、ACTシリーズならではの独特の「哀しみ」を感じるテイクです。
映像を観ずに聴くと、この歌は相当切羽詰まったシリアスな場面で歌われているのではと想像しますが、お客さんの歓声や拍手の雰囲気を考えると、「ショー」の一幕という感じもします。どんなシーンが正解なのかな?(←いい加減映像も観ろ、という話汗)

ジュリーのこの日本語詞がとても気に入っています。
原詞では、去りゆく人への恋慕を主人公の「あきらめきれない、でも受け入れざるを得ない」というスタンスで描きますが、ジュリーの場合はなかなかに往生際が悪くて、「愛している」と無理矢理言わせる。相手が言ったら言ったで「気持ちが伝わらない!」と怒る(笑)。

胸をえぐった 愛なき言葉
Fm     B♭m  E♭7   A♭

冷たい  視線  甘い 誘い ♪
D♭maj7  B♭m    Gm7-5  C7

恋人同士が危機的状況にあるのは原曲と同じではあるけれど、なんとか力技で繋ぎ止めよう、引っ張り抜こうと・・・僕にはそんなふうに聴こえるのです。

あとは語感。
先述したサビでの同主音移調に加え、この曲では最後のサビでド~ン!と1音上がりの転調が登場します。転調の箇所はジュリーの詞で言うと、「長い」までがヘ長調で、「刹那」からト長調。さぁ上がるよ!というタイミングにピッタリのフレーズです。

長い 刹那 ♪
   C7      D7

当然「訳詞」ではなくジュリー・オリジナルの日本語詞。劇中のシーンに何かヒントがあったとしても、この言葉選びはトコトン冴えていますね~。

あくまで『CD大全集』音源のみの評価として、個人的に『ELVIS PRESLEY』は10作品中4番手に好きな1枚。演奏がオーソドックスなロック・バンド・スタイルというのが波長が合う要因なのかもしれません。
素敵な女性メンバー達それぞれのこの作品以外のキャリア、その後の活躍についても機会あらば追いかけてみたいところです。

それでは次回、「ジュリーの日本語詞の語感」という点ではACT中でも屈指の名篇をお題に予定しています。
今回の「愛していると言っておくれ」とはまた違って、こちらは原詞に忠実で「訳詞」に近い箇所もあったりするんですけど、メロディーへのジュリーの言葉の載せ方がキレッキレで、しかも「求愛」の歌ですからね。ジュリーの官能ヴォーカル炸裂ですよ~。

さぁどの作品、どの曲でしょうか・・・。
ということで、また来週!

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2020年6月 6日 (土)

沢田研二 「バイ・バイ・ララバイ」

from『act#3 NINO ROTA』、1991

Nino1

1. 8 1/2
2. 時は過ぎてゆく
3. カザノヴァ
4. 天使の噂
5. 忘れ難き魅惑
6. ヴォラーレ
7. 道化師の涙
8. バイ・バイ・ララバイ
9. カビリア~夜よ
10. ジェルソミーナ
11. SARA
12. 夢の始まり
13. 8 1/2

-------------------

さぁ、ジュリーの誕生月1発目の更新です。
今年の全国ツアー中止は本当に残念ですが、『キネマの神様』主演決定のビッグニュースもありました。
とにかく今は、コロナ禍を乗り越えた先の楽しみを妄想しつつ皆で踏ん張ってゆきましょう!

拙ブログではこの6月を久々の『ACT月間』とします。
映像未鑑賞のまま『CD大全集』の音源のみで書く無謀なスタイルは今回もそのまま。至らぬ点は多々ありましょうが、そこは先輩方のコメントで補完して頂こうという他力本願(汗)。
候補各曲それぞれについて色々とテーマを考え、更新できそうな4曲のお題をピックアップしCDに編集、通勤時間に聴き込んでいます。

慌しい日々が戻ってきましたので週に一度きりの更新、しかも短めの文量にはなりそうですが、この4曲を6月内に書いていきたいと思っています。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

まず今日は『NINO LOTA』から。
とても有名な曲ですね・・・映画『太陽がいっぱい』主題曲のカバー、「バイ・バイ・ララバイ」を採り上げます!

Nino5

みなさま、今日6月6日が「何の日」かご存知ですか?
カレンダーの記載を見たことがないですし、あまり知られていないのでしょうが、「楽器の日」なんです。

楽譜業界では毎年この日にちなんで前後の期間に「音楽書祭り」というフェアを開催しています。
各出版社がそれぞれ数点のタイトルを選出、プレゼント応募要項を記したフェア用の帯をつけて全国店舗展開させるのですが、例年5月中旬から展開スタートとなるところ、今年は緊急事態宣言による全国的な店舗臨時休業の影響があり、今月に入ってようやく対象商品の流通が始まったばかり。

ちなみに、何故6月6日が楽器の日かというと

Img7311

緊急事態宣言は解除となったものの、不要不急の外出は控え自宅で過ごす、というのが皆の認識。
そんな中、「家でもできる新しい趣味を持つ」世間の動きも出てきているようで、例えば今はプラモデルの売上が伸びているのだそうです。
対して楽器や楽譜は基本的には人に教えて貰う「習い事」の面が強く、町の音楽教室なども未だ自粛中というケースも多くて苦戦しています。
でもね、ギターやウクレレ、鍵盤はしっかりしたスコアが手元にあれば、充分「独学」できるものです。
6歳の6月6日というのはともかくとして・・・この機会にみなさま、是非楽器を始めてみてはいかがでしょうか。
アコギやウクレレ、電子鍵盤は最初に格安のものを購入しても大きな問題はありませんから(ただし、エレキギターの格安ものはチューニングが合わないなどのトラブルがあり得ます)

何故こんな話をしているのか・・・実は今日のお題「バイ・バイ・ララバイ」の原曲である「太陽がいっぱい」は、僕が中学でギターを覚えた時、懸命に練習してマスターした曲のひとつなのです。
他に「マルセリーノの歌」「鉄道員」などを一緒に覚えました。今考えると、初心者がいきなり手をつけるには結構な難易度の高いスコアから始めたんですよね。

僕の場合は、父親が母親の誕生日に買ってきたアコギを横取りするという形で(母親がなかなか手にとらなかったので)ギターを始めました。
父は一緒にスタンダードな有名曲を収載した曲集も買ってきていたんですけど、そのスコアが初心者向きかどうかまでは考えなかったみたい。TAB譜表記も無い五線譜で、指弾きのアルペジオ・アレンジです。
これを素人の僕が独学で一からトライするというのは大変な試みでしたが、そこはほら、「ギターが弾けるようになれば女子にモテるであろう」という10代の少年の下心が為せるひたむきな努力ですよ(笑)。
結果、女子にモテることはなかったものの、弾けば「おおお~!」と周囲に感心されるような有名曲を弾きこなせるようになったわけです。

で、この弾き始め最初期にマスターした曲って、その後何年経とうがスラスラ弾けるんです。
ある程度弾けるようになってから覚えた曲は数年のブランクがあると「え~と、どうだったっけかな」と仕切り直すのですが、先述の3曲などは身体が覚えていて指が勝手に動くという。
懸命に一から練習する、というのは尊いこと。
これか
らそれを体得、経験を積めるみなさまが羨ましいくらいです。
楽器に興味のある方は是非この機に始めてみて下さい。苦労はしますが「極端に易し過ぎない」スコアを選ぶのが僕の個人的なお勧めです。

おっと、すみません長々と。
この機にその「太陽がいっぱい」のスコアを改めて探してみたところ、さすがは有名曲、ニーズに応じてキーもアレンジ解釈も様々なパターンが見つかりました。

Img7357

↑『映画音楽の巨匠/ニーノ・ロータの世界』より。ピアノ・ソロ、4分の3、ハ短調

Img7356

↑『魅惑のポピュラー・ギター名曲選』より。ギター・ソロ、8分の6、イ短調(TAB譜の方の初っ端のルート音採譜がいきなり間違ってる・・・!正しくは6弦ではなく5弦の開放です)

Img7355

↑『映画音楽名曲全集』より。メロ譜、4分の3、ニ短調

どうやらオリジナル・キーはニ短調のようで(僕も最初に覚えたのはニ短調でした。鍵盤やウクレレだと簡単ですが、ギターだとセーハやハイ・ポジションのフォーム率が高くて初心者には難しいキーだったのです)、ジュリーの「バイ・バイ・ララバイ」もそうです。

あくまで『CD大全集』音源のみの感想ですが、ACTシリーズ全体に共通する独特のジュリー・ヴォーカルの色気が特に際立っていると思う作品は、まず『SALVADOR DALI』、次いで『NINO ROTA』。その『NINO ROTA』の中でも「バイ・バイ・ララバイ」には「禁断の色気」とも言うべき危うい官能すら感じます。
これは原曲と映画『太陽がいっぱい』のイメージを持ちつつ加藤直さんの日本語詞を聴くからなのでしょうね。

もしも君が 今目覚めたなら
   Dm

この世  は   とても 退屈だろう
   F#dim  D7-9      Gm    C7       F

だから言わない 今さら さよならを ♪
    E♭       Dm         A7            Dm

実際のACT映像でこの曲がどんなシーンで歌われるのかを僕は知りません。しかしこの加藤さんの詞を耳にするとどうしても脳裏に浮かんでくるのは、『太陽がいっぱい』でのトムとフィリップの船上対決シーンです。
二度と動かぬ眠りについたフィリップを見つめるトム。彼の胸にあるのは果たして憎しみと妬みだけだったのだろうか、憧れや不可解な愛情がありはしなかっただろうか、と観る者を戸惑わせます。
『太陽がいっぱい』は、ホモ・セクシャルを盛り込んだとした先駆けの作品と言われることがあるのだそうで、とすればあのシーンはドラマ『七人の刑事』の「哀しきチェイサー」や映画『太陽を盗んだ男』にも引き継がれているのかなぁ、と。
僕は今週カミさんの勧めでドラマ版『火花』を毎日2話ずつ観賞し昨日全話観終えたばかりで、たとえ明快に性的な描写は無くとも、2人の魅力的な男性が登場し、それぞれの野望遂げられぬ道をひた走る物語とは、そんなふうに見えるものなのかと考えてしまったり。

僕はジュリーの「バイ・バイ・ララバイ」の声の色気にそれを感じたわけですが、感性の鈍い僕に映像無しでそこまで思わせるジュリーって・・・本人は意図しないところでやっぱり「魔性」なのでしょうか。
加えて、特にACTシリーズのジュリー・ヴォーカルはワルツと相性が良いことも再確認したのでした。


ということで今日は「自宅で過ごすことが多いこの機に楽器をはじめてみよう!」「男同士の愛憎」という本筋から逸れまくった2つのテーマで(笑)このお題を書かせて頂きました。
次回更新はもうちょっと楽曲そのものに突っ込んだ内容になるかと思います。

お題は、『CD大全集』の中でもこれまた大好物の作品『ELVIS PRESLEY』から。
この1、2年で僕はずいぶんプレスリーの曲を勉強しました。プレスリーのオリジナルも、ACTでのジュリーのカバーも大好きなナンバーをお届けいたします。
更新まで1週間ほどお待ちくださいませ。

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2020年5月31日 (日)

沢田研二 「大切な普通」

from『新しい想い出2001』、2001

Atarasiiomoide_20200531000701

1. 大切な普通
2. 愛だけが世界基準
3. 心の宇宙(ソラ)
4. あの日は雨
5. 「C」
6. AZAYAKANI
7. ハートの青さなら 空にさえ負けない
8. バラード491
9. Good good day

------------------

5月をこの曲の記事で締めくくる、とずいぶん前から決めていたのに、タイムリミットが迫ってしまいました。
考察もできぬまま、駆け足の簡単な記事で更新させて頂くこと、お許しください。

アルバム『新しい想い出2001』のトップを飾るBPM速めのモータウン・ビート・ナンバー「大切な普通」。
アルバムそれ自体がジュリーの新たな方向性を示す中で、GRACE姉さんのこの詞はその後のジュリーの創作を推し量るような、「的を得た」名篇のように思います。

今年2020年、全世界で突然のコロナ禍により「大切な普通」が危機に陥る事態となりました。
ごく平凡なサラリーマンである僕の生活も4、5月の間は様変わりをし、先週の緊急事態宣言解除を受けていったんは元に戻りました。
時短業務と週休3日がしばらく続いていたので、「普通」の生活パターンに戻すことになかなか精魂を使います。その上で、引き続き身体や環境に気を配らなければなりませんから、なおさらです。

「電車がまた混みはじめてきた」のも実感。
「収束には程遠い」のも実感。

それでも「大切な普通」を取り戻すべく、頑張れる環境にある自分は頑張らないと、と思っています。

ジュリーの「大切な普通」って、冒頭からギターがギンギンに鳴っているのでハードな印象を抱かれているかもしれないけど、メロディーはかなりポップ寄りなんですよね。例えば

ツナガル ツムグ ツチカウ ツクス ♪
A                       C#

「時の過ぎゆくままに」ばりの泣きの進行。
或いは

キーワード 縛られて ♪
         A            Aaug

「夕なぎ」ばりのオーギュメントの採用。

さらに、間奏のリード・ギターに派手なエフェクトはかけられていません。

ハードなアレンジの中の優しげな本質。
何か、せわしない仕事に追われていることが何気ない平穏な日常だった、と思わせてくれるような。

でも、忙しけりゃいいってものでもないとも思う・・・そりゃあ暇よりはよいのだろうけど、この機にちょっと「普通」の在り方を皆で考え直してみたい。
身の廻りで考えても、都会ばかりに極端に人が密集していたり、そういうことを普通に感じていたのはおかしなことだったんじゃないか、とかね・・・考え始めています。

みなさまはこの2ヵ月、どんなふうに過ごし、どんなことを考えていましたか?
この期間を、せめて今後に向けての貴重な経験値にしたいものです。

明日から6月です。ジュリーの誕生月ですね。
拙ブログではこの6月、久々にactシリーズの楽曲お題に取り組もうと思っています。
5月ほど時間の余裕がなく、どのくらいの曲数書けるかは分かりませんが、ジュリーの誕生日である25日更新のお題だけはもう決めています。

日常を頑張りつつ、マイペースで更新してゆきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

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2020年5月28日 (木)

沢田研二 「強いHEART」

from『愛まで待てない』、1996

Aimadematenai

1. 愛しい勇気
2. 愛まで待てない
3. 強いHEART
4. 恋して破れて美しく
5. 嘆きの天使
6. キスまでが遠い
7. MOON NOUVEAU
8. 子猫ちゃん
9. 30th Anniversary Club Soda
10. いつか君は

-----------------

緊急事態宣言が明けました。
各業界業種の対応は様々かと思いますが、YOKO君の
情報によれば仲間いきつけの音楽スタジオが営業を再開したとか。
僕の勤務先も今週か
らほぼ通常モード。自粛期間の空白を取り戻さんとばかりの、特に関西の問屋さん、お店さんの元気、活気を感じられるのは嬉しいことです。

もちろん油断は大敵。第二波の心配もありますし引き続き気をつけて生活し
てゆくことは当然です。特に僕などは元々身体が強くはありませんから・・・。
気をつ
けることも山積み、ギアを入れ直して改めてとりかかる仕事も山積み。
それでもまずは
、今頑張れる環境に置かれている者から率先して頑張っていかなくては、と思っています。

それでは『元気の出るジュリー・ナンバー』更新シリーズもひとまずあと2曲とな
りました。
今回と次回は「歌詞に勇気を貰える名曲」の
テーマでお題を選んでみました。今日はアルバム『愛まで待てない』から、ジュリー作詞・玉置浩二さん作曲の「強いHEART」を採り上げます。

2009年の『Pleasure Plea
sure』ツアーで生体感できていますが、是非もう一度聴きたいとその後もセトリ入りを期待し続けている名曲。
ただこの曲は歌詞解釈がとても難しくて、個人的にはここでの
「君」を同性の友人、もしかするとタイガースのメンバーを思って書いたのかなぁとも考えていますが(TEA FOR THREE始動への繋がりも合わせて)まったく自信はありません。

戻れない   底抜けの軽さ に ♪
         G   A               F#m7 Bm

この「底抜けの軽さ」をストンと解釈できれば詞の全体像も掴めるは
ず、とは思っているのですが・・・。

いずれにしても「強いHEART」がプライヴェート
色の濃さと同時に、ジュリーの矜持を解放させたような強力なメッセージ・ソングであることは確か。明るい内容の歌とも思えないのに勇気が沸く、憧れ続けられる・・・僕にとってはそんな名曲です。
今日は考察というより「僕はこんなふうに聴いています」
という内容ですが、よろしくおつき合いください。


前回、『キネマの神様』主
演決定のニュースで友人や職場の同僚からジュリーの話題を振られ良い気分で過ごしている、と書きました。
ジュリーのことがそんなふうに周囲で話題となるのは、一昨年の
さいたまアリーナの件以来なんですけど、あの時は「良い気分」とはいかなかったんですよね。
話す相手に逐一ジュリーの普段の志や事情を説明することに躍起になったもの
です。

何より僕自身があの件をうまく受け止めきれていなかった・・・ジュリーが会見
で語った「意地」のフレーズが引っかかってしまったりね。
修行が足りません・・・あ
の時僕はジュリーの言う「意地」を「プライド」と混同していました。
ジュリーは矜持
のためならプライドなんて捨てられる人だと思っていたので(ジュリワンで出演した『songs』の時にそのあたりを色々と考えたことがあります)、「あれっ、ジュリーがプライドを保とうとしたってこと?おかしいなぁ」と勘違いし、まぁ悩んだわけです。
今はそうではありません。「プライド」とは対世間であり「意地」とは対自分
自身。ジュリーはそんなふうに言葉を使い分けているのだ、と思い当たりましたから。

そして、「意地」を他のフレーズに置き換えるとするならば、それが「強いHEART」ではないでしょうか。

壊れない   掛け替えのないもの
         G    A                 F#m7  Bm

強い  HEART
      Gm   A

プライド捨てたっ て    失くすものはない ♪
     G    A   F#m7  Bm         G   A          D

この歌では「強いHEART」と「プライド」の両フレーズは対比的
に書かれています。
「世間がどうやかましかろうと、自分の矜持を譲らなければそれで
よい」と解釈するのは僕が凡庸だからかもしれないけど、そう思えることで勇気が出ます。
アルバム『愛まで待てない』初っ端3曲の畳みかけは、その意味で最強の並びと感
じています。

「世間」と言えば思い出すのは、さいたまアリーナの件について多くの著
名人が色々な発言をしていたこと。
あの時こそ、(これは発言の有る無しに関わらず
、ですが)いざという時にジュリーを理解しジュリーの側に立つ人が明快になったかもしれませんね。
当然ながらタイガースのメンバー(サリーさんとピーさんの発信は僕も
ネットで確認しました)、加えて嬉しかったのは、あの直後に玉置浩二さんがステージで突発的に「君をのせて」を歌ってくれた、との情報でした。

玉置さんのジュリーへの楽
曲提供は今日お題の「強いHEART」1曲のみですが、この名曲隅々にまで溢れるジュリーへのリスペクトは、ずっと変わらずその胸にあったのだなぁ、と。
ジュリーと玉置さん
って、活動が離れていても共鳴し合える関係のように思えるんですよね。

作曲家としての玉置さんはもう「天才!」としか言いようがないです。
何故こんなふうにコードが繋がるのか、何故こんなふうにメロディーが載るのか・・・凡人には到底考え及ばぬ独創性、それでいてなおかつキャッチーな大衆性も合わせ持つという。

僕が玉置さんの曲で「強いHEART」と同じくらい凄いと思うのは、84年に小林麻美さんに提供している「哀しみのスパイ」(作詞は松任谷由美さん!)。
Aメロ途中に「Dm7→G7→C」という進行が登場します。これ、キーがイ短調(或いはハ長調)の曲ならば王道中の王道、しかしこの曲はホ短調なのです。
Emをボ~ンと鳴らしてから作曲を開始して、何故この進行をいきなりブッ込めるのか・・・考えられません。

ジュリーの「強いHEART」の場合は、クリシェ・ラインの繋ぎ方が凄まじい。

お互いに      時間をかけ    て
         Bm   Bm(onA)     Bm(onG) F#m

今はもう     変わらずにい    て ♪
         Em  Em7(onD)      C#m7-5  F#7

(↑歌詞は3番。個人的に一番好きな箇所です)

進行の中に「シ→ラ→ソ→ファ#→ミ→レ→ド#」と下降する1本のぶっとい線があって、和音が支配されているんですけど、歌メロにはそんな制約は微塵も感じられない・・・何故こうなる?と感嘆しつつも和音とメロディーを重ねて追うだけで大変です。

あと、小節の頭に向かってメロディーがグイグイ来る感覚。きっと理屈ではないんですね。
ほら、学生時代に「勉強しないのにメチャクチャ勉強ができる人」っていたじゃないですか。玉置さんの作曲はそんなふうに「神童」的なんですよ。
ジュリーには名だたる作曲家が数えきれないほどの名曲を提供していますが、コード進行とメロディーだけで「こりゃとんでもない。凡人には絶対作れない!」とある種「得体の知れなさ」まで感じるほど畏怖させられるのは玉置さんの「強いHEART」とミッキー吉野さんの「未来地図」の2曲だけ。
みなさま、試しにこの2曲を続けて聴いてみてください。編曲者はそれぞれ大村憲司さん、白井良明さんと異なるのに雰囲気がよく似ていませんか?
これは作曲者の強さと密度に引っ張られているんですよ(とは言え「強いHEART」の大村さんのアレンジの素晴らしさも只事ではありませんが)。

もちろん玉置さんは作曲のみならずヴォーカル、ギターも素晴らしいです。
僕がリアルタイムで観て忘れられない映像は、第27回レコード大賞「作曲賞」の受賞シーンです。受賞者は井上陽水さんで、当時既に大ブレイクを果たしていた安全地帯がバックを務めたという豪華なパフォーマンス(安全地帯が陽水さんのツアー・バンドのキャリアを持つことは有名なのでご存知のかたも多いでしょう)。
陽水さんと玉置さんが横並びになって「飾りじゃないのよ涙は」を綺麗に、そして豪快にハモるわけです。
「ワインレッドの心」をベストテンでよく観ていた時には当然玉置さんのヴォーカルは凄いなぁと感じていたけれど、ギターは弾いてるんだか弾いてないんだかよく分からなかった・・・ところがその「飾りじゃないのよ涙は」での玉置さんのストロークの情熱的なことよ・・・。
「魂入れて弾く、とはこういうことか。玉置さんギターも凄ぇ!」と衝撃を受けたものでした。

「強いHEART」の玉置さんのプリプロ音源はギターの弾き語りだったのでしょうが、叶うならばそちらも一度聴いてみたいものです。
たぶん最終的なジュリーの音源よりもバラード色が強かったんじゃないかなぁ・・・。独特の粘りがある玉置さんのヴォーカルと、あまりに個性的な作曲手法をギターの鳴りに置き換えて想像するとね。
最高音が高い「ラ」の音まで跳ね上がるのも、玉置さんの作曲段階からそうだったのでしょう。
ジュリーも意地とリスペクトを以って見事応えています。この場合の「意地」も当然素敵な意味ですよ!

僕はアルバム『愛まで待てない』からは「愛しい勇気」「愛まで待てない」「強いHEART」「嘆きの天使」「30th Anniversary Club Soda」の5曲を生体感できています。
『Pleasure Pleasure』ツアーの「強いHEART」は柴山さんがバッキング、リードが下山さんだったなぁ。

アルバム収録曲10曲のうち半分の5曲ですから、これはなかなかのセトリ率(『サーモスタットな夏』の10曲中6曲には及びませんが)。
今後残る5曲を聴く機会はあるでしょうか・・・楽しみにその時を待ちたいものです。


それでは次回、5月内になんとかあと1曲・・・GRACE姉さん作詞のナンバーを書きたいと思います。

今週からいきなり忙しくなりました。
まだ油断はできませんが、思いもかけない休日で時間の余裕があった日々もどうやらひと区切り。
それでも忙しいというのは有り難いことです。「大切な普通」が戻ってこようとしているのですから。
・・・って、これは次回お題の予告になってしまっていますが、お題を計画的にピックアップした更新予定としては「狙い通り」なタイミングの曲ではあります。

長かったようであっという間だった5月の締めくくり記事、あと3日で更新間に合うかな・・・。
なんとか頑張ります(笑)。

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2020年5月22日 (金)

沢田研二 「Beautiful World」

from『Beautiful World』、1992

Beautifulworld_20200522112801

1. alone
2. SOMEBODY'S CRYIN'
3. 太陽のひとりごと
4. 坂道
5. a long good-bye
6. Beautiful World
7. 懲りないスクリプト
8. SAYONARA
9. 月明かりなら眩しすぎない
10. 約束の地
11. Courage

-----------------

映画『キネマの神様』ジュリー主演決定のニュースは広く世間でも話題となり、普段ジュリーの話をしない友人からメールを貰ったり、職場でも「沢田研二凄いね」と言われたり(皆、僕がジュリーファンであることは知っています)、ファンとしてはちょっとくすぐったいような、なかなか気持ちの良い日々が続いております。
こうして明るいニュースも届けられ、大変な世の中にこれから少しずつ平穏が戻ってくるのでしょうか。
そうなることを願っています。

僕は今日はお休みを頂いております。
月末にこちらの緊急事態宣言が解除されれば、勤務先では時短業務こそそのまま続くかもしれませんが、さすがに交代制の週休3日はなくなるでしょう。
「不思議な休日」をこうしてブログ更新にあてられる日々も、あと僅かかなぁ?

さて『元気の出るジュリー・ナンバー』更新シリーズ、前回の「サンセット広場」に引き続き今日も「楽曲それ自体が既に癒し」という「ほのぼの系」の名曲がお題。
採り上げるのはアルバム『Beautiful World』表題曲「Beautiful World」です。よろしくおつき合いください。


前回の「サンセット広場」では素晴らしい意味での「詞曲不一致」の魅力について書きましたが、今度は一転、完璧な「詞曲一致」です。
少し前に「いとしの惑星」でも書いたように、覚和歌子さんの「メロディーに合った」歌詞、コンセプトやテーマの構築力は超一流で、「Beautiful World」もそんな名曲となっています。この頃は「曲先」の製作だったでしょうからなおさら凄い!
覚さんの詞が載ることで、まるでメロディーもヴォーカルもアレンジも最初から「こういう感じ」と狙って演繹法で作られたかのような仕上がりに思えてしまう・・・。
いや、もしかしたらこの曲の場合は本当にそんなこともあったのかな。
何と言ってもアルバム・タイトルなのですからね。

まずは吉田建さんの作曲とアレンジから見ていきましょうか。
いかにもベーシスト好みらしい裏ノリのリズム。穏やかなテンポで長調のレゲエ・ビート、というだけで既に「癒し系」が確定です。少し遡ると88年のアルバム『TRUE BLUE』収録の「EDEN」もそうでした。

ジュリーEMI期の建さんはプロデューサーとしての立場から、自身の作曲作品を以ってアルバム全体のバランスをとる、ということも考えていたと思います。
他収録曲が集まった時点で1枚ぶんのコンセプト・イメージを捉え、即した形で自らも作曲。
『Beautiful World』にはそれまでの3作とは一変して穏やかな作風のナンバーが集まっていて、「じゃあ(自分の曲の)リズムはこうだ!」という感じでしょうか。
建さんがもう1曲提供したハーフタイム・シャッフルの「a long good-bye」も併せ、「お洒落」な音のアルバムにしよう、という建さんの狙いが見えてきます。
「Beautiful World」のキーはト長調なんですけど、1番のサビ最後をマイナーに着地させるなど曲に柔らかなイメージを持たせています。これがまたアルバムのトータル・コンセプトを象徴しているように思えるのです。

そんな建さんのお洒落なメロディーに、ズバリ!の詞を載せてきた覚さん。
僕はこのアルバムを激安中古で購入したのですが(『ジュリー祭り』直後の時期で、その頃はEMI期のアルバムは廃盤状態のため高値をつけていたのでラッキーでした)、購入前は「Beautiful World」なるフレーズに、きらびやかで特別に輝かしい世界の歌なのだろう、スーパースターであるジュリーがそれをド派手に演じているのだろう、とイメージしていました。
ところが実際に聴くと全然逆で。

余計な輝きも  足りない夢もないから
C             Bm7     B7     Em          Am7

感じてほしい ♪
      B♭   D

覚さんの描く「Beautiful World」とは「何気ない日常」のことで、2人出逢っていなければそんな日常がどれほど美しく素晴らしい世界であるかを気づかずに過ごしていただろう、と歌うわけです。

It's a so Beautiful World
G                       Gmaj7

もしもふたり 出逢わなければ
              Am7               D

It's a so Beautiful World
G                       Gmaj7

こんな景色 知らないまま過ぎてたけど ♪
             Am7             D            G 

「いとしの惑星」同様に、今こんな状況になってこそ沁みる平凡、平穏の喜び。
本格ジュリー堕ちしたからこそ分かる、これは正にジュリー好みのコンセプトなのですねぇ。人生における瞬間瞬間の「特別さ」の描き方が阿久さんの時代とはこうも変わるものか、と後追いファンの僕などはしみじみ思う次第です。

・・・と、偉そうに書いてはいますが、実は今回記事を書くにあたり「エスパス」「フォルム」「シノプシス」の意味を初めてしっかり調べたんですけどね(汗)。
全部フランス語だった・・・意味はだいたいそれまで漠然と捉えていた通りだったとは言え、やはり

変わりつづけるのは フォルムだけ
G                      Gmaj7           Em7

一秒のシノプシス ♪
       C          D

このあたりの理解度は違ってきますな~。

見事な「詞曲一致」は、演奏やジュリーのヴォーカル処理にも必然影響してきます。

演奏では間奏のギターソロに注目。
「Beautiful World」にはゴリゴリのディストーションやド派手な速弾きフレーズは必要ありません。
空間系のエフェクトを施した優しい音色と音階。僕はこういうソロ、好きですねぇ。
例えば白井さんが弾いた「Pearl Harbor Love Story」や「勇気凛々」、下山さんが弾いた「エメラルド・アイズ」。僕はどうもこうした必然性あるギター・ソロに惹かれるようで、「Beautiful World」も同じ意味で名演と考えます。

で、ジュリーのヴォーカルですよ!
この時期のジュリー・ナンバーでは珍しい、ダブル・トラック(主旋律を複数のヴォーカル・トラックでユニゾン処理)が採用されています。
ジュリーの声の艶ならば、ヴォーカルはシングル・トラックの方が素敵に決まっている・・・でもこの曲は違うんです。ギター・ソロ同様に、「詞曲一致」がここでは優しさや朴訥さを求めていますから。

ダブル・トラック・ヴォーカル処理についてはジュリー・ナンバーお題でこれまで何度か書いたことがあって、おもに2つの手法があります。
別々に歌録りしたトラックを同時にミックスする方法(「人待ち顔」参照)と、単一のトラックを機材でコンマ数秒ずらして複製を作成しミックスする方法(「影 -ルーマニアン・ナイト-」参照)です。

「Beautiful World」ではジュリーの歌があまりに綺麗に、違和感なくピタリと重なっているので後者かと思いきや、実際はどうやら前者。
一番最後のサビ直前に、軽く囁くような感じでジュリーが「Yeah・・・」と声を出している箇所(3’50”あたり))だけシングルなんですよ。複製の手法ならここもダブルになるはずですから。
ジュリーの歌入れまでの万全の準備が想像されると同時に、天性の声の抑揚センスも窺い知れ、その素晴らしさが分かろうというものですね。

アルバム『Beautiful World』はEMI期の他の4枚に比べると地味で、ギンギンの作風とは言えません。
しかし長年かけて進化してきたロックのレコーディング技術の手管、収録楽曲のクオリティー、そして何より覚さんとの出逢いによりジュリーが「ささやかな日常をロックする」ことを志した最初の1枚としてとても、重要な名盤です。
それに、今のような時期にじっくり楽しむには最適のアルバムではないでしょうか。

僕はこのアルバムから今年の全国ツアー・セットリスト入りに「約束の地」を予想していましたが、2010年『歌門来福』で体感できた「SOMEBODY'S CRYIN'」を含め他収録曲サプライズ級の選曲ももちろん期待しています。
ギター1本体制でジュリーがトコトン「エレキ」の伴奏に拘るならば、「Courage」で柴山さんの神がかったアレンジが聴ける日もいずれ来るかもしれません。
楽しみは尽きませんね。


それでは次回更新は・・・6月は久々に「act月間」とする予定で、その前のこの5月中に「元気の出るジュリー・ナンバー」としてなんとか頑張ってあと2本の記事を書きたいと思っています。

今度は「歌詞に勇気づけられる」をテーマに名曲2曲を用意しました。
ジュリー自身の作詞と、もう1曲はGRACE姉さんの作詞・・・まずはジュリー作詞の方からとりかかります。
どうぞお楽しみに!

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2020年5月17日 (日)

沢田研二 「サンセット広場」

from『LOVE~愛とは不幸をおそれないこと』、1978

Love

1. TWO
2. 24時間のバラード
3. アメリカン・バラエティ
4. サンセット広場
5. 想い出をつくるために愛するのではない
6. 赤と黒
7. 雨の日の挽歌
8. 居酒屋
9. 薔薇の門
10. LOVE(抱きしめたい)

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いやぁ、昨日のジュリー界は予期せぬビッグニュースに沸き立ちましたね!
映画『キネマの神様』公式サイト
志村さんのこと、今の世の中の状況のこと、色々なことがある中でとても暖かな、素敵なニュースでした。

森本千絵さんの旦那さんがこの映画のプロデューサーさんとのこと。そんな繋がりがあってジュリーにオファーがあったのだそうです。
千絵さんがご結婚されてから6年・・・2014年『三年想いよ』ツアーの大宮公演でのジュリーのMCが、「千絵さんの結婚式を振り返る」大長編だったことを思い出して、当時の自分のレポを読み返してみました(こちら←MCのトコだけ読んでね!)。

本当に、人と人の繋がりって不思議です。特にジュリーを見ているとそう思うことが多いのです。

この映画は何をおいても観るしかない!
今は大変な時期だけど、乗り越えた先の楽しみがまたひとつ増えましたね。

それでは「元気の出るジュリー・ナンバー」更新シリーズ、今回と次回の2曲は「ほのぼの系」を用意しました。
歌の内容以前に曲調やリズム、アレンジが既に癒し系という名曲です。
何も考えずにお昼にボ~ッと聴くもよし、夜のお休み前に疲れた身体をリフレッシュさせて明日の活力とするもよし・・・まず今日はアルバム『LOVE ~愛とは不幸をおそれないこと』から、「サンセット広場」を採り上げたいと思います。

濃厚な情念渦巻く異色のアルバム、僕は大好物ですが「ちょっと苦手」と仰る先輩方がいらっしゃるのも事実。
しかしながらその中にひょいと挿し込まれた肩肘張らない明るさ、軽快さを持つこの曲はアルバムの中でも好き、という方は多いのではないでしょうか。
だって、ジュリー自身がたぶんそうだから(笑)。
「アルバムの中ではこの歌が好き」と、何かのラジオ音源で聞いたのか、先輩にそう教えて頂いたのだったか・・・僕の記憶も加齢とともに怪しくはなっていますが、確かジュリーはそんなふうに言っていたのでしたね。
おつき合い頂くみなさま、今日は是非この愉快な名曲「サンセット広場」に癒されてくださいませ。


『ジュリー祭り』以前の、僕にとっては”第一次ジュリー堕ち期”となった2005年に盟友・YOKO君と競い合うようにして聴いたポリドール期の名盤の数々。
アルバムを新たに聴く度に夜な夜な彼と電話でアルバムの感想を語り合う日々だったわけですが、『LOVE ~愛とは不幸をおそれないこと』についての会話は平日深夜にまで及び、特に濃かった!
普段クールなYOKO君がこの名盤にはテンションが上がり、「トラボルタ」「トラボルタ」と連呼しながら阿久さんの詞に大ウケの様子で「イチオシ」していたのが「サンセット広場」でした。

トラボルタと言えば映画『サタデー・ナイト・フィーバー』。
僕は映画それ自体は詳しく語れません。ここで書いておきたいのは、ビージーズの「ナイト・フィーバー」などが収録されたこの映画のサントラが世界のロックに与えた影響。いわゆる「ディスコ・ミュージック」の大流行です。
キャリアのある大御所バンドもこぞって「新たな開拓」とばかりに採り入れ、その後のヒットに繋げました。
このサントラなくしてストーンズの「ミス・ユー」も、ウイングスの「グッドナイト・トゥナイト」も、キンクスの「スーパーマン」も生まれていなかったのではないでしょうか。

「サンセット広場」がディスコ・ミュージックかと言えば、まぁ広義にはそうかもしれませんが、大野さんが明確にそこを志したのは「アメリカン・バラエティ」の方でしょう。これはストーンズの「ミス・ユー」に着想を得ている、というのが僕の推測です。

「アメリカン・バラエティ」と「サンセット広場」は、アルバム曲順が繋がっているという以上に面白い関係です。
例えば阿久さんの歌詞。
サンセット広場で待ちぼうけを食っている女の子を「トラボルタ気どって」ナンパしに来る男の子には、「アメリカン・バラエティ」の主人公のイメージが重なります。
前曲で豪快に持ち上げておいて、次曲で散々なまでに落とす。
いかにも阿久さんらしい手法ではありませんか。

「サンセット広場」の歌の舞台はアメリカなのでしょうが、もし同じシチュエーションが日本で起こっていたら・・・声をかけてきた男の子はトラボルタではなく(無理なのに)ジュリーを気取って「アメリカン・バラエティ」ばりの迫り方をしたかもしれませんね。
OKすることはないよ、お嬢さん(笑)。
ジュリーは唯一無二の男。
鳩の数ほど男はいても、「ジュリーみたいな男」なんていやしないのですから。

ここでちょっと話が逸れますが・・・先日僕は「横浜銀蠅の完全再結成を楽しみにしている」と書きました(本当なら昨日東京公演が開催されていたはずでした)。
80年代当時、横浜銀蠅の中で特に女性人気が高かったのがリード・ギターのJonnyさん。Jonnyさんはソロ・デビューも果たし、弟分である嶋大輔さん、杉本哲太さんも出演したドラマ『茜さんのお弁当』主題歌、自身作詞・作曲の「ジェームス・ディーンのように」(名曲です!)は、いきなりのシングル・ヒットとなりました。
この曲、Jonnyさんは当初ジェームス・ディーンではなく「トラボルタのように」というタイトルで考えていたのを、途中で変更したのだそうです。
印象的な「ジミーのように♪」というコーラス・パートは元々『サタデー・ナイト・フィーバー』をモチーフとして「トニーのように♪」と作っていたのでしょう。

トラボルタがカッコイイ男であることは間違いありませんが、「トラボルタ」なる片仮名の語感が日本人としてはちょっと野暮ったいと言うか、会話するぶんには良いけど歌の歌詞やタイトルとするにはハードルが高そうな名前、というのはごく自然な感覚。
ただそこを平然と打ち砕いてくる・・・どんな語感にも囚われないのが阿久さんなわけで。

トラボルタ気どっても無理なのに
F            D7                 Gm 

フィーバーなんて古い言葉
B♭m             Am        Gm

マジで使って口説いてる ♪
           C              F

突如耳に飛び込んでくる「トラボルタ」のフレーズが逆に迫力の語感となり、初聴時の僕らを貫きます(YOKO君もそこにヤラレたわけです笑)。
しかも「サンセット広場」がリリースされた78年って、それこそディスコ・ブーム、フィーバー大全盛ですよね?
それなのに「フィーバー」を「ダサい」ならまだしも「古い」言葉であるとブッた斬る自由さ、過激さよ。
歌謡曲を通して時代の移ろいの速さを見つめる阿久さんならではの描写だと思います。

そんなラジカルな詞に、とびきり可愛らしいメロディーをつけてきた大野さん。
70年代後半の阿久=大野コンビ(当時はおもに「詞先」の製作だったそうですね)の素晴らしい意味での「詞曲不一致」は、鉄人バンド期の祈り歌(こちらは曲先)にも負けていませんよ~。
言葉もメロディーも、双方の身勝手さ(←絶賛しているんですよ!)に臆することなく主張しているという。

頻度はさほど高くはありませんが、大野さんは「ほのぼの系」の作曲も大得意としています。
『太陽にほえろ!』サントラにも「仲間のテーマ」のような曲があったり、ジュリー・ナンバーにも、阿久さんとの70年代三部作で探せば「ラム酒入りのオレンジ」→「女はワルだ」→「サンセット広場」がそのパターン。
もっと前だと74年の「ママとドキドキ」、あと作曲ではなく編曲ですが76年の「ロ・メロメロ」も加えることができるでしょうか。
「ブロードウェイ風」と言えばよいのかな・・・阿久さんとのコンビでアルバム全曲を任されるようになり、大野さんの「ほのぼの系」もド派手なシングル路線とは違った形で一層研ぎ澄まされていったのではないでしょうか。

結果「サンセット広場」では詞曲それぞれの個性のぶつかり合いからマジックがかかり、とても愉快な癒し系の名曲として聴き手に届けられることとなりました。
もちろん単体で聴いても名曲ですけど、ここは「アメリカン・バラエティ」~「サンセット広場」という流れを楽しむ意味でも、アルバム通して聴くことをお勧めいたします。

トラボルタを気どった男の子の動向。
ディスコからブロードウェイへのメロディー散策。
詞曲ともに味わい深さが増すと思いますよ~。

そして、「本当にイイ男はここにおるで!」と歌っているかのようなジュリー・ヴォーカルの俯瞰力も見えてくるのです。


それでは次回更新・・・今度は90年代。
リズム・アレンジに癒しの特徴を持つ「ほのぼの系」ジュリー・ナンバーがお題です。
しばしのお待ちを!


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2020年5月14日 (木)

沢田研二 「素敵な気分になってくれ」

from『JULIE CM SONG COLLECTION』

Cmcollection

SIDE-A
1. アルファ クリエーション
2. 素敵な気分になってくれ
3. 渚のラブレター
4. I DO LOVE YOU
5. I am I(俺は俺)
SIDE-B
1. あなたに今夜はワインをふりかけ
2. 愛は炎
3. 二人なら翔べるのに
4. RED SUMMER
5. 熱い想いだけ

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ゴダイゴのギタリスト、浅野孝巳さんが亡くなられました。
コロナ禍によりゴダイゴのツアーが中断されていた最中での訃報はあまりに突然で悲しく、驚いています。

小学生の時、初めて自分で買ったレコードがゴダイゴ『ガンダーラ』のシングル盤でした。続けて『モンキー・マジック』のシングル盤も買い、当時は楽器のことはまったく分からなかったけれど、Aメロで浅野さんのキレッキレのカッティング・フレーズだけが残る一瞬の箇所がとても好きになりました。

3年前の5月、浅野さんと依知川伸一さんのデュオ・ユニット『あさいち』のLIVEに行き、初めて浅野さんのギターを生で聴くことができました(その時のことは、こちらの記事で少し書いています)。
ディナー形式のイベントでしたから、浅野さんは演奏前にお客さんの食事のテーブルを回ってくださり、乾杯もしてくださいました。
幼い頃にテレビで観て憧れていたレジェンドと実際にグラスを合わせて頂けた夜・・・忘れられません。

浅野さんと言えば、「JC-120」というローランド社のギター・アンプ開発に尽力されたことも有名です。
初心者から上級者まで、使い手の技量を問わない万能な奴。スマートなボディなのに、メチャメチャ頑丈な奴。どことなくキュートなその愛称は「ジャズコ」。
貧乏学生時代に利用していた格安の音楽スタジオではマーシャルを置いていない部屋はいくつかあったけど、ジャズコはどの部屋にも必ずありました。
10代でバンドを始めてから、ずっとお世話になり続けています。

心より浅野さんのご冥福をお祈り申し上げます。



今週は今日木曜日が休みのDYNAMITEです。
本来ならば正に昨夜、ジュリーの全国ツアー『Help!Help!Help!Help!』が開幕していたはずで、余韻に浸りながら仕事に励んでいたのでしょうね・・・。

このよ
うな状況になって今つくずく思うのは、久々のお正月LIVEに1度きりとは言え無事参加できていて本当に良かったなぁ、と。
同時に、地方にお住まいの方や、それぞれの事情で参
加が叶わなかったファンのみなさまの現在の心情いかばかりか、とも想像します。
ジュ
リーのLIVEからやむを得ず遠ざかるというのは・・・中でも、もう50年から「毎年」のこととして過ごしてこられた長いファンの先輩方は本当に辛いでしょう。
せめて、とい
うには物足りないかもしれませんが、今日はまず今年のお正月LIVE『名福東阪阪東・寡黙なROCKER』・・・僕が参加した1月10日の東京国際フォーラム公演でのジュリーのMCを少しだけ振り返ることから始めたいと思います。

現在の緊急事態宣言下の毎日で僕ら
は、平時ならあまり耳にすることのない「自粛」という言葉をテレビなどでしょっちゅう聞いていますが、意味こそ違えどジュリーがはからずもお正月LIVEで「自粛」に言及しました。

その頃巷で大きな話題となっていたのは、例のゴーン氏逃亡事
件です。
「綴りは違うのかもしれないけど、名前がゴーン(GONE=行ってしまった)
ってのが・・・」
と、冗談を交えつつ色々とその話をしてくれたのですが、ジュリーが抱いた
素朴な疑問というのが

「これだけの不祥事ですよ。何でニッサンはコ
マーシャルを自粛しないの?」

と。
楽器を入れる箱に入って逃げたらしい、とのことで
「(普段から楽器運搬に関わる身として言うと)そんなところに人が入っちゃダメですよ!」と笑わせてくれたり。
で、何よりこの件については「CMのOBとして言わせて貰う
!」と力説するジュリー。
そう、ジュリーにとってもファンにとっても「ニ
ッサンと言えばブルーバードのCM!」なのですね~。

ということで今日採り上げる「元気
の出るジュリー・ナンバー」は、日本においては初期の佐野元春さんが伊藤銀次さんと共に開拓し確立させた「ピアノ・ロック」の流れを汲むバリバリのビート系「素敵な気分になってくれ」です。よろしくおつき合いください。


ジュリー出演CMは数あれど、タイガース時代の明治チョコレートは別格として、ブルーバードのCMはジュリー本人も特に思い入れが強いのではないでしょうか。
楽曲が在りもののタイアップではなく、しっかりとCM商品のコンセプトに沿って作り込まれている・・・まぁそれだけなら昭和の時代はジュリーに限らずそうした業界の熱量は高かったわけですが、加えてブルーバードの場合はシーズンごとにどんどん新曲を作っていった、というのがね。しかも名曲揃いときています。
いつだったか、大宮公演のMCでジュリーが突然「I am I(俺は俺)」の話をしてくれたこともあったなぁ。

「素敵な気分になってくれ」は一連の作品の中でもCMシリーズ自体が車の売れ行きとともに絶好調のタイミングで製作され、作曲が新星・大沢誉志幸さん、作詞がエキゾティクス期ジュリーの最重要女流作詞家である三浦徳子さん。歌うは完全にロック・シンガー覚醒を遂げたジュリーとなれば、名曲にならない方がおかしいです。

そうした製作・演者双方の時代的なテンションの高さは、以前に大分の先輩から授かった貴重な資料『快走通信 1982』からも読み取ることができます。

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Kaiso824 

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ブルーバードとは「街一番のイイ男が、街一番のイイ女を乗せて走る車」ということになりましょうが、自らを指して「一番のイイ男」なんて歌うとなると「そんな気になりきっている」高揚した普通の男のストーリーとなるはず。
でもジュリーが歌えばそこは「真実」ですからね!
自分がとびきりのイイ男であることに何の疑問も無く物語が展開していくという。個人としてのジュリー本人がどう考えていたかはともかく、歌い手・ジュリーはブルーバードのCMが謳う「スーパースター」にドンピシャの男だったのですな~。
三浦さんもそこは当然心得ていて

恋する女は 世界のためにある ♪
   E♭     B♭    A♭          E♭

恋の相手の方も最高に「イイ女」であると同時に、こちら(歌い手)もそれに見合う「世界のためにある」ほどのイイ男でなければこの詞は成立しませんから。
凡庸たる身には一生かけても辿り着けない境地です。

では、大沢さんの曲はどうでしょうか。
これはジュリー、大好きな感じだと思うんです。と言うのもイントロ冒頭のリフと音階移動が、「気になるお前」や「お前は魔法使い」を連想させるんですよね(勝手に脳内で指笛とカウベルを鳴らすと「おまえのハートは札つきだ」にも相当似てるけど)。
「素敵な気分になってくれ」は、「sus4」や「add9」によるクリシェ・ラインの音をホンキー・トンクなピアノが受け持ち、さらにブラスを噛ませるアレンジがいかにも82年という時代を反映していて、ジュリーと縁深い佐野元春さんの影響も大と見ました。

メロディーとジュリーのヴォーカルで個人的に一番好きな箇所は、Aメロの出だしです。

情熱という 名前の ♪
E♭  Gm7   Cm  A♭m

「名前の」の「の~♪」のジュリーの高音がなんとも言えずクセになりませんか?
実はここ、理屈上でも聴き手にとって「引っかかりのある」一時的な転調音なのです。

この曲はキーが変ホ長調なので、メロディー中「ラ」「シ」「ミ」の3音には自然に♭がつきますが、ここでは「ソ」をフラットさせています。
コード進行としても普通なら「A♭」とするところ、大沢さんが当てたのは「A♭m」。それ自体は珍しくない手法とは言え、そこに向かってパ~ンと跳ね上がる高音を配したのが大沢さんの素晴らしさだと思います。
ただし、この音が曲中メロディー最高音というわけではなくて、例えばすぐ後のAメロ2回し目、「パーティーで♪」の「で~♪」もジュリーの高音が冴えますよね(こちらは調号に忠実な王道のメロディー)。ここがナチュラルの「ソ」の音で、音階としては1行目語尾より半音高い。
それでも僕には「ソ♭」を歌うロングトーンこそが曲中で最もジュリーの高音の魅力を引き出している、と感じられるのですが・・・いかがでしょうか。

最後に。
僕はカセット『JULIE CMソング・コレクション』を正式な形では持たず、先輩から授かった音源のみを所有する状況ですが、これは「アルバム」として考えてもなかなか聴き応えのある作品ではないでしょうか。
リリースの時期は様々なのに不思議な統一感がありますし、楽曲バランスも収録配置も素晴らしい。
お題の「素敵な気分になってくれ」の2曲目収録は曲調と合っていてズバリ!だと思いますし、A面とB面で時代背景がガラリと変わる面白さは、当時実際カセットを購入した先輩方なら実感されたことでしょう。
B面頭が「あなたに今夜はワインをふりかけ」ってのがまた、いかにも強力なアルバム構成という感じです。ここはリリース年代順を崩してきていますから、製作サイドの「狙った」配置だったんじゃないかな。

僕としてはせめてリマスターのクリアな音でのCD再発を切望しますが、難しいのでしょうかねぇ・・・。


それでは次回、次々回更新お題2曲の「元気の出るジュリー・ナンバー」は、またまた曲の雰囲気を変えてみようと思います。
ゴリゴリのビート系ではなく、「微笑ましい曲調」とでも言いましょうか。のんびり、ほのぼのと聴ける・・・ジュリーの歌声はもちろんだけど、メロディーやアレンジ、或いはリズムが既に癒し系、という2曲を用意しています。

それぞれ、70年代と90年代の名曲。まず次回は70年代の方から書いていきますよ~。
お楽しみに!

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